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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116853
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】火力発電システム、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   F22B 33/18 20060101AFI20240821BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20240821BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20240821BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240821BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
F22B33/18
F22B1/18 C
F28D20/02 D
B01D53/62
B01D53/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022674
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 功一
【テーマコード(参考)】
3L021
4D002
【Fターム(参考)】
3L021AA05
3L021DA38
3L021FA04
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA07
4D002DA31
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA03
4D002GB11
4D002HA08
(57)【要約】
【課題】発電を抑制中のボイラの発生エネルギを用いて、発電を抑制中でない時の発電量の低下を抑制可能な火力発電システムを提供する。
【解決手段】
本実施形態に係る火力発電システムの燃焼ボイラは、搬送された水を、炭素原子を含む燃料を用いて燃焼することにより加熱して蒸気を生成する。蒸気タービンは、燃焼ボイラから流出した蒸気を用いて回転駆動する。発電機は、蒸気タービンの駆動力を用いて駆動する。復水器は、蒸気タービンの排気を冷却し、水に凝縮させる。ポンプは水を循環させる。二酸化炭素回収装置は、燃焼ボイラが排出する燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する。蓄熱槽は、燃焼ボイラから流出する蒸気、燃焼ボイラ内部を流通する蒸気又は水、の全部あるいは一部である熱源流体の保有熱を吸熱し蓄熱する。蓄熱槽から放熱された熱を二酸化炭素回収装置の熱源として利用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送された水を、炭素原子を含む燃料を用いて燃焼することにより加熱して蒸気を生成する燃焼ボイラと、
前記燃焼ボイラから流出した蒸気を用いて回転駆動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンの駆動力を用いて駆動する発電機と、
前記蒸気タービンの排気を冷却し、水に凝縮させる復水器と、
前記水を循環させるポンプと、
前記燃焼ボイラが排出する燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と、
前記燃焼ボイラから流出する蒸気、前記燃焼ボイラ内部を流通する蒸気又は水、の全部あるいは一部である熱源流体の保有熱を吸熱し蓄熱する蓄熱槽と、
を備え、
前記蓄熱槽から放熱された熱を前記二酸化炭素回収装置の熱源として利用する、火力発電システム。
【請求項2】
電力余剰状態である時に蓄熱運転を実施し、前記熱源流体を前記蓄熱槽に流通させ、前記熱源流体から熱を吸熱して蓄熱させ、
電力余剰状態でない時に放熱運転を実施し、前記蓄熱槽から放熱された熱を前記二酸化炭素回収装置に供給して、前記二酸化炭素回収装置の熱源として利用させる、請求項1に記載の火力発電システム。
【請求項3】
蓄熱運転を実施する際に、前記熱源流体からの熱を前記蓄熱槽に蓄熱させると共に、前記熱源流体からの熱を前記二酸化炭素回収装置に供給して前記二酸化炭素回収装置の熱源として利用させる、請求項1又は2に記載の火力発電システム。
【請求項4】
電力余剰状態である時は前記燃焼ボイラを、電力余剰状態でない時と比べて、より低負荷運転にする、請求項1又は2に記載の火力発電システム。
【請求項5】
前記燃焼ボイラから流出した前記蒸気の流路は、前記蒸気タービンに流入する流路と、前記蒸気タービンに流入しないで前記蓄熱槽または前記二酸化炭素回収装置に流入する流路とに分岐可能であり、
電力余剰状態である時は前記蒸気タービンに前記蒸気を流通させない運転を実行する、請求項1又は2に記載の火力発電システム。
【請求項6】
蓄熱運転を実施する際は、前記熱源流体を前記蓄熱槽に流通させ、前記蓄熱槽から流出した前記熱源流体を前記燃焼ボイラに流入させる、請求項1又は2に記載の火力発電システム。
【請求項7】
放熱運転を実施する際は、前記蓄熱槽と前記二酸化炭素回収装置の間で熱媒体を循環させることで、前記蓄熱槽から前記二酸化炭素回収装置に熱を受け渡す、請求項1又は2に記載の火力発電システム。
【請求項8】
前記熱媒体は前記燃焼ボイラを流通する物質と同一物質であり、前記熱媒体の蓄熱運転時の流路と放熱運転時の流路が一部重複している、請求項7に記載の火力発電システム。
【請求項9】
前記熱源流体の熱を前記二酸化炭素回収装置に受け渡して利用する際は、前記熱源流体を前記二酸化炭素回収装置に流通させ、前記二酸化炭素回収装置から流出した前記熱源流体を前記燃焼ボイラに流入させる、請求項1又は2に記載の火力発電システム。
【請求項10】
前記熱源流体の熱を前記蓄熱槽に蓄熱すると同時に、前記熱源流体からの熱を前記二酸化炭素回収装置に受け渡して前記二酸化炭素回収装置の熱源として利用する際は、前記熱源流体を分岐し、前記二酸化炭素回収装置と前記蓄熱槽それぞれに流入させ、前記二酸化炭素回収装置と前記蓄熱槽それぞれから流出した前記熱源流体を前記燃焼ボイラに流入させる、請求項1又は2に記載の火力発電システム。
【請求項11】
前記熱源流体の熱を前記蓄熱槽に蓄熱すると同時に、前記熱源流体からの熱を前記二酸化炭素回収装置に受け渡して前記二酸化炭素回収装置の熱源として利用する際は、前記二酸化炭素回収装置に流入する前記熱源流体は、前記燃焼ボイラ内部を流通する蒸気または水を抽出した流体とし、前記蓄熱槽に流入する前記熱源流体は前記燃焼ボイラから流出した蒸気とする、請求項10に記載の火力発電システム。
【請求項12】
前記熱源流体からの熱を前記蓄熱槽に蓄熱すると同時に、前記熱源流体からの熱を前記二酸化炭素回収装置に受け渡して前記二酸化炭素回収装置の熱源として利用する際は、前記熱源流体を前記二酸化炭素回収装置に流入させ、前記二酸化炭素回収装置から流出した前記熱源流体を前記蓄熱槽に流入させ、前記蓄熱槽から流出した前記熱源流体を前記燃焼ボイラに流入させる、請求項1又は2に記載の火力発電システム。
【請求項13】
前記熱源流体からの熱を前記蓄熱槽に蓄熱すると同時に、前記熱源流体からの熱を前記二酸化炭素回収装置に受け渡して前記二酸化炭素回収装置の熱源として利用する際は、前記熱源流体を前記蓄熱槽に流入させ、前記蓄熱槽から流出した前記熱源流体を前記二酸化炭素回収装置に流入させ、前記二酸化炭素回収装置から流出した前記熱源流体を前記燃焼ボイラに流入させる、請求項1又は2に記載の火力発電システム。
【請求項14】
蓄熱運転時に、前記熱源流体と前記燃焼ボイラに流入する前記水から分岐した分岐水とを合流させた流体を、前記二酸化炭素回収装置または前記蓄熱槽に流入させる、請求項1又は2に記載の火力発電システム。
【請求項15】
放熱運転時に、前記蓄熱槽へ向かう流体を分岐し、一方は前記蓄熱槽を流通させ他方は前記蓄熱槽をバイパスさせた後、合流させてから、前記二酸化炭素回収装置に流入させる、請求項1又は2に記載の火力発電システム。
【請求項16】
前記二酸化炭素回収装置は、
水分を含有する吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、
前記吸収塔から供給される前記吸収液から二酸化炭素を放出させる再生塔と、
前記再生塔の前記吸収液を加熱するリボイラと、を有し、
前記リボイラにおける前記吸収液の加熱に、前記蓄熱槽から放熱した熱を利用する、請求項1又は2に記載の火力発電システム。
【請求項17】
搬送された水を、炭素原子を含む燃料を用いて燃焼することにより加熱して蒸気を生成する燃焼ボイラと、前記燃焼ボイラから流出した蒸気を用いて回転駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンの駆動力を用いて駆動する発電機と、前記蒸気タービンの排気を冷却し、水に凝縮させる復水器と、前記水を循環させるポンプと、前記燃焼ボイラが排出する燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と、前記燃焼ボイラから流出する蒸気、前記燃焼ボイラ内部を流通する蒸気又は水、の全部あるいは一部である熱源流体の保有熱を吸熱し蓄熱する蓄熱槽と、を備える火力発電システムの制御装置であって、
前記制御装置は、電力余剰状態である時に蓄熱運転を実施し、前記熱源流体を前記蓄熱槽に流通させ、前記熱源流体から熱を吸熱して蓄熱させ、
電力余剰状態でない時に放熱運転を実施し、前記蓄熱槽から放熱された熱を前記二酸化炭素回収装置に供給して、前記二酸化炭素回収装置の熱源として利用させる制御を実行させる、火力発電システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、火力発電システム、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策は世界的な課題であり、温室効果ガスである二酸化炭素を回収して貯留する技術の適用が進められている。この技術では、石炭や天然ガスといった炭素原子を含む化石燃料を燃焼する火力発電所など二酸化炭素を大量に排出する施設から排出される排気を大気に放散する前に、排気の中から二酸化炭素だけを分離回収し、地中深くの安定した地層に圧入し、長期間にわたって貯留する。また、回収した二酸化炭素を有効利用する技術の適用も進められている。この技術では、例えば二酸化炭素を古い油田に注入することで、油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、二酸化炭素を地中に貯留する。この場合、石油の増産にもつながっている。さらに、二酸化炭素を資源として化学品や燃料などの原料に使用して有価物を製造する取り組みも進んでいる。
【0003】
二酸化炭素回収方法として、二酸化炭素回収装置を用いる例が知られている(特許文献1参照)。この二酸化炭素回収装置は、水分を含有する吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、吸収塔から供給される吸収液から二酸化炭素を放出させる再生塔と、再生塔の吸収液を加熱するリボイラを有している。吸収液は例えばアミン水溶液である。なお、二酸化炭素回収方法は他に一般に知られている。
【0004】
従来技術としての火力発電システム200は、石炭火力発電所に二酸化炭素回収装置34を組み込んだ例である。図13は、この従来の火力発電システム200の構成例を示す図である。図13に示すように、火力発電システム200は、燃焼ボイラ1と、復水ポンプ9と、蒸気タービン10と、二酸化炭素回収装置34と、復水器35とを備えて構成される。
【0005】
ここで、燃焼ボイラ1は、例えば石炭ボイラであり、燃料2は石炭とする。燃焼ボイラ1(石炭ボイラ)に燃料2(石炭)と燃焼用空気3を入れ、石炭2を燃焼させ燃焼排ガス4を発生する。二酸化炭素回収装置34は主に吸収塔5と再生塔6と、再生塔6に内蔵されているリボイラと、吸収液ポンプと吸収液から構成される。なお、リボイラ、吸収液ポンプ、吸収液は図示を省略している。
【0006】
燃焼排ガス4は、吸収塔5内に導かれる。吸収塔には、二酸化炭素を吸収する吸収液が供給され、この供給された吸収液は、導入された燃焼排ガス4と気液接触して、燃焼排ガス4中の二酸化炭素を吸収する。これにより、吸収後の吸収液は再生塔6へ流入するが、その際、吸収液内の二酸化炭素7も再生塔6へ移動する。一方で、吸収液に二酸化炭素を吸収された残りの燃焼排ガスは、大気へ放出される。再生塔6は、吸収後の吸収液をリボイラにより加熱し、吸収液から二酸化炭素8を放出させる。二酸化炭素8を放出し元に戻った吸収液は吸収塔5へ流入する。この吸収液は、吸収液ポンプにより、吸収塔5と再生塔6の間を循環する。なお、二酸化炭素8の吸収塔5における吸収や、再生塔6における放出や、吸収塔5から再生塔6への移動は、詳細には描かず模式的に描いている。
【0007】
二酸化炭素8が回収された燃焼排ガス4は大気へ放出される。図示していないが、吸収液から放出させた二酸化炭素8は貯留先あるいは有価物製造先に搬送される。燃焼ボイラ1では、復水ポンプ9により搬入された水23を、燃焼排ガス4の熱により加熱し、蒸気24を製造する。蒸気24は、蒸気タービン10内を低温低圧になりながら流通することで、羽根車である蒸気タービン10を回転駆動させ、蒸気タービン10に機械的に接続させた発電機40が発電する。
【0008】
蒸気タービン10から排出された蒸気24は、復水器35により冷却水、例えば海水により冷却され、水23に変化して、循環する。蒸気タービン10の途中から抽気された抽気蒸気11は、再生塔6に内蔵されたリボイラに流入し、吸収後の吸収液を加熱した後、復水器35に流入し水23に変化する。また、バイオマス火力発電所や廃棄物燃焼発電所に二酸化炭素回収装置34を組み込むことも可能である。この場合には、前記例における石炭ボイラをそれぞれバイオマスボイラや廃棄物燃焼ボイラに置き換えた状態とすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6392099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、石炭火力発電所、バイオマス火力発電所、廃棄物燃焼発電所いずれにおいても、リボイラの加熱源として、火力発電プラント等の蒸気タービン内から抽気した抽気蒸気の熱を利用している。そのため、蒸気タービン内において抽気した場所より下流では、蒸気タービン内を流通している蒸気流量が減っており、その分、発電量が減少する。これにより、この発電量が減少するという課題がある。
【0011】
ところで、夜間など電力が余剰状態の時は発電不要であり、発電運転を停止させたい要求がある。しかし、石炭火力発電所、バイオマス火力発電所、廃棄物燃焼発電所では、それぞれ石炭ボイラ、バイオマスボイラ、廃棄物燃焼ボイラは一旦停止すると再起動まで時間がかかるため停止させることができず、燃料を消費して余剰電力を増やしてしまう。このため、従来捨てている余剰電力を有効利用したいという課題がある。
【0012】
本発明が解決しようする課題は、発電を抑制中のボイラの発生エネルギを用いて、発電を抑制中でない時の発電量の低下を抑制可能な火力発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本実施形態に係る火力発電システムは、燃焼ボイラと、蒸気タービンと、発電機と、復水器と、ポンプと、二酸化炭素回収装置と、蓄熱槽と、を備える。燃焼ボイラは、搬送された水を、炭素原子を含む燃料を用いて燃焼することにより加熱して蒸気を生成する。蒸気タービンは、燃焼ボイラから流出した蒸気を用いて回転駆動する。発電機は、蒸気タービンの駆動力を用いて駆動する。復水器は、蒸気タービンの排気を冷却し、水に凝縮させる。ポンプは水を循環させる。二酸化炭素回収装置は、燃焼ボイラが排出する燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する。蓄熱槽は、燃焼ボイラから流出する蒸気、燃焼ボイラ内部を流通する蒸気又は水、の全部あるいは一部である熱源流体の保有熱を吸熱し蓄熱する。蓄熱槽から放熱された熱を二酸化炭素回収装置の熱源として利用する。
【発明の効果】
【0014】
本実施形態によれば、発電を抑制中のボイラの発生エネルギを用いて、発電を抑制中でない時の発電量の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る火力発電システムの構成、及び電力余剰時の運転状態図。
図2】第1実施形態に係る火力発電システムの構成、及び電力余剰時でない運転状態図。
図3】第2実施形態に係る火力発電システムの構成、及び電力余剰時の運転状態図。
図4】第2実施形態に係る火力発電システムの構成、及び電力余剰時でない運転状態図
図5】第3実施形態に係る火力発電システムの構成、及び電力余剰時の運転状態図。
図6】第3実施形態に係る火力発電システムの構成、及び電力余剰時でない運転状態図
図7】第4実施形態に係る火力発電システムの構成、及び電力余剰時の運転状態図。
図8】第4実施形態に係る火力発電システムの構成、及び電力余剰時でない運転状態図
図9】第5実施形態に係る火力発電システムの構成、及び電力余剰時の運転状態図。
図10】第5実施形態に係る火力発電システムの構成、及び電力余剰時でない運転状態図
図11】第6実施形態に係る火力発電システムの構成、及び電力余剰時の運転状態図。
図12】第6実施形態に係る火力発電システムの構成、及び電力余剰時でない運転状態図
図13】従来の火力発電システム200の構成例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0017】
(第1実施形態)
図1及び図2は、第1実施形態に係る火力発電システム100の構成、及び状態例を示す図である。図1は、電力が余剰である時の運転状態を示す図である。図2は、電力余剰時でない時の運転状態を示す図である。なお、従来技術と同じである部分の説明は、同一の番号を付して説明を省略する場合がある。また、これ以降、弁は、開状態を白抜きで、閉状態を黒塗りで図示する。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る火力発電システム100は、燃焼ボイラ1と、復水ポンプ9と、蒸気タービン10と、弁14、18、25、27、28、29、30と、搬送機20と、蓄熱槽22と、二酸化炭素回収装置34と、復水器35と、発電機40と、制御装置50と、を備えて構成される。制御装置50はなくてもよく、ない場合は、火力発電システム100の運転員が操作する事で制御する。すなわち、本実施形態では、火力発電システム100の各構成を運転員が運転操作する第1モードと、制御装置50により運転操作する第2モードと、を有する。以下の説明では、第2モードとして説明する場合もあるが、第1モードでも同じ運転操作が可能である。また、二酸化炭素回収装置34は、吸収塔5と、再生塔6とを、有する。さらに、図1、及び2では、炭素原子を含む燃料2、燃焼用空気3、燃焼排ガス4、吸収液内の二酸化炭素7、二酸化炭素8、第1の熱源流体15、第2の熱源流体16、水23、蒸気24が図示されている。
【0019】
図1及び図2に示すように、燃焼ボイラ1は、弁30を介して蒸気タービン10と連通している。蒸気タービン10は、復水器35と連通し、復水器35は、復水ポンプ9を介して燃焼ボイラ1と連通し、循環流路を構成可能である。また、燃焼ボイラ1の一部流路は分岐し、弁14を介して、二酸化炭素回収装置34の再生塔6に連通し、再生塔6は、弁28を介して復水器35に連通可能である。また、再生塔6は、搬送機20、及び弁29を介して、蓄熱槽22に連通可能である。また、蓄熱槽22は、弁25を介して燃焼ボイラ1と連通可能であり、弁18を介して二酸化炭素回収装置34の再生塔6に連通可能である。
【0020】
すなわち、燃焼ボイラ1は、復水ポンプ9から搬送された水23を、炭素原子を含む燃料2を用いて燃焼することにより加熱して蒸気24を生成する。蒸気タービン10は、燃焼ボイラ1から流出した蒸気24を用いて回転駆動する。発電機40は、蒸気タービン10の駆動力を用いて発電する。
【0021】
また、復水器35は、蒸気タービン10の排気を冷却し、水に凝縮させ、復水ポンプ9を介して燃焼ボイラ1に循環させる。二酸化炭素回収装置34は、吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔5と、吸収塔5から供給される吸収液から二酸化炭素を放出させる再生塔6と、再生塔6の吸収液を加熱するリボイラと、を有する。このリボイラにおける吸収液の加熱には、蓄熱槽22から放熱した熱が利用される。
【0022】
蓄熱槽22は、熱源流体の保有熱を吸熱し蓄熱が可能な蓄熱材を有する。例えば、本実施形態に係る熱源流体は、蒸気、蒸気及び水、水のいずれかの全部あるいは一部である。すなわち、この蓄熱槽22は、燃焼ボイラ1から流出する蒸気、燃焼ボイラ1内部を流通する蒸気又は水、の全部あるいは一部である熱源流体の保有熱を吸熱し蓄熱する。なお、熱源流体は、加熱流体、熱媒体と称する場合がある。
【0023】
制御装置50は、火力発電システム100内の各構成を制御することが可能な装置である。また、この制御装置50は、火力発電システム100の運転状態に対応させて弁14、16、27、28、29、30の開閉を制御することが可能である。すなわち、この制御装置50は、蓄熱運転、及び放熱運転のいずれかに蓄熱槽22の運転状態を制御することが可能である。
【0024】
(電力が余剰である時の運転状態)
図1を参照しつつ、電力が余剰である時の運転状態を説明する。電力が余剰である時とは、例えば電力需要の小さい夜間であり、昼間でも太陽光発電の発電量が大きい時などに余剰になる。制御装置50は、弁14、25、27、28を開き、弁18、29、30を閉じる。また、制御装置50は、蒸気タービン10と搬送機20を停止する。
【0025】
すなわち、電力が余剰である時の運転状態では、燃焼ボイラ1、弁25、蓄熱槽22、弁27、弁28、復水器35、及び復水ポンプ9を熱源流体が流れる循環流路を構成する。また、燃焼ボイラ1の一部流路は、弁14、二酸化炭素回収装置34の再生塔6、弁28、復水器35、及び復水ポンプ9を熱源流体(熱源流体)が流れる循環流路を構成する。これらの循環流路は、弁28、復水器35、復水ポンプ9、及び燃焼ボイラ1の一部の流路で合流している。このように、これらの循環流路は、流路が一部重複している。
【0026】
制御装置50は、熱源流体の熱を蓄熱槽22に蓄熱すると同時に、熱源流体からの熱を二酸化炭素回収装置34に受け渡して二酸化炭素回収装置34の熱源として利用する制御を実行する。この際に、制御装置50は、二酸化炭素回収装置34に流入する第1の熱源流体15を、燃焼ボイラ1の内部を流通する蒸気または水から抽出し、蓄熱槽22に流入する熱源流体を燃焼ボイラ1から流出した蒸気24とする制御を実行する。すなわち、この制御装置50は、蓄熱運転を実施する際に、熱源流体である蒸気24からの熱を蓄熱槽22に蓄熱させると共に、第1の熱源流体15の熱を二酸化炭素回収装置34に供給して二酸化炭素回収装置34の熱源として利用させる制御を実行させる。また、制御装置50は、蓄熱槽22の蓄熱運転を実施する際は、蓄熱槽22から流出した熱源流体を燃焼ボイラ1に流入させると共に、二酸化炭素回収装置34ら流出した熱源流体を燃焼ボイラ1に流入させる制御を実行する。
【0027】
より具体的には、燃焼ボイラ1内では、蒸気/水が加熱されて温度上昇しながら流通している。この際に、燃焼ボイラ1の途中から弁14を介して、目的とする量の蒸気/水を分流し、第1の熱源流体15として、弁14を介して二酸化炭素回収装置34に流入させる。二酸化炭素回収装置34で使用する熱源温度は、燃焼ボイラ1から流出する温度よりも低温度である。このため、燃焼ボイラ1の途中経路から弁14を介して、目的とする量の蒸気/水を第1の熱源流体15として、分流することにより、温度調整を可能としている。このように、燃焼ボイラ1の加熱流路の途中経路から弁14を介して蒸気/水を分流させることにより、目的とする温度範囲の蒸気/水を二酸化炭素回収装置34に供給可能としている。
【0028】
分流されずに燃焼ボイラ1に残った蒸気/水は、燃焼ボイラ1から流出して蒸気24として、弁25を介して蓄熱槽22に流入する。一方で、二酸化炭素回収装置34に流入した第1の熱源流体15は、二酸化炭素回収装置34の再生塔6に流入し、リボイラにおける吸収液の加熱に熱を受け渡し、温度低下する。その際、第1の熱源流体15が蒸気であれば、温度低下した蒸気は、放熱に伴い相変化して水に変化してもよい。また、再生塔6内で加熱された吸収液からは、二酸化炭素8を放出させる。二酸化炭素8を放出し元に戻った吸収液は吸収塔5へ流入する。
【0029】
蓄熱槽22に弁25を介して流入した蒸気24は、蓄熱槽22内の蓄熱材を加熱し、温度低下する。すなわち、蓄熱槽22は、熱源流体である蒸気24から熱を吸熱して蓄熱する。その際、温度低下した蒸気24は放熱に伴い相変化して水に変化してもよい。なお、本実施形態において、水、蒸気などが相変化してもよいと称する場合は、火力発電システム100の運転に支障がないことを意味する。
【0030】
また、蓄熱槽22の蓄熱材は例えば、潜熱蓄熱物質であってもよい。この場合、蒸気24の温度が高すぎても熱源温度として適切な温度で蓄熱される。
【0031】
二酸化炭素回収装置34を流出した蒸気または蒸気が変化した水と、蓄熱槽22から流出し、弁27を通過した蒸気または蒸気が変化した水とは、合流して弁28を介して、復水器35に流入する。復水器35により復水された水23は、その後、復水ポンプ9により再び燃焼ボイラ1へ搬送され、循環する。
【0032】
制御装置50は、第1の熱源流体15と蒸気24の流量比を、弁14、弁25、弁27の開度で調節することが可能である。このように、燃焼ボイラ1で加熱した蒸気/水は、二酸化炭素回収装置34では第1の熱源流体15として熱源として利用され、蓄熱槽22では蓄熱を実施している。なお、制御装置50は、蓄熱槽22が蓄熱最大量に達し、かつ二酸化炭素回収装置34への熱量をより大きくできない状態などでは、弁30を開き、蒸気タービン10を稼働させる。これにより、蒸気24は、蒸気タービン10への蒸気とそれ以外への蒸気に分岐される。この場合にも、制御装置50は、その流量比を、弁25、弁30等の開度で調節することが可能である。このように、燃焼ボイラ1から流出した蒸気24の流路は、蒸気タービン10に流入する流路と、蒸気タービン10に流入しないで蓄熱槽22または二酸化炭素回収装置34に流入する流路とに分岐可能であり、制御装置50は、電力余剰状態である時は蒸気タービン10に蒸気24を流通させない制御を実行する。
【0033】
(電力が余剰でない時の運転状態)
次に、図2を参照しつつ、電力が余剰でない時の運転状態を説明する。制御装置50は、弁18、29、30を開き、弁14、25、27、28を閉じ、蒸気タービン10と搬送機20を稼働させる。
【0034】
すなわち、電力が余剰でない時の運転状態では、燃焼ボイラ1、弁30、蒸気タービン10、復水器35、及び復水ポンプ9を熱源流体が流れる循環流路を構成する。また、二酸化炭素回収装置34の再生塔6、搬送機20、弁29、蓄熱槽22、弁16を熱源流体が流れる循環流路を構成する。すなわち、制御装置50は、蓄熱槽22の放熱運転を実施する際は、蓄熱槽22と二酸化炭素回収装置34の間で熱媒体(熱源流体)を循環させることで、蓄熱槽22から二酸化炭素回収装置34に熱を受け渡す制御を実行する。熱媒体は燃焼ボイラ1を流通する物質と同一物質であり、熱媒体の蓄熱運転時の流路と放熱運転時の流路との一部が、復水器35、復水ポンプ9、及び燃焼ボイラ1などで重複している。
【0035】
より具体的には、搬送機20により搬送された蒸気あるいは蒸気が変化した水は、弁29を介して蓄熱槽22に流入する。蓄熱槽22に流入した蒸気あるいは蒸気が変化した水は、蓄熱槽22内の蓄熱物質からの放熱により加熱され、温度上昇する。水が流入した場合、水は温度上昇し一部あるいは全部が蒸気に変化してもよい。
【0036】
蓄熱槽22を流出した蒸気/水は、熱源温度として適切な温度である第2の熱源流体16になり、弁16を介して、二酸化炭素回収装置34に流入し、熱を受け渡し、温度低下する。すなわち、
蓄熱槽22の蓄熱材に潜熱蓄熱物質を用いているので、潜熱蓄熱物質の上限温度内での第2の熱源流体16が生成される。このように、制御装置50は、電力余剰状態でない時に蓄熱槽22の放熱運転を実施し、蓄熱槽22から放熱された熱を二酸化炭素回収装置34に供給して、二酸化炭素回収装置34の熱源として利用させることが可能である。
【0037】
二酸化炭素回収装置34に流入した第1の熱源流体15は、二酸化炭素回収装置34の再生塔6に流入し、吸収液に熱を受け渡し、温度低下する。その際、第2の熱源流体16が蒸気であれば、温度低下した蒸気の一部あるいは全部は水に変化してもよい。また、再生塔6内で加熱された吸収液からは、二酸化炭素8を放出させる。二酸化炭素8を放出し元に戻った吸収液は吸収塔5へ流入する。
【0038】
二酸化炭素回収装置34を流出した第2の熱源流体16は搬送機20に流入し、循環する。制御装置50は、第2の熱源流体16の流量を、搬送機20の出力と弁29等の開度とで調節する。また、蓄熱槽22において加熱された第2の熱源流体16は、二酸化炭素回収装置34の熱源として利用されている。
【0039】
このように、電力が余剰である時も余剰でない時も、二酸化炭素回収装置34の熱源は、従来技術のような蒸気タービン10の抽気蒸気11(図13参照)ではないため、蒸気タービン10に流通する蒸気流量は減少せず、発電機40の発電量の低下が抑制される。また、電力が余剰である時に、従来外界に捨てている熱エネルギを蓄熱槽22に蓄熱することにより、有効利用を可能としている。また、蓄熱槽22の蓄熱状態を長時間保持する必要が生じる場合には、弁18、25、27、29を閉じることで、蓄熱状態を長時間保持することが可能となる。
【0040】
このように、燃焼ボイラ1から流出する蒸気、燃焼ボイラ1内部を流通する蒸気又は水、の全部あるいは一部である熱源流体の保有熱を吸熱し蓄熱する蓄熱槽22を構成し、蓄熱槽22から放熱された熱を二酸化炭素回収装置34の熱源として利用することとした。これにより、電力が余剰である時に蓄熱槽22に蓄熱し、電力が余剰でない時に蓄熱槽22から放熱された熱を二酸化炭素回収装置34の熱源として利用することが可能となる。これらから分かるように、電力が余剰である時と、電力が余剰でない時との、時間的なずれを利用して蓄熱槽22の蓄熱と放熱とを行うことが可能となり、蒸気タービン10の駆動に用いる蒸気を減少させずに、発電機40の発電が可能となる。これにより、発電機40の発電を抑制中の燃焼ボイラ1の発生エネルギを用いて、電力が余剰でない時の発電機40の発電量の低下を抑制できる。
【0041】
なお、本実施形態では、電力が余剰である時に蓄熱しているが、これに限定されない。例えば、電力が余剰でない時に蓄熱してもよい。この場合にも、火力発電システム100の運行に差し支えなく、システムに異常は発生しないものである。また、本実施形態では、電力が余剰である時も余剰でない時も放熱しているが、これに限定されない。例えば、電力が余剰である時に放熱しない、または、電力が余剰でない時に放熱しなくても、火力発電システム100の運行に差し支えなく、火力発電システム100に異常は発生しないものである。特に、本実施形態では、後述する実施形態4、5と比べて蓄熱運転時に、蓄熱槽22、及び二酸化炭素回収装置34それぞれに流入する蒸気/水の温度は近い温度になるが、流量を異ならせることが可能となる。このため、このような条件での運転状態が望まれる場合に適している。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、燃焼ボイラ1から流出する蒸気、燃焼ボイラ1内部を流通する蒸気又は水、の全部あるいは一部である熱源流体の保有熱を吸熱し蓄熱することが可能な蓄熱槽22を構成することとした。これにより、発電機40の停止中に、蓄熱槽22に熱を蓄積し、発電機40の運転中には、蓄熱槽22に蓄積された熱を用いて、二酸化炭素回収装置34の熱源とすることが可能となる。このように、燃焼ボイラ1を停止できない場合にも、余乗する燃焼ボイラ1の発生する熱を蓄熱槽22に蓄積し、発電機40の運転中の二酸化炭素回収装置34の熱源とすることが可能となる。このため、発電機40の運転中の燃焼ボイラ1の発生する熱量を二酸化炭素回収装置34の熱源とする必要がなくなり、発電機40の発電量の低下が抑制可能となる。
【0043】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る火力発電システム100aは、燃焼ボイラ1と復水ポンプ9との間の分流路から二酸化炭素回収装置34に分流する流路を構成する点で、第1実施形態に係る火力発電システム100と相違する。以下では、第1実施形態に係る火力発電システム100と相違する点を説明する。
【0044】
図3及び図4は、第2実施形態に係る火力発電システム100aの構成、及び状態例を示す図である。図3は、電力が余剰である時の運転状態を示す図である。図4は、電力余剰時でない時の運転状態を示す図である。
【0045】
(電力が余剰である時の運転状態)
図3を参照しつつ、電力が余剰である時の運転状態を説明する。制御装置50は、弁13、25、26、27、28を開き、弁29、30を閉じ、蒸気タービン10と搬送機20とは停止する。
【0046】
すなわち、電力が余剰である時の運転状態では、燃焼ボイラ1、弁25、弁26、蓄熱槽22、弁27、弁28、復水器35、及び復水ポンプ9を熱源流体が流れる循環流路を構成する。また、燃焼ボイラ1と復水ポンプ9との間の分流路は、弁13、二酸化炭素回収装置34の再生塔6、弁28、復水器35、及び復水ポンプ9を熱源流体が流れる循環流路を構成する。これらの循環流路は、弁28、復水器35、復水ポンプ9、及び燃焼ボイラ1の一部の流路で合流している。また、弁25と、弁26との間の分流路は、弁13と、二酸化炭素回収装置34の再生塔6との間の流路と連通している。このように、燃焼ボイラ1から流出した蒸気24の流路は、蒸気タービン10に流入する流路と、蒸気タービン10に流入しないで蓄熱槽22または二酸化炭素回収装置34に流入する流路とに分岐可能である。
【0047】
制御装置50は、熱源流体である蒸気24の熱を蓄熱槽22に蓄熱すると同時に、蒸気24からの熱を二酸化炭素回収装置34に受け渡して二酸化炭素回収装置34の熱源として利用する際は、蒸気24を弁25と、弁26との間の分流路で分岐し、二酸化炭素回収装置34と蓄熱槽22それぞれに流入させ、二酸化炭素回収装置34及び蓄熱槽22それぞれから流出した熱源流体を燃焼ボイラ1に流入させる制御を実行する。また、制御装置50は、蓄熱槽22の蓄熱運転時に、熱源流体である蒸気24に、燃焼ボイラ1に流入する水23から弁13を介して分岐した分岐水12を合流させた流体を、二酸化炭素回収装置34に流入させる制御を実行する。
【0048】
より詳細には、燃焼ボイラ1から流出した蒸気24は、弁25を通過して二酸化炭素回収装置34へ向かう蒸気と、弁26を通過して、蓄熱槽22へ向かう蒸気の2つに分岐する。復水ポンプ9で搬送されている水23は、燃焼ボイラ1の流入前において一部分岐し、分岐水12となる。分岐水12は弁13を通過した後、弁25を通過して二酸化炭素回収装置34へ向かう蒸気と合流し、第3の熱源流体21となり二酸化炭素回収装置34に流入する。
【0049】
制御装置50は、二酸化炭素回収装置34において使用する熱源温度は、燃焼ボイラ1から流出する蒸気24の温度では高すぎるため、分岐水12を蒸気24に混合することで、第3の熱源流体21を適切な温度とすることが可能である。制御装置50は、水23における燃焼ボイラ1への流入水と分岐水12との流量比を、弁13の開度で調節する。
【0050】
上述のように、蓄熱槽22の蓄熱材は例えば、二酸化炭素回収装置34にて使用する熱源温度として適切な温度が、相変化温度である潜熱蓄熱物質で構成可能である。この場合、蒸気24の温度が高すぎても熱源温度として適切な温度で蓄熱される。このため、第3の熱源流体21の温度がより高温である場合にも蓄熱槽22は、蓄熱することが可能である。
【0051】
燃焼ボイラ1から流出した蒸気24の残りの蒸気/水は、弁26を介して蓄熱槽22に流入する。燃焼ボイラ1で加熱した蒸気/水は、二酸化炭素回収装置34では第3の熱源流体21として熱源として利用され、蓄熱槽22では蓄熱を実施している。このように、制御装置50は、蓄熱槽22の蓄熱運転を実施する際に、熱源流体である蒸気24からの熱を蓄熱槽22に蓄熱させると共に、蒸気24からの熱を二酸化炭素回収装置34に供給して二酸化炭素回収装置34の熱源として利用させる。この場合、燃焼ボイラ1を迂回(バイパス)させた分岐水12を混合することで第3の熱源流体21を適切な温度とすることが可能である。
【0052】
(電力が余剰でない時の運転状態)
次に、図4を参照しつつ、電力が余剰でない時の運転状態を説明する。制御装置50は、弁26、29、30を開き、弁13、25、27、28を閉じ、蒸気タービン10と搬送機20を稼働させる。
【0053】
すなわち、電力が余剰でない時の運転状態では、燃焼ボイラ1、弁30、蒸気タービン10、復水器35、及び復水ポンプ9を熱源流体が流れる循環流路を構成する。また、二酸化炭素回収装置34の再生塔6、搬送機20、弁29、蓄熱槽22、弁25を熱源流体が流れる循環流路を構成する。制御装置50は、熱源流体の熱を二酸化炭素回収装置34に受け渡して利用する際は、熱源流体を二酸化炭素回収装置34に流通させ、二酸化炭素回収装置34から流出した熱源流体を、燃焼ボイラ1に流入させる制御を実行する。
【0054】
より具体的には、搬送機20により搬送された蒸気あるいは蒸気が変化した水は、弁29を介して蓄熱槽22に流入する。蓄熱槽22に流入した蒸気あるいは蒸気が変化した水は、蓄熱槽22内の蓄熱物質からの放熱により加熱され、温度上昇する。水が流入した場合、水の一部あるいは全部は蒸気に変化してもよい。蓄熱槽22を流出した蒸気は、第3の熱源流体21になり、弁25を介して、二酸化炭素回収装置34に流入し、熱を受け渡し、温度低下する。その際、蒸気の一部あるいは全部は水に変化してもよい。
【0055】
二酸化炭素回収装置34を流出した第3の熱源流体21は搬送機20に流入し循環する。制御装置50は、第3の熱源流体21の流量を、搬送機20の出力と弁29等の開度とで調節する。
【0056】
このように、蓄熱槽22にて加熱された第3の熱源流体21は、二酸化炭素回収装置34にて熱源として利用されている。これにより、本実施形態に係る火力発電システム100aも第1実施形態に係る火力発電システム100と同等の効果を得ることが可能である。
【0057】
第1実施形態に係る火力発電システム100では、蓄熱運転時において燃焼ボイラ1の途中から適切な量の蒸気/水を分流し、第1の熱源流体15として二酸化炭素回収装置34に流入させている。このため、燃焼ボイラ1を改造する必要がある上に、第1の熱源流体15(図1図2参照)の温度調節が難しくなってしまう。それに対して本実施形態に係る火力発電システム100aでは、燃焼ボイラ1は改造する必要はない上に、分岐水12を蒸気24に加えることが可能となる。これにより、温度調節がより容易となる。
【0058】
また、仮に蓄熱槽22の蓄熱状態を長時間保持す場合には、弁26、27、29を閉じる。本実施形態に係る火力発電システム100aも第1実施形態に係る火力発電システム100と同様に、蓄熱槽22、及び二酸化炭素回収装置34それぞれに流入する蒸気/水の温度は近い温度になるが、流量を異ならせることが可能となる。このため、このような条件での運転状態が望まれる場合に適している。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、燃焼ボイラ1と復水ポンプ9との間の分流路から分岐水12を二酸化炭素回収装置34に分流する流路を構成し、分岐水12を弁25と弁26との間の分岐路を流れる蒸気24に混合した第3の熱源流体21を二酸化炭素回収装置34に供給することとした。これにより、弁26を流れる蒸気24で蓄熱槽22を蓄熱すると共に、燃焼ボイラ1で加熱していない水12を弁25と弁26との間の分岐路を流れる蒸気24に混合することが可能となり、第3の熱源流体21を適切な温度とすることが可能となる。
【0060】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る火力発電システム100cは、電力が余剰でない時に蒸気タービン10から排出される熱源流体を二酸化炭素回収装置34に供給する流路を更に有する点で、第2実施形態に係る火力発電システム100bと相違する。以下では、第2実施形態に係る火力発電システム100bと相違する点を説明する。
【0061】
図5及び図6は、第3実施形態に係る火力発電システム100cの構成、及び状態例を示す図である。図5は、電力が余剰である時の運転状態を示す図である。図6は、電力余剰時でない時の運転状態を示す図である。
【0062】
(電力が余剰である時の運転状態)
図5を参照しつつ、電力が余剰である時の運転状態を説明する。制御装置50は、弁13、25、26、27、28を開き、弁17、29、30を閉じ、蒸気タービン10と搬送機20とは停止する。
【0063】
電力が余剰である時の運転状態は、第2実施形態に係る火力発電システム100bと同等である。すなわち、電力が余剰である時の運転状態では、燃焼ボイラ1、弁25、弁26、蓄熱槽22、弁27、弁28、復水器35、及び復水ポンプ9を熱流体が流れる循環流路を構成する。また、燃焼ボイラ1と復水ポンプ9との間の分流路は、弁13、二酸化炭素回収装置34の再生塔6、弁28、復水器35、及び復水ポンプ9を熱流体が流れる循環流路を構成する。これらの循環流路は、弁28、復水器35、復水ポンプ9、及び燃焼ボイラ1の一部の流路で合流している。また、弁25と、弁26との間の分流路は、弁13と、二酸化炭素回収装置34の再生塔6との間の流路と連通している。
【0064】
本実施形態に係る蓄熱槽22は、例えば岩石などの固体顕熱蓄熱材を有して、蓄熱温度が高温度である点で、第2実施形態と相違する。固体顕熱蓄熱材は、熱源温度がより高温度である場合の蓄熱も可能である。
【0065】
(電力が余剰でない時の運転状態)
次に、図6を参照しつつ、電力が余剰でない時の運転状態を説明する。制御装置50は、弁17、26、29、30を開き、弁13、25、27、28を閉じ、蒸気タービン10と搬送機20を稼働させる。
【0066】
すなわち、電力が余剰でない時の運転状態では、燃焼ボイラ1、弁30、蒸気タービン10、復水器35、及び復水ポンプ9を熱源流体が流れる循環流路を構成する。また、二酸化炭素回収装置34の再生塔6、搬送機20、弁29、蓄熱槽22、弁26を流れる流路と、二酸化炭素回収装置34の再生塔6、搬送機20、弁27を流れる流路と、が合流して、熱源流体が二酸化炭素回収装置34の再生塔6に流入する循環流路を構成する。
【0067】
制御装置50は、蓄熱槽22の放熱運転時に、蓄熱槽22へ向かう流体を分岐し、一方は蓄熱槽22を流通させ他方は蓄熱槽22をバイパスさせた後に、合流させてから、二酸化炭素回収装置34に流入させる制御を実行する。より詳細には、搬送機20により搬送された蒸気あるいは蒸気が変化した水は、弁29を通過する流体と弁17を通過する流体に分岐する。弁29を通過した流体は蓄熱槽22に流入し、蓄熱槽22内の蓄熱物質からの放熱により加熱され、温度上昇する。水が流入した場合、水の一部あるいは全部は蒸気に変化してもよい。
【0068】
弁17を通過した流体は蓄熱槽22をバイパスした後、蓄熱槽22から流出した蒸気/水に合流し、第3の熱源流体21となる。本実施形態では、熱源温度としては高すぎる温度で蓄熱されているので、蓄熱槽22をバイパスした流体と合流させることにより、第3の熱源流体21の温度を二酸化炭素回収装置34に適切な温度まで低下させている。
【0069】
制御装置50は、第3の熱源流体21の流量を、搬送機20の出力と弁29等の開度で調節し、温度は弁29と弁17の開度で調節する。蓄熱槽22において加熱された第3の熱源流体21は、二酸化炭素回収装置34において熱源として利用されている。
【0070】
このように、本実施形態に係る火力発電システム100cは、実施形態1、2に係る火力発電システム100a、100bと同と同等の効果が得られる。実施形態2に係る火力発電システム100bでは蓄熱槽22に潜熱蓄熱材を用いていたが、例えば固体顕熱蓄熱材を用いると、第3の熱源流体21の温度が高すぎて二酸化炭素回収装置34の許容範囲を超えてしまう。また、仮に実施形態2に係る火力発電システム100b(図4参照)において、弁13を経由させて、蓄熱槽22の下流流体に分岐水12を混入させれば、第3の熱源流体21の温度を下げることは可能となる。しかしながら、その場合は蒸気タービン10に流入する蒸気24の流量が減り、発電機40の発電量が減ってしまう。
【0071】
これに対して本実施形態に係る火力発電システム100cでは、電力が余剰でない時に、弁29、蓄熱槽22、弁26を経由し、熱源流体を蓄熱槽22で加熱する第1流路と、弁13を経由し、蓄熱槽22をバイパスする第2流路を有する。これにより、制御装置50は、第3の熱源流体21の流量を、搬送機20の出力と弁29等の開度で調節し、温度は弁29と弁17の開度で調節することが可能である。このため、第3の熱源流体21の温度調節、及び流量調整をより簡易且つ高精度に可能となり、蓄熱槽22に固体顕熱蓄熱材を用いても二酸化炭素回収装置34に適切な温度範囲に第3の熱源流体21の温度を調整できる。
【0072】
また、電力が余剰でない時に、弁28を介して流入する熱源流体は、蒸気タービン10の下流側から供給されるので、蒸気タービン10に流入する蒸気24の流量に影響はなく、発電機40の発電量の低下を抑制できる。
【0073】
また、蓄熱槽22の蓄熱状態を長時間保持するのならば、弁17、26、27、29を閉じて、長時間保持をすることも可能である。さらにまた、本実施形態に係る火力発電システム100bも第1、第2実施形態に係る火力発電システム100、100aと同様に、蓄熱槽22、及び二酸化炭素回収装置34それぞれに流入する蒸気/水の温度は近い温度になるが、流量を異ならせることが可能となる。このため、このような条件での運転状態が望まれる場合に適している。
【0074】
以上説明したように、本実施形態によれば、蓄熱槽22の放熱をする場合に、搬送機20から弁29、蓄熱槽22、弁26という蓄熱槽22を経由する第1流路と、搬送機20から弁17を経由して蓄熱槽22を迂回(バイパス)する第2流路と、を構成して放熱することとした。これにより、第1流路と第2流路との流量を調整することにより、二酸化炭素回収装置34に流入する熱源流体の温度調整をより高精度に行うことが可能となる。
【0075】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る火力発電システム100cは、蓄熱槽22の蓄熱をする場合に、二酸化炭素回収装置34の下流側に流れる熱源流体を用いて蓄熱する点で、第2実施形態に係る火力発電システム100aと相違する。以下では、第2実施形態に係る火力発電システム100aと相違する点を説明する。
【0076】
図7及び図8は、第4実施形態に係る火力発電システム100cの構成、及び状態例を示す図である。図7は、電力が余剰である時の運転状態を示す図である。図8は、電力余剰時でない時の運転状態を示す図である。
【0077】
(電力が余剰である時の運転状態)
図7を参照しつつ、電力が余剰である時の運転状態を説明する。制御装置50は、弁13、25、26、27、28を開き、弁29、30、31を閉じ、蒸気タービン10と搬送機20は停止する。
【0078】
すなわち、電力が余剰である時の運転状態では、燃焼ボイラ1、弁25、二酸化炭素回収装置34の再生塔6、弁26、蓄熱槽22、弁27、弁28、復水器35、及び復水ポンプ9を熱流体が流れる循環流路を構成する。また、燃焼ボイラ1と復水ポンプ9との間の分流路は、弁13を介して、弁25の下流側で合流する。
【0079】
制御装置50は、熱源流体からの熱を蓄熱槽22に蓄熱すると同時に、蓄熱槽22からの熱を二酸化炭素回収装置34に受け渡して二酸化炭素回収装置34の熱源として利用する際は、熱源流体を蓄熱槽22に流入させ、蓄熱槽22から流出した熱源流体を二酸化炭素回収装置34に流入させ、二酸化炭素回収装置34から流出した熱源流体を燃焼ボイラ1に流入させる制御を実行する。より具体的には、燃焼ボイラ1から流出した蒸気24は、弁25を通過する。復水ポンプ9で搬送されている水23は、燃焼ボイラ1に流入前で一部分岐し、分岐水12となる。分岐水12は弁13を通過した後、弁25を通過して二酸化炭素回収装置34へ向かう蒸気24と合流し、第3の熱源流体21となり二酸化炭素回収装置34に流入する。
【0080】
二酸化炭素回収装置34において使用する熱源温度は、燃焼ボイラ1から流出する温度では高すぎるため、分岐水12を混合することにより、第3の熱源流体21を適切な温度とすることが可能となる。制御装置50は、水23における燃焼ボイラ1への流入水と分岐水12との流量比を、弁13の開度で調節する。
【0081】
第3の熱源流体21は、二酸化炭素回収装置34に熱を受け渡し、温度低下する。二酸化炭素回収装置34を流出した蒸気は蓄熱槽22に流入する。蓄熱槽22に流入した蒸気は、蓄熱槽22内の蓄熱物質を加熱し、温度低下する。その際、蒸気の一部あるいは全部は水に変化してもよい。このように、蓄熱槽22には二酸化炭素回収装置34を経由した第3の熱源流体21が流入する。上述のように、第3の熱源流体21は、二酸化炭素回収装置34に対して既に適切な温度に調節されているので、蓄熱材が潜熱蓄熱材又は固体顕熱蓄熱材であっても、蓄熱材に対して蓄熱温度が高すぎる状態は抑制される。
【0082】
蓄熱槽22を流出した蒸気または蒸気が変化した水は復水器35に流入し、その後、復水ポンプ9により燃焼ボイラ1へ搬送され循環する。蒸気24は、二酸化炭素回収装置34では第3の熱源流体21として、熱源として利用された後、蓄熱槽22では蓄熱を実施している。後の運転状態は第1乃至第3実施形態に係る火力発電システム100、100a、100bと同等である。
【0083】
また、制御装置50は、蓄熱槽22が蓄熱最大量に達し、かつ二酸化炭素回収装置34への熱量をより大きくできない状態などでは、弁30を開き、蒸気タービン10を稼働させることが可能である。燃焼ボイラ1からの蒸気24を、蒸気タービン10への蒸気とそれ以外への蒸気に分岐することになるが、制御装置50は、その流量比を、弁25等の開度で調節する。
【0084】
(電力が余剰でない時の運転状態)
次に、図8を参照しつつ、電力が余剰でない時の運転状態を説明する。制御装置50は、弁13、25、26、28を閉じ、蒸気タービン10と搬送機20を稼働させる。
【0085】
すなわち、電力が余剰でない時の運転状態では、燃焼ボイラ1、弁30、蒸気タービン10、復水器35、及び復水ポンプ9を熱源流体が流れる循環流路を構成する。また、二酸化炭素回収装置34の再生塔6、弁31、搬送機20、弁27、蓄熱槽22、弁29を流れる循環流路を構成する。
【0086】
より具体的には、搬送機20により搬送された蒸気あるいは蒸気が変化した水は、蓄熱槽22に流入する。蓄熱槽22に流入した蒸気あるいは蒸気が変化した水は、蓄熱槽22内の蓄熱物質からの放熱により加熱され、温度上昇する。水を流入された場合、水の一部あるいは全部は蒸気に変化してもよい。上述のように、蓄熱槽22内の蓄熱材は、蓄熱材に対して蓄熱温度が高すぎる状態を避けて、蓄熱されている。このため、蓄熱槽22内の蓄熱材が潜熱蓄熱材又は固体顕熱蓄熱材であっても、蓄熱温度が高すぎるということはないので、第3実施形態に係る火力発電システム100b(図6参照)のような温度調節は不要となる。
【0087】
蓄熱槽22を流出した蒸気は第3の熱源流体21となり、二酸化炭素回収装置34に流入し、熱を受け渡し、温度低下する。その際、蒸気の一部あるいは全部は水に変化してもよい。第3の熱源流体21は、弁31を介して搬送機20に流入し、循環する。制御装置50は、第3の熱源流体21の流量を、搬送機20の出力と弁27等の開度で調節することが可能である。第3の熱源流体21は、二酸化炭素回収装置34では熱源として利用されている。また、蓄熱槽22の蓄熱状態を長時間保持するのならば、弁26、27、29を閉じて保持可能である。このように、第1、第2実施形態に係る火力発電システム100、100aと同等の効果を得ることが可能である。また、第4実施形態に係る火力発電システム100cは、第1乃至第3、及び後述する第5実施形態に係る火力発電システム100、100a、100b、100dと比べて、蓄熱槽22、二酸化炭素回収装置34それぞれに流入する蒸気/水の流量は同じだが、二酸化炭素回収装置34への流入温度は蓄熱槽22への流入温度より高いので、そのような条件が望まれる場合に適している。
【0088】
以上説明したように、本実施形態によれば、二酸化炭素回収装置34の流入前に温度調整が済んだ熱源流体を用いて蓄熱槽22の蓄熱をすることとした。これにより、二酸化炭素回収装置34の流入前に温度調整が済んだ熱源流体が蓄熱槽22に流入するので、蓄熱槽22内の蓄熱材に対して蓄熱温度が高すぎる状態を避けて、蓄熱が可能となる。このため、蓄熱槽22の放熱により、熱源流体を加熱する場合に、蓄熱槽22内の蓄熱材が潜熱蓄熱材又は固体顕熱蓄熱材であっても、蓄熱温度が高すぎるということはないので、蓄熱槽22を流出した熱源流体に対する温度調整を不要にすることが可能となる。
【0089】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る火力発電システム100dは、蓄熱槽22の蓄熱をする場合に、温度調整をした後に蓄熱槽22を流れた熱源流体を全て二酸化炭素回収装置34に流入させる点で、第2実施形態に係る火力発電システム100aと相違する。以下では、第2実施形態に係る火力発電システム100aと相違する点を説明する。
【0090】
図9及び図10は、第5実施形態に係る火力発電システム100cの構成、及び状態例を示す図である。図9は、電力が余剰である時の運転状態を示す図である。図10は、電力余剰時でない時の運転状態を示す図である。
【0091】
(電力が余剰である時の運転状態)
図9を参照しつつ、電力が余剰である時の運転状態を説明する。制御装置50は、弁13、25、27、29を開き、弁26、28、30を閉じ、蒸気タービン10と搬送機20は停止する。
【0092】
すなわち、電力が余剰である時の運転状態では、燃焼ボイラ1、弁25、蓄熱槽22、弁27、二酸化炭素回収装置34の再生塔6、弁29、復水器35、及び復水ポンプ9を熱流体が流れる循環流路を構成する。また、燃焼ボイラ1と復水ポンプ9との間の分流路は、弁13を介して、弁25の下流側で合流する。
【0093】
制御装置50は、蓄熱槽22の蓄熱運転時に、熱源流体である蒸気24に、燃焼ボイラ1に流入する水23から分岐した分岐水12を合流させた流体を、蓄熱槽22に流入させ、蓄熱槽22を通過した第3の熱源流体21により二酸化炭素回収装置34を加熱する制御を実行する。より詳細には、燃焼ボイラ1から流出した蒸気24は、弁25を通過する。復水ポンプ9で搬送されている水23は、燃焼ボイラ1に流入前において一部分岐し、分岐水12となる。分岐水12は弁13を通過した後、弁25を通過して蓄熱槽22へ向かう蒸気24と合流し、蓄熱槽22に流入する。蓄熱槽22で蓄熱した熱は、放熱運転時に二酸化炭素回収装置34にて使用するのだが、熱源温度は、燃焼ボイラ1から流出する温度では高すぎてしまう。このため、制御装置50は、分岐水12を混合することにより、蓄熱温度が高すぎないように制御する。
【0094】
また、制御装置50は、水23における燃焼ボイラ1への流入水と分岐水12との流量比を、弁13の開度で調節する。蓄熱槽22に流入した蒸気は、蓄熱槽22内の蓄熱物質を加熱し、温度低下する。その際、蒸気の一部あるいは全部は水に変化してもよい。蓄熱槽22を流出した蒸気/水は第3の熱源流体21として二酸化炭素回収装置34に流入する。第3の熱源流体21は、二酸化炭素回収装置34に熱を受け渡し、温度低下する。その際、蒸気の状態であれば一部あるいは全部は水に変化してもよい。二酸化炭素回収装置34において使用する熱源温度は、燃焼ボイラ1から流出する温度では高すぎるが、蓄熱槽22より上流側で分岐水12を混合することにより調節されている。このため、第3の熱源流体21は、二酸化炭素回収装置34に対しても適切な温度となっている。二酸化炭素回収装置34を通過した第3の熱源流体21は復水器35に流入し、その後、復水ポンプ9により燃焼ボイラ1へ搬送され循環する。蒸気24は、蓄熱槽22では蓄熱を実施した後、二酸化炭素回収装置34では第3の熱源流体21という熱源として利用されている。他の運転状態は第1乃至第4実施形態に係る火力発電システム100~100cと同等である。
【0095】
また、制御装置50は、蓄熱槽22が蓄熱最大量に達し、かつ二酸化炭素回収装置34への熱量をより大きくできない状態などでは、弁30を開き、蒸気タービン10を稼働させることが可能である。燃焼ボイラ1からの蒸気を、蒸気タービン10への蒸気とそれ以外への蒸気に分岐することになるが、制御装置50は、その流量比を、弁25等の開度で調節する。
【0096】
(電力が余剰でない時の運転状態)
次に、図10を参照しつつ、電力が余剰でない時の運転状態を説明する。制御装置50は、弁25、27、29、30を開き、弁13、25、29を閉じ、蒸気タービン10と搬送機20を稼働させる。
【0097】
すなわち、電力が余剰でない時の運転状態では、燃焼ボイラ1、弁30、蒸気タービン10、復水器35、及び復水ポンプ9を熱源流体が流れる循環流路を構成する。また、二酸化炭素回収装置34の再生塔6、弁28、搬送機20、弁26、蓄熱槽22、弁27を流れる循環流路を構成する。
【0098】
より具体的には、搬送機20により搬送された蒸気あるいは蒸気が変化した水は、弁26を介して蓄熱槽22に流入する。蓄熱槽22に流入した蒸気あるいは蒸気が変化した水は、蓄熱槽22内の蓄熱物質からの放熱により加熱され、温度上昇する。水を流入された場合、水の一部あるいは全部は蒸気に変化してもよい。
【0099】
上述のように、蓄熱槽22内の蓄熱物質は、蓄熱時に、分岐水12を混合することにより、蓄熱材に対して蓄熱温度が高すぎる状態を避けて、蓄熱されている。このため、蓄熱槽22内の蓄熱材が潜熱蓄熱材又は固体顕熱蓄熱材であっても、蓄熱温度が高すぎるということはないので、第3実施形態に係る火力発電システム100b(図6参照)のような温度調節は不要となる。
【0100】
蓄熱槽22を流出した蒸気は第3の熱源流体21となり、二酸化炭素回収装置34に流入し、熱を受け渡し、温度低下する。その際、蒸気の一部あるいは全部は水に変化してもよい。第3の熱源流体21は搬送機20に流入し循環する。制御装置50は、第3の熱源流体21の流量を、搬送機20の出力と弁26等の開度で調節する。第3の熱源流体21は、二酸化炭素回収装置34では熱源として利用されている。また、制御装置50は、蓄熱槽22の蓄熱状態を長時間保持する場合に、弁25、26、27を閉じて、保持させることが可能である。このように、第1、2、4実施形態に係る火力発電システム100、100a、100cと同等の効果を得ることが可能である。また、第5実施形態に係る火力発電システム100dは、第1乃至第4実施形態に係る火力発電システム100、100a、100b、100cと比べて、蓄熱槽22、二酸化炭素回収装置34それぞれに流入する蒸気/水の流量は同じだが蓄熱槽22への流入温度は二酸化炭素回収装置34への流入温度より高いので、そのような条件が望まれる場合に適している。
【0101】
以上説明したように、蓄熱槽22の蓄熱をする場合に、燃焼ボイラ1で加熱した水23を蓄熱槽22に供給する流路と、燃焼ボイラ1をバイパスした水23を蓄熱槽22に供給する流路とを構成し、蓄熱槽22の蓄熱に用いる熱源流体の温度を調整することとした。これにより、蓄熱槽22を経由する熱源流体を二酸化炭素回収装置34に流入させる場合にも、熱源流体の温度調整が既にされているので、熱源流体の二酸化炭素回収装置34用の温度調整が不要となる。また、熱源流体の温度を調整して蓄熱槽22の蓄熱を行っているので、蓄熱槽22での放熱により熱源流体を加熱し、二酸化炭素回収装置34に流入させる場合にも、熱源流体の二酸化炭素回収装置34用の温度調整が不要となる。
【0102】
(第6実施形態)
【0103】
第6実施形態に係る火力発電システム100eは、蓄熱槽22の蓄熱をする場合の流路と、蓄熱槽22を放熱する場合の流路と、を分離して構成する、第1乃至第5実施形態に係る火力発電システム100~100dと相違する。以下では、第1乃至第5実施形態に係る火力発電システム100~100dと相違する点を説明する。
【0104】
図11及び図12は、第6実施形態に係る火力発電システム100eの構成、及び状態例を示す図である。図11は、電力が余剰である時の運転状態を示す図である。図12は、電力余剰時でない時の運転状態を示す図である。二酸化炭素回収装置34の再生塔6は、蓄熱槽22の加熱時用の第1流路と、蓄熱槽22の放熱時用の第2流路とを分離して有している。同様に、蓄熱槽22は、加熱時用の第1流路と、放熱時用の第2流路とを分離して有している。
【0105】
(電力が余剰である時の運転状態)
図9を参照しつつ、電力が余剰である時の運転状態を説明する。制御装置50は、弁13、19、25、26、27、28を開き、弁30、31、32を閉じ、蒸気タービン10と搬送機20は停止する。
【0106】
すなわち、電力が余剰である時の運転状態では、燃焼ボイラ1、弁25、二酸化炭素回収装置34の再生塔6の第1流路、弁19、蓄熱槽22の第1流路、弁27、弁28、復水器35、及び復水ポンプ9を熱源流体が流れる第1循環流路を構成する。また、燃焼ボイラ1と復水ポンプ9との間の分流路は、弁13を介して、弁25の下流側で合流する。
【0107】
より詳細には、燃焼ボイラ1から流出した蒸気24は、弁25を通過する。復水ポンプ9で搬送されている水23は、燃焼ボイラ1に流入前にて一部分岐し、分岐水12となる。分岐水12は弁13を通過した後、弁25を通過して二酸化炭素回収装置34へ向かう蒸気24と合流し、第3の熱源流体21となり二酸化炭素回収装置34の第1流路に流入する。
【0108】
制御装置50は、二酸化炭素回収装置34の第1流路にて使用する熱源温度は、燃焼ボイラ1から流出する温度では高すぎるため、分岐水12を混合することにより、第3の熱源流体21を適切な温度に調整する。この制御装置50は、水23における燃焼ボイラ1への流入水と分岐水12との流量比を、弁13の開度で調節することが可能である。
【0109】
第3の熱源流体21は、二酸化炭素回収装置34に熱を受け渡し、温度低下する。二酸化炭
素回収装置34の第1流路を流出した蒸気は、弁19を介して蓄熱槽22の第1流路に流入する。蓄熱槽22の第1流路に流入した蒸気は、蓄熱槽22内の蓄熱物質を加熱し、温度低下する。その際、蒸気の一部あるいは全部は水に変化してもよい。これにより蓄熱槽22に蓄熱されるが、第3の熱源流体21は、二酸化炭素回収装置34に適切な温度に調節されているので、蓄熱材が潜熱蓄熱材又は固体顕熱蓄熱材であっても、蓄熱温度が高すぎないように制御される。
【0110】
蓄熱槽22の第1流路を流出した蒸気または蒸気が変化した水は復水器35に流入し、その後、復水ポンプ9により燃焼ボイラ1へ搬送され循環する。蒸気24は、二酸化炭素回収装置34では第3の熱源流体21という熱源として利用された後、蓄熱槽22では蓄熱を実施している。他の運転状態は、第1乃至3に係る火力発電システム100、100a、100bと同等である。
【0111】
また、制御装置50は、蓄熱槽22が蓄熱最大量に達し、かつ二酸化炭素回収装置34への熱量をより大きくできない状態などでは、弁30を開き、蒸気タービン10を稼働させることが可能である。燃焼ボイラ1からの蒸気24を、蒸気タービン10への蒸気とそれ以外への蒸気に分岐することになるが、制御装置50は、その流量比を、弁25等の開度で調節する。
【0112】
(電力が余剰でない時の運転状態)
次に、図11を参照しつつ、電力が余剰でない時の運転状態を説明する。制御装置50は、弁30、31、32を開き、弁13、19、25、27、28を閉じ、蒸気タービン10と搬送機20を稼働させる。
【0113】
すなわち、電力が余剰でない時の運転状態では、燃焼ボイラ1、弁30、蒸気タービン10、復水器35、及び復水ポンプ9を熱源流体が流れる循環流路を構成する。また、二酸化炭素回収装置34の再生塔6の第2流路、搬送機20、弁31、蓄熱槽22の第2流路、弁32を流れる第2循環流路を構成する。
【0114】
より具体的には、搬送機20により熱媒体33が弁31を介して蓄熱槽22の第2流路に流入する。蓄熱槽22の第2流路に流入した熱媒体33は、蓄熱槽22内の蓄熱物質からの放熱により加熱され、温度上昇する。熱媒体33は気体でも液体でもよく、液体であれば気体へ相変化してもよい。
【0115】
上述のように、蓄熱槽22内の蓄熱物質は、二酸化炭素回収装置34へ流入する前に分岐水12を混合することにより、蓄熱温度が高すぎる状態を避けて、蓄熱されている。このため、蓄熱槽22内の蓄熱材が潜熱蓄熱材又は固体顕熱蓄熱材であっても、蓄熱温度が高すぎるということはないので、第3実施形態に係る火力発電システム100b(図6参照)のような温度調節は不要となる。
【0116】
蓄熱槽22の第2流路を流出した熱媒体33は二酸化炭素回収装置34の第2流路に流入し、熱を受け渡し、温度低下する。熱媒体33は気体であれば液体へ相変化してもよい。二酸化炭素回収装置34の第2流路を流出した熱媒体33は搬送機20に流入し循環する。制御装置50は、熱媒体33の流量を、搬送機20の出力と弁31等の開度とで調節する。蓄熱槽22において加熱された熱媒体33は、二酸化炭素回収装置34では熱源として利用される。また、制御装置50は、蓄熱槽22の蓄熱状態を長時間保持する場合に、弁19、27、31、32を閉じて、保存させることが可能である。このように、第1、2、4実施形態に係る火力発電システム100、100a、100cと同等の効果を得ることが可能である。
【0117】
以上説明したように、本実施形態によれば、二酸化炭素回収装置34、及び蓄熱槽22内に加熱時用の第1流路と、放熱時用の第2流路とを分離して構成することとした。これにより、蓄熱槽22の蓄熱時の第1循環流路と、蓄熱槽22の放熱時の第2循環流路と、を分離して構成できる。このため、放熱運転時に蓄熱槽22から二酸化炭素回収装置34へ熱を搬送する熱媒体を、蒸気タービン10の作動流体と異なる物質にすることができる。これにより、二酸化炭素回収装置34での伝熱、蓄熱槽22での伝熱、搬送条件により、熱媒体としてより適している物質を用いることができる。
(第7実施形態)
【0118】
第7実施形態に係る火力発電システムは、第1乃至第6実施形態に係る制御装置50において、電力が余剰である時に、電力余剰状態でない時と比べて、燃焼ボイラ1をより低負荷で運転させる。これにより、燃焼排ガス4の流量をより抑制できると共に、余剰電力の増加を抑制できる。特に、本実施形態に係る制御装置50は、電力が余剰である時に、燃焼ボイラ1を最低負荷運転させることが可能である。これにより制御装置50は、燃焼排ガス4の流量を最小に制御することが可能となり、二酸化炭素回収装置34の負荷を最小にすることができる。また、発電機40の発電量が最小になり、余剰電力の増加を更に抑制できる。
【符号の説明】
【0119】
1:燃焼ボイラ、2:燃料、3:燃焼用空気、4:燃焼排ガス、5:吸収塔、6:再生塔、7:吸収液内の二酸化炭素、8:二酸化炭素、9:復水ポンプ、10:蒸気タービン、11:抽気蒸気、12:分岐水、13:弁、14:弁、15:第1の熱源流体、16:第2の熱源流体、17:弁、18:弁、19:弁、20:搬送機、21:第3の熱源流体、22:蓄熱槽、23:水、24:蒸気、25、弁、26:弁、27:弁、28:弁、29:弁、30:弁、31:弁、32:弁、33:熱媒体、34:二酸化炭素回収装置、35:復水器、40:発電機、50:制御装置、100~100e:火力発電システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13