(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116849
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】データ生成装置及びデータ生成方法
(51)【国際特許分類】
G06N 3/045 20230101AFI20240821BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240821BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
G06N3/045
G06N20/00
G08G1/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022670
(22)【出願日】2023-02-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】水師 由佳
(72)【発明者】
【氏名】下沢 智啓
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB20
5H181FF10
5H181MB03
5H181MC27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機械学習モデルを用いて頻度データから時系列データを生成する場合に、機械学習モデルの構造を変更せずに生成時系列データの再現度を向上させる。
【解決手段】時系列データ生成処理は、車両の速度頻度データ及び加速度頻度データを取得し、学習用加速度頻度データ及び学習用燃費データを教師データとして機械学習した第1機械学習モデルに加速度頻度データを入力し、加速度頻度データに対応する第1燃費を推定し、学習用時系列データ、学習用速度頻度データ及び学習用加速度頻度データを教師データとして機械学習した第2機械学習モデルに、速度頻度データ及び加速度頻度データを入力し、第1生成時系列データを生成し、第1生成時系列データから第2加速度頻度データを取得し、第1機械学習モデルに第2加速度頻度データを入力し、第2加速度頻度データに対応する第2燃費を推定し、第1燃費と第2燃費の差を小さい第2生成時系列データを生成する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行中に測定された前記車両の速度の時系列データにおける速度の発生頻度分布を示す速度頻度データと、所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データとを取得する第1取得部と、
前記車両の学習用加速度頻度データと、対応する前記車両の燃費を示す学習用燃費データと、を教師データとして機械学習した第1機械学習モデルに、前記加速度頻度データを入力することにより、前記加速度頻度データに対応する第1燃費を推定する第1推定部と、
前記車両の速度の学習用時系列データと、対応する学習用速度頻度データ及び学習用加速度頻度データと、を教師データとして機械学習した第2機械学習モデルに、前記速度頻度データ及び前記加速度頻度データを入力することにより、前記速度頻度データ及び前記加速度頻度データの入力に応じた時系列データである第1生成時系列データを生成する第1生成部と、
前記第1生成時系列データから、所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す第2加速度頻度データを取得する第2取得部と、
前記第1機械学習モデルに前記第2加速度頻度データを入力することにより、前記第2加速度頻度データに対応する第2燃費を推定する第2推定部と、
前記第1生成時系列データから、前記第1燃費と前記第2燃費の差を小さくする第2生成時系列データを生成する第2生成部と、
を備える、データ生成装置。
【請求項2】
前記第2生成時系列データは、前記第1生成時系列データを分割し、前記第1燃費と前記第2燃費の差の要因となる分割データを削除または複製して生成されるデータであり、
前記第2生成部は、前記第1生成時系列データを分割し、前記第1燃費と前記第2燃費の差の要因となる分割データを削除または複製して前記第2生成時系列データを生成する、
請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項3】
前記第1生成時系列データの分割単位は、基準値となる速度から値が変動して前記基準値に戻るまでの区間であり、
前記第1生成時系列データは、分割データを複数繋げたデータであり、
前記第2生成部は、前記複数の分割データを組み合わせて前記第2生成時系列データを生成する、
請求項2に記載のデータ生成装置。
【請求項4】
前記第2生成部は、前記複数の分割データをランダムに組み合わせて前記第2生成時系列データを生成する、
請求項3に記載のデータ生成装置。
【請求項5】
前記第2生成部は、前記第1燃費と前記第2燃費の差を最小化するように前記第2生成時系列データを生成する、
請求項3に記載のデータ生成装置。
【請求項6】
プロセッサが実行する、
車両が走行中に測定された前記車両の速度の時系列データにおける速度の発生頻度分布を示す速度頻度データと、所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データとを取得するステップと、
前記車両の学習用加速度頻度データと、対応する前記車両の燃費を示す学習用燃費データと、を教師データとして機械学習した第1機械学習モデルに、前記加速度頻度データを入力することにより、前記加速度頻度データに対応する第1燃費を推定するステップと、
前記車両の速度の学習用時系列データと、対応する学習用速度頻度データ及び学習用加速度頻度データと、を教師データとして機械学習した第2機械学習モデルに、前記速度頻度データ及び前記加速度頻度データを入力することにより、前記速度頻度データ及び前記加速度頻度データの入力に応じた時系列データである第1生成時系列データを生成するステップと、
前記第1生成時系列データから、所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す第2加速度頻度データを取得するステップと、
前記第1機械学習モデルに前記第2加速度頻度データを入力することにより、前記第2加速度頻度データに対応する第2燃費を推定するステップと、
前記第1生成時系列データから、前記第1燃費と前記第2燃費の差を小さくする第2生成時系列データを生成するステップと、
を有する、データ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ生成装置及びデータ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、車速の時系列データと当該時系列データに対応する車速頻度及び加速度頻度とを学習データとして用いて機械学習した機械学習モデルに、速度及び加速度の頻度データを入力して、対応する時系列データを生成するデータ生成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術においては、車両から取得した頻度データの入力に応じて機械学習モデルから生成時系列データを出力するようになっている。したがって、生成時系列データから、例えば実走行試験やシミュレーションソフトを用いて車両の燃費を求めた場合、入力した頻度データの元となった車速時系列データの燃費を再現できることが望ましい。
【0005】
しかし、入力した頻度データの元となった車速の時系列データが取得できない場合は、実走行試験やシミュレーションソフトでは車両の燃費を求めることができず、生成時系列データから求めた燃費と比較することができない。
【0006】
また、入力した頻度データの元となった車速の時系列データから求めた燃費の情報が存在し、生成時系列データから求めた燃費と比較して差が生じていた場合の改善策としては、機械学習モデルを多層化などの構造変更することで、機械学習モデルをより複雑な表現を可能にする構造とする方法が挙げられる。
【0007】
しかし、この方法では、多層化につれて計算量が増大し学習時間が長くなる上に、高価で高性能のコンピュータが必要となる場合もある。さらに、所望の精度を得ることが可能なモデル構造の見当をつけるためには試行回数が必要なため、手間もかかる欠点がある。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、機械学習モデルを用いて頻度データから時系列データを生成する場合に、機械学習モデルの構造を変更しなくとも、生成時系列データの再現度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様においては、車両が走行中に測定された前記車両の速度の時系列データにおける速度の発生頻度分布を示す速度頻度データと、所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データとを取得する第1取得部と、前記車両の学習用加速度頻度データと、対応する前記車両の燃費を示す学習用燃費データと、を教師データとして機械学習した第1機械学習モデルに、前記加速度頻度データを入力することにより、前記加速度頻度データに対応する第1燃費を推定する第1推定部と、
前記車両の速度の学習用時系列データと、対応する学習用速度頻度データ及び学習用加速度頻度データと、を教師データとして機械学習した第2機械学習モデルに、前記速度頻度データ及び前記加速度頻度データを入力することにより、前記速度頻度データ及び前記加速度頻度データの入力に応じた時系列データである第1生成時系列データを生成する第1生成部と、前記第1生成時系列データから、所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す第2加速度頻度データを取得する第2取得部と、前記第1機械学習モデルに前記第2加速度頻度データを入力することにより、前記第2加速度頻度データに対応する第2燃費を推定する第2推定部と、前記第1生成時系列データから、前記第1燃費と前記第2燃費の差を小さくする第2生成時系列データを生成する第2生成部と、を備える、データ生成装置を提供する。
【0010】
本発明の第2の態様においては、プロセッサが実行する、車両が走行中に測定された前記車両の速度の時系列データにおける速度の発生頻度分布を示す速度頻度データと、所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データとを取得するステップと、前記車両の学習用加速度頻度データと、対応する前記車両の燃費を示す学習用燃費データと、を教師データとして機械学習した第1機械学習モデルに、前記加速度頻度データを入力することにより、前記加速度頻度データに対応する第1燃費を推定するステップと、前記車両の速度の学習用時系列データと、対応する学習用速度頻度データ及び学習用加速度頻度データと、を教師データとして機械学習した第2機械学習モデルに、前記速度頻度データ及び前記加速度頻度データを入力することにより、前記速度頻度データ及び前記加速度頻度データの入力に応じた時系列データである第1生成時系列データを生成するステップと、前記第1生成時系列データから、所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す第2加速度頻度データを取得するステップと、前記第1機械学習モデルに前記第2加速度頻度データを入力することにより、前記第2加速度頻度データに対応する第2燃費を推定するステップと、前記第1生成時系列データから、前記第1燃費と前記第2燃費の差を小さくする第2生成時系列データを生成するステップと、を有する、データ生成方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機械学習モデルを用いて頻度データから時系列データを生成する場合に、機械学習モデルの構造を変更しなくとも、生成時系列データの再現度を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】データ生成システムSの概要を説明するための図である。
【
図2】データ生成システムSの概要を説明するための図である。
【
図4】車両の速度の時系列データを説明するための図である。
【
図5】所定の速度毎の加速度の発生頻度を説明するための図である。
【
図6】モデル作成部233が機械学習モデルMを作成する処理の概要を示す図である。
【
図7】データ生成装置2が処理を行う際のデータの流れを説明するための図である。
【
図8】第1生成部236から出力された第1生成時系列データの例を示す図である。
【
図9】第1生成時系列データの分割データを削除または複製して、第2生成時系列データを生成する流れを説明する図である。
【
図10】第2生成時系列データの生成の流れを説明するための模式図である。
【
図11】データ生成装置2が時系列データを生成する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<データ生成システムSの概要>
図1及び
図2は、データ生成システムSの概要を説明するための図である。
【0014】
データ生成システムSは、車両において測定されたパラメータ(速度や加速度)の頻度データに基づいて、パラメータの時系列データを生成するためのシステムである。データ生成システムSは、データ収集装置1及びデータ生成装置2を備えている。データ生成装置2は、機械学習モデルを用いて、頻度データに基づいて時系列データを生成する装置である。当該機械学習モデルは、例えば条件付VAE(Variational Auto Encoder)又は条件付GAN(Generative Adversarial Networks)を含んで構成されている。
【0015】
データ収集装置1は、ネットワークNを介して多数の車両において測定されたパラメータのデータを取得する装置であり、例えばコンピュータである。データ生成装置2は、データ収集装置1を介して学習用の車両から取得した時系列データ及び頻度データを教師データとして機械学習した機械学習モデルを作成するコンピュータである。データ生成装置2は、作成した機械学習モデルを用いて、推定対象の車両から得られた頻度データに基づいて時系列データを生成する。
【0016】
図1は、データ生成装置2が機械学習をして機械学習モデルを作成する間のデータ生成システムSの動作を示す図である。データ収集装置1は、予め登録された学習用の車両T1から所定のパラメータ(例えば速度)の測定データを送信する(
図1における(1))。データ収集装置1は、取得した測定データの時系列データをデータ生成装置2に送信する(
図1における(2))。
【0017】
データ生成装置2は、データ収集装置1から受信した時系列データから学習用データ(学習用頻度データ及び学習用燃費データ)を生成する。データ生成装置2は、学習用データを教師データとした機械学習モデル(具体的には、燃費を推定するための第1機械学習モデルと、時系列データを生成するための第2機械学習モデル)を作成する(
図1における(3))。
【0018】
続いて、
図2を参照して、データ生成装置2が機械学習モデルを作成した後の動作を説明する。推定対象の車両T2は、車両T2が取得した頻度データ(具体的には、速度頻度データ及び加速度頻度データ)をデータ収集装置1に送信する(
図2における(4))。時系列データである測定データではなく、頻度データが送信されるのは、通信量を減らすためである。
【0019】
データ収集装置1は、車両Tから受信した頻度データをデータ生成装置2に送信する(
図2における(5))。データ生成装置2は、頻度データを第2機械学習モデルに入力することで第1時系列データを生成する(
図2における(6))。また、データ生成装置2は、頻度データを第1機械学習モデルに入力することで燃費を推定する(
図2における(7))。
【0020】
データ生成装置2は、詳細は後述するが、第2機械学習モデルの多層化の構造変化をすることなく車両T2の燃費を高精度に再現すべく、第1時系列データを分割して削除または複製することで、第2時系列データを生成する(
図2における(8))。
【0021】
<データ生成装置2の詳細構成>
図3は、データ生成装置2の構成を示す図である。
データ生成装置2は、通信部21と、記憶部22と、制御部23を有する。制御部23は、時系列データ取得部231と、学習用データ取得部232と、モデル作成部233と、第1取得部234と、第1推定部235と、第1生成部236と、第2取得部237と、第2推定部238と、第2生成部239を有する。
【0022】
通信部21は、ネットワークNを介してデータ収集装置1又はその他の外部装置との間でデータを送受信するための通信インターフェースを含む。通信部21は、外部装置から受信したデータを制御部23に通知し、制御部23から入力されたデータを外部装置へと送信する。
【0023】
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体を含む。記憶部22は、制御部23が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部22は、データ収集装置1から受信した時系列データ等を一時的に記憶する。また、記憶部22は、後述する機械学習モデルを記憶してもよいし、制御部23により生成された時系列データを記憶してもよい。
【0024】
制御部23は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部23は、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することにより、時系列データ取得部231、学習用データ取得部232、モデル作成部233、第1取得部234、第1推定部235、第1生成部236、第2取得部237、第2推定部238及び第2生成部239として機能する。
【0025】
時系列データ取得部231は、車両が走行中に測定された車両の速度の時系列データを学習用時系列データとして取得する。具体的には、時系列データ取得部231は、
図1に示す複数の学習用車両T1の車速の時系列データを取得する。時系列データは、時間によって変化するパラメータの値を示すデータであり、例えば1秒ごとの車両の速度の値から構成されている。時系列データ取得部231は、取得した時系列データを、学習用データ取得部232及びモデル作成部233に入力する。時系列データ取得部231は、例えば
図4に示すような時系列データを取得する。
【0026】
図4は、車両の速度の時系列データを説明するための図である。時系列データは、車両が所定時間に亘って走行する際の速度変化を示すデータであり、例えば1秒ごとに取得されている。
【0027】
学習用データ取得部232は、機械学習を行うための学習用データを取得する。学習用データ取得部232は、時系列データ取得部231が取得した時系列データの一部を学習用データとして取得する。学習用データ取得部232は、学習用データとして、時系列データにおける速度の発生頻度分布を示す学習用速度頻度データと、時系列データにおける所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す学習用加速度頻度データとを取得する。学習用データ取得部232は、時系列データを1回微分することにより加速度を求める。
【0028】
速度頻度データは、例えば、単位時間内に時速1km/hの状態が発生した時間、時速2km/hの状態が発生した時間等のように、時速Nkm/h(Nは0以上の整数)の状態が発生した時間又は割合を示すデータである。加速度頻度データは、例えば、単位時間内に所定の加速度が発生した時間又は割合を示すデータである。なお、車両が加速している間は加速度が正の値となり、減速している間は加速度が負の値となる。
【0029】
図5は、所定の速度毎の加速度の発生頻度を説明するための図である。加速度の発生頻度分布は、所定の車速の範囲ごとに、発生した加速度の分布を示す。例えば、本実施の形態において、所定の車速の範囲が、10(km/h)の範囲であり、車速の全体の範囲が0~160(km/h)であるとする。加速度の発生頻度分布は、車速の範囲ごとに、0.5(m/s
2)の加速度の幅ごとの頻度が示されたデータであり、加速度の範囲は、-5.0~+5.0(m/s
2)であるとする。すなわち、各車速の範囲に対して、20の加速度範囲における加速度の発生頻度が示される。加速度の発生頻度分布は、車速及び加速度を320クラスに分けた際の各クラスでの発生頻度を示す。1~20のクラスは、車速がv
0(0km/h)~v
1(10km/h)である際の加速度の発生頻度を特定するためのクラスである。例えば、クラス1は、車速がv
0~v
1(km/h)であり、かつ加速度がa
0(-5.0m/s
2)~a
1(-4.5m/s
2)であることを意味する。同様に、21~40のクラスは、車速がv
1(10km/h)~v
2(20km/h)である際の加速度の発生頻度を特定するためのクラスであり、301~320のクラスは、車速がv
15(150km/h)~v
16(160km/h)である際の加速度の発生頻度を特定するためのクラスである。なお、上述した、加速度の発生頻度分布における、車速の範囲および加速度の範囲は、例示であって、異なる値を採用することも可能である。
【0030】
学習用データ取得部232は、例えば1800秒の時系列データの1秒毎のクラス(1~320のいずれかのクラス)を特定して、特定したクラス毎の数を足し合わせることで、発生頻度分布を示す学習用加速度頻度データを求める。
【0031】
また、学習用データ取得部232は、学習用データとして、時系列データから車両の燃費を示す学習用燃費データを取得する。例えば、学習用データ取得部232は、所定のシミュレーションソフトを用いることで、時系列データから燃費データを取得できる。
【0032】
モデル作成部233は、加速度頻度データが入力されることに応じて燃費データを出力する第1機械学習モデルを作成する。具体的には、モデル作成部233は、学習用加速度頻度データと学習用燃費データを教師データとして機械学習することにより、第1機械学習モデルを作成する。第1機械学習モデルは、加速度頻度データが入力されたことに応じて、燃費データを出力する。また、モデル作成部233は、速度の学習用時系列データと、対応する学習用速度頻度データ及び学習用加速度頻度データとを教師データとして機械学習することにより、第2機械学習モデルを作成する。第2機械学習モデルは、学習用速度頻度データ及び学習用加速度頻度データが入力されたことに応じて、時系列データを出力する。なお、モデル作成部233は、出力した時系列データを組み合わせることができるように、第2機械学習モデルを複数作成してもよい。
【0033】
モデル作成部233は、第1機械学習モデルと第2機械学習モデルを同様に作成する。以下では、第1機械学習モデル(ここでは、単に機械学習モデルと呼ぶ)の作成について、
図6を参照しながら説明する。
【0034】
図6は、モデル作成部233が機械学習モデルMを作成する処理の概要を示す図である。機械学習モデルMは、ここでは線形回帰モデルにより構成されているものとする。
図6に示すように、機械学習モデルMは、一例としての線形回帰モデルにより構成されている。線形回帰モデルは、推定したい値を目的変数、推定のために用いる値を説明変数とし、説明変数に可変の重みが設けられた回帰式を作成する。燃費データが目的変数、加速度頻度データが説明変数に対応する。
【0035】
モデル作成部233は、学習用頻度データが入力される機械学習モデルM-1で構成されている。モデル作成部233は、機械学習モデルM-1から出力される推定燃費データと、入力した学習用頻度データに対応する学習用燃費データとを比較する。
【0036】
モデル作成部233は、機械学習モデルM-1に学習用頻度データを入力した際に出力される推定燃費データと、学習用燃費データとの差分に基づいて、機械学習モデルM-1の重みを更新する。
【0037】
モデル作成部233は、例えば推定燃費データと学習用燃費データとの差が閾値以上である場合に、重みを更新する。モデル作成部233は、推定燃費データと学習用燃費データとの差が閾値未満になるまで、学習用頻度データを機械学習モデルM-1に入力したことにより推定される燃費データと学習用燃費データとの比較と重みの更新とを繰り返す。モデル作成部233は、多数の学習用頻度データ及び学習用燃費データのペアを用いて上記の処理を実行することにより、所望の機械学習モデル(
図7に示す第1機械学習モデル)を作成する。
【0038】
モデル作成部233は、作成した第1機械学習モデル及び第2機械学習モデルを記憶部22に記憶させる。ただし、上記に限定されず、モデル作成部233は、モデル作成部233が有するメモリに、第1機械学習モデル及び第2機械学習モデルを記憶させてもよい。また、モデル作成部233は、作成した第1機械学習モデル及び第2機械学習モデルの重みを記憶部22に記憶させてもよい。
【0039】
第1取得部234は、モデル作成部233が作成した第1機械学習モデルと第2機械学習モデルに入力する頻度データを取得する。第1取得部234は、時系列データを生成する対象の車両(
図2に示す車両T2)の頻度データを、通信部21を介してデータ収集装置1から取得する。第1取得部234は、頻度データとして、車両T2が走行中に測定された車両T2の速度の時系列データにおける速度の発生頻度分布を示す速度頻度データと、所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す加速度頻度データ(例えば
図5で説明した加速度頻度データ)とを取得する。なお、第1取得部234は、データ収集装置1を介さずに、車両T2から速度頻度データ及び加速度頻度データを取得してもよい。
【0040】
第1推定部235は、第1取得部234が取得した加速度頻度データに対応する車両T2の燃費(第1燃費と呼ぶ)を推定する。第1推定部235は、第1取得部234が取得した加速度頻度データを第1機械学習モデルに入力することにより、加速度頻度データを取得した車両T2の第1燃費を推定する。これにより、第1推定部235は、シミュレーションソフト等を用いなくても、車両T2の第1燃費を高速に推定できる。
【0041】
図7は、データ生成装置2が処理を行う際のデータの流れを説明するための図である。第1推定部235が、車両T2から取得された頻度データのうち加速度頻度データを第1機械学習モデルに入力することにより、第1機械学習モデルが、入力された加速度頻度データに対応する第1燃費のデータを出力する。
【0042】
第1生成部236は、第1取得部234が取得した速度頻度データ及び加速度頻度データの入力に応じて時系列データ(第1生成時系列データと呼ぶ)を生成する。第1生成部236は、第1取得部234が取得した速度頻度データ及び加速度頻度データを第2機械学習モデルに入力することにより、第1生成時系列データを生成する。なお、第1生成部236は、速度頻度データ及び加速度頻度データが入力された複数の第2機械学習モデルを用いて、各々から出力された複数の生成時系列データを繋げて、第1生成時系列データを生成してもよいし、任意の時系列データを第1生成時系列データに繋げてもよい。
【0043】
第2取得部237は、第1生成部236が生成した第1生成時系列データから、所定の速度毎の加速度の発生頻度分布を示す第2加速度頻度データを取得する。第2取得部237は、第2機械学習モデルに入力した加速度頻度データと同一のクラス区分で、第2加速度頻度データを取得する。
【0044】
第2推定部238は、第2取得部237が取得した第2加速度頻度データに対応する車両T2の燃費(第2燃費と呼ぶ)を推定する。第2推定部238は、第2取得部237が取得した第2加速度頻度データを第1機械学習モデルに入力することにより、第2加速度頻度データに対応する第2燃費を推定する。
【0045】
第2生成部239は、第1推定部235が推定した第1燃費と、第2推定部238が推定した第2燃費との差分に基づいて、第1生成時系列データから第2生成時系列データを生成する。第2生成部239は、第1生成時系列データから、第1燃費と第2燃費の差を小さくする第2生成時系列データを生成する。具体的には、第2生成部239は、第1燃費と第2燃費の差を最小化するように、第1生成時系列データを分割して削除または複製して、第2生成時系列データを生成する。
【0046】
第2生成部239は、第2生成時系列データを通信部21に出力する。つまり、第1生成部236で得られた第1生成時系列データが第2取得部237及び第2推定部238を経由して第2生成部239に入力され、第1推定部235が推定した第1燃費と、第2推定部238が推定した第2燃費との差分が小さくなるような、第2生成時系列データが生成されて通信部21に出力される。通信部21は、出力された第2生成時系列データを表示装置等の外部装置に送信する。
【0047】
次に、
図8及び
図9を用いて、第2生成部239の動作の一例を説明する。
図8は、第1生成部236から出力された第1生成時系列データの例を示す図である。第1生成時系列データの分割単位は、基準値から値が変動して基準値に戻るまでの区間である。
図8の例では、基準値は車速0[km/h]である。第2生成部239は、第1生成時系列データを分割した複数の分割データを削除または複製して、第2生成時系列データを生成する。
【0048】
図9は、第1生成時系列データの分割データを削除または複製して、第2生成時系列データを生成する流れを説明する図である。
図9(a)には第1燃費と第2燃費の比較が示され、
図9(b)には第1生成時系列データが示され、
図9(c)には第2生成時系列データが示されている。
【0049】
ここでは、
図9(a)に示すように比較した第1燃費と第2燃費の差分が、閾値以上であったとする。その場合、第2生成部239は、まず第1生成時系列データを分割した分割データを第2取得部237に入力し、分割データあたりの第2加速度頻度データを取得する。次に、分割データあたりの第2加速度頻度データを第2推定部238に入力して、分割データあたりの第2燃費を算出し、第2生成部239に送信する。そして、第2生成部239は、第1燃費と第2燃費を再度比較して、閾値以上の差分の要因となる分割データの削除または複製を決定する(
図9(b))。分割データの削除と複製が行われると、
図9(c)に示すように第2生成時系列データが得られる。
【0050】
本実施形態のデータ生成装置2は、第1生成時系列データを分割して複数の分割データとし、第2取得部237及び第2推定部238により分割データあたりに算出し直した第2燃費と、第1推定部235が推定した第1燃費との差分が閾値以上であるか否かを判定した。そして、データ生成装置2は、閾値以上の差分の要因となる分割データを削除または複製することで、前記差分が閾値以下となるように、第2生成時系列データを生成した。しかし、上記に限定されず、
図10に示す処理により第2生成時系列データを得るようにしてもよい。
【0051】
図10は、第2生成時系列データの生成の流れを説明するための模式図である。第2生成部239は、第1生成時系列データを
図10(a)に示す複数の分割データ1、分割データ2、・・・、分割データ6に分解する。第2生成部239は、分解した複数の分割データの中から第1燃費と第2燃費の差を最小化する山を選択して、
図10(b)に示すように第2生成時系列データを生成する。
【0052】
また、第2生成部239は、複数の分割データをランダムに組み合わせて複数の第2生成時系列データを生成し、各生成時系列データに対応する第2燃費をそれぞれ求め、最も第1燃費との差が小さい第2生成時系列データを選択してもよい。
【0053】
なお、上述した実施形態では、第1生成時系列データの分割データを削除または複製して、第2生成時系列データを生成しているが、第1生成時系列データのほかに任意の時系列データを用意して分割データの数を増やしてもよいし、第2機械学習モデルを用いない場合は任意の時系列データのみを用いて、同様の処理で第2生成時系列データを生成してもよい。
【0054】
上記のようにすることで、第2機械学習モデルに入力した加速度頻度データに応じた燃費を推定でき、第2機械学習モデルに入力した頻度データの元となった車速時系列データが取得できない場合でも車両の燃費を高速に推定することができる。また、第2機械学習モデルを用いて頻度データから時系列データを生成する場合に、機械学習モデルの構造を変更しなくとも、生成時系列データの再現度を向上させることができるようになる。
【0055】
<データ生成装置2における処理の流れ>
図11は、データ生成装置2が時系列データを生成する際の処理の流れを示すフローチャートである。本処理が開始される前に、学習用車両T1を介して取得した学習用データから第1機械学習モデル及び第2機械学習モデルが作成されている。
【0056】
データ生成装置2の第1取得部234は、車両T2の頻度データである速度頻度データ及び加速度頻度データを取得する(ステップS102)。次に、第1推定部235は、第1取得部234が取得した加速度頻度データを第1機械学習モデルに入力することにより、加速度頻度データに対応する第1燃費を推定する(ステップS104)。
【0057】
第1生成部236は、第1取得部234が取得した速度頻度データ及び加速度頻度データを第2機械学習モデルに入力することにより、第1生成時系列データを生成する(ステップS106)。例えば、第1生成部236は、
図8に示す第1生成時系列データを生成する。
【0058】
次に、第2取得部237は、第1生成部236が生成した第1生成時系列データから、第2加速度頻度データを取得する(ステップS108)。次に、第2推定部238は、第2取得部237が取得した第2加速度頻度データを第1機械学習モデルに入力することにより、第2加速度頻度データに対応する第2燃費を推定する(ステップS110)。
【0059】
次に、第2生成部239は、第1推定部235が推定した第1燃費と第2推定部238が推定した第2燃費との差を小さくする第2生成時系列データを生成する(ステップS112)。具体的には、第2生成部239は、
図9に示すように、第1生成時系列データを分割して削除または複製することで、時系列データを生成する。
【0060】
その後、データ生成装置2は、生成した第2生成時系列データから第2燃費を求め、求めた第2燃費と第1燃費の差が更に小さくなるように第2生成時系列データを再度生成する。このような処理を所定回数だけ繰り返すことで、データ生成装置2は、第1燃費と第2燃費が最小化する第2生成時系列データを生成できる。
【0061】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態のデータ生成装置2は、車両T2の加速度頻度データを第1機械学習モデルに入力して第1燃費を推定する。また、データ生成装置2は、第2機械学習モデルから出力された第1生成時系列データから取得した第2加速度頻度データを、第1機械学習モデルに入力して第2燃費を推定する。そして、データ生成装置2は、第1燃費と第2燃費の差を小さくする第2生成時系列データを生成する。
これにより、データ生成装置2は、第1燃費と第2燃費を最小化する第2生成時系列データを生成することで、頻度データから精度の高い時系列データを生成できる。また、第2機械学習モデルの多層化等の構造変更をする必要がないので、データ生成装置2は、生成した時系列データに基づいて燃費を短時間かつ高精度に推定できる。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0063】
2 データ生成装置
234 第1取得部
235 第1推定部
236 第1生成部
237 第2取得部
238 第2推定部
239 第2生成部