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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116868
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/00 20060101AFI20240821BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20240821BHJP
   A61B 3/15 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A61B3/00
A61B3/10 100
A61B3/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022698
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 陽紀
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB02
4C316AB11
4C316AB16
4C316FA06
4C316FC02
4C316FC15
4C316FZ01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】円滑に被検眼の視機能の検査(検眼)のための被検眼に対する取得光学系の位置調整を行うことのできる眼科装置を提供する。
【解決手段】眼科装置は、被検者の被検眼の眼情報の取得のための取得光学系と、被検者の顔を取得光学系に対して移動可能に支持する顔支持部と、その支持位置を変更させる顔支持駆動部と、その駆動制御を行う制御部と、被検者の年齢情報を取得する情報取得部と、を備える。制御部は、取得光学系による測定の開始の前に顔支持駆動部を駆動させることで、情報取得部からの年齢情報に基づく年齢別初期位置(被検眼高さ、被検眼高さ)に顔支持部を移動させる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の被検眼の眼情報の取得のための取得光学系と、
前記被検者の顔を前記取得光学系に対して移動可能に支持する顔支持部と、
前記顔支持部における支持位置を変更させる顔支持駆動部と、
前記顔支持駆動部の駆動制御を行う制御部と、
前記被検者の年齢情報を取得する情報取得部と、を備え、
前記制御部は、前記取得光学系による測定の開始の前に前記顔支持駆動部を駆動させることで、前記情報取得部からの前記年齢情報に基づく年齢別初期位置に前記顔支持部を移動させることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記取得光学系を移動させる光学系移動部を備え、
前記制御部は、前記顔支持駆動部とともに前記光学系移動部の駆動制御を行うことで、前記取得光学系に対する前記顔支持部の位置を前記年齢別初期位置とすることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記取得光学系を移動させる光学系移動部を備え、
前記制御部は、前記取得光学系による眼情報の取得の対象を一方側の前記被検眼から他方側の前記被検眼に変更する際、前記光学系移動部の駆動制御を行うことで、前記情報取得部からの前記年齢情報に基づく年齢別瞳孔間基準距離だけ前記取得光学系を移動させることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記情報取得部は、前記被検者の過去の測定データを取得することができ、
前記制御部は、前記情報取得部が前記測定データを取得した場合には、前記取得光学系による測定の開始の前に前記顔支持駆動部を駆動させることで、前記測定データに基づく過去測定位置に前記顔支持部を移動させることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記情報取得部が取得した前記測定データにおける前記年齢情報に基づく前記年齢別初期位置と、現在の前記年齢情報に基づく前記年齢別初期位置と、が異なる場合には、前記取得光学系による測定の開始の前に前記顔支持駆動部を駆動させることで、前記過去測定位置から2つの前記年齢別初期位置の差分となる差分量だけ変位させた位置へと前記顔支持部を移動させることを特徴とする請求項4に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記情報取得部は、患者ID情報から前記年齢情報を取得することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科装置は、取得光学系を用いて、被検眼の様々な情報を取得したり、被検眼に呈示した視標の見え方に関する被検者からの応答に基づいたりして、被検眼の視機能を検査(検眼)することのできるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の眼科装置では、被検者の顔を顔支持部で支持した状態で、その被検眼に対して取得光学系を適切な位置とすることにより、被検眼の情報を適切に取得できるとともに、呈示した視標の見え方による検査を適切なものにできる。その従来の眼科装置では、前回の検査時の位置データに基づいて顔支持部や取得光学系の位置を設定することにより、被検眼に対する取得光学系の位置調整(所謂アライメント)を簡易なものにでき、2度目以降の被検眼の視機能の検査(検眼)を円滑なものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-13472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来の眼科装置は、前回の検査時の位置データを用いるものであり、初診の被検者に対しては、予め設定された初期位置に顔支持部や取得光学系を位置させることとなる。このため、従来の眼科装置は、初期位置では適合しない被検者もいるので、被検眼に対する取得光学系の位置調整を円滑に行う観点から改良の余地がある。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、被検眼に対する取得光学系の位置調整を円滑に行うことのできる眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本開示の眼科装置は、被検者の被検眼の眼情報の取得のための取得光学系と、前記被検者の顔を前記取得光学系に対して移動可能に支持する顔支持部と、前記顔支持部における支持位置を変更させる顔支持駆動部と、前記顔支持駆動部の駆動制御を行う制御部と、前記被検者の年齢情報を取得する情報取得部と、を備え、前記制御部は、前記取得光学系による測定の開始の前に前記顔支持駆動部を駆動させることで、前記情報取得部からの前記年齢情報に基づく年齢別初期位置に前記顔支持部を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の眼科装置によれば、被検眼に対する取得光学系の位置調整を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の眼科装置を顔支持部側から斜め方向に視た外観構成を示す斜視図である。
図2】眼科装置をコントロールパネル部側から斜め方向に視た外観構成を示す斜視図である。
図3】眼科装置を顔支持部側から本体部の正面を視た外観構成を示す正面図である。
図4】眼科装置の内蔵品および付属品の概要構成を示す側面図である。
図5】眼科装置における制御系構成を示すブロック図である。
図6】コントロールパネルの表示画面等に表示されるアライメント操作画面の一例を示す説明図である。
図7】成人のモデルおよび子供のモデルにおける被検眼高さおよび瞳孔間距離とその差分とを示す説明図である。
図8】撮影開始制御部における撮影開始制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る眼科装置の一実施形態について図1から図8を参照しつつ説明する。
【実施例0010】
実施例1の眼科装置は、一例として、被検眼の前眼部像、被検眼の眼底像、被検眼の眼底断層像を観察、撮影および記録し、電子画像として診断のために提供するものである。なお、眼科装置は、基準線(実施例1では測定光軸L)を被検眼(その中心)に合致させる所謂アライメントが必要なものであって、取得光学系を用いて被検眼の眼情報を取得するものであれば、任意の自覚検査や他覚検査を行うものとすることができる。この自覚検査には、遠用検査、中用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、赤緑検査、視野検査等がある。また、他覚検査では、眼科装置は、被検眼に光を照射し、その戻り光の検出結果に基づいて被検眼に関する情報(眼特性)を測定(取得)する。この他覚検査には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。さらに、他覚検査には、他覚屈折測定(レフ測定)、角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、OCTを用いた計測等がある。
【0011】
実施例1の眼科装置Aでは、正対する被検者Sが、本体部20に設けられた顔支持部30(その額当て面33b)に額を当てた状態で、被検者Sの被検眼Eの情報を取得する(図4参照)。以下では、眼科装置Aに対峙する被検者Sから見て、左右方向(水平方向)の左右軸を矢印X(X軸)で示し、上下方向(鉛直方向)の上下軸を矢印Y(Y軸)で示し、左右方向および上下方向と直交する方向(眼科装置Aの奥行き方向)を前後方向(前後軸)として矢印Z(Z軸)で示す。
【0012】
[装置全体構成]
眼科装置Aは、3次元眼底像撮影装置であり、被検眼Eの眼底像を取得する眼底カメラと、被検眼Eの眼底断層像を取得するOCT(「Optical Coherence Tomography」の略)と、を含む。ここで、「眼底カメラ」とは、被検眼Eの奥にある網膜や視神経、毛細血管などの眼底状態を画像化し、眼底像を撮影するカメラをいう。「OCT」とは、光の干渉を利用して被検眼Eの眼底に存在する網膜の断層を画像化し、眼底断層像を撮影する光干渉断層計をいう。この眼科装置Aは、図1から図4に示すように、架台部10と本体部20と顔支持部30とコントロールパネル部40と測定光学系50と制御部60とを備える。
【0013】
架台部10は、高さ調整が可能な検眼用テーブルT(図4参照)等に載せられる。架台部10の上面位置では、本体部20がX軸、Y軸、Z軸の三軸方向に移動可能に支持される。また、架台部10の前面位置には、顔支持部30が固定されている。さらに、架台部10の側面位置には、電源スイッチ11(図1参照)と、電源インレット12(図1参照)と、USB端子13(図2、4参照)と、LAN端子14(図2、4参照)とが設けられる。なお、USBは「Universal Serial Bus」の略であり、LANは「Local Area Network」の略である。USB端子13は、外部メモリ接続用端子であり、HDD(「Hard Disk Drive」の略)やUSBメモリ等が接続される。LAN端子14は、LANケーブル15を介して専用ソフトウェアなどがインストールされているパーソナルコンピュータ16が接続される(図4参照)。
【0014】
架台部10の内部空間には、図4等に示すように、電源部17とXYZ駆動部18とが内蔵される。電源部17には、電源スイッチ11と電源インレット12とUSB端子13とLAN端子14等が含まれる。XYZ駆動部18は、本体部20をXYZ軸の三軸方向に駆動するモータおよびモータ駆動回路を有するモータアクチュエータとされ、アライメント制御等において架台部10に対して本体部20を移動させることができる。このため、本体部20は、架台部10およびそこに固定される顔支持部30に対して、XYZ駆動部18によりX軸方向とY軸方向とZ軸方向に移動可能とされている。このことから、実施例1の眼科装置Aでは、XYZ駆動部18が光学系移動部として機能する。本体部20では、全体を覆う本体カバー21に内蔵されて測定光学系50と制御部60とが設けられる。その測定光学系50は、顔支持部30に顔を支持された状態の被検者Sの被検眼Eの眼特性を測定する。このため、実施例1の眼科装置Aでは、測定光学系50が、被検者Sの被検眼Eの眼情報の取得のための取得光学系として機能する。
【0015】
その本体カバー21の背面上部位置には、コントロールパネル部40が配置される(図1図2図4参照)。また、本体カバー21の前面位置には、中央部に測定光学系50の対物レンズ51が設けられ(図3等参照)、その対物レンズ51を被検眼Eに対峙させることが可能とされている。そして、対物レンズ51の周辺部には、前眼部ステレオカメラ22(前眼部カメラ)と周辺固視灯23と前眼部観察フィルタ24とが設けられている。
【0016】
前眼部ステレオカメラ22は、本体部20(測定光学系50)と被検眼Eとの間の相対位置を求めるために用いられ、対物レンズ51の両側位置で対を為して設けられた第1カメラ22aと第2カメラ22bとを有する。この第1カメラ22aと第2カメラ22bとは、複数の光学部材と撮像素子とを有し、その光軸が測定対象である被検眼Eの前眼部に向かって傾斜されて配置されている。第1カメラ22aと第2カメラ22bは、顔支持部30に支持された被検者Sの顔の一部を切り取った右側前眼部画像Ieおよび左側前眼部画像Ieを、実質的に同時に取得する。このため、前眼部ステレオカメラ22は、顔支持部30に支持された被検者Sの被検眼Eを含む前眼部画像Ieを撮影するカメラとして機能する。また、前眼部ステレオカメラ22は、一対の第1カメラ22aおよび第2カメラ22bのX軸方向での幅寸法と傾斜角とを用いて2つの前眼部画像Ieを計算処理させることで、被検眼Eの三次元座標位置の特定を可能とする。なお、この第1カメラ22aと第2カメラ22bは、撮影倍率(焦点距離)が高倍率と低倍率の切り替えや無段階の倍率変更が可能な変倍カメラとしてもよい。また、前眼部ステレオカメラ22は、顔支持部30に支持された被検者Sの被検眼Eを含む前眼部画像Ieを撮影するものであれば、単一のカメラであってもよく、他の構成であってもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0017】
周辺固視灯23は、点灯することによって被検眼Eの視線を固定させるために用いられる固視灯であり、対物レンズ51の外周位置に等間隔で8個配置されている。前眼部観察フィルタ24は、前眼部観察や前眼部OCTのときに光量調整するために用いられるフィルタであり、第1カメラ22aの外側位置と第2カメラ22bの外側位置とで、縦方向にそれぞれ2個並べて(合計4個)配置される。
【0018】
顔支持部30は、架台部10に固定された顎受け支持部31に対して高さ位置(Y軸方向の位置)が調整可能に設けられ、被検者Sの顎を支持する。顔支持部30は、昇降ロッド30aと顎受け台30bと顎受け紙止めピン30cとを有する。昇降ロッド30aは、内蔵された顎受け駆動部32により昇降可能とされ、顎受け台30bは、昇降ロッド30aの昇降により高さ位置が調整可能とされている。顎受け紙止めピン30cは、顎受け台30bの両側位置に設けられ、顎受け紙を顎受け台30b上に固定できる。顎受け駆動部32は、昇降ロッド30aをY軸方向に駆動するモータおよびモータ駆動回路を有するモータアクチュエータとされ、アライメント制御において顎受け支持部31(それが設けられた架台部10)に対して顔支持部30をY軸方向に移動させることができる。このため、顎受け駆動部32は、顔支持部30における支持位置を変更させる顔支持駆動部として機能する。
【0019】
顎受け支持部31には、図3等に示すように、T字形状の両端部位置に顔支持フレーム部33が固定される。その顔支持フレーム部33は、顔支持部30に顎を支持した被検者Sの顔を3方向で囲う形状とされている。顔支持フレーム部33では、Y軸方向に延びる一対の垂直フレームに、被検眼Eの高さ位置の目安となる高さマーク33aが設けられている。また、顔支持フレーム部33では、一対の垂直フレームの上端を結ぶ水平フレームに、シリコーンゴムなどで形成されて着脱可能な額当て面33bが設けられている。
【0020】
この顔支持フレーム部33では、水平フレームの中央上部位置には、多段階に折り曲げ可能なアーム34が設けられており、その先端部に外部固視灯35が設けられている。その外部固視灯35は、発光ダイオード等で構成され、アーム34により3次元方向の任意の位置へ位置されつつ点灯されることで、被検眼Eを固視させる外部固視標として機能する。なお、顔支持部30は、架台部10に連結された構成に限定されるものではなく、顔支持部30が架台部10から分離し、検眼用テーブルT上に設置された構成でもよい。被検者Sは、本体部20と対峙し、顎受け台30bに顎を置くとともに、額当て面33bに額を突き当てて顔(頭部)を安定させて検査情報の測定等を受ける。なお、顔支持部30は、被検眼Eの検査情報の測定中に、被検者Sの顔(頭部)が不測に移動することのないように被検者Sの顔を支持して安定させるものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0021】
コントロールパネル部40は、本体カバー21の背面上部位置に配置されて、表示画面41を有している。この表示画面41は、前眼部ステレオカメラ22からの被検眼Eの前眼部画像Ieや、測定光学系50からの被検眼Eの前眼部観察像Io等を表示することができる(図6参照)。実施例1の表示画面41は、カラー液晶パネルの表面にタッチセンサが積層されたタッチパネル式として構成され、表示されたボタン像や画像等を検者が指でタッチ操作することで制御部60への入力操作を行うことができる。
【0022】
このコントロールパネル部40は、連結支持部42を介して本体部20(本体カバー21)に取り付けられている。この連結支持部42は、表示画面41を本体部20に対して全周方向の何れの位置にも設定可能な回転支持と、表示画面41の本体部20に対する傾斜角度を自由に設定可能な折れ曲げ支持と、を組み合わせた支持構造とされている。このため、コントロールパネル部40は、検者が眼科装置Aの周囲のどこの位置にいても表示画面41を検者にとって操作しやすい位置に配置にすることができ、検者が被検者Sの傍に寄り添って眼特性の検査を行うときに用いることができる。
【0023】
ここで、眼科装置Aでは、被検者Sから離れた位置からの遠隔操作により、検者が眼特性の検査を行うことが可能とされている。この一例として、眼科装置Aでは、遠隔操作用タブレット40´が設けられている(図2参照)。この遠隔操作用タブレット40´は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末(情報処理装置)が用いられ、コントロールパネル部40と同等の入力操作機能とともに本体部20との通信機能を備えており、タッチ操作が可能とされたタッチパネルの表示画面41´を有している。なお、遠隔操作用タブレット40´は、携帯端末に限定されることはなく、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型パーソナルコンピュータ等でもよく、眼科装置Aに固定されて構成されていてもよく、実施例1の構成に限定されない。このため、コントロールパネル部40(表示画面41)や遠隔操作用タブレット40´(表示画面41´)は、前眼部画像Ieを表示する表示部として機能する。
【0024】
測定光学系50は、図4図5に示すように、眼底カメラユニット52とOCTユニット53とを有する。眼底カメラユニット52は、本体カバー21の前面位置に設けられた対物レンズ51を有する照明光学系と撮影光学系とを備え、そこに設けられた撮像素子等により被検眼Eの前眼部像や眼底像を取得する眼底カメラを構成する。取得される画像は、例えば、近赤外光を用いた動画撮影で得られる観察画像や、フラッシュ光を用いた静止画像である撮影画像等の正面画像である。OCTユニット53は、波長可変光源やファイバカプラ等により、眼底断層像を取得する光コヒーレンストモグラフィ(「OCT」Optical Coherence Tomography)を用いた被検眼Eの眼底断層像の撮影(OCT撮影)を行う。このOCTユニット53には、例えば、スウェプトソースOCTを実行するための光学系が設けられる。その光学系は、波長可変光源(波長掃引型光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光を検出する干渉光学系を含む。
【0025】
この測定光学系50は、被検眼Eの眼底像と眼底断層像とに加えて、被検眼Eの前眼部観察像Ioを取得することが可能とされており、それらや干渉光学系により得られる検出結果(検出信号)を適宜制御部60(後述する主制御部61)に出力する。測定光学系50では、後述する被検眼Eとの相対位置関係の調整の基準となる基準線が設定されており、実施例1では照明光学系および撮影光学系の測定光軸L(図3参照)が基準線とされている。この測定光軸Lは、実施例1では、対物レンズ51の中心位置を通るものとされている。
【0026】
[制御系構成]
眼科装置Aの制御系構成は、図5に示すように、コントロールパネル部40(表示画面41)と、測定光学系50(眼底カメラユニット52、OCTユニット53)と、制御部60と、を有する。この制御部60は、ハードウェア構成として、制御基板60aとCPU基板60bと画像ボード60cとを有する(図4参照)。制御部60は、表示画面41へのタッチ操作を含むコントロールパネル部40への入力操作に基づいて、眼科装置A(眼底カメラユニット52、OCTユニット53、顔支持部30、本体部20等)を統括的に制御する。
【0027】
制御部60は、被検眼Eと本体部20(その測定光学系50の測定光軸L(対物レンズ51))との自動アライメント(自動による位置合わせ(自動調整))を行い、測定光学系50を駆動して被検眼Eの眼情報を取得する。詳細には、先ず、制御部60は、前眼部ステレオカメラ22で取得された前眼部画像Ieに基づいて、被検眼Eの位置(例えば本体部20に対する相対位置)を求める。次に、制御部60は、測定光学系50からのアライメント情報に基づいて、測定光学系50の測定光軸Lを被検眼Eの軸に合わせつつ被検眼Eに対する測定光学系50の距離が所定の作動距離になる移動量(アライメント情報)を算出する。ここで、作動距離とは、ワーキングディスタンスとも呼ばれる既定値であり、測定光学系50を用いて特性を適切に測定するための測定光学系50と被検眼Eとの間の距離である。制御部60は、移動量に応じてXYZ駆動部18を駆動して被検眼Eに対して本体部20(測定光学系50)を移動させることで、対応する被検眼Eに対する測定光学系50のXYZ方向のアライメントを行う。その後、制御部60は、適宜測定光学系50を駆動して、被検眼Eの各種の眼情報を取得させる。
【0028】
この制御部60は、主制御部61と記憶部62とアライメント制御部63とを備える。主制御部61は、コントロールパネル部40への入力操作に応じて、眼底カメラユニット52およびOCTユニット53を制御する。記憶部62は、主制御部61やアライメント制御部63の制御下で適宜データを記憶することができるとともに、そのデータの取り出しが可能とされている。そのデータとしては、例えば、OCT画像や前眼部像や眼底像や被検眼情報等がある。その被検眼情報は、例えば、患者ID(identification)情報(氏名などの被検者情報)や、左眼/右眼の識別情報や、電子カルテ情報等がある。また、主制御部61は、眼底カメラユニット52により取得された画像(眼底像、前眼部観察像Io等)、および前眼部ステレオカメラ22により取得された前眼部画像Ieの各種画像処理や各種解析処理等を適宜実行する。さらに、主制御部61は、OCTユニット53からのOCTラスタースキャンデータに基づく3次元画像データ(スタックデータ、ボリュームデータ等)の作成、3次元画像データのレンダリング、画像補正、解析アプリケーションに基づく画像解析などを実行する。
【0029】
アライメント制御部63は、前眼部ステレオカメラ22で取得された前眼部画像Ieに基づいて、被検眼Eと本体部20(その測定光学系50の測定光軸L(対物レンズ51))との相対位置関係を調整するアライメント制御を行う。このアライメント制御の際、コントロールパネル部40の表示画面41では、前眼部画像Ieが適宜表示される。
【0030】
アライメント制御部63は、前眼部ステレオカメラ22(第1カメラ22a、第2カメラ22b)により左右眼のそれぞれを2方向から撮影させることで前眼部画像Ieを取得し、測定光学系50により右眼と左眼を撮影させることで前眼部観察像Ioを取得する。アライメント制御部63は、XYZ駆動部18と顎受け駆動部32との少なくとも一方へ出力する駆動指令により、被検眼Eと本体部20(測定光軸L)との相対位置関係の調整を行う。ここで、XYZ駆動部18と顎受け駆動部32とは、以下のように使い分ける。先ず、XYZ駆動部18は、XYZ軸の三軸方向に移動可能であるのに対して、顎受け駆動部32は、Y軸方向のみに移動可能とされている。また、Y軸方向での移動においては、XYZ駆動部18よりも顎受け駆動部32の方が移動可能とする範囲が大きくされている。このため、調整移動量がXZ軸方向移動量のみであれば、XYZ駆動部18を用いるものとする。また、Y軸方向の調整移動量が、XYZ駆動部18における移動可能範囲内であればXYZ駆動部18を用いるものとし、XYZ駆動部18における移動可能範囲を超えていると顎受け駆動部32も併せて用いるものとする。
【0031】
実施例1のアライメント制御部63は、アライメント制御として、瞳孔の位置と測定光学系50の測定光軸L(画像の中央位置)とを一致させる精密アライメント制御(精密調整制御)と、その精密アライメント制御が可能となる位置まで瞳孔と測定光学系50の測定光軸Lとを近付ける粗アライメント制御(粗調整制御)と、を行う。すなわち、眼科装置Aでは、粗アライメント制御において被検眼Eの位置を検出して大まかな位置調整をし、その後、精密アライメント制御により精密な位置調整(アライメント微調整)を行い、測定光学系50におけるフォーカシングや光路長調整等を実行してから、測定光学系50による測定を行う。この粗アライメント制御と精密アライメント制御とは、制御部60の制御下で自動で行うことができるので、以下では自動アライメント制御ともいう。実施例1では、Y軸方向の移動に関しては、後述する粗アライメント制御ではXYZ駆動部18と顎受け駆動部32とを適宜用いるものとし、後述する精密アライメント制御ではXYZ駆動部18を用いるものとする。
【0032】
アライメント制御部63は、情報取得部631と開始位置制御部632と撮影開始制御部633とアライメント制御部634とを有する。情報取得部631は、被検者の各種情報を取得する。実施例1の情報取得部631は、記憶部62から患者ID情報や電子カルテ情報等を取得する。この患者ID情報は、予め被検者Sから得た情報が、パーソナルコンピュータ16やコントロールパネル部40(表示画面41)や遠隔操作用タブレット40´(表示画面41´)により入力されたもので、被検者Sの生年月日や年齢等の情報を含むものとされている。また、電子カルテ情報は、被検者Sが今まで行った各種の検査の結果であり、それぞれの検査における本体部20(その測定光学系50)に対する顔支持部30の位置の情報を含むものとされている。なお、情報取得部631は、患者ID情報や電子カルテ情報等を取得するものであれば、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0033】
開始位置制御部632は、アライメント制御を適切に行えるように、本体部20(その測定光学系50)に対する顔支持部30の開始位置Psを設定し、顎受け駆動部32を駆動してその開始位置Psに顔支持部30を移動させる。また、開始位置制御部632は、光学系移動部としてのXYZ駆動部18を駆動して、本体部20(その測定光学系50)を移動させることもでき、開始位置Psへの顔支持部30の移動を補助できる。実施例1の開始位置制御部632は、情報取得部631から取得した患者ID情報や電子カルテ情報に応じて開始位置Psを設定する。この設定については後述する。このため、開始位置制御部632は、顔支持駆動部としての顎受け駆動部32の駆動制御と、光学系移動部としてのXYZ駆動部18の駆動制御と、を行う制御部として機能する。
【0034】
撮影開始制御部633は、自動アライメント制御を行えるか否かを判断する撮影開始制御を行うものであり、前眼部ステレオカメラ22で取得した前眼部画像Ieの中に被検眼Eが映っているか否かを判断し、その判断結果を出力する。そして、撮影開始制御部633は、前眼部ステレオカメラ22からの前眼部画像Ieに被検眼Eが検出されると、自動アライメント制御に切り替える。
【0035】
アライメント制御部634は、表示される前眼部画像Ieに被検眼Eが映っている場合に、被検眼Eの瞳孔(その中心)に本体部20の測定光軸Lを合致させる自動アライメント制御を行う。このアライメント制御部634は、表示画面41の前眼部画像Ieにおいて被検眼Eがタッチ操作されると、その被検眼Eの位置へ向けて本体部20(測定光軸L)を移動させて、本体部20の測定光軸Lの近傍に被検眼Eを位置させる粗アライメント制御を行う。また、アライメント制御部634は、被検眼Eの瞳孔が本体部20の測定光軸Lの近傍に位置されていることが確認されると、前眼部画像Ieの瞳孔の中心位置が測定光軸L上に位置するようにXYZ駆動部18を駆動させつつ、測定光学系50の光学系におけるアライメント機構からの信号に基づいて被検眼Eの瞳孔(その中心)が測定光軸Lに一致したか否かを判断する精密アライメント制御を行う。このように、アライメント制御部634は、粗アライメント制御と精密アライメント制御とを続けて行う自動アライメント制御を実行することで、被検眼Eの瞳孔(その中心)に本体部20の測定光軸Lを合致させることができる。なお、この位置調整(アライメント)は、前眼部ステレオカメラ22からの2つの前眼部画像Ieに基づいて自動制御(自動アライメント制御)により行っているが、検者の選択により後述する顎受け上下動ボタン43gを用いたマニュアル操作により行うこともできる。
【0036】
撮影開始制御部633は、自動アライメント制御を行う際に、図6に示すように、そこにおける操作等を行うためのアライメント操作画面43を、コントロールパネル部40の表示画面41や遠隔操作用タブレット40´の表示画面41´に表示させることができる。実施例1のアライメント操作画面43は、メニューボタン43aと患者ID表示エリア43bと撮影情報表示エリア43cと操作方法ガイド43dと第1動画エリア43eと第2動画エリア43fとを有する。メニューボタン43aは、タッチ操作すると撮影アイコン選択画面に移行する。患者ID表示エリア43bは、患者ID(患者ID情報)を表示する。撮影情報表示エリア43cは、撮影眼や画角の情報を表示する。操作方法ガイド43dは、この画面の操作方法を表示する。第1動画エリア43eは、測定光学系50からの前眼部観察像Ioを動画で表示する。第2動画エリア43fは、撮影眼に近い方の前眼部ステレオカメラ22の前眼部画像Ieを動画で表示する。
【0037】
また、実施例1のアライメント操作画面43は、顎受け上下動ボタン43gと撮影眼選択ボタン43hと外部固視ボタン43iとアドバンスボタン43jとキャプチャ開始ボタン43kとを有する。顎受け上下動ボタン43gは、タッチ操作により顔支持部30を上下動させる。撮影眼選択ボタン43hは、撮影眼を選択する。外部固視ボタン43iは、タッチ操作すると外部固視灯35に切り替わり、外部固視灯35のON/OFF状態を表示すると共に、外部固視灯35のON/OFFの切り替えを可能とする。アドバンスボタン43jは、タッチ操作するとアドバンスモードに切り替わる。キャプチャ開始ボタン43kは、タッチ操作すると撮影を開始する。
【0038】
[開始位置Psの設定]
次に、開始位置制御部632による顔支持部30の開始位置Psの設定について説明する。先ず、一般的に人間は、図7に示すように、年齢によって顎から被検眼Eまでの間隔(以下では、被検眼高さEhとする)や両被検眼Eの間隔(ここでは、両瞳孔の中心の間隔である瞳孔間距離PD)が変化する。この図7では、一般的な成人の平均値とされたモデルMaと、一般的な子供の平均値とされたモデルMcと、を示している。実施例1のモデルMcは、一例として10歳前後の子供(その平均値)としている。そして、図7では、被検眼高さEhや瞳孔間距離PDの差異を把握し易くするために、1つのモデルMaに対して2つの等しいモデルMcを右側と下側とに並べて示している。以下では、モデルMaでは被検眼高さEha、瞳孔間距離PDaとし、モデルMcでは被検眼高さEhc、瞳孔間距離PDcとする。なお、図7では、各被検眼高さや各瞳孔間距離等の差異を把握し易いように示しており、必ずしも実際の各値と一致するものではない。
【0039】
モデルMaとモデルMcとでは、瞳孔間距離PDが異なるものとされており、その差異を瞳孔間差異Dpとする。この瞳孔間差異Dpは、一般に、子供から成人への成長に伴って骨格等が形成されていくことに起因して生じる。また、モデルMaとモデルMcとでは、被検眼高さEhが大きく異なるものとされており、その差異を高さ差異Dhとする。この高さ差異Dhは、10歳前後の子供から成人への成長に伴って骨格等が形成されていく際、下顎骨の変化の度合いが大きいことから、大きな値となったものと考えられる。このため、被検眼高さEhaは、成人の年齢別初期位置となり、被検眼高さEhcは、10歳前後の子供の年齢別初期位置となり、高さ差異Dhは、成人と10歳前後の子供との被検眼高さの差分量となる。また、瞳孔間距離PDaは、成人の年齢別瞳孔間基準距離となり、瞳孔間距離PDcは、10歳前後の子供の年齢別瞳孔間基準距離となり、瞳孔間差異Dpは、成人と10歳前後の子供との瞳孔間距離の差分量となる。この両モデルMにおける瞳孔間距離PDaおよび被検眼高さEhと、それらの差異である瞳孔間差異Dpおよび高さ差異Dhと、は、記憶部62に記憶させている。
【0040】
開始位置制御部632は、情報取得部631から患者ID情報や電子カルテ情報を取得し、取得した対象となる被検者Sが過去に検査している場合には、電子カルテ情報から検査時の顔支持部30の位置の情報を取得し、その取得した位置を顔支持部30の開始位置Psとして設定し、その開始位置Psに顔支持部30を移動させる。また、開始位置制御部632は、測定光学系50による検査の左右の切り替えの際、電子カルテ情報から被検者Sの瞳孔間距離PDを取得し、その取得した瞳孔間距離PDだけ本体部20(その測定光学系50)を移動させる。ここで、過去に複数の検査が行われている場合には、最新の検査時の情報を用いても良く、過去の検査時の情報の平均値を用いても良い。
【0041】
また、開始位置制御部632は、取得した対象となる被検者Sが初診の場合には、患者ID情報に基づいて被検者Sの年齢を判断する。この判断は、患者ID情報に年齢の情報がある場合にはそれを採用し、生年月日の情報のみがある場合にはそこから年齢を算出する。ここで、患者ID情報の年齢の情報が過去に作成されていた場合には、その作成の年月日と現在との日にちの差異に基づいて年齢の情報を補正する。その後、開始位置制御部632は、判断した年齢に合わせた瞳孔間距離PDおよび被検眼高さEhを記憶部62から読み出す。実施例1では、16歳未満である場合には被検眼高さEhcおよび瞳孔間距離PDcを読み出し、16歳以上である場合には被検眼高さEhaおよび瞳孔間距離PDaを読み出す。そして、開始位置制御部632は、読み出した被検眼高さEhを開始位置Psに設定し、その開始位置Psに顔支持部30を移動させる。また、開始位置制御部632は、測定光学系50による検査の左右の切り替えの際、読み出した瞳孔間距離PDだけ本体部20(その測定光学系50)を移動させる。
【0042】
さらに、開始位置制御部632は、取得した対象となる被検者Sが過去に検査している場合であっても、その検査時の顔支持部30の位置や瞳孔間距離PDを補正する場合がある。これは、以下のことによる。先ず、過去に検査した時が子供であって現在が成人である場合、検査時の顔支持部30の位置や瞳孔間距離PDが現在の適切な位置ではないことが考えられる。このため、開始位置制御部632は、例えば、過去の検査時がモデルMcに該当する年齢であって、現在がモデルMaに該当する年齢である場合には、検査時の顔支持部30の位置を補正して開始位置Psを設定する。詳細には、開始位置制御部632は、検査時の顔支持部30の位置とともにモデルMaとモデルMcとにおける高さ差異Dhを取得し、検査時の顔支持部30の位置に高さ差異Dhを加算したものを開始位置Psとする。また、開始位置制御部632は、検査時の瞳孔間距離PDとともにモデルMaとモデルMcとにおける瞳孔間差異Dpを取得し、検査時の瞳孔間距離PDに瞳孔間差異Dpを加算したものを、本体部20(その測定光学系50)の移動量とする。なお、開始位置制御部632は、モデルMaとモデルMcとにおける両被検眼高さEhや両瞳孔間距離PDの比率を、検査時の被検眼高さEhや瞳孔間距離PDに乗算することにより、本体部20(その測定光学系50)の移動量としてもよい。また、開始位置制御部632は、過去の検査時が所定の期間(例えば1年)内の場合には上記の補正を行わずに過去の検査時の値をそのまま適用するとともに、所定の期間(例えば1年)を超えている場合には上記の補正を行うものとしてもよい。
【0043】
なお、実施例1では、年齢別の各値(被検眼高さEhや瞳孔間距離PD)として、上記したように10歳前後の子供であるモデルMcと成人であるモデルMaとの2段階の成長度合いの瞳孔間距離PDaと被検眼高さEhとそれらの差異とを記憶するものとしている。しかしながら、年齢別の区切り(各段階)は適宜設定することができ、例えば、3段階以上に分けて瞳孔間距離PDaと被検眼高さEhとそれらの差異とを記憶するとともに、それらを適宜用いるものとしてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0044】
次に、アライメント制御部63において実行される撮影開始制御の処理構成を、図8に示すフローチャートを用いて説明する。この撮影開始制御処理は、撮影開始制御処理は、電源スイッチ11をオンにした眼科装置Aの前に被検者Sが着座したことを確認した後、所定の操作が為されることにより開始される。
【0045】
ステップS1では、被検者Sの情報を取得して、ステップS2へ進む。このステップS1では、開始位置制御部632が、情報取得部631(記憶部62)から患者ID情報や電子カルテ情報を取得する。
【0046】
ステップS2では、初診か否かを判断して、YESの場合はステップS3へ進み、NOの場合はステップS10へ進む。このステップS2では、開始位置制御部632が、電子カルテ情報の有無や、患者ID情報(その内容)から、初診か否かを判断する。
【0047】
ステップS3では、年齢の情報を取得して、ステップS4へ進む。このステップS3では、開始位置制御部632が、患者ID情報に基づいて被検者Sの年齢を判断する。
【0048】
ステップS4では、開始位置Psを設定して、ステップS5へ進む。このステップS4では、開始位置制御部632が、判断した被検者Sの年齢に合わせた被検眼高さEhを記憶部62から読み出し、その被検眼高さEhを開始位置Psに設定する。
【0049】
ステップS5では、顔支持部30を移動させて、ステップS6へ進む。このステップS5では、開始位置制御部632が、顎受け駆動部32を駆動することで、設定した開始位置Psへと顔支持部30を移動させる。
【0050】
ステップS6では、顔支持部30の移動が完了したかを判断して、YESの場合はステップS7へ進み、NOの場合はステップS5に戻る。このステップS6では、開始位置制御部632が、顔支持部30が開始位置Psに到達したか否かを判断する。
【0051】
ステップS7では、前眼部撮影を開始して、ステップS8へ進む。このステップS7では、撮影開始制御部633が、前眼部ステレオカメラ22による前眼部撮影を開始させて、動画による前眼部画像Ieの取得をこのフローチャートが終了するまで継続させる。この前眼部画像Ieは、例えば、アライメント操作画面43の第2動画エリア43fに適宜表示される(図6参照)。
【0052】
ステップS8では、被検眼Eがタッチ操作されたか否かを判断して、YESの場合はステップS9へ進み、NOの場合はステップS8を繰り返す。このステップS8では、撮影開始制御部633が、前眼部画像Ieにおける被検眼Eがタッチ操作された否か、すなわち前眼部画像Ie上の被検眼Eをアライメントの目標とする操作が為されたか否かを判断する。
【0053】
ステップS9では、自動アライメント制御を実行して、この撮影開始制御処理を終了する。このステップS9では、アライメント制御部634による自動アライメント制御を実行させる。このとき、アライメント操作画面43では、自動アライメント中である旨を表示するものとしてもよい。なお、自動アライメント制御の終了後は、例えば、眼底に対するオートフォーカス制御などが実行されて、測定光学系50による測定を開始することができる。
【0054】
ステップS10では、年齢の情報を取得して、ステップS11へ進む。このステップS10では、開始位置制御部632が、患者ID情報に基づいて被検者Sの年齢を判断する。
【0055】
ステップS11では、検査時の情報をそのまま利用するか否かを判断して、YESの場合はステップS12へ進み、NOの場合はステップS13へ進む。このステップS11では、開始位置制御部632が、過去の検査時がモデルMcに該当する年齢であって現在がモデルMaに該当する年齢である場合のように、過去の検査時と現在とで年齢別初期位置が変化する状況に当て嵌まるか否かを判断する。図7に示す例では、過去の検査時がモデルMcに該当する年齢であって現在がモデルMaに該当する年齢であるか否かを判断し、該当しない場合には検査時の情報をそのまま利用するものとし、該当する場合には検査時の情報を補正する必要があるものとする。
【0056】
ステップS12では、開始位置Psを設定して、ステップS5へ進む。このステップS12では、開始位置制御部632が、電子カルテ情報から検査時の顔支持部30の位置(過去測定位置)の情報を取得し、その取得した位置を顔支持部30の開始位置Psとして設定する。
【0057】
ステップS13では、開始位置Psを設定して、ステップS5へ進む。このステップS13では、開始位置制御部632が、検査時の顔支持部30の位置とともにモデルMaとモデルMcとにおける高さ差異Dhを取得し、検査時の顔支持部30の位置に高さ差異Dhを加算したものを開始位置Psとして設定する。
【0058】
次に、眼科装置Aを用いて、測定光学系50による測定を開始するための動作について説明する。眼科装置Aでは、電源スイッチ11がオンとされて所定の操作が為されると、着座した被検者Sの情報である患者ID情報や電子カルテ情報を取得する(ステップS1)。
【0059】
ここで、被検者Sが初診である場合には、ステップS2→S3→S4へと進んで、被検者Sの年齢を判断し、その年齢に合わせた被検眼高さEhを記憶部62から読み出して、その被検眼高さEhを開始位置Psに設定する。図7に示す例では、16歳未満である場合には被検眼高さEhcを開始位置Psに設定し、16歳以上である場合には被検眼高さEhaを開始位置Psに設定する。そして、ステップS5→S6→S7へと進んで、その開始位置Psへと顔支持部30を移動させ、前眼部撮影を開始させる。その後、ステップS8→S9へと進んで、アライメント操作画面43の第2動画エリア43f(図6参照)に動画による前眼部画像Ieが適宜表示され、アライメント制御部634による自動アライメント制御が実行される。
【0060】
また、被検者Sが過去に検査している場合には、ステップS2→S10へと進んで、被検者Sの年齢を判断する。そして、ステップS11へと進んで、過去の検査時と現在とで年齢別初期位置が変化する状況に当て嵌まるか否かを判断することで、過去の検査時の情報をそのまま利用するか否かを判断する。
【0061】
そのまま利用する場合には、ステップS12→S5→S6へと進んで、過去の検査時の顔支持部30の位置を開始位置Psとして設定して、その開始位置Psへと顔支持部30を移動させる。その後、ステップS7→S8→S9へと進んで、前眼部撮影を開始されて、アライメント操作画面43の第2動画エリア43f(図6参照)に動画による前眼部画像Ieが適宜表示され、アライメント制御部634による自動アライメント制御が実行される。
【0062】
そのままは利用しない場合には、ステップS13→S5→S6へと進んで、過去の検査時の顔支持部30の位置に高さ差異Dhを加算したものを開始位置Psとして設定して、その開始位置Psへと顔支持部30を移動させる。その後、ステップS7→S8→S9へと進んで、前眼部撮影を開始されて、アライメント操作画面43の第2動画エリア43f(図6参照)に動画による前眼部画像Ieが適宜表示され、アライメント制御部634による自動アライメント制御が実行される。
【0063】
そして、各場面において上記のように自動アライメント制御が実行された後は、例えば、眼底に対するオートフォーカス制御などが実行されて、測定光学系50による測定を開始することができる。なお、上記の図8のフローチャートを用いた説明では、撮影開始制御の処理として、顎受け駆動部32の駆動による顔支持部30の移動の場面について記載している。ここで、撮影開始制御の処理としては、測定光学系50による検査の左右の切り替えの場面もある。この場合は、ステップS4の開始位置Psの設定に変えて、判断した年齢に合わせた瞳孔間距離PDの設定とし、ステップS5の顔支持部30の移動に変えて、XYZ駆動部18による本体部20(その測定光学系50)の瞳孔間距離PDの移動とする。これに合わせて、ステップS12では、検査時の瞳孔間距離PDをそのまま用いるものとし、ステップS13では、検査時の瞳孔間距離PDを、瞳孔間差異Dpを用いて補正するものとする。これにより、眼科装置Aでは、顔支持部30の位置と同様に、年齢に合わせた瞳孔間差異Dpや過去の検査時の瞳孔間差異Dpを用いて測定光学系50による検査の左右の切り替えを行うことができ、自動アライメント制御等を経て測定光学系50による測定を開始することができる。
【0064】
次に、眼科装置の技術の課題について説明する。上記した従来の眼科装置では、初診の被検者Sに対しては予め設定された初期位置に顔支持部を位置させることとなる。この初期位置は、平均的な被検眼Eの位置に基づいて設定されていることから、様々な被検者に対して幅広く対応することができ、被検眼に対する取得光学系のアライメント(位置調整)を円滑に行うことを可能とする。しかしながら、被検者には個体差があることから、平均的な被検眼Eの位置に基づく初期位置であっても適合しない被検者も少なからず存在する。すると、従来の眼科装置は、適合しない被検者の場合には被検眼に対する取得光学系の位置が大きくずれる可能性があり、被検眼に対する取得光学系のアライメントを円滑に行う観点から改良の余地がある。
【0065】
これに対し、本発明者等は、被験者の年齢によって、平均的な被検眼Eの位置が大きく異なる点に着目した。一般に、頭部の成長に応じて被検眼Eの位置が変化することとなるが、特に成人と子供とでは、被検眼Eの位置が大きく異なることとなる。これは、子供から成人への成長に伴って骨格等が形成されてことと、その過程において下顎骨の変化の度合いが大きいことと、が大きく影響していると考えられる。
【0066】
そして、本開示の眼科装置Aは、開始位置制御部632が、情報取得部631から患者ID情報や電子カルテ情報に基づいて被検者Sの年齢を判断し、その年齢に合わせた被検眼高さEhを開始位置Psに設定して、その開始位置Psへと顔支持部30を移動させる。このため、眼科装置Aは、初診の被検者Sであっても、顔支持部30を年齢に応じた位置とするので、より多くの被検者Sに対して適切に対応することができ、被検眼Eに対する測定光学系50(取得光学系)の位置調整を円滑に行うことができる。
【0067】
本開示に係る眼科装置の実施例1の眼科装置Aは、以下の各作用効果を得ることができる。
眼科装置Aは、被検者Sの被検眼Eの眼情報の取得のための取得光学系としての測定光学系50と、被検者Sの顔を測定光学系50に対して移動可能に支持する顔支持部30と、その支持位置を変更させる顔支持駆動部としての顎受け駆動部32と、を備える。また、眼科装置Aは、その顎受け駆動部32の駆動制御を行う制御部としての開始位置制御部632と、被検者Sの年齢情報を取得する情報取得部631と、を備える。そして、眼科装置Aは、開始位置制御部632が、測定光学系50による測定の開始の前に顎受け駆動部32を駆動させることで、情報取得部631からの年齢情報に基づく年齢別初期位置(被検眼高さEha、被検眼高さEhc)に顔支持部30を移動させる。このため、眼科装置Aは、初診の被検者Sであっても顔支持部30を年齢に応じた位置(開始位置Ps)とすることができるので、一定の初期位置とすることと比較してより多くの被検者Sに対して適切に対応することができ、被検眼Eに対する測定光学系50の位置調整を円滑に行うことができる。
【0068】
また、眼科装置Aでは、測定光学系50を移動させる光学系移動部としてのXYZ駆動部18を備え、開始位置制御部632が、顎受け駆動部32とともにXYZ駆動部18の駆動制御を行うことで、測定光学系50に対する顔支持部30の位置を年齢別初期位置(被検眼高さEha、被検眼高さEhc)とする。このため、眼科装置Aは、顔支持部30の開始位置Psまでの移動を、測定光学系50の移動で補助できるので、被検眼Eに対する測定光学系50の位置調整をより円滑に行うことができる。
【0069】
さらに、眼科装置Aでは、測定光学系50を移動させる光学系移動部としてのXYZ駆動部18を備え、開始位置制御部632が、測定光学系50による眼情報の取得の対象を一方側の被検眼Eから他方側の被検眼Eに変更する際、XYZ駆動部18の駆動制御を行うことで、情報取得部631からの年齢情報に基づく年齢別瞳孔間基準距離(瞳孔間距離PDa、瞳孔間距離PDc)だけ測定光学系50を移動させる。このため、眼科装置Aは、初診の被検者Sであっても測定光学系50を年齢に応じた瞳孔間距離PDだけ移動させることができるので、一定の瞳孔間距離だけ移動させることと比較してより多くの被検者Sに対して適切に対応することができ、被検眼Eに対する測定光学系50の位置調整を円滑に行うことができる。
【0070】
眼科装置Aでは、情報取得部631が被検者Sの過去の測定データを取得することができ、その測定データを取得した場合には、開始位置制御部632が、測定光学系50による測定の開始の前に顎受け駆動部32を駆動させることで、測定データに基づく過去測定位置(過去の検査時の顔支持部30の位置)に顔支持部30を移動させる。このため、眼科装置Aは、初診の被検者Sであっても過去に検査している被検者Sであっても顔支持部30を適切な位置とすることができ、より多くの被検者Sに対して適切に対応することができ、被検眼Eに対する測定光学系50の位置調整を円滑に行うことができる。
【0071】
眼科装置Aでは、開始位置制御部632が、情報取得部631が取得した測定データにおける年齢情報に基づく年齢別初期位置と、現在の年齢情報に基づく年齢別初期位置と、が異なる場合には、測定光学系50による測定の開始の前に顎受け駆動部32を駆動させることで、過去測定位置から2つの年齢別初期位置の差分となる差分量(高さ差異Dh)だけ変位(補正)させた位置へと顔支持部30を移動させる。このため、眼科装置Aは、過去に検査している被検者Sに対して、その検査時の過去測定位置をそのまま用いる場合と、過去の検査時から現在までの時間の経過に応じた差分量だけ過去測定位置を変位させる場合と、を適宜使い分けることができる。これにより、眼科装置Aは、単純に過去の検査時の過去測定位置をそのまま用いるだけの場合と比較して、より多くの被検者Sに対して適切に対応することができ、被検眼Eに対する測定光学系50の位置調整を円滑に行うことができる。
【0072】
眼科装置Aでは、情報取得部631が、患者ID情報から年齢情報を取得する。このため、眼科装置Aは、一般的に用いられている患者ID情報から年齢情報を取得するので、顔支持部30の位置設定や測定光学系50による検査の左右の切り替えのためだけに新たな構成を設ける必要がなく、簡易な構成とすることができる。
【0073】
したがって、本開示に係る眼科装置の一実施例としての眼科装置Aでは、被検眼Eに対する取得光学系(測定光学系50)の位置調整を円滑に行うことができる。
【0074】
以上、本開示の眼科装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0075】
例えば、実施例1では、前眼部画像Ieを撮影するカメラとして、前眼部ステレオカメラ22を用いる例を示している。しかしながら、カメラは、顔支持部30に支持された被検者Sの被検眼Eを含む前眼部画像Ieを撮影するものであれば、単眼カメラであってもよく、ズーム機能を有するカメラであってもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0076】
また、実施例1では、眼科装置として、被検眼の前眼部像、被検眼の眼底像、被検眼の眼底断層像を観察、撮影および記録し、電子画像として診断のために提供する眼科装置Aへの適用例を示した。しかしながら、被検眼と取得光学系(実施例1では測定光学系50)との相対位置関係を調整する制御(アライメント制御)を行う必要のある眼科装置であれば、自覚眼科装置であるか他覚眼科装置であるかを問わず適用することができ、実施例1の構成に限定されない。
【0077】
さらに、実施例1では、情報取得部631が、患者ID情報から年齢情報を取得している。しかしながら、情報取得部631は、被検者Sの年齢情報を取得するものであれば、他の情報を用いても良く、操作部(上記した例ではコントロールパネル部40(表示画面41)や遠隔操作用タブレット40´(表示画面41´))で入力された情報を用いても良く、実施例1の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0078】
A 眼科装置 18 (光学系移動部の一例としての)XYZ駆動部 30 顔支持部 32 (顔支持駆動部の一例としての)顎受け駆動部 50 (取得光学系の一例としての)測定光学系 631 情報取得部 632 (制御部の一例としての)開始位置制御部 Dh (差分量の一例としての)高さ差異 E 被検眼 Eha (年齢別初期位置の一例としての)被検眼高さ Ehc (年齢別初期位置の一例としての)被検眼高さ PDa (年齢別瞳孔間基準距離の一例としての)瞳孔間距離 PDc (年齢別瞳孔間基準距離の一例としての)瞳孔間距離 S 被検者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8