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特開2024-116843固体パルスレーザー装置およびそれを用いたライダー装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116843
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】固体パルスレーザー装置およびそれを用いたライダー装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/117 20060101AFI20240821BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20240821BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20240821BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20240821BHJP
   G02F 1/37 20060101ALN20240821BHJP
【FI】
H01S3/117
H01S3/00 A
G02F1/01 B
G01N21/49 C
G02F1/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022663
(22)【出願日】2023-02-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度 独立行政法人環境再生保全機構環境研究総合推進費「大気モニタリングネットワーク用低コスト高スペクトル分解ライダーの開発」による委託研究業務 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】501273886
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立環境研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 誠
(72)【発明者】
【氏名】神 慶孝
【テーマコード(参考)】
2G059
2K102
5F172
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB02
2G059CC19
2G059EE02
2G059EE10
2G059GG01
2G059GG05
2G059GG08
2G059HH09
2G059JJ15
2G059JJ17
2G059JJ18
2G059KK01
2G059LL01
2G059NN05
2K102AA07
2K102AA08
2K102AA30
2K102AA32
2K102BA01
2K102BA18
2K102BB01
2K102BB02
2K102BC01
2K102BC02
2K102BC04
2K102BC06
2K102BC07
2K102BD09
2K102DA01
2K102DC07
2K102EA21
2K102EB02
2K102EB10
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB22
2K102EB25
5F172AE03
5F172AF02
5F172EE13
5F172NQ09
5F172NQ25
5F172NR22
5F172ZA01
5F172ZA04
5F172ZZ04
(57)【要約】
【課題】短い共振器長と長い時間パルス幅との両立を図る固体パルスレーザー装置および安定して高い観測精度を示すライダー装置を提供する。
【解決手段】固体パルスレーザー装置20の主発振器21は、誘導放出光を発する固体レーザー媒質1と、固体レーザー媒質1を通るように誘導放出光を往復させる共振光路LPを形成する共振器2と、共振光路LPに配置され、光損失の大きい閉状態から光損失の小さい開状態への切替えによってレーザー発振を生じさせるQスイッチ3と、切替えにおけるQスイッチ3の光損失の遷移時間を長くすることによって、光損失が矩形波状に立ち下がるように変化する場合よりもレーザー発振の時間パルス幅を長くする制御部4と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主発振器を備える固体パルスレーザー装置であって、
前記主発振器は、
誘導放出光を発する固体レーザー媒質と、
前記固体レーザー媒質を通るように前記誘導放出光を往復させる共振光路を形成する共振器と、
前記共振光路に配置され、光損失の大きい閉状態から光損失の小さい開状態への切替えによってレーザー発振を生じさせるQスイッチと、
前記切替えにおける前記Qスイッチの光損失の遷移時間を長くすることによって、前記光損失が矩形波状に立ち下がるように変化する場合よりも前記レーザー発振の時間パルス幅を長くする制御部と、を有する固体パルスレーザー装置。
【請求項2】
前記Qスイッチは、所定の周波数及び振幅のRF信号の入力で前記閉状態、前記RF信号の非入力で前記開状態となり、
前記制御部は、前記RF信号の振幅を制御することによって、前記切替えにおける前記光損失を指数関数的に減少させる請求項1に記載の固体パルスレーザー装置。
【請求項3】
前記主発振器の出力光を増幅する増幅器をさらに備え、
前記時間パルス幅を保ちながら強度のピークを高くする請求項2に記載の固体パルスレーザー装置。
【請求項4】
前記主発振器は、前記共振光路の片道の光学的距離である共振器長を調整する調整機構を有する請求項1から請求項3の何れか一項に記載の固体パルスレーザー装置。
【請求項5】
請求項4に記載の固体パルスレーザー装置を有し、その出力光を大気に照射する光送信部と、
前記大気から反射して戻ってきた散乱光を集光し、前記出力光の一部である参照光を前記散乱光に合流させて観測光とする受光部と、
前記観測光を分割して、前記固体パルスレーザー装置の共振器長の2倍に相当する光路差によって干渉させた干渉光を出力する分光部と、
前記干渉光を光電変換して受信信号を出力する光検出部と、
前記受信信号の前記参照光に係る信号から前記干渉光の干渉鮮明度を算出し、前記受信信号の前記散乱光に係る信号からミー散乱成分とレイリー散乱成分とを分離して抽出する信号処理部と、を備えるライダー装置。
【請求項6】
前記信号処理部は、前記干渉鮮明度が大きくなる方向である調整方向を示す調整信号を生成する信号生成部をさらに有し、
前記調整機構は、前記調整信号が入力されて、前記調整方向に前記共振器長を調整する請求項5に記載のライダー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体パルスレーザー装置およびそれを用いたライダー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気微粒子(エアロゾル)は日傘効果や雲形成等を通じて地球の気候に影響を与える一方で、吸入ばく露を通じてヒトの健康にも影響を与えている。エアロゾルの構成は複雑で、黄砂や海塩粒子、ブラックカーボンやその他の大気汚染性粒子など多種にわたり、実大気中ではそれらが混在している。エアロゾルの構成を分類できる手法として、高スペクトル分解ライダー(HSRL:High Spectral Resolution Lidar)が知られている。例えば特許文献1や非特許文献1には、マルチモードレーザーを用いるHSRLについて記載されている。HSRLによれば、エアロゾルによるミー散乱光と大気構成分子によるレイリー散乱光とを分離して検出することで、エアロゾルに係る消散係数及び後方散乱係数を独立に求めることが可能である。なお、ライダーとは、測定対象となるターゲットにレーザー光を照射して、そのターゲットによって反射及び散乱されたレーザー光を観測し、その観測結果をもとに距離、速度、物性、温度等のターゲットに関する情報を取得する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/208013号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Y. Jin, et al., “Measurement method of high spectral resolution lidar with a multimode laser and a scanning Mach-Zehnder interferometer,” Appl. Opt. 56, 5990 (2017).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチモードレーザーを用いるHSRLでは、マルチモードレーザーの縦モード間隔と同じ周波数間隔の透過率スペクトルを持つ干渉計を用いることが好ましい。これにより、全散乱信号からミー散乱とレイリー散乱の信号を精度良く分離することができる。しかし、非特許文献1のマルチモードレーザーは共振器長が長いため、干渉計の光路差が約120cmと長くなっている。光路差が長い干渉計を使う場合、干渉縞の鮮明度が悪く、受信視野を狭くするため非効率的であり、安定性にも優れない。一方、共振器長を短くすると、マルチモードレーザーの時間パルス幅が狭くなり、周波数スペクトルが拡がるために、ミー散乱とレイリー散乱の信号を分離する際に、ミー散乱成分がレイリー散乱成分に混入して測定精度が悪くなってしまう。また、レーザーの時間パルス幅とパルスエネルギーには反比例の関係があり、高い干渉鮮明度を得るために時間パルス幅を長くすると、レーザーのパルスエネルギーが低くなり、観測の精度が悪くなってしまう。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、短い共振器長と長い時間パルス幅との両立を図る固体パルスレーザー装置およびその固体パルスレーザー装置を用いた安定して高い観測精度を示すライダー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明に係る固体パルスレーザー装置は、主発振器を備える固体パルスレーザー装置であって、前記主発振器は、誘導放出光を発する固体レーザー媒質と、前記固体レーザー媒質を通るように前記誘導放出光を往復させる共振光路を形成する共振器と、前記共振光路に配置され、光損失の大きい閉状態から光損失の小さい開状態への切替えによってレーザー発振を生じさせるQスイッチと、前記切替えにおける前記Qスイッチの光損失の遷移時間を長くすることによって、前記光損失が矩形波状に立ち下がるように変化する場合よりも前記レーザー発振の時間パルス幅を長くする制御部と、を有する。
【0008】
また、本発明に係るライダー装置は、実施形態に係る固体パルスレーザー装置を有し、その出力光を大気に照射する光送信部と、前記大気から反射して戻ってきた散乱光を集光し、前記出力光の一部である参照光を前記散乱光に合流させて観測光とする受光部と、前記観測光を分割して、前記固体パルスレーザー装置の共振器長の2倍に相当する光路差によって干渉させた干渉光を出力する分光部と、前記干渉光を光電変換して受信信号を出力する光検出部と、前記受信信号の前記参照光に係る信号から前記干渉光の干渉鮮明度を算出し、前記受信信号の前記散乱光に係る信号からミー散乱成分とレイリー散乱成分とを分離して抽出する信号処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、短い共振器長と長い時間パルス幅との両立を図る固体パルスレーザー装置およびその固体パルスレーザー装置を用いた安定して高い観測精度を示すライダー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る固体パルスレーザー装置の概略を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る固体パルスレーザー装置の出力光のスペクトルを例示するグラフである。
図3A】実施形態に係る固体パルスレーザー装置のQスイッチの光損失の遷移を例示するグラフである。
図3B】実施形態に係る固体パルスレーザー装置の主発振器の出力光のパルス波形を例示するグラフである。
図4】制御部の構成の一例を示すブロック図である。
図5】Qスイッチの光損失の減少に係る遷移時間と出力光のパルス幅との関係を例示するグラフである。
図6】増幅器の出力光のパルスエネルギーとパルス幅との関係を例示するグラフである。
図7】実施形態に係るライダー装置の概略を示すブロック図である。
図8】実施形態に係るライダー装置における観測光の波形を例示するグラフである。
図9】実施形態に係るライダー装置における散乱光のスペクトルを例示するグラフである。
図10A】実施形態に係るライダー装置における参照光に係る干渉信号を例示するグラフである。
図10B】実施形態に係るライダー装置の分光部における干渉鮮明度を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[固体パルスレーザー装置]
実施形態に係る固体パルスレーザー装置20について、図面を参照しながら説明する。固体パルスレーザー装置20は、等間隔に並ぶ複数の周波数で発振するマルチモード発振の主発振器出力増幅器(Master Oscillator Power Amplifier:MOPA)方式の固体パルスレーザー装置である。図1に例示するように、固体パルスレーザー装置20は、主発振器21と、増幅器22と、波長変換器23と、を備えている。
【0012】
(主発振器)
主発振器21はレーザー発振を生成する装置である。主発振器21は、レーザー発振を起こす共振光路LPに光損失を挿入し、その光損失を急速に小さくすることで、エネルギーピークが連続発振よりも高いパルス状のレーザー光L1を出力する。主発振器21は、固体レーザー媒質1と、共振器2と、Qスイッチ3と、制御部4と、を有している。
【0013】
(固体レーザー媒質)
固体レーザー媒質1は、励起光を照射されて誘導放出光を発する結晶体である。固体レーザー媒質1は、一例として、Ndを添加したYAl12の結晶(以下、Nd:YAGと表記する)とすることができる。Nd:YAGの励起光LE1の波長は808nmであり、レーザー光L1の基本波長は1064nmである。
励起光LE1は、励起光源16から発せられる。励起光源16は、レーザーダイオード(LD)が好ましく、例えばキセノンランプを用いることもできる。
【0014】
(共振器)
共振器2は、向かい合わせた反射鏡の間で光を往復させる装置である。共振器2は、固体レーザー媒質1を通るように誘導放出光を何度も往復させる共振光路LPを形成する。励起光LE1が入力される側の反射鏡は第一反射鏡11であり、共振光路LPの光に対する全反射鏡である。レーザー光L1を出力する側の反射鏡は第二反射鏡12であり、共振光路LPの光の一部を透過して出力する部分反射鏡である。第二反射鏡12の反射率は、80%以上95%以下とすることが好ましい。レーザー光L1のスペクトル幅を狭くするためには、第二反射鏡12の反射率は高い方が有利である。一方、第二反射鏡12の高い反射率は、レーザー光L1の強度の低下及び共振器2内の光学素子の損傷の原因となる場合がある。共振器2は、第二反射鏡12の反射率を80%以上95%以下とすることで、高い出力光の強度と安定動作とを両立させることができる。
【0015】
共振器2はマルチモード発振を行う。図2に例示するように、主発振器21の出力光のスペクトルは、周波数のピークが縦モード間隔Δf1で等間隔に並んでいる。なお、縦モード間隔Δf1は、共振器長D1及び光速cを用いて、Δf1=c/2D1と表すことができる。共振器長D1は、第一反射鏡11及び第二反射鏡12の向かい合う反射面の間の光学的距離であり、共振光路LPの片道に相当する光学的距離である。
共振器長D1は、所望の縦モード間隔Δf1となるように設定することができる。一例として、共振器長D1は100mmである。
【0016】
(調整機構)
共振器2は、共振器長D1を調整する調整機構5を有している。調整機構5は、設定された共振器長D1の微調整を行うことができる。ここでは、第二反射鏡12の位置を調整することで共振器長D1を調整している。調整機構5は、例えば位置決め用のステージに第二反射鏡12を配置している。ステージの位置は、電気信号によって調整してもよく、ネジ等を使用して手動で調整してもよい。電気信号による調整は、ステッピングモータや圧電素子によって行うことができる。調整機構5は、少なくとも0.5mm以下の単位で5mm以上の範囲に亘って、共振光路LP方向における第二反射鏡12の位置を調整できることが好ましい。
調整機構5は、外部信号の入力端子IN1を設けて、外部から入力される調整信号に基づいて共振器長D1を調整してもよい。共振器長D1を調整することで、縦モード間隔Δf1を調整することができる。また、例えば、固体パルスレーザー装置20がHSRL装置に使用される場合には、干渉計の透過率スペクトルの周波数間隔に縦モード間隔Δf1を一致させるように微調整することができる。
【0017】
(Qスイッチ)
Qスイッチ3は、光損失を切り替えるスイッチである。Qスイッチ3は、誘導放出光がQスイッチ3を通って共振光路LPを往復するように共振光路LPに配置される。Qスイッチ3は、光損失の大きい閉状態から光損失の小さい開状態に急速に切り替わることによって、エネルギーピークの高いレーザー発振を生じさせる。Qスイッチ3の閉状態と開状態との切替えを交互に繰り返すことで、主発振器21はパルス状のレーザー光L1を繰り返し出力する。パルスの繰り返し周波数は、例えば100Hzとすることができる。
【0018】
ここでは、Qスイッチ3は、音響光学効果によって光損失が変化する音響光学素子と、音響光学素子に接合されている圧電素子とを有する。Qスイッチ3の光損失は、入力されるRF信号によって変化する。RF信号は、圧電素子によって超音波に変換され、超音波によって音響光学素子の光損失が変化する。RF信号は、所定の周波数及び振幅の正弦波状の電気信号であり、その周波数及び振幅は、音響光学素子及び圧電素子の種類に合わせて適宜設定される。RF信号の周波数は、例えば24MHzから80MHzである。
Qスイッチ3は、所定の周波数及び振幅のRF信号が入力されている間は光損失の大きい閉状態となり、RF信号が入力されていない間は光損失の小さい開状態となる。Qスイッチ3は、RF信号が入力されている状態から非入力の状態とすることで閉状態から開状態に切り替わる。
【0019】
(制御部)
制御部4は、Qスイッチ3に入力するRF信号を生成し、制御する装置である。制御部4は、Qスイッチ3の閉状態から開状態への切替えにおける光損失εの遷移時間を長くすることによって、レーザー発振の時間パルス幅(以下、パルス幅とする場合がある)を長くする。
制御部4は、例えば図3Aに実線で示す遷移T1のように光損失εを変化させる。点線で示す遷移T2は、光損失εが矩形波状の立ち下がりとなるように変化する場合であり、比較のために示している。図3Aにおいて、縦軸は光損失ε、横軸は時間tであり、光損失εは、閉状態の光損失εを1、開状態の光損失εを0とする相対値で表示している。Qスイッチ3は、時間t<0において光損失εの大きい閉状態であり、遷移T1、T2において、t=0で閉状態から開状態への切替えが開始されている。
【0020】
遷移T1において、光損失εは、時間t=0からexp(-t/τ)の曲線に沿って指数関数的に減少している。なお、時定数τは、光損失εの相対値が1から0.37に減少するのにかかる時間である、遷移時間は、閉状態から開状態への切替えを開始してから開状態となるまでの時間であり、遷移T1のように光損失εを指数関数的に減少させる場合には、時定数τで代用することができる。制御部4は、時定数τで、光損失εの遷移時間を長くしている。時定数τは、例えば10ns以上1000ns以下とすることができ、100ns以上300ns以下であることが好ましい。これにより、制御部4は、出力光のエネルギーピークの低下を抑えながら、光損失εの遷移時間を長くすることができる。なお、遷移T2は、ほぼt=0において光損失εが0となっており、τ≒0である。
【0021】
一般に、遷移時間が短いほどエネルギーピークの高いレーザー発振を生じるため、Qスイッチによるパルスレーザー装置では、遷移T2のように、矩形波状の立ち下がりとなるように光損失εを変化させる。これに対し、制御部4は、エネルギーピークの低下が許容されるように、遷移時間を長くすると共に所定の長さの範囲に制御している。後記するように、固体パルスレーザー装置20は増幅器22を有しており、増幅器22によってエネルギーピークの低下を補うことができる範囲であれば、エネルギーピークの低下が許容される。
【0022】
図3Bに例示するように、Qスイッチ3の閉状態から開状態への切替えによって、主発振器21からレーザー光の1つのパルスが出力される。図3Bにおいて、縦軸はパルスの強度であり、横軸は図3Aと共通である。実線で示すパルスP1は、図3Aの遷移T1に対応し、点線で示すパルスP2は図3Aの遷移T2の場合に対応している。すなわち、光損失εの遷移時間が長い遷移T1によるパルスP1は、光損失εが矩形波状に立ち下がるように変化する遷移T2によるパルスP2よりもパルス幅tpが長くなっている。
制御部4は、光損失εの遷移時間を長くすることによって、パルス幅tpを長くすることができる。そして、制御部4は、光損失εを指数関数的に減少させることで、パルスのピークの低下を抑えることができる。
【0023】
制御部4は、RF信号によって光損失を制御することができる。図4は、制御部4の構成の一例である。制御部4は、繰り返し信号発生器13と、RF信号発生器14と、CR回路15とを有する。繰り返し信号発生器13は、パルスの繰り返し周波数の矩形波状の信号を出力する。RF信号発生器14はRF信号を出力し、RF信号の振幅は制御電圧VMで制御される。RF信号の振幅は、例えば、制御電圧VMを大きくすると大きくなり、VM=5Vで最大、VM=0Vで0となる。RF信号の周波数は固定されている。CR回路15によって、制御電圧VMの変化は遅くなり、制御電圧VMの立ち下がりにおいて、RF信号の振幅は徐々に小さくなる。
【0024】
図5は、CR回路15の容量C及び抵抗Rの値を変えた場合の主発振器21の出力光のパルス幅と励起光LE1との関係の一例である。図5において、縦軸はパルス幅であり、横軸は励起光LE1のエネルギーである。パルスの繰り返し周波数は100Hzであり、パルス幅は半値全幅(FWHM)の値である。時定数τの3つの値は、容量C及び抵抗Rの値を変えることで設定している。時定数τが大きいほどパルス幅は長くなっており、制御部4は、時定数τを調整することで、パルス幅を調整することができる。すなわち、制御部4は、光損失の遷移時間を調整することで、パルス幅を調整することができる。
【0025】
主発振器21は、固体レーザー媒質1及びQスイッチ3を冷却する冷却器18を有することが好ましい。冷却器18によって、レーザー発振に伴う発熱による温度上昇を抑え、動作温度を一定の範囲に保つことで、出力光の特性を安定化することができる。冷却器18は、ペルチェ素子によるものが好ましい。冷却器18は、固体レーザー媒質1及びQスイッチ3に対して1つでもよく、それぞれに別々に設けてもよい。冷却器18は、水冷や空冷によるものとすることもできる。
なお、共振器2は、単一の周波数で発振するシングルモード発振を行うものでもよい。
また、制御部4は、RF信号の周波数を制御してもよく、周波数と振幅の両方を制御するようにしてもよい。
【0026】
(増幅器)
増幅器22は、レーザー光のエネルギーを高めて出力する装置である。増幅器22は、主発振器21の固体レーザー媒質1と同じ種類の固体レーザー媒質6を有する。固体レーザー媒質6は、主発振器21の出力光の光路中に配置され、入力される主発振器21の出力光によって誘導放出光を発する。ここでは、固体レーザー媒質6は、Nd:YAGである。また、増幅器22は、主発振器21と同様に、励起光LE2を発する励起光源17を有する。励起光LE2の波長は、励起光LE1の波長と同じである。
【0027】
図6に例示するように、増幅器22は、励起光LE2のエネルギーを大きくすることによって、パルス幅を保ったまま強度を高めることができる。図6において、左の縦軸は増幅器22から出力されるパルスのピークにおけるエネルギーであり、横軸は励起光LE2のエネルギーである。右の縦軸はパルス幅である。なお、主発振器21の励起光LE1のエネルギーは2.5mJ、パルスの繰り返し周波数は100Hzである。
主発振器21の出力光は、パルス幅を長くしたことで、出力光の強度のピークが低くなっている。増幅器22は、長いパルス幅を保ちながらピークを高くして、出力光の強度の低下を補償し、さらに出力光の強度を大きくすることができる。
【0028】
(波長変換器)
波長変換器23は、入力される光の高調波を生成する装置である。波長変換器23は、増幅器22の出力光L2の光路に、第二高調波を発生する結晶7と第三高調波を生成する結晶8とをこの順に配置している。結晶7、8は非線形光学結晶である。ここでは、増幅器22の出力光L2の波長は1064nmであり、結晶7によって波長532nmの第二高調波が生成され、結晶8によって波長355nmの第三高調波が生成される。このため、固体パルスレーザー装置20の出力光L3は、1064nm、532nm及び355nmの3波長を含んでいる。
【0029】
一般に、レーザー装置の小型化や安定性の向上のためには、共振器長は短い方が有利である。また、レーザー装置がライダー装置100に使用される場合には、光路差の短い干渉計に合わせて共振器長を短くできることが求められる。しかし、Qスイッチによるパルスレーザー装置では、共振器長を短くすると出力光のパルス幅は狭くなる傾向がある。パルス幅が狭くなると、出力光の周波数スペクトルの拡がりが大きくなり、パルスレーザー装置を用いる測定における測定精度の低下を招く場合がある。
固体パルスレーザー装置20は、Qスイッチ3の光損失の遷移時間を長くすることで、短い共振器長であってもパルス幅の長いレーザー光を出力し、短い共振器長と長い時間パルス幅との両立を図ることができる。そして、増幅器22を備えることで、長いパルス幅を保ったまま、必要なパルスエネルギーまで増幅することができる。さらに、波長変換器23によって、第二高調波及び第三高調波を発生させて多波長化を行い、多波長の測定にも対応することができる。
【0030】
[ライダー装置]
次に、実施形態に係るライダー装置100について、図面を参照しながら説明する。ライダー装置100は、固体パルスレーザー装置20を組み込んだHSRL装置である。図7に例示するように、ライダー装置100は、光送信部30と、受光部40と、分光部50と、光検出部60と、信号処理部70と、を備えている。
【0031】
(光送信部)
光送信部30は、固体パルスレーザー装置20を有し、レーザー光を観測対象である大気に照射する。また、光送信部30はエキスパンダ31を有している。エキスパンダ31は、ビーム径を大きくし、ビームの拡がり角を小さくし、その他の特性を保って出力する。エキスパンダ31の出力光は、ミラー32に反射されて大気への照射光L5となり、一部はミラー32を透過して参照光L4となる。
【0032】
(受光部)
受光部40は、照射光L5に対する大気から反射して戻ってきた散乱光L6を集光し、散乱光L6にエキスパンダ31の出力光の一部である参照光L4を合流させて観測光L7とする。受光部40は望遠鏡41を有し、大気に向けて設置する望遠鏡41に入射される散乱光L6を集光する。
望遠鏡41で集光された散乱光L6は、望遠鏡41からマルチモードファイバMFに入射される。一方、参照光L4は積分球ISで集光され、ファイバカプラFCで散乱光L6と合流する。そして、散乱光L6と参照光L4とが合流した観測光L7は、コリメートレンズ42及びミラー43、44を経由して、受光部40から出力される。
【0033】
(分光部)
分光部50は、観測光L7を分割して干渉させた結果である干渉光L8を出力する。分光部50は干渉計とすることができる。干渉計としては、例えばマイケルソン干渉計やマッハツェンダ干渉計、ファブリペロ干渉計等を挙げることができる。ここでは、分光部50は、マイケルソン干渉計を構成している。分光部50は、入射光を直交する2つの方向に分割する分割手段51と、光を反射する第一反射手段52及び第二反射手段53とを有している。分割手段51は、例えばハーフミラーやビームスプリッタとすることができる。第一反射手段52及び第二反射手段53は、光を反射するミラーであり、光を進んできた方向に反射するルーフミラーやレトロリフレクタであってもよい。
観測光L7は、分割手段51で反射されて進む光L7Aと、反射されずに進む光L7Bとに分割される。そして、光L7Aと光L7Bとが再び合流して干渉し、干渉光L8となって分光部50から出力される。
【0034】
分割手段51から第一反射手段52までの光学的距離D2と、分割手段51から第二反射手段53までの光学的距離D3とは、光学的距離差ΔDだけ異なっている。すなわち、ΔD=|D2-D3|であり、光L7Aと光L7Bとは光路差2ΔDを生じている。光L7Aと光L7Bとが強め合う周波数間隔Δf2は、Δf2=c/2ΔDとなる。従って、光学的距離差ΔDと固体パルスレーザー装置20の共振器長D1とを一致させれば、すなわち、共振器長D1の2倍に相当する光路差2ΔDとすれば、周波数間隔Δf2は固体パルスレーザー装置20の縦モード間隔Δf1と一致し、ミー散乱成分とレイリー散乱成分との分離の精度を向上させることができる。
光路差2ΔDが長いと、干渉縞の鮮明度が低下し、受信視野が狭くなり、光学系の安定性が低下するといった傾向がある。このため、光路差2ΔDは、観測に適する範囲で短くすることが好ましい。そして、パルスレーザー装置の共振器長は、短い光路差に対応するように短く設定される。観測精度や安定性の観点から、例えば、照射光L5の波長λが532nmの場合、約200mmの光路差2ΔDが好ましい。ここでは一例として、光路差2ΔDは200mmであり、固体パルスレーザー装置20の共振器長D1を100mmに設定することで、周波数間隔Δf2と縦モード間隔Δf1とを一致させることができる。
【0035】
一方、周波数間隔Δf2と縦モード間隔Δf1とが一致している状態を維持するのは難しいという問題がある。分光部50は、干渉縞の1フリンジ以上に相当する幅で光路差2ΔDが変化するように繰り返し掃引することで、その問題を解決している。1フリンジは干渉縞のピークの間隔であり、照射光L5の波長λに対応する。光路差2ΔDの掃引幅をλとするためには、光学的距離差ΔDをλ/2の幅で掃引すればよい。なお、波長λが複数ある場合には、光路差2ΔDの掃引幅は最も長い波長λ以上とする。
掃引は、第二反射手段53を光L7Bの方向に往復させて、分割手段51との光学的距離D3を変化させて行うことができる。ここでは、第二反射手段53は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)等の圧電素子によって駆動されるステージST1に配置されている。掃引は、パルスの繰り返し周波数が100Hzの場合、例えば最も速くて1秒間に12.5往復(12.5Hz)で行うことができる。掃引の周波数をパルスの繰り返し周波数の1/8以下とすることで、1フリンジにおいて4点(往復で8点)以上の位相で測定することができ、一定の鮮明度の干渉縞を得ることができる。
【0036】
(光検出部)
光検出部60は、光電変換を行う光検出器61を有し、分光部50からの干渉光L8を光電変換して、電気信号である受信信号EAを出力する。受信信号EAは、時間の経過に伴う干渉光L8の強さを示す信号である。干渉光L8は、干渉フィルタ62及び集光レンズ63を通って光検出器61に入射される。光検出器61は、フォトダイオードや光電子増倍管とすることができる。
【0037】
(信号処理部)
信号処理部70は、受信信号EAの信号処理を行う。信号処理部70は、ADコンバータ71と、演算部72と、記憶部73とを有する。ADコンバータ71は受信信号EAを数値化して出力する。記憶部73は、時間に対する受信信号EAの値としてデータを記憶することができる。
図8は、照射光L5の1パルスに対応する受信信号EAの波形を例示している。図8において、縦軸は受信信号EAの強度であり、横軸は時間である。受信信号EAは、参照光L4に係る信号ERと、遅れて到達する散乱光L6に係る信号ESとに分かれている。散乱光L6に係る信号ESには、ミー散乱成分とレイリー散乱成分とが含まれている。
【0038】
図9は、散乱光L6のスペクトルの一例であり、点線で示すレイリー散乱の拡がったスペクトルに、実線で示すミー散乱の尖ったスペクトルが重なっている。演算部72は、ミー散乱が照射光L5とほぼ同じスペクトルを示すことから、参照光L4の干渉を手掛かりにしてミー散乱成分を除去する。前述した分光部50の掃引によって、干渉の強め合う条件と弱め合う条件とが繰り返し生じ、図8の受信信号EAの波形は、波形E1と波形E2との間で変化を繰り返す。波形E1は参照光L4が強め合う条件、波形E2は弱め合う条件に対応している。すなわち、波形E2でミー散乱成分が最も弱くなっており、波形E2における信号ESからレイリー散乱成分を抽出することができる。これにより、演算部72は、ミー散乱成分とレイリー散乱成分とを分離することができ、エアロゾルに係る消散係数及び後方散乱係数を独立に求めることができる。
なお、波形E3は、波形E2におけるミー散乱のバイアス成分であり、信号ERから計算される干渉鮮明度を使って推定される。波形E3を波形E2から差し引くことで、バイアス成分を取り除いたレイリー散乱成分を抽出することができる。ミー散乱成分とレイリー散乱成分の分離及び抽出は、掃引を繰り返して受信信号EAを取得することで、精度を高めることができる。
【0039】
また、演算部72は、参照光L4に係る信号ERから干渉信号を取得し、分光部50の干渉鮮明度VBを算出する。図10Aは、分光部50の掃引に伴う信号ERのピークの変化である干渉信号を例示している。図10Aにおいて、縦軸は干渉信号の強度である。横軸は約1フリンジ分の位相であり、λ/2の掃引範囲における第二反射手段53の位置に対応する。干渉鮮明度VBは、干渉信号の強度の最大値をImax、最小値をIminとして、VB=(Imax-Imin)/(Imax+Imin)により算出される。干渉鮮明度VBは、掃引を繰り返して信号ERを取得することで、精度を高めて算出することができる。
【0040】
信号処理部70は、干渉鮮明度VBが大きくなるように共振器長D1を調整するための調整信号を生成する信号生成部74をさらに有してもよい。調整信号は、干渉鮮明度VBが大きくなる方向である調整方向を少なくとも示す。図10Bは、共振器長D1を変化させたときの干渉鮮明度VBを例示している。図10Bにおいて、縦軸は干渉鮮明度VBであり、横軸は共振器長D1である。共振器長D1が分光部50の光学的距離差ΔDと一致するときに、干渉鮮明度VBが最も大きくなっている。共振器長D1は、干渉鮮明度VBが最大となるように最適化することが好ましい。ライダー装置100は、干渉鮮明度VBが最大となるように共振器長D1を調整しながら観測を行うことで、さらなる観測精度の向上を図ることができる。
【0041】
例えば、信号生成部74は、算出された干渉鮮明度VBをモニタし、干渉鮮明度VBが低下する傾向にあるときに、共振器長D1の調整方向を示す調整信号を生成する。調整方向は、共振器長D1を長く又は短くする方向であり、干渉鮮明度VBを大きくする方向である。信号生成部74は、例えば共振器長D1を長くする調整信号を生成し、その調整の結果、干渉鮮明度VBが大きくなる傾向の場合には共振器長D1を長くする方向を調整方向とし、小さくなる傾向の場合には共振器長D1を逆に短くする方向を調整方向とすることができる。
共振器長D1は、調整の結果をフィードバックして、大きい干渉鮮明度VBを保つように制御されることが好ましい。フィードバックは、固体パルスレーザー装置20の調整機構5の入力端子IN1に調整信号を入力して行うことができる。調整機構5は、調整信号が示す調整方向に共振器長D1を調整する。なお、フィードバックは、調整信号を確認しながら手動で行ってもよい。
【0042】
ライダー装置100によれば、長い時間パルス幅と高パルスエネルギーを両立したマルチモード発振の固体パルスレーザー装置20の利用により、高い計測性能を持つHSRLシステムが実現可能である。また、励起光の光源として長寿命なレーザーダイオードを使用し、固体レーザー媒質1の冷却に水冷ではなく機械的・電気的に安定なペルチェ素子を用いることで、長期間に渡り安定して動作可能なHSRLシステムが実現できる。
【0043】
マルチモードレーザーを用いるHSRL手法によって安定して高い観測精度を実現するためには、HSRL装置の干渉計の光路差に対応させて共振器長を短くしながら、時間パルス幅が長く、パルスエネルギーが高いパルスレーザーが必要となる。ライダー装置100の固体パルスレーザー装置20は、パルス発振のための能動的なQスイッチとして音響光学素子を共振器2内に挿入し、音響光学素子に印加する超音波信号の振幅の遷移時間を制御することで、短い共振器長及び長い時間パルス幅を実現する。
【0044】
固体パルスレーザー装置20の短い共振器長は、ライダー装置100の干渉鮮明度を向上させ、受信視野が狭くなることを抑え、長期安定性を向上させる。また、出力光の長い時間パルス幅は、照射光のスペクトルの拡がりを小さくし、観測精度を向上させる。固体パルスレーザー装置20は、増幅器によってパルスエネルギーを大きくして観測精度をさらに向上させ、波長変換器によって多波長のHSRLにも対応することができる。
【0045】
ライダー装置100は、縦モード間隔Δf1を分光部50の周波数間隔Δf2と一致させるための共振器長D1の調整機構5を有する固体パルスレーザー装置20を光源とする。そして、干渉鮮明度VBの情報をフィードバックすることで共振器長D1を最適化することができる。
分光部50の掃引の起点となる光路差2ΔDは、ライダー装置100の精度が高くなる値に設計される。ライダー装置100は、分光部50の光路差は固定したままで、固体パルスレーザー装置20の共振器長D1を調整して縦モード間隔Δf1と分光部50の周波数間隔Δf2とを一致させることができる。
【0046】
なお、信号処理部70の機能の全部又は一部は、CPU及び記憶装置を有するコンピュータに実行させることができる。また、ADコンバータ71、演算部72、記憶部73及び信号生成部74という構成は一例であり、この構成と同じでなくても信号処理部70の機能が実現できればよい。
また、共振器長D1の調整は、干渉鮮明度VBに基づいて手動で行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明を用いることにより、昼夜で多種類のエアロゾルの定量観測ができる低コストで簡易的なHSRLシステムを開発することが可能である。現在、黄砂飛来情報にライダーデータが活用されているが、本発明を利用したライダーをネットワーク展開することで、黄砂のみならずブラックカーボンや海塩粒子、大気汚染性粒子など、種々のエアロゾル情報を提供することができる。また、これらのデータは化学輸送モデルの改良や疫学研究への活用も期待できる。
【符号の説明】
【0048】
1 固体レーザー媒質(主発振器)
2 共振器
3 Qスイッチ
4 制御部
5 調整機構
7 結晶(第二高調波生成)
8 結晶(第三高調波生成)
11 第一反射鏡
12 第二反射鏡
14 RF信号発生器
15 CR回路
16 励起光源(主発振器)
18 冷却器
20 固体パルスレーザー装置
21 主発振器
22 増幅器
23 波長変換器
30 光送信部
31 エキスパンダ
40 受光部
41 望遠鏡
50 分光部
51 分割手段
52 第一反射手段
53 第二反射手段
60 光検出部
61 光検出器
70 信号処理部
71 ADコンバータ
72 演算部
73 記憶部
74 信号生成部
100 ライダー装置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B