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特開2024-116829駆動回路、信号伝達装置、電子機器、車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116829
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】駆動回路、信号伝達装置、電子機器、車両
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/0812 20060101AFI20240821BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240821BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240821BHJP
   H03K 17/689 20060101ALI20240821BHJP
   H03K 17/14 20060101ALI20240821BHJP
   H03K 17/08 20060101ALN20240821BHJP
   H03K 17/16 20060101ALN20240821BHJP
【FI】
H03K17/0812
H01L27/04 L
H01L27/04 U
H01L27/04 A
H01L27/04 H
H01L27/06 102A
H01L27/088 J
H03K17/689
H03K17/14
H03K17/08 Z
H03K17/16 Z
H03K17/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022640
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三島 光紀
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
5J055
【Fターム(参考)】
5F038AZ04
5F038BH09
5F038BH10
5F038BH15
5F038CA10
5F038CA18
5F038CD02
5F038CD05
5F038CD10
5F038EZ02
5F038EZ07
5F048AA05
5F048AA07
5F048AB10
5F048AC01
5F048AC10
5F048BA01
5F048BA14
5F048BA15
5F048BF02
5F048BF07
5F048BF12
5F048CC18
5J055AX12
5J055AX34
5J055BX16
5J055CX24
5J055CX28
5J055DX09
5J055EX07
5J055EY01
5J055EY05
5J055EY07
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY21
5J055EZ10
5J055GX01
5J055GX05
5J055GX07
5J055GX08
5J055GX09
(57)【要約】
【課題】スイッチ素子の駆動時に電圧サージ抑制と損失低減を両立する。
【解決手段】駆動回路410は、基準電圧VEE2の印加端とスイッチ素子TR1の制御端との間にそれぞれ並列に接続されるトランジスタ413F及び413Sと、スイッチ素子TR1のオフ遷移期間の途中でトランジスタ413F及び413Sのうち少なくとも一つをオフ状態とする区間を設けるようにトランジスタ413F及び413Sをそれぞれ制御するように構成されるロジック411と、を備える。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧又は基準電圧の印加端とスイッチ素子の制御端との間にそれぞれ並列に接続される複数のトランジスタと、
前記スイッチ素子のオン遷移期間又はオフ遷移期間の途中で前記複数のトランジスタのうち少なくとも一つをオフ状態とする区間を設けるように前記複数のトランジスタをそれぞれ制御するように構成されるロジックと、
を備える駆動回路。
【請求項2】
前記ロジックは、前記オン遷移期間又は前記オフ遷移期間において、所定の第1時間に亘って前記複数のトランジスタをいずれもオン状態としてから、所定の第2時間に亘って前記複数のトランジスタのうち少なくとも一つをオフ状態とし、その後に前記複数のトランジスタの全てを再びオン状態とする、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記第1時間及び前記第2時間は、少なくとも一方が前記スイッチ素子の温度情報に応じて可変制御される、請求項2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記スイッチ素子の制御端に接続されるように構成された複数の外部端子を備え、
前記複数のトランジスタは、それぞれ、前記電源電圧又は前記基準電圧の印加端と前記複数の外部端子との間に接続される、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記複数のトランジスタは、前記電源電圧の印加端と前記複数の外部端子との間にそれぞれ接続される複数の上側トランジスタと、前記基準電圧の印加端と前記複数の外部端子との間にそれぞれ接続される複数の下側トランジスタと、を含む、請求項4に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記複数の外部端子は、複数の上側出力端子と、複数の下側出力端子と、を含み、
前記複数のトランジスタは、前記電源電圧の印加端と前記複数の上側出力端子との間にそれぞれ接続される複数の上側トランジスタと、前記基準電圧の印加端と前記複数の下側出力端子との間にそれぞれ接続される複数の下側トランジスタと、を含む、請求項4に記載の駆動回路。
【請求項7】
スイッチ素子を駆動するように構成されたドライバと、
前記スイッチ素子の温度情報に応じて前記ドライバのスルーレートを切り替えるように構成されたロジックと、
を備える、駆動回路。
【請求項8】
入力パルス信号から送信パルス信号を生成するように構成された第1チップと、
受信パルス信号から前記スイッチ素子を駆動するための出力パルス信号を生成するように構成された第2チップと、
前記第1チップと前記第2チップとの間を絶縁しつつ前記送信パルス信号を前記受信パルス信号として伝達するように構成された第3チップと、
を単一のパッケージに封止して成り、
請求項1~7のいずれか一項に記載の駆動回路は、前記第2チップに集積化される、信号伝達装置。
【請求項9】
請求項8に記載の信号伝達装置と、
前記駆動回路により駆動されるように構成された前記スイッチ素子と、
を備える、電子機器。
【請求項10】
請求項9に記載の電子機器を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動回路、信号伝達装置、電子機器、及び、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一次回路系と二次回路系との間を電気的に絶縁しつつ、一次回路系と二次回路系との間で信号を伝達する信号伝達装置は、様々なアプリケーション(電源装置及びモータ駆動装置など)に用いられている。
【0003】
上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1及び2を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6755734号明細書
【特許文献2】米国特許第9601985号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二次回路系におけるスイッチ素子の駆動制御については、さらなる改善(電圧サージ抑制と損失低減の両立)の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、本明細書中に開示されている駆動回路は、電源電圧又は基準電圧の印加端とスイッチ素子の制御端との間にそれぞれ並列に接続される複数のトランジスタと、前記スイッチ素子のオン遷移期間又はオフ遷移期間の途中で前記複数のトランジスタのうち少なくとも一つをオフ状態とする区間を設けるように前記複数のトランジスタをそれぞれ制御するように構成されるロジックと、を備える。
【0007】
なお、その他の特徴、要素、ステップ、利点、及び、特性については、以下に続く発明を実施するための形態及びこれに関する添付の図面によって、さらに明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、スイッチ素子の駆動時に電圧サージ抑制と損失低減を両立することのできる駆動回路、並びに、これを用いた信号伝達装置、電子機器及び車両を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、信号伝達装置の基本構成を示す図である。
図2図2は、トランスチップの基本構造を示す図である。
図3図3は、2チャンネル型のトランスチップとして用いられる半導体装置の斜視図である。
図4図4は、図3に示す半導体装置の平面図である。
図5図5は、図3の半導体装置において低電位コイルが形成された層を示す平面図である。
図6図6は、図3の半導体装置において高電位コイルが形成された層を示す平面図である。
図7図7は、図6に示すVIII-VIII線に沿う断面図である。
図8図8は、図7に示す領域XIIIの拡大図(分離構造)を示す図である。
図9図9は、トランスチップのレイアウト例を模式的に示す図である。
図10図10は、信号伝達装置の第1実施形態を示す図である。
図11図11は、第1実施形態におけるゲート抵抗切替動作の第1例(低温時)を示す図である。
図12図12は、第1実施形態におけるゲート抵抗切替動作の第2例(高温時)を示す図である。
図13図13は、信号伝達装置の第2実施形態を示す図である。
図14図14は、第2実施形態におけるゲート抵抗切替動作の一例を示す図である。
図15図15は、車両の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<信号伝達装置(基本構成)>
図1は、信号伝達装置の基本構成を示す図である。本構成例の信号伝達装置200は、一次回路系200p(VCC1-GND1系)と二次回路系200s(VCC2-GND2系)との間を絶縁しつつ、一次回路系200pから二次回路系200sにパルス信号を伝達し、二次回路系200sに設けられたスイッチ素子(不図示)のゲートを駆動する半導体集積回路装置(いわゆる絶縁ゲートドライバIC)である。例えば、信号伝達装置200は、コントローラチップ210と、ドライバチップ220と、トランスチップ230と、を単一のパッケージに封止して成る。
【0011】
コントローラチップ210は、電源電圧VCC1(例えばGND1基準で最大7V)の供給を受けて動作する半導体チップである。コントローラチップ210には、例えば、パルス送信回路211と、バッファ212及び213が集積されている。
【0012】
パルス送信回路211は、入力パルス信号INに応じて送信パルス信号S11及びS21を生成するパルスジェネレータである。より具体的に述べると、パルス送信回路211は、入力パルス信号INがハイレベルである旨を通知するときには、送信パルス信号S11のパルス駆動(単発または複数発の送信パルス出力)を行い、入力パルス信号INがローレベルである旨を通知するときには、送信パルス信号S21のパルス駆動を行う。すなわち、パルス送信回路211は、入力パルス信号INの論理レベルに応じて、送信パルス信号S11及びS21のいずれか一方をパルス駆動する。
【0013】
バッファ212は、パルス送信回路211から送信パルス信号S11の入力を受けて、トランスチップ230(具体的にはトランス231)をパルス駆動する。
【0014】
バッファ213は、パルス送信回路211から送信パルス信号S21の入力を受けて、トランスチップ230(具体的にはトランス232)をパルス駆動する。
【0015】
ドライバチップ220は、電源電圧VCC2(例えばGND2基準で最大30V)の供給を受けて動作する半導体チップである。ドライバチップ220には、例えば、バッファ221及び222と、パルス受信回路223と、ドライバ224が集積されている。
【0016】
バッファ221は、トランスチップ230(具体的にはトランス231)に誘起される受信パルス信号S12を波形整形してパルス受信回路223に出力する。
【0017】
バッファ222は、トランスチップ230(具体的にはトランス232)に誘起される受信パルス信号S22を波形整形してパルス受信回路223に出力する。
【0018】
パルス受信回路223は、バッファ221及び222を介して入力される受信パルス信号S12及びS22に応じてドライバ224を駆動することにより出力パルス信号OUTを生成する。より具体的に述べると、パルス受信回路223は、受信パルス信号S12のパルス駆動を受けて出力パルス信号OUTをハイレベルに立ち上げる一方、受信パルス信号S22のパルス駆動を受けて出力パルス信号OUTをローレベルに立ち下げるようにドライバ224を駆動する。すなわち、パルス受信回路223は、入力パルス信号INの論理レベルに応じて出力パルス信号OUTの論理レベルを切り替える。なお、パルス受信回路223としては、例えば、RSフリップフロップを好適に用いることができる。
【0019】
ドライバ224は、パルス受信回路223の駆動制御に基づいて出力パルス信号OUTを生成する。
【0020】
トランスチップ230は、トランス231及び232を用いてコントローラチップ210とドライバチップ220との間を直流的に絶縁しつつ、パルス送信回路211から入力される送信パルス信号S11及びS21をそれぞれ受信パルス信号S12及びS22としてパルス受信回路223に出力する。なお、本明細書中において、「直流的に絶縁する」とは、絶縁すべき対象物が導体では接続されていないということである。
【0021】
より具体的に述べると、トランス231は、一次側コイル231pに入力される送信パルス信号S11に応じて、二次側コイル231sから受信パルス信号S12を出力する。一方、トランス232は、一次側コイル232pに入力される送信パルス信号S21に応じて、二次側コイル232sから受信パルス信号S22を出力する。
【0022】
このように、絶縁間通信に用いられるスパイラルコイルの特性上、入力パルス信号INは、2本の送信パルス信号S11及びS21(=ライズ信号及びフォール信号に相当)に分離された後、2つのトランス231及び232を介して一次回路系200pから二次回路系200sに伝達される。
【0023】
なお、本構成例の信号伝達装置200は、コントローラチップ210及びドライバチップ220とは別に、トランス231及び232のみを搭載するトランスチップ230を独立に有しており、これら3つのチップを単一のパッケージに封止して成る。
【0024】
このような構成とすることにより、コントローラチップ210、及び、ドライバチップ220については、いずれも一般の低耐圧~中耐圧プロセス(数V~数十V耐圧)で形成することができるので、専用の高耐圧プロセス(数kV耐圧)を用いる必要がなくなり、製造コストを低減することが可能となる。
【0025】
なお、信号伝達装置200は、例えば、車両に搭載される車載機器の電源装置またはモータ駆動装置などで好適に利用することができる。上記の車両には、エンジン車のほか、電動車(BEV[battery electric vehicle]、HEV[hybrid electric vehicle」、PHEV/PHV(plug-in hybrid electric vehicle/plug-in hybrid vehicle]、又は、FCEV/FCV(fuel cell electric vehicle/fuel cell vehicle]などのxEV)も含まれる。
【0026】
<トランスチップ(基本構造)>
次に、トランスチップ230の基本構造について説明する。図2は、トランスチップ230の基本構造を示す図である。本図のトランスチップ230において、トランス231は、上下方向に対向する一次側コイル231pと二次側コイル231sを含む。トランス232は、上下方向に対向する一次側コイル232pと二次側コイル232sを含む。
【0027】
一次側コイル231p及び232pは、いずれも、トランスチップ230の第1配線層(下層)230aに形成されている。二次側コイル231s及び232sは、いずれも、トランスチップ230の第2配線層(本図では上層)230bに形成されている。なお、二次側コイル231sは、一次側コイル231pの直上に配置され、一次側コイル231pに対向している。また、二次側コイル232sは、一次側コイル232pの直上に配置され、一次側コイル232pに対向している。
【0028】
一次側コイル231pは、内部端子X21に接続された第1端を始点として、内部端子X21の周囲を時計回りで取り囲むように螺旋状に敷設されており、その終点に相当する第2端が内部端子X22に接続されている。一方、一次側コイル232pは、内部端子X23に接続された第1端を始点として、内部端子X23の周囲を反時計回りで取り囲むように螺旋状に敷設されており、その終点に相当する第2端が内部端子X22に接続されている。内部端子X21、X22及びX23は、図示の順で直線的に配列されている。
【0029】
内部端子X21は、導電性の配線Y21及びビアZ21を介して、第2層230bの外部端子T21に接続されている。内部端子X22は、導電性の配線Y22及びビアZ22を介して、第2層230bの外部端子T22に接続されている。内部端子X23は、導電性の配線Y23及びビアZ23を介して、第2層230bの外部端子T23に接続されている。なお、外部端子T21~T23は、直線的に並べて配置されており、コントローラチップ210とのワイヤボンディングに用いられる。
【0030】
二次側コイル231sは、外部端子T24に接続された第1端を始点として、外部端子T24の周囲を反時計回りで取り囲むように螺旋状に敷設されており、その終点に相当する第2端が外部端子T25に接続されている。一方、二次側コイル232sは、外部端子T26に接続された第1端を始点として、外部端子T26の周囲を時計回りで取り囲むように螺旋状に敷設されており、その終点に相当する第2端が外部端子T25に接続されている。なお、外部端子T24、T25及びT26は、図示の順で直線的に並べて配置されており、ドライバチップ220とのワイヤボンディングに用いられる。
【0031】
二次側コイル231s及び232sは、それぞれ、磁気結合によって一次側コイル231p及び232pに交流接続されると共に、一次側コイル231p及び232pから直流絶縁されている。すなわち、ドライバチップ220は、トランスチップ230を介してコントローラチップ210に交流接続されると共に、トランスチップ230によりコントローラチップ210から直流絶縁されている。
【0032】
<トランスチップ(2チャンネル型)>
図3は、2チャンネル型のトランスチップとして用いられる半導体装置5を示す斜視図である。図4は、図3に示す半導体装置5の平面図である。図5は、図3に示す半導体装置5において低電位コイル22(=トランスの一次側コイルに相当)が形成された層を示す平面図である。図6は、図3に示す半導体装置5において高電位コイル23(=トランスの二次側コイルに相当)が形成された層を示す平面図である。図7は、図6に示すVIII-VIII線に沿う断面図である。図8は、図7に示す領域XIIIの拡大図であって、分離構造130を示す図である。
【0033】
図3図7を参照して、半導体装置5は、直方体形状の半導体チップ41を含む。半導体チップ41は、シリコン、ワイドバンドギャップ半導体および化合物半導体のうちの少なくとも1つを含む。
【0034】
ワイドバンドギャップ半導体は、シリコンのバンドギャップ(約1.12eV)を超える半導体からなる。ワイドバンドギャップ半導体のバンドギャップは、2.0eV以上であることが好ましい。ワイドバンドギャップ半導体は、SiC(炭化シリコン)であってもよい。化合物半導体は、III-V族化合物半導体であってもよい。化合物半導体は、AlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)、GaN(窒化ガリウム)およびGaAs(ヒ化ガリウム)のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0035】
半導体チップ41は、この形態では、シリコン製の半導体基板を含む。半導体チップ41は、シリコン製の半導体基板およびシリコン製のエピタキシャル層を含む積層構造を有するエピタキシャル基板であってもよい。半導体基板の導電型は、n型またはp型であってもよい。エピタキシャル層は、n型またはp型であってもよい。
【0036】
半導体チップ41は、一方側の第1主面42、他方側の第2主面43、並びに、第1主面42及び第2主面43を接続するチップ側壁44A~44Dを有している。第1主面42及び第2主面43は、それらの法線方向Zから見た平面視(以下、単に「平面視」という)において、四角形状(この形態では長方形状)に形成されている。
【0037】
チップ側壁44A~44Dは、第1チップ側壁44A、第2チップ側壁44B、第3チップ側壁44Cおよび第4チップ側壁44Dを含む。第1チップ側壁44Aおよび第2チップ側壁44Bは、半導体チップ41の長辺を形成している。第1チップ側壁44Aおよび第2チップ側壁44Bは、第1方向Xに沿って延び、第2方向Yに対向している。第3チップ側壁44Cおよび第4チップ側壁44Dは、半導体チップ41の短辺を形成している。第3チップ側壁44Cおよび第4チップ側壁44Dは、第2方向Yに延び、第1方向Xに対向している。チップ側壁44A~44Dは、研削面からなる。
【0038】
半導体装置5は、半導体チップ41の第1主面42の上に形成された絶縁層51をさらに含む。絶縁層51は、絶縁主面52および絶縁側壁53A~53Dを有している。絶縁主面52は、平面視において第1主面42に整合する四角形状(この形態では長方形状)に形成されている。絶縁主面52は、第1主面42に対して平行に延びている。
【0039】
絶縁側壁53A~53Dは、第1絶縁側壁53A、第2絶縁側壁53B、第3絶縁側壁53Cおよび第4絶縁側壁53Dを含む。絶縁側壁53A~53Dは、絶縁主面52の周縁から半導体チップ41に向けて延び、チップ側壁44A~44Dに連なっている。絶縁側壁53A~53Dは、具体的には、チップ側壁44A~44Dに対して面一に形成されている。絶縁側壁53A~53Dは、チップ側壁44A~44Dに面一な研削面を形成している。
【0040】
絶縁層51は、最下絶縁層55、最上絶縁層56および複数(この形態では11層)の層間絶縁層57を含む多層絶縁積層構造からなる。最下絶縁層55は、第1主面42を直接被覆する絶縁層である。最上絶縁層56は、絶縁主面52を形成する絶縁層である。複数の層間絶縁層57は、最下絶縁層55および最上絶縁層56の間に介在する絶縁層である。最下絶縁層55は、この形態では、酸化シリコンを含む単層構造を有している。最上絶縁層56は、この形態では、酸化シリコンを含む単層構造を有している。最下絶縁層55の厚さおよび最上絶縁層56の厚さは、それぞれ1μm以上3μm以下(たとえば2μm程度)であってもよい。
【0041】
複数の層間絶縁層57は、最下絶縁層55側の第1絶縁層58および最上絶縁層56側の第2絶縁層59を含む積層構造をそれぞれ有している。第1絶縁層58は、窒化シリコンを含んでいてもよい。第1絶縁層58は、第2絶縁層59に対するエッチングストッパ層として形成されている。第1絶縁層58の厚さは、0.1μm以上1μm以下(たとえば0.3μm程度)であってもよい。
【0042】
第2絶縁層59は、第1絶縁層58の上に形成されている。第1絶縁層58とは異なる絶縁材料を含む。第2絶縁層59は、酸化シリコンを含んでいてもよい。第2絶縁層59の厚さは、1μm以上3μm以下(たとえば2μm程度)であってもよい。第2絶縁層59の厚さは、第1絶縁層58の厚さを超えていることが好ましい。
【0043】
絶縁層51の総厚さDTは、5μm以上50μm以下であってもよい。絶縁層51の総厚さDT及び層間絶縁層57の積層数は任意であって、実現すべき絶縁耐圧(絶縁破壊耐量)に応じて調整される。また、最下絶縁層55、最上絶縁層56および層間絶縁層57の絶縁材料は任意であり、特定の絶縁材料に限定されない。
【0044】
半導体装置5は、絶縁層51に形成された第1機能デバイス45を含む。第1機能デバイス45は、1つ又は複数(この形態では複数)の変圧器21(先出のトランスに相当)を含む。つまり、半導体装置5は、複数の変圧器21を含むマルチチャネル型デバイスである。複数の変圧器21は、絶縁側壁53A~53Dから間隔を空けて絶縁層51の内方部に形成されている。複数の変圧器21は、第1方向Xに間隔を空けて形成されている。
【0045】
複数の変圧器21は、具体的には、平面視において絶縁側壁53C側から絶縁側壁53D側に向けてこの順に形成された第1変圧器21A、第2変圧器21B、第3変圧器21Cおよび第4変圧器21Dを含む。複数の変圧器21A~21Dは、同様の構造をそれぞれ有している。以下では、第1変圧器21Aの構造を例にとって説明する。第2変圧器21B、第3変圧器21Cおよび第4変圧器21Dの構造の説明については、第1変圧器21Aの構造の説明が準用されるものとし、省略する。
【0046】
図5図7を参照して、第1変圧器21Aは、低電位コイル22および高電位コイル23を含む。低電位コイル22は、絶縁層51内に形成されている。高電位コイル23は、法線方向Zに低電位コイル22と対向するように絶縁層51内に成されている。低電位コイル22および高電位コイル23は、この形態では、最下絶縁層55および最上絶縁層56に挟まれた領域(つまり複数の層間絶縁層57)に形成されている。
【0047】
低電位コイル22は、絶縁層51内において最下絶縁層55(半導体チップ41)側に形成されており、高電位コイル23は、絶縁層51内において低電位コイル22に対して最上絶縁層56(絶縁主面52)側に形成されている。つまり、高電位コイル23は、低電位コイル22を挟んで半導体チップ41に対向している。低電位コイル22および高電位コイル23の配置箇所は任意である。また、高電位コイル23は、1層以上の層間絶縁層57を挟んで低電位コイル22に対向していればよい。
【0048】
低電位コイル22及び高電位コイル23の間の距離(つまり層間絶縁層57の積層数)は、低電位コイル22及び高電位コイル23の間の絶縁耐圧及び電界強度に応じて適宜調整される。低電位コイル22は、この形態では、最下絶縁層55側から数えて3層目の層間絶縁層57に形成されている。高電位コイル23は、この形態では、最上絶縁層56側から数えて1層目の層間絶縁層57に形成されている。
【0049】
低電位コイル22は、層間絶縁層57において第1絶縁層58及び第2絶縁層59を貫通して埋め込まれている。低電位コイル22は、第1内側末端24、第1外側末端25、ならびに、第1内側末端24および第1外側末端25の間を螺旋状に引き回された第1螺旋部26を含む。第1螺旋部26は、平面視において楕円形状(長円形状)に延びる螺旋状に引き回されている。第1螺旋部26の最内周縁を形成する部分は、平面視において楕円形状の第1内側領域66を区画している。
【0050】
第1螺旋部26の巻回数は、5以上30以下であってもよい。第1螺旋部26の幅は、0.1μm以上5μm以下であってもよい。第1螺旋部26の幅は、1μm以上3μm以下であることが好ましい。第1螺旋部26の幅は、螺旋方向に直交する方向の幅によって定義される。第1螺旋部26の第1巻回ピッチは、0.1μm以上5μm以下であってもよい。第1巻回ピッチは、1μm以上3μm以下であることが好ましい。第1巻回ピッチは、第1螺旋部26において螺旋方向に直交する方向に隣り合う2つの部分の間の距離によって定義される。
【0051】
第1螺旋部26の巻回形状及び第1内側領域66の平面形状は任意であり、図5などに示される形態に限定されない。第1螺旋部26は、平面視において三角形状、四角形状等の多角形状、または、円形状に巻回されていてもよい。第1内側領域66は、第1螺旋部26の巻回形状に応じて、平面視において三角形状、四角形状等の多角形状、または、円形状に区画されていてもよい。
【0052】
低電位コイル22は、チタン、窒化チタン、銅、アルミニウム及びタングステンのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。低電位コイル22は、バリア層および本体層を含む積層構造を有していてもよい。バリア層は、層間絶縁層57内においてリセス空間を区画する。バリア層は、チタンおよび窒化チタンのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。本体層は、銅、アルミニウムおよびタングステンのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0053】
高電位コイル23は、層間絶縁層57において第1絶縁層58及び第2絶縁層59を貫通して埋め込まれている。高電位コイル23は、第2内側末端27、第2外側末端28、ならびに、第2内側末端27および第2外側末端28の間を螺旋状に引き回された第2螺旋部29を含む。第2螺旋部29は、平面視において楕円形状(長円形状)に延びる螺旋状に引き回されている。第2螺旋部29の最内周縁を形成する部分は、この形態では、平面視において楕円形状の第2内側領域67を区画している。第2螺旋部29の第2内側領域67は、法線方向Zに第1螺旋部26の第1内側領域66に対向している。
【0054】
第2螺旋部29の巻回数は、5以上30以下であってもよい。第1螺旋部26の巻回数に対する第2螺旋部29の巻回数は、昇圧すべき電圧値に応じて調整される。第2螺旋部29の巻回数は、第1螺旋部26の巻回数を超えていることが好ましい。むろん、第2螺旋部29の巻回数は、第1螺旋部26の巻回数未満であってもよいし、第1螺旋部26の巻回数と等しくてもよい。
【0055】
第2螺旋部29の幅は、0.1μm以上5μm以下であってもよい。第2螺旋部29の幅は、1μm以上3μm以下であることが好ましい。第2螺旋部29の幅は、螺旋方向に直交する方向の幅によって定義される。第2螺旋部29の幅は、第1螺旋部26の幅と等しいことが好ましい。
【0056】
第2螺旋部29の第2巻回ピッチは、0.1μm以上5μm以下であってもよい。第2巻回ピッチは、1μm以上3μm以下であることが好ましい。第2巻回ピッチは、第2螺旋部29において螺旋方向に直交する方向に隣り合う2つの部分の間の距離によって定義される。第2巻回ピッチは、第1螺旋部26の第1巻回ピッチと等しいことが好ましい。
【0057】
第2螺旋部29の巻回形状及び第2内側領域67の平面形状は任意であり、図6などに示される形態に限定されない。第2螺旋部29は、平面視において三角形状、四角形状等の多角形状、または、円形状に巻回されていてもよい。第2内側領域67は、第2螺旋部29の巻回形状に応じて、平面視において三角形状、四角形状等の多角形状、または、円形状に区画されていてもよい。
【0058】
高電位コイル23は、低電位コイル22と同一の導電材料によって形成されていることが好ましい。つまり、高電位コイル23は、低電位コイル22と同様に、バリア層および本体層を含むことが好ましい。
【0059】
図4を参照して、半導体装置5は、複数(本図では12個)の低電位端子11、及び、複数(本図では12個)の高電位端子12を含む。複数の低電位端子11は、対応する変圧器21A~21Dの低電位コイル22にそれぞれ電気的に接続されている。複数の高電位端子12は、対応する変圧器21A~21Dの高電位コイル23にそれぞれ電気的に接続されている。
【0060】
複数の低電位端子11は、絶縁層51の絶縁主面52の上に形成されている。複数の低電位端子11は、具体的には、複数の変圧器21A~21Dから第2方向Yに間隔を空けて絶縁側壁53B側の領域に形成され、第1方向Xに間隔を空けて配列されている。
【0061】
複数の低電位端子11は、第1低電位端子11A、第2低電位端子11B、第3低電位端子11C、第4低電位端子11D、第5低電位端子11Eおよび第6低電位端子11Fを含む。複数の低電位端子11A~11Fは、この形態では、2個ずつそれぞれ形成されている。複数の低電位端子11A~11Fの個数は任意である。
【0062】
第1低電位端子11Aは、平面視において第2方向Yに第1変圧器21Aに対向している。第2低電位端子11Bは、平面視において第2方向Yに第2変圧器21Bに対向している。第3低電位端子11Cは、平面視において第2方向Yに第3変圧器21Cに対向している。第4低電位端子11Dは、平面視において第2方向Yに第4変圧器21Dに対向している。第5低電位端子11Eは、平面視において第1低電位端子11Aおよび第2低電位端子11Bの間の領域に形成されている。第6低電位端子11Fは、平面視において第3低電位端子11Cおよび第4低電位端子11Dの間の領域に形成されている。
【0063】
第1低電位端子11Aは、第1変圧器21A(低電位コイル22)の第1内側末端24に電気的に接続されている。第2低電位端子11Bは、第2変圧器21B(低電位コイル22)の第1内側末端24に電気的に接続されている。第3低電位端子11Cは、第3変圧器21C(低電位コイル22)の第1内側末端24に電気的に接続されている。第4低電位端子11Dは、第4変圧器21D(低電位コイル22)の第1内側末端24に電気的に接続されている。
【0064】
第5低電位端子11Eは、第1変圧器21A(低電位コイル22)の第1外側末端25および第2変圧器21B(低電位コイル22)の第1外側末端25に電気的に接続されている。第6低電位端子11Fは、第3変圧器21C(低電位コイル22)の第1外側末端25および第4変圧器21D(低電位コイル22)の第1外側末端25に電気的に接続されている。
【0065】
複数の高電位端子12は、複数の低電位端子11から間隔を空けて絶縁層51の絶縁主面52の上に形成されている。複数の高電位端子12は、具体的には、複数の低電位端子11から第2方向Yに間隔を空けて絶縁側壁53A側の領域に形成され、第1方向Xに間隔を空けて配列されている。
【0066】
複数の高電位端子12は、平面視において対応する変圧器21A~21Dに近接する領域にそれぞれ形成されている。高電位端子12が変圧器21A~21Dに近接するとは、平面視において高電位端子12および変圧器21の間の距離が、低電位端子11および高電位端子12の間の距離未満であることを意味する。
【0067】
複数の高電位端子12は、具体的には、平面視において第1方向Xに沿って複数の変圧器21A~21Dと対向するように第1方向Xに沿って間隔を空けて形成されている。複数の高電位端子12は、さらに具体的には、平面視において高電位コイル23の第2内側領域67および隣り合う高電位コイル23の間の領域に位置するように第1方向Xに沿って間隔を空けて形成されている。これにより、複数の高電位端子12は、平面視において第1方向Xに複数の変圧器21A~21Dと一列に並んで配列されている。
【0068】
複数の高電位端子12は、第1高電位端子12A、第2高電位端子12B、第3高電位端子12C、第4高電位端子12D、第5高電位端子12Eおよび第6高電位端子12Fを含む。複数の高電位端子12A~12Fは、この形態では、2個ずつそれぞれ形成されている。複数の高電位端子12A~12Fの個数は任意である。
【0069】
第1高電位端子12Aは、平面視において第1変圧器21A(高電位コイル23)の第2内側領域67に形成されている。第2高電位端子12Bは、平面視において第2変圧器21B(高電位コイル23)の第2内側領域67に形成されている。第3高電位端子12Cは、平面視において第3変圧器21C(高電位コイル23)の第2内側領域67に形成されている。第4高電位端子12Dは、平面視において第4変圧器21D(高電位コイル23)の第2内側領域67に形成されている。第5高電位端子12Eは、平面視において第1変圧器21Aおよび第2変圧器21Bの間の領域に形成されている。第6高電位端子12Fは、平面視において第3変圧器21Cおよび第4変圧器21Dの間の領域に形成されている。
【0070】
第1高電位端子12Aは、第1変圧器21A(高電位コイル23)の第2内側末端27に電気的に接続されている。第2高電位端子12Bは、第2変圧器21B(高電位コイル23)の第2内側末端27に電気的に接続されている。第3高電位端子12Cは、第3変圧器21C(高電位コイル23)の第2内側末端27に電気的に接続されている。第4高電位端子12Dは、第4変圧器21D(高電位コイル23)の第2内側末端27に電気的に接続されている。
【0071】
第5高電位端子12Eは、第1変圧器21A(高電位コイル23)の第2外側末端28および第2変圧器21B(高電位コイル23)の第2外側末端28に電気的に接続されている。第6高電位端子12Fは、第3変圧器21C(高電位コイル23)の第2外側末端28および第4変圧器21D(高電位コイル23)の第2外側末端28に電気的に接続されている。
【0072】
図5図7を参照して、半導体装置5は、絶縁層51内にそれぞれ形成された第1低電位配線31、第2低電位配線32、第1高電位配線33及び第2高電位配線34を含む。この形態では、複数の第1低電位配線31、複数の第2低電位配線32、複数の第1高電位配線33および複数の第2高電位配線34が形成されている。
【0073】
第1低電位配線31および第2低電位配線32は、第1変圧器21Aの低電位コイル22および第2変圧器21Bの低電位コイル22を同電位に固定している。また、第1低電位配線31および第2低電位配線32は、第3変圧器21Cの低電位コイル22および第4変圧器21Dの低電位コイル22を同電位に固定している。第1低電位配線31および第2低電位配線32は、この形態では、変圧器21A~21Dの全ての低電位コイル22を同電位に固定している。
【0074】
第1高電位配線33および第2高電位配線34は、第1変圧器21Aの高電位コイル23および第2変圧器21Bの高電位コイル23を同電位に固定している。また、第1高電位配線33および第2高電位配線34は、第3変圧器21Cの高電位コイル23および第4変圧器21Dの高電位コイル23を同電位に固定している。第1高電位配線33および第2高電位配線34は、この形態では、変圧器21A~21Dの全ての高電位コイル23を同電位に固定している。
【0075】
複数の第1低電位配線31は、対応する低電位端子11A~11Dおよび対応する変圧器21A~21D(低電位コイル22)の第1内側末端24にそれぞれ電気的に接続されている。複数の第1低電位配線31は、同様の構造を有している。以下では、第1低電位端子11Aおよび第1変圧器21Aに接続された第1低電位配線31の構造を例にとって説明する。他の第1低電位配線31の構造の説明については、第1変圧器21Aに接続された第1低電位配線31の構造の説明が準用されるものとし、省略する。
【0076】
第1低電位配線31は、貫通配線71、低電位接続配線72、引き出し配線73、第1接続プラグ電極74、第2接続プラグ電極75、1つまたは複数(この形態では複数)のパッドプラグ電極76、および、1つまたは複数(この形態では複数)の基板プラグ電極77を含む。
【0077】
貫通配線71、低電位接続配線72、引き出し配線73、第1接続プラグ電極74、第2接続プラグ電極75、パッドプラグ電極76および基板プラグ電極77は、低電位コイル22等と同一の導電材料によってそれぞれ形成されていることが好ましい。つまり、貫通配線71、低電位接続配線72、引き出し配線73、第1接続プラグ電極74、第2接続プラグ電極75、パッドプラグ電極76および基板プラグ電極77は、低電位コイル22等と同様に、バリア層および本体層をそれぞれ含むことが好ましい。
【0078】
貫通配線71は、絶縁層51において複数の層間絶縁層57を貫通し、法線方向Zに沿って延びる柱状に延びている。貫通配線71は、この形態では、絶縁層51において最下絶縁層55および最上絶縁層56の間の領域に形成されている。貫通配線71は、最上絶縁層56側の上端部、および、最下絶縁層55側の下端部を有している。貫通配線71の上端部は、高電位コイル23と同一の層間絶縁層57に形成され、最上絶縁層56によって被覆されている。貫通配線71の下端部は、低電位コイル22と同一の層間絶縁層57に形成されている。
【0079】
貫通配線71は、この形態では、第1電極層78、第2電極層79、および、複数の配線プラグ電極80を含む。貫通配線71では、第1電極層78、第2電極層79および配線プラグ電極80が低電位コイル22等と同一の導電材料によってそれぞれ形成されている。つまり、第1電極層78、第2電極層79および配線プラグ電極80は、低電位コイル22等と同様に、バリア層および本体層をそれぞれ含む。
【0080】
第1電極層78は、貫通配線71の上端部を形成している。第2電極層79は、貫通配線71の下端部を形成している。第1電極層78は、アイランド状に形成され、法線方向Zに低電位端子11(第1低電位端子11A)に対向している。第2電極層79は、アイランド状に形成され、法線方向Zに第1電極層78に対向している。
【0081】
複数の配線プラグ電極80は、第1電極層78および第2電極層79の間の領域に位置する複数の層間絶縁層57にそれぞれ埋設されている。複数の配線プラグ電極80は、互いに電気的に接続されるように最下絶縁層55から最上絶縁層56に向けて積層され、かつ、第1電極層78および第2電極層79を電気的に接続している。複数の配線プラグ電極80は、第1電極層78の平面積および第2電極層79の平面積未満の平面積をそれぞれ有している。
【0082】
なお、複数の配線プラグ電極80の積層数は、複数の層間絶縁層57の積層数に一致している。この形態では、6個の配線プラグ電極80が各層間絶縁層57内に埋設されているが、各層間絶縁層57内に埋設される配線プラグ電極80の個数は任意である。もちろん、複数の層間絶縁層57を貫通する1つまたは複数の配線プラグ電極80が形成されていてもよい。
【0083】
低電位接続配線72は、低電位コイル22と同一の層間絶縁層57内において第1変圧器21A(低電位コイル22)の第1内側領域66に形成されている。低電位接続配線72は、アイランド状に形成され、法線方向Zに高電位端子12(第1高電位端子12A)に対向している。低電位接続配線72は、配線プラグ電極80の平面積を超える平面積を有していることが好ましい。低電位接続配線72は、低電位コイル22の第1内側末端24に電気的に接続されている。
【0084】
引き出し配線73は、層間絶縁層57内において半導体チップ41および貫通配線71の間の領域に形成されている。引き出し配線73は、この形態では、最下絶縁層55から数えて1層目の層間絶縁層57内に形成されている。引き出し配線73は、一方側の第1端部、他方側の第2端部、ならびに、第1端部および第2端部を接続する配線部を含む。引き出し配線73の第1端部は、半導体チップ41および貫通配線71の下端部の間の領域に位置している。引き出し配線73の第2端部は、半導体チップ41および低電位接続配線72の間の領域に位置している。配線部は、半導体チップ41の第1主面42に沿って延び、第1端部および第2端部の間の領域を帯状に延びている。
【0085】
第1接続プラグ電極74は、層間絶縁層57内において貫通配線71および引き出し配線73の間の領域に形成され、貫通配線71および引き出し配線73の第1端部に電気的に接続されている。第2接続プラグ電極75は、層間絶縁層57内において低電位接続配線72および引き出し配線73の間の領域に形成され、低電位接続配線72および引き出し配線73の第2端部に電気的に接続されている。
【0086】
複数のパッドプラグ電極76は、最上絶縁層56内において低電位端子11(第1低電位端子11A)および貫通配線71の間の領域に形成され、低電位端子11および貫通配線71の上端部にそれぞれ電気的に接続されている。複数の基板プラグ電極77は、最下絶縁層55内において半導体チップ41および引き出し配線73の間の領域に形成されている。基板プラグ電極77は、この形態では、半導体チップ41および引き出し配線73の第1端部の間の領域に形成され、半導体チップ41および引き出し配線73の第1端部にそれぞれ電気的に接続されている。
【0087】
図6及び図7を参照して、複数の第1高電位配線33は、対応する高電位端子12A~12Dおよび対応する変圧器21A~21D(高電位コイル23)の第2内側末端27にそれぞれ電気的に接続されている。複数の第1高電位配線33は、同様の構造をそれぞれ有している。以下では、第1高電位端子12A及び第1変圧器21Aに接続された第1高電位配線33の構造を例にとって説明する。他の第1高電位配線33の構造の説明については、第1変圧器21Aに接続された第1高電位配線33の構造の説明が準用されるものとし、省略する。
【0088】
第1高電位配線33は、高電位接続配線81、および、1つまたは複数(この形態では複数)のパッドプラグ電極82を含む。高電位接続配線81およびパッドプラグ電極82は、低電位コイル22等と同一の導電材料によって形成されていることが好ましい。つまり、高電位接続配線81およびパッドプラグ電極82は、低電位コイル22等と同様に、バリア層および本体層を含むことが好ましい。
【0089】
高電位接続配線81は、高電位コイル23と同一の層間絶縁層57内において高電位コイル23の第2内側領域67に形成されている。高電位接続配線81は、アイランド状に形成され、法線方向Zに高電位端子12(第1高電位端子12A)に対向している。高電位接続配線81は、高電位コイル23の第2内側末端27に電気的に接続されている。高電位接続配線81は、平面視において低電位接続配線72から間隔を空けて形成され、法線方向Zに低電位接続配線72には対向していない。これにより、低電位接続配線72と高電位接続配線81の間の絶縁距離が増加し、絶縁層51の絶縁耐圧が高められている。
【0090】
複数のパッドプラグ電極82は、最上絶縁層56内において高電位端子12(第1高電位端子12A)および高電位接続配線81の間の領域に形成され、高電位端子12及び高電位接続配線81にそれぞれ電気的に接続されている。複数のパッドプラグ電極82は、平面視において高電位接続配線81の平面積未満の平面積をそれぞれ有している。
【0091】
図7を参照して、低電位端子11および高電位端子12の間の距離D1は、低電位コイル22および高電位コイル23の間の距離D2を超えていることが好ましい(D2<D1)。距離D1は、複数の層間絶縁層57の総厚さDTを超えていることが好ましい(DT<D1)。距離D1に対する距離D2の比D2/D1は、0.01以上0.1以下であってもよい。距離D1は、100μm以上500μm以下であることが好ましい。距離D2は、1μm以上50μm以下であってもよい。距離D2は、5μm以上25μm以下であることが好ましい。距離D1および距離D2の値は任意であり、実現すべき絶縁耐圧に応じて適宜調整される。
【0092】
図6及び図7を参照して、半導体装置5は、平面視において変圧器21A~21Dの周囲に位置するように絶縁層51内に埋設されたダミーパターン85を含む。
【0093】
ダミーパターン85は、高電位コイル23および低電位コイル22とは異なるパターン(不連続なパターン)で形成されており、変圧器21A~21Dから独立している。つまり、ダミーパターン85は、変圧器21A~21Dとしては機能しない。ダミーパターン85は、変圧器21A~21Dにおいて低電位コイル22および高電位コイル23の間の電界を遮蔽し、高電位コイル23に対する電界集中を抑制するシールド導体層として形成されている。ダミーパターン85は、この形態では、単位面積当たりにおいて高電位コイル23のライン密度と等しいライン密度で引き回されている。ダミーパターン85のライン密度が高電位コイル23のライン密度と等しいとは、ダミーパターン85のライン密度が高電位コイル23のライン密度の±20%の範囲内に収まることを意味する。
【0094】
絶縁層51の内部におけるダミーパターン85の深さ位置は任意であり、緩和すべき電界強度に応じて調整される。ダミーパターン85は、法線方向Zに関して低電位コイル22に対して高電位コイル23に近接する領域に形成されていることが好ましい。なお、法線方向Zに関してダミーパターン85が高電位コイル23に近接するとは、法線方向Zに関して、ダミーパターン85および高電位コイル23の間の距離が、ダミーパターン85および低電位コイル22の間の距離未満であることを意味する。
【0095】
この場合、高電位コイル23に対する電界集中を適切に抑制できる。法線方向Zに関して、ダミーパターン85及び高電位コイル23の間の距離を小さくするほど、高電位コイル23に対する電界集中を抑制できる。ダミーパターン85は、高電位コイル23と同一の層間絶縁層57内に形成されていることが好ましい。この場合、高電位コイル23に対する電界集中を更に適切に抑制できる。ダミーパターン85は、電気的状態が異なる複数のダミーパターンを含む。ダミーパターン85は高電位ダミーパターンを含んでもよい。
【0096】
絶縁層51の内部における高電位ダミーパターン86の深さ位置は任意であり、緩和すべき電界強度に応じて調整される。高電位ダミーパターン86は、法線方向Zに関して低電位コイル22に対して高電位コイル23に近接する領域に形成されていることが好ましい。法線方向Zに関して高電位ダミーパターン86が高電位コイル23に近接するとは、法線方向Zに関して、高電位ダミーパターン86および高電位コイル23の間の距離が、高電位ダミーパターン86及び低電位コイル22の間の距離未満であることを意味する。
【0097】
ダミーパターン85は、変圧器21A~21Dの周囲に位置するように絶縁層51内に電気的に浮遊状態に形成された浮遊ダミーパターンを含む。
【0098】
浮遊ダミーパターンは、この形態では、平面視において高電位コイル23の周囲の領域を部分的に被覆し、かつ、部分的に露出させるように密なライン状に引き回されている。浮遊ダミーパターンは、有端状に形成されていてもよいし、無端状に形成されてもよい。
【0099】
絶縁層51の内部における浮遊ダミーパターンの深さ位置は任意であり、緩和すべき電界強度に応じて調整される。
【0100】
浮遊ラインの個数は任意であり、緩和すべき電界に応じて調整される。浮遊ダミーパターンは、複数の浮遊ラインから構成されていてもよい。
【0101】
図7を参照して、半導体装置5は、デバイス領域62において半導体チップ41の第1主面42に形成された第2機能デバイス60を含む。第2機能デバイス60は、半導体チップ41の第1主面42の表層部、および/または、半導体チップ41の第1主面42の上の領域を利用して形成され、絶縁層51(最下絶縁層55)によって被覆されている。図7では、第2機能デバイス60が第1主面42の表層部に示された破線によって簡略化して示されている。
【0102】
第2機能デバイス60は、低電位配線を介して低電位端子11に電気的に接続され、高電位配線を介して高電位端子12に電気的に接続されている。低電位配線は、第2機能デバイス60に接続されるように絶縁層51内に引き回されている点を除いて、第1低電位配線31(第2低電位配線32)と同様の構造を有している。高電位配線は、第2機能デバイス60に接続されるように絶縁層51内に引き回されている点を除いて、第1高電位配線33(第2高電位配線34)と同様の構造を有している。第2機能デバイス60に係る低電位配線および高電位配線の具体的な説明は省略される。
【0103】
第2機能デバイス60は、受動デバイス、半導体整流デバイスおよび半導体スイッチングデバイスのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。第2機能デバイス60は、受動デバイス、半導体整流デバイスおよび半導体スイッチングデバイスのうちの任意の2種以上のデバイスが選択的に組み合わされた回路網を含んでいてもよい。回路網は、集積回路の一部または全部を形成していてもよい。
【0104】
受動デバイスは、半導体受動デバイスを含んでいてもよい。受動デバイスは、抵抗及びコンデンサのいずれか一方または双方を含んでいてもよい。半導体整流デバイスは、pn接合ダイオード、PINダイオード、ツェナーダイオード、ショットキーバリアダイオードおよびファーストリカバリーダイオードのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。半導体スイッチングデバイスは、BJT[Bipolar Junction Transistor]、MISFET[Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor]、IGBT[Insulated Gate Bipolar Junction Transistor]およびJFET[Junction Field Effect Transistor]のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0105】
図5図7を参照して、半導体装置5は、絶縁層51内に埋設されたシール導体61をさらに含む。シール導体61は、平面視において絶縁側壁53A~53Dから間隔を空けて絶縁層51内に壁状に埋設され、絶縁層51をデバイス領域62および外側領域63に区画している。シール導体61は、外側領域63からデバイス領域62への水分の進入及びクラックの進入を抑制する。
【0106】
デバイス領域62は、第1機能デバイス45(複数の変圧器21)、第2機能デバイス60、複数の低電位端子11、複数の高電位端子12、第1低電位配線31、第2低電位配線32、第1高電位配線33、第2高電位配線34およびダミーパターン85を含む領域である。外側領域63は、デバイス領域62外の領域である。
【0107】
シール導体61は、デバイス領域62から電気的に切り離されている。シール導体61は、具体的には、第1機能デバイス45(複数の変圧器21)、第2機能デバイス60、複数の低電位端子11、複数の高電位端子12、第1低電位配線31、第2低電位配線32、第1高電位配線33、第2高電位配線34およびダミーパターン85から電気的に切り離されている。シール導体61は、さらに具体的には、電気的に浮遊状態に固定されている。シール導体61は、デバイス領域62に繋がる電流経路を形成しない。
【0108】
シール導体61は、平面視において、絶縁側壁53~53Dに沿う帯状に形成されている。シール導体61は、この形態では、平面視において、四角環状(具体的には長方形環状)に形成されている。これにより、シール導体61は、平面視において四角形状(具体的には長方形状)のデバイス領域62を区画している。また、シール導体61は、平面視においてデバイス領域62を取り囲む四角環状(具体的には長方形環状)の外側領域63を区画している。
【0109】
シール導体61は、具体的には、絶縁主面52側の上端部、半導体チップ41側の下端部、ならびに、上端部および下端部の間を壁状に延びる壁部を有している。シール導体61の上端部は、この形態では、絶縁主面52から半導体チップ41側に間隔を空けて形成され、絶縁層51内に位置している。シール導体61の上端部は、この形態では、最上絶縁層56によって被覆されている。シール導体61の上端部は、1つまたは複数の層間絶縁層57によって被覆されていてもよい。シール導体61の上端部は、最上絶縁層56から露出していてもよい。シール導体61の下端部は、半導体チップ41から上端部側に間隔を空けて形成されている。
【0110】
このように、シール導体61は、この形態では、複数の低電位端子11および複数の高電位端子12に対して半導体チップ41側に位置するように絶縁層51内に埋設されている。また、シール導体61は、絶縁層51内において第1機能デバイス45(複数の変圧器21)、第1低電位配線31、第2低電位配線32、第1高電位配線33、第2高電位配線34およびダミーパターン85に絶縁主面52に平行な方向に対向している。シール導体61は、絶縁層51内において、第2機能デバイス60の一部に絶縁主面52に平行な方向に対向していてもよい。
【0111】
シール導体61は、複数のシールプラグ導体64、および、1つまたは複数(この形態では複数)のシールビア導体65を含む。シールビア導体65の個数は任意である。複数のシールプラグ導体64のうちの最上のシールプラグ導体64は、シール導体61の上端部を形成している。複数のシールビア導体65は、シール導体61の下端部をそれぞれ形成している。シールプラグ導体64およびシールビア導体65は、低電位コイル22と同一の導電材料によって形成されていることが好ましい。つまり、シールプラグ導体64およびシールビア導体65は、低電位コイル22等と同様に、バリア層および本体層を含むことが好ましい。
【0112】
複数のシールプラグ導体64は、複数の層間絶縁層57にそれぞれ埋め込まれ、平面視においてデバイス領域62を取り囲む四角環状(具体的には長方形環状)にそれぞれ形成されている。複数のシールプラグ導体64は、互いに接続されるように最下絶縁層55から最上絶縁層56に向かって積層されている。複数のシールプラグ導体64の積層数は、複数の層間絶縁層57の積層数に一致している。むろん、複数の層間絶縁層57を貫通する1つまたは複数のシールプラグ導体64が形成されていてもよい。
【0113】
複数のシールプラグ導体64の集合体により1つの環状のシール導体61が形成されるのであれば、複数のシールプラグ導体64の全てが環状に形成される必要はない。たとえば、複数のシールプラグ導体64の少なくとも1つが有端状に形成されていてもよい。また、複数のシールプラグ導体64の少なくとも1つが複数の有端帯状部分に分割されていてもよい。ただし、デバイス領域62への水分及びクラックの進入のリスクを鑑みると、複数のシールプラグ導体64は、無端状(環状)に形成されていることが好ましい。
【0114】
複数のシールビア導体65は、最下絶縁層55において半導体チップ41およびシールプラグ導体64の間の領域にそれぞれ形成されている。複数のシールビア導体65は、半導体チップ41から間隔を空けて形成され、シールプラグ導体64に接続されている。複数のシールビア導体65は、シールプラグ導体64の平面積未満の平面積を有している。単一のシールビア導体65が形成されている場合、単一のシールビア導体65は、シールプラグ導体64の平面積以上の平面積を有していてもよい。
【0115】
シール導体61の幅は、0.1μm以上10μm以下であってもよい。シール導体61の幅は、1μm以上5μm以下であることが好ましい。シール導体61の幅は、シール導体61が延びる方向に直交する方向の幅によって定義される。
【0116】
図7及び図8を参照して、半導体装置5は、半導体チップ41及びシール導体61の間に介在し、シール導体61を半導体チップ41から電気的に切り離す分離構造130を更に含む。分離構造130は、絶縁体を含むことが好ましい。分離構造130は、この形態では、半導体チップ41の第1主面42に形成されたフィールド絶縁膜131からなる。
【0117】
フィールド絶縁膜131は、酸化膜(酸化シリコン膜)及び窒化膜(窒化シリコン膜)のうちの少なくとも一方を含む。フィールド絶縁膜131は、半導体チップ41の第1主面42の酸化によって形成された酸化膜の一例としてのLOCOS(local oxidation of silicon)膜からなることが好ましい。フィールド絶縁膜131の厚さは、半導体チップ41およびシール導体61を絶縁できる限り任意である。フィールド絶縁膜131の厚さは、0.1μm以上5μm以下であってもよい。
【0118】
分離構造130は、半導体チップ41の第1主面42に形成され、平面視においてシール導体61に沿う帯状に延びている。分離構造130は、この形態では、平面視において四角環状(具体的には長方形環状)に形成されている。分離構造130は、シール導体61の下端部(シールビア導体65)が接続された接続部132を有している。接続部132は、シール導体61の下端部(シールビア導体65)が半導体チップ41側に向けて食い込んだアンカー部を形成していてもよい。むろん、接続部132は、分離構造130の主面に対して面一に形成されていてもよい。
【0119】
分離構造130は、デバイス領域62側の内端部130A、外側領域63側の外端部130B、ならびに、内端部130Aおよび外端部130Bの間の本体部130Cを含む。内端部130Aは、平面視において第2機能デバイス60が形成された領域(つまり、デバイス領域62)を区画している。内端部130Aは、半導体チップ41の第1主面42に形成された絶縁膜(図示せず)と一体的に形成されていてもよい。
【0120】
外端部130Bは、半導体チップ41のチップ側壁44A~44Dから露出し、半導体チップ41のチップ側壁44A~44Dに連なっている。外端部130Bは、より具体的には、半導体チップ41のチップ側壁44A~44Dに対して面一に形成されている。外端部130Bは、半導体チップ41のチップ側壁44A~44Dおよび絶縁層51の絶縁側壁53A~53Dとの間で面一な研削面を形成している。むろん、他の形態において、外端部130Bは、チップ側壁44A~44Dから間隔を空けて第1主面42内に形成されていてもよい。
【0121】
本体部130Cは、半導体チップ41の第1主面42に対してほぼ平行に延びる平坦面を有している。本体部130Cは、シール導体61の下端部(シールビア導体65)が接続された接続部132を有している。接続部132は、本体部130Cにおいて内端部130A及び外端部130Bから間隔を空けた部分に形成されている。分離構造130は、フィールド絶縁膜131の他、種々の形態を採り得る。
【0122】
図7を参照して、半導体装置5は、シール導体61を被覆するように絶縁層51の絶縁主面52の上に形成された無機絶縁層140をさらに含む。無機絶縁層140は、パッシベーション層と称されてもよい。無機絶縁層140は、絶縁主面52の上から絶縁層51及び半導体チップ41を保護する。
【0123】
無機絶縁層140は、この形態では、第1無機絶縁層141及び第2無機絶縁層142を含む積層構造を有する。第1無機絶縁層141は、酸化シリコンを含んでいてもよい。第1無機絶縁層141は、不純物無添加の酸化シリコンであるUSG(undoped silicate glass)を含むことが好ましい。第1無機絶縁層141の厚さは、50nm以上5000nm以下であってもよい。第2無機絶縁層142は、窒化シリコンを含んでいてもよい。第2無機絶縁層142の厚さは、500nm以上5000nm以下であってもよい。無機絶縁層140の総厚さを大きくすることにより、高電位コイル23上の絶縁耐圧を高めることができる。
【0124】
第1無機絶縁層141がUSGからなり、第2無機絶縁層142が窒化シリコンからなる場合、USGの絶縁破壊電圧(V/cm)は窒化シリコンの絶縁破壊電圧(V/cm)を超える。したがって、無機絶縁層140を厚化する場合、第2無機絶縁層142よりも厚い第1無機絶縁層141が形成されることが好ましい。
【0125】
第1無機絶縁層141は、酸化シリコンの一例としてのBPSG(boron doped phosphor silicate glass)およびPSG(phosphorus silicate glass)のうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。ただし、この場合、酸化シリコン内に不純物(ホウ素又はリン)が含まれるため、高電位コイル23上の絶縁耐圧を高める上では、USGからなる第1無機絶縁層141が形成されることが特に好ましい。むろん、無機絶縁層140は、第1無機絶縁層141および第2無機絶縁層142のいずれか一方からなる単層構造を有していてもよい。
【0126】
無機絶縁層140は、シール導体61の全域を被覆し、シール導体61外の領域に形成された複数の低電位パッド開口143及び複数の高電位パッド開口144を有している。複数の低電位パッド開口143は、複数の低電位端子11をそれぞれ露出させている。複数の高電位パッド開口144は、複数の高電位端子12をそれぞれ露出させている。無機絶縁層140は、低電位端子11の周縁部に乗り上げたオーバラップ部を有していてもよい。無機絶縁層140は、高電位端子12の周縁部に乗り上げたオーバラップ部を有していてもよい。
【0127】
半導体装置5は、無機絶縁層140の上に形成された有機絶縁層145を更に含む。有機絶縁層145は、感光性樹脂を含んでいてもよい。有機絶縁層145は、ポリイミド、ポリアミドおよびポリベンゾオキサゾールのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。有機絶縁層145は、この形態では、ポリイミドを含む。有機絶縁層145の厚さは、1μm以上50μm以下であってもよい。
【0128】
有機絶縁層145の厚さは、無機絶縁層140の総厚さを超えていることが好ましい。さらに、無機絶縁層140および有機絶縁層145の総厚さは、低電位コイル22及び高電位コイル23の間の距離D2以上であることが好ましい。この場合、無機絶縁層140の総厚さは2μm以上10μm以下であることが好ましい。また、有機絶縁層145の厚さは5μm以上50μm以下であることが好ましい。これらの構造によれば、無機絶縁層140及び有機絶縁層145の厚化を抑制できると同時に、無機絶縁層140及び有機絶縁層145の積層膜により高電位コイル23上の絶縁耐圧を適切に高めることができる。
【0129】
有機絶縁層145は、低電位側の領域を被覆する第1部分146及び高電位側の領域を被覆する第2部分147を含む。第1部分146は、無機絶縁層140を挟んでシール導体61を被覆している。第1部分146は、シール導体61外の領域において複数の低電位端子11(低電位パッド開口143)をそれぞれ露出させる複数の低電位端子開口148を有している。第1部分146は、低電位パッド開口143の周縁(オーバラップ部)に乗り上がったオーバラップ部を有していてもよい。
【0130】
第2部分147は、第1部分146から間隔を空けて形成されており、第1部分146との間から無機絶縁層140を露出させている。第2部分147は、複数の高電位端子12(高電位パッド開口144)をそれぞれ露出させる複数の高電位端子開口149を有している。第2部分147は、高電位パッド開口144の周縁(オーバラップ部)に乗り上がったオーバラップ部を有していてもよい。
【0131】
第2部分147は、変圧器21A~21Dおよびダミーパターン85を一括して被覆している。第2部分147は、具体的には、複数の高電位コイル23、複数の高電位端子12、第1高電位ダミーパターン87、第2高電位ダミーパターン88および浮遊ダミーパターン121を一括して被覆している。
【0132】
本発明の実施形態は、さらに他の形態で実施できる。前述の実施形態では、第1機能デバイス45および第2機能デバイス60が形成された例について説明した。しかし、第1機能デバイス45を有さずに、第2機能デバイス60だけを有する形態が採用されてもよい。この場合、ダミーパターン85は取り除かれてもよい。この構造によれば、第2機能デバイス60について、第1実施形態において述べた効果(ダミーパターン85に係る効果を除く)と同様の効果を奏することができる。
【0133】
つまり、低電位端子11および高電位端子12を介して第2機能デバイス60に電圧が印加された場合において、高電位端子12およびシール導体61の間の不所望な導通を抑制できる。また、低電位端子11および高電位端子12を介して第2機能デバイス60に電圧が印加された場合において、低電位端子11およびシール導体61の間の不所望な導通を抑制できる。
【0134】
また、前述の実施形態では、第2機能デバイス60が形成された例について説明した。しかし、第2機能デバイス60は必ずしも必要ではなく、取り除かれてもよい。
【0135】
また、前述の実施形態では、ダミーパターン85が形成された例について説明した。しかし、ダミーパターン85は必ずしも必要ではなく、取り除かれてもよい。
【0136】
また、前述の実施形態では、第1機能デバイス45が、複数の変圧器21を含むマルチチャネル型からなる例について説明した。しかし、単一の変圧器21を含むシングルチャネル型からなる第1機能デバイス45が採用されてもよい。
【0137】
<トランス配列>
図9は、2チャンネル型のトランスチップ300(先出の半導体装置5に相当)におけるトランス配列の一例を模式的に示す平面図(上面図)である。本図のトランスチップ300は、第1トランス301と、第2トランス302と、第3トランス303と、第4トランス304と、第1ガードリング305と、第2ガードリング306と、パッドa1~a8と、パッドb1~b8と、パッドc1~c4と、パッドd1~d4と、を有する。
【0138】
トランスチップ300において、第1トランス301を形成する二次側コイルL1sの一端には、パッドa1及びb1が接続されており、二次側コイルL1sの他端には、パッドc1及びd1が接続されている。第2トランス302を形成する二次側コイルL2sの一端には、パッドa2及びb2が接続されており、二次側コイルL2sの他端には、パッドc1及びd1が接続されている。
【0139】
また、第3トランス303を形成する二次側コイルL3sの一端には、パッドa3及びb3が接続されており、二次側コイルL3sの他端には、パッドc2及びd2が接続されている。第4トランス304を形成する二次側コイルL4sの一端には、パッドa4及びb4が接続されており、二次側コイルL4sの他端には、パッドc2及びd2が接続されている。
【0140】
なお、第1トランス301を形成する一次側コイル、第2トランス302を形成する一次側コイル、第3トランス303を形成する一次側コイル、及び、第4トランス304を形成する一次側コイルは、いずれも本図に明示されていない。ただし、一次側コイルは、それぞれ、基本的に二次側コイルL1s~L4sと同様の構成を有しており、二次側コイルL1s~L4sとそれぞれ対向する形で、二次側コイルL1s~L4sそれぞれの直下に配置されている。
【0141】
すなわち、第1トランス301を形成する一次側コイルの一端には、パッドa5及びb5が接続されており、一次側コイルの他端には、パッドc3及びd3が接続されている。また、第2トランス302を形成する一次側コイルの一端には、パッドa6及びb6が接続されており、一次側コイルの他端には、パッドc3及びd3が接続されている。
【0142】
また、第3トランス303を形成する一次側コイルの一端には、パッドa7及びb7が接続されており、一次側コイルの他端には、パッドc4及びd4が接続されている。また、第4トランス304を形成する一次側コイルの一端には、パッドa8及びb8が接続されており、一次側コイルの他端には、パッドc4及びd4が接続されている。
【0143】
ただし、上記のパッドa5~a8、パッドb5~b8、パッドc3及びc4、並びに、パッドd3及びd4については、不図示のビアを介してトランスチップ300の内部から表面まで引き出されている。
【0144】
上記複数のパッドのうち、パッドa1~a8は、それぞれ、第1の電流供給用パッドに相当し、パッドb1~b8は、それぞれ、第1の電圧測定用パッドに相当する。また、パッドc1~c4は、それぞれ、第2の電流供給用パッドに相当し、パッドd1~d4は、それぞれ、第2の電圧測定用パッドに相当する。
【0145】
従って、本構成例のトランスチップ300であれば、その不良品検査時に各コイルの直列抵抗成分を正確に測定することができる。従って、各コイルの断線が生じている不良品をリジェクトすることはもちろん、各コイルの抵抗値異常(例えば、コイル同士の中途短絡)が生じている不良品についても、これを適切にリジェクトすることが可能となり、延いては、不良品の市場流出を未然に防止することが可能となる。
【0146】
なお、上記の不良品検査を通過したトランスチップ300については、上記複数のパッドを一次側チップ及び二次側チップ(例えば先出のコントローラチップ210及びドライバチップ220)との接続手段として用いればよい。
【0147】
具体的に述べると、パッドa1及びb1、パッドa2及びb2、パッドa3及びb3、並びに、パッドa4及びb4は、それぞれ、二次側チップの信号入力端または信号出力端に接続すればよい。また、パッドc1及びd1、並びに、パッドc2及びd2は、それぞれ、二次側チップのコモン電圧印加端(GND2)に接続すればよい。
【0148】
一方、パッドa5及びb5、パッドa6及びb6、パッドa7及びb7、並びに、パッドa8及びb8は、それぞれ、一次側チップの信号入力端または信号出力端に接続すればよい。また、パッドc3及びd3、並びに、パッドc4及びd4は、それぞれ、一次側チップのコモン電圧印加端(GND1)に接続すればよい。
【0149】
ここで、第1トランス301~第4トランス304は、図9に示すように、それぞれの信号伝達方向毎にカップリングして並べられている。本図に即して述べると、例えば一次側チップから二次側チップに向けて信号を伝達する第1トランス301と第2トランス302が第1ガードリング305によって第1のペアとされている。また、例えば二次側チップから一次側チップに向けて信号を伝達する第3トランス303と第4トランス304が第2ガードリング306によって第2のペアとされている。
【0150】
このようなカップリングを行った理由は、第1トランス301~第4トランス304をそれぞれ形成する一次側コイルと二次側コイルをトランスチップ300の基板上下方向に積み重ねる形で積層形成した場合において、一次側コイルと二次側コイルとの間で耐圧を確保するためである。ただし、第1ガードリング305、及び、第2ガードリング306については、必ずしも必須の構成要素ではない。
【0151】
なお、第1ガードリング305及び第2ガードリング306は、それぞれ、パッドe1及びe2を介して、接地端などの低インピーダンス配線に接続すればよい。
【0152】
また、トランスチップ300において、パッドc1及びd1は、二次側コイルL1sと二次側コイルL2sとの間で共有されている。また、パッドc2及びd2は、二次側コイルL3sと二次側コイルL4sとの間で共有されている。また、パッドc3及びd3は、一次側コイルL1pと一次側コイルL2pとの間で共有されている。また、パッドc4及びd4は、対応するそれぞれの一次側コイルとの間で共有されている。このような構成とすることにより、パッド数を削減して、トランスチップ300の小型化を図ることが可能となる。
【0153】
また、図9に示したように、第1トランス301~第4トランス304をそれぞれ形成する一次側コイルと二次側コイルは、トランスチップ300の平面視において、長方形状(または角を丸めたトラック状)となるように巻き回すことが望ましい。このような構成とすることにより、一次側コイルと二次側コイルが互いに重複する部分の面積が大きくなり、トランスの伝達効率を高めることが可能となる。
【0154】
もちろん、本図のトランス配列はあくまでも一例であり、コイルの個数、形状、配置、及び、パッドの配置は任意である。また、これまでに説明してきたチップ構造及びトランス配列などについては、半導体チップ上にコイルを集積化した半導体装置全般に適用することが可能である。
【0155】
<信号伝達装置(第1実施形態)>
図10は、信号伝達装置400及びこれが搭載される電子機器Aの第1実施形態を示す図である。本図下段で示されるように、本実施形態の電子機器Aは、直流電源PWと、上側スイッチ素子TRH及び下側スイッチ素子TRL(例えばIGBT)と、上側ゲートドライバGDH及び下側ゲートドライバGDLと、負荷ZLと、を備える。
【0156】
上側スイッチ素子TRHのコレクタは、直流電源PWの正極に接続される。上側スイッチ素子TRHのエミッタと下側スイッチ素子TRLのコレクタは、いずれも負荷ZLに接続される。下側スイッチ素子TRLのエミッタは、直流電源PWの負極に接続される。このように、上側スイッチ素子TRH及び下側スイッチ素子TRLは、負荷ZLを駆動するためのハーフブリッジ出力段HBを形成している。なお、ハーフブリッジ出力段HBと直流電源PWとの間を結ぶ配線には、一般に、寄生インダクタンスLsが付随する。
【0157】
上側ゲートドライバGDHは、上側スイッチ素子TRHのゲートを駆動する。下側ゲートドライバGDLは、下側スイッチ素子TRLのゲートを駆動する。本図上段で示されるように、上側ゲートドライバGDHは、信号伝達装置400と、これに外付けされる種々のディスクリート部品(抵抗R11~R14及びダイオードD11~D14)を含む。
【0158】
信号伝達装置400は、入出力間を絶縁しつつ入力パルス信号INに応じた出力パルス信号OUTを生成して上側スイッチ素子TRHを駆動する半導体集積回路装置(いわゆる絶縁ゲートドライバIC)である。特に、信号伝達装置400は、上側スイッチ素子TRHを駆動するための手段として駆動回路410を備える。
【0159】
なお、本図では明示されていないが、信号伝達装置400は、先出の信号伝達装置200(図1)と同じく、入力パルス信号INから送信パルス信号を生成する第1チップ(=先出のコントローラチップ210に相当)と、受信パルス信号から出力パルス信号OUTを生成する第2チップ(=先出のドライバチップ220に相当)と、第1チップと第2チップとの間を絶縁しつつ送信パルス信号を受信パルス信号として伝達する第3チップ(=先出のトランスチップ230に相当)と、を単一のパッケージに封止して成るものであってもよい。その場合、駆動回路410は、第2チップに集積化されてもよい。
【0160】
また、信号伝達装置400は、装置外部との電気的な接続を確立する手段として、外部端子420F及び420Sを備える。
【0161】
外部端子420Fは、ダイオードD11のアノードとダイオードD12のカソードに接続される。ダイオードD11のカソードは、抵抗R11の第1端に接続される。ダイオードD12のアノードは、抵抗R12の第1端に接続される。抵抗R11及びR12それぞれの第2端は、いずれも上側スイッチ素子TRHのゲート(=出力パルス信号OUTの印加端)に接続される。
【0162】
外部端子420Sは、ダイオードD13のアノードとダイオードD14のカソードに接続される。ダイオードD13のカソードは、抵抗R13の第1端に接続される。ダイオードD14のアノードは、抵抗R14の第1端に接続される。抵抗R13及びR14それぞれの第2端は、いずれも上側スイッチ素子TRHのゲート(=出力パルス信号OUTの印加端)に接続される。
【0163】
このように、駆動回路410は、上側スイッチ素子TRHのゲートに接続される複数の外部端子420F及び420Sを備える。
【0164】
なお、抵抗R13及びR14は、それぞれ、抵抗R11及びR12よりも高い抵抗値を持つ素子であってもよい。
【0165】
引き続き、図10を参照しながら、信号伝達装置400(特に駆動回路410)の内部構成について説明する。駆動回路410は、ロジック411とドライバ419を含む。
【0166】
ロジック411は、入力パルス信号IN(より正確には、コントローラチップから絶縁伝達される受信パルス信号)に応じて、トランジスタ412F及び412Sそれぞれのゲート信号GHF及びGHS、並びに、トランジスタ413F及び413Sそれぞれのゲート信号GLF及びGLSを生成する。
【0167】
また、ロジック411は、上側スイッチ素子TRHの温度情報TEMPに応じてドライバ419のスルーレートを切り替える機能も備えている。なお、温度情報TEMPは、例えば、上側スイッチ素子TRHに内蔵される温度検出素子で生成されてもよい。
【0168】
ドライバ419は、ロジック411からの指示に応じて出力パルス信号OUTを生成することにより、上側スイッチ素子TRHを駆動する。本図に即して述べると、ドライバ419は、トランジスタ412F及び412S(例えばPMOSFET)と、トランジスタ413F及び413S(例えばNMOSFET)と、を含む。
【0169】
トランジスタ412F及び413Fは、それぞれ、第1ハーフブリッジ出力段419Fを形成する上側スイッチ素子及び下側スイッチ素子である。トランジスタ412Fのソースは、電源電圧VCC2の印加端に接続される。トランジスタ412F及び413Fそれぞれのドレインは、いずれも外部端子420Fに接続される。トランジスタ413Fのソースは、負電源電圧VEE2(=基準電圧に相当)の印加端に接続されている。
【0170】
トランジスタ412Fのゲートは、ゲート信号GHFの印加端に接続される。トランジスタ412Fは、ゲート信号GHFがローレベルであるときにオン状態となる。一方、トランジスタ412Fは、ゲート信号GHFがハイレベルであるときにオフ状態となる。
【0171】
トランジスタ413Fのゲートは、ゲート信号GLFの印加端に接続される。トランジスタ413Fは、ゲート信号GLFがハイレベルであるときにオン状態となる。一方、トランジスタ413Fは、ゲート信号GLFがローレベルであるときにオフ状態となる。
【0172】
トランジスタ412S及び413Sは、それぞれ、第2ハーフブリッジ出力段419Sを形成する上側スイッチ素子及び下側スイッチ素子である。トランジスタ412Sのソースは、電源電圧VCC2の印加端に接続される。トランジスタ412S及び413Sそれぞれのドレインは、いずれも外部端子420Sに接続される。トランジスタ413Sのソースは、負電源電圧VEE2の印加端に接続されている。
【0173】
トランジスタ412Sのゲートは、ゲート信号GHSの印加端に接続される。トランジスタ412Sは、ゲート信号GHSがローレベルであるときにオン状態となる。一方、トランジスタ412Sは、ゲート信号GHSがハイレベルであるときにオフ状態となる。
【0174】
トランジスタ413Sのゲートは、ゲート信号GLSの印加端に接続される。トランジスタ413Sは、ゲート信号GLSがハイレベルであるときにオン状態となる。一方、トランジスタ413Sは、ゲート信号GLSがローレベルであるときにオフ状態となる。
【0175】
このように、ドライバ419は、電源電圧VCC2の印加端と外部端子420F及び420Sとの間にそれぞれ接続されるトランジスタ412F及び412S(=複数の上側トランジスタに相当)と、負電源電圧VEE2の印加端と外部端子420F及び420Sとの間にそれぞれ接続されるトランジスタ413F及び413S(=複数の下側トランジスタに相当)と、を含む。
【0176】
なお、本図では明示されていないが、下側ゲートドライバGDLは、上側ゲートドライバGDHと同じ構成であってもよい。
【0177】
図11は、第1実施形態におけるゲート抵抗切替動作の第1例(低温時)を示す図である。本図の上段には、スイッチ素子TR1(=上側スイッチ素子TRH及び下側スイッチ素子TRLのいずれと理解されてもよい)のゲート・エミッタ間電圧VGEが描写されている。また、本図の下段には、コレクタ電流Ic(破線)及びコレクタ・エミッタ間電圧VCE(実線)が描写されている。
【0178】
本図の左側で示されるように、スイッチ素子TR1のオフ遷移期間において、スイッチ素子TR1のゲート・エミッタ間電圧VGEが急峻に立ち下げられると、コレクタ電流Icの変化速度(di/dt)が大きくなる。その結果、スイッチ素子TR1のコレクタ・エミッタ間に生じる電圧サージが高くなる。ところで、スイッチ素子TR1が低温であるほど、コレクタ・エミッタ間電圧VCEの耐圧(一点鎖線)が低下する。そのため、スイッチ素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧VCEが耐圧を超えてしまい、スイッチ素子TR1が破壊されるおそれがある。
【0179】
そこで、ロジック411は、スイッチ素子TR1の温度情報TEMPに応じてドライバ419のスルーレートを切り替える。例えば、スイッチ素子TR1が低温である(=閾値よりも低い)と判定されるときには、スイッチ素子TR1のゲート・エミッタ間電圧VGEの傾きを小さくするように、ドライバ419のスルーレートが切り替えられる。
【0180】
上記のスルーレート切替制御によれば、本図の右側で示されるように、コレクタ電流Icの変化速度(di/dt)が小さくなる。その結果、スイッチ素子TR1のコレクタ・エミッタ間に生じる電圧サージが低くなる。従って、スイッチ素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧VCEが耐圧を超え難くなり、スイッチ素子TR1が破壊され難くなる。
【0181】
なお、ゲート・エミッタ間電圧VGEの傾きを小さくする場合、ロジック411は、第2ハーフブリッジ出力段419Sを用いて出力パルス信号OUTを駆動してもよい。例えば、スイッチ素子TR1をオフ状態とする場合、ロジック411は、トランジスタ413Sをオン状態(GLS=H)とし、その余のトランジスタ412S、412F及び413Fをいずれもオフ状態(GHS=GHF=H、GLF=L)とすればよい。その結果、出力パルス信号OUTのフォール時におけるスルーレートは、抵抗R14に応じて決まる。抵抗R14は、抵抗R12よりも高い抵抗値を持つ。従って、スイッチ素子TR1のゲート・エミッタ間電圧VGEは、緩やかに低下する。
【0182】
図12は、第1実施形態におけるゲート抵抗切替動作の第2例(高温時)を示す図である。先出の図11と同様、本図の上段には、スイッチ素子TR1(=上側スイッチ素子TRH及び下側スイッチ素子TRLのいずれと理解されてもよい)のゲート・エミッタ間電圧VGEが描写されている。また、本図の下段には、コレクタ電流Ic(破線)及びコレクタ・エミッタ間電圧VCE(実線)が描写されている。
【0183】
本図の左側で示されるように、スイッチ素子TR1のオフ遷移期間において、仮にスイッチ素子TR1のゲート・エミッタ間電圧VGEが緩慢に立ち下げられると、コレクタ電流Icの変化速度(di/dt)が小さくなる。その結果、スイッチ素子TR1のスイッチング損失が大きくなる。
【0184】
そこで、ロジック411は、スイッチ素子TR1の温度情報TEMPに応じてドライバ419のスルーレートを切り替える。例えば、スイッチ素子TR1が高温である(=閾値よりも高い)と判定されるときには、スイッチ素子TR1のゲート・エミッタ間電圧VGEの傾きを大きくするように、ドライバ419のスルーレートが切り替えられる。
【0185】
上記のスルーレート切替制御によれば、本図の右側で示されるように、コレクタ電流Icの変化速度(di/dt)が大きくなる。その結果、スイッチ素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧VCEが急峻に立ち上がるので、スイッチ素子TR1のスイッチング損失が抑制され得る。ところで、スイッチ素子TR1が高温であるほど、コレクタ・エミッタ間電圧VCEの耐圧(一点鎖線)が上昇する。従って、スイッチ素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧VCEが耐圧を超えてしまう懸念は小さいと考えられる。
【0186】
なお、ゲート・エミッタ間電圧VGEの傾きを大きくする場合、ロジック411は、第1ハーフブリッジ出力段419Fを用いて出力パルス信号OUTを駆動してもよい。例えば、スイッチ素子TR1をオフ状態とする場合、ロジック411は、トランジスタ413Fをオン状態(GLF=H)とし、その余のトランジスタ412F、412S及び413Sをいずれもオフ状態(GHF=GHS=H、GLS=L)とすればよい。その結果、出力パルス信号OUTのフォール時におけるスルーレートは、抵抗R12に応じて決まる。抵抗R12は、抵抗R14よりも低い抵抗値を持つ。従って、スイッチ素子TR1のゲート・エミッタ間電圧VGEは、急峻に低下する。
【0187】
このように、スイッチ素子TR1の温度情報TEMPに応じてドライバ419のスルーレートを切り替える構成であれば、低温時には電圧サージ抑制を優先してスルーレートを下げ、高温時には損失低減を優先してスルーレートを上げることができる。従って、電圧サージ抑制と損失低減を両立することが可能となる。特に、ゲート基板及びパワーモジュールを設計する上で、電圧サージ抑制と損失低減は、それが全てと言ってもよいほど重要な特性である。
【0188】
<信号伝達装置(第2実施形態)>
図13は、信号伝達装置400の第2実施形態を示す図である。本実施形態の信号伝達装置400は、先出の第1実施形態(図10)を基本としつつ、いくつかの変更が加えられている。
【0189】
本図に即して述べると、本実施形態の信号伝達装置400は、種々のディスクリート部品(スイッチ素子TR1、抵抗R0F及びR0S、抵抗R1F及びR1S、抵抗R3、センス抵抗Rs、並びに、キャパシタC1)とともに電子機器Aに搭載される。
【0190】
また、信号伝達装置400は、装置外部との電気的な接続を確立する手段として、外部端子421、外部端子422F及び422S、外部端子423、外部端子424F及び424S、外部端子426、並びに、外部端子427を備える。外部端子421は、二次側電源端子(VCC2ピン)である。外部端子422Fは、第1上側出力端子(OUTH_Fピン)である。外部端子422Sは、第2上側出力端子(OUTH_Sピン)である。外部端子423は、負電源端子(VEE2ピン)である。外部端子424Fは、第1下側出力端子(OUTL_Fピン)である。外部端子424Sは、第2下側出力端子(OUTL_Sピン)である。外部端子426は、電流検出端子(ISENSEピン)である。外部端子427は、二次側接地端子(GND2ピン)である。
【0191】
外部端子421は、電源電圧VCC2の印加端とキャパシタC1の第1端にそれぞれ接続される。キャパシタC1の第2端は、基準電位端(例えばノードHVDC-)に接続される。外部端子422Fは、抵抗R0Fの第1端に接続される。外部端子422Sは、抵抗R0Sの第1端に接続される。外部端子423は、負電源電圧VEE2の印加端に接続される。外部端子424Fは、抵抗R1Fの第1端に接続される。外部端子424Sは、抵抗R1Sの第1端に接続される。抵抗R0S及びR1Sは、それぞれ、抵抗R0FおよびR1Fよりも高い抵抗値を持つとよい。外部端子426は、抵抗R3の第1端に接続される。外部端子427は、ノードHVDC-に接続される。
【0192】
このように、第2実施形態(図13)では、先出の第1実施形態(図10)と比べて、スイッチ素子TR1のゲートに接続される外部端子が4本(=外部端子422F及び422S、並びに、外部端子424F及び424S)に増設されている。本構成によれば、外付けのダイオードD11~D14が不要となる。
【0193】
スイッチ素子TR1は、ノードHVDC+とノードHVDC-との間を導通/遮断するパワートランジスタである。例えば、スイッチ素子TR1は、ハーフブリッジ出力段又はフルブリッジ出力段の上側スイッチ素子及び下側スイッチ素子であってもよい。ハーフブリッジ出力段又はフルブリッジ出力段は、モータドライバなどの負荷駆動手段として用いられてもよいし、或いは、インバータなどの電力変換手段として用いられてもよい。すなわち、スイッチ素子TR1は、先出の上側スイッチ素子TRH又は下側スイッチ素子TRLとして理解され得る。
【0194】
また、本図で示されるように、スイッチ素子TR1は、IGBTであってもよい。その場合、スイッチ素子TR1のコレクタは、ノードHVDC+に接続される。スイッチ素子TR1の第1エミッタは、ノードHVDC-に接続される。スイッチ素子TR1の第2エミッタ(いわゆるエミッタセンス)は、センス抵抗Rsの第1端と抵抗R3の第2端に接続される。センス抵抗Rsの第2端は、ノードHVDC-に接続される。なお、スイッチ素子TR1には、コレクタをカソードとして第1エミッタをアノードとするボディダイオードが付随する。スイッチ素子TR1のゲートは、抵抗R0F及びR0S並びに抵抗R1F及びR1Sそれぞれの第2端(=出力パルス信号OUTの印加端)に接続される。
【0195】
また、スイッチ素子TR1は、MOSFET[metal oxide semiconductor field effect transistor]などに置換されてもよい。その場合、上記説明における「コレクタ」が「ドレイン」と読み替えられ、「第1エミッタ」が「ソース」と読み替えられる。
【0196】
引き続き、図13を参照しながら、信号伝達装置400(特に駆動回路410)の内部構成について説明する。駆動回路410は、ロジック411と、短絡検出回路416(例えばコンパレータ)と、ドライバ419と、を含む。
【0197】
ロジック411は、入力パルス信号IN(より正確には、コントローラチップから絶縁伝達される受信パルス信号)に応じて、トランジスタ412F及び412Sそれぞれのゲート信号GHF及びGHS、並びに、トランジスタ413F及び413Sそれぞれのゲート信号GLF及びGLSを生成する。
【0198】
また、ロジック411は、スイッチ素子TR1のオン遷移期間及びオフ遷移期間の少なくとも一方において、ドライバ419のスルーレートを切り替える機能も備えている。
【0199】
ドライバ419は、ロジック411からの指示に応じて出力パルス信号OUTを生成することにより、スイッチ素子TR1を駆動する。本図に即して述べると、ドライバ419は、トランジスタ412F及び412S(例えばPMOSFET)と、トランジスタ413F及び413S(例えばNMOSFET)と、を含む。
【0200】
トランジスタ412F及び412Sそれぞれのソースは、いずれも外部端子421(=電源電圧VCC2の印加端)に接続される。トランジスタ412Fのドレインは、外部端子422Fに接続される。トランジスタ412Sのドレインは、外部端子422Sに接続される。トランジスタ413F及び413Sそれぞれのソースは、いずれも負電源電圧VEE2の印加端に接続される。トランジスタ413Fのドレインは、外部端子424Fに接続される。トランジスタ413Sのドレインは、外部端子424Sに接続される。
【0201】
トランジスタ412Fのゲートは、ゲート信号GHFの印加端に接続される。トランジスタ412Fは、ゲート信号GHFがローレベルであるときにオン状態となる。一方、トランジスタ412Fは、ゲート信号GHFがハイレベルであるときにオフ状態となる。
【0202】
トランジスタ412Sのゲートは、ゲート信号GHSの印加端に接続される。トランジスタ412Sは、ゲート信号GHSがローレベルであるときにオン状態となる。一方、トランジスタ412Sは、ゲート信号GHSがハイレベルであるときにオフ状態となる。
【0203】
トランジスタ413Fのゲートは、ゲート信号GLFの印加端に接続される。トランジスタ413Fは、ゲート信号GLFがハイレベルであるときにオン状態となる。一方、トランジスタ413Fは、ゲート信号GLFがローレベルであるときにオフ状態となる。
【0204】
トランジスタ413Sのゲートは、ゲート信号GLSの印加端に接続される。トランジスタ413Sは、ゲート信号GLSがハイレベルであるときにオン状態となる。一方、トランジスタ413Sは、ゲート信号GLSがローレベルであるときにオフ状態となる。
【0205】
このように、ドライバ419は、電源電圧VCC2の印加端と外部端子422F及び422Sとの間にそれぞれ接続されるトランジスタ412F及び412S(=複数の上側トランジスタに相当)と、負電源電圧VEE2の印加端と外部端子424F及び424Sとの間にそれぞれ接続されるトランジスタ413F及び413S(=複数の下側トランジスタに相当)と、を含む。
【0206】
短絡検出回路416は、センス電圧Vsを監視することにより、負荷の短絡状態を検出して短絡検出信号SCPを生成する。本図に即して述べると、短絡検出回路416は、外部端子426に印加されるセンス電圧Vsと所定の閾値電圧Vth1とを比較して短絡検出信号SCPを生成する。
【0207】
センス電圧Vsは、スイッチ素子TR1の第2エミッタ(=エミッタセンス)に流れるセンス電流Isをセンス抵抗RsでI/V変換することにより得られる電圧信号(=Is×Rs)である。ここで、センス電流Isは、スイッチ素子TR1の第1エミッタに流れる出力電流Ieに比例する。従って、センス電圧Vsは、スイッチ素子TR1に流れる出力電流Ieに応じたセンス信号に相当する。すなわち、センス電圧Vsは、出力電流Ieが大きいほど高くなり、出力電流Ieが小さいほど低くなる。
【0208】
負荷の正常状態(=短絡が生じていない状態)では、スイッチ素子TR1に過大な短絡電流が流れないので、センス電流Isも想定の範囲に収まる電流値となる。このとき、センス電圧Vsは、閾値電圧Vth1よりも低くなるように設計されている。従って、短絡検出信号SCPは、異常未検出時の論理レベル(例えばローレベル)となる。
【0209】
一方、負荷の短絡状態では、スイッチ素子TR1に過大な短絡電流が流れるので、センス電流Isが想定の範囲を超えて増大する。このとき、センス電圧Vsは、閾値電圧Vth1よりも高くなる。従って、短絡検出信号SCPは、異常検出時の論理レベル(例えばハイレベルとなる。
【0210】
このように、短絡検出回路416では、負荷の短絡検出方式として、いわゆるエミッタセンス方式が採用されている。エミッタセンス方式であれば、センス電圧Vsを監視することにより、スイッチ素子TR1に過大な短絡電流が流れているか否か、すなわち、負荷が短絡状態であるか否かを検出することができる。
【0211】
図14は、第2実施形態におけるゲート抵抗切替動作の一例を示す図である。なお、本図では、上から順に、外部端子424F及び424S(OUTL_Fピン及びOUTL_Sピン)それぞれのノード電圧、スイッチ素子TR1のゲート・エミッタ間電圧VGE、並びに、スイッチ素子TR1のコレクタ電流Ic(破線)及びコレクタ・エミッタ間電圧VCE(実線)が描写されている。
【0212】
本図の左側で示されるように、スイッチ素子TR1のオフ遷移期間において、トランジスタ413F及び413Sがいずれもオン状態とされる場合を考える。この場合、外部端子424F及び424S(OUTL_Fピン及びOUTL_Sピン)それぞれのノード電圧がいずれも負電源電圧VEE2まで低下する。従って、スイッチ素子TRのゲート・エミッタ間電圧VGEが急峻に立ち下げられる。
【0213】
先にも述べた通り、スイッチ素子TR1のゲート・エミッタ間電圧VGEが急峻に立ち下げられると、コレクタ電流Icの変化速度(di/dt)が大きくなる。その結果、スイッチ素子TR1のコレクタ・エミッタ間に生じる電圧サージが高くなる。そのため、スイッチ素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧VCEが耐圧を超えてしまい、スイッチ素子TR1が破壊されるおそれがある。
【0214】
そこで、ロジック411は、スイッチ素子TR1のオフ遷移期間の途中で、トランジスタ413F及び413Sのうち少なくとも一つ(例えばトランジスタ413S)をオフ状態とする区間を設ける。
【0215】
本図に即して述べると、ロジック411は、スイッチ素子TR1のオフ遷移期間において、まず、所定の第1時間T1に亘ってトランジスタ413F及び413Sをいずれもオン状態とする。第1時間T1が経過すると、ロジック411は、所定の第2時間T2に亘ってトランジスタ413F及び413Sのうち少なくとも一つ(例えばトランジスタ413S)をオフ状態とする。その後、第2時間T2が経過すると、ロジック411は、トランジスタ413F及び413Sの全てを再びオン状態とする。
【0216】
上記の第1時間T1が経過するまでの間、出力パルス信号OUTのフォール時におけるスルーレートは、抵抗R1F及びR1Sの合成抵抗値(=R1F×R1S/(R1F+R1S))に応じた第1設定値SR1(=高スルーレート)に設定される。その結果、ゲート・エミッタ間電圧VGEは、後出の第2時間T2と比べて急峻に低下していく。
【0217】
一方、第1時間T1が経過してから第2時間T2が経過するまでの間、出力パルス信号OUTのフォール時におけるスルーレートは、抵抗R1Fのみに応じた第2設定値SR2(=低スルーレート)に設定される。その結果、ゲート・エミッタ間電圧VGEは、先出の第1時間T1と比べて緩慢に低下していく。
【0218】
すなわち、本実施形態の信号伝達装置400(特に駆動回路410)では、スイッチ素子TR1のオフ遷移期間において、2段階のスルーレート切替制御が実施される。
【0219】
第1段階(T1)では、比較的大きいスルーレート(SR1)でスイッチ素子TR1のゲート・エミッタ間電圧VGEが引き下げられる。従って、スイッチ素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧VCEが急峻に立ち上げられる。その結果、スイッチ素子TR1のスイッチング損失が抑制され得る。
【0220】
第2段階(T2)では、比較的小さいスルーレート(SR2)でスイッチ素子TR1のゲート・エミッタ間電圧VGEが引き下げられる。その結果、スイッチ素子TR1が緩やかにターンオフされるので、過大な電圧サージ(=di/dtによる電圧の跳ね上がり)が抑制される。
【0221】
このように、2段階のスルーレート切替制御によれば、電圧サージ抑制と損失低減の両立が実現され得る。
【0222】
なお、第1時間T1及び第2時間T2は、タイマを用いて任意に設定されてもよい。また、スルーレートの第1設定値SR1及び第2設定値SR2は、それぞれ、外付けの抵抗R1及びR2により任意に調整され得る。
【0223】
また、第1時間T1及び第2時間T2は、少なくとも一方がスイッチ素子TR1の温度情報TEMPに応じて可変制御されてもよい。例えば、スイッチ素子TR1の低温時にはスイッチ素子TR1のコレクタ・エミッタ間の耐圧が低下する。これを鑑みると、ロジック411は、例えば、スイッチ素子TR1が低温であるほど、第1時間T1を短縮して第2時間T2を延長してもよい。
【0224】
また、第2実施形態で説明した2段階のスルーレート切替制御は、第1実施形態(図10)の回路構成であっても採用され得る。
【0225】
図10を参照して簡単に説明する。例えば、スイッチ素子TR1のオフ遷移期間には、まず、所定の第1時間T1に亘ってトランジスタ413F及び413Sがいずれもオン状態とされてもよい。このとき、出力パルス信号OUTのフォール時におけるスルーレートは、抵抗R12及びR14の合成抵抗値(=R12×R14/(R12+R14))に応じた第1設定値SR1(=高スルーレート)に設定される。
【0226】
その後、第2時間T2には、トランジスタ413Sがオフ状態とされてもよい。このとき、出力パルス信号OUTのフォール時におけるスルーレートは、抵抗R12のみに応じた第2設定値SR2(=低スルーレート)に設定される。
【0227】
このように、第1実施形態の回路構成において、第1ハーフブリッジ出力段419F及び第2ハーフブリッジ出力段419Sは、必ずしも排他的に駆動されなくてもよい。
【0228】
また、上記一連の説明では、スイッチ素子TR1のオフ遷移期間に着目して説明を行ったが、スイッチ素子TR1のオン遷移期間についても同様のスルーレート切替制御が可能であることは言うまでもない。
【0229】
<車両への適用>
図15は、車両の外観を示す図である。本構成例の車両Bは、バッテリから電力供給を受けて動作する種々の電子機器を搭載している。
【0230】
車両Bには、エンジン車のほか、電動車(BEV[battery electric vehicle]、HEV[hybrid electric vehicle]、PHEV/PHV(plug-in hybrid electric vehicle/plug-in hybrid vehicle]、又は、FCEV/FCV(fuel cell electric vehicle/fuel cell vehicle]などのxEV)も含まれる。
【0231】
なお、先に説明した信号伝達装置200又は400は、車両Bに搭載される電子機器のいずれにも組み込むことが可能である。
【0232】
<付記>
以下では、上記で説明した種々の実施形態について総括的に述べる。
【0233】
例えば、本明細書中に開示されている駆動回路は、電源電圧又は基準電圧の印加端とスイッチ素子の制御端との間にそれぞれ並列に接続される複数のトランジスタと、前記スイッチ素子のオン遷移期間又はオフ遷移期間の途中で前記複数のトランジスタのうち少なくとも一つをオフ状態とする区間を設けるように前記複数のトランジスタをそれぞれ制御するように構成されるロジックと、を備える構成(第1の構成)とされている。
【0234】
なお、上記第1の構成による駆動回路において、前記ロジックは、前記オン遷移期間又は前記オフ遷移期間において、所定の第1時間に亘って前記複数のトランジスタをいずれもオン状態としてから、所定の第2時間に亘って前記複数のトランジスタのうち少なくとも一つをオフ状態とし、その後に前記複数のトランジスタの全てを再びオン状態とする構成(第2の構成)とされてもよい。
【0235】
また、上記第2の構成による駆動回路において、前記第1時間及び前記第2時間は、少なくとも一方が前記スイッチ素子の温度情報に応じて可変制御される構成(第3の構成)とされてもよい。
【0236】
また、上記第1~第3いずれかの構成による駆動回路は、前記スイッチ素子の制御端に接続されるように構成された複数の外部端子を備え、前記複数のトランジスタは、それぞれ、前記電源電圧又は前記基準電圧の印加端と前記複数の外部端子との間に接続される構成(第4の構成)とされてもよい。
【0237】
また、上記第4の構成による駆動回路において、前記複数のトランジスタは、前記電源電圧の印加端と前記複数の外部端子との間にそれぞれ接続される複数の上側トランジスタと、前記基準電圧の印加端と前記複数の外部端子との間にそれぞれ接続される複数の下側トランジスタと、を含む構成(第5の構成)とされてもよい。
【0238】
また、上記第4の構成による駆動回路において、前記複数の外部端子は、複数の上側出力端子と、複数の下側出力端子とを含み、前記複数のトランジスタは、前記電源電圧の印加端と前記複数の上側出力端子との間にそれぞれ接続される複数の上側トランジスタと、前記基準電圧の印加端と前記複数の下側出力端子との間にそれぞれ接続される複数の下側トランジスタと、を含む構成(第6の構成)とされてもよい。
【0239】
また、例えば、本明細書中に開示されている駆動回路は、スイッチ素子を駆動するように構成されたドライバと、前記スイッチ素子の温度情報に応じて前記ドライバのスルーレートを切り替えるように構成されたロジックを備える構成(第7の構成)とされている。
【0240】
また、例えば、本明細書中に開示されている信号伝達装置は、入力パルス信号から送信パルス信号を生成するように構成された第1チップと、受信パルス信号から前記スイッチ素子を駆動するための出力パルス信号を生成するように構成された第2チップと、前記第1チップと前記第2チップとの間を絶縁しつつ前記送信パルス信号を前記受信パルス信号として伝達するように構成された第3チップと、を単一のパッケージに封止して成り、上記第1~第7いずれかの構成による駆動回路は、前記第2チップに集積化される構成(第8の構成)とされている。
【0241】
また、例えば、本明細書中に開示されている電子機器は、上記第8の構成による信号伝達装置と、前記駆動回路により駆動されるように構成された前記スイッチ素子と、を備える構成(第9の構成)とされている。
【0242】
また、例えば、本明細書中に開示されている車両は、上記第9の構成による電子機器を備える構成(第10の構成)とされている。
【0243】
<その他>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。また、本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲により規定されるものであって、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0244】
5 半導体装置
11、11A~11F 低電位端子
12、12A~12F 高電位端子
21、21A~21D 変圧器(トランス)
22 低電位コイル(一次側コイル)
23 高電位コイル(二次側コイル)
24 第1内側末端
25 第1外側末端
26 第1螺旋部
27 第2内側末端
28 第2外側末端
29 第2螺旋部
31 第1低電位配線
32 第2低電位配線
33 第1高電位配線
34 第2高電位配線
41 半導体チップ
42 第1主面
43 第2主面
44A~44D チップ側壁
45 第1機能デバイス
51 絶縁層
52 絶縁主面
53A~53D 絶縁側壁
55 最下絶縁層
56 最上絶縁層
57 層間絶縁層
58 第1絶縁層
59 第2絶縁層
60 第2機能デバイス
61 シール導体
62 デバイス領域
63 外側領域
64 シールプラグ導体
65 シールビア導体
66 第1内側領域
67 第2内側領域
71 貫通配線
72 低電位接続配線
73 引き出し配線
74 第1接続プラグ電極
75 第2接続プラグ電極
76 パッドプラグ電極
77 基板プラグ電極
78 第1電極層
79 第2電極層
80 配線プラグ電極
81 高電位接続配線
82 パッドプラグ電極
85 ダミーパターン
86 高電位ダミーパターン
87 第1高電位ダミーパターン
88 第2高電位ダミーパターン
89 第1領域
90 第2領域
91 第3領域
92 第1接続部
93 第1パターン
94 第2パターン
95 第3パターン
96 第1外周ライン
97 第2外周ライン
98 第1中間ライン
99 第1接続ライン
100 スリット
130 分離構造
140 無機絶縁層
141 第1無機絶縁層
142 第2無機絶縁層
143 低電位パッド開口
144 高電位パッド開口
145 有機絶縁層
146 第1部分
147 第2部分
148 低電位端子開口
149 高電位端子開口
200 信号伝達装置
200p 一次回路系
200s 二次回路系
210 コントローラチップ(第1チップ)
211 パルス送信回路(パルスジェネレータ)
212、213 バッファ
220 ドライバチップ(第2チップ)
221、222 バッファ
223 パルス受信回路(RSフリップフロップ)
224 ドライバ
230 トランスチップ(第3チップ)
230a 第1配線層(下層)
230b 第2配線層(上層)
231、232 トランス
231p、232p 一次側コイル
231s、232s 二次側コイル
300 トランスチップ
301 第1トランス
302 第2トランス
303 第3トランス
304 第4トランス
305 第1ガードリング
306 第2ガードリング
400 信号伝達装置
410 駆動回路
411 ロジック
412F、412S トランジスタ(PMOSFET)
413F、413S トランジスタ(NMOSFET)
416 短絡検出回路(コンパレータ)
419 ドライバ
419F 第1ハーフブリッジ出力段
419S 第2ハーフブリッジ出力段
420~424、426、427 外部端子
a1~a8 パッド(第1の電流供給用パッドに相当)
b1~b8 パッド(第1の電圧測定用パッドに相当)
c1~c4 パッド(第2の電流供給用パッドに相当)
d1~d4 パッド(第2の電圧測定用パッドに相当)
e1、e2 パッド
A 電子機器
B 車両
C1 キャパシタ
D11~D14 ダイオード
GDH 上側ゲートドライバ
GDL 下側ゲートドライバ
HB ハーフブリッジ出力段
HVDC+、HVDC- ノード
L1p、L2p 一次側コイル
L1s、L2s、L3s、L4s 二次側コイル
Ls 寄生インダクタンス
PW 直流電源
R0F/S、R1F/S、R3、R11~R14 抵抗
Rs センス抵抗
T21、T22、T23、T24、T25、T26 外部端子
TR1 スイッチ素子(パワートランジスタ)
TRH 上側スイッチ素子(パワートランジスタ)
TRL 下側スイッチ素子(パワートランジスタ)
X 第1方向
X21、X22、X23 内部端子
Y 第2方向
Y21、Y22、Y23 配線
Z 法線方向
Z21、Z22、Z23 ビア
ZL 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15