(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116830
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】電極カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022641
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】榊 航平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】石田 亮
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK12
4C160KK36
4C160KK37
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】電極アセンブリの形状保持性を高めることができる電極カテーテルを提供すること。
【解決手段】カテーテルシャフト20と、カテーテルシャフト20に対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリ16及び遠位側束ね部品22Aと、を備え、電極アセンブリ16は、カテーテルシャフト20により近位端部が束ねられるとともに遠位側束ね部品により遠位端部が束ねられる複数のスプライン部40L、40Rを備え、複数のスプライン部40L、40Rは、カテーテルシャフト20の軸方向の遠位側から見て、遠位端部40b側から近位端部40a側に向かって右回りに延びる右回りスプライン部40Rと、遠位端部40b側から近位端部40a側に向かって左回りに延びる左回りスプライン部40Lとを含む電極カテーテルである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトに対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリ及び遠位側束ね部品と、を備え、
前記電極アセンブリは、前記カテーテルシャフトにより近位端部が束ねられるとともに前記遠位側束ね部品により遠位端部が束ねられる複数のスプライン部を備え、
前記複数のスプライン部は、前記カテーテルシャフトの軸方向の遠位側から見て、前記遠位端部側から前記近位端部側に向かって左回りに延びる左回りスプライン部と、前記遠位端部側から前記近位端部側に向かって右回りに延びる右回りスプライン部とを含む電極カテーテル。
【請求項2】
前記右回りスプライン部と前記左回りスプライン部とは互いに交差するように接触可能に設けられる請求項1に記載の電極カテーテル。
【請求項3】
前記電極アセンブリは、複数の前記右回りスプライン部と複数の前記左回りスプライン部とによりメッシュ形状をなす請求項1に記載の電極カテーテル。
【請求項4】
前記複数のスプライン部のそれぞれには電極部が設けられ、
前記電極アセンブリは、前記右回りスプライン部の前記電極部と前記左回りスプライン部の前記電極部とで連続する連続導電路を形成可能である請求項1に記載の電極カテーテル。
【請求項5】
前記連続導電路は、前記カテーテルシャフトの中心線周りの全周に連続する請求項4に記載の電極カテーテル。
【請求項6】
前記電極アセンブリは、前記連続導電路において、複数の前記右回りスプライン部と複数の前記左回りスプライン部とによりメッシュ形状をなす請求項4に記載の電極カテーテル。
【請求項7】
前記電極アセンブリは、前記メッシュ形状を形成する中間領域と、前記中間領域の軸方向両側に設けられる一対の端部領域と、を備え、
前記中間領域の少なくとも一部における単位軸方向長さ当たりの角度変化量Δθ1は、前記端部領域における単位軸方向長さ当たりの最大角度変化量Δθ2(max)よりも大きくなる請求項3または6に記載の電極カテーテル。
【請求項8】
前記複数のスプライン部それぞれの前記遠位端部及び前記近位端部のうちの一方の端部は、環状に配列される複数の前記一方の端部からなる端部群を構成し、
前記端部群は、前記軸方向から見て入れ子状に複数列配置される請求項1に記載の電極カテーテル。
【請求項9】
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトに対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリ及び遠位側束ね部品と、を備え、
前記電極アセンブリは、前記カテーテルシャフトにより近位端部が束ねられるとともに前記遠位側束ね部品により遠位端部が束ねられる複数のスプライン部を備え、
前記複数のスプライン部それぞれの前記遠位端部及び前記近位端部のうちの一方の端部は、環状に配列される複数の前記一方の端部からなる端部群を構成し、
前記端部群は、前記カテーテルシャフトの軸方向から見て入れ子状に複数列配置される電極カテーテル。
【請求項10】
前記複数列の端部群は、内側端部群と外側端部群とを含み、
前記複数のスプライン部は、前記内側端部群から径方向外側に向けて放射状に延び出る複数の内側延出部と、前記外側端部群から径方向外側に向けて放射状に延び出る複数の外側延出部とを構成し、
前記複数の内側延出部のそれぞれは、軸方向から見て、周方向に隣り合う前記外側延出部の間を通るように延びている請求項8または9に記載の電極カテーテル。
【請求項11】
前記複数列の端部群は、複数の前記一方の端部である複数の内側端部からなる内側端部群と、複数の前記一方の端部である複数の外側端部からなる外側端部群とを含み、
前記電極カテーテルは、少なくとも二つの前記スプライン部からなるスプライン部の組を構成する少なくとも一つの組用線状体を備え、
前記組用線状体は、一の前記スプライン部の前記内側端部と、他の前記スプライン部の前記外側端部とを連結する連結部を備える請求項8または9に記載の電極カテーテル。
【請求項12】
前記内側端部群及び前記外側端部群を通る軸方向に直交する断面において、前記一のスプライン部の前記内側端部に対して周方向両側に隣り合う二つの前記内側端部の存在する周方向範囲を基準範囲としたとき、
前記連結部により前記一のスプライン部の前記内側端部と連結される前記外側端部の少なくとも一部は、前記基準範囲外に位置する請求項11に記載の電極カテーテル。
【請求項13】
前記連結部により前記一のスプライン部の前記内側端部と連結される前記外側端部の少なくとも一部は、前記基準範囲外において前記基準範囲に対して周方向片側で最も近くに位置する請求項12に記載の電極カテーテル。
【請求項14】
少なくとも二つの前記スプライン部からなるスプライン部の組を構成する少なくとも一つの組用線状体を備える請求項1または9に記載の電極カテーテル。
【請求項15】
前記スプライン部の組は、少なくとも前記右回りスプライン部と前記左回りスプライン部とを含む請求項1に従属する請求項14に記載の電極カテーテル。
【請求項16】
前記遠位側束ね部品は、前記複数のスプライン部それぞれの前記遠位端部が挿通される複数の挿通孔を備え、
前記組用線状体により構成される前記二つのスプライン部それぞれの前記遠位端部は、前記遠位側束ね部品における異なる前記挿通孔に挿通されている請求項14に記載の電極カテーテル。
【請求項17】
前記複数のスプライン部のそれぞれは、前記遠位側束ね部品よりも遠位側に設けられ、軸方向に折り返す折り返し部を備える請求項1または9に記載の電極カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、カテーテルシャフトと、カテーテルシャフトに対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリ及び遠位側束ね部品とを備える電極カテーテルを開示する。この電極アセンブリは、カテーテルシャフトにより近位端部が束ねられるとともに遠位側束ね部品により遠位端部が束ねられる複数のスプライン部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極アセンブリを生体組織に接触させたとき、複数のスプライン部のそれぞれが柔軟に変形する。このとき、各スプライン部の変形量が過度に大きくなると、生体組織から各スプライン部が意図せず部分的に離れてしまい、生体組織に対する各スプライン部の接触範囲を確保し難くなる。このため、電極アセンブリの形状保持性を適度に高めるための工夫が望まれる。
【0005】
そこで、本開示の目的の1つは、電極アセンブリの形状保持性を高めることができる電極カテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1項目の電極カテーテルは、カテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトに対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリ及び遠位側束ね部品と、を備え、前記電極アセンブリは、前記カテーテルシャフトにより近位端部が束ねられるとともに前記遠位側束ね部品により遠位端部が束ねられる複数のスプライン部を備え、前記複数のスプライン部は、前記カテーテルシャフトの軸方向の遠位側から見て、前記遠位端部から前記近位端部に向かって右回りに延びる右回りスプライン部と、前記遠位端部から前記近位端部に向かって左回りに延びる左回りスプライン部とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電極アセンブリの形状保持性を高めることのできる電極カテーテルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の電極カテーテルの利用シーンに関する説明図である。
【
図2】実施形態の電極カテーテルを模式的に示す側面図である。
【
図3】実施形態の電極アセンブリを周辺構造とともに示す斜視図である。
【
図4】実施形態の電極アセンブリを周辺構造とともに示す側面図である。
【
図5】実施形態の電極アセンブリの周辺構造を示す側面断面図である。
【
図6】実施形態の電極アセンブリを軸方向の遠位側から見た図である。
【
図7】実施形態の右回りスプライン部及び左回りスプライン部を周辺構造とともに示す側面図である。
【
図8】実施形態の右回りスプライン部及び左回りスプライン部を周辺構造とともに軸方向の遠位側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための実施形態を説明する。同一又は同等の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0010】
図1を参照する。本実施形態の電極カテーテル10の利用シーンから説明する。電極カテーテル10は、生体の処置に用いられる。ここでの「処置」とは、生体の治療又は検査に関する行為をいう。本実施形態の電極カテーテル10は、PFA(パルス電界アブレーション:Pulsed Field Ablation)による心房細動の治療に用いられる。心房細動は、多くの場合、肺静脈12で生じた異常な電気信号の左心房14への伝達に起因して生じる。この治療は、通常、電極カテーテル10の電極アセンブリ16を用いて肺静脈12と左心房14の境界部を環状に焼灼することでなされる。ここでは電極カテーテル10による焼灼範囲Saにハッチングを付す。これにより、肺静脈12から左心房14への異常な電気信号の伝達が遮断される。電極アセンブリ16を用いた通電方式は、体外に配置される対極板との間で通電するモノポーラ方式の他、体内に配置した他の電極との間で通電するバイポーラ方式等を採用できる。
【0011】
図2を参照する。電極カテーテル10は、カテーテルシャフト20と、カテーテルシャフト20に対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリ16及び遠位側束ね部品22Aと、カテーテルシャフト20の近位側部分に取り付けられ術者により把持されるハンドル24とを備える。この他に、電極カテーテル10は、任意の構成として、遠位側束ね部品22Aが固定される長尺部材26を備える。
【0012】
以下、カテーテルシャフト20が曲げ変形しておらず直線的に延びる状態を基準として各構成要素の位置関係を説明する。カテーテルシャフト20の軸線と同心の円の円周方向及び半径方向を単に「周方向」、「径方向」という。「遠位側」とは、カテーテルシャフト20の軸方向においてハンドル24を把持する術者の手元から遠い側をいい、「近位側」とは、その遠位側とは軸方向反対側をいう。
【0013】
図3、
図4、
図5を参照する。カテーテルシャフト20は、少なくとも遠位側端部において体内に挿入される。カテーテルシャフト20は曲げ変形可能な可撓性を持つ。カテーテルシャフト20にはハンドル24の内部まで連続するメインルーメン30が形成される。カテーテルシャフト20は、メインルーメン30が形成されたシャフト本体32と、シャフト本体32と一体に設けられる近位側束ね部品22Bと、を備える。本実施形態のシャフト本体32は、軸方向に配列される複数のシャフト部材32a、32bを溶着、接着等により接続して構成される。近位側束ね部品22Bはシャフト本体32と別体であり、メインルーメン30内に配置されたうえでシャフト本体32に固定される例を示す。この他にも、近位側束ね部品22Bは、シャフト本体32と一体成形されていてもよい。カテーテルシャフト20は、任意の構成として、シャフト本体32のメインルーメン30内に挿通されるチューブ36を備える。
【0014】
長尺部材26は、カテーテルシャフト20の軸方向に沿って長尺状に延びている。長尺部材26は、カテーテルシャフト20のメインルーメン30内に挿通されたうえでハンドル24内まで連続している。本実施形態の長尺部材26はシャフトにより構成されるが、ワイヤ等でもよい。長尺部材26は、任意の構成として、長尺部材26の内部に軸方向に沿って形成されるサブルーメン26aを備える。サブルーメン26aは、例えば、ガイドワイヤ、他の電極カテーテル等の医療デバイスの挿抜に用いられる。
【0015】
図4~
図8(特に、
図4、
図7)を参照する。電極アセンブリ16は、線状をなす複数のスプライン部40L、40Rを備える。ここでは計32個のスプライン部40L、40Rがある例を示すが、その個数は特に限定されない。スプライン部40L、40Rは、線長方向の一端側にある近位端部40aと、線長方向の他端側にある遠位端部40bとを備える。ここでの線長方向とは、スプライン部40L、40Rの軸線に沿った方向をいう。複数のスプライン部40L、40Rそれぞれの近位端部40aは、カテーテルシャフト20の近位側束ね部品22Bにより束ねられる。複数のスプライン部40L、40Rそれぞれの遠位端部40bは、遠位側束ね部品22Aにより束ねられる。本実施形態の遠位端部40bは近位端部40aよりも遠位側に設けられる。
【0016】
スプライン部40L、40Rは、線長方向で近位端部40aと遠位端部40bの間に設けられる柔軟部40cを備える。柔軟部40cは柔軟に曲げ変形可能である。電極アセンブリ16は複数のスプライン部40L、40Rそれぞれの柔軟部40cが曲げ変形することで径方向に拡縮可能である。ここでの拡縮とは径方向外側への拡張及び径方向内側への収縮をいう。本実施形態の電極アセンブリ16は、長尺部材26により遠位側束ね部品22Aを近位側に引くことで拡張可能である。この他にも、電極アセンブリ16は、長尺部材26により遠位側束ね部品22Aを遠位側に押すことで収縮可能であってもよい。長尺部材26は、ハンドル24に設けられるスライドノブ等の操作部材24a(
図2参照)に連動して動くことができ、その操作部材24aに対する術者の操作により遠位側束ね部品22Aを押し引き可能である。
【0017】
電極アセンブリ16は、電極アセンブリ16の径方向での拡縮により外径を調整可能である。電極アセンブリ16は、スプライン部40L、40Rの最遠位位置Pa(後述する)を近位側に近づけるにつれて外径が大きくなる。
図2等の図面においては、電極アセンブリ16の外径の調整可能範囲内で最大外径になる状態を示す。このような電極アセンブリ16の外径は、本実施形態において、長尺部材26の軸方向移動に追従して調整される。電極アセンブリ16の外径の変化態様は一例であり、他の態様で変化してもよい。
【0018】
複数のスプライン部40L、40Rのそれぞれには電極部42が設けられる。本実施形態のスプライン部40L、40Rは、その外周面の全体に電極部42が設けられる。これを実現するうえで、本実施形態のスプライン部40L、40Rは、導電性を持つ線材(電極線)からなる線状体により構成される。電極部42は、外部給電装置により生成された処置に供する電流の生体組織への通電に用いられる。この他にも、電極部42は、生体組織からの生体信号(心電位等)の取り込みにも用いられてもよい。
【0019】
以上の電極カテーテル10は、(1)電極アセンブリ16、(2)各スプライン部40L、40Rの端部40a、40bのそれぞれに関して特徴がある。まず、(1)の電極アセンブリ16の特徴から説明する。
【0020】
図7、
図8を参照する。複数のスプライン部40L、40Rは、軸方向の遠位側から見て、遠位端部40b側から近位端部40a側に向かって左回り(反時計回り)に延びる左回りスプライン部40Lと、遠位端部40b側から近位端部40a側に向かって右回り(時計回り)に延びる右回りスプライン部40Rと、を含む。各スプライン部40L、40Rは、カテーテルシャフト20の軸線C20に対して径方向にオフセットした位置にあり、各スプライン部40L、40Rに対応する仮想的なオフセット点Po周りを右回り又は左回りに回るように延びる。スプライン部40L、40Rは、軸方向の遠位側から見て、遠位端部40bから径方向外側に延び出る遠位側延出部40dと、近位端部40aから径方向外側に延び出る近位側延出部40eとを備える。スプライン部40L、40Rは、遠位側延出部40dから近位側延出部40eに向かってオフセット点Po周りを回るように延びる。
【0021】
図4、
図6を参照する。
図4、
図6では各スプライン部40L、40Rの紙面手前側に見える一部分のみを図示しており、紙面奥側に見える他の部分は適宜省略している。左回りスプライン部40Lは周方向に間隔を空けて複数配置される。右回りスプライン部40Rは周方向に間隔を空けて複数配置される。ここでは右回りスプライン部40Rが計16個、左回りスプライン部40Lが計16個となる例を示すが、その個数は特に限定されない。
【0022】
このように左回りスプライン部40Lと右回りスプライン部40Rがあることにより、左回りスプライン部40Lと右回りスプライン部40Rを互いに交差するように接触可能に設けることができる。これは、左回りスプライン部40Lの一部と右回りスプライン部40Rの一部が径方向に交差して重なるように設けられていることを意味する。
図4では、このような各スプライン部40L、40Rの交差箇所44の一例を示す。これを実現するうえで、本実施形態の各スプライン部40L、40Rは互いの交差箇所44において接触している。この他にも、各スプライン部40L、40Rは、互いの交差箇所44において僅かに間隔を空けて設けられ、外側のスプライン部に径方向内側に向かう外力が付与されたときに、外側のスプライン部の変形を伴い内側のスプライン部に接触可能であってもよい。
【0023】
電極アセンブリ16は、複数の右回りスプライン部40Rと複数の左回りスプライン部40Lとによりメッシュ形状をなす。これは、前述のように、複数の右回りスプライン部40R及び複数の左回りスプライン部40Lそれぞれを互いに接触可能に設けることで実現される。電極アセンブリ16のなすメッシュ形状は、周方向に延びるジグザグパターン46を軸方向に複数列配列した形状である。
図4では、計二列分のジグザグパターン46のある範囲を示すとともに、一列分のジグザグパターン46にハッチングを付す。ジグザグパターン46は周方向に向かって軸方向にジグザグに延びている。ジグザグパターン46には、各スプライン部40L、40Rの交差箇所44において、周方向に向かって軸方向に折り返す屈曲部46aが形成される。屈曲部46aは周方向に向かって間隔を空けて複数形成される。電極アセンブリ16のなすメッシュ形状は、軸方向及び周方向に並ぶ菱形状の複数の網目を形成している。
【0024】
電極アセンブリ16のなすメッシュ形状の交差箇所44では左回りスプライン部40L及び右回りスプライン部40Rのいずれが径方向外側にあってもよい。本実施形態では一の左回りスプライン部40Lの線長方向に向かって、左回りスプライン部40Lが径方向外側にある交差箇所44(以下、第1交差箇所44という)と、右回りスプライン部40Rが径方向外側にある交差箇所44(以下、第2交差箇所44という)とが交互に設けられる例を説明する。この他にも、一の左回りスプライン部40Lの線長方向に向かって第1交差箇所44と第2交差箇所44がランダムに設けられてもよい。電極アセンブリ16の形状保持性(後述する)との関係では、好ましくは、一の左回りスプライン部40Lの線長方向に向かって少なくとも一つの第1交差箇所44と少なくとも一つの第2交差箇所44が設けられるとよい。
【0025】
電極アセンブリ16は、右回りスプライン部40Rの電極部42と左回りスプライン部40Lの電極部42とで連続する連続導電路48を形成可能である。これは、前述のように、左回りスプライン部40L及び右回りスプライン部40Rそれぞれを接触させることで、各スプライン部40L、40Rの電極部42を導通させることで実現される。連続導電路48は電流を通すことができる箇所となり、生体組織に接触させることで生体組織との間で導通される。
【0026】
電極アセンブリ16は、連続導電路48において前述のメッシュ形状をなす。連続導電路48は、カテーテルシャフト20の軸線C20回りの全周に連続している。これは、連続導電路48に含まれる少なくとも一列のジグザグパターン46が全周に連続することで実現される。本実施形態において、連続導電路48のなすメッシュ形状はカテーテルシャフト20の軸線C20回りの全周に連続していることになる。
【0027】
以上の電極アセンブリ16は、複数のスプライン部40L、40Rによって、全体として、カテーテルシャフト20の軸線C20を中心とする回転体状をなす。ここでの回転体とは、軸線C20を中心として平面曲線を回転させることにより得られる立体形状をいう。ここでの「状」とは、直前に付く用語の指す形(回転体、球体等)に幾何学的に厳密に一致する形の他に、その形に全体として似た形も含まれる。電極アセンブリ16は、このような回転体状として球状をなす。ここでの「球」には、扁球、長球等の回転楕円体が含まれる。電極アセンブリ16は、全体として、軸方向遠位側から近位側に向かうにつれて外径が徐々に大きくなってから、その外径が徐々に小さくなる球状をなすともいえる。
【0028】
以上の(1)の特徴に関する電極カテーテル10の効果を説明する。電極アセンブリ16は左回りスプライン部40Lと右回りスプライン部40Rを備える。これにより、左回りスプライン部40Lと右回りスプライン部40Rを接触可能に設けることができ、それにより電極アセンブリ16の形状保持性を高めることができる。
【0029】
例えば、左回りスプライン部40Lと右回りスプライン部40Rの接触箇所(交差箇所44)周りで、外側にあるスプライン部40L、40Rに対して径方向内側に向かう外力が付与された場合を考える。この場合、左回りスプライン部40L及び右回りスプライン部40Rの接触箇所を通して、外側にあるスプライン部40L、40Rから内側にあるスプライン部40L、40Rに外力を伝達できる。ひいては、左回りスプライン部40L及び右回りスプライン部40Rの両者により外力に抵抗することで、電極アセンブリ16の形状保持性を適度に高めることができる。特に、この効果との関係で、電極アセンブリ16は、複数の右回りスプライン部40Rと複数の左回りスプライン部40Lとによりメッシュ形状をなすと好ましい。このように、電極アセンブリ16の形状保持性を適度に高めることで、電極アセンブリ16を生体組織に接触させたとき、その変形量の過度の増大を抑制でき、生体組織に対する各スプライン部40L、40Rの接触範囲を確保し易くなる。特に、電極アセンブリ16の各スプライン部40L、40Rに設けた電極部42の生体組織に対する導通範囲を確保し易くなる点で有利となる。
【0030】
本実施形態の電極アセンブリ16は、右回りスプライン部40Rの電極部42と左回りスプライン部40Lの電極部42で連続する連続導電路48を形成可能である。よって、各スプライン部40L、40Rの連続導電路48を生体組織に接触させることで、各スプライン部40L、40Rそれぞれの生体組織に対する導通箇所(電極部42の接触箇所)を間隔を空けずに連続させることができる。ひいては、電極アセンブリ16による生体組織に対する連続する導通箇所の周方向範囲を広げ易くすることができる。特に、本実施形態のように電極カテーテル10を用いてアブレーションする場合、電極アセンブリ16による生体組織に対する連続する導通箇所の周方向範囲が広がるほど、生体組織を環状に焼灼するうえで有利となる。この効果との関係で、電極アセンブリ16の連続導電路48が全周に連続していると好ましい。
【0031】
電極アセンブリ16は、連続導電路48においてメッシュ形状をなす。よって、連続導電路48のなすメッシュ形状に含まれる複数列のジグザグパターン46を生体組織に同時に接触させることで、ジグザグパターン46が一列のみの場合と比べ、生体組織に対する連続する導通箇所の周方向範囲を安定して広げることができる。
【0032】
電極アセンブリ16のメッシュ形状をなす部分を一体成形品により構成する場合、被加工材に対するレーザー加工等のカット加工により、メッシュ形状の網目となる部分をカットすることで、その一体成形品を得ることになる。この場合、そのカット加工に起因して製造難易度が大きく上がってしまう。この点、本実施形態の電極アセンブリ16は、電極アセンブリ16のメッシュ形状をなす部分を複数のスプライン部40L、40Rにより構成することができる。よって、複数のスプライン部40L、40Rを構成する複数の線状体を用いた組み立て作業を経ることで、メッシュ形状をなす部分が得られる。このため、メッシュ形状をなす部分を得るにあたって、製造難易度を上げる原因となるカット加工を要さずに済み、その製造難易度を下げることができる。
【0033】
以上の(1)に関する他の特徴を説明する。電極アセンブリ16は、メッシュ形状を形成する中間領域60と、中間領域60の軸方向両側に設けられる一対の端部領域62とを備える。中間領域60は、軸方向において最も遠位側にあるジグザグパターン46の屈曲部46aから、最も近位側にあるジグザグパターン46の屈曲部46aまでの軸方向範囲に設けられる。遠位側の端部領域62は、スプライン部40L、40Rの柔軟部40cにおいて最も軸方向遠位側にある最遠位位置Paから、最も遠位側にあるジグザグパターン46の屈曲部46aまでの軸方向範囲に設けられる。近位側の端部領域62は、最も近位側にあるジグザグパターン46の屈曲部46aから、スプライン部40L、40Rの柔軟部40cにおいて最も軸方向近位側にあり径方向から見て外部に露出している最近位位置Pbまでの軸方向範囲に設けられる。最近位位置Pbは、スプライン部40L、40Rの一部がカテーテルシャフト20のメインルーメン30内に挿通されている場合、そのメインルーメン30外において存在することになる。
【0034】
図4、
図9を参照する。
図9は、
図8の範囲Raを拡大した図となる。スプライン部40L、40Rの単位軸方向長さΔL当たりの角度変化量Δθ1、Δθ2を定義する。Δθ1は、中間領域60における角度変化量であり、Δθ2は端部領域62における角度変化量である。
図9では、
図4に示す中間領域60、端部領域62のそれぞれの単位軸方向長さΔLの部分にダブルハッチングを付す。角度変化量Δθ1、Δθ2は、単位軸方向長さΔLの分だけスプライン部40L、40R上に存在する仮想点がスプライン部40L、40Rに沿って軸方向に進んだとき、そのスプライン部40L、40R上の仮想点のカテーテルシャフト20の軸線C20回りでの角度の変化量をいう。この単位軸方向長さΔLは、スプライン部40L、40Rの最遠位位置Paから最近位位置Pbまでの軸方向全長さに対して十分に短い長さ(例えば、軸方向全長さの1/100)となる。
図4では、説明の便宜のため、単位軸方向長さΔLを誇張して示す。この角度変化量Δθ1、Δθ2を想定するにあたって、スプライン部40L、40Rの最遠位位置Paから最近位位置Pbまでの範囲でスプライン部40L、40Rに沿って軸方向に進んだときの角度変化量のみを考慮する。スプライン部40L、40Rの柔軟部40cにおける最遠位位置Paよりも遠位端部40b側の部分は考慮しないということである。この角度変化量Δθ1、Δθ2が大きくなるほど、軸方向直交面に対するスプライン部40L、40R上の単位軸方向長さΔLの部分の傾斜角度が小さくなる。
【0035】
中間領域60の少なくとも一部における角度変化量Δθ1は、端部領域62における最大角度変化量Δθ2(max)よりも大きくなる。最大角度変化量Δθ2(max)は、端部領域62の各単位軸方向長さΔLの部分での角度変化量Δθ2のうち最大となるものをいう。この最大角度変化量Δθ2(max)となる箇所は、本実施形態では端部領域62における中間領域60との境界部寄りの端部に設けられる。この角度変化量Δθ1は、一対の端部領域62それぞれの最大角度変化量Δθ2(max)よりも大きくなる。本実施形態では中間領域60の全域における角度変化量Δθ1が、端部領域62における最大角度変化量Δθ2(max)よりも大きくなる。ここで説明した角度変化量Δθ1と最大角度変化量Δθ2(max)に関する条件は、電極アセンブリ16の外径の調整可能範囲内で最大外径になった状態(ここでは
図4等の状態)にあるときに少なくとも満たしていればよい。
【0036】
この中間領域60における角度変化量Δθ1を大きくするほど、中間領域60のなすメッシュ形状の網目を軸方向に密にし易くすることができる。よって、角度変化量Δθ1が最大角度変化量Δθ2(max)以下となる場合と比べ、電極アセンブリ16の形状保持性を高め易くなる。また、電極アセンブリ16が連続導電路48においてメッシュ形状をなす場合、中間領域60のなすメッシュ形状の網目を密にし易くすることで、前述した、生体組織に対する連続する導通箇所の周方向範囲を広げるという効果が得やすくなる。
【0037】
図4、
図5を参照する。複数のスプライン部40L、40Rのそれぞれは、遠位側束ね部品22Aよりも遠位側に設けられ、軸方向に折り返す折り返し部64を備える。折り返し部64は、前述した遠位側延出部40dに設けられ、スプライン部40L、40Rの線長方向で遠位端部40b側から近位端部40a側に向かって径方向外側に延びるとともに軸方向に折り返す。折り返し部64は、スプライン部40L、40Rの遠位端部40bよりも遠位側において設けられる。これにより、電極アセンブリ16には、複数のスプライン部40L、40Rによって、複数のスプライン部40L、40Rそれぞれの折り返し部64よりも径方向内側において近位側に凹む凹部66が形成される。遠位側束ね部品22Aは、この凹部66の底側に設けられ、その凹部66の底部を形成している。
【0038】
これにより、複数のスプライン部40L、40Rのそれぞれよりも遠位側に遠位側束ね部品22Aが突き出ない構造となる。よって、遠位側束ね部品22Aが複数のスプライン部40L、40Rよりも遠位側に突き出る場合と比べ、電極アセンブリ16よりも遠位側にある生体組織に対して遠位側束ね部品22Aが強く当たる事態を回避できる。このとき、電極アセンブリ16よりも遠位側にある生体組織には、柔軟に変形できる電極アセンブリ16の各スプライン部40L、40Rを当てることができ、生体組織に対する当たりが柔らかくなる。
【0039】
スプライン部40L、40Rを構成する線材は、導電性を持つ金属、樹脂等により構成される。本実施形態の線材は形状記憶合金により構成される。形状記憶合金は、例えば、Ti-Ni合金等の形状記憶性を持つ各種合金により構成される。線材は、前述した形状のスプライン部40L、40Rを形成するように形状が記憶されている。これにより、電極アセンブリ16の組み立て過程で線材が変形しても、加熱により記憶された形状に復元することで、所望の形状のスプライン部40L、40Rを容易に得ることができる。
【0040】
次に、前述した(2)のスプライン部40L、40Rの端部に関する特徴を説明する。
図10を参照する。電極カテーテル10は、少なくとも二つのスプライン部40L、40Rからなるスプライン部の組を構成する少なくとも一つの組用線状体80を備える。スプライン部の組は、少なくとも一つの右回りスプライン部40Rと一つの左回りスプライン部40Lとを含む。この条件を満たすうえで、本実施形態では右回りスプライン部40Rと左回りスプライン部40Lを一つずつ含んでいるが、これらのうちの少なくとも一方を二つ以上含んでいてもよい。スプライン部の組は、組用線状体80の別々の部位により構成される。組用線状体80は、前述のように導電性を持つ線材により構成される。全てのスプライン部40L、40R(本実施形態では計32個のスプライン部40L、40R)は、複数組(本実施形態では計16組)のスプライン部の組を含んでおり、個々のスプライン部の組は個別の組用線状体80により構成される。
【0041】
組用線状体80は、組となる複数のスプライン部40L、40Rの他に、線長方向に隣り合うスプライン部40Lを連結する連結部82と、線長方向で最も外側にあるスプライン部40L、40Rから線長方向外側に延びる一対の末端側部分84A、84Bと、を備える。
【0042】
本実施形態の連結部82は、右回りスプライン部40Rの遠位端部40bと左回りスプライン部40Lの遠位端部40bとを連結している。連結部82は、連結部82により連結される一のスプライン部40Lの端部40bから他のスプライン部40Rの端部40bに向かって軸方向に折り返すように形成される。
【0043】
図5、
図10を参照する。一対の末端側部分84A、84Bのそれぞれは、近位側束ね部品22Bの挿通孔100(後述する)から近位側に引き出される。一方の末端側部分84Aには、はんだ等によって、導線110に導通されるように接続される。導線110は、メインルーメン30内に挿通され、外部給電装置と組用線状体80の電極部42とを電気的に接続する。他方の末端側部分84Bは
図5では軸線のみを示す。他方の末端側部分84Bは、シャフト本体32に形成されメインルーメン30に開口するサブルーメン(不図示)に挿通される。
【0044】
図5、
図11を参照する。遠位側束ね部品22Aは、複数のスプライン部40L、40Rそれぞれの遠位端部40bが挿通される複数の挿通孔100を備える。複数の挿通孔100は軸方向に延びている。本実施形態において、複数の挿通孔100は、環状に配列される複数列の挿通孔群102A、102Bを構成する。複数列の挿通孔群102A、102Bは、内側挿通孔群102Aと、内側挿通孔群102Aを取り囲む外側挿通孔群102Bとを含む。スプライン部40L、40Rの遠位端部40bは、挿通孔100に挿通されたうえで、遠位側束ね部品22Aに接着、溶接、締まり嵌め等により固定されてもよい。
【0045】
遠位側束ね部品22Aは、リング部材22aと、リング部材22aの内周側に配置される内側カバー部材22bと、リング部材22aの外周側に配置される外側カバー部材22cと、を備える。遠位側束ね部品22Aの内側カバー部材22bは長尺部材26が兼ねているが、長尺部材26とは別体でもよい。リング部材22aは、リング部材22aの内周部に周方向に間隔を空けて設けられる複数の内側溝部22dと、リング部材22aの外周部に周方向に間隔を空けて設けられる複数の外側溝部22eと、を備える。外側カバー部材22cは、複数の外側溝部22eを覆い塞いでおり、内側カバー部材22bは、複数の内側溝部22dを覆い塞いでいる。内側挿通孔群102Aは複数の内側溝部22dと内側カバー部材22bにより形成され、外側挿通孔群102Bは複数の外側溝部22eと外側カバー部材22cにより形成される。組用線状体80の連結部82は、遠位側束ね部品22Aの各挿通孔100から近位側に引き出されている。遠位側束ね部品22Aは、複数の組用線状体80それぞれの連結部82を覆う保護部材22fを備える。
【0046】
複数のスプライン部40L、40Rそれぞれの遠位端部40bは、遠位側束ね部品22Aにおいて、環状に配列される複数の遠位端部40bからなる端部群104A、104Bを構成する。端部群104A、104Bは、軸方向から見て入れ子状に複数列配置される。ここでの入れ子状とは、内側の環状の端部群を、それより外側にある環状の端部群が取り囲むように配置された状態をいう。本実施形態の端部群104A、104Bの列数は二列であるが、三列以上であってもよい。
【0047】
複数列の端部群104A、104Bは、内側端部群104Aと、内側端部群104Aよりも径方向外側にある外側端部群104Bとを含んでいる。外側端部群104Bは、内側端部群104Aを取り囲むように配置される。内側端部群104Aは、複数のスプライン部40L、40Rの遠位端部40bである複数の内側端部40fからなる。外側端部群104Bは、複数のスプライン部40L、40Rの遠位端部40bである複数の外側端部40gからなる。
【0048】
複数のスプライン部40L,40Rの構成する各外側端部40g及び各遠位端部40bは、カテーテルシャフト20の軸線C20回りにおいて環状に配列される。各外側端部40gと各内側端部40fのそれぞれは、角度ピッチPで周方向にずらした位置毎に配置される。内側端部40fと外側端部40gは、角度ピッチPに対して半分の角度ピッチで周方向にずらした位置毎に交互に配置される。複数のスプライン部40L、40Rは、各内側端部40fから径方向外側に向けて放射状に延び出る複数の内側延出部40hと、各外側端部40gから径方向外側に向けて放射状に延び出る複数の外側延出部40iとを構成する。複数の内側延出部40hのそれぞれは、軸方向から見て、周方向に隣り合う外側延出部40iの間を通るように延びている。この条件を満たすうえで、複数の内側延出部40hの軸線(不図示)と複数の外側延出部40iの軸線(不図示)が軸方向から見て互いに重ならないように延びていればよい。この条件を満たすうえで、内側延出部40hと外側延出部40iが互いの軸線以外の箇所で重なることは許容される。
【0049】
図12を参照する。
図12は、
図4のB-B断面図であるものの、説明の便宜のため、ハッチングを省略する。組用線状体80の連結部82は、一のスプライン部40Lの内側端部40fと、一のスプライン部40Lと組となる他のスプライン部40Rの外側端部40gとを連結する。内側端部群104A及び外側端部群104Bを通る軸方向に直交する断面において、組用線状体80の連結部82が連結する一のスプライン部40Lの内側端部40fに対して、周方向両側に隣り合う二つの内側端部40fの存在する周方向範囲を基準範囲Rbという。この基準範囲Rbを定めるうえで前提となる断面は、内側端部群104A及び外側端部群104Bを通る軸方向に直交する任意の断面であればよく、その軸方向位置は問わない。この基準範囲Rbとは、軸方向から見て、カテーテルシャフト20の軸線C20を中心とし、二つの内側端部40fのそれぞれに外接する二つの外接線Laにより定まる範囲となる。基準範囲Rbは、各内側端部40fに対応して個別に定められる。ここでは、一つの内側端部40fに対応する一つの基準範囲Rbのみを示し、その基準範囲Rbに対応する内側端部40fにハッチングを付す。
【0050】
このとき、連結部82により一の内側端部40fと連結される外側端部40g(範囲Rc内にある外側端部40g)は、その内側端部40fに対応する基準範囲Rbを定める断面において、その基準範囲Rb外に位置する。本実施形態では、その外側端部40gの全体が基準範囲Rb外に位置する。本実施形態では、その外側端部40gの少なくとも一部が、その基準範囲Rb外において、その基準範囲Rbに対して周方向片側で最も近くに位置する。連結部82により一の内側端部40fと連結される外側端部40gは、複数の外側端部40gのうち、その一の内側端部40fに対して周方向片側で二番目に近くにある外側端部40gであるともいえる。この条件は、全ての組用線状体80のうちの一部が満たしていればよく、好ましくは二つ以上の組用線状体80が満たしているとよい。この条件は、本実施形態では、全ての組用線状体80が満たしている。
【0051】
以上の(2)の特徴に関する電極カテーテル10の効果を説明する。
【0052】
(A)複数のスプライン部40L、40Rそれぞれの端部40bにより一列の環状の端部群のみを構成する場合を考える。この場合、電極アセンブリ16を構成するスプライン部40L、40Rの個数が多くなるほど、端部群において周方向に隣り合う端部40bの配置スペースの確保が困難となる。この点、本実施形態の端部群104A、104Bは入れ子状に複数列配置されている。よって、一列の端部群のみを配置する場合と比べ、個々の端部群104A、104Bを構成する端部40bの配置スペースを確保し易くなり、スプライン部40L、40Rの多数化が容易となる。スプライン部40L、40Rを多数化するほど、生体組織に対する導通箇所(スプライン部40L、40Rに設けた電極部42の接触箇所)の周方向範囲を広げ易くなる点で有利となる。特に、アブレーションに電極カテーテル10を用いる場合、環状に焼灼するうえで有利となる。
【0053】
(B)複数の内側延出部40hのそれぞれは、軸方向から見て、周方向に隣り合う外側延出部40iの間を通るように延びている。これにより、複数の内側延出部40hと複数の外側延出部40iの干渉を避け易くすることができる。ひいては、各スプライン部40L、40Rの干渉を回避しつつ複数の端部群104A、104Bを密集して配置でき、スプライン部40L、40Rの多数化が容易となる。
【0054】
組用線状体80の連結部82は、一のスプライン部40Lの内側端部40fと、他のスプライン部40Rの外側端部40gとを連結する。これにより、同じ端部群において隣り合う遠位端部40bを連結部82により連結する場合と比べ、その隣り合う遠位端部40b間の周方向間隔を大きく広げることなく、連結部82における曲げ度合いを緩やかにする設計を実現できる。これは、例えば、外側端部群104Bと内側端部群104Aの径方向間隔をある程度離したり、一の内側端部40fに対して基準範囲Rb外にある外側端部40gと一の内側端部40fを連結することで実現できる。このように連結部82での曲げ度合いを緩やかにすることで、曲げ加工により組用線状体80の連結部82を形成する際の加工難度を下げることができる。
【0055】
連結部82により内側端部40fと連結される外側端部40gは基準範囲Rb外に位置する。これにより、その基準範囲Rb内にある外側端部40gと内側端部40fを連結する場合と比べ、連結部82での曲げ度合いを緩やかにすることができる。
【0056】
仮に、組用線状体80の連結部82によって、基準範囲Rb外において基準範囲Rbから大きく離れた外側端部40gと内側端部40fとを連結する場合を考える。この場合、組用線状体80の連結部82の配置スペースを確保するため、外側端部群104Bと内側端部群104Aの径方向間隔を広げる必要がある。この点、本実施形態の組用線状体80の連結部82は、基準範囲Rb外において基準範囲Rbに最も近くにある外側端部40gと内側端部40fを連結している。よって、外側端部群104Bと内側端部群104Aの径方向間隔を大きく広げることなく、一のスプライン部40Lの内側端部40fと他のスプライン部40Rの外側端部40gを連結部82によって連結できる。ひいては、遠位側束ね部品22Aの径方向寸法を小型化することができる。
【0057】
複数のスプライン部40L、40Rからなるスプライン部の組は一つの組用線状体80により構成される。よって、組となる複数のスプライン部40L、40Rを個別の線状体により構成する場合と比べ、複数のスプライン部40L、40Rに要する部品の少数化を図ることができる。
【0058】
組用線状体80により構成される二つのスプライン部40L、40Rの遠位端部40bは、遠位側束ね部品22Aにおける異なる挿通孔100に挿通されている。この条件は、組用線状体80のそれぞれにつき満たされる。この利点を説明する。
【0059】
遠位側束ね部品22Aに複数のスプライン部40L、40Rの遠位端部40bを組み付ける組み付け作業を想定する。全てのスプライン部40L、40Rが個別の線状体により構成される場合、遠位側束ね部品22Aの各挿通孔100にスプライン部40L、40Rの遠位端部40bを挿通しただけでは、その挿通孔100の孔中心回りにスプライン部40L、40Rが回転してしまう。この点、本実施形態によれば、一のスプライン部40L、40Rが挿通孔100回りに回転しようとしても、同じ組用線状体80により構成される他のスプライン部40L、40Rの遠位端部40bが他の挿通孔100に接触することで、その回転を規制できる。ひいては、遠位側束ね部品22Aに対してスプライン部40L、40Rの遠位端部40bを固定せずとも、組用線状体80により構成される二つのスプライン部40L、40Rの周方向位置を目標位置に保持する位置保持性を高めることができる。
【0060】
図5、
図13を参照する。ここまで、(2)に関する特徴が、各スプライン部40L、40Rの遠位端部40bと遠位側束ね部品22Aに適用される例を説明した。本実施形態において(2)に関する特徴は、一部を除いて、各スプライン部40L、40Rの近位端部40a及び近位側束ね部品22Bにも共通に適用される。ここでの共通に適用されない特徴とは、遠位側束ね部品22Aの保護部材22f、組用線状体80の連結部82に関する特徴をいう。
【0061】
ここでの共通する特徴とは、例えば、遠位側束ね部品22Aの挿通孔100、リング部材22a、各カバー部材22b、22cに関する特徴の他、各スプライン部40L、40Rの各端部群104A、104B、各延出部40h、40iに関する特徴をいう。例えば、近位側束ね部品22Bも、複数のスプライン部40L、40Rそれぞれの近位端部40aが挿通される複数の挿通孔100を備える。また、複数の挿通孔100は、環状に配列される内側挿通孔群102Aと外側挿通孔群102Bとを構成する。近位側束ね部品22Bもリング部材22a、各カバー部材22b、22cを備える。複数のスプライン部40L、40Rの近位端部40aも、複数の近位端部40aからなる内側端部群104A、外側端部群104Bを構成する。複数のスプライン部40L、40Rは、内側端部群104Aを構成する各内側端部40fから延び出る内側延出部40hと、外側端部群104Bを構成する各外側端部40gから延び出る外側延出部40iとを構成する。
【0062】
ここでは、このような共通する特徴を簡単に説明するにとどめ、その詳細は省略する。各スプライン部40L、40Rの近位端部40a等に共通に適用される特徴を理解するうえでは、前述した各スプライン部40L、40Rの遠位端部40b等に適用された特徴の説明について、「遠位端部40b」、「遠位側束ね部品22A」の文言を「近位端部40a」、「近位側束ね部品22B」の文言に置き替えて捉えればよい。例えば、複数のスプライン部40L、40Rの近位端部40aにより入れ子状の端部群104A、104Bを構成しているため、前述の(A)と同様、スプライン部40L、40Rの多数化が容易となる。また、各スプライン部40L、40Rの近位端部40aから延び出る複数の内側延出部40hのそれぞれが、それら近位端部40aから延び出る複数の外側延出部40iの間を通るように延びている。よって、前述の(B)と同様、スプライン部40L、40Rの多数化が容易となる。
【0063】
なお、このような束ね部品22A、22Bに共通する特徴は、遠位側束ね部品22A及び近位側束ね部品22Bの少なくとも一方に適用されていればよい。また、スプライン部40L、40Rの各端部40a、40bに関する特徴も、近位端部40a及び遠位端部40bの少なくとも一方に適用されていればよい。
【0064】
次に、ここまで説明した各構成要素の変形形態を説明する。
【0065】
電極カテーテル10は、生体組織を環状に焼灼する各種アブレーション(PFA、高周波アブレーション等)に用いられてもよいし、それ以外の各種治療、各種検査(心電図検査等)に用いられてもよい。電極カテーテル10による生体の処置対象は、心臓及び肺静脈等の循環器官に限定されず、消化器官等の各種器官であってもよい。
【0066】
複数のスプライン部40L、40Rの個数は特に限定されず、少なくとも二つであればよい。この場合、左回りスプライン部40Lと右回りスプライン部40Rそれぞれの個数を1つ(計2つ)としてもよい。この他にも、全てのスプライン部は左回りスプライン部40L及び右回りスプライン部40Rの一方のみを含んでいてもよいし、遠位端部40b側から近位端部40a側に向かって軸方向に直線的に延びるスプライン部を含んでもよい。
【0067】
スプライン部40L、40Rは、線材(導電性の有無は問わない)と、線材に被覆される被覆層とを備える線状体により構成してもよい。この場合、スプライン部40L、40Rは、その被覆層そのものに導電性を持たせることで電極部42を設けてもよい。この他にも、スプライン部40L、40Rの電極部42は、スプライン部40L、40Rに装着されるリング電極等として、スプライン部40L、40Rの線長方向に間隔を空けて複数設けられてもよい。線状体の線材をNi-Ti等の形状記憶合金により構成する場合、通電による電気分解、水素ぜい化の防止のため、金、白金等によりメッキしてもよい。
【0068】
組用線状体80の構成するスプライン部の個数(組となるスプライン部の個数)は二つに限定されず、三つ以上でもよい。組用線状体80の個数は特に限定されず、単数及び複数の何れでもよい。組用線状体80の構成するスプライン部は、複数の右回りスプライン部40Rのみからなってもよいし、複数の左回りスプライン部40Lのみからなってもよい。全てのスプライン部40L、40Rのうちの一つ以上のスプライン部40L、40Rは、組用線状体80ではなく、スプライン部40L、40Rに一対一に対応する線状体により構成されてもよい。
【0069】
連続導電路48は、カテーテルシャフト20の軸線C20回りの全周に連続していなくともよい。電極アセンブリ16は、連続導電路48においてメッシュ形状をなさずに、一列のジグザグパターン46のみを含んでいてもよい。複数のスプライン部40L、40Rの中間領域60における角度変化量Δθ1と端部領域62における角度変化量Δθ2の大小関係は特に限定されない。角度変化量Δθ1は、端部領域62における最大角度変化量Δθ2(max)以下でもよい。
【0070】
実施形態では、複数のスプライン部40L、40Rそれぞれの遠位端部40b及び近位端部40aのうちの一方の端部は、複数の一方の端部からなる第1端部群を構成し、それらのうちの他方の端部は、複数の他方の端部からなる第2端部群を構成する例を説明したといえる。実施形態では第1端部群及び第2端部群の双方が入れ子状に複数列配置される例を説明した。これに替えて、第1端部群及び第2端部群の一方のみが入れ子状に複数列配置され、それらの他方は一列のみ配置されてもよい。複数のスプライン部において、複数の内側延出部40hと複数の外側延出部40iとは軸方向から見て互いに重なる位置を通るように延びていてもよい。
【0071】
組用線状体80は、一のスプライン部(左回りスプライン部40L)の遠位端部40bと他のスプライン部(右回りスプライン部40R)の遠位端部40bを連結する連結部82を備える例を説明した。この他にも、組用線状体80は、一のスプライン部の近位端部40aと他のスプライン部の近位端部40aを連結する連結部82を備えていてもよい。また、組用線状体80は、異なるスプライン部の遠位端部40bを連結する連結部82と、異なるスプライン部の近位端部を連結する連結部82のうちの一方又は両方を備えていてもよい。
【0072】
連結部82により連結される異なるスプライン部の端部の組み合わせは特に限定されない。例えば、連結部82は、同じ列の環状の端部群を構成する隣り合うスプライン部の端部を連結していてもよい。また、連結部82は、一のスプライン部の内側端部40fに対応する基準範囲Rb内に存在する他のスプライン部の外側端部40gと、その内側端部40fとを連結していてもよい。また、連結部82は、その基準範囲Rb外において最も近くにある外側端部40g以外の外側端部40gと、その内側端部40fを連結してもよい。
【0073】
各束ね部品20A、20Bの具体例は特に限定されない。スプライン部40L、40Rの端部は束ね部品20A、20Bの挿通孔100に挿通されず、その外部において接着等により束ね部品20A、20Bに固定されてもよい。
【0074】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。実施形態及び変形形態において言及している構造、数値には、製造誤差等を考慮すると同一とみなすことができるものも当然に含まれる。
【0075】
以上の実施形態、変形形態により具体化される技術的思想を一般化すると、前述した第1項目の他に、次の第2項目に記載の技術的思想が含まれているともいえる。
【0076】
第2項目の電極カテーテルは、カテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトに対して遠位側に少なくとも一部が設けられる電極アセンブリ及び遠位側束ね部品と、を備え、前記電極アセンブリは、前記カテーテルシャフトにより近位端部が束ねられるとともに前記遠位側束ね部品により遠位端部が束ねられる複数のスプライン部を備え、前記複数のスプライン部それぞれの遠位端部及び近位端部のうちの一方の端部は、環状に配列される複数の前記一方の端部からなる端部群を構成し、前記端部群は、軸方向から見て入れ子状に複数列配置される電極カテーテル。
【0077】
第1項目の電極カテーテルを実現するうえで、第2項目の電極カテーテルのように端部群が入れ子状に複数列配置されていなくともよい。第2項目の電極カテーテルを実現するうえで、第1項目の電極カテーテルのように、複数のスプライン部が右回りスプライン部と左回りスプライン部を含んでいなくてもよい。
【0078】
以上の構成要素の任意の組み合わせも有効である。例えば、実施形態に対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形形態に対して実施形態及び他の変形形態の任意の説明事項を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…電極カテーテル、16…電極アセンブリ、20…カテーテルシャフト、20A…遠位側束ね部品、22B…近位側束ね部品、28…電極アセンブリ、40L…左回りスプライン部,40R…右回りスプライン部、40a…近位端部、40b…遠位端部、40f…内側端部、40g…外側端部、40h…内側延出部、40i…外側延出部、42…電極部、48…連続導電路、60…中間領域、62…端部領域、64…折り返し部、80…組用線状体、82…連結部、100…挿通孔、104A…内側端部群、104B…外側端部群。