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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116776
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】防眩性ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240821BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240821BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20240821BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240821BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240821BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20240821BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20240821BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/48
B32B27/20
G02B1/14
G02B5/02 B
C08J7/046 CEP
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022579
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】武藤 槙吾
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 萌子
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
4F006
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA20
2K009AA15
2K009CC09
4F006AA02
4F006AB39
4F006AB43
4F006AB64
4F006AB65
4F006AB76
4F006BA02
4F006CA05
4F006CA08
4F006DA04
4F006EA03
4F100AA17A
4F100AA17H
4F100AA20A
4F100AA20H
4F100AJ06B
4F100AK01B
4F100AK25B
4F100AK25H
4F100AK42B
4F100AK51A
4F100AL05A
4F100CA23A
4F100CA23H
4F100CC02A
4F100EH462
4F100EH46A
4F100EJ052
4F100EJ05A
4F100EJ082
4F100EJ08A
4F100EJ542
4F100EJ54A
4F100JB14A
4F100JK12A
4F100JN01
4J038FA111
4J038HA446
4J038KA08
4J038KA12
4J038KA15
4J038MA06
4J038MA10
4J038NA19
4J038PB08
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】白ムラの発生が抑制された防眩性ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】基材と、前記基材の一方の面側に設けられた防眩性ハードコート層とを備えた防眩性ハードコートフィルムであって、前記防眩性ハードコート層が、フィラーを含有し、前記フィラーの平均粒径をdp(μm)とし、前記防眩性ハードコート層の厚さをdl(μm)とした場合、比dl/dpが、1.10以上、100以下である防眩性ハードコートフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の面側に設けられた防眩性ハードコート層とを備えた防眩性ハードコートフィルムであって、
前記防眩性ハードコート層が、フィラーを含有し、
前記フィラーの平均粒径をdp(μm)とし、前記防眩性ハードコート層の厚さをdl(μm)とした場合、比dl/dpが、1.10以上、100以下である
ことを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。
【請求項2】
前記平均粒径dpが、0.5μm以上、20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項3】
前記厚さdlが、1μm以上、30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項4】
前記防眩性ハードコート層が、硬化性成分と、前記フィラーとを含有するコーティング組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項5】
前記コーティング組成物が、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項4に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体等に使用することができる防眩性ハードコートフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示体では、外部から表示面に入射してくる光が反射して、視認者が表示内容を視認し難くなることがある。このような問題を解決するために、これまで種々のディスプレイに対して、様々な防眩処理がとられている。
【0003】
その一つとして、例えば液晶ディスプレイにおける偏光板に使用されるハードコートフィルムや各種ディスプレイ保護用ハードコートフィルムなどにおいて、その表面を粗面化するコート、すなわち防眩性ハードコートを形成することが行われている。例えば、特許文献1には、透明基材上に、複合粒子とバインダマトリックスを有する防眩性ハードコート層を備えた防眩フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-192765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されるような従来の防眩性ハードコートフィルムでは、当該防眩性ハードコートフィルムを介して表示面をみたときに、表示内容に白い色ムラ(白ムラ)が生じ易いことが本発明者らによって確認された。そのため、このような白ムラが生じない防眩性ハードコートフィルムの開発が望まれている。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、白ムラの発生が抑制された防眩性ハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材の一方の面側に設けられた防眩性ハードコート層とを備えた防眩性ハードコートフィルムであって、前記防眩性ハードコート層が、フィラーを含有し、前記フィラーの平均粒径をdp(μm)とし、前記防眩性ハードコート層の厚さをdl(μm)とした場合、比dl/dpが、1.10以上、100以下であることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムを提供する(発明1)。
【0008】
上記発明(発明1)において、前記平均粒径dpが、0.5μm以上、20μm以下であることが好ましい(発明2)。
【0009】
上記発明(発明1,2)において、前記厚さdlが、1μm以上、30μm以下であることが好ましい(発明3)。
【0010】
上記発明(発明1~3)において、前記防眩性ハードコート層が、硬化性成分と、前記フィラーとを含有するコーティング組成物を硬化させてなるものであることが好ましい(発明4)。
【0011】
上記発明(発明4)において、前記コーティング組成物が、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一種を含有することが好ましい(発明5)。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る防眩性ハードコートフィルムは、フィラーを含有する防眩性ハードコート層を備え、且つ、フィラーの平均粒径と防眩性ハードコート層の厚さとの比が上記関係であることにより、優れた防眩性を発揮しながらも、白ムラの発生を良好に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムは、基材と、当該基材の一方の面側に設けられた防眩性ハードコート層とを備える。
【0014】
そして、上記防眩性ハードコート層は、フィラーを含有し、当該フィラーの平均粒径をdp(μm)とし、防眩性ハードコート層の厚さをdl(μm)とした場合、比dl/dpが、1.10以上、100以下となっている。
【0015】
本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムは、防眩性ハードコート層が上述した比dl/dpの条件を満たしてフィラーを含有することにより、優れた防眩性を発揮すると同時に、白ムラの発生を良好に抑制することができる。これらの効果をより発揮し易いという観点から、上記比dl/dpは、1.11以上であることが好ましく、特に1.12以上であることが好ましい。また、同様の観点から、上記比dl/dpは、50以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、特に5以下であることが好ましく、さらに2以下であることが好ましく、中でも1.5以下であることが好ましい。
【0016】
なお、本明細書におけるフィラーの平均粒径dp(μm)は、レーザー回折測定法によって一次粒径を測定したものである。
【0017】
1.防眩性ハードコートフィルムを構成する各部材
(1)基材
本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムを構成する基材としては、特に限定されないものの、所定の透明性を有する樹脂フィルムを使用することが好ましい。このような樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリウレタン樹脂フィルム、ノルボルネン系重合体フィルム、環状オレフィン系重合体フィルム、環状共役ジエン系重合体フィルム、ビニル脂環式炭化水素重合体フィルム等の樹脂フィルムまたはそれらの積層フィルムが挙げられる。中でも、機械的強度等の面から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ノルボルネン系重合体フィルム等が好ましく、防眩性ハードコート層との密着性の観点からトリアセチルセルロースフィルムが特に好ましい。
【0018】
また、上記基材においては、その表面に設けられる層(特に、防眩性ハードコート層)との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、プライマー処理、酸化法、凹凸化法等により表面処理を施すことができる。酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選ばれるが、一般には密着性向上の効果および操作性などの面から、コロナ放電処理法が好ましく用いられる。
【0019】
基材の厚さは、取り扱い性の観点から、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、表示体に適用した際の表面保護性や衝撃が加わった際に表示体への影響を和らげる観点から、40μm以上が好ましく、特に60μm以上が好ましく、さらには75μm以上であることが好ましい。また、基材の厚さは、250μm以下であることが好ましく、225μm以下であることがより好ましく、薄型化の観点からは、200μm以下であることが好ましく、中でも150μm以下が好ましく、さらには110μm以下が好ましく、90μm以下が最も好ましい。
【0020】
(2)防眩性ハードコート層
本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムを構成する防眩性ハードコート層は、フィラーを含有するとともに、前述した比dl/dpの条件を満たすものである限り、いかなる材料から形成されてもよい。
【0021】
防眩性ハードコート層の好適な材料の一例としては、硬化性成分(A)と、紫外線吸収剤(B)と、光安定剤(C)と、レベリング剤(D)と、上述したフィラー(以下、「フィラー(E)」という場合がある。)とを含有するコーティング組成物が挙げられる。そして、防眩性ハードコート層は、当該コーティング組成物を硬化させることで形成したものであることが好ましい。
【0022】
(2-1)硬化性成分(A)
硬化性成分(A)は、活性エネルギー線や熱等のトリガーによって硬化する成分であり、例えば、活性エネルギー線硬化性成分、熱硬化性成分等が挙げられる。本実施形態における防眩性ハードコート層では、形成される防眩性ハードコート層の硬度や、基材の耐熱性等の観点から、活性エネルギー線硬化性成分を使用することが好ましい。
【0023】
活性エネルギー線硬化性成分としては、活性エネルギー線の照射により硬化して所定の硬度を発揮し、配合する材料の分散性が良好で、前述した物性を達成できるものが好ましい。
【0024】
具体的な活性エネルギー線硬化性成分としては、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリレート系プレポリマー、活性エネルギー線硬化性ポリマー等が挙げられるが、中でも多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび/または(メタ)アクリレート系プレポリマーであることが好ましく、多官能性(メタ)アクリレート系モノマーであることがより好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび(メタ)アクリレート系プレポリマーは、それぞれ単独で使用してもよいし、両者を併用してもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0025】
多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
一方、(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等のプレポリマーが挙げられる。
【0027】
ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0028】
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。
【0029】
ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0030】
ポリオールアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0031】
以上のプレポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
活性エネルギー線硬化性成分として、有機無機ハイブリッド樹脂を使用することも好ましい。有機無機ハイブリッド樹脂としては、シリカなどの無機微粒子に、シランカップリング剤などを介して、重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる物質が好ましく挙げられる。なお、有機無機ハイブリッド樹脂が含有する無機微粒子は、後述する微粒子およびナノ粒子に該当するものではなく、バインダーとしての機能を有するもので、形成される防眩性ハードコート層の硬度を向上させることができる。
【0033】
(2-2)紫外線吸収剤(B)
紫外線吸収剤(B)は、防眩性ハードコート層に優れた耐光性を付与する観点から、コーティング組成物に含有させることが好ましい。
【0034】
紫外線吸収剤(B)の例としては、特に限定されず、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物、フェニルサリシレート系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。上記の中でも、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物またはベンゾトリアゾール系化合物が好ましく、特にトリアジン系化合物が好ましい。
【0035】
トリアジン系化合物の例としては、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2-[4,6-ジ(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-オクチルオキシフェノール等が挙げられる。
【0036】
ベンゾフェノン系化合物の例としては、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸水和物、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0037】
ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート等が挙げられる。
【0038】
コーティング組成物中における紫外線吸収剤(B)の含有量は、硬化性成分(A)100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、1~8質量部であることが好ましく、特に2~6質量部であることが好ましく、さらには3~4質量部であることが好ましい。これにより、得られる防眩性ハードコート層に、優れた耐光性を付与し易くなる。また、コーティング組成物の塗工性が良好になり、均一な膜厚の防眩性ハードコート層を形成することが容易となる。特に、ハードコート層に含まれる各材料の分散度合いが良好で、好適な塗工面を得やすいため、白ムラの発生の抑制に寄与するものとなる。
【0039】
(2-3)光安定剤(C)
光安定剤(C)についても、防眩性ハードコート層に優れた耐光性を付与する観点から、コーティング組成物に含有させることが好ましい。
【0040】
光安定剤(C)の例としては、特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤等が挙げられる。これらの光安定剤(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上述した光安定剤(C)の例の中でも、優れた耐光性を実現し易いという観点から、ヒンダードアミン系光安定剤を使用することが好ましい。ここで、ヒンダードアミンとは、アミノ基の両隣に置換基を有するアミンをいう。本実施形態におけるヒンダードアミン系光安定剤は、下記一般式(I)
【化1】

(式中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。)
からなる骨格を少なくとも1つ含む化合物であることが好ましい。
【0042】
本実施形態におけるヒンダードアミン系光安定剤は、上記一般式(I)におけるRが、アルキル基であることが好ましく、特に炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、さらにはメチル基であることが好ましい。すなわち、本実施形態におけるヒンダードアミン系化合物は、N-アルキル基骨格を有するものであることが好ましく、特にN-C~Cアルキル基骨格を有するものであることが好ましく、さらにはN-CH骨格を有するものであることが好ましい。
【0043】
本実施形態におけるヒンダードアミン系光安定剤は、上記一般式(I)からなる骨格を1個または2個以上有することが好ましく、1~10個有することがより好ましく、特に1~7個有することが好ましく、さらには1~4個有することが好ましく、1~2個有することが最も好ましい。上記一般式(I)からなる骨格は、ヒンダードアミン系光安定剤の末端に存在してもよいし、側鎖に存在してもよいし、末端および側鎖に存在してもよい。ヒンダードアミン系光安定剤が上記一般式(I)からなる骨格を1個または2個有する場合には、それらを側鎖に有することが好ましい。
【0044】
なお、ヒンダードアミン系光安定剤が上記一般式(I)からなる骨格を2個以上有する場合、各Rは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
本実施形態におけるヒンダードアミン系光安定剤は、上記一般式(I)からなる骨格における4位の炭素原子に、-COO-骨格の酸素原子が結合している化合物が好ましい。
【0046】
本実施形態におけるヒンダードアミン系光安定剤としては、下記構造式(A)
【化2】

(式中、nは1以上の整数である。)
で示される化合物、または下記構造式(B)
【化3】

(式中、mは1以上の整数である。)
で示される化合物であることが特に好ましい。
【0047】
上記構造式(B)で示される化合物におけるmは、1~20であることが好ましく、特に3~15であることが好ましく、さらには5~10であることが好ましい。上記式中、Rは、アルキル基であることが好ましく、特に炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、さらにはメチル基であることが好ましい。
【0048】
上記構造式(A)で示される化合物および上記構造式(B)で示される化合物は、それぞれ単独で使用することもできるが、混合して使用することが好ましい。
【0049】
コーティング組成物中における光安定剤(C)の含有量は、硬化性成分(A)100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、1~7質量部であることが好ましく、特に2~5質量部であることが好ましい。これにより、本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムが優れた耐光性を有し易いものとなる。また、コーティング組成物の塗工性が良好になり、均一な膜厚の防眩性ハードコート層を形成することが容易となる。特に、ハードコート層に含まれる各材料の分散度合いが良好で、好適な塗工面を得やすいため、白ムラの発生の抑制に寄与するものとなる。
【0050】
(2-4)レベリング剤(D)
コーティング組成物は、スジ状の欠点やムラ等がなく、均一な膜厚を有する防眩性ハードコート層を形成し易いという観点およびフィラー(E)の分散性の観点から、レベリング剤(D)を含有することが好ましい。
【0051】
レベリング剤(D)の例としては、特に限定されず、例えば、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤等が挙げられる。これらの中でも、フッ素系レベリング剤が好ましい。なお、レベリング剤(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
フッ素系レベリング剤としては、パーフルオロアルキル基またはフッ素化アルケニル基を主鎖または側鎖に有する化合物であることが好ましい。フッ素系レベリング剤の市販品の例としては、ネオス社製の製品名「フタージェント602A」、「フタージェント650A」、ビックケミージャパン社製の製品名「BYK-340」、DIC社製の製品名「メガファックRS-75」、大阪有機化学工業社製の製品名「V-8FM」等が挙げられる。
【0053】
コーティング組成物中におけるレベリング剤(D)の含有量は、硬化性成分(A)100質量部に対して、0.001~1質量部であることが好ましく、特に0.01~0.2質量部であることがより好ましく、特に0.02~0.1質量部であることが好ましく、さらには0.04~0.07質量部であることが好ましい。これにより、均一な膜厚を有する防眩性ハードコート層を形成し易いものとなる。特に、ハードコート層に含まれる各材料の分散度合いが良好で、好適な塗工面を得やすいため、白ムラの発生の抑制に寄与するものとなる。
【0054】
(2-5)フィラー(E)
本実施形態におけるフィラー(E)は、有機系フィラーであってもよいし、無機系フィラーであってもよいし、無機および有機の性質を兼ね備える樹脂フィラーであってもよい。良好な分散性、塗工の安定性、所望の光学物性、良好な外観等を発現し易くなる観点から、フィラー(E)としては、有機フィラー、または、無機および有機の性質を兼ね備える樹脂フィラーが好ましく、光学物性を所望の範囲に調整し易くなる観点から、無機および有機の性質を兼ね備える樹脂フィラーが好ましい。
【0055】
有機系フィラーとしては、例えば、アクリル系樹脂フィラー(例えば、ポリメタクリル酸メチルフィラー等)、メラミン系樹脂フィラー、アクリル-スチレン系共重合体フィラー、ポリカーボネート系フィラー、ポリエチレン系フィラー、ポリスチレン系フィラー、ベンゾグアナミン系樹脂フィラーなどが挙げられる。それらの樹脂は、架橋されていてもよい。上記の中でも、アクリル系樹脂フィラーが好ましい。特に、アクリル系樹脂フィラーとしては、ポリメタクリル酸メチルフィラーが好ましく、さらには架橋ポリメタクリル酸メチルフィラーが好ましい。
【0056】
無機系フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなるフィラーが挙げられる。
【0057】
無機および有機の性質を兼ね備える樹脂フィラーとしては、シリコーンフィラー(例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のトスパールシリーズ)が特に好ましい。
【0058】
なお、以上のフィラー(E)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
フィラー(E)は、所望の表面修飾を受けたものであってもよい。また、フィラーの形状は、球状等の定形であってもよく、形状が特定されない不定形であってもよいが、白ムラを抑制し易くなる観点から、定形であることが好ましく、球状であることがより好ましく、特に真球状であることが好ましい。
【0060】
フィラー(E)の平均粒径dpは、前述した比dl/dpの条件を満たし易くなるという観点から、0.5~20μmであることが好ましく、1~15μmであることがより好ましく、特に2~10μmであることが好ましく、さらには3~8μmであることが好ましく、中でも4~6μmであることが好ましい。
【0061】
フィラー(E)の屈折率は、1.2~1.6であることが好ましく、1.3~1.55であることがより好ましく、特に1.4~1.5であることが好ましく、さらには1.42~1.45であることが好ましい。これにより、得られる防眩性ハードコートフィルムがより優れた防眩性を有するものとなるとともに、白ムラを抑制し易い防眩性ハードコート層を得やすい。
【0062】
コーティング組成物中におけるフィラー(E)の含有量は、硬化性成分(A)100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.3~15質量部であることがより好ましく、特に0.5~10質量部であることが好ましく、さらには0.7~5量部であることが好ましく、中でも0.9~3質量部であることが好ましい。これにより、均一な膜厚を有する防眩性ハードコート層を形成し易いものとなる。特に、ハードコート層に含まれる各材料の分散度合いが良好で、好適な塗工面を得やすいため、白ムラの発生の抑制に寄与するものとなる。
【0063】
(2-6)その他の成分
本実施形態におけるコーティング組成物は、上記の成分以外に、各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、分散剤、表面調整剤、光重合開始剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、有機系充填材、濡れ性改良剤、塗面改良剤等が挙げられる。
【0064】
中でも、前述した成分の分散性を良好にする観点から、コーティング組成物は、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、例えば、分子内にカルボキシ基、水酸基、スルホ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミド基、第4級アンモニウム塩基、ピリジウム塩基、スルホニウム塩基およびホスホニウム塩基からなる群から選ばれる1種または2種以上の極性基を有する化合物が好ましく、特に、カルボキシ基および水酸基の1種または2種以上の極性基を有する化合物が好ましい。上記の極性基は、分子内に1つ導入されていてもよく、複数導入されていてもよい。分散剤としての化合物が複数の極性基を有する場合、当該化合物の基本骨格は、エステル連鎖、ビニル連鎖、アクリル連鎖、エーテル連鎖、ウレタン連鎖等で構成されるものが好ましい。具体的には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂およびアルキド樹脂が好ましく、特にアクリル樹脂、ウレタン樹脂およびポリエステル樹脂が好ましく、さらにはアクリル樹脂が好ましい。上記極性基は、分子中にランダムに配置されていてもよいが、側鎖に配置されていることが好ましい。したがって、分散剤としての化合物は、側鎖にカルボキシ基および/または水酸基を有するアクリル樹脂が好ましい。なお、分散剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
コーティング組成物中における分散剤の含有量は、硬化性成分(A)100質量部に対して、0.01~2質量部であることが好ましく、0.05~1質量部であることがより好ましく、特に0.1~0.5質量部であることが好ましく、さらには0.2~0.3質量部であることが好ましい。これにより、コーティング組成物中に含まれる成分を良好に分散させ易いものとなり、得られる防眩性ハードコート層が優れた光学物性および好適な塗工面を得やすいため、白ムラの発生の抑制に寄与するものとなる。また、均一な膜厚を有する防眩性ハードコート層を形成し易いものとなる。
【0066】
(2-7)防眩性ハードコート層の厚さ
防眩性ハードコート層の厚さdlは、前述した比dl/dpの条件を満たし易くなるという観点から、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、特に4μm以上であることが好ましく、さらには4.8μm以上であることが好ましく、中でも5.0μm以上であることが好ましい。また、同様の観点から、防眩性ハードコート層の厚さは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、長期間にわたって光に曝された場合であっても防眩性ハードコートフィルムを構成する層の剥離が抑制されたり、防眩性ハードコート層の色味の変化が生じ難くなる観点からは、10μm以下であることが好ましく、特に8μm以下であることが好ましく、さらには7μm以下であることが好ましい。
【0067】
(3)その他の構成
本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムは、基材および防眩性ハードコート層以外の層を備えていてもよい。例えば、基材における防眩性ハードコート層とは反対の面側に、粘着剤層を備えていてもよい。特に、完成済みの表示体の表示面に対して、本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムを積層する場合には、粘着剤層を備えていることにより、防眩性ハードコートフィルムが表示面に対して良好に密着し易いものとなる。
【0068】
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては特に限定されず、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤など公知の粘着剤を使用することができる。また、上記粘着剤としては、所定の透明性を有する粘着剤を使用することが好ましい。
【0069】
本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムが上述した粘着剤層を備える場合には、当該粘着剤層における基材とは反対側の面に、さらに剥離シートが積層されることも好ましい。これにより、粘着剤層の粘着面(粘着剤層における基材とは反対の面)が被着体に貼付されるまでの間、当該粘着面を剥離シートによって保護することが可能となる。剥離シートは、その剥離面(粘着剤層と接する面)において所望の剥離性を有するものであれば特に限定されず、樹脂フィルムの片面が剥離剤によって剥離処理されたものなどの公知の剥離シートを使用することができる。
【0070】
2.防眩性ハードコートフィルムの物性
(1)密着性
本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムに対してJIS B7751:2007に準拠した紫外線カーボンアーク灯式の耐光性試験を400時間実施した後、JIS K5600-5-6に準じて、防眩性ハードコート層に対し、カッターナイフで縦横1mm角の碁盤目を100マス形成し、次いで、23℃、50%RHの環境下で、スキージを用いて粘着テープを上記碁盤目に貼付して30秒後、粘着テープを90°方向に剥離した場合において、基材から分離することなく、基材に残った防眩性ハードコート層の碁盤目の個数が90個以上であることが好ましく、特に95個以上であることがより好ましく、さらには99個以上であることが好ましく、100個が最も好ましい。上記個数を満たすことにより、得られる防眩性ハードコートフィルムは優れた層間密着性を発揮し、特に耐光性に優れるものとなる。なお、上記密着性の詳細な試験方法は、後述する試験例に記載の通りである。
【0071】
(2)鉛筆硬度
本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムでは、防眩性ハードコート層側の面について、JIS K5600-5-4:1999に準じて測定される、鉛筆法による引っかき硬度(鉛筆硬度)が、H以上であることが好ましく、特に2H以上であることが好ましく、さらには3H以上であることが好ましい。一方、当該鉛筆硬度は、9H以下であることが好ましく、8H以下であることがより好ましく、特に7H以下であることが好ましく、さらには6H以下であることが好ましく、中でも5H以下であることが好ましく、4H以下であることが最も好ましい。本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムが、このような鉛筆硬度を有することで、所望の硬度・耐擦傷性を発揮し易いものとなり、表示体の表面において使用された際に、優れた表面保護性を発揮し、特に表面が傷つきにくくなるため、表示体の美観を良好に保持し易いものとなる。
【0072】
なお、上記鉛筆硬度の詳細な測定方法は、次の通り測定することができる。まず、防眩性ハードコートフィルムにおける、防眩性ハードコート層側の面について、JIS K5600-5-4に準じ、鉛筆引っかき硬度試験機(安田精機製作所社製,製品名「No.553-M」)を使用し、鉛筆として三菱鉛筆社製の製品名「UNI」を使用し、45°の角度で測定面に鉛筆を接触させ、750gの荷重を印加して、7mm以上走行させる。鉛筆の硬度を変えながら、1種類の鉛筆について試験を5回繰り返し、防眩性ハードコート層側の面に傷が生じなかった回数が3回以上となった鉛筆を特定し、それらのうち最も高い硬度を特定する。これにより、当該硬度として、上述した鉛筆硬度を特定することができる。
【0073】
(3)耐擦傷性
本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムでは、防眩性ハードコート層側の面について、JIS K5600-5-10に準じて、#0000のスチールウールを用いて、250g/cmの荷重で10cm、10往復擦った後、当該表面に傷が生じないことが好ましい。これにより、表示体の表面において使用された際に、優れた表面保護性を発揮し、特に表面は傷つきにくいため表示体の美観が良好に保持される。
【0074】
3.防眩性ハードコートフィルムの製造方法
本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムの製造方法は特に制限されず、例えば、前述したコーティング組成物と、所望により溶剤とを含有する塗工液を基材に対して塗布し、硬化させて防眩性ハードコート層を形成することにより製造することができる。
【0075】
上記溶剤は、塗工性の改良、粘度調整、固形分濃度の調整等のために使用することができ、硬化性成分等が溶解するものであれば、特に限定なく使用できる。
【0076】
上記溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類などが挙げられる。
【0077】
コーティング組成物の塗工液の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法によって行えばよい。コーティング組成物の塗工液を塗布したら、塗膜を40~120℃で30秒~5分程度乾燥させることが好ましい。
【0078】
コーティング組成物が活性エネルギー線硬化性を有する場合、コーティング組成物の硬化は、窒素雰囲気下において、コーティング組成物の塗膜に対して紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することによって行う。紫外線照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度50~1000mW/cm、光量50~1000mJ/cm程度が好ましい。一方、電子線照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
【0079】
4.防眩性ハードコートフィルムの使用方法
本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムは、表示体を構成する部材として使用することができる。特に、本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムは、表示体の表示面における最表面を構成する部材として使用することが好ましい。この場合、本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムは、表示体の製造時において、表示体の最表面の部材としてその他の部材に積層されて表示体に組み込まれるものであってもよい。あるいは、本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムは、完成済みの表示体の表示面に積層されるものであってもよい。本実施形態に係る防眩性ハードコートフィルムを表示体に積層する場合には、防眩性ハードコートフィルムにおける基材側の面とその他の部材とを、粘着剤層等を用いて密着させてもよい。
【0080】
上記表示体の例としては、所望の画像や映像を表示可能であるものであれば特に限定されず、例えば、液晶(LCD)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられる。また、上記表示体は、これらのディスプレイや電子ペーパーが組み込まれたタッチパネルであってもよい。
【0081】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0082】
例えば、基材と防眩性ハードコート層との間、または基材における防眩性ハードコート層とは反対側の面には、その他の層が設けられてもよい。
【0083】
なお、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0084】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0085】
〔実施例1〕
(1)コーティング組成物の調製
硬化性成分(A)としての有機無機ハイブリッド樹脂(荒川化学工業社製,製品名「オプスターZ7530」,平均粒径50nmのシリカ微粒子(CV値:28%)にアクリロイル基を結合させてなる物質と多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとの混合品)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、紫外線吸収剤(B)としてのトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製,製品名「チヌビン400」)3.5質量部と、光安定剤(C)としてのヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン社製,製品名「チヌビン292」)2.7質量部と、レベリング剤(D)としてのフッ素系レベリング剤(ネオス社製,製品名「フタージェント602A」)0.05質量部と、フィラー(E)としてのシリコーンフィラー(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール145L」,真球状,平均粒径:4.5μm,屈折率:1.43)1.1質量部と、分散剤としてのカルボキシル基含有ポリマー変性物(共栄社化学社製,製品名「フローレン G700」)0.27質量部とを、プロピレングリコールモノメチルエーテル中で混合することで、コーティング組成物の塗工液を調製した。
【0086】
(2)防眩性ハードコート層の形成
基材としてのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ社製,製品名「コニカタックKC8UAW」,厚さ80μm)の片面に、上記工程(1)で得られたコーティング組成物の塗工液を塗工し、70℃で1分間乾燥させた。
【0087】
次いで、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製,製品名「アイグランテージECS-401GX型」)により下記の条件で紫外線を照射して、防眩性ハードコート層を形成した。これにより、基材と防眩性ハードコート層とからなる防眩性ハードコートフィルムを得た。
[紫外線照射条件]
・光源:高圧水銀灯
・ランプ電力:2kW
・コンベアスピード:4.23m/min
・照度:240mW/cm
・光量:307mJ/cm
【0088】
得られた防眩性ハードコートフィルムにおける防眩性ハードコート層の厚さを、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定したところ、5.02μmであった。また、フィラー(E)の平均粒径dp(=4.5μm)と、防眩性ハードコート層の厚さdl(=5.02μm)との比dl/dpを算出したところ、1.12であった。
【0089】
〔実施例2~6,比較例1~3〕
紫外線吸収剤(B)および光安定剤(C)の使用量、並びに、防眩性ハードコート層の厚さを、表1に記載の通り変更した以外、実施例1と同様にして防眩性ハードコートフィルムを得た。なお、表1には、それぞれの防眩性ハードコートフィルムにおける防眩性ハードコート層の厚さ(μm)、および、防眩性ハードコートフィルムにおける比dl/dpも記載した。
【0090】
〔試験例1〕(鉛筆硬度の測定)
実施例および比較例で製造した防眩性ハードコートフィルムにおける耐光性向上層側の面について、JIS K5600-5-4に準じ、鉛筆硬度を測定した。測定には、鉛筆引っかき硬度試験機(安田精機製作所社製,製品名「No.553-M」)を使用し、鉛筆として三菱鉛筆社製の製品名「UNI」を使用し、45°の角度で測定面に鉛筆を接触させ、750gの荷重を印加して、7mm以上走行させた。鉛筆の硬度を変えながら、1種類の鉛筆について試験を5回繰り返し、防眩性ハードコート層側の面に傷が生じなかった回数が3回以上となった鉛筆を特定し、それらのうち最も高い硬度を、鉛筆硬度とした。結果を表1に示す。
【0091】
〔試験例2〕(耐擦傷性の評価)
実施例および比較例で製造した防眩性ハードコートフィルムにおける防眩性ハードコート層側の面について、JIS K5600-5-10に準じて、#0000のスチールウールを用いて、250g/cmの荷重で10cm、10往復擦った後、当該表面に生じた傷の本数を数え、以下の基準で耐擦傷性を評価した。結果を表1に示す。
○:傷の本数が、0本であった。
×:傷の本数が、1本以上であった。
【0092】
〔試験例3〕(密着性の評価)
実施例および比較例で作製した防眩性ハードコートフィルムにおける防眩性ハードコート層側の面に対し、スガ試験機株式会社製の製品名「紫外線フェードメーターU48」を用いて、JIS B7751-2007に準じ、紫外線を400時間照射した。
【0093】
その後、JIS K5600-5-6に準じて、防眩性ハードコート層に対し、カッターナイフで縦横1mm角の碁盤目を100マス形成した。次いで、23℃、50%RHの環境下で、スキージを用いて粘着テープ(ニチバン社製セロハンテープ)を上記碁盤目に貼付した。貼付して30秒後、粘着テープを90°方向に剥離した。そして、基材から分離することなく、基材に残った防眩性ハードコート層の碁盤目の個数をカウントした。結果を表1に示す。
【0094】
〔試験例4〕(白ムラの評価)
実施例および比較例で作製した防眩性ハードコートフィルムにおける基材側の面に対し、黒色テープを貼合した。そして、防眩性ハードコート層側の面を白色光で照らし、その反射光を目視することにより、防眩性ハードコートフィルムにおける白ムラの発生の有無を確認した。結果の表1に示す。
【0095】
〔試験例5〕(防眩性の評価)
実施例および比較例で作製した防眩性ハードコートフィルムにおける基材側の面と、黒板とを、粘着剤を用いて貼り合わせて、測定用サンプルを得た。当該測定用サンプルについて、その防眩性ハードコート層側の面の上方で3波長蛍光灯を点灯させ、その光を当該面で反射させた。反射光を目視して、以下の基準で防眩性を評価した。結果を表1に示す。
◎:防眩性ハードコートフィルムでの反射により視認される蛍光灯の輪郭がぼやけた。
〇:防眩性ハードコートフィルムでの反射により視認される蛍光灯の輪郭が少しぼやけた。
△:防眩性ハードコートフィルムでの反射により視認される蛍光灯の輪郭がわずかにぼやけた。
×:防眩性ハードコートフィルムでの反射により視認される蛍光灯の輪郭が全くぼやけなかった。
【0096】
【表1】
【0097】
表1から分かるように、実施例で得られた防眩性ハードコートフィルムは、白ムラの発生を良好に抑制することができた。また、実施例1~4で得られた防眩性ハードコートフィルムについては、紫外線を長時間照射した後における基材と防眩性ハードコート層との間における密着性(耐光性)にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、表示体を構成する部材として好適に用いることができる。