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特開2024-116867端末装置、基地局装置、無線通信システム及び無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116867
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】端末装置、基地局装置、無線通信システム及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/40 20090101AFI20240821BHJP
   H04W 52/18 20090101ALI20240821BHJP
【FI】
H04W52/40
H04W52/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022697
(22)【出願日】2023-02-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度総務省、「日米産学連携を通じた5G高度化の国際標準獲得のための無線リンク技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】神渡 俊介
(72)【発明者】
【氏名】大関 武雄
(72)【発明者】
【氏名】菅野 一生
(72)【発明者】
【氏名】天野 良晃
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067DD11
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE24
5K067HH22
5K067HH23
(57)【要約】
【課題】TDD方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する端末において例えばSRS等の上り方向の無線信号の送信電力を端末と基地局間のパスロスに基づいて制御することを図る。
【解決手段】端末装置は、TDD方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する無線送受信部と、自己の端末装置と前記複数の基地局各々との間のパスロスを加重平均した加重平均値を用いて、前記複数の基地局に対して、上り方向の無線信号の送信電力を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDD(Time Division Duplex)方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する無線送受信部と、
自己の端末装置と前記複数の基地局各々との間のパスロスを加重平均した加重平均値を用いて、前記複数の基地局に対して、上り方向の無線信号の送信電力を制御する制御部と、
を備える端末装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記パスロスの加重平均に用いるウェイトを、自己の端末装置が接続する基地局から受信する、
請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の基地局各々との間のパスロスの測定値に基づいて前記パスロスの加重平均に用いるウェイトを決定し、決定したウェイトを自己の端末装置が接続する基地局へ送信する、
請求項1に記載の端末装置。
【請求項4】
前記上り方向の無線信号は、SRS(Sounding Reference Signal)である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項5】
前記上り方向の無線信号は、PUSCH(Physical Uplink Shared Channel)信号である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項6】
前記上り方向の無線信号は、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)信号である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の端末装置。
【請求項7】
TDD(Time Division Duplex)方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する端末との間で無線信号を送受する無線送受信部と、
前記端末が上り方向の無線信号の送信電力を制御する際に用いるパスロスを算出する加重平均に用いられるウェイトを前記端末へ送信する制御部と、を備え、
前記ウェイトは、前記複数の基地局のうち少なくとも一つの基地局における前記端末からの無線信号の受信状況に基づいて決定された、
基地局装置。
【請求項8】
TDD(Time Division Duplex)方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する端末との間で無線信号を送受する無線送受信部と、
前記端末が上り方向の無線信号の送信電力を制御する際に用いるパスロスを算出する加重平均に用いられるウェイトを前記端末から受信する制御部と、を備え、
前記ウェイトは、前記端末における前記複数の基地局各々との間のパスロスの測定値に基づいて決定された、
基地局装置。
【請求項9】
前記上り方向の無線信号は、SRS(Sounding Reference Signal)である、
請求項7又は8のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項10】
前記上り方向の無線信号は、PUSCH(Physical Uplink Shared Channel)信号である、
請求項7又は8のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項11】
前記上り方向の無線信号は、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)信号である、
請求項7又は8のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項12】
TDD(Time Division Duplex)方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する端末と、
前記複数の基地局と、を備え、
前記端末は、自己と前記複数の基地局各々との間のパスロスを加重平均した加重平均値を用いて、前記複数の基地局に対して、上り方向の無線信号の送信電力を制御する、
無線通信システム。
【請求項13】
TDD(Time Division Duplex)方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する端末と、前記複数の基地局とを備える無線通信システムの無線通信方法であって、
前記端末が、自己と前記複数の基地局各々との間のパスロスを加重平均した加重平均値を用いて、前記複数の基地局に対して、上り方向の無線信号の送信電力を制御する、
無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置、基地局装置、無線通信システム及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3GPP(3rd Generation Partnership Project)の標準規格に準拠する無線通信システムにおいて、上り方向(端末から基地局へ向う方向)の無線信号であるSRS(Sounding Reference Signal)と呼ばれる参照信号が利用されている。このSRSの送信電力制御式が非特許文献1に規定されている。非特許文献1に規定されたSRSの送信電力制御式では、端末と基地局間のパスロスが用いられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP, TS38.213, V17.4.0, 2022.12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、TDD(Time Division Duplex、時分割複信)方式のCJT(Coherent joint transmission)においてSRSを利用する場合におけるSRSの送信電力制御方法が検討されている。TDD方式のCJTでは、UE(User Equipment)が複数の送受信点(Multi-TRP)との間で通信を行うが、UEが送信するSRSを複数の送受信点で受信する際に各送受信点とUE間のパスロスが異なる。このため、UEがSRSの送信電力を制御する際に、非特許文献1に規定されたSRSの送信電力制御式において端末と基地局間のパスロスをどのように決定するのかが課題であった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、TDD方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する端末において例えばSRS等の上り方向の無線信号の送信電力を端末と基地局間のパスロスに基づいて制御することを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、TDD(Time Division Duplex)方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する無線送受信部と、自己の端末装置と前記複数の基地局各々との間のパスロスを加重平均した加重平均値を用いて、前記複数の基地局に対して、上り方向の無線信号の送信電力を制御する制御部と、を備える端末装置である。
本発明の一態様は、上記の端末装置において、前記制御部は、前記パスロスの加重平均に用いるウェイトを、自己の端末装置が接続する基地局から受信する、端末装置である。
本発明の一態様は、上記の端末装置において、前記制御部は、前記複数の基地局各々との間のパスロスの測定値に基づいて前記パスロスの加重平均に用いるウェイトを決定し、決定したウェイトを自己の端末装置が接続する基地局へ送信する、端末装置である。
本発明の一態様は、上記の端末装置において、前記上り方向の無線信号は、SRS(Sounding Reference Signal)である、端末装置である。
本発明の一態様は、上記の端末装置において、前記上り方向の無線信号は、PUSCH(Physical Uplink Shared Channel)信号である、端末装置である。
本発明の一態様は、上記の端末装置において、前記上り方向の無線信号は、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)信号である、端末装置である。
【0007】
本発明の一態様は、TDD(Time Division Duplex)方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する端末との間で無線信号を送受する無線送受信部と、前記端末が上り方向の無線信号の送信電力を制御する際に用いるパスロスを算出する加重平均に用いられるウェイトを前記端末へ送信する制御部と、を備え、前記ウェイトは、前記複数の基地局のうち少なくとも一つの基地局における前記端末からの無線信号の受信状況に基づいて決定された、基地局装置である。
本発明の一態様は、TDD(Time Division Duplex)方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する端末との間で無線信号を送受する無線送受信部と、前記端末が上り方向の無線信号の送信電力を制御する際に用いるパスロスを算出する加重平均に用いられるウェイトを前記端末から受信する制御部と、を備え、前記ウェイトは、前記端末における前記複数の基地局各々との間のパスロスの測定値に基づいて決定された、基地局装置である。
本発明の一態様は、上記の基地局装置において、前記上り方向の無線信号は、SRS(Sounding Reference Signal)である、基地局装置である。
本発明の一態様は、上記の基地局装置において、前記上り方向の無線信号は、PUSCH(Physical Uplink Shared Channel)信号である、基地局装置である。
本発明の一態様は、上記の基地局装置において、前記上り方向の無線信号は、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)信号である、基地局装置である。
【0008】
本発明の一態様は、TDD(Time Division Duplex)方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する端末と、前記複数の基地局と、を備え、前記端末は、自己と前記複数の基地局各々との間のパスロスを加重平均した加重平均値を用いて、前記複数の基地局に対して、上り方向の無線信号の送信電力を制御する、無線通信システムである。
【0009】
本発明の一態様は、TDD(Time Division Duplex)方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する端末と、前記複数の基地局とを備える無線通信システムの無線通信方法であって、前記端末が、自己と前記複数の基地局各々との間のパスロスを加重平均した加重平均値を用いて、前記複数の基地局に対して、上り方向の無線信号の送信電力を制御する、無線通信方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、TDD方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する端末において例えばSRS等の上り方向の無線信号の送信電力を端末と基地局間のパスロスに基づいて制御することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る無線通信システムにおけるパスロスを説明するための図である。
図3】一実施形態に係るパスロス算出方法を説明するための図である。
図4】一実施形態に係る無線通信方法の手順の一例を示すシーケンス図である。
図5】一実施形態に係るパスロス算出方法を説明するための図である。
図6】一実施形態に係る無線通信方法の手順の一例を示すシーケンス図である。
図7】一実施形態に係るパスロス算出方法を説明するための図である。
図8】一実施形態に係る無線通信方法の手順の一例を示すシーケンス図である。
図9】一実施形態に係るパスロス算出方法を説明するための図である。
図10】一実施形態に係る無線通信方法の手順の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示すブロック図である。図1に示される無線通信システムは、TDD(Time Division Duplex)方式により複数の基地局装置との間で無線信号を送受する端末装置UEと、複数の基地局装置BSと、を備える。図1の例では、本実施形態の一例として、2台の基地局装置BS(TRP#1,TRP#2)を備えるが、3台以上の基地局装置BS(TRP#1,TRP#2,TRP#3,・・・)を備えてもよい。
【0013】
図1の無線通信システムでは、TDD方式のCJT(Coherent joint transmission)が行われる。端末装置UEは、TDD方式のCJTとして、複数の送受信点(Multi-TRP)である2台の基地局装置BS(TRP#1,TRP#2)との間で通信を行う。
【0014】
端末装置UEは、アンテナ10と、無線送受信部11と、制御部12とを備える。無線送受信部11は、アンテナ10を介して無線信号を送受する。無線送受信部11は、TDD方式により2台の基地局装置BS(TRP#1,TRP#2)との間で無線信号を送受する。制御部12は、端末装置UEの制御を行う。制御部12は、自己の端末装置UEと2台の基地局装置BS(TRP#1,TRP#2)各々との間のパスロスを加重平均した加重平均値を用いて、2台の基地局装置BS(TRP#1,TRP#2)に対して、上り方向の無線信号の送信電力を制御する。当該上り方向の無線信号は、例えば、SRS(Sounding Reference Signal)である。当該上り方向の無線信号は、例えば、PUSCH(Physical Uplink Shared Channel)信号である。当該上り方向の無線信号は、例えば、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)信号である。
【0015】
端末装置UEの機能は、端末装置UEがCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、端末装置UEとして、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。また、端末装置UEとして、スマートフォン等の携帯通信端末装置、タブレット型のコンピュータ装置(タブレットPC)などを利用してもよい。
【0016】
基地局装置BSは、アンテナ20と、無線送受信部21と、制御部22とを備える。無線送受信部21は、アンテナ20を介して無線信号を送受する。無線送受信部21は、TDD方式により端末装置UEとの間で無線信号を送受する。制御部22は、基地局装置BSの制御を行う。2台の基地局装置BS(TRP#1,TRP#2)のうち端末装置UEと接続する基地局装置BS(Serving cell)の制御部22は、端末装置UEが上り方向の無線信号の送信電力を制御する際に用いるパスロスを算出する加重平均に用いられるウェイトを当該端末装置UEへ送信する。当該ウェイトは、2台の基地局装置BS(TRP#1,TRP#2)のうち少なくとも一つの基地局装置BSにおける端末装置UEからの無線信号の受信状況に基づいて決定されたウェイトである。
【0017】
基地局装置BSの機能は、基地局装置BSがCPU及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、基地局装置BSとして、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。
【0018】
以下、下付き文字の例えば「a」を「_a」と表記する場合がある。
【0019】
図2は、図1の無線通信システムにおけるパスロスを説明するための図である。図2(1)の状況では、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#1)との間のパスロスPL_1と、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#2)との間のパスロスPL_2とに対して、遮蔽物の影響がない。一方、端末装置UEが移動した図2(2)の状況では、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#1)との間のパスロスPL_1’には遮蔽物の影響がないが、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#2)との間のパスロスPL_2’については遮蔽物の影響でパスロスが急激に変動している。このため、本実施形態では、パスロスPL_2’の変動をSRS等の送信電力制御に反映させるために、端末装置UEが上り方向の無線信号の送信電力を制御する際に用いるパスロスPLをパスロスPL_1’とパスロスPL_2’の加重平均により算出し、その加重平均に用いられるウェイトを、パスロスPL_1’よりもパスロスPL_2’に大きな重み付けを行う。具体的には、次式(1)及び式(2)によりパスロスPLを算出する。
【0020】
【数1】
【0021】
【数2】
【0022】
式(1)は、パスロスPL_1’とパスロスPL_2’との加重平均によりパスロスPLを算出する算出式である。式(2)は、式(1)の加重平均に用いられるパスロスPL_1’のウェイトW_1’とパスロスPL_2’のウェイトW_2’の各算出式である。パスロスPL_1,PL_2は、パスロスPL_1’,PL_2’よりも時間的に前の時点でのパスロスである。
なお、本実施形態ではウェイト算出方法の一例として上記(2)式を用いるが、これに限定されず、任意のウェイト算出方法が適用可能である。
【0023】
次に本実施形態に係る実施例を以下に説明する。
【0024】
[実施例1]
図3及び図4を参照して本実施形態に係る実施例1を説明する。実施例1は、SRSの送信電力制御に関する実施例である。なお、図3及び図4に示されるウェイトの値は、説明のための一例である。
【0025】
図3は、本実施形態に係る実施例1におけるパスロス算出方法を説明するための図である。
図3(1)の状況では、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#1)との間のパスロスPL_1と、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#2)との間のパスロスPL_2とに対して、遮蔽物の影響がない。端末装置UEの制御部12は、パスロスPL_1のウェイトW_1とパスロスPL_2のウェイトW_2ともに同じ値「0.5」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。
【0026】
一方、端末装置UEが移動した図3(2)の状況では、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#1)との間のパスロスPL_1’には遮蔽物の影響がないが、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#2)との間のパスロスPL_2’については遮蔽物の影響でパスロスが急激に変動している。このため、本実施形態では、パスロスPL_2’の変動をSRSの送信電力制御に反映させるために、端末装置UEがSRSの送信電力を制御する際に用いるパスロスPLをパスロスPL_1’とパスロスPL_2’の加重平均により算出し、その加重平均に用いられるウェイトを、パスロスPL_1’よりもパスロスPL_2’に大きな重み付けを行う。例えば「Coordinated cell」の基地局装置BS(TRP#2)の制御部22は、上記(2)式のウェイト算出式により、パスロスPL_1’のウェイトW_1’とパスロスPL_2’のウェイトW_2’とを算出する。当該制御部22は、算出したウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)を介して端末装置UEへ通知する(ウェイト変更指示)。端末装置UEの制御部12は、ウェイト変更指示によるウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。
【0027】
図4は、本実施形態に係る実施例1における無線通信方法の手順の一例を示すシーケンス図である。図4を参照して本実施形態に係る実施例1における無線通信方法を説明する。
【0028】
(ステップS101) 「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、端末装置UEに対して、「UE capability」の要求を行う。
【0029】
(ステップS102) 端末装置UEの制御部12は、「UE capability」の要求に応じて、基地局装置BS(TRP#1)に対して、「UE capability」情報を応答する。
【0030】
(ステップS103) 基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、端末装置UEに対して、「RRCシグナリング」を行う。ここでは、「RRCシグナリング」において、「SRSコンフィグ」及び「SRSリソースセット」における「SRSリソース」として「加重平均ウェイト」が端末装置UEへ通知される。当該「加重平均ウェイト」は、基地局装置BS(TRP#1)側のウェイトW_1と基地局装置BS(TRP#2)側のウェイトW_2ともに同じ値「0.5」である。
【0031】
(ステップS104) 端末装置UEの制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)に対して、「RRCシグナリング」の応答を行う。
【0032】
(ステップS105) 端末装置UEの制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)から受信したパスロスPL_1のウェイトW_1「0.5」及びパスロスPL_2のウェイトW_2「0.5」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。制御部12は、算出したパスロスPLを用いて、次式(3)のSRSの送信電力制御式によりSRSの送信電力を制御する。端末装置UEの無線送受信部11は、制御部12によるSRSの送信電力制御によりSRSを送信する。
【0033】
【数3】
【0034】
上記(3)式のSRSの送信電力制御式は、非特許文献1に規定されている。
【0035】
(ステップS106) 「Coordinated cell」の基地局装置BS(TRP#2)の制御部22は、端末装置UEから送信されたSRSの受信状況を確認する。基地局装置BS(TRP#2)の制御部22は、確認したSRSの受信状況を、「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)へ通知する。ここでは、SRSの受信状況として基地局装置BS(TRP#2)側のパスロス「XXdB」及びRSSI「XXdBm」が「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)へ通知される。
【0036】
(ステップS107) 基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、基地局装置BS(TRP#2)から通知されたSRSの受信状況(基地局装置BS(TRP#2)側の前回と今回のパスロスPL_2,PL_2’)と、自己のSRSの受信状況(基地局装置BS(TRP#1)側の前回と今回のパスロスPL_1,PL_1’)とを用いて、上記(2)式のウェイト算出式により、基地局装置BS(TRP#1)側のパスロスPL_1’のウェイトW_1’と、基地局装置BS(TRP#2)側のパスロスPL_2’のウェイトW_2’とを算出する。基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、算出したウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を端末装置UEへ送信する(ウェイトの変更指示)。
【0037】
(ステップS108) 端末装置UEの制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)から受信したウェイトの変更指示による新しいパスロスPL_1’のウェイトW_1’「0.3」及びパスロスPL_2’のウェイトW_2’「0.7」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。制御部12は、算出したパスロスPLを用いて、上記式(3)のSRSの送信電力制御式によりSRSの送信電力を制御する。端末装置UEの無線送受信部11は、制御部12によるSRSの送信電力制御によりSRSを送信する。
【0038】
実施例1によれば、SRSの送信電力制御に用いられるパスロスPLを算出する加重平均のウェイトをSRSの受信状況に基づいて動的に変更することによって、パスロスの変動に追従してSRSの送信電力制御を行うことができる。
【0039】
[実施例2]
図5及び図6を参照して本実施形態に係る実施例2を説明する。実施例2は、SRSの送信電力制御に関する他の実施例である。なお、図5及び図6に示されるウェイトの値は、説明のための一例である。
【0040】
図5は、本実施形態に係る実施例2におけるパスロス算出方法を説明するための図である。
図5(1)の状況では、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#1)との間のパスロスPL_1と、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#2)との間のパスロスPL_2とに対して、遮蔽物の影響がない。端末装置UEの制御部12は、パスロスPL_1のウェイトW_1とパスロスPL_2のウェイトW_2ともに同じ値「0.5」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。
【0041】
一方、端末装置UEが移動した図5(2)の状況では、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#1)との間のパスロスPL_1’には遮蔽物の影響がないが、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#2)との間のパスロスPL_2’については遮蔽物の影響でパスロスが急激に変動している。このため、本実施形態では、パスロスPL_2’の変動をSRSの送信電力制御に反映させるために、端末装置UEがSRSの送信電力を制御する際に用いるパスロスPLをパスロスPL_1’とパスロスPL_2’の加重平均により算出し、その加重平均に用いられるウェイトを、パスロスPL_1’よりもパスロスPL_2’に大きな重み付けを行う。端末装置UEの制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)側のパスロスPL_1,PL_1’の測定値と、基地局装置BS(TRP#2)側のパスロスPL_2,PL_2’の測定値とを用いて、上記(2)式のウェイト算出式により、パスロスPL_1’のウェイトW_1’とパスロスPL_2’のウェイトW_2’とを算出する。制御部12は、算出したウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を、例えば「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)及び「Coordinated cell」の基地局装置BS(TRP#2)へ通知する(ウェイト変更通知)。基地局装置BS(TRP#1、#2)は、ウェイト変更通知(ウェイトW_1’「0.3」、ウェイトW_2’「0.7」)を、クローズドループにおける電力制御コマンドの選択等の電力制御処理に反映させる。端末装置UEの制御部12は、算出したウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。
【0042】
図6は、本実施形態に係る実施例2における無線通信方法の手順の一例を示すシーケンス図である。図6を参照して本実施形態に係る実施例2における無線通信方法を説明する。
【0043】
(ステップS201) 「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、端末装置UEに対して、「UE capability」の要求を行う。
【0044】
(ステップS202) 端末装置UEの制御部12は、「UE capability」の要求に応じて、基地局装置BS(TRP#1)に対して、「UE capability」情報を応答する。
【0045】
(ステップS203) 基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、端末装置UEに対して、「RRCシグナリング」を行う。ここでは、「RRCシグナリング」において、「SRSコンフィグ」及び「SRSリソースセット」が端末装置UEへ通知される。
【0046】
(ステップS204) 端末装置UEの制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)に対して、「RRCシグナリング」の応答を行う。
【0047】
(ステップS205) 端末装置UEの制御部12は、パスロスPL_1のウェイトW_1「0.5」及びパスロスPL_2のウェイトW_2「0.5」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。当該ウェイトW_1,W_2の値「0.5」はデフォルト値である。制御部12は、算出したパスロスPLを用いて、上記式(3)のSRSの送信電力制御式によりSRSの送信電力を制御する。端末装置UEの無線送受信部11は、制御部12によるSRSの送信電力制御によりSRSを送信する。
【0048】
(ステップS206) 各基地局装置BS(TRP#1,TRP#2)は、下り参照信号を送信する。
【0049】
(ステップS207) 端末装置UEの制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)から送信された下り参照信号の受信により基地局装置BS(TRP#1)側のパスロスPL_1’を測定し、また基地局装置BS(TRP#2)から送信された下り参照信号の受信により基地局装置BS(TRP#2)側のパスロスPL_2’を測定する。制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)側の前回と今回のパスロスPL_1,PL_1’の各測定値と、基地局装置BS(TRP#2)側の前回と今回のパスロスPL_2,PL_2’の各測定値とを用いて、上記(2)式のウェイト算出式により、基地局装置BS(TRP#1)側のパスロスPL_1’のウェイトW_1’と、基地局装置BS(TRP#2)側のパスロスPL_2’のウェイトW_2’とを算出する。制御部12は、算出した新しいパスロスPL_1’のウェイトW_1’「0.3」及びパスロスPL_2’のウェイトW_2’「0.7」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。制御部12は、算出したパスロスPLを用いて、上記式(3)のSRSの送信電力制御式によりSRSの送信電力を制御する。端末装置UEの無線送受信部11は、制御部12によるSRSの送信電力制御によりSRSを送信する。本実施形態の一例として、当該SRSには、新しいウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を含むウェイト変更通知を含める。これにより、当該SRSによって、各基地局装置BS(TRP#1,TRP#2)に対して、ウェイトの変更と、新しいウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」とを通知することができる。
なお、端末装置UEは、SRSとは別個に、新しいウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を含むウェイト変更通知を、「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)及び「Coordinated cell」の基地局装置BS(TRP#2)へ通知してもよい。
【0050】
実施例2によれば、SRSの送信電力制御に用いられるパスロスPLを算出する加重平均のウェイトを下り参照信号の受信状況に基づいて動的に変更することによって、パスロスの変動に追従してSRSの送信電力制御を行うことができる。
【0051】
[実施例3]
図7及び図8を参照して本実施形態に係る実施例3を説明する。実施例3は、PUSCH信号の送信電力制御に関する実施例である。なお、図3及び図4に示されるウェイトの値は、説明のための一例である。
【0052】
図7は、本実施形態に係る実施例3おけるパスロス算出方法を説明するための図である。
図7(1)の状況では、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#1)との間のパスロスPL_1と、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#2)との間のパスロスPL_2とに対して、遮蔽物の影響がない。端末装置UEの制御部12は、パスロスPL_1のウェイトW_1とパスロスPL_2のウェイトW_2ともに同じ値「0.5」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。
【0053】
一方、端末装置UEが移動した図7(2)の状況では、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#1)との間のパスロスPL_1’には遮蔽物の影響がないが、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#2)との間のパスロスPL_2’については遮蔽物の影響でパスロスが急激に変動している。このため、本実施形態では、パスロスPL_2’の変動をPUSCH信号の送信電力制御に反映させるために、端末装置UEがPUSCH信号の送信電力を制御する際に用いるパスロスPLをパスロスPL_1’とパスロスPL_2’の加重平均により算出し、その加重平均に用いられるウェイトを、パスロスPL_1’よりもパスロスPL_2’に大きな重み付けを行う。例えば「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、上記(2)式のウェイト算出式により、パスロスPL_1’のウェイトW_1’とパスロスPL_2’のウェイトW_2’とを算出する。当該制御部22は、算出したウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を端末装置UEへ通知する(ウェイト変更指示)。端末装置UEの制御部12は、ウェイト変更指示によるウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。
【0054】
図8は、本実施形態に係る実施例3における無線通信方法の手順の一例を示すシーケンス図である。図8を参照して本実施形態に係る実施例3における無線通信方法を説明する。
【0055】
(ステップS301) 「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、端末装置UEに対して、「UE capability」の要求を行う。
【0056】
(ステップS302) 端末装置UEの制御部12は、「UE capability」の要求に応じて、基地局装置BS(TRP#1)に対して、「UE capability」情報を応答する。
【0057】
(ステップS303) 基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、端末装置UEに対して、「RRCシグナリング」を行う。ここでは、「RRCシグナリング」において、「送信電力制御」及び「加重平均ウェイト」が端末装置UEへ通知される。当該「加重平均ウェイト」は、基地局装置BS(TRP#1)側のウェイトW_1と基地局装置BS(TRP#2)側のウェイトW_2ともに同じ値「0.5」である。
【0058】
(ステップS304) 端末装置UEの制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)に対して、「RRCシグナリング」の応答を行う。
【0059】
(ステップS305) 端末装置UEの制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)から受信したパスロスPL_1のウェイトW_1「0.5」及びパスロスPL_2のウェイトW_2「0.5」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。制御部12は、算出したパスロスPLを用いて、次式(4)のPUSCH信号の送信電力制御式によりPUSCH信号の送信電力を制御する。端末装置UEの無線送受信部11は、制御部12によるPUSCH信号の送信電力制御によりPUSCH信号を送信する。
【0060】
【数4】
【0061】
上記(4)式のPUSCH信号の送信電力制御式は、非特許文献1に規定されている。
【0062】
(ステップS306) 「Coordinated cell」の基地局装置BS(TRP#2)の制御部22は、端末装置UEから送信されたPUSCH信号の受信状況を確認する。基地局装置BS(TRP#2)の制御部22は、確認したPUSCH信号の受信状況を、「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)へ通知する。ここでは、PUSCH信号の受信状況として基地局装置BS(TRP#2)側のパスロス「XXdB」及びRSSI「XXdBm」が「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)へ通知される。
【0063】
(ステップS307) 基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、基地局装置BS(TRP#2)から通知されたPUSCH信号の受信状況(基地局装置BS(TRP#2)側の前回と今回のパスロスPL_2,PL_2’)と、自己のPUSCH信号の受信状況(基地局装置BS(TRP#1)側の前回と今回のパスロスPL_1,PL_1’)とを用いて、上記(2)式のウェイト算出式により、基地局装置BS(TRP#1)側のパスロスPL_1’のウェイトW_1’と、基地局装置BS(TRP#2)側のパスロスPL_2’のウェイトW_2’とを算出する。基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、算出したウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を端末装置UEへ送信する(ウェイトの変更指示)。
【0064】
(ステップS308) 端末装置UEの制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)から受信したウェイトの変更指示による新しいパスロスPL_1’のウェイトW_1’「0.3」及びパスロスPL_2’のウェイトW_2’「0.7」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。制御部12は、算出したパスロスPLを用いて、上記式(4)のPUSCH信号の送信電力制御式によりPUSCH信号の送信電力を制御する。端末装置UEの無線送受信部11は、制御部12によるPUSCH信号の送信電力制御によりPUSCH信号を送信する。
【0065】
実施例3によれば、PUSCH信号の送信電力制御に用いられるパスロスPLを算出する加重平均のウェイトをPUSCH信号の受信状況に基づいて動的に変更することによって、パスロスの変動に追従してPUSCH信号の送信電力制御を行うことができる。
【0066】
[実施例4]
図9及び図10を参照して本実施形態に係る実施例4を説明する。実施例4は、PUSCH信号の送信電力制御に関する他の実施例である。なお、図9及び図10に示されるウェイトの値は、説明のための一例である。
【0067】
図9は、本実施形態に係る実施例4におけるパスロス算出方法を説明するための図である。
図9(1)の状況では、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#1)との間のパスロスPL_1と、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#2)との間のパスロスPL_2とに対して、遮蔽物の影響がない。端末装置UEの制御部12は、パスロスPL_1のウェイトW_1とパスロスPL_2のウェイトW_2ともに同じ値「0.5」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。
【0068】
一方、端末装置UEが移動した図9(2)の状況では、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#1)との間のパスロスPL_1’には遮蔽物の影響がないが、端末装置UEと基地局装置BS(TRP#2)との間のパスロスPL_2’については遮蔽物の影響でパスロスが急激に変動している。このため、本実施形態では、パスロスPL_2’の変動をPUSCH信号の送信電力制御に反映させるために、端末装置UEがPUSCH信号の送信電力を制御する際に用いるパスロスPLをパスロスPL_1’とパスロスPL_2’の加重平均により算出し、その加重平均に用いられるウェイトを、パスロスPL_1’よりもパスロスPL_2’に大きな重み付けを行う。端末装置UEの制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)側のパスロスPL_1,PL_1’の測定値と、基地局装置BS(TRP#2)側のパスロスPL_2,PL_2’の測定値とを用いて、上記(2)式のウェイト算出式により、パスロスPL_1’のウェイトW_1’とパスロスPL_2’のウェイトW_2’とを算出する。制御部12は、算出したウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を、「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)へ通知する(ウェイト変更通知)。基地局装置BS(TRP#1)は、ウェイト変更通知(ウェイトW_1’「0.3」、ウェイトW_2’「0.7」)を、クローズドループにおける電力制御コマンドの選択等の電力制御処理に反映させる。端末装置UEの制御部12は、算出したウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。
【0069】
図10は、本実施形態に係る実施例4における無線通信方法の手順の一例を示すシーケンス図である。図10を参照して本実施形態に係る実施例4における無線通信方法を説明する。
【0070】
(ステップS401) 「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、端末装置UEに対して、「UE capability」の要求を行う。
【0071】
(ステップS402) 端末装置UEの制御部12は、「UE capability」の要求に応じて、基地局装置BS(TRP#1)に対して、「UE capability」情報を応答する。
【0072】
(ステップS403) 基地局装置BS(TRP#1)の制御部22は、端末装置UEに対して、「RRCシグナリング」を行う。ここでは、「RRCシグナリング」において、「送信電力制御」が端末装置UEへ通知される。
【0073】
(ステップS404) 端末装置UEの制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)に対して、「RRCシグナリング」の応答を行う。
【0074】
(ステップS405) 端末装置UEの制御部12は、パスロスPL_1のウェイトW_1「0.5」及びパスロスPL_2のウェイトW_2「0.5」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。当該ウェイトW_1,W_2の値「0.5」はデフォルト値である。制御部12は、算出したパスロスPLを用いて、上記式(4)のPUSCH信号の送信電力制御式によりPUSCH信号の送信電力を制御する。端末装置UEの無線送受信部11は、制御部12によるPUSCH信号の送信電力制御によりPUSCH信号を送信する。
【0075】
(ステップS406) 各基地局装置BS(TRP#1,TRP#2)は、下り参照信号を送信する。
【0076】
(ステップS407) 端末装置UEの制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)から送信された下り参照信号の受信により基地局装置BS(TRP#1)側のパスロスPL_1’を測定し、また基地局装置BS(TRP#2)から送信された下り参照信号の受信により基地局装置BS(TRP#2)側のパスロスPL_2’を測定する。制御部12は、基地局装置BS(TRP#1)側の前回と今回のパスロスPL_1,PL_1’の各測定値と、基地局装置BS(TRP#2)側の前回と今回のパスロスPL_2,PL_2’の各測定値とを用いて、上記(2)式のウェイト算出式により、基地局装置BS(TRP#1)側のパスロスPL_1’のウェイトW_1’と、基地局装置BS(TRP#2)側のパスロスPL_2’のウェイトW_2’とを算出する。制御部12は、算出した新しいパスロスPL_1’のウェイトW_1’「0.3」及びパスロスPL_2’のウェイトW_2’「0.7」を用いて、上記(1)式のパスロス算出式によりパスロスPLを加重平均により算出する。制御部12は、算出したパスロスPLを用いて、上記式(4)のPUSCH信号の送信電力制御式によりPUSCH信号の送信電力を制御する。端末装置UEの無線送受信部11は、制御部12によるPUSCH信号の送信電力制御によりPUSCH信号を送信する。本実施形態の一例として、当該PUSCH信号には、新しいウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を含むウェイト変更通知を含める。これにより、当該PUSCH信号によって、各基地局装置BS(TRP#1,TRP#2)に対して、ウェイトの変更と、新しいウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」とを通知することができる。
なお、端末装置UEは、PUSCH信号とは別個に、新しいウェイトW_1’「0.3」及びウェイトW_2’「0.7」を含むウェイト変更通知を、「Serving cell」の基地局装置BS(TRP#1)を介して「Coordinated cell」の基地局装置BS(TRP#2)へ通知してもよい。
【0077】
実施例4によれば、PUSCH信号の送信電力制御に用いられるパスロスPLを算出する加重平均のウェイトを下り参照信号の受信状況に基づいて動的に変更することによって、パスロスの変動に追従してPUSCH信号の送信電力制御を行うことができる。
【0078】
なお、上述した実施例3,4は、PUCCH信号に対しても同様に適用可能である。PUCCH信号の送信電力制御式は、次式(5)に示される。(5)式のPUCCH信号の送信電力制御式は、非特許文献1に規定されている。
【0079】
【数5】
【0080】
上述した実施形態では、複数の送受信点(Multi-TRP)の一例として2台の基地局装置BS(TRP#1,TRP#2)を備えたが、3台以上の基地局装置BS(TRP#1,TRP#2,TRP#3,・・・)にも適用可能である。
【0081】
本実施形態によれば、TDD方式により複数の基地局との間で無線信号を送受する端末において例えばSRS等の上り方向の無線信号の送信電力を端末と基地局間のパスロスに基づいて制御することができる。
【0082】
なお、これにより、例えば無線ネットワークにおける総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0084】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0085】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
UE…端末装置、BS…基地局装置、10,20…アンテナ、11,21…無線送受信部、12,22…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10