(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011679
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】車両用天井材、及び磁力作用部材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B60R13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113893
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋田 歳基
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BB02
3D023BD01
3D023BE06
3D023BE09
(57)【要約】
【課題】車室内の天井面において簡易に物品を保持することができ、車室内において物品を設置する自由度の向上を図ることができる車両用天井材と、車両用天井材に取り付けることができる磁力作用部材を提供する。
【解決手段】
車両用天井材1は磁力設置機構M1を備えており、磁力設置機構M1と他の物品Wとの間には、互いに磁力で引き付けられる力が作用する。これにより、車両用天井材1の車室内側の面1aに物品Wを近づけると、物品Wが磁力設置機構M1に引き付けられる。すなわち車両用天井材1は、磁力を利用することによって車室内の天井面Rにおいて物品Wを設置し保持することができる。この構成により、車室内の天井面Rに対し、物品Wを簡易に取付け、取り外しすることができる。そして、車室内において物品Wを設置する自由度の向上を図ることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の天井面において他の物品を保持可能な車両用天井材であって、
前記物品との間に互いに磁力で引き付けられる力が作用し、磁力により前記天井面に前記物品を設置可能な磁力設置機構を備えた、車両用天井材。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用天井材であって、
三次元の面形状に成形された基材を備え、
前記磁力設置機構は、少なくとも前記基材の厚さ方向における背面側の一部が変形するように加工された取付け部と、
前記取付け部に取り付けられ、前記物品との間に互いに磁力で引き付けられる力が作用する磁力作用体と、を有している、車両用天井材。
【請求項3】
請求項2に記載された車両用天井材であって、
前記基材は、芯材と前記芯材の両面に積層された繊維補強層を有し、
前記磁力設置機構の前記取付け部は、少なくとも車室内側の前記繊維補強層を残して加工された非貫通穴を有している、車両用天井材。
【請求項4】
請求項3に記載された車両用天井材であって、
前記磁力設置機構は、
前記非貫通穴の開口部に取り付けられた支持部材を備え、
前記支持部材によって前記磁力作用体が前記基材の背面側から支持されている、車両用天井材。
【請求項5】
請求項2に記載された車両用天井材であって、
前記取付け部は、前記基材における前記取付け部に設定されていない一般面よりも前記基材の板厚が薄くなるように、前記基材の背面側から厚さ方向に向かって圧縮された圧縮部を有している、車両用天井材。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載された車両用天井材であって、
車両用天井材の車室内側の面に、前記磁力作用体の取付け位置を表示する表示部を有する、車両用天井材。
【請求項7】
請求項1に記載された車両用天井材であって、
三次元の面形状に成形された基材を備え、
前記磁力設置機構は、前記基材がその厚さ方向において貫通した貫通孔と、
前記貫通孔に取り付けられ、前記物品との間に互いに磁力で引き付けられる力が作用する磁力作用部材と、を備えた、車両用天井材。
【請求項8】
車両用天井材に取り付けられ、磁力により車室内の天井面に他の物品を設置可能な磁力作用部材であって、
前記物品との間に互いに磁力で引き付けられる力が作用する磁力作用体と、
前記車両用天井材の基材に設けられた貫通孔に対し、前記基材の車室内側から取り付け可能な本体部と、を備え、
前記本体部は、前記磁力作用体を前記基材の車室内側から支持すると共に、磁力を通すことが可能な底部を有する、磁力作用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用天井材と、車両用天井材に取り付けられる磁力作用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の利用者が、自らの趣向に応じた物品(例えば装飾品、香料・消臭剤など)を車室内に設置する場合、室内ミラーにぶら下げる、エアコン吹き出し口に取り付ける、アシストグリップに引っ掛ける、等の設置方法がある。一方で、車室内の天井面は、広大な面があるものの、カーテンや消臭剤などの物品を容易に設置できる構造ではないのが一般的である。例えば特許文献1には、車両用内装材が開示されているが、物品を天井面に係止できる機能は備えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車室内の天井面にカーテンや小物などの物品を設置したい場合、例えば物品を一時的に固定または引っ掛けるための構造部材を、車両用天井材に設けることが考えられる。しかしながら、天井面に対して物品の設置または取り外しをするときには、上方を見上げたり、手を伸ばしたりして作業することにより、利用者に作業負担が生じることも考えられる。そのため、車室内の天井面にある程度の自由度を持って物品を設置できると共に、物品の設置及び取り外しの際の作業負担が軽減できる構造部材を備えた車両用天井材が望まれている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車室内の天井面において簡易に物品を保持することができ、車室内において物品を設置する自由度の向上を図ることができる車両用天井材と、車両用天井材に取り付けることができる磁力作用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用天井材の一つの特徴は、車室内の天井面において他の物品を保持可能な車両用天井材であって、前記物品との間に互いに磁力で引き付けられる力が作用し、磁力により前記天井面に前記物品を設置可能な磁力設置機構を備えている。
【0007】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用天井材は磁力設置機構を備えており、磁力設置機構と他の物品との間には、互いに磁力で引き付けられる力が作用する。これにより、車両用天井材の車室内側の面に物品を近づけると、物品が磁力設置機構に引き付けられる。すなわち車両用天井材は、磁力を利用することによって車室内の天井面において物品を設置し保持することができる。この構成により、車室内の天井面に対し、物品を簡易に取付け、取り外しすることができる。そして、車室内において物品を設置する自由度の向上を図ることができる。
【0008】
上記車両用天井材について、三次元の面形状に成形された基材を備え、前記磁力設置機構は、少なくとも前記基材の厚さ方向における背面側の一部が変形するように加工された取付け部と、前記取付け部に取り付けられ、前記物品との間に互いに磁力で引き付けられる力が作用する磁力作用体と、を有している構成としても良い。
【0009】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用天井材の磁力設置機構は、取付け部と取付け部に取り付けられた磁力作用体を有している。取付け部は、少なくとも基材の厚さ方向における背面側の一部が変形するように加工されている。これにより、磁力作用体を基材の背面側から取り付けることができると共に、基材の内部に取り付けられた磁力作用体が車両用天井材の車室内側から見えない構成とすることができる。すなわち、車室内の天井面の外観を大きく損なうことなく、車両用天井材に磁力作用体を取り付けることができる。
【0010】
上記車両用天井材について、前記基材は、芯材と前記芯材の両面に積層された繊維補強層を有し、前記磁力設置機構の前記取付け部は、少なくとも車室内側の前記繊維補強層を残して加工された非貫通穴を有している構成としても良い。
【0011】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用天井材の基材は、芯材と、芯材の背面側及び車室内側の両面に積層された繊維補強層を有している。磁力設置機構の取付け部には、少なくとも車室内側に積層された繊維補強層を残して加工された、非貫通穴が設けられている。非貫通穴における車室内側の繊維補強層により、取付け部に取り付けられた磁力設置機構を車室内側から支持する支持力を高めることができる。また、物品と磁力設置機構の間に磁力が作用したときに非貫通穴における車室内側の部位を引っ張る力に対して、強度を高めることができる。
【0012】
上記車両用天井材について、前記磁力設置機構は、前記非貫通穴の開口部に取り付けられた支持部材を備え、前記支持部材によって前記磁力作用体が前記基材の背面側から支持されている構成としても良い。
【0013】
上記構成の一つの特徴及び利点は、磁力設置機構は、非貫通穴の開口部すなわち基材の背面側に磁力作用体を支持する支持部材が備えられている。これにより、取付け部において磁力作用体を基材の背面側と車室内側の両側から支持する構成とすることができる。
【0014】
上記車両用天井材について、前記取付け部は、前記基材における前記取付け部に設定されていない一般面よりも前記基材の板厚が薄くなるように、前記基材の背面側から厚さ方向に向かって圧縮された圧縮部を有している構成としても良い。
【0015】
上記構成の一つの特徴及び利点は、取付け部は、基材の背面側から厚さ方向に圧縮された圧縮部を有している。圧縮部は、取付け部に設定されていない一般面よりも基材の板厚が薄く、密度が高くなっている。これにより、取付け部の車室内側の部位の強度を高めることができる。また、取付け部に取り付けられた磁力設置機構を車室内側から支持する支持力を高めることができる。
【0016】
上記車両用天井材について、その車室内側の面に、前記磁力作用体の取付け位置を表示する表示部を有する構成としても良い。
【0017】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用天井材の車室内側の面には、磁力作用体の取付け位置を表示するための表示部が設けられている。これにより、磁力作用体が車室内側から見えない構成であっても、物品を天井面に取り付けるときに、容易に磁力作用体の位置に合わせることができる。
【0018】
上記車両用天井材について、三次元の面形状に成形された基材を備え、前記磁力設置機構は、前記基材がその厚さ方向において貫通した貫通孔と、前記貫通孔に取り付けられ、前記物品との間に互いに磁力で引き付けられる力が作用する磁力作用部材とを備えた構成としても良い。
【0019】
上記構成の一つの特徴及び利点は、磁力設置機構は、基材の厚さ方向に貫通した貫通孔が設けられている。この構成により、物品との間に互いに磁力で引き付けられる力が作用する磁力作用部材を、車室内側から取り付けることができる。すなわち、すでに車体に装着された車両用天井材に対しても、磁力作用部材を取り付けることができる。
【0020】
上記課題を解決する磁力作用部材の一つの特徴は、車両用天井材に取り付けられ、磁力により車室内の天井面に他の物品を設置可能な磁力作用部材であって、前記物品との間に互いに磁力で引き付けられる力が作用する磁力作用体と、前記車両用天井材の基材に設けられた貫通孔に対し、前記基材の車室内側から取り付け可能な本体部とを備え、前記本体部は、前記磁力作用体を前記基材の車室内側から支持すると共に、磁力を通すことが可能な底部を有する。
【0021】
上記構成の一つの特徴及び利点は、磁力作用部材は、その本体部内に磁力作用体を備えており、車両用天井材に車室内側から取付けることができる。磁力作用体と他の物品との間には、互いに磁力で引き付けられる力が作用し、本体部の底部に他の物品が引き付けられる。この磁力作用部材を車両用天井材に取り付けることにより、車室内の天井面において、磁力を利用することによって他の物品を保持することができる。この構成により、車室内の天井面に対し、物品を簡易に取付け、取り外しすることができる。そして、車室内において物品を設置する自由度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記構成を持つことにより、車室内の天井面において簡易に物品を保持することができ、車室内において物品を設置する自由度の向上を図ることができる車両用天井材と、車両用天井材に取り付けることができる磁力作用部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】車両用成形材の車室内側の面において物品等が保持されている状態を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用天井材における磁力設置機構の配置を示す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用天井材における磁力設置機構の断面と、保持される物品を模式的に示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る磁力設置機構の変更例を示す断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る車両用天井材における磁力設置機構の断面を模式的に示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る取付け部の変更例を示す図である。
【
図7】第3実施形態に係る車両用天井材における磁力設置機構の配置を示す平面図である。
【
図8】第3実施形態に係る車両用天井材における磁力設置機構の断面と、保持される物品を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、以下に図面を用いて説明する。なお、各図面に示す上下方向は、実施形態に係る車両用天井材の背面側を上方向、車室内側を下方向と定めて、図示する。
【0025】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用天井材1は、
図1に示すように、車室内の天井面Rにおいて他の物品Wを保持するものである。
図2、
図3に示すように、車両用天井材1は、三次元の面形状に成形された基材2と、基材2の車室内側に積層された内装表皮材3を備えている。また、車両用天井材1の面方向における任意の位置には磁力設置機構M1が配設されている。磁力設置機構M1には取付け部4が設けられ、磁石A1(磁力作用体)が取り付けられている。磁力設置機構M1は、磁石A1と、鋼材B(磁力作用体)を備えた他の物品Wとの間に互いに磁力で引き付けられる力が作用することによって、車室内の天井面Rにおいて他の物品Wを設置可能な構成となっている。
【0026】
図3に示すように、基材2は、芯材5と、芯材5の両面に積層された繊維補強層6,7、及びその背面側に積層された保護層8で構成されている。芯材5は、車両用天井材1の形状保持と剛性確保のために設けられている。本実施形態に係る芯材5は、ウレタン樹脂発泡体からなる半硬質層のウレタンフォームが選択される。
【0027】
芯材5の背面側の面には第1の繊維補強層6が、車室内側の面には第2の繊維補強層7がそれぞれ積層されている。第1と第2の繊維補強層6,7は、天井用成形材1の形状保持と剛性確保のために設けられている。これらの繊維補強層6,7は、表面に熱硬化性接着剤が塗布、または含浸されており、芯材5の両面にそれぞれ接着されている。第1及び第2の繊維補強層6,7には、ガラス繊維マットが選択される。ガラス繊維マットは、無機繊維であるガラス繊維を適宜の長さに切断したチョップドストランドを適宜バインダーで固めることによりシート状に形成されている。
【0028】
これらの繊維補強層6,7は、ガラス繊維を切断することなくバインダーで固めたもの(コンテイニアスマット)であっても良い。またこれに代えて、スパンレース、スパンボンド不織布、ガラスペーパー、ガラス繊維織布でも良い。また、実施形態における目付量は、要求される強度、その他の種々の条件に適合するように目付量を選択し得る。これらの繊維補強層6,7に用いる繊維補強材は、チョップドストランド等の無機繊維や、有機繊維であるジュート(黄麻)、ケナフ(洋麻)、ラミー、ヘンプ(麻)、サイザル麻、竹等の天然繊維等を適宜選択して、アクリル等のバインダーまたはニードル加工によってシート状、マット状にしたものでも良い。
【0029】
熱硬化性接着剤は、例えばイソシアネート樹脂からなる熱硬化性樹脂が選択される。イソシアネートは、半硬質層のウレタンフォームからなる芯材5となじみやすいという観点から好適である。なお、熱硬化性接着剤は、イソシアネート樹脂に限られず適宜選択できる。熱硬化性接着剤は、スプレー、ロールコーター等によって塗布される。
【0030】
保護層8は、第1の繊維補強層6の背面側に積層されている。保護層8には、例えば非通気性フィルムにPET樹脂繊維不織布からなる裏材が積層されたものが選択される。
【0031】
内装表皮材3は、第2の繊維補強層7の車室内側に積層されている。内装表皮材3は、車両用天井材1の意匠面を担う部位である。内装表皮材3は、例えば表面層、ウレタンフォームシートが積層されたものが選択される。表面層は、ファブリック、クロス、ニット等の布帛や、織布、不織布、希毛布等の布部材、合成皮革、人工皮革、本革等、種々適用できる。ウレタンフォームシートは、車両用天井材1に柔らかい触感を得るためにウレタン樹脂発泡体からなる軟質層を適用して積層される。なお、ウレタンフォームシートが積層されない構成としても良い。
【0032】
磁力設置機構M1は、
図2に示すように、車両用天井材1の面方向における任意の位置に設定、配置されている。磁力作用機構M1は、
図3に示すように、少なくとも基材2の厚さ方向における背面側の一部が変形するように加工された取付け部4を有している。具体的には、基材2と内装表皮材3は、積層されて一体にプレス成形されている。そして成形された基材2における第2の繊維補強層7(車室内側の繊維補強層)を残して基材2の背面側の部位が肉抜き加工され、磁石A1の形状に対応した非貫通穴10が形成されている。このように、非貫通穴10の底部12に繊維補強層を含むことにより、磁石A1の荷重や磁石A1と物品Wの間に作用する磁力に対する底部12の強度を高めることができる。また、天井面Rに対し物品Wを取付けまたは取り外す際に、内装表皮材3が磁力で引っ張られてしわが発生することを抑制できる。なお、非貫通穴10の底部12は、磁石A1と物品Wの間において物品Wを保持するための十分な磁力が作用するように、厚さが設定されている。
【0033】
取付け部4の非貫通穴10には、磁石A1が取り付けられている。磁石A1は非貫通穴10の底部12に当接しており、底部12によって基材2の車室内側から支持されている。さらに磁石A1の上側は、樹脂製のブラケット15(支持部材)に固定されている。ブラケット15は、非貫通穴10の開口部13の面積より大きい円盤状に形成された上面部16を有しており、上面部16で非貫通穴10の開口部13を覆うようにして、開口部13に取り付けられている。また、上面部16は、開口部13の周辺における基材2の背面側の面2aに当接する支持面16aを有している。ブラケット15は、一定の面積を有する支持面16aを設けることで、磁石A1や物品W等の荷重に耐えうる構成となっている。そしてブラケット15によって、磁石A1が基材2の背面側から支持されている。
【0034】
磁石A1は、例えばフェライト磁石、ネオジウム磁石などの永久磁石が選択される。磁石A1とブラケット15は、接着剤等で固定されている。磁石A1を取付け部4に設置する際に、予めブラケット15に磁石A1を固定することにより、これらを一体にして基材2の背面側から非貫通穴10に取り付けることができる。また、ブラケット15に固定された磁石A1と、非貫通穴10の底部12との間に隙間が生じないように非貫通穴10の深さと磁石A1の高さを設定することで、天井面Rに対して物品Wの取付けまたは取り外しをするときに底部12が引っ張られて変形することを抑制できる。また、磁石A1と底部12の間に金属プレートを配置しても良い。金属プレートを配置することで、より底部12の剛性の向上を図ることができる。
【0035】
車両用天井材1の車室内側の面1aには、磁石A1の取付け位置を表示する表示部18が設けられている。具体的には、内装表皮材3の表面において、取付け部4の設定位置を囲むように刻印が施され、表示部18が形成されている。例えば、略ひし形状のエンボス加工を施しても良い。このように内装表皮材3に刻印を施すことにより、車室内の天井面Rの外観を大きく損なうことなく、取付け部4の位置すなわち磁石A1の取付け位置を判別するための表示部18を設けることができる。また、車両用天井材1のプレス成形時において同時に刻印を施すことができるため、車両用天井材1の製造における工程を減らすことができる。表示部18の例としては、刻印のほか着色によるマーキングなど種々の態様が選択される。
【0036】
車両用天井材1に配置される取付け部4と表示部18は、天井面Rの外観を大きく損なわないように配慮した寸法に設定されている。例えば表示部18のそれぞれの寸法が、直径50mm程度の範囲内となるように設定されている。
【0037】
上述したように、取付け部4に形成された非貫通穴10に、磁石A1とブラケット15が一体になって取り付けられ、磁力設置機構M1が構成されている。言い換えれば、車両用天井材1には磁石A1を備えた磁力作用機構が設けられている。磁力設置機構M1を備えた車両用天井材1は、鋼材B(磁力作用体)を備えた物品Wを、磁力により保持することができる。例えば、小物やカーテンなどの物品Wを車室内の天井面Rにおいて保持できる(
図1参照)。天井面Rに配設された複数の磁力設置機構M1にかかるように、すなわち車両用天井材1に取り付けられた複数の磁石A1を利用して、カーテン等を任意の位置や方向に取り付けることができる構成としても良い。車両用天井材1と物品Wの両方に磁石が備えられている場合には、より強力な磁力が作用し、物品Wを保持する保持力が向上する。また、車両用天井材1は、磁力作用体として鋼材を取り付けた構成としても良い。この場合には、物品Wに磁石を備えることにより、天井面Rにおいて物品Wを保持することができる。なお、鋼材としては鉄やステンレス等が選択できる。
【0038】
図4に示すように、車両用天井材21は、磁力設置機構M2として取付け部23にスリット24を設け、タブレット状の磁石A2(磁力作用体)を取り付けた構成としても良い。スリット24は、第2の繊維補強層7を残した状態で基材22の背面側から切り込みが設けられた構成とされる。磁石A2は、基材22の背面側からスリット24に差し込まれるように取り付けられており、磁石A2の上側がホットメルト接着剤26で固定されている。ホットメルト接着剤26は、スリット24の開口部を塞ぐようにして基材22の背面側の面22aと接した状態で固化している。すなわち磁石A2は、固化したホットメルト接着剤26によって基材22の背面側から支持されている。車両用天井材21の車室内側の面21aには、磁石A2の取付け位置を表示する表示部18が設けられている。
【0039】
<第2実施形態>
次に第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用天井材31は、
図5に示すように、三次元の面形状に成形された基材32と、基材32の車室内側に積層された内装表皮材33を備えている。また、車両用天井材31は、車両用天井材31の面方向における任意の位置に配置された磁力設置機構M3を備えている。磁力設置機構M3には、取付け部35が設けられており、取付け部35には磁石A3(磁力作用体)が取り付けられている。磁力設置機構M3は、磁石A3と、鋼材B(磁力作用体)を備えた他の物品Wとの間に互いに磁力で引き付けられる力が作用することによって、車室内の天井面Rにおいて他の物品Wを設置し、保持可能な構成となっている。なお、基材32の材料構成は、第1実施形態と同様であるため説明を省略し、磁力設置機構M3の異なる構成について説明する。
【0040】
磁力設置機構M3は、少なくとも基材32の厚さ方向における背面側の一部が変形するように加工された、取付け部35を有している。取付け部35は、基材32における取付け部35に設定されていない一般面36よりも基材32の板厚が薄くなるように、基材32の背面側から厚さ方向に向かって圧縮された圧縮部37を有している。圧縮部37は、磁石A3と物品Wの間の距離を近づけ、物品Wを保持するために十分な磁力が作用するように形成されている。圧縮部37の板厚T2は、一般面36の板厚T1に対し一定以上の板厚変化がなされており、例えば板厚変化1mm以上に設定されている。圧縮部37には、磁石A3が下方に向かって押し込まれるように取り付けられており、ホットメルト接着剤等で固定されている。磁石A3には、例えばフェライト磁石、ネオジウム磁石などの永久磁石が選択される。圧縮部37の板厚T2によっては、磁石A3と物品Wの間に作用する磁力を確保するため、ネオジウム磁石など、より強力な磁石を配設しても良い。
【0041】
車両用天井材31の車室内側の面31aには、第1実施形態と同様に、磁石A3の取付け位置を表示する表示部38が設けられている。表示部38は、内装表皮材33の表面において、取付け部35の設定位置を囲むように刻印が施されている。
【0042】
上述したように、取付け部35に形成された圧縮部37に、磁石A3が取り付けられ、磁力設置機構M3が構成されている。言い換えれば、車両用天井材31には磁石A3を備えた磁力作用機構が設けられている。磁力設置機構M3を備えた車両用天井材31は、第1実施形態と同様に、鋼材B(磁力作用体)を備えた物品Wを、磁力により保持することができる。車両用天井材31と物品Wの両方に磁石が備えられている場合には、より強力な磁力が作用し、物品Wを保持する保持力が向上する。また、車両用天井材31に磁力作用体として鉄やステンレスなどの鋼材を取り付け、磁石を備えた物品Wを保持する構成としても良い。
【0043】
図6に示すように、車両用天井材41は、基材の板厚が一般面42よりも変化した圧縮領域43を取付け部45とその周辺に亘って設けた構成としても良い。車両用天井材41に、厚さ方向にプレスされた圧縮領域43を設けることにより、車両用天井材41の強度を高めることができる。また、基材が圧縮されて板厚が変化した部位を広くすることにより、取付け部45において磁石(磁力作用体)を押し込み易くすることができる。
【0044】
<第3実施形態>
次に第3実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用天井材51は、
図7、
図8に示すように、三次元の面形状に成形された基材52と、基材52の車室内側に積層された内装表皮材53を備えている。また、車両用天井材51の面方向における任意の位置には、磁力設置機構M4が配置されている。磁力設置機構M4には磁石A4(磁力作用体)を備えた磁力作用部材60が取り付けられている。磁力設置機構M4は、磁石A4と、鋼材B(磁力作用体)を備えた他の物品Wとの間に互いに磁力で引き付けられる力が作用することによって、車室内の天井面Rにおいて他の物品Wを設置し、保持可能な構成となっている。なお、基材52の材料構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略し、磁力設置機構M4の異なる構成について説明する。
【0045】
磁力設置機構M4には、貫通孔56が設けられている。貫通孔56は、基材52がその厚さ方向において貫通した円筒状に形成されている。ここで、基材52の背面側における開口部を第1開口部57、車室内側における開口部を第2開口部58とする。貫通孔56には、磁石A4を備えた磁力作用部材60が取り付けられている。磁力作用部材60は、貫通孔56に対して車室内側から取り付け可能な本体部61を備えている。本体部61は、貫通孔56と嵌合するように形成されており、基材52の背面側において第1開口部57の周縁の一部に係止される爪係合部63を有している。これにより磁力作用部材60は、磁石A1と物品Wの間に作用する磁力や物品W等の荷重に対し、安定して車両用天井材51に取付けられるために十分な係合力を備えている。また本体部61は、磁石A4を車室内側から支持する底部64を有している。なお、磁石A4は本体部61内において底部64に接着剤等で固定されている。
【0046】
磁石A4には、例えばフェライト磁石、ネオジウム磁石などの永久磁石が選択される。磁力作用部材60は、合成樹脂などの磁力を通すことができる材質が選択される。底部64は、磁石A4と物品Wの間において磁力を通すことができるように厚さが設定されている。磁力作用部材60が車両用天井材51に取り付けられる際には、爪係合部63が弾性変形した状態で、本体部61が車室内側から貫通孔56に差し込まれ、基材52の背面側で爪係合部63が係止される。底部64は、車室内側において第2開口部58を塞ぐ蓋としても機能する。磁力作用部材60が取り付けられた天井面Rにおいては、底部64を介して磁石A4と他の物品Wとの間に互いに磁力で引き付けられる力が作用する。
【0047】
貫通孔56及び磁力作用部材60は、車室内の天井面Rの外観を大きく損なわないように配慮した寸法に設定されている。例えば、第2開口部58を塞ぐ底部64の寸法が、直径50mm程度の範囲内となるように設定されている。さらに底部64と内装表皮材53の表面の色を同系色にするなど、天井面Rに対して底部64が目立たない構成とすることにより、天井面Rの外観を大きく損なわないように車両用天井材51を構成できる。
【0048】
上述したように、車両用天井材51に設けられた貫通孔56に、磁石A4を備えた磁力作用部材60が取り付けられ、磁力設置機構M4が構成されている。言い換えれば、車両用天井材51には磁石A4を備えた磁力作用機構が設けられている。磁力作用部材60は、爪係合部63を貫通孔56に引っ掛ける構成に限られず、挟み込み、接着剤による取付け、スクリュー構造のねじ込みなどで取り付けられる構成としても良い。磁力設置機構M4を備えた車両用天井材51は、第1実施形態と同様に、鋼材B(磁力作用体)を備えた物品Wを、磁力により保持することができる。車両用天井材51と物品Wの両方に磁石が備えられている場合には、より強力な磁力が作用し、物品Wを保持する保持力が向上する。また、車両用天井材51に磁力作用体として鉄やステンレスなどの鋼材を取り付け、磁石を備えた物品Wを保持する構成としても良い。
【0049】
<実施形態の効果>
上記第1実施形態に係る車両用天井材1は、磁力設置機構M1を備えており、磁力設置機構M1の磁石A1(磁力作用体)と他の物品Wとの間には、互いに磁力で引き付けられる力が作用する。これにより、車両用天井材1の車室内側の面1aに物品Wを近づけると、物品Wが磁力設置機構M1に引き付けられる。すなわち車両用天井材1は、磁力を利用することによって車室内の天井面Rにおいて物品Wを設置し保持することができる。この構成により、車室内の天井面Rに対し、物品Wを簡易に取付け、取り外しすることができる。そして、車室内において物品Wを設置する自由度の向上を図ることができる。上述した他の実施形態についても同様の作用効果を奏する。
【0050】
第1実施形態に係る車両用天井材1,21の磁力設置機構M1,M2は、取付け部4,23と取付け部4,23に取り付けられた磁石A1,A2(磁力作用体)を有している。取付け部4,23は、少なくとも基材2の厚さ方向における背面側の一部が変形するように加工されている。これにより、磁石A1,A2を基材2の背面側から取り付けることができると共に、基材2の内部に取り付けられた磁石A1,A2が車両用天井材1,21の車室内側から見えない構成とすることができる。すなわち、車室内の天井面Rの外観を大きく損なうことなく、車両用天井材1,21に磁石A1,A2を取り付けることができる。第2実施形態についても同様の作用効果を有する。
【0051】
第1実施形態に係る車両用天井材1の基材2は、芯材5と、芯材5の背面側及び車室内側の両面に積層された繊維補強層6,7を有している。磁力設置機構M1の取付け部4には、少なくとも車室内側に積層された第2の繊維補強層7を残して加工された、非貫通穴10が設けられている。非貫通穴10における第2の(車室内側の)繊維補強層7により、取付け部4に取り付けられた磁石A1を車室内側から支持する支持力を高めることができる。また、物品Wと磁石A1の間に磁力が作用したときに非貫通穴10における車室内側の部位を引っ張る力に対して、強度を高めることができる。また、磁力設置機構M2の取付け部23にスリット24を設けた車両用天井材21についても同様の作用効果を奏する。
【0052】
第1実施形態に係る車両用天井材1の磁力設置機構M1は、非貫通穴10の開口部13、すなわち基材2の背面側に磁石A1を支持するブラケット15(支持部材)が備えられている。これにより、取付け部4において磁石A1を基材2の背面側と車室内側の両側から支持する構成とすることができる。
【0053】
第1実施形態に係る車両用天井材1,21の車室内側の面1a,21aすなわち内装表皮材3の表面には、磁石A1,A2の取付け位置を表示するための表示部18が設けられている。これにより、磁石A1,A2が車室内側から見えない構成であっても、物品Wを天井面Rに取り付けるときに、容易に磁石A1,A2の位置に合わせることができる。第2実施形態についても同様の作用効果を有する。
【0054】
第1実施形態に係る磁力設置機構M1は、磁石A1とブラケット15が一体化されて取付け部4の非貫通穴10に取り付けられた構成である。ブラケット15は、非貫通穴10の開口部13の周辺において支持面16aが基材2の背面側の面2aと当接するように構成されている。この構成により、磁石A1とブラケット15にかかる重力方向(下方向)への荷重を支えることができる。そして、磁石A1と物品Wの間に作用する磁力によって、取付け部4における基材2と内装表皮材3が車室内側に押し下げられて変形することを抑制できる。
【0055】
第1実施形態に係る磁力設置機構M1において、ブラケット15が上面部16で非貫通穴10の開口部13を覆うようにして、開口部13に取り付けられている。このように非貫通穴10の開口部13を覆うことにより、非貫通穴10の内部への通気を防ぐことができ、ほこり等による汚れが発生することを抑制できる。
【0056】
第1実施形態に係る磁力設置機構M2は、タブレット状の磁石A2が取付け部23のスリット24に取り付けられた構成である。磁石A2の上側は、基材22の背面側においてホットメルト接着剤26で固定されている。また固化したホットメルト接着剤26は、基材22の背面側の面22aと接着されている。この構成により、磁石A2にかかる重力方向(下方向)への荷重を支えることができる。そして、磁石A2と物品Wの間に作用する磁力によって、取付け部23における基材22と内装表皮材3が車室内側に押し下げられて変形することを抑制できる。
【0057】
第2実施形態に係る車両用天井材31の磁力設置機構M3において、取付け部35は、基材32の背面側から厚さ方向に圧縮された圧縮部37を有している。圧縮部37は、取付け部35に設定されていない一般面36よりも基材32の板厚が薄く、密度が高くなっている。これにより、取付け部35の車室内側の部位の強度を高めることができる。また、取付け部35に取り付けられた磁石A3(磁力作用体)を車室内側から支持する支持力を高めることができる。
【0058】
第2実施形態に係る車両用天井材31の圧縮部37の形成は、車両用天井材31のプレス成形時に同時に施工できる。そのため、取付け部35に圧縮部37を形成して磁石A3を取り付ける構成とすることにより、車両用天井材31の製造工程を減らすことができる。
【0059】
第3実施形態に係る車両用天井材51の磁力設置機構M4は、基材52の厚さ方向に貫通した貫通孔56が設けられている。この構成により、物品Wとの間に互いに磁力で引きつけられる力が作用する磁力作用部材60を、車室内側から取付けることができる。すなわち、すでに車体に装着された車両用天井材51に対しても、簡易に磁力作用部材60を取り付けることができる。
【0060】
磁力作用部材60は、その本体部61内に磁石A4(磁力作用体)を備えており、車両用天井材51に車室内側から取付けることができる。磁石A4と他の物品Wとの間には、互いに磁力で引き付けられる力が作用し、本体部61の底部64に他の物品Wが引き付けられる。この磁力作用部材60を車両用天井材51に取り付けることにより、車室内の天井面Rにおいて、磁力を利用することによって他の物品Wを保持することができる。この構成により、車室内の天井面Rに対し、物品Wを簡易に取付け、取り外しすることができる。そして、車室内において物品Wを設置する自由度の向上を図ることができる。
【0061】
磁力作用部材60は、底部64が車両用天井材51の車室内側から見えるように配置されるため、天井面Rにおける磁石A4の位置を容易に判断することができる。また、磁力作用部材60は車室内側から車両用天井材51に取付けることができるため、車体に装着される前の車両用天井材51に限られず、車体に装着された後の車両用天井材51に対しても、任意の位置に貫通孔56を設けて取り付けることができる。すなわち、磁力作用部材60をアフター部品として利用できる。
【0062】
本発明に係る車両用天井材と磁力作用部材は、上記実施形態において説明した外観、構成に限られず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除、構成の組み合わせにより、その他各種の形態で実施できるものである。
【0063】
上記実施形態に係る車両用天井材の基材の構成として、ウレタンフォームと繊維補強材を積層させた構成の例を示したが、これに限られず種々の構成の基材を適用できる。例えばガラス繊維と熱可塑性樹脂を含んだ芯材の両面に、不織布からなる繊維層が積層された成形体、あるいは成形不織布などを基材の構成として選択しても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 車両用天井材
1a 車両用天井材の車室内側の面
2 基材
3 内装表皮材
4 取付け部
5 芯材
6 第1の繊維補強層
7 第2の繊維補強層
8 保護層
10 非貫通穴
12 非貫通穴の底部
13 非貫通穴の開口部
15 ブラケット(支持部材)
16 ブラケットの上面部
18 表示部
21 車両用天井材
21a 車両用天井材の車室内側の面
23 取付け部
24 スリット
31 車両用天井材
31a 車両用天井材の車室内側の面
32 基材
33 内装表皮材
35 取付け部
36 一般面
37 圧縮部
38 表示部
41 車両用天井材
45 取付け部
51 車両用天井材
52 基材
53 内装表皮材
56 貫通孔
57 第1開口部
58 第2開口部
60 磁力作用部材
61 本体部
63 爪係合部
64 底部
A1~A4 磁石(磁力作用体)
B 鋼材(磁力作用体)
M1~M4 磁力設置機構
R 車室内の天井面
T1 一般面の板厚
T2 圧縮部の板厚
W 物品