(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116818
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】基板処理装置、および、基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240821BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H01L21/304 648F
H01L21/304 643A
H01L21/304 648K
H01L21/306 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022628
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 通矩
(72)【発明者】
【氏名】加門 宏章
(72)【発明者】
【氏名】岩畑 翔太
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043AA40
5F043BB27
5F043CC16
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE33
5F157AA42
5F157AA64
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157BE23
5F157BE43
5F157CF34
5F157CF42
5F157DC84
5F157DC85
5F157DC86
(57)【要約】
【課題】硫酸と過酸化水素水とを含む処理液へ廃液を簡易に再利用する。
【解決手段】基板処理装置は、第1の硫酸含有液と過酸化水素水とを処理液として基板に供給するノズルと、ノズルへ供給される第1の硫酸含有液を貯留する第1のタンクと、基板に対する処理に用いられた後の処理液である廃液が電気分解を受けて第2の硫酸含有液が生成される経路である電解経路と、第2の硫酸含有液におけるペルオキソ二硫酸の濃度を低下させて第1の硫酸含有液を生成する濃度低下装置と、第1のタンクへ第1の硫酸含有液を供給する経路である供給経路とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸と過酸化水素水とを含む処理液を用いて基板に対して処理を行う装置であって、
第1の硫酸含有液と過酸化水素水とを前記処理液として前記基板に供給するノズルと、
前記ノズルへ供給される前記第1の硫酸含有液を貯留する第1のタンクと、
前記基板に対する前記処理に用いられた後の前記処理液である廃液が電気分解を受けて第2の硫酸含有液が生成される経路である電解経路と、
前記第2の硫酸含有液におけるペルオキソ二硫酸の濃度を低下させて前記第1の硫酸含有液を生成する濃度低下装置と、
前記第1のタンクへ前記第1の硫酸含有液を供給する経路である供給経路と
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記濃度低下装置は第1のヒータを含む、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記電解経路は、
前記電気分解に用いられる電気分解装置と、
前記電気分解装置を流れる液体の硫酸、ペルオキソ一硫酸、およびペルオキソ二硫酸の濃度を測定する濃度計と
を有する、請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記廃液が供給され、第3の硫酸含有液を貯留する第2のタンク
を更に備え、
前記第3の硫酸含有液は、前記廃液、前記第1の硫酸含有液、および前記第2の硫酸含有液の少なくともいずれかを含み、
前記第3の硫酸含有液は、前記第2のタンクと、前記電解経路と、前記濃度低下装置との間を環流する、請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記供給経路は第2のヒータを含む、請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ノズルは、前記第1の硫酸含有液と過酸化水素水とを混合して前記処理液を前記基板に供給する、請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項7】
硫酸と過酸化水素水とを含む処理液を用いて基板に対して処理を行う方法であって、
第1の硫酸含有液と過酸化水素水とを前記処理液として前記基板に供給する工程と、
前記基板に対する前記処理に用いられた後の前記処理液である廃液を電気分解して第2の硫酸含有液を生成する工程と、
前記第2の硫酸含有液におけるペルオキソ二硫酸の濃度を低下させて前記第1の硫酸含有液を生成する工程と、
を備える、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は基板を処理する技術に関する。当該処理(以下「基板処理」と称される)の対象となる基板には、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのflat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、セラミック基板、電界放出ディスプレイ(field emission display、すなわち、FED)用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
基板処理に用いられる処理液として、例えばSPM(sulfuric acid-hydrogen peroxide mixture)と通称される、硫酸(H2SO4)と過酸化水素水(H2O2)との混合液が公知である。SPMは、硫酸に過酸化水素水を混合させることによって酸化力が生じ、例えば、基板の表面に形成されたレジストの除去に用いられる。
【0003】
SPMが含む過酸化水素水は、基板処理において水(H2O2)へ分解する。基板処理に用いられた後の処理液(以下「廃液」と称される)は、基板処理に用いられる前の処理液と比較して硫酸の濃度が低下する。
【0004】
廃液に対して、昇温および加圧またはそれらのいずれかを行って蒸留し、処理液として再利用する技術が公知である(例えば下掲の特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-47857号公報
【特許文献2】特開2012-80048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
再利用に供すべく廃液を蒸留するための、昇温および加圧は、設備負担が大きかったり、必要な時間が長いという課題がある。
【0007】
上記課題に鑑みて本願では、硫酸と過酸化水素水とを含む処理液へ廃液を簡易に再利用する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示にかかる基板処理装置の第1の態様は、硫酸と過酸化水素水とを含む処理液を用いて基板に対して処理を行う装置であって、第1の硫酸含有液と過酸化水素水とを前記処理液として前記基板に供給するノズルと、前記ノズルへ供給される前記第1の硫酸含有液を貯留する第1のタンクと、前記基板に対する前記処理に用いられた後の前記処理液である廃液が電気分解を受けて第2の硫酸含有液が生成される経路である電解経路と、前記第2の硫酸含有液におけるペルオキソ二硫酸の濃度を低下させて前記第1の硫酸含有液を生成する濃度低下装置と、前記第1のタンクへ前記第1の硫酸含有液を供給する経路である供給経路とを備える。
【0009】
本開示にかかる基板処理装置の第2の態様は、その第1の態様であって、前記濃度低下装置は第1のヒータを含む。
【0010】
本開示にかかる基板処理装置の第3の態様は、その第1の態様または第2の態様であって、前記電解経路は、前記電気分解に用いられる電気分解装置と、前記電気分解装置を流れる液体の硫酸、ペルオキソ一硫酸、およびペルオキソ二硫酸の濃度を測定する濃度計とを有する。
【0011】
本開示にかかる基板処理装置の第4の態様は、その第1の態様、第2の態様、または第3の態様であって、前記廃液が供給され、第3の硫酸含有液を貯留する第2のタンクを更に備え、前記第3の硫酸含有液は、前記廃液、前記第1の硫酸含有液、および前記第2の硫酸含有液の少なくともいずれかを含み、前記第3の硫酸含有液は、前記第2のタンクと、前記電解経路と、前記濃度低下装置との間を環流する。
【0012】
本開示にかかる基板処理装置の第5の態様は、その第1の態様、第2の態様、第3の態様または第4の態様であって、前記供給経路は第2のヒータを含む。
【0013】
本開示にかかる基板処理装置の第6の態様は、その第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様または第5の態様であって、前記ノズルは、前記第1の硫酸含有液と過酸化水素水とを混合して前記処理液を前記基板に供給する。
【0014】
本開示にかかる基板処理方法は、硫酸と過酸化水素水とを含む処理液を用いて基板に対して処理を行う方法であって、第1の硫酸含有液と過酸化水素水とを前記処理液として前記基板に供給する工程と、前記基板に対する前記処理に用いられた後の前記処理液である廃液を電気分解して第2の硫酸含有液を生成する工程と、前記第2の硫酸含有液におけるペルオキソ二硫酸の濃度を低下させて前記第1の硫酸含有液を生成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本開示にかかる基板処理装置の第1の態様によれば、硫酸と過酸化水素水とを含む処理液へ廃液が簡易に再利用される。
【0016】
その第2の態様は、ペルオキソ二硫酸の失活に寄与する。
【0017】
その第3の態様は、電気分解装置を流れる液体における水の濃度の見積もりに寄与する。
【0018】
その第4の態様は、廃液から第1の硫酸含有液を得る再生処理に寄与する。
【0019】
その第5の態様は、第1の硫酸含有液を第1のタンクへの貯留に適した温度に調整する液温保持処理に寄与する。
【0020】
その第6の態様は、第1の硫酸含有液を用いた処理液の生成に寄与する。
【0021】
本開示にかかる基板処理方法によれば、硫酸と過酸化水素水とを含む処理液へ廃液が簡易に再利用される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示に係る基板処理装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図4】処理ユニットおよび関連する構成を概略的に例示する模式図である。
【
図8】制御部の構成を概念的に例示するブロック図である。
【
図9】廃液から第1の硫酸含有液として硫酸を再生する処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付される図面が参照されて実施の形態について説明される。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるために、それらのすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0024】
図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化などが図面においてなされる。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施の形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
【0025】
図面において配管が三叉または丁字に交叉して描かれている場合、特に断りがない限り、直線状に描かれた三つの配管同士が連通していることを示す。図面において配管が四叉または十字に交叉して描かれている場合、特に断りがない限り、交叉点を通過して直線状に描かれた二つの配管同士が、連通していないことを示す。
【0026】
図面において配管として描かれた線に付記された矢頭は、流体が流れる向きを示す。
【0027】
以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示され、それら同士の名称と機能とについては同様である。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0028】
本願明細書に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0029】
本願明細書に記載される説明において、「第1の」または「第2の」などの序数が使われる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上使われるものであり、実施の形態の内容はこれらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0030】
本願明細書に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置または方向を意味する用語が使われる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上使われるものであり、実施の形態が実際に実施される際の位置または方向とは関係しないものである。
【0031】
本願明細書に記載される説明において、「…の上面」または「…の下面」などと記載される場合、対象となる構成要素の上面自体または下面自体に加えて、対象となる構成要素の上面または下面に他の構成要素が形成された状態も含むものとする。すなわち、例えば、「Aの上面に設けられるB」と記載される場合、AとBとの間に別の構成要素「C」が介在することを妨げるものではない。
【0032】
<1.基板処理装置1の概要>
図1から
図8を参照しながら、本開示に係る基板処理装置1が説明される。
図1は、本開示に係る基板処理装置1の構成を模式的に示すブロック図である。
【0033】
基板処理装置1は供給回収部3、排出部5、処理部6、再生部7、および制御部90を備える。
【0034】
<1-1.供給回収部3>
図2は供給回収部3の構成を例示する模式図である。供給回収部3は第1の硫酸含有液を処理部6との間で供給と回収とを行う機能を有する。処理部6は基板処理を行う。第1の硫酸含有液は硫酸を含有する液であり、ペルオキソ一硫酸(H
2SO
5)およびペルオキソ二硫酸(H
2S
2O
8)のいずれかもしくは両方を含有する場合がある。後述されるように、第1の硫酸含有液におけるペルオキソ二硫酸の濃度は低いことが望ましい。
【0035】
供給回収部3は供給タンク10、供給配管100,220、循環配管102,110、排出液配管162、バルブ12A,100A,102A,162A、流量計112、ポンプ114、ヒータ116、温度計117、フィルタ119を有する。
【0036】
供給タンク10は第1の硫酸含有液を貯留する第1のタンクとして機能する。
【0037】
供給配管100には、後述されるように再生部7によって再生された硫酸(以下「再生後硫酸」とも称される)が流れる。バルブ100Aは供給配管100に設けられ、供給配管100に流れる再生後硫酸の流量を制御部90の制御の下で調整する。
【0038】
供給配管220には、硫酸供給源12から供給される硫酸が流れる。バルブ12Aは供給配管220に設けられ、供給配管220に流れる硫酸の流量を制御部90の制御の下で調整する。硫酸供給源12は、
図1においては基板処理装置1の外部に設けられる場合が例示されるが、基板処理装置1の内部に設けられてもよい。
【0039】
供給タンク10には供給配管100から第1の硫酸含有液が再生後硫酸として供給され、供給配管220から硫酸が供給される。
【0040】
循環配管102は、供給タンク10との間で第1の硫酸含有液を循環させる機能を有する。循環配管102には供給配管群106Gが連通し、循環配管102は供給配管群106Gを介して処理部6へ第1の硫酸含有液を供給する機能をも有する。
【0041】
バルブ102A、流量計112、ポンプ114、ヒータ116、温度計117、フィルタ119は、循環配管102において直列に設けられる。
【0042】
温度計117は循環配管102を流れる第1の硫酸含有液の温度を計測する。ヒータ116は、温度計117で計測される温度が例えば120℃になるように第1の硫酸含有液を加熱する。かかる温度の調整は、制御部90の制御の下で行われる。
【0043】
フィルタ119は循環配管102を流れる第1の硫酸含有液内の異物、例えばパーティクルを除去する。
【0044】
ポンプ114は循環配管102内の第1の硫酸含有液を、供給タンク10の底部から供給タンク10とは反対側へ加圧する。かかる加圧により第1の硫酸含有液は、供給タンク10の底部から第1の硫酸含有液の液面へ、循環配管102を流れる。
【0045】
制御部90は、処理レシピを参照して処理部6で行われる基板処理を把握する。制御部90は、流量計112で計測される第1の硫酸含有液の流量が、当該基板処理に十分な流量となるように、循環配管102を流れる第1の硫酸含有液の流量を、バルブ102Aに調整させる制御を行う。
【0046】
循環配管110にはリターン配管群108Gが連通する。リターン配管群108Gには、供給配管群106Gから供給されたが基板処理に用いられなかった第1の硫酸含有液が流入する。循環配管110には処理部6からリターン配管群108Gを介して第1の硫酸含有液が流入する。循環配管110に流入した第1の硫酸含有液は、供給タンク10へ、例えば供給タンク10が貯留する第1の硫酸含有液の液面へ供給される。このようにして処理部6から供給回収部3へ第1の硫酸含有液が回収される。
【0047】
供給タンク10には循環配管102,110から第1の硫酸含有液が供給される。
【0048】
排出液配管162は、供給タンク10から第1の硫酸含有液を排出する機能を有する。バルブ162Aは排出液配管162に設けられ、排出液配管162に流れる第1の硫酸含有液の流量を制御部90の制御の下で調整する。排出液配管162を介して供給タンク10から排出される第1の硫酸含有液は、排出部5へ供給される。
【0049】
<1-2.処理部6>
図3は処理部6の構成を例示する模式図である。処理部6は複数の(
図3における例示では6個の)処理ユニット600を有する。
【0050】
処理ユニット600の各々はバルブ106A,108A,200Aおよびノズル106Bを有する。処理ユニット600の各々には供給配管106、リターン配管108、および混合配管200が導入される。複数の供給配管106が供給配管群106Gを構成する。複数のリターン配管108がリターン配管群108Gを構成する。
【0051】
供給配管106には、循環配管102から第1の硫酸含有液が分岐して流入する。バルブ106Aは供給配管106に設けられ、供給配管106に流れる第1の硫酸含有液の流量を制御部90の制御の下で調整する。
【0052】
リターン配管108にはノズル106Bから第1の硫酸含有液が流入する。リターン配管108に流れる第1の硫酸含有液は循環配管110において合流して供給回収部3へ流入する。バルブ108Aはリターン配管108に設けられ、リターン配管108に流れる第1の硫酸含有液の流量を制御部90の制御の下で調整する。
【0053】
混合配管200には過酸化水素水供給源13(
図1参照)から過酸化水素水が流入する。バルブ200Aは混合配管200に設けられ、混合配管200に流れる過酸化水素水の流量を制御部90の制御の下で調整する。
【0054】
ノズル106Bは、第1の硫酸含有液と過酸化水素水とを処理液として基板Wに供給する。ノズル106Bには供給配管106、リターン配管108、および混合配管200が接続される。ノズル106Bには、バルブ106Aを経由して供給配管106によって循環配管102から第1の硫酸含有液が供給される。ノズル106Bには、バルブ200Aを経由して混合配管200によって過酸化水素水供給源13から過酸化水素水が供給される。ノズル106Bは、供給配管106から供給されながらも処理液に供されなかった第1の硫酸含有液を、バルブ108Aを経由してリターン配管108によって循環配管110へ流入させる。
【0055】
例えばノズル106Bは、後述されるようにして、第1の硫酸含有液を過酸化水素水と混合したり、混合せずにリターン配管108へ流入させる。
【0056】
過酸化水素水供給源13は、
図3において省略され、
図1においては基板処理装置1の外部に設けられる場合が例示されるが、基板処理装置1の内部に設けられてもよい。
【0057】
<1-3.処理ユニット600>
図4は、処理ユニット600および関連する構成を概略的に例示する模式図である。
図4では、
図3に例示される一つの供給配管106の、循環配管102とは反対側(循環配管102に流れる第1の硫酸含有液についての下流側;以下では単に「循環配管102よりも下流側」と称される)に配置される処理ユニット600の構成の例が示される。
図3に例示される他の供給配管106の、循環配管102よりも下流側に配置される処理ユニット600も、
図4に例示される構成と同様に構成される。
【0058】
処理ユニット600は、チャンバ80と、スピンチャック251と、処理カップ511とを備える。
【0059】
チャンバ80は内部空間を有する箱形を呈する。スピンチャック251は、チャンバ80内で、1枚の基板Wを水平姿勢で保持しつつ、鉛直な回転軸線Z1まわりに回転させる機能を有する。例えば基板Wの中央部が回転軸線Z1に上に位置する姿勢で、基板Wがスピンチャック251に保持される。
【0060】
処理カップ511は、スピンチャック251を取り囲み、回転軸線Z1に沿って延びる筒状の形状を呈する。
【0061】
チャンバ80は箱状の壁250Aを有する。壁250Aには開口部250Bが形成される。チャンバ80への基板Wの搬入およびチャンバ80からの基板Wの搬出は開口部250Bを経由する。
【0062】
チャンバ80は可動のシャッタ250Cを有する。開口部250Bは、シャッタ250Cによって開閉される。シャッタ250Cは、図示されないシャッタ昇降機構によって、開口部250Bを覆う閉位置(
図4において鎖線で示される)と、開口部250Bを開放する開位置(
図4において実線で示される)との間で昇降させられる。
【0063】
スピンチャック251は、スピンベース251Aと、複数のチャックピン251Bと、回転軸251Cと、スピンモータ251Dとを有する。
【0064】
スピンベース251Aは円板状を呈する。複数のチャックピン251Bは、スピンベース251Aの上面外周部から上方に突出する。複数のチャックピン251Bは、基板Wの周縁部を把持したり解放したりする。チャックピン251Bによって把持された基板Wは、スピンベース251Aと対向し、スピンチャック251において水平な姿勢に保持される。回転軸251Cは、スピンベース251Aの中央部から下方に延びる。スピンモータ251Dは、回転軸251Cを回転させることによって、複数のチャックピン251Bに把持されている状態の基板Wを回転させる。
【0065】
例えばスピンチャック251には、複数のチャックピン251Bによる基板Wの把持に代えて、基板Wの下面を真空吸着するスピンベースを有する真空吸着式のチャックが採用されてもよい。
【0066】
ノズル106Bは、チャンバ80の内側の所定部位(例えば、スピンベース251A)に向けて、処理液を吐出する。スピンベース251Aに基板Wが保持されているときの上記吐出は、ノズル106Bから基板Wへの処理液の供給に相当する。
【0067】
処理ユニット600には、他の用途の液を吐出するためのノズル(例えば、他の薬液を吐出するノズル、または、リンス液を吐出するノズル)が接続されていてもよい。
【0068】
処理カップ511は、スピンチャック251の周囲を取り囲んで設けられる。処理カップ511は図示されない昇降機構(例えばモータまたはシリンダ)によって、鉛直方向に昇降する。処理カップ511の上部は、その上端がスピンベース251Aに保持された基板Wよりも上側となる位置(
図4において処理カップ511の位置として例示される)と、当該基板Wよりも下側になる位置(図示省略)との間で昇降する。
【0069】
廃液配管122が、チャンバ80の底部で、かつ、処理カップ511の内側に設けられる。基板Wの上面から外側に飛散した廃液は、処理カップ511の内側面に受け止められる。処理カップ511に受け止められた廃液は、廃液配管122を介してチャンバ80の外部に適宜に排出される。
【0070】
回収配管124はいずれの廃液配管122にも連通する。廃液配管122を流れる廃液は回収配管124において合流する。廃液配管122にはバルブ122Aが設けられ、制御部90の制御のもと、廃液配管122から回収配管124へ流入する廃液の流量を調整する。
図1において処理ユニット600毎の廃液配管122の集合が廃液配管群122Gとして示される。
【0071】
排気口515が、チャンバ80の側部に設けられる。排気口515を通じて、チャンバ80内の雰囲気がチャンバ80外に適宜に排出される。図示されないカップ排気機構によって処理カップ511内の雰囲気が排気される。
【0072】
例えば供給回収部3が配置される位置と、処理部6が配置される空間との間に配管スペース8が設けられる。配管スペース8において、供給配管群106Gが循環配管102に連通し、リターン配管群108Gが循環配管110に連通し、廃液配管群122Gが回収配管124に連通する。
【0073】
<1-4.ノズル106B>
図5は、ノズル106Bの内部構造を例示する断面図である。
【0074】
ノズル106Bは、本体36と、弁体37と、空圧アクチュエータ38と、吐出口31とを有する。本体36は弁室45を有する。
【0075】
本体36には、第1の硫酸含有液、又は処理液を導く流路35が形成されている。弁体37は流路35を開閉する。空圧アクチュエータ38は、弁体37を軸方向X1に進退させて流路35を開閉させる。弁体37よりも吐出口31側の流路35は、混合配管200と連通する。混合配管200よりも吐出口31側の流路35は、処理液が流れる流路35cとして機能する。弁体37よりも吐出口31から遠い流路35は流路35a,35bに分岐する。
【0076】
本体36には、一対のジョイント48が接続されている。一方のジョイント48には、供給配管106が接続され、供給配管106と流路35aとが連通する。流路35aを供給配管106の一部と見ることもできる。他方のジョイント48には、リターン配管108が接続され、リターン配管108と流路35bとが連通する。流路35bをリターン配管108の一部と見ることもできる。
【0077】
流路35aは、供給配管106および弁室45に連通する。流路35bはリターン配管108および弁室45に連通する。流路35cは、弁室45および吐出口31に連通する。
【0078】
空圧アクチュエータ38は、シリンダ39、ピストン42、バネ43およびロッド44を有する。シリンダ39と弁室45とは、軸方向X1に沿って並んでいる。シリンダ39と弁室45との間は、隔壁41によって隔てられている。弁体37は弁室45内を進退する。
【0079】
シリンダ39は、ピストン42によって、隔壁41側の前室と、軸方向X1において当該ピストン42を挟む後室とに隔てられている。バネ43は、シリンダ39の後室側において、ピストン42と本体36との間に介挿されている。バネ43は、隔壁41に向けてピストン42を押圧している。
【0080】
本体36には、一対のジョイント47が接続されている。一方のジョイント47には、シリンダ39の前室に空気圧を伝達する不図示のチューブが接続される。他方のジョイント47には、シリンダ39の後室に空気圧を伝達する不図示のチューブが接続される。これらのチューブおよびジョイント47を介して、シリンダ39の前室または後室のいずれか一方に空気圧を伝達することによって、ピストン42がシリンダ39内を軸方向X1に沿って進退する。
【0081】
ロッド44は隔壁41を貫通して軸方向X1に沿って延びる。ロッド44の一端はピストン42に連結されている。ロッド44の他端は弁体37に連結されている。弁体37は例えば円板状を呈し、その径方向が軸方向X1と直交する。
【0082】
シリンダ39内でピストン42が軸方向X1に沿って進退すると、弁体37はロッド44を介して、弁室45内で軸方向X1に沿って進退する。
【0083】
弁室45は弁座面46を含む。弁座面46は隔壁41と対向し、例えば軸方向X1と直交する円環状を呈する。流路35a,35bは例えば弁座面46が呈する円環の内縁に接続される。弁体37の進退方向(軸方向X1)に沿って見たとき、弁室45の側方に流路35cが接続される。
【0084】
本体36は筒部49を含む。筒部49は下方へ突出し、その下方側の先端には吐出口31が形成される。混合配管200は筒部49の側方に導入され、流路35cに連通する。
【0085】
シリンダ39の前室および後室のいずれにも空気圧を作用させないとき、空圧アクチュエータ38は作動しない状態にある。このときピストン42は、バネ43によってシリンダ39内で弁室45側へ押圧され、弁室45内で弁体37が弁座面46に接触する。当該接触により流路35は流路35a,35bと流路35cとの間で閉じられる(
図5で例示される状態)。このとき、ピストン42は、隔壁41側に近接した位置にある。
【0086】
このとき、供給タンク10から供給配管106と流路35aとを通してノズル106Bへ供給される第1の硫酸含有液は、流路35bとリターン配管108とを経由して供給タンク10へ戻る。このように処理液に供せられずに第1の硫酸含有液が供給配管106からリターン配管108へ流れる状態は、以下では「ノズル循環状態」と称される。
【0087】
ノズル循環状態においても、循環配管102から供給配管106へ分流せずに循環配管102と供給タンク10との間でも第1の硫酸含有液が流れ得る。
【0088】
ノズル循環状態が得られている状況において、シリンダ39の前室に空気圧を伝達することにより、ピストン42は、バネ43の押圧力に抗して、シリンダ39の後室方向に後退する。このとき、弁室45内で弁体37が弁座面46から離れる。弁体37が弁座面46から離れることにより、流路35a,35cと弁室45とが連通し、流路35cと弁室45とが連通し、流路35a,35cと流路35cとが連通する。
【0089】
供給配管106と流路35aとを経由して供給タンク10から供給される第1の硫酸含有液が、流路35cへ流入する。このときにバルブ200Aが開くと、混合配管200から過酸化水素水が流路35cにおいて第1の硫酸含有液に混合される。当該混合の結果、処理液たるSPMが吐出口31から吐出される。吐出口31から処理液が吐出される状態は、以下「吐出状態」と称される。
【0090】
この吐出状態が得られている状況において、シリンダ39の前室への空気圧の伝達を停止することにより、あるいは当該停止と共にシリンダ39の後室に空気圧を伝達することにより、ピストン42は、バネ43の押圧力とともに、シリンダ39の前室方向に前進する。このとき、弁室45内で弁体37が弁座面46に接触する。弁体37が弁座面46に接触することにより、流路35a,35bと弁室45とが遮断され、流路35cと弁室45とが遮断され、流路35a,35bと流路35cとの間が閉じられる。このようにしてノズル循環状態が得られる。
【0091】
<1-5.排出部5>
図6は排出部5の構成を例示する模式図である。排出部5は基板処理装置1から、基板処理装置1にとって不要な液体を排出する機能を有する。排出部5は排出液タンク40とバルブ40Aとを有する。
【0092】
排出液タンク40には、排出液配管162を経由して供給回収部3、具体的には供給タンク10から第1の硫酸含有液が供給される。排出液タンク40には、排出液配管164を経由して再生部7から第2の硫酸含有液および廃液のいずれかもしくは両方が供給される。第2の硫酸含有液は、後に再生部7の構成と併せて説明される。
【0093】
排出液タンク40は、第1の硫酸含有液、第2の硫酸含有液および廃液のいずれかもしくはそれらの混合物を貯留する。排出液タンク40に貯留された液体はバルブ40Aを経由して基板処理装置1の外部へ排出される。バルブ40Aは、制御部90の制御の下で、排出液タンク40から排出される液体の流量を調整する。
【0094】
<1-6.再生部7>
図7は再生部7の構成を例示する模式図である。再生部7は、回収タンク30A,30Bと、バルブ124A,124B,136A,136Bと、ポンプ136と、回収配管126と、排出液配管164とを有する。
【0095】
回収配管124はバルブ124Aを介して回収タンク30Aへ、バルブ124Bを介して回収タンク30Bへ、それぞれ廃液を供給する。回収タンク30A,30Bは廃液を貯留する。回収タンク30Aはバルブ136Aを介して、回収タンク30Bはバルブ136Bを介して、それぞれポンプ136へ廃液を供給する。バルブ136A,136Bのいずれも、制御部90の制御の下、ポンプ136へ供給する廃液の流量を調整する。
【0096】
回収タンク30A,30Bに貯留された廃液は、後述される再生処理に供せられる。当該再生処理では廃液の温度が高いことは望ましくない。第1の硫酸含有液がノズル106Bへ供給されるときには、予めヒータ116(
図2参照)によって昇温されており、廃液の温度も高まっている。回収タンク30A,30Bは、廃液を貯留してその温度を、例えば60℃以下へ低下させる。回収タンク30A,30Bが廃液の貯留と再生処理への供給とを交互に行うことは、回収タンク30A,30Bのいずれか一方のみが採用される場合よりも、廃液の貯留と再生処理への供給との効率化に寄与する。例えば、バルブ124Aが開いているときにはバルブ136Aが閉じ、バルブ136Bが開く。例えばバルブ124Aが閉じているときにはバルブ136Aが開き、バルブ136Bが閉じる。
【0097】
ポンプ136は、バルブ136Aを介して回収タンク30Aから供給される廃液も、バルブ136Bを介して回収タンク30Bから供給される廃液も、回収配管126へ送出する。
【0098】
再生部7は、再生タンク20A,20Bと、電解セル21と、循環配管128,130と、供給配管132,134と、バルブ126A,126Bを有する。
【0099】
回収配管126から、バルブ126Aを介して再生タンク20Aへ、バルブ126Bを介して再生タンク20Bへ、それぞれ廃液が供給される。バルブ126A,126Bのいずれも、制御部90の制御の下、供給される廃液の流量を調整する。
【0100】
再生タンク20A,20Bは、第3の硫酸含有液を貯留する、第2のタンクとして機能する。第3の硫酸含有液は、廃液、第1の硫酸含有液、後述される第2の硫酸含有液のいずれか一つまたは複数を含む。
【0101】
循環配管130は、再生タンク20A,20Bと電解セル21との間で第3の硫酸含有液を循環させる。循環配管128は、再生タンク20A,20Bが貯留する第3の硫酸含有液を循環させる。
【0102】
供給配管132は再生タンク20Aから、供給配管134は再生タンク20Bから、それぞれ供給配管100へ第1の硫酸含有液を供給する。
【0103】
循環配管128には、バルブ14A,14B,128A,128Bと、ポンプ140と、ヒータ142と、温度計143と、フィルタ144とが設けられる。
【0104】
バルブ128Aは再生タンク20Aから循環配管128へ、バルブ128Bは再生タンク20Bから循環配管128へ、それぞれ流れる第1の硫酸含有液の流量を制御部90による制御の下で調整する。
【0105】
バルブ14Aは循環配管128から再生タンク20Aへ、バルブ14Bは循環配管128から再生タンク20Bへ、それぞれ流れる第1の硫酸含有液の流量を制御部90による制御の下で調整する。
【0106】
ポンプ140は、循環配管128に流れる第1の硫酸含有液を送液する。ヒータ142は、循環配管128に流れる第1の硫酸含有液を加熱する。温度計143は循環配管128に流れる第1の硫酸含有液の温度を計測する。フィルタ144は、循環配管128に流れる第1の硫酸含有液内の異物、例えばパーティクルを除去する。
【0107】
循環配管130には、バルブ16A,16B,130A,130Bと、濃度計146と、ポンプ148と、ヒータ150と、温度計151と、フィルタ152とが設けられる。
【0108】
バルブ130Aは再生タンク20Aから循環配管130へ、バルブ130Bは再生タンク20Bから循環配管130へ、それぞれ流れる第3の硫酸含有液の流量を制御部90による制御の下で調整する。
【0109】
バルブ16Aは循環配管130から再生タンク20Aへ、バルブ16Bは循環配管130から再生タンク20Bへ、それぞれ流れる第3の硫酸含有液の流量を制御部90による制御の下で調整する。
【0110】
濃度計146は、循環配管130に流れる第3の硫酸含有液における硫酸濃度を計測する。ここにいう「硫酸濃度」は、硫酸の濃度と過硫酸(ペルオキソ一硫酸およびペルオキソ二硫酸のいずれも過硫酸に該当する)の濃度とを含む。
【0111】
ポンプ148は、循環配管130に流れる第3の硫酸含有液を送液する。ヒータ150は、循環配管130に流れる第3の硫酸含有液を加熱する。温度計151は循環配管130に流れる第3の硫酸含有液の温度を計測する。フィルタ152は、循環配管130に流れる第3の硫酸含有液内の異物、例えばパーティクルを除去する。
【0112】
バルブ132Aは供給配管132に流れる第3の硫酸含有液の流量を、バルブ134Aは供給配管134に流れる第3の硫酸含有液の流量を、それぞれ制御部90による制御の下で調整する。
【0113】
再生部7において供給配管100には、ポンプ154と、ヒータ156と、温度計157と、フィルタ158とが設けられる。
【0114】
ポンプ154には、供給配管132およびバルブ132Aを介して再生タンク20Aから、供給配管134およびバルブ134Aを介して再生タンク20Bから、それぞれ第1の硫酸含有液が供給される。ポンプ154は、供給配管100に流れる第1の硫酸含有液を送液する。
【0115】
ヒータ156は、供給配管100に流れる第1の硫酸含有液を加熱する。温度計157は供給配管100に流れる第1の硫酸含有液の温度を計測する。フィルタ158は、供給配管100に流れる第1の硫酸含有液内の異物、例えばパーティクルを除去する。ヒータ156は供給配管100を流れる第1の硫酸含有液の温度制御を行う。このような温度制御は制御部90による制御の下で、温度計157による温度計測を援用して行われる。
【0116】
再生部7は、バルブ164A,164B,164C,164Dを有する。再生タンク20Aはバルブ164Aを介して、再生タンク20Bはバルブ164Bを介して、それぞれ排出液配管164へ第3の硫酸含有液を供給する。回収タンク30Aはバルブ164Cを介して、回収タンク30Bはバルブ164Dを介して、それぞれ排出液配管164へ廃液を供給する。バルブ164A,164B,164C,164Dによる流量の調整は、制御部90による制御の下で行われる。
【0117】
<1-7.制御部90>
図8は制御部90の構成を概念的に例示するブロック図である。制御部90は、電気回路を有する一般的なコンピュータによって構成されていてよい。具体的には、制御部90は、中央演算処理装置(central processing unit、すなわち、CPU)91、リードオンリーメモリ(read only memory、すなわち、ROM)92、ランダムアクセスメモリ(random access memory、すなわち、RAM)93、記憶装置94、入力部96、表示部97および通信部98と、これらを相互に接続するバスライン95とを備える。
【0118】
ROM92は基本プログラムを格納している。RAM93は、CPU91が所定の処理を行う際の作業領域として用いられる。記憶装置94は、不揮発性記憶装置(例えばフラッシュメモリまたはハードディスク装置)によって構成されている。入力部96は、例えば各種スイッチまたはタッチパネルによって構成されており、オペレータから入力設定指示(例えば処理レシピ)を受ける。表示部97は、例えば、液晶表示装置およびランプなどによって構成されており、CPU91の制御の下、各種の情報を表示する。通信部98は、例えばlocal area network(LAN)を介してのデータ通信機能を有する。
【0119】
記憶装置94には、基板処理装置1におけるそれぞれの構成の制御についての複数のモードがあらかじめ設定されている。CPU91が処理プログラム94Pを実行することによって、上記の複数のモードのうちの1つのモードが選択され、当該モードでそれぞれの構成が制御される。なお、処理プログラム94Pは、記録媒体に記憶されていてもよい。この記録媒体を用いれば、制御部90に処理プログラム94Pをインストールすることができる。また、制御部90が実行する機能の一部または全部は、必ずしもソフトウェアによって実現される必要はなく、専用のハードウェア、例えば論理回路によって実現されてもよい。
【0120】
<2.基板処理装置1の動作>
<2-1.処理液の生成>
基板処理装置1による基板処理方法は、処理ユニット600へ搬送された基板Wに対し処理液を吐出して基板処理を行う工程と、基板処理が行われた基板Wを洗浄する工程と、洗浄された基板Wを回転させて乾燥させる工程と、乾燥された基板Wを処理ユニット600から搬出する工程とを備える。これらの工程は、制御部90によって基板処理装置1におけるそれぞれの構成(例えばポンプ、ヒータ、バルブ、または、スピンモータ)の動作が制御されることによって行われる。
【0121】
供給タンク10に貯留される第1の硫酸含有液は、ポンプ114によって送液され、循環配管102と供給タンク10との間で循環する(
図2参照)。循環配管102における第1の処理液は、温度計117で計測される温度が例えば120℃になるようにヒータ116で温度調整され、フィルタ119で適宜に異物、例えばパーティクル、が除去される。
【0122】
制御部90は、処理レシピを参照して処理ユニット600で行われる基板処理を把握する。流量計112で計測される第1の硫酸含有液の流量が当該基板処理に十分な流量となるように、循環配管102で循環する第1の硫酸含有液の流量がバルブ102Aの、例えば開度によって調整される。バルブ102Aの調整は制御部90による制御の下で行われる。
【0123】
バルブ106Aを開くことによって、循環配管102および供給配管106を経由して、処理ユニット600へ第1の硫酸含有液が供給される(
図3参照)。
【0124】
ノズル106Bがノズル循環状態(
図5の弁体37が弁座面46に接触している状態)にあるとき、バルブ106A,108Aが開かれ、第1の硫酸含有液は循環配管102から供給配管106、リターン配管108を経由して循環配管110へ流れ、供給タンク10に戻される。
【0125】
このように、第1の硫酸含有液が供給配管106におけるノズル106B内まで流れて循環することは、ノズル106Bから処理液を吐出して基板処理を行う際に、各配管と処理液との温度差に起因する処理液の温度変化を抑制することに寄与する。例えば、ノズル循環状態においてリターン配管108を介して循環配管110へ流れる第1の硫酸含有液は、各配管の温度を維持する程度で最低限の流量に抑えられる。
【0126】
ノズル106Bが吐出状態(
図5の弁体37が弁座面46から離れている状態)にあるとき、バルブ106Aが開かれ、バルブ108Aが閉じられる。流路35cへ第1の硫酸含有液が供給される。吐出状態ではバルブ200Aも開かれ、流路35cには、混合配管200から過酸化水素水も供給される。流路35cにおいて第1の硫酸含有液と過酸化水素水とが混合され、吐出口31から処理液が吐出される。当該処理液においては、
2H
2SO
4+2H
2O
2→2H
2SO
5+2H
2O
のようにペルオキソ一硫酸が発生するので、第1の硫酸含有液におけるペルオキソ一硫酸の濃度が低いことは要求されない。
【0127】
ノズル106Bは第1の硫酸含有液を用いた処理液の生成に寄与する。吐出口31から吐出された処理液は基板Wの上面に到達し、基板処理が行われる。
【0128】
<2-2.廃液の回収>
基板Wに吐出され、基板処理に使われた処理液は廃液として、開状態のバルブ122Aを介して廃液配管122へ流れる。廃液は更に回収配管124へ流れて回収タンク30A,30Bに供給される。当該廃液の供給は、処理部6から再生部7への廃液の回収と見ることができる。
【0129】
再生部7においては、後述される再生処理によって、回収された廃液から第1の硫酸含有液が得られる。再生処理は、基板処理装置1へ新たに供給される硫酸と、基板処理装置1から排出される廃液とを低減し、資源をよりむだなく使えるようにし、環境にやさしい技術や生産の方法に寄与する。
【0130】
回収タンク30Aに貯留されている廃液はバルブ136Aを介して、回収タンク30Bに貯留されている廃液はバルブ136Bを介して、いずれもポンプ136によって回収配管126内で送液される(
図7参照)。当該廃液は、バルブ126Aを開くことで再生タンク20Aへ、バルブ126Bを開くことで再生タンク20Bへ、ポンプ136によって選択的に、あるいは両方に送液され得る。
【0131】
<2-3.第2の硫酸含有液の生成>
再生処理は、廃液から第2の硫酸含有液を生成する工程(以下「前工程」と仮称される)と、第2の硫酸含有液から第1の硫酸含有液を生成する工程(以下「後工程」と仮称される)とに分けて説明され得る。前工程は、廃液を電気分解して第2の硫酸含有液を生成する工程である。後工程は第2の硫酸含有液におけるペルオキソ二硫酸の濃度を低下させて第1の硫酸含有液を生成する工程である。
【0132】
説明を簡単にするため、まず再生タンク20Aにおいて再生処理がおこなわれる場合について説明する。前工程において、あるいは前工程に先立って、バルブ126A,164Aの調整により、再生タンク20Aには再生処理に適した量の廃液が貯留される。
【0133】
前工程および後工程において、バルブ128A,14Aは閉じ、循環配管128には再生タンク20Aが貯留する第3の硫酸含有液は流れない。バルブ132Aは閉じ、再生タンク20Aと供給配管100とは連通しない。バルブ164Aは閉じ、再生タンク20Aと排出液配管164とは連通しない。
【0134】
前工程において、バルブ16A,130Aが開き、ポンプ148が動作し、再生タンク20Aに貯留されていた第3の硫酸含有液は、電解セル21へ供給される。電解セル21は電気分解装置として機能する。電解セル21が動作し、第3の硫酸含有液は電解セル21によって電気分解を受けて再生タンク20Aへ貯留される。
【0135】
当該電気分解により、第3の硫酸含有液に含まれる水は、
2H2O→4H++O2+4e-
のように酸素(O2)と水素イオン(H+)とに分解される。酸素は気体となって排気される。
【0136】
当該電気分解において、第3の硫酸含有液に含まれるペルオキソ一硫酸は、
2H2SO5→2SO4
2-+4H++O2
のように、酸素と水素イオンと硫酸イオン(SO4
2-)とに分解される。酸素は気体となって排気される。
【0137】
水が酸素と水素イオンとに分解されることにより、第3の硫酸含有液における水の濃度は低下する。水の濃度の低下は硫酸濃度の上昇として検出される。
【0138】
第2の硫酸含有液は、廃液と比較して水の濃度が小さい。電気分解が行われることにより、再生タンク20Aが貯留する第3の硫酸含有液における廃液の割合は低下し、第2の硫酸含有液の割合が上昇する。
【0139】
濃度計146によって計測された硫酸濃度が所定値よりも大きいことを以て、第3の硫酸含有液における水の濃度が所望する上限よりも小さいと判断することができる。濃度計146は電解セル21を流れる液体(例えば第3の硫酸含有液)における水の濃度の見積もりに寄与する。
【0140】
例えば、再生タンク20Aに貯留された第3の硫酸含有液の全体が電解セル21を流れるのに必要な期間において連続して、計測された硫酸濃度が所定の範囲内に収まるとき、計測された硫酸濃度が再生タンク20Aに貯留された第3の硫酸含有液の硫酸濃度であると考えることができる。このときの硫酸濃度が所定値よりも大きいとき、再生タンク20Aに貯留された第3の硫酸含有液の全体における水の濃度が所望する上限よりも小さい、と見積もることができる。計測された硫酸濃度が所定値よりも大きくなると、電気分解は終了し、前工程も終了する。
【0141】
廃液における水の濃度を低下させる処理として電気分解を利用することは、当該処理として蒸留を採用する場合と比較して、設備負担を小さくし、必要な時間を短くすることに寄与する。電気分解の利用は、廃液を硫酸と過酸化水素水とを含む処理液へ簡易に再利用することに寄与する。
【0142】
電気分解を行う前に、再生タンク20Aに貯留された第3の硫酸含有液の硫酸濃度が所定値以上であるとき、電気分解を行う必要はない。よって例えば硫酸濃度が第1の所定値よりも小さいときのみ、水の濃度が所望する上限を越えていると判断して電気分解を開始する。そして電気分解を開始した後、第1の所定値以上の第2の所定値よりも硫酸濃度が大きくなったときに、電気分解を停止する。電気分解の停止により、前工程は終了する。
【0143】
電気分解が停止した後、
2SO4
2-+4H+→2H2SO4
のようにして硫酸が得られる。硫酸イオン(SO4
2-)と結合しない水素イオン(H+)は電解セル21の陰極(不図示)から電子(e-)を受け取り、水素(H2)となって排気される。
【0144】
前工程において循環配管130は、電解セル21と共に、廃液が電気分解を受けて第2の硫酸含有液が生成される電解経路として機能する。濃度計146によって測定された硫酸濃度で電気分解の程度が見積もられるので、濃度計146も電解経路に含められ得る。
【0145】
<2-4.第1の硫酸含有液の生成>
電気分解においては水の濃度の減少と並行して、ペルオキソ二硫酸の濃度が上昇する。第1の硫酸含有液におけるペルオキソ二硫酸の濃度が変動すると、処理液におけるペルオキソ二硫酸の濃度も変動し、基板処理の安定性を損ない易い。第1の硫酸含有液におけるペルオキソ二硫酸の濃度が低いことは、処理液を用いた基板処理の安定性に寄与する。
【0146】
後工程においては、電解セル21による電気分解は停止し、循環配管130を流れる第2の硫酸含有液がヒータ150を用いて加熱される。
【0147】
後工程においてバルブ16A,130Aが開き、ポンプ148が動作する。前工程によって再生タンク20Aに貯留されていた第2の硫酸含有液は、ヒータ150へ供給される。第2の硫酸含有液はヒータ150によって加熱されて再生タンク20Aへ貯留される。例えばヒータ150は循環配管130を流れる第2の硫酸含有液を90℃以上に加熱する。このような温度制御は制御部90による制御の下、温度計151による温度計測を援用して行われる。
【0148】
このような加熱により、第2の硫酸含有液におけるペルオキソ二硫酸が分解し、
S2O8
2-→2SO4
-・
2SO4
-・+2H2O→2HSO4
2-+2OH・
2HSO4
-+xH2O→2H2SO5+xH2
2SO4
-・+2H2O→2HSO4
2-+2OH・
で示されるように硫酸とペルオキソ一硫酸とが生成される(記号「・」はラジカルであることを示す:以下同様)。かかる分解はペルオキソ二硫酸の失活とも表現される。当該失活を実現する温度は以下においては失活用温度とも称される。例えば失活用温度は90℃である。
【0149】
ペルオキソ一硫酸は処理液においても生成される。よって、第1の硫酸含有液におけるペルオキソ一硫酸の濃度が、処理液を用いた基板処理の安定性に与える影響は小さい。
【0150】
濃度計146が計測する硫酸濃度では、硫酸の濃度と、ペルオキソ一硫酸の濃度と、ペルオキソ二硫酸の濃度とが区別されない。例えばペルオキソ二硫酸の濃度が所望の上限よりも小さくなることは、ヒータ150によって加熱を行った時間で見積もられる。後工程は、その実行される時間が所定時間を越えたことを以て終了する。例えば所定時間は5分である。
【0151】
後工程において循環配管130は、ヒータ150と共に、第2の硫酸含有液の濃度を低下させて第1の硫酸含有液を生成する、濃度低下装置として機能する。
【0152】
前工程と後工程とを併せて考えると、再生タンク20Aに貯留された第3の硫酸含有液は、再生タンク20Aと、電解経路と、濃度低下装置との間を環流する、ということができる。かかる環流は再生処理に寄与する。
【0153】
後工程が終了すると、つまり再生処理が終了すると、再生タンク20Aに貯留された第1の硫酸含有液の温度が、供給タンク10への貯留に適した温度に保持される。このような温度の保持は、循環配管128を用いた循環において行われ、以下で「液温保持処理」と仮称される場合がある。
【0154】
具体的にはバルブ16A,130A,126A,132A,164Aが閉じ、バルブ14A,128Aが開き、ポンプ140およびヒータ142が動作する。再生タンク20Aに貯留されている第1の硫酸含有液は、ポンプ140によって循環配管128に送液されつつ、ヒータ142で例えば60℃以上に温度調整される。このような温度制御は制御部90による制御の下、温度計143による温度計測を援用して行われる。
【0155】
循環配管128を流れる第1の硫酸含有液は、フィルタ144で適宜に異物、例えばパーティクルが除去され、バルブ14Aを介して再生タンク20Aに戻る。
【0156】
循環配管128を用いた循環によって、再生タンク20Aに貯留された第1の硫酸含有液に液温保持処理が行われているとき、再生タンク20Bに貯留された第3の硫酸含有液において再生処理が行われてもよい。
【0157】
具体的には前工程および後工程において、バルブ128B,14Bは閉じ、循環配管128には再生タンク20Bが貯留する第3の硫酸含有液は流れない。バルブ134Aは閉じ、再生タンク20Bと供給配管100とは連通しない。バルブ164Bは閉じ、再生タンク20Bと排出液配管164とは連通しない。
【0158】
前工程において、バルブ16B,130Bが開き、ポンプ148が動作し、再生タンク20Bに貯留されていた第3の硫酸含有液は、電解セル21へ供給される。電解セル21が動作し、第3の硫酸含有液は電解セル21によって電気分解を受けて再生タンク20Bへ貯留される。濃度計146によって計測された硫酸濃度が所定値よりも大きくなると、電気分解は終了し、前工程も終了する。
【0159】
後工程においては、電解セル21による電気分解は停止し、循環配管130を流れる第2の硫酸含有液がヒータ150を用いて加熱される。後工程においてバルブ16B,130Bが開き、ポンプ148が動作し、前工程によって再生タンク20Bに貯留されていた第2の硫酸含有液は、ヒータ150へ供給される。第2の硫酸含有液はヒータ150によって加熱されて再生タンク20Bへ貯留される。例えばヒータ150は循環配管130を流れる第2の硫酸含有液を90℃以上に加熱する。
【0160】
後工程における加熱により、ペルオキソ二硫酸は上述のように失活する。ヒータ150は当該失活に寄与する。第2の硫酸含有液が失活用温度にある時間が長いほど、当該失活の程度は高くなる。当該失活の程度は、第2の硫酸含有液が失活用温度にある時間によって見積もられる。後工程は、その実行される時間が所定時間を越えたことを以て終了する。
【0161】
再生処理においては第3の硫酸含有液に対する電気分解が行われるので、循環配管130は、あるいは循環配管130に設けられる電解セル21、濃度計146、ポンプ148、ヒータ150、温度計151、フィルタ152と共に循環配管130は、電解系統配管とも仮称される。
【0162】
液温保持処理においては第1の硫酸含有液に対する温度調節が行われるので、循環配管128は、あるいは循環配管128に設けられるポンプ140、ヒータ142、温度計143、フィルタ144と共に循環配管128は、温調系統配管とも仮称される。
【0163】
再生タンク20Bにおいても、循環配管128およびポンプ140、ヒータ142を用いた液温保持処理が行われる。ヒータ142は液温保持処理に寄与する。液温保持処理において、バルブ128B,14Bは開き、バルブ126B,164B,130B,16B,134Bは閉じる。
【0164】
再生タンク20Bにおいて液温保持処理が行なわれる場合、再生タンク20Aを用いた再生処理が行われてもよい。再生タンク20Aを用いた再生処理が行われつつ再生タンク20Bを用いた液温保持処理が行われ、再生タンク20Bを用いた再生処理が行われつつ再生タンク20Aを用いた液温保持処理が行われることは、再生処理と液温保持処理の効率化に寄与する。
【0165】
再生タンク20Aを用いた再生処理と、再生タンク20Bを用いた再生処理とが並行して行われてもよいし、再生タンク20Aを用いた液温保持処理と、再生タンク20Bを用いた液温保持処理とが並行して行われてもよい。
【0166】
再生処理において廃液中の有機物も分解される。例えば当該有機物は、基板Wの表面に形成されており処理液によって剥離されたレジストである。電気分解において有機物は、
S2O8
2-→2SO4
-・
2SO4
-・+2H2O→2HSO4
2-+2OH・
C,H(有機物)+2SO4
-・→2HSO4
-+xCO2+yH2O
2HSO4
-+xH2O→2H2SO5+xH2
C,H(有機物)+2OH・→xCO2+yH2O
のように分解される。
【0167】
かかる有機物の分解は第3の硫酸含有液に含まれる異物の低減に寄与し、フィルタ144,152,158の機能の維持に寄与する。
【0168】
<2-5.第1の硫酸含有液の供給>
再生タンク20Aと再生タンク20Bとは、切り替え可能に供給タンク10へ第1の硫酸含有液を供給可能である。例えば、バルブ14A,128Aが開いて循環配管128によって第1の硫酸含有液が循環しつつ、バルブ132Aが開いて再生タンク20Aから供給配管100を介して供給タンク10へ処理液が供給される。このとき、バルブ130Aおよびバルブ134Aを閉じて、回収タンク30A,30Bからの廃液を再生タンク20Bに貯留することもできる。
【0169】
再生タンク20Aに貯留されている第1の硫酸含有液の温度が所望の温度に達していない場合、バルブ128Aを開きつつバルブ130A,132Aを閉じて循環配管128を用いた液温保持処理を継続し、バルブ134Aを開いて、循環配管130で循環する所望の温度に達している第1の硫酸含有液を再生タンク20Bから供給タンク10へ供給することができる。このような操作は供給タンク10へ連続的に第1の硫酸含有液を供給することに寄与する。
【0170】
上記のことから供給配管100は供給配管132と共に、供給タンク10へ第1の硫酸含有液を供給する経路である供給経路として考えられる。同様に、供給配管100は供給配管134と共に、供給タンク10へ第1の硫酸含有液を供給する経路である供給経路として考えられる。当該供給経路を流れる第1の硫酸含有液が上述の再生後硫酸に相当する。
【0171】
再生タンク20Aから供給配管100への第1の硫酸含有液の供給はバルブ132Aの開度によって、再生タンク20Bから供給配管100への第1の硫酸含有液の供給はバルブ134Aの開度によって、それぞれ調整される。供給配管100から供給タンク10への第1の硫酸含有液の供給は、バルブ100Aの開度によって調整される。供給配管220から供給タンク10への硫酸の供給は、バルブ12Aの開度によって調整される。
【0172】
バルブ12A,100A,132A,134Aの開度は制御部90によって、例えば供給タンク10における第1の硫酸含有液の貯留量に応じて、制御される。例えば供給配管100から供給される再生後硫酸としての第1の硫酸含有液のみでは供給タンク10への所定量の貯留ができないときに、バルブ12Aを開いて供給配管220から硫酸が供給タンク10へ供給される。
【0173】
<3.硫酸再生処理>
上記のように基板処理装置1が動作し、廃液から第1の硫酸含有液が生成される。第1の硫酸含有液は再生後硫酸として供給タンク10に供給され、処理液の生成に供される。
【0174】
図9は廃液から第1の硫酸含有液として硫酸を再生する処理を例示するフローチャートである。
図9および以下では当該処理が「硫酸再生処理」と略記される。硫酸再生処理はステップS11,S12,S13,S14,S15,S16,S17を備える。硫酸再生処理はステップS18を含む場合もある。
【0175】
硫酸再生処理が開始される時点では、再生タンク20A,20Bのいずれかまたは両方が電解系統配管に接続されている状態にある。再生タンク20Aが電解系統配管に接続されている状態では、バルブ16A,130Aが開き、バルブ14A,128Aが閉じている。再生タンク20Bが電解系統配管に接続されている状態では、バルブ16B,130Bが開き、バルブ14B,128Bが閉じている。再生タンク20A,20Bのいずれかまたは両方が電解系統配管に接続されている状態でステップS11が実行される。
【0176】
ステップS11では第3の硫酸含有液における硫酸濃度が第1所定値よりも小さいかが判断される。上述の通り濃度計146は硫酸の濃度と過硫酸の濃度とを区別しない。第1の所定値は、第3の硫酸含有液における水の濃度の上限として所望される値に対応する。
【0177】
ステップS11における判断結果が否定的であるとき、第3の硫酸含有液における水の濃度が上限として所望される値以下であると見積もられる。このとき、ステップS12,S13,S14,S15,S16が実行されることなくステップS17が実行される。
【0178】
ステップS11における判断結果が肯定的であるとき、第3の硫酸含有液における水の濃度が上限として所望される値よりも大きいと見積もられる。このとき、ステップS12,S13,S14,S15,S16が実行されてからステップS17が実行される。
【0179】
ステップS12は電気分解を開始する。ステップS12の実行は、前工程の開始に相当する。当該電気分解により、水が酸素と水素イオンとに分解され、硫酸濃度は上昇する。
【0180】
ステップS12によって開始した電気分解が継続されつつ、ステップS13が実行される。ステップS13では硫酸濃度が第2所定値よりも大きいかが判断される。上述の通り第2の所定値は第1の所定値以上に設定される。ステップS13における判断結果が肯定的であるとき、第3の硫酸含有液における水の濃度は、その上限として所望される値以下であると見積もられる。このとき、第3の硫酸含有液から第2の硫酸含有液が生成されたと考えられ、ステップS14において電気分解が停止される。
【0181】
ステップS13における判断結果が否定的であるとき、ステップS13が繰り返し実行され、当該判断結果が肯定的となるまで電気分解が継続される。
【0182】
ステップS14における電気分解の停止により前工程は終了する。ステップS14において電気分解が停止されたのち、ステップS15が実行される。
【0183】
ステップS15において、ステップS12,S13,S14の実行の対象となった再生タンク20A,20Bに貯留される第2の硫酸含有液の温度(図において「液温」と略記)が失活用温度に調整される。ステップS15の実行は後工程に相当する。
【0184】
ペルオキソ二硫酸の失活の程度は、第2の硫酸含有液が失活用温度に維持される時間によって見積もられる。後工程は、その実行される時間が所定時間を越えたことを以て終了する。第2の硫酸含有液が失活用温度に調整されてから所定時間が経過したかがステップS16において判断される。ステップS16において、ステップS15が実行されてから所定時間が経過したかが判断される。
【0185】
ステップS16における判断結果が否定的であるとき、ステップS16が繰り返し実行され、当該判断結果が肯定的となるまで液温が失活用温度に調整され続ける。
【0186】
ステップS16における判断結果が肯定的であるとき、ペルオキソ二硫酸は、その濃度が所望の値より小さくなるまで失活したと考えられる。かかる失活により、第2の硫酸含有液から第1の硫酸含有液が生成される。ステップS16において肯定的な判断が得られて、後行程が終了する。
【0187】
ステップS16における判断結果が肯定的であれば、ステップS17が実行され、電解系統配管から温調系統配管への切替が行われる。当該切替は、再生タンク20Aに関してみれば、バルブ16A,130Aが閉じ、バルブ14A,128Aが開くことで実現される。当該切替は、再生タンク20Bに関してみれば、バルブ16B,130Bが閉じ、バルブ14B,128Bが開くことで実現される。ステップS17が実行されて硫酸再生処理は終了する。
【0188】
硫酸再生処理は、更にステップS18を備えている場合も想定される。ステップS18はステップS17が実行された後に、ステップS15,S16によって生成された第1の硫酸含有液の温度(図において「液温」と略記)を処理用温度に調整する。ここにいう「処理用温度」は、供給タンク10への貯留に適した温度である。ステップS18は液温保持処理に相当する。
【0189】
<4.変形>
上記実施形態において、例えば、供給回収部3において供給配管100にインラインヒータを設けて、再生部7におけるヒータ156が省略されてもよい。
【0190】
濃度計146はペルオキソ二硫酸の濃度を、硫酸の濃度およびペルオキソ一硫酸の濃度と区別して測定できる場合もあり得る(例えば分光分析など)。ステップS16の判断はペルオキソ二硫酸の失活の程度を判断する。上記の場合には、ステップS16における判断の条件は「ペルオキソ二硫酸の濃度は所定の濃度未満であるか」に変更され得る。
【0191】
なお、上記各実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0192】
1 基板処理装置
10 供給タンク
20A,20B 再生タンク
21 電解セル
100 供給配管
106B ノズル
146 濃度計
150,156 ヒータ
128,130 循環配管
W 基板
【手続補正書】
【提出日】2024-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
SPMが含む過酸化水素水は、基板処理において水(H2
O)へ分解する。基板処理に用いられた後の処理液(以下「廃液」と称される)は、基板処理に用いられる前の処理液と比較して硫酸の濃度が低下する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
シリンダ39は、ピストン42によって、隔壁41側の前室と、軸方向X1において当該ピストン42を前室と共に挟む後室とに隔てられている。バネ43は、シリンダ39の後室側において、ピストン42と本体36との間に介挿されている。バネ43は、隔壁41に向けてピストン42を押圧している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0163
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0163】
再生タンク20Bにおいても、循環配管128およびポンプ140、ヒータ142を用いた液温保持処理が行われる。ヒータ142は液温保持処理に寄与する。液温保持処理において、バルブ128B,14Bは開き、バルブ126B,164B,130B,16B,134Aは閉じる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0180
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0180】
ステップS12によって開始した電気分解が継続されつつ、ステップS13が実行される。ステップS13では硫酸濃度が第2所定値よりも大きいかが判断される。第2の所定値は第1の所定値以上に設定される。ステップS13における判断結果が肯定的であるとき、第3の硫酸含有液における水の濃度は、その上限として所望される値以下であると見積もられる。このとき、第3の硫酸含有液から第2の硫酸含有液が生成されたと考えられ、ステップS14において電気分解が停止される。