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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116782
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20240821BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B60H1/34 671B
B60H1/00 101Q
B60H1/34 651
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022586
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】水野 多香子
(72)【発明者】
【氏名】池尾 真彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 真範
(72)【発明者】
【氏名】赤井 紀亮
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA02
3L211BA08
3L211BA34
3L211CA07
3L211EA02
3L211EA03
3L211EA16
3L211EA28
3L211FB05
3L211GA11
3L211GA82
(57)【要約】
【課題】効果的に集中空調を行うことができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置11の演算制御部16は、乗員検知部14の出力に基づき、第2シート122に乗員20が存在していないと判断すれば、第1吹出部181から、第1温度Tp1に空調された第1空調風171を車室22内に吹き出す。更に、演算制御部16は、第2吹出部182から、空調効果が大きくなるように設定された第2温度Tp2に空調された第2空調風172を、車室22に吹き出す。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、空調部と、乗員検知部と、空調風吹出部と、演算制御部と、を具備し、
前記シートは、第1シートと、第2シートと、を有し、
前記空調部は、車室に供給される空気を調和することにより、第1空調風および第2空調風を生成し、
前記乗員検知部は、前記第2シートに乗員が存在しているか否かを検知し、
前記空調風吹出部は、前記第1シートの近傍に配設されて前記第1空調風が前記車室に吹き出される第1吹出部と、前記第2シートの近傍に配設されて前記第2空調風が前記車室に吹き出される第2吹出部と、を有し、
前記演算制御部は、
前記乗員検知部の出力に基づき、前記第2シートに前記乗員が存在していないと判断すれば、
前記第1吹出部から、第1温度に空調された前記第1空調風を前記車室内に吹き出し、
前記第2吹出部から、空調効果が大きくなるように設定された第2温度に空調された前記第2空調風を、前記車室に吹き出すことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記演算制御部は、前記車室を冷房する場合、
前記第2空調風の前記第2温度を、前記第1空調風の前記第1温度以下とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記演算制御部は、前記車室を暖房する場合、
前記第2空調風の前記第2温度を、前記第1空調風の前記第1温度以上とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記第1シートは、運転席であり、
前記第2シートは、助手席であり、
前記演算制御部は、
前記第1温度と前記第2温度とを個別に設定し、前記第1空調風および前記第2空調風を送風することで、前記運転席の周辺部と前記助手席の周辺部とを異なる温度に空調する第1モードと、
前記助手席に前記乗員が存在しない際に、前記第1空調風を送風すると共に、前記第1モードよりも前記第2空調風を弱く送風する第2モードと、を実行し、
前記第1モードから前記第2モードに移行する際に、前記第2空調風の前記第2温度を、前記空調効果が大きくなる温度に変更することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記車室の空調状態を表示する表示部を更に具備し、
前記演算制御部は、前記第2温度を変更した際に、当該変更の旨を表示しないことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用の空調装置として、運転席側に運転席側空調風を送風し、助手席側に助手席側空調風を送風し、運転席側空調風と助手席側空調風との温度を相違させる発明が存在する。係る発明は、例えば、非特許文献1に記載されている。係る発明によれば、運転席側空調風と助手席側空調風とを個別に設定することができるので、運転者と助手席側搭乗者との体感温度が異なる場合であっても、両者が適切にエアコンを設定することで、両者共に快適性を確保できる。
【0003】
また、車両に運転者のみが搭乗する際に、運転席近傍のみを集中的に空調する発明が登場している。係る発明は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された発明は、先ず、運転席のみに乗員が在席していると判定する。次に、暖房運転判定手段において暖房条件が成立したと判定された場合に、独立したエアミックスドアから成る吹出温度調整機構を制御し、助手席側の吹出温度を運転席側の吹出温度よりも低くするように制御する。このようにすることで、助手席等の運転席以外の箇所は、運転者のために使用する車両用空調装置の放熱量よりも小さい放熱量となるようにすることが出来る。更に、運転者を優先的に暖房しながら、車両全体の暖房熱量を低減し、車両の燃費向上を実現させることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-1200号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社SUBARU、LEGACY、OUTBACK取扱説明書、488頁、エアコン、表示とスイッチ、2022年9月31日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した各特許文献等に記載された発明では、より効果的に且つ集中的に空調を行う観点から改善の余地があった。
【0007】
具体的には、非特許文献1に記載された発明において集中的に空調を行う場合、運転席側空調風のみで実現しようとすると、運転席の近傍を必ずしも充分に空調できない課題がある。係る課題を解決するべく、集中的な空調を行う際に、補助的に助手席側空調風を送風することも考えられる。しかしながら、運転席側空調風と助手席側空調風とでは設定温度が異なることがあるため、単に助手席側空調風を送風するのみでは、集中的な空調の効率化を図ることは難しい。むしろ、単に助手席側空調風を送風するのみでは、エネルギの損失が大きくなる課題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、効果的に集中空調を行うことができる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用空調装置は、シートと、空調部と、乗員検知部と、空調風吹出部と、演算制御部と、を具備し、前記シートは、第1シートと、第2シートと、を有し、前記空調部は、車室に供給される空気を調和することにより、第1空調風および第2空調風を生成し、前記乗員検知部は、前記第2シートに乗員が存在しているか否かを検知し、前記空調風吹出部は、前記第1シートの近傍に配設されて前記第1空調風が前記車室に吹き出される第1吹出部と、前記第2シートの近傍に配設されて前記第2空調風が前記車室に吹き出される第2吹出部と、を有し、前記演算制御部は、前記乗員検知部の出力に基づき、前記第2シートに前記乗員が存在していないと判断すれば、前記第1吹出部から、第1温度に空調された前記第1空調風を前記車室内に吹き出し、前記第2吹出部から、空調効果が大きくなるように設定された第2温度に空調された前記第2空調風を、前記車室に吹き出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用空調装置によれば、乗員が搭乗するシートの近傍のみを効果的に空調できる。具体的には、本発明では、第2シートに乗員が存在しない場合、先ず、第1シートの近傍に配設された第1吹出部から第1空調風を車室内に吹き出す。更に、第2吹出部から、空調効果が大きい第2空調風を車室内に吹き出す。このようにすることで、車室内において第1シートの近傍を集中的に空調でき、第1シートに搭乗する乗員の快適性を向上させ、且つ、空調に要するエネルギを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置を備えた車両を示す上面図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の構成を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の運転を示す図であり、全席空調モードを示す上面図である。
図4】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の運転を示す図であり、前席空調モードを示す上面図である。
図5】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の運転を示す図であり、集中空調モードを示す上面図である。
図6】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の運転を示す図であり、運転席空調モードを示す上面図である。
図7】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の集中空調モードを示すフローチャートである。
図8】本発明の他形態に係る車両用空調装置の集中空調モードを示すフローチャートである。
図9A】本発明の実施形態に係る車両用空調装置における表示部の表示形態を示す図である。
図9B】本発明の実施形態に係る車両用空調装置における表示部の表示形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る車両用空調装置11および車両10を図面に基づき詳細に説明する。以下の説明に於いては前後上下左右の各方向を用いるが、左右とは車両10を後方から見た場合の左右である。更に、以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、以下の説明では、運転席121Aが左側に配置された場合を例示するが、各国の法令に応じて運転席121Aが右側に配置された場合に対しても、本実施形態を適用できる。更に、以下の説明において、第1温度Tp1および第2温度Tp2は、夫々、設定温度である。
【0013】
図1は、車両用空調装置11を備えた車両10を示す上面図である。図1には、運転席121Aのみに乗員20が着座し、助手席122Aには乗員20が着座しない場合を示す。本実施形態では、存在の一形態が着座である。
【0014】
車両用空調装置11は、シート12と、空調部13と、乗員検知部14と、空調風吹出部18と、演算制御部16と、を主要に具備する。車両用空調装置11は、後述するように、乗員20が車両10に搭乗する状況に基づき、車室22の快適性を確保すると共に消費エネルギを低減するように構成される。
【0015】
車両10は、例えば、エンジン車、EV(Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等である。
【0016】
シート12は、第1シート121と、第2シート122と、を有する。第1シート121は、例えば、運転席121Aであり、車室22の内部において前側左方に配設される。第2シート122は、例えば、助手席122Aであり、車室22の内部において前側右方に配設される。更に、シート12は、後部座席123および後部座席124を有する。
【0017】
空調部13は、車室22に供給される空気を調和することにより、後述する、第1空調風171および第2空調風172を生成する。空調部13の具体構成は、図2を参照して後述する。
【0018】
乗員検知部14は、運転席121Aおよび助手席122Aに乗員20が着座(存在)しているか否かを検知する。乗員検知部14は、少なくとも助手席検知部141を有する。助手席検知部141は、助手席122Aに乗員20が着座等して存在しているか否かを検知するセンサである。また、乗員検知部14は、後部座席123および後部座席124にも設置される。乗員検知部14としては、例えば、シート12を下方から支持する支持部の歪量を検知する歪センサを採用できる。また、乗員検知部14としては、車室22の内部で、各シート12に着座した乗員20を撮影するカメラ等の撮像手段も採用できる。更にまた、乗員検知部14としては、シートベルトの装着状況を検知するセンサ、ドアの開閉を検知するセンサ、調温操作履歴に基づく判断等を採用できる。
【0019】
空調風吹出部18は、車室22の内部に、空調部13により調和された空調風を吹き出すための、空洞または開口である。空調風吹出部18は、第1吹出部181と、第2吹出部182と、を有する。一例として、第1吹出部181は運転席側吹出部181Aであり、第2吹出部182は助手席側吹出部182Aである。運転席側吹出部181Aは、運転席121Aの前方側に2つが配設され、後述する第1空調風171が車室22に吹き出される。助手席側吹出部182Aは、助手席122Aの前方側に2つが配設され、後述する第2空調風172が車室22に吹き出される。更に、空調風吹出部18は、第3吹出部183としての後部席側吹出部183Aを有する。後部席側吹出部183Aは、後部座席123および後部座席124の前方側であって、左右方向の中央部に配置される。後部席側吹出部183Aからは、空調部13により空調された空調風が、後部座席123および後部座席124に向かって吹き出される。
【0020】
演算制御部16は、例えば、CPU等を含む半導体素子である。演算制御部16は、後述するように、乗員20の着座状況に基づき、車両用空調装置11の運転を変化させることで、運転席121Aの周囲のみを効果的に集中的に空調する。係る事項は、後述する。ここで、空調とは、暖房および冷房を含むものであり、調温と称されることもある。
【0021】
図2は、車両用空調装置11の構成を示す模式図である。図2では、車両用空調装置11の内部における空気の流れを矢印で示す。係る事項は他の図でも同様である。
【0022】
車両用空調装置11は、空調部13と、空調部13の空調動作を制御する演算制御部16と、を主要に有する。車両用空調装置11は、車外または車室22から導入した空気を調温し、調温された空調風17を車室22に吹き出すことにより、車室22を空調する構成機器である。また、空調部13の各構成機器の動作は、演算制御部16により制御される。
【0023】
空調部13は、空調部ダクト13Bを有し、空調部ダクト13Bの内部に空調部13を構成する各構成機器が配設される。空調部ダクト13Bは、合成樹脂等から成る導管状の部材であり、空調風17の流れにおける最上流側に空気取入口13Aを有し、最下流側は、前述したダクト21に接続される。
【0024】
空調部ダクト13Bの内部には、空調風17の流れにおける上流側から、空気取入口13A、ブロア13C、冷房用熱交換器13D、ダンパ13E、ダンパ13F、暖房用熱交換器13G、隔壁13H、ダンパ13I、ダンパ13J等を有する。
【0025】
ブロア13Cは、図示しないモータの駆動力により回転し、空調風17を送風する。ブロア13Cの回転数を制御することで、空調風17の風量を調整できる。
【0026】
冷房用熱交換器13Dは、空調部ダクト13Bの内部を流通する空気を冷却する機器であり、例えば、冷凍サイクルにおける蒸発器である。冷房用熱交換器13Dとしては、蒸発器以外の機器を採用することも可能であり、例えば、ペルチェ素子等を採用できる。
【0027】
暖房用熱交換器13Gは、空調部ダクト13Bの内部を流通する空気を昇温する機器である。暖房用熱交換器13Gとしては、例えば、エンジンの冷却水と熱交換することで空調風17を昇温するヒートコアを採用できる。ここで、暖房用熱交換器13Gとしては、ヒートコア以外の機器を採用することもでき、例えば、冷凍サイクルの凝縮器やペルチェ素子等を採用できる。
【0028】
隔壁13Hは、暖房用熱交換器13Gの下流側において、空調部ダクト13Bの内部空間を区画する板状の部材である。隔壁13Hにより、暖房用熱交換器13Gよりも下流側における風路を、運転席側ダクト21Aの側(紙面における上側部分)と、助手席側ダクト21Bの側(紙面における下側部分)と、に区画できる。
【0029】
ダクト21は、空調部ダクト13Bの下流側端部に接続して空調風17を導く導管であり、運転席側ダクト21Aと、助手席側ダクト21Bと、を有する。また、ダクト21は、デフロスタ吹出口に繋がるダクト、および、乗員の足下に配置された吹出口に繋がるダクトも含む。
【0030】
運転席側ダクト21Aは、空調部13の空調部ダクト13Bと、運転席側吹出部181Aとを接続する導管である。
【0031】
助手席側ダクト21Bは、空調部13の空調部ダクト13Bと、助手席側吹出部182Aとを接続する導管である。
【0032】
運転席側吹出部181Aは、車室22に形成された開口であり、第1温度Tp1に空調された第1空調風171が、車室22に吹き出される。
【0033】
助手席側吹出部182Aは、車室22に形成された開口であり、第2温度Tp2に空調された第2空調風172が、車室22に吹き出される。
【0034】
ダンパ13Eは、運転席側ダクト21Aの上流側に配置され、暖房用熱交換器13Gの近傍に設置された板状の部材であり、演算制御部16により制御されるモータにより開閉される。ダンパ13Eの開度を調整することにより、暖房用熱交換器13Gを通過する空気の割合を変化させ、第1吹出部181から吹き出される第1空調風171の温度を調整できる。
【0035】
ダンパ13Fは、助手席側ダクト21Bの上流側に配置され、暖房用熱交換器13Gの近傍に設置された板状の部材であり、演算制御部16により制御されるモータにより開閉される。ダンパ13Fの開度を調整することにより、暖房用熱交換器13Gを通過する空気の割合を変化させ、第2吹出部182から吹き出される第2空調風172の温度を調整できる。
【0036】
ダンパ13Iは、空調部ダクト13Bと運転席側ダクト21Aとの境界近傍に配置された板状の部材であり、演算制御部16により制御されるモータにより開閉される。ダンパ13Iの開度を調整することにより、第1吹出部181から吹き出される第1空調風171の風量を調整できる。
【0037】
ダンパ13Jは、空調部ダクト13Bと助手席側ダクト21Bとの境界近傍に配置された板状の部材であり、演算制御部16により制御されるモータにより開閉される。ダンパ13Jの開度を調整することにより、第2吹出部182から吹き出される第2空調風172の風量を調整できる。
【0038】
演算制御部16は、前述したように、CPU等を有する演算手段である。演算制御部16は、ECUまたは空調用ECUとも称される。演算制御部16は、入力用端子と、出力用端子とを有する。演算制御部16の入力側端子には、車外環境検知部19等が接続される。演算制御部16の出力側端子には、空調部13等が接続される。演算制御部16は、ここでは図示しない半導体メモリ等から成る記憶部から、所定のプログラムを読み込み、車外環境検知部19等から入力された情報等に基づき、所定の演算処理を行い、空調部13等を制御するための電気信号を出力する。演算制御部16による空調部13の具体的な制御は後述する。
【0039】
車外環境検知部19は、日射センサ191および外気温センサ192を有する。
【0040】
日射センサ191は、車外において太陽からの日射を計測し、その日射の大きさを示す信号を演算制御部16に伝送する。
【0041】
外気温センサ192は、車外の気温を計測し、その気温の高さを示す信号を演算制御部16に伝送する。
【0042】
室温センサ24は、車室22の温度を計測し、その温度の高さを示す信号を演算制御部16に伝送する。
【0043】
操作スイッチ23は、車両10のダッシュボードおよびその近傍に配置され、乗員20が操作することにより、演算制御部16に対して指示を与えるスイッチである。操作スイッチ23は、運転席121A近傍と助手席122A近傍とを個別に温度設定できる機能を有する。
【0044】
助手席検知部141は、前述した通りであり、助手席122Aに乗員20が搭乗しているか否かを検知し、その検知結果を示す信号を演算制御部16に伝送する。
【0045】
車速センサ15は、車両10の走行時における車速を示す信号を、演算制御部16に伝送する。
【0046】
表示部25は、車両10のダッシュボードまたはその近傍等に配設された液晶パネル等から成り、第1温度Tp1および第2温度Tp2等の、空調に関する情報を表示する。
【0047】
空調部13の空調動作を説明する。操作スイッチ23の操作等に基づいて、前述した車室22を空調する際には、先ず、ブロア13Cが回転することにより、空調風17を発生させる。空気取入口13Aからは、車外または車室22からの空気が導入される。導入された空気は、冷房用熱交換器13Dまたは暖房用熱交換器13Gにより空調される。空調部13が冷房を行う場合は、冷房用熱交換器13Dにより空気は冷却される。空調部13が暖房を行う場合は、暖房用熱交換器13Gにより空気は昇温される。空調された第1空調風171は、運転席側ダクト21Aを流通して運転席側吹出部181Aから車室22に吹き出される。一方、空調された第2空調風172は、助手席側ダクト21Bを流通して助手席側吹出部182Aから車室22に吹き出される。前述したように、ダンパ13Eおよびダンパ13Fの開度を調整することにより、第1空調風171および第2空調風172の温度を調整できる。また、ダンパ13Iおよびダンパ13Jの開度を調整することにより、第1空調風171および第2空調風172の風量を調整できる。
【0048】
前述した構成を有する空調部13は、乗員20による操作または演算制御部16による判断に基づいて、複数の空調モードにより車室22を空調できる。具体的には、空調モードは、全席空調モード、前席空調モード、集中空調モードおよび運転席空調モードを有する。一例として、前席空調モードが第1モードであり、集中空調モードが第2モードである。各々の空調モードを以下に図を参照して説明する。各図において、空調効果が顕著な領域にハッチングを付与している。
【0049】
図3は、全席空調モードを示す上面図である。ここでは、運転席側吹出部181A、助手席側吹出部182Aおよび後部席側吹出部183Aの夫々から、第1空調風171、第2空調風172および第3空調風173が、車室22に吹き出される。第1空調風171により運転席121Aの近傍が空調され、第2空調風172により助手席122Aの近傍が空調され、第3空調風173により後部座席123および後部座席124の近傍が空調される。これにより、車室22の内部において、全てのシート12の近傍が空調される。全席空調モードは、前述した乗員20が操作スイッチ23を操作することにより実行できる。また、全席空調モードは、乗員検知部14により全てのシート12に乗員20が搭乗していると検知した際に、演算制御部16の指示に基づいて実行することもできる。また、全席空調モードは、助手席122Aに乗員20が着座せず、後部座席123および後部座席124の何れかまたは両方に乗員20が着座する場合であっても、実行することができる。
【0050】
図4は、前席空調モードを示す上面図である。ここでは、運転席側吹出部181Aおよび助手席側吹出部182Aの夫々から、第1空調風171および第2空調風172が、車室22に吹き出される。また、後部席側吹出部183Aからの吹出は無い。第1空調風171により運転席121Aの近傍が空調され、第2空調風172により助手席122Aの近傍が空調される。これにより、車室22の内部において、運転席121Aおよび助手席122Aの近傍が空調される。前席空調モードは、前述した乗員20が操作スイッチ23を操作することにより実行できる。また、前席空調モードは、乗員検知部14により、助手席122Aに乗員20が搭乗しており、且つ後部座席123および後部座席124に乗員20が搭乗していないと検知した際に、演算制御部16の指示に基づいて実行できる。また、後部座席123および後部座席124の乗員20の有無検知は、乗員検知部14による検知のみでなく、所定時間内の後部席ドア開閉情報からも検知することができる。
【0051】
本実施形態では、第1温度Tp1と、第2温度Tp2とを、個別に設定できる。例えば、第1シート121に着座する第1乗員と、第2シート122に搭乗する第2乗員とで、体感温度が異なる場合がある。係る場合、運転席121Aおよび助手席122Aの近傍を均等に空調しようとすると、第1乗員および第2乗員の一方が空調状態を不快に感じる恐れがある。そこで本実施形態では、乗員が操作スイッチ23を操作することにより、第1温度Tp1と第2温度Tp2とを異なる温度に設定できる。このようにすることで、第1シート121の周囲と、第2シート122の周囲とを、異なる温度となるように空調でき、両シートに着座する乗員の快適性を両立できる。また、図9Aに示す様に、第1温度Tp1および第2温度Tp2は、夫々、前述した表示部25に表示される。図9Aを参照して、表示部25の左方側に示される数字が第1温度Tp1であり、表示部25の右方側に示される数字が第2温度Tp2である。
【0052】
図5は、集中空調モードを示す上面図である。ここで、集中空調モードとは、運転席121Aに乗員20が搭乗し、且つ、助手席122Aに乗員20が搭乗しておらず、且つ、後部座席123および後部座席124に乗員20が搭乗しない際に、第1空調風171を送風しつつ、第2空調風172を漏らすように弱く送風することで、運転席121Aの近傍における空調を強化した集中空調を実行するモードである。
【0053】
ここでは、前記した前席空調モードと同様に、運転席側吹出部181Aから、第1温度Tp1とされた第1空調風171が、車室22に吹き出される。第1空調風171により、運転席121Aの近傍が空調される。更に、集中空調モードでは、助手席側吹出部182Aから、第2温度Tp2とされた第2空調風172が吹き出される。この際、第2空調風172の流量を、前席空調モードよりも小さくすることで、第2空調風172を弱く送風し、集中空調における消費エネルギを小さくできる。
【0054】
第1空調風171により運転席121Aの直近が空調され、更に、第2空調風172により、運転席121Aの近傍において空調が強化される。集中空調モードは、前述した乗員20が操作スイッチ23を操作することにより、または演算制御部16の指示に基づいて実行できる。また、集中空調モードは、乗員検知部14により、運転席121Aのみに乗員20が搭乗していると検知した際に、演算制御部16の指示に基づいて実行できる。
【0055】
後述するように、集中空調を実行する際には、第2空調風172の第2温度Tp2を、空調効果が大きくなる温度に変更する。
【0056】
図6は、運転席空調モードを示す上面図である。ここでは、運転席側吹出部181Aのみから、第1空調風171が、車室22に吹き出される。また、助手席側吹出部182Aおよび後部席側吹出部183Aからの吹き出しは無い。第1空調風171により運転席121Aの近傍が空調される。運転席空調モードは、前述した乗員20が操作スイッチ23を操作することにより実行できる。また、運転席空調モードは、乗員検知部14により、運転席121Aのみに乗員20が搭乗していると検知した際に、演算制御部16の指示に基づいて実行できる。ここで、運転席空調モードは、集中空調モード時において、特に環境負荷が低く、第2空調風172を漏らすように弱く送風する必要がなく、第1空調風171のみで十分に空調効果が得られる状態である。
【0057】
図7および図8を参照して、前述した集中空調モードにおける車両用空調装置11の動作を詳述する。図7は、集中空調を実行する際に、第2温度Tp2を第1温度Tp1に合致させる場合の動作を示すフローチャートである。図8は、集中空調を実行する際に、第2温度Tp2を第1温度Tp1に合致させない場合の動作を示すフローチャートである。
【0058】
図7に基づき、前述した各図を参照しながら、集中空調モードにおける車両用空調装置11の動作を詳述する。
【0059】
先ず、車両用空調装置11の演算制御部16は、車両10が走行している際に、車室22を空調する。具体的には、演算制御部16は、車外環境検知部19で検知した車外温度が高い場合は車室22を冷房し、車外温度が低い場合は車室22を暖房する。また、暖房および冷房の切替は、ユーザの操作により行うこともできる。更に、車室22の設定温度はユーザが手動で変更することもできる。
【0060】
ステップS10では、演算制御部16は、集中空調は不許可であるかを判断する。例えば、ユーザのボタン操作により集中空調が禁止されている場合は、集中空調および運転席空調を実行することはできない。尚、図9Aでは例として前席空調モードにおける表示状態を示しているが、全席空調モードでは右上の「FRONT」に替えて「ALL」が表示される。
【0061】
ステップS10でYESの場合、即ち、集中空調が不許可である場合、演算制御部16は、ステップS11に移行する。
【0062】
ステップS10でNOの場合、即ち、集中空調が許可できる場合、一例として、車両用空調装置11を通常の状態で運転することができる場合、演算制御部16は、ステップS14に移行する。
【0063】
ステップS11では、演算制御部16は、前述した集中空調は実行しない。
【0064】
ステップS12では、演算制御部16は、助手席側の空調設定温度、例えは前述した第2温度Tp2を表示する。この表示状態を図9Aに示す。ここでは、例えば液晶ディスプレイである表示部25の一部を示している。表示部25において、運転席側設定温度である第1温度Tp1が左方側に表示され、助手席側設定温度である第2温度Tp2が右方側に表示される。
【0065】
ステップS13では、演算制御部16は、集中空調のためのフローを終了する。以降、車両用空調装置11の指示に基づき、演算制御部16は、車外環境検知部19により検知した空調負荷に応じて、車室22の空調を継続する。具体的には、演算制御部16は、乗員が車両10の運転を終了し、車両10を降車するまで、車室22の空調を続行する。
【0066】
ステップS14では、演算制御部16は、助手席122Aに乗員が着座しているかを判断する。例えば、図1を参照して、演算制御部16は、助手席検知部141の検知結果に基づき、助手席122Aに乗員が存在しているか否かを確認する。助手席122Aに乗員が存在しているか否かの判定は、シートベルトセンサ、助手席側温調操作の有無、助手席ドア開閉などに基づき、演算制御部16が判断することもできる。
【0067】
ステップS14でYESの場合、即ち、第2シート122に乗員が着座している場合、演算制御部16は、ステップS15に移行する。
【0068】
ステップS14でNOの場合、即ち、第2シート122に乗員が着座していない場合、演算制御部16は、ステップS17に移行する。
【0069】
ステップS15では、演算制御部16は、集中空調を実行しない。即ち、図4を参照して、運転席121Aおよび助手席122Aの両方に乗員が搭乗している。よって、例えば、第1温度Tp1となるように空調された第1空調風171を、第1吹出部181から第1シート121に向けて吹き出す。同時に、第2温度Tp2となるように空調された第2空調風172を、第2吹出部182から第2シート122に向けて吹き出す。このようにすることで、運転席121Aの周囲、および、助手席122Aの周囲を、快適に空調できる。ここで、第1温度Tp1と第2温度Tp2とは、同一でも良いし、相違しても良い。
【0070】
ステップS16では、演算制御部16は、助手席側の空調設定温度、例えば前述した第2温度Tp2を表示する。係る表示は、前述したステップS12と略同様である。
【0071】
ステップS17では、演算制御部16は、集中空調を実行する。即ち、図5を参照して説明した集中空調モードの動作を実行する。また、ステップS17では、演算制御部16は、環境負荷に応じて、図6を参照して説明した運転席空調モードの動作を実行する場合もある。
【0072】
ステップS18では、図9Bに示す様に、演算制御部16は、助手席側空調設定温度、例えば第2温度Tp2を、表示部25に表示しない。具体的には、集中空調を実行する場合、演算制御部16が、第2温度Tp2を、高温側または低温側に変更する場合がある。係る場合、変更される第2温度Tp2を、そのまま表示部25に表示すると、乗員が不安感または不信感を感じる恐れがある。このような恐れを排除するべく、本実施形態では、第2温度Tp2を変更した場合であっても、その旨を表示部25に表示しない。図9Bを参照して、通常の空調運転であれば、表示部25の右方部分に第2温度Tp2を示す数字が表示されるが、本ステップでは、当該部分には数字は表示されない。
【0073】
ステップS19では、演算制御部16は、各設定温度を比較する。具体的には、演算制御部16は、運転席側設定温度である第1温度Tp1と、助手席側設定温度である第2温度Tp2とを比較し、両者が相違するか否かを判断する。ここで、本ステップでは、演算制御部16は、一定の閾値を予め設け、第1温度Tp1と第2温度Tp2の差が当該閾値以上となれば、両者が相違すると判断できる。
【0074】
ステップS19でYESの場合、即ち、第1温度Tp1と第2温度Tp2とが異なる場合、演算制御部16は、ステップS20に移行する。
【0075】
ステップS19でNOの場合、即ち、第1温度Tp1と第2温度Tp2とが異ならない場合、演算制御部16は、ステップS21に移行する。
【0076】
ステップS20では、演算制御部16は、第2温度Tp2を第1温度Tp1に合わせる。例えば、車両用空調装置11が乗員20を冷房しており、第2温度Tp2が第1温度Tp1よりも高ければ、演算制御部16は、第2温度Tp2を第1温度Tp1まで引き下げる。また、車両用空調装置11が乗員20を暖房しており、第2温度Tp2が第1温度Tp1よりも低ければ、演算制御部16は、第2温度Tp2を第1温度Tp1まで引き上げる。このような設定温度変更を行った後に、図5を参照して説明した様に、第1温度Tp1となるように空調された第1空調風171により、第1シート121の周辺を空調する。更に、第2温度Tp2となるように空調された第2空調風172により、補助的に第1シート121の近傍を空調する。このようにすることで、第2空調風172により運転席121Aの周辺の空調を強化できる効果を顕著にできる。本ステップが終了したら、前述したステップS13に移行し、車両用空調装置11による車室22の空調を続行する。
【0077】
ステップS21では、演算制御部16は、第2温度Tp2を変更しない。この状態で、図5に示す様に、第1空調風171により第1シート121の周辺を空調しつつ、第2空調風172により補助的に第1シート121の近傍を補助的に空調する。このようにすることで、第2空調風172により運転席121Aの周辺の空調を強化できる。本ステップが終了したら、前述したステップS13に移行し、車両用空調装置11による車室22の空調を続行する。
【0078】
その後、車両10が停車し、乗員20が車両10の各動作を終了させたら、演算制御部16は、車両用空調装置11による車室22の空調を終了する。
【0079】
図8のフローチャートを参照して、車両用空調装置11を用いた、他の形態に係る空調方法を説明する。図8に示す空調方法では、図7に示した空調方法よりも積極的な温度変更を実施することで、集中空調の効果を顕著にできる。
【0080】
図8に示すフローチャートの一部は、図7に示したフローチャートと同様である。具体的には、図8に示すステップS110ないしステップS119およびステップS123における動作は、図7に示したステップS10ないしステップS19およびステップS21における動作と同様である。
【0081】
以下では、図8に示した各ステップにおいて、ステップS120以降の動作を説明する。
【0082】
ステップS120では、演算制御部16は、車両用空調装置11が暖房運転しているかを判断する。
【0083】
ステップS120でYESの場合、即ち、車両用空調装置11が暖房運転の場合、演算制御部16は、ステップS122に移行する。
【0084】
ステップS120でNOの場合、即ち、車両用空調装置11が冷房運転の場合、演算制御部16は、ステップS121に移行する。
【0085】
ステップS121では、演算制御部16は、冷房時において、助手席側設定温度である第2温度Tp2を、運転席側設定温度である第1温度Tp1よりも、低くする。このようにすることで、図5を参照して、冷房時において、第2空調風172の温度を、第1空調風171よりも低くすることができ、第2空調風172により第1シート121の近傍を更に効果的に冷房できる。
【0086】
ステップS122では、演算制御部16は、暖房時において、助手席側設定温度である第2温度Tp2を、運転席側設定温度である第1温度Tp1よりも、高くする。このようにすることで、図5を参照して、暖房時において、第2空調風172の温度を、第1空調風171よりも高くすることができ、第2空調風172により第1シート121の近傍を更に効果的に暖房できる。
【0087】
以上が、車両用空調装置11を用いた、他の形態にかかる空調方法の説明である。図8に示した他の形態に係る集中空調によれば、第2温度Tp2による空調補助効果を更に大きくすることができ、第1シート121の周囲の雰囲気を、更に早期に且つ効果的に快適化できる。
【0088】
以下に、前述した本実施形態から把握できる技術的思想を、その効果と共に記載する。
【0089】
本発明の車両用空調装置は、シートと、空調部と、乗員検知部と、空調風吹出部と、演算制御部と、を具備し、前記シートは、第1シートと、第2シートと、を有し、前記空調部は、車室に供給される空気を調和することにより、第1空調風および第2空調風を生成し、前記乗員検知部は、前記第2シートに乗員が存在しているか否かを検知し、前記空調風吹出部は、前記第1シートの近傍に配設されて前記第1空調風が前記車室に吹き出される第1吹出部と、前記第2シートの近傍に配設されて前記第2空調風が前記車室に吹き出される第2吹出部と、を有し、前記演算制御部は、前記乗員検知部の出力に基づき、前記第2シートに前記乗員が存在していないと判断すれば、前記第1吹出部から、第1温度に空調された前記第1空調風を前記車室内に吹き出し、前記第2吹出部から、空調効果が大きくなるように設定された第2温度に空調された前記第2空調風を、前記車室に吹き出すことを特徴とする。本発明の車両用空調装置によれば、乗員が搭乗するシートの近傍のみを効果的に空調できる。具体的には、本発明では、第2シートに乗員が存在しない場合、先ず、第1シートの近傍に配設された第1吹出部から第1空調風を車室内に吹き出す。更に、第2吹出部から、空調効果が大きい第2空調風を車室内に吹き出す。このようにすることで、車室内において第1シートの近傍を効果的に空調でき、第1シートに搭乗する乗員の快適性を向上させ、且つ、空調に要するエネルギを低減することができる。
【0090】
また、本発明の車両用空調装置では、前記演算制御部は、前記車室を冷房する場合、前記第2空調風の前記第2温度を、前記第1空調風の前記第1温度以下とすることを特徴とする。本発明の車両用空調装置によれば、第1シートのみに乗員が搭乗し、第2シートに乗員が搭乗しない場合において、第1シートの周囲を効果的に冷房し、乗員の爽快性を向上できる。
【0091】
また、本発明の車両用空調装置では、前記演算制御部は、前記車室を暖房する場合、前記第2空調風の前記第2温度を、前記第1空調風の前記第1温度以上とすることを特徴とする。本発明の車両用空調装置によれば、第1シートのみに乗員が搭乗し、第2シートに乗員が搭乗しない場合において、第1シートの周囲を効果的に暖房し、乗員の快適性を向上できる。
【0092】
また、本発明の車両用空調装置では、車外の環境を検知する車外環境検知部を、更に具備し、前記演算制御部は、前記車外環境検知部が検知した前記車外の前記環境に基づき、前記第2温度を設定することを特徴とする。本発明の車両用空調装置によれば、第2温度の設定に際して車外の環境を勘案することにより、更に効果的に第1シートの周囲を空調できる。
【0093】
また、本発明の車両用空調装置では、前記第1シートは、運転席であり、前記第2シートは、助手席であり、前記演算制御部は、前記第1温度と前記第2温度とを個別に設定し、前記第1空調風および前記第2空調風を送風することで、前記運転席の周辺部と前記助手席の周辺部とを異なる温度に空調する第1モードと、前記助手席に前記乗員が存在しない際に、前記第1空調風を送風すると共に、前記第1モードよりも前記第2空調風を弱く送風する第2モードと、を実行し、前記第1モードから前記第2モードに移行する際に、前記第2空調風の前記第2温度を、前記空調効果が大きくなる温度に変更することを特徴とする。本発明の車両用空調装置によれば、例えば、車両用空調装置が冷房運転されている際に、第2温度が比較的に高く設定されている場合であっても、第1モードから第2モードに移行する際に、第2温度を低く変更することにより、第2空調風により運転席周辺を冷却する効果を大きくできる。
【0094】
また、本発明の車両用空調装置では、前記車室の空調状態を表示する表示部を更に具備し、前記演算制御部は、前記第2温度を変更した際に、当該変更の旨を表示しないことを特徴とする。本発明の車両用空調装置によれば、第2温度を変更した際に、乗員が不用意な不安を抱くことを抑制できる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、前述した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【0096】
例えば、図1を参照して、集中空調される第1シート121として、運転席121Aを例示したが、第1シート121として他のシートを採用できる。
【0097】
更に、図2を参照して、第2シート122として、助手席122Aを例示したが、第2シート122として他のシートを採用できる。
【符号の説明】
【0098】
10 車両
11 車両用空調装置
12 シート
121 第1シート
121A 運転席
122 第2シート
122A 助手席
123 後部座席
124 後部座席
13 空調部
13A 空気取入口
13B 空調部ダクト
13C ブロア
13D 冷房用熱交換器
13E ダンパ
13F ダンパ
13G 暖房用熱交換器
13H 隔壁
13I ダンパ
13J ダンパ
14 乗員検知部
141 助手席検知部
15 車速センサ
16 演算制御部
17 空調風
171 第1空調風
172 第2空調風
173 第3空調風
18 空調風吹出部
181 第1吹出部
181A 運転席側吹出部
182 第2吹出部
182A 助手席側吹出部
183 第3吹出部
183A 後部席側吹出部
19 車外環境検知部
191 日射センサ
192 外気温センサ
20 乗員
21 ダクト
21A 運転席側ダクト
21B 助手席側ダクト
22 車室
23 操作スイッチ
24 室温センサ
25 表示部
Tp1 第1温度
Tp2 第2温度



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B