(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116871
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】測距装置及び測距システム
(51)【国際特許分類】
G01S 17/42 20060101AFI20240821BHJP
G01S 17/86 20200101ALI20240821BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
G01S17/42
G01S17/86
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022701
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 克行
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】上橋 雅志
(72)【発明者】
【氏名】羽田 隆二
(72)【発明者】
【氏名】中野 尚久
(72)【発明者】
【氏名】小林 広幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄介
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 達哉
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 直人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美彦
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA05
2F112CA12
2F112DA09
2F112DA15
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA19
2F112FA35
2F112GA01
5J084AA05
5J084AA10
5J084AC02
5J084AC03
5J084AC04
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5J084BA40
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5J084BB25
5J084BB26
5J084BB27
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA32
5J084CA65
5J084CA67
5J084CA70
5J084EA04
5J084EA22
(57)【要約】
【課題】課題は、解像度を維持しつつ、注目する範囲を測距することが可能な測距装置及び測距システムを提供すること。
【解決手段】実施形態の測距装置は、光源23と、可動ミラー251と、光センサ26と、計測回路27と、第1制御回路21とを含む。可動ミラー251は、光源23から出射された第1レーザー光と、外部の被写体により反射された第1レーザー光に対応する第2レーザー光とのそれぞれを反射可能に設けられる。光センサ26は、可動ミラー251により反射された第2レーザー光を検出する。計測回路27は、光源23が第1レーザー光を出射したタイミングと、光センサ26が第2レーザー光を検出したタイミングとに基づいて、被写体との距離を計測する。第1制御回路21は、外部からの第1信号に基づいて、第1レーザー光の出射方向を変更する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射された第1レーザー光と、外部の被写体により反射された前記第1レーザー光に対応する第2レーザー光とのそれぞれを反射可能な可動ミラーと、
前記可動ミラーにより反射された前記第2レーザー光を検出する光センサと、
前記光源が前記第1レーザー光を出射したタイミングと、前記光センサが前記第2レーザー光を検出したタイミングとに基づいて、前記被写体との距離を計測する計測回路と、
外部からの第1信号に基づいて、前記第1レーザー光の出射方向を変更する第1制御回路と、
を備える、測距装置。
【請求項2】
前記第1制御回路は、等速で回転する前記可動ミラーが1回転する間に前記光源が前記第1レーザー光を間欠的に出射するタイミングを変更することによって、前記第1レーザー光の出射方向を変更する、
請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
輸送機器に搭載される測距システムであって、
請求項1に記載の測距装置と、
情報を収集する情報収集装置と、前記情報に基づいて前記第1信号を生成する第2制御回路と、を備える、
測距システム。
【請求項4】
前記情報収集装置は、GNSS(Global Navigation Satellite System)装置を含み、
前記GNSS装置は、前記輸送機器の現在位置を衛星信号に基づいて算出し、前記情報の一部として出力する、
請求項3に記載の測距システム。
【請求項5】
前記輸送機器の進行経路の位置情報に関連付けられた測距方向の情報を含む第1データベースを記憶する記憶装置をさらに備え、
前記第2制御回路は、前記GNSS装置から受け取った前記輸送機器の現在位置の情報を用いて前記第1データベースを参照して、前記光源が現在位置に関連付けられた測距方向に前記第1レーザー光を出射するための制御パラメータを含む前記第1信号を生成する、
請求項4に記載の測距システム。
【請求項6】
前記情報収集装置は、カメラを含み、
前記カメラは、撮影した画像を前記情報の一部として出力する、
請求項3に記載の測距システム。
【請求項7】
前記第2制御回路は、前記画像から前記輸送機器の進行経路を検出し、検出した前記進行経路に基づいて前記第1信号を生成する、
請求項6に記載の測距システム。
【請求項8】
前記第2制御回路は、前記光源が前記輸送機器からの距離が第1の距離である部分を含む方向に前記第1レーザー光を出射するための制御パラメータを含む前記第1信号を生成する、
請求項7に記載の測距システム。
【請求項9】
前記第1の距離は、前記進行経路に沿った距離である、
請求項8に記載の測距システム。
【請求項10】
前記第2制御回路は、前記画像から支障物を検出し、前記光源が前記支障物の位置に前記第1レーザー光を出射することが可能な制御パラメータを含む前記第1信号を生成する、
請求項6に記載の測距システム。
【請求項11】
前記支障物に対応する複数の障害物のそれぞれの形状の情報を含む第2データベースを記憶する記憶装置をさらに備え、
前記第2制御回路は、前記画像において前記複数の障害物のそれぞれの形状の情報との類似度の高い部分を、前記支障物が存在すると判定する、
請求項10に記載の測距システム。
【請求項12】
前記第2制御回路は、前記画像から前記輸送機器の進行経路を検出し、前記支障物が前記進行経路上に位置する場合に、前記光源が前記支障物の位置を含む方向に前記第1レーザー光の出射することが可能な制御パラメータを含む前記第1信号を生成する、
請求項10に記載の測距システム。
【請求項13】
前記測距システムを搭載する可動台をさらに備え、
前記第2制御回路は、前記情報に基づいて前記可動台を制御することによって、前記第1レーザー光の出射方向を変更する、
請求項3に記載の測距システム。
【請求項14】
前記輸送機器は、鉄道車両である、
請求項3乃至請求項13のいずれかに記載の測距システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、測距装置及び測距システムに関する。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(Light Detection and Ranging)と呼ばれる測距装置が知られている。LiDARは、レーザー光を測距ターゲットに向けて出射する。出射されたレーザー光は、測距ターゲットにより反射され、LiDARの光センサによって検出される。これにより、LiDARは、レーザー光を出射した時間と、測距ターゲットにより反射されたレーザー光を検出した時間とに基づいて、LiDARと測距ターゲットとの間の距離を計測することができる。LiDARにおいて、取得可能な距離情報の画角と解像度とは、トレードオフの関係を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
課題は、解像度を維持しつつ、注目する範囲を測距することが可能な測距装置及び測距システムを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の測距装置は、光源と、可動ミラーと、光センサと、計測回路と、第1制御回路とを含む。可動ミラーは、光源から出射された第1レーザー光と、外部の被写体により反射された第1レーザー光に対応する第2レーザー光とのそれぞれを反射可能に設けられる。光センサは、可動ミラーにより反射された第2レーザー光を検出する。計測回路は、光源が第1レーザー光を出射したタイミングと、光センサが第2レーザー光を検出したタイミングとに基づいて、被写体との距離を計測する。第1制御回路は、外部からの第1信号に基づいて、第1レーザー光の出射方向を変更する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る測距システムの構成の一例を示す概略図。
【
図2】第1実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態に係る測距装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図4】第1実施形態に係る測距装置が備える光学系の構成の一例を示す概略図。
【
図5】第1実施形態に係る測距装置によるスキャン領域の構成の一例を示す概略図。
【
図6】第1実施形態に係る測距装置における測距方向の設定例を示すタイミングチャート。
【
図7】第1実施形態に係る測距システムの機能構成の一例を示すブロック図。
【
図8】第1実施形態に係る測距システムの測距動作の一例を示すフローチャート。
【
図9】第2実施形態に係る測距システムの構成の一例を示す概略図。
【
図10】第2実施形態に係る測距システムの機能構成の一例を示すブロック図。
【
図11】第3実施形態に係る測距システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図12】第3実施形態に係る測距システムの機能構成の一例を示すブロック図。
【
図13】第3実施形態に係る測距システムの測距方向調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図14】第3実施形態に係る測距システムによる測距方向の調整例を示す概略図。
【
図15】第4実施形態に係る測距システムの機能構成の一例を示すブロック図。
【
図16】第4実施形態に係る測距システムの測距方向調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図17】第4実施形態に係る測距システムによる測距方向の調整例を示す概略図。
【
図18】第5実施形態に係る測距システムの機能構成の一例を示すブロック図。
【
図19】第5実施形態に係る測距システムの測距方向調整動作の一例を示すフローチャート。
【
図20】第5実施形態に係る測距システムによる測距方向の調整例を示す概略図。
【
図21】第6実施形態に係る情報処理装置に記憶された設定情報の一例を示すテーブル。
【
図22】第6実施形態に係る測距システムの測距方向調整動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は、模式的又は概念的なものである。各図面の寸法及び比率等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素には、同一の符号が付加されている。
【0008】
<1>第1実施形態
以下に、第1実施形態に係る測距システム1について説明する。
【0009】
<1-1>構成
<1-1-1>測距システム1の構成
図1は、第1実施形態に係る測距システム1の構成の一例を示す概略図である。
図1は、測距システム1を備える輸送機器VEが所定の経路を移動している状況を示している。
図1に示すように、測距システム1は、情報処理装置10及び測距装置20を備える。輸送機器VEは、例えば、車両、列車、航空機、船舶である。
【0010】
情報処理装置10は、例えば、自身の状態や、輸送機器VEの現在位置や、周辺環境などの情報を収集する装置を有する。また、情報処理装置10は、測距装置20を制御可能に構成される。情報処理装置10は、収集した情報に基づいて、測距装置20に対して測距方向を指示し得る。なお、情報処理装置10は、輸送機器VEの加減速や進行方向などを制御可能に構成されてもよい。すなわち、情報処理装置10は、輸送機器VEの自律走行を支援する機能を有していてもよい。
【0011】
測距装置20は、LiDARの一種である。測距装置20は、レーザー光を出射し、被写体(測距ターゲット)により反射されたレーザー光を検出する。そして、測距装置20は、レーザー光の出射時刻と反射されたレーザー光の検出時刻とに基づいて、測距装置20と被写体との間の距離を計測する。測距装置20は、例えば、輸送機器VEの前方に搭載(設置)され、輸送機器VEの進行方向における所定の画角の距離情報を取得する。また、測距装置20は、情報処理装置10の指示に基づいて、画角を変更することなく測距方向を変更し得る。本明細書では、測距装置20の画角、すなわち測距装置20により測距される範囲のことを、“FOV(Field Of View)”とも呼ぶ。
【0012】
<1-1-2>情報処理装置10の構成
図2は、第1実施形態に係る情報処理装置10の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、情報処理装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ装置14、ユーザインターフェース15、通信インターフェース16、及び情報収集装置17を備える。
【0013】
CPU11は、様々なプログラムを実行することが可能な集積回路である。CPU11、情報処理装置10の全体の動作を制御する。ROM12は、不揮発性の半導体メモリである。ROM12は、情報処理装置10の制御プログラムや制御データ等を記憶する。RAM13は、例えば、揮発性の半導体メモリである。RAM13は、CPU11の作業領域として使用される。例えば、RAM13には、ROM12に記憶された制御プログラムや制御データ等が展開される。ストレージ装置14は、データやプログラム等の記憶に使用される記憶媒体である。ストレージ装置14には、例えば、輸送機器VEが移動可能な経路の情報を含む地図情報が記憶される。
【0014】
ユーザインターフェース15は、ユーザにより使用される入力インターフェースである。ユーザは、ユーザインターフェース15を用いて、情報処理装置10を操作し得る。通信インターフェース16は、ネットワークに接続可能なインターフェース回路である。通信インターフェース16は、測距装置20と通信可能に構成される。すなわち、情報処理装置10は、通信インターフェース16を介して測距装置20を制御し得る。情報収集装置17は、現在位置に関する情報や輸送機器VEの状態に関する情報や輸送機器VEの周囲に関する情報を収集する。情報収集装置17は、例えば、カメラやセンサ等を含む。
【0015】
なお、ストレージ装置14に記憶される情報は、ネットワーク上のサーバーを介してダウンロードされてもよい。ストレージ装置14や情報収集装置17は、情報処理装置10に外部接続されてもよい。情報処理装置10は、ネットワーク上の端末の制御に基づいて動作してもよいし、ネットワーク上のサーバーに記憶された情報に基づいて動作してもよい。情報処理装置10は、ネットワークを介して接続された複数の装置により構築されたシステムであってもよい。情報処理装置10により使用されるネットワークは、有線であってもよいし、無線であってもよいし、有線と無線との両方が使用されてもよい。
【0016】
<1-1-3>測距装置20の構成
図3は、第1実施形態に係る測距装置20の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、測距装置20は、例えば、測距制御装置21、レーザードライバ22、レーザーダイオード23、ミラー制御装置24、光学系25、光センサ26、及び計測装置27を備える。光学系25は、例えば、回転ミラー251を含む。
【0017】
測距制御装置21は、測距装置20の全体の動作を制御する。測距制御装置21は、例えば、CPU、ROM、RAM、及び発振器を含む(図示せず)。測距制御装置21のROMは、測距装置20の制御プログラム等を記憶する。測距制御装置21のCPUは、制御プログラムに従って、レーザードライバ22、ミラー制御装置24、光センサ26、及び計測装置27を制御する。測距制御装置21のRAMは、CPUの作業領域として使用される。発振器は、間欠的なパルス信号の生成に使用される。測距制御装置21は、様々なデータ処理や、演算処理を実行可能に構成されてもよい。
【0018】
レーザードライバ22は、レーザーダイオード23を駆動する。すなわち、レーザードライバ22は、レーザーダイオード23の電流供給源として機能する。レーザーダイオード23は、レーザードライバ22により供給された駆動電流に基づいて、レーザ光を出射する。レーザーダイオード23により出射されたレーザ光は、光学系25に入射する。測距制御装置21は、レーザーダイオード23が間欠的にレーザー光を出射するようにレーザードライバ22を制御する。以下では、パルス信号に基づいて生成されるレーザー光のことを、“パルスレーザー”とも呼ぶ。測距装置20において、パルスレーザーは、所定のパルス幅及び周期で出射される。
【0019】
ミラー制御装置24は、光学系25に含まれた回転ミラー251を駆動する。すなわち、ミラー制御装置24は、回転ミラー251を回転させるためのモーターの電源回路として機能する。回転ミラー251は、ミラー制御装置24により供給された駆動電流に基づいて駆動(回転)し、入射したレーザー光を反射する。回転ミラー251は、例えば、1つの軸を中心として回転可能に構成される。回転ミラー251は、両面ミラーであってもよいし、3以上の反射面(鏡面)を有するポリゴンミラーであってもよい。光学系25は、レーザーダイオード23や光センサ26の配置に応じた光学素子をさらに有する。光学系25の詳細な構成については後述する。なお、回転ミラー251の回転数は、測距制御装置21の指示に基づいて変更され得る。回転ミラー251は、2軸のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーであってもよい。回転ミラー251としては、回転ミラーと、一部の領域のスキャンに割り当てられた1軸のMEMSミラーとの組み合わせが使用されてもよい。回転ミラー251は、“可動ミラー”と呼ばれてもよい。
【0020】
光センサ26は、測距装置20に入射した光を検知する受光素子である。光センサ26は、レーザーダイオード23から出射され且つ測距装置20の外部の対象物により反射されたレーザー光が、光学系25を介して入射するように配置される。そして、光センサ26は、測距装置20に入射したレーザー光を電気信号に変換する。それから、光センサ26は、変換した電気信号の出力レベルを調整して、計測装置27に出力する。光センサ26は、光を電気信号に変換する素子として、例えば、光電子増倍素子を含む。光電子増倍素子としては、例えば、アバランシェフォトダイオードの一種である単一光子アバランシェダイオード(SPAD:Single-Photon Avalanche Diode)が使用される。
【0021】
計測装置27は、光センサ26から転送された受光結果に基づいて、光センサ26がレーザー光を検出した時刻を計測する。例えば、計測装置27は、受光結果を測距点数に応じて単位時間毎に積算し、積算された信号のピーク部分をレーザー光の検出時刻として判定する。そして、計測装置27は、レーザーダイオード23がレーザー光を出射した時刻と、被写体により反射されたレーザー光を検出した時刻との差に基づいて、レーザー光の飛行時間(ToF:Time of Flight)を算出する。それから、計測装置27は、レーザー光の飛行時間とレーザー光の速度とに基づいて、測距装置20と被写体との間の距離を計測(測距)する。このような測距方法は、“ToF方式”とも呼ばれる。計測装置27は、測距装置20が出射するレーザー光毎に、測距結果を情報処理装置10に出力する。
【0022】
なお、計測装置27は、レーザーダイオード23がレーザー光を出射した時刻を、例えば、測距制御装置21からの通知により取得する。レーザー光が出射された時刻は、レーザーダイオード23から出射されたレーザー光を測距装置20内の光センサによって検出することによって計測されてもよい。計測装置27は、測距制御装置21の指示に基づいて、受光結果の積算設定を変更し得る。
【0023】
また、測距制御装置21は、情報処理装置10の指示に基づいて、レーザーダイオード23にパルスレーザーを出射させる周期及びタイミングや、回転ミラー251の回転速度や、計測装置27による受光結果の積算設定などを変更することができる。これにより、測距制御装置21は、測距装置20の画角及び測距点数を変更することができる。言い換えると、測距制御装置21は、情報処理装置10から転送された画角及び測距点数の設定に基づいて、レーザードライバ22、ミラー制御装置24、及び計測装置27のそれぞれの設定を連携して変更することができる。
【0024】
(光学系25の構成)
図4は、第1実施形態に係る測距装置20が備える光学系25の構成の一例を示す概略図である。
図4は、レーザーダイオード23、光センサ26、及び物体OBも併せて示している。
図4に示すように、光学系25は、例えば、光学素子252、253及び254をさらに有する。光学素子252及び254のそれぞれは、例えば、レンズやミラーである。光学素子252及び254のそれぞれは、複数のレンズ及び複数のミラーの組み合わせにより構成されてもよい。光学素子253は、例えば、ハーフミラーや穴あきミラーである。以下では、レーザーダイオード23により出射されるパルスレーザーのことを、“出射光LE”とも呼ぶ。物体OBにより反射されたパルスレーザー(出射光LE)のことを、“反射光LR”とも呼ぶ。
【0025】
光学素子252は、レーザーダイオード23から出射された出射光LEを、光学素子253に導く。光学素子252により導かれた出射光LEは、光学素子253を透過又は通過して、回転ミラー251に照射される。回転ミラー251は、照射された出射光LEを、照射面に対する出射光LEの入射角度に応じた方向に反射する。反射された出射光LEは、測距装置20の外部で出射光LEの進行方向に位置する物体OBにより反射される。 物体OBからの反射光LRは、回転ミラー251により反射されて、光学素子253に照射される。光学素子253は、回転ミラー251により反射された反射光LRを、光学素子254に向けて反射する。光学素子254は、光学素子253により反射された反射光LRを、光センサ26に導く。光センサ26は、光学素子254により導かれた反射光LRを電気信号に変換して、計測装置27に出力する。
【0026】
本明細書では、回転ミラー251が6つの反射面S1~S6を有するポリゴンミラーである場合が例示されている。反射面S1~S6のそれぞれのチルト角は、異なっている。測距制御装置21は、一定の画角及び測距レートに基づいた一定の回転速度で回転するように回転ミラー251を制御する。測距装置20は、間欠的に出射される出射光LEと回転ミラー251とによって、測距したい場所を2次元的にスキャンすることができる。
【0027】
以下では、測距装置20によりスキャンされ得る領域のことを、“スキャン領域SA”と呼ぶ。1回のスキャンに対応する複数点の測距結果の組のことを“フレーム”と呼ぶ。1フレームの画像は、例えば、回転ミラー251の1回転に対応して生成される。測距装置20は、スキャンを連続的に実行することによって、測距装置20の前方の物体OBとの距離情報を逐次取得することができる。なお、光学系25は、レーザー光を用いたスキャンが可能な構成を有していれば良く、その他の構成であってもよい。
【0028】
(スキャン領域SAの構成)
図5は、第1実施形態に係る測距装置20によるスキャン領域SAの構成の一例を示す概略図である。
図5は、スキャン領域SAにおける1フレーム分の出射光LEの出射方向の一例を示している。
図5に示すように、出射光LEは、PQR空間に照射される。R軸は、測距装置20から被写体に向かう軸であり、例えば、出射光LEの出射方向の中心に沿っている。PQ面は、R軸に直交し、出射光LEの出射口から同心円状に広がる曲面である。P軸及びQ軸は、PQ面内において互いに直交する軸である。各出射光LEに基づいて計測される距離データは、例えば、PQ面への写像として生成される。測距システム1は、空間PQRに存在する物体までの距離データをスキャン領域SA内のFOVに対応づけてマッピングし、FOVに存在する物体までの距離を認識することができる。
【0029】
具体的には、測距制御装置21は、設定されたFOVに基づいたタイミングで出射光LEを間欠的に出射するようにレーザードライバ22やミラー制御装置24等を制御することによって、P方向(横方向)のスキャンを実現する。6つの反射面S1~S6を有する回転ミラー251が使用される場合、スキャン領域SAは、第1行SS1~第6行SS6を含む。第1行SS1~第6行SS6のスキャン位置は、それぞれ反射面S1~S6のチルト角に基づいている。すなわち、測距装置20は、回転ミラー251の回転により異なる反射面に出射光LEが照射されることによって、Q方向(縦方向)でシフトした複数行のスキャンを実現する。さらに、測距装置20は、出射光LEの出射タイミングを調整することによって、測距方向(FOVの位置)を変更できる。
【0030】
図5には、3種類のFOV1~FOV3が示されている。FOV1、FOV2及びFOV3は、スキャン領域SAの左側部分、中間部分、右側部分にそれぞれ対応付けられている。本例では、FOV2に対応する出射光LEが示されている。FOV2の測距を実行する場合、測距制御装置21は、FOV2において間欠的に出射光LEが出射されるように、レーザードライバ22やミラー制御装置24等を制御する。これにより、測距装置20は、FOV2における距離情報を取得できる。また、測距装置20は、FOV2と同様に、FOV1及びFOV3のそれぞれに向けて選択的に出射光LEを出射し、対応付けられたFOVの距離情報を取得することができる。なお、本例では、互いに重ならない3種類のFOVが例示されているが、FOVの位置はこれらに限定されない。測距装置20は、スキャン領域SA内であれば、FOVの位置を任意の位置に変更することができる。
【0031】
なお、測距装置20は、1つの出射光LEに基づいて、1次元に配列された複数の画素(距離データ)を生成し得る。1次元に配列された複数の画素は、例えば、Q軸に沿って並ぶ。測距装置20は、1つの出射光LEに関連付けられた計測に関する計測周期の処理を、第1行SS1~第6行SS6のそれぞれでP軸に沿って1次元的にシフトさせながら繰り返し実行する。これにより、測距装置20は、設定されたFOVにおける距離データを生成することができる。このようなスキャン方法は、“マルチチャネルラスタスキャン”とも呼ばれる。マルチチャネルラスタスキャンを実現する手段としては、縦方向に細長い形状の照射面を有する出射光LEが使用される。なお、測距装置20の1回のスキャンにおける行数やスキャン方向は、その他の設定であってもよい。
【0032】
(測距装置20の測距方向の設定例)
以下に、測距装置20の測距方向の設定例について説明する。
【0033】
測距装置20において、回転ミラー251の回転速度は、例えば、一定である。このため、回転ミラー251による出射光LEの反射方向は、回転ミラー251の初期位置からの時間経過に基づいて決定され得る。従って、測距装置20は、出射光LEの出射方向を、回転ミラー251の初期位置からの時間経過に基づいて制御することができる。すなわち、測距装置20は、出射光LEの出射タイミングを制御することによって、回転ミラー251の回転数を細かく制御することなく、測距方向を制御することができる。
【0034】
図6は、第1実施形態に係る測距装置20における測距方向の設定例を示すタイミングチャートである。
図6は、
図4に示された光学系25の構成で、
図5で例示されたFOV1~FOV3のそれぞれに対応する測距方向を設定する方法の一例を示している。
図6の“アクティブ(状態)”は、測距制御装置21がレーザードライバ22にパルス信号を供給し、レーザーダイオード23が出射光LEを間欠的に出射する状態を示している。
図6の“非アクティブ(状態)”は、測距制御装置21がレーザードライバ22にパルス信号を供給せず、レーザーダイオード23が出射光LEを出射しない状態を示している。
【0035】
図6に示すように、本例において、1フレームは、6つの期間P1~P6に分割される。期間P1~P6は、出射光LEが、回転ミラー251の反射面S1~S6によりそれぞれ反射される期間に対応する。期間P1は、時刻t1-1、t1-2及びt1-3を含む。期間P2は、時刻t2-1、t2-2及びt2-3を含む。期間P3は、時刻t3-1、t3-2及びt3-3を含む。期間P4は、時刻t4-1、t4-2及びt4-3を含む。期間P5は、時刻t5-1、t5-2及びt5-3を含む。期間P6は、時刻t6-1、t6-2及びt6-3を含む。時刻t1-1、t2-1、t3-1、t4-1、t5-1、及びt6-1は、それぞれ期間P1~P6の開始時刻に対応する。時刻t1-2、t2-2、t3-2、t4-2、t5-2、及びt6-2は、それぞれ期間P1~P6の開始時刻から第1時間経過した後の時刻に対応する。時刻t1-3、t2-3、t3-3、t4-3、t5-3、及びt6-3は、それぞれ期間P1~P6の開始時刻から第1時間よりも長い第2時間経過した後の時刻に対応する。
【0036】
FOV1を測距する設定では、測距装置20が、時刻t1-1、t2-1、t3-1、t4-1、t5-1、及びt6-1のそれぞれを起点としたサブ期間SP1においてアクティブ状態になり、その他の期間において非アクティブ状態になる。この場合、測距装置20は、スキャン領域SAの左側部分において出射光LEを間欠的に照射し、サブ期間SP1に対応付けられた測距方向(FOV1)を測距することができる。
【0037】
FOV2を測距する設定では、測距装置20が、時刻t1-2、t2-2、t3-2、t4-2、t5-2、及びt6-2のそれぞれを起点としたサブ期間SP2においてアクティブ状態になり、その他の期間において非アクティブ状態になる。この場合、測距装置20は、スキャン領域SAの中間部分において出射光LEを間欠的に照射し、サブ期間SP2に対応付けられた測距方向(FOV2)を測距することができる。
【0038】
FOV3を測距する設定では、測距装置20が、時刻t1-3、t2-3、t3-3、t4-3、t5-3、及びt6-3のそれぞれを起点としたサブ期間SP3においてアクティブ状態になり、その他の期間において非アクティブ状態になる。この場合、測距装置20は、スキャン領域SAの右側部分において出射光LEを間欠的に照射し、サブ期間SP3に対応付けられた測距方向(FOV3)を測距することができる。
【0039】
以上で説明されたように、測距装置20は、レーザードライバ22にパルス信号を供給するタイミングを制御することによって、測距方向を調整することができる。なお、画角を固定した状態で測距方向のみが変更される場合、サブ期間SP1、SP2及びSP3のそれぞれの長さは、略等しく設定される。これは、測距方向が上記のFOV1~FOV3と異なるFOVに設定された場合においても同様である。また、注目する範囲をFOVに含めることが可能であれば、期間P1~P6の間で、サブ期間SPの開始タイミング及び終了タイミングがずれていてもよい
<1-1-4>測距システム1の機能構成
図7は、第1実施形態に係る測距システム1の機能構成の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、測距システム1において、情報処理装置10は、情報処理部101及び画像処理部102として機能し、測距装置20は、出射制御部201、投光部202、受光部203、及び計測部204として機能する。情報処理部101は、例えば、CPU11、RAM13、及び情報収集装置17に対応する機能ブロックである。画像処理部102は、例えば、CPU11及びRAM13に対応する機能ブロックである。出射制御部201は、例えば、測距制御装置21及びレーザードライバ22に対応する機能ブロックである。投光部202は、レーザーダイオード23及び光学系25に対応する機能ブロックである。受光部203は、光学系25及び光センサ26に対応する機能ブロックである。計測部204は、計測装置27に対応する機能ブロックである。
【0040】
情報処理部101は、情報収集装置17のセンサ等から取得された情報に基づいて、測距装置20の測距方向(FOV)を決定する。そして、情報処理部101は、決定したFOVに対応する制御パラメータを、出射制御部201と画像処理部102とのそれぞれに送信する。出射制御部201は、情報処理部101から受け取った制御パラメータに基づいて、投光部202にパルス信号を供給する。投光部202は、出射制御部201から受け取ったパルス信号に応じて出射光LEを出射する。また、投光部202は、回転ミラー251の回転と、出射制御部201による出射光LEの出射タイミングとの制御に基づいて、情報処理部101により決定された測距方向(FOV)をスキャンする。
【0041】
受光部203は、FOV内の物体OBから反射された反射光LRを受光して、電気信号に変換する。そして、受光部203は、変換した電気信号(受光結果)を計測部204に送信する。計測部204は、受光部203から受け取った各出射光LEの受光結果に基づいて、各測距点における距離データを生成する。また、計測部204は、生成した距離データを、画像処理部102に送信する。画像処理部102は、計測部204から受け取った距離データと、情報処理部101から受け取った測距方向の情報とを用いて、フレーム単位で画像を生成する。画像処理部102により生成された画像は、測距装置20とFOV内の物体OBとの間の距離情報を含む。画像処理部102により生成された画像は、例えば、測距システム1が設置された車両などの制御プログラムによって参照される。
【0042】
<1-2>動作
図8は、第1実施形態に係る測距システム1の測距動作の一例を示すフローチャートである。以下に、
図8を参照して、第1実施形態に係る測距システム1の測距動作について説明する。
【0043】
測距システム1は、例えば、輸送機器VEが動作を開始すると、測距動作を開始する(開始)。
【0044】
まず、測距システム1は、測距設定をロードする(S11)。測距設定は、例えば、画角、解像度、測距方向などの設定を含む。
【0045】
次に、測距システム1は、ロードした測距設定に基づいて測距を開始する(S12)。すなわち、情報処理装置10が、測距設定に基づく制御パラメータを測距装置20に送信する。そして、測距装置20が、受け取った制御パラメータに基づいた画角、解像度及び測距方向で測距を開始する。
【0046】
次に、測距システム1は、情報解析処理を実行する(S13)。情報解析処理は、情報処理装置10が情報収集装置17のカメラやセンサなどによって収集された情報を解析する処理である。情報処理装置10が解析する情報の具体例については、第3~第5実施形態で説明する。
【0047】
次に、測距システム1は、解析された情報に基づいて測距装置20の測距方向を調整する(S14)。すなわち、情報処理装置10が、S13の処理における解析結果に基づいたFOVに対応する制御パラメータを、測距装置20に送信する。そして、測距装置20は、受け取った制御パラメータに基づいて、測距方向を調整する。測距装置20は、測距方向の調整に、例えば、
図6を用いて説明された方法を使用する。S14の処理において、情報処理装置10は、出射光LEの出射タイミングを測距装置20に指示してもよいし、プリセットされたFOVの設定から解析結果に基づくFOVの設定を指定してもよい。なお、以下では、S13及びS14の処理の組のことを、“測距方向調整動作”とも呼ぶ。
【0048】
次に、測距システム1は、測距動作の終了指示を受信したか否かを確認する(S15)。測距動作の終了指示は、ユーザインターフェース15を介して受け取ってもよいし、所定の条件に応じて生成されてもよい。
【0049】
S15の処理において測距動作の終了指示を受信していない場合(S15:NO)、S13の処理に進む。これにより、定期的にS13及びS14の処理が実行され、輸送機器VEの動作時において、測距方向が適宜変更される。
【0050】
S15の処理において測距動作の終了指示を受信した場合(S15:YES)、測距システム1は、
図8の一連の処理を終了する(終了)。
【0051】
<1-3>第1実施形態の効果
以上で説明された第1実施形態に係る測距システム1に依れば、解像度を維持しつつ、注目する範囲を測距することができる。以下に、第1実施形態の効果の詳細について説明する。
【0052】
輸送機器VEの前方の被写体を検知する方法として、単眼カメラやステレオカメラを用いた手法が知られている。一方で、これらのカメラは、長距離の被写体の検出精度に課題を有する。これに対して、長距離の測距が可能な測距装置として、ToF方式を利用したLiDARが知られている。LiDARは、レーザー光の出射及び受光の組毎に測距する。このため、LiDARの単位面積当たりの測距点数、すなわちLiDARの測距点数は、受光だけで画像を得ることが可能なカメラと比べて少ない。カメラにより取得される2次元画像は、例えば、2~20メガピクセルである。一方で、LiDARの1フレームで測距可能な点数は、例えば、0.1~0.2メガピクセル程度である。
【0053】
このように、LiDARは、1フレームで測距可能な点数に制限を有する。測距点数が固定されている場合、LiDARの解像度は、画角が広く設定されるほど低く、画角が狭く設定されるほど高くなる。従って、LiDARにおいて要求される解像度を満たす方法としては、画角を狭くする、すなわちスキャン領域SA内の一部の測距方向(FOV)に集中して出射光LEを出射することが考えられる。これにより、LiDARは、高い解像度の測距結果を取得することができ、長距離の被写体の検出精度を向上させることができる。しかしながら、狭い画角に設定されたLiDARでは、輸送機器VEが注目すべき方向への測距がおろそかになるおそれがある。
【0054】
そこで、第1実施形態に係る測距システム1では、情報処理装置10が、センサ等により収集した情報に基づいて、測距装置20(LiDAR)の測距方向を制御する。具体的には、情報処理装置10は、収集した情報に基づいて、注目すべき被写体を含むように、測距装置20の測距方向(FOV)を決定する。そして、情報処理装置10は、決定した測距方向の設定を測距装置20に通知する。測距装置20は、情報処理装置10からの通知に基づいて、出射光LEの出射タイミングを変更する。これにより、測距装置20は、スキャン領域SA内で出射光LEを照射する画角を固定しつつ、測距方向を輸送機器VEが移動する上で注目すべき方向に変更することができる。
【0055】
以上で説明されたように、第1実施形態に係る測距システム1は、測距方向や解像度等を適切に設定することによって、長距離の被写体の検出精度を高めることができる。そして、測距システム1は、輸送機器VEの前方でユースケースから要求される測距領域、すなわち注目する範囲の測距において、要求される測距解像度を確保することができる。また、測距システム1は、カメラ等で視界を確保できない領域における被写体の情報を、測距装置20の方向制御により取得することができる。従って、測距システム1を利用する輸送機器VEは、移動時における安全性を向上させることができる。
【0056】
<2>第2実施形態
第2実施形態に係る測距システム1Aは、LiDARの筐体が設置された可動台を利用することによって、LiDARの測距方向を変更する。以下に、第2実施形態に係る測距システム1Aについて、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0057】
<2-1>構成
<2-1-1>測距システム1Aの構成
図9は、第2実施形態に係る測距システム1Aの構成の一例を示す概略図である。
図9に示すように、測距システム1Aは、例えば、情報処理装置10A(図示せず)、測距装置20、及び可動台30を備える。
【0058】
情報処理装置10Aは、第1実施形態に係る情報処理装置10と同様の構成を有し、可動台30をさらに制御する。情報処理装置10Aは、情報収集装置17により収集された情報に基づく制御信号を可動台30に供給する。測距システム1Aにおいて、測距装置20は、可動台30の上に設置されている。可動台30は、情報処理装置10Aの制御に基づいて駆動する台である。可動台30は、例えば、1つの軸を中心として回転可能に構成される。可動台30が回転すると、可動台30上の測距装置20も回転する。なお、可動台30は、多軸で稼働するように構成されてもよい。例えば、可動台30は、測距装置20の向きを、水平方向と垂直方向との両方で変えることが可能に構成されてもよい。測距装置20が、可動台30としての機能を有していてもよい。
【0059】
<2-1-2>測距システム1Aの機能構成
図10は、第2実施形態に係る測距システム1Aの機能構成の一例を示すブロック図である。
図10に示すように、情報処理装置10Aは、情報処理部101A及び画像処理部102として機能し、測距装置20は、第1実施形態と同様に、出射制御部201、投光部202、受光部203、及び計測部204として機能し、可動台30は、モーター制御部301として機能する。情報処理部101Aは、例えば、CPU11、RAM13、及び情報収集装置17に対応する機能ブロックである。モーター制御部301は、可動台30に対応する機能ブロックである。
【0060】
情報処理部101Aは、第1実施形態の情報処理部101と同様に、情報収集装置17のセンサ等から取得された情報に基づいて、測距装置20の測距方向(FOV)を決定する。そして、情報処理部101Aは、決定したFOVに対応する測距方向の制御パラメータを、モーター制御部301と出射制御部201とのそれぞれに送信する。モーター制御部301は、情報処理部101から受け取った制御パラメータに基づいて可動台30を駆動(回転)させ、測距装置20の出射口の向きを調整する。出射制御部201は、第1実施形態と同様に、情報処理部101Aから受け取った制御パラメータに基づいて、投光部202にパルス信号を供給する。
【0061】
第2実施形態に係る測距システム1Aのその他の構成及び動作は、第1実施形態に係る測距システム1と同様である。なお、モーター制御部301へ送信される制御パラメータと、出射制御部201へ送信される制御パラメータとは、異なっていてもよい。情報処理部101Aにより送信される制御パラメータは、決定したFOVに対応する測距が可能なように、モーター制御部301と出射制御部201とのそれぞれに最適化されていればよい。第2実施形態において、測距装置20の測距方向は、測距装置20の測距タイミングを変更することなく、可動台30の駆動のみを利用して変更されてもよい。
【0062】
<2-2>第2実施形態の効果
第2実施形態に係る測距システム1Aは、情報処理装置10の制御に基づいて駆動する可動台30を備える。そして、可動台30は、情報処理装置10により決定されたFOVの設定に基づいて、測距装置20の測距方向を制御可能に構成される。これにより、第2実施形態に係る測距システム1Aは、スキャン可能な領域を広げることができ、第1実施形態に係る測距システム1よりも広範囲に測距方向を調整することができる。
【0063】
<3>第3実施形態
第3実施形態に係る測距システム1Bは、鉄道車両RVに搭載され、鉄道車両RVの位置情報に基づいて測距装置20の測距方向を変更する。以下に、第3実施形態に係る測距システム1Bについて、第1及び第2実施形態と異なる点を説明する。
【0064】
<3-1>構成
<3-1-1>測距システム1Bの構成
図11は、第3実施形態に係る測距システム1Bの構成の一例を示すブロック図である。
図11に示すように、測距システム1Bは、情報処理装置10B、及び測距装置20を備える。情報処理装置10Bは、第1実施形態に係る情報処理装置10が、鉄道車両RV向けの自律走行システムとして適応した構成を有している。具体的には、情報処理装置10Bは、列車制御装置40、車速制御装置41、画像処理装置42、車速センサ43、GNSS(Global Navigation Satellite System)装置44、カメラ45、及び線路情報データベース46を備える。
【0065】
列車制御装置40は、車速センサ43から取得された車速情報や、画像処理装置42からの指示や、線路情報データベース46から取得された運行情報等に基づいて、鉄道車両RVの加減速に関する制御信号を生成する。画像処理装置42から得られる情報は、例えば、鉄道車両RVの位置情報を含む。そして、列車制御装置40は、生成した制御信号を車速制御装置41に送信する。これにより、列車制御装置40は、駅と駅の間で速度を調整して鉄道車両RVの走行を制御する。
【0066】
車速制御装置41は、鉄道車両RVの速度を調整するための加速手段と、減速手段とを備える。そして、車速制御装置41は、列車制御装置40から受け取った制御信号に基づいて、鉄道車両RVの加減速や停止を制御する。例えば、車速制御装置41は、鉄道車両RVの車輪に繋がっているモーターや、ブレーキを制御する。
【0067】
画像処理装置42は、例えば、測距装置20からの距離情報に基づいて画像を生成する。また、画像処理装置42は、カメラ45からの画像情報や、測距装置20からの測距情報や、GNSS装置44からの位置情報や、線路情報データベース46を総合して、鉄道車両RVの始点からの距離を求める。画像処理装置42は、鉄道車両RVの始点を、例えば、線路情報データベース46に基づいて特定し得る。画像処理装置42は、始点からの距離を検知した結果や測距結果に応じて、列車を停止させたりする必要がある場合に、列車制御装置40に鉄道車両RVの停止を指示する。さらに、画像処理装置42は、収集した情報に基づいて、測距装置20の測距方向を変更する。
【0068】
車速センサ43、GNSS装置44、及びカメラ45は、鉄道車両RVの自身若しくは周辺の情報を収集するための装置群である。車速センサ43は、鉄道車両RVの現在の速度を検知するセンサである。車速センサ43は、検知した速度の情報を、列車制御装置40に送信する。GNSS装置44は、複数の人工衛星から発せられた電波を受信し、受信した電波に基づいて鉄道車両RVの現在位置を特定する測位装置である。GNSS装置44は、例えば、衛星信号をデジタルデータに変換する受信装置と、衛星信号を受信するための受信アンテナと、加速度センサやジャイロセンサなどの自立計測装置と、衛星信号から現在位置を算出する演算処理装置と、記憶装置とを有する。GNSS装置44は、衛星信号に基づいて算出した位置情報を、画像処理装置42に送信する。カメラ45は、鉄道車両RVの周辺の画像を撮影可能な光学装置である。カメラ45は、鉄道車両RVの前方に設置される。カメラ45は、取得した画像情報を画像処理装置42に送信する。
【0069】
線路情報データベース46は、鉄道車両RVが走行する線路の情報や鉄道車両RVの運行に関する情報等を保持する。例えば、線路情報データベース46は、鉄道車両RVが走行する線路上の始点からの距離情報を含む。列車の運行に必要な情報としては、鉄道車両RVの制限速度の情報や、止まるべき駅の情報や、駅の停止位置の情報等が挙げられる。列車の運行に必要な情報は、始点からの距離情報、又は位置情報に応じて設定される。
【0070】
第3実施形態に係る測距装置20は、画像処理装置42からの指示に基づいて、測距方向を変更し得る。画像処理装置42から測距装置20への測距方向の指示は、注目すべきターゲットへの位置又は測距方向に関する情報を含む。測距装置20は、画像処理装置42により指定されたFOVに基づいて鉄道車両RVの前方に存在する支障物等の被写体の測距情報を2次元的に取得し、取得した測距情報を画像処理装置42に送信する。画像処理装置42からの指示は、例えば、停止予定の駅までの距離情報や、停止位置の基準となる標識位置の情報などに基づいている。停止予定の駅までの距離情報は、例えば、線路情報データベース46から取得された運航情報と、GNSS装置44により取得される。
【0071】
なお、情報処理装置10Bにおいて、列車制御装置40及び画像処理装置42のそれぞれは、例えば、第1実施形態に係る情報処理装置10のCPU11、ROM12、及びRAM13に対応する。つまり、列車制御装置40及び画像処理装置42のそれぞれは、例えば、互いに通信可能に構成されたコンピュータである。線路情報データベース46は、例えば、ストレージ装置14に記憶される。車速センサ43、GNSS装置44、及びカメラ45は、情報収集装置17に対応している。情報処理装置10B内の機器間の接続は、例えば、イーサネット(登録商標)といったネットワークケーブルにより接続されてもよい。本明細書において、“支障物”は、例えば列車運行に差し支える物体のことを示している。
【0072】
<3-1-2>測距システム1Bの機能構成
図12は、第3実施形態に係る測距システム1Bの機能構成の一例を示すブロック図である。
図12に示すように、測距システム1Bにおいて、情報処理装置10Bは、位置情報収集部103、経路情報取得部104、線路情報データベース46、及び画像処理部102として機能し、測距装置20は、第1実施形態と同様に、出射制御部201、投光部202、受光部203、及び計測部204として機能する。位置情報収集部103は、GNSS装置44及び画像処理装置42に対応する機能ブロックである。経路情報取得部104は、画像処理装置42に対応する機能ブロックである。
【0073】
位置情報収集部103は、GNSS装置44の計測結果に基づいて、鉄道車両RVの位置情報を収集する。位置情報収集部103は、位置情報の収集に、例えば、衛星測位信号処理、自立計測データ演算処理、時刻演算処理を含む位置計測演算処理アルゴリズムを利用する。位置情報収集部103は、収集した位置情報を、経路情報取得部104に送信する。
【0074】
経路情報取得部104は、位置情報収集部103から受け取った位置情報に基づいて、線路情報データベース46から、鉄道車両RVの現在位置近傍における運行情報を取得する。そして、経路情報取得部104は、取得した運行情報に基づいて、測距装置20の測距方向(FOV)を決定する。そして、経路情報取得部104は、決定したFOVに対応する制御パラメータを、出射制御部201と画像処理部102とのそれぞれに送信する。なお、線路情報データベース46が、位置情報と測距方向とを関連付けた情報を有する場合、経路情報取得部104は、位置情報を用いて線路情報データベース46を参照して、現在位置における測距方向を取得してもよい。
【0075】
第3実施形態の出射制御部201は、経路情報取得部104から受け取った制御パラメータに基づいて、投光部202にパルス信号を供給する。以下、第1実施形態と同様に、投光部202は、出射制御部201から受け取ったパルス信号に応じてパルスレーザー(出射光LE)を出射する。受光部203は、FOV内の物体OBから反射された反射光LRを受光して、電気信号に変換する。計測部204は、受光部203から受け取った電気信号(受光結果)を、画像処理部102に送信する。画像処理部102は、計測部204から受け取った距離データと、経路情報取得部104から受け取った測距方向の情報とを用いて、フレーム単位で画像を生成する。第3実施形態に係る測距システム1Bのその他の構成は、第1実施形態に係る測距システム1と同様である。
【0076】
<3-2>動作
図13は、第3実施形態に係る測距システム1Bの測距方向調整動作の一例を示すフローチャートである。以下に、
図13を参照して、第3実施形態に係る測距システム1Bの測距方向調整動作について説明する。
【0077】
測距方向調整動作が開始すると(開始)、情報処理装置10Bは、GNSS装置44から位置情報を収集する(S31)。
【0078】
次に、情報処理装置10Bは、取得した位置情報と線路情報データベース46とに基づいて、現在位置の運行情報を取得する(S32)。
【0079】
次に、情報処理装置10Bは、取得した運行情報に基づいて、測距装置20の測距方向を変更する(S33)。
【0080】
S33の処理が完了すると、測距システム1Bは、
図13の一連の処理、すなわち1回の測距方向調整動作を終了する(終了)。第3実施形態に係る測距システム1Bのその他の動作は、第1実施形態に係る測距システム1と同様である。
【0081】
図14は、第3実施形態に係る測距システム1Bによる測距方向の調整例を示す概略図である。
図14に示すように、本例では、線路RL0上に鉄道車両RV1が位置している。線路RL0は、分岐部BRを介して2つの線路RL1及びRL2に分岐している。線路RL1及びRL2の間に、鉄道車両RVのホームHMが位置している。例えば、ホームHMに隣接する線路RL1及びRL2の部分は、それぞれ1番線FL、2番線SLに対応している。また、本例では、1番線FLに、鉄道車両RV2が停車している。
【0082】
本例では、鉄道車両RV1は、1番線FLに停車する予定である。鉄道車両RV1は、線路RL0の位置に移動したことを検知すると、線路RL0の位置に基づく運行情報を取得し、測距方向(FOVの向き)を決定する。この場合、鉄道車両RV1は、線路RL0上から1番線FLに向かう測距方向に設定する。これにより、鉄道車両RV1は、進行方向で停車中の鉄道車両RVの有無や、支障物の有無などを確認することができる。なお、第3実施形態に係る測距システム1Bは、少なくとも鉄道車両RVの位置情報と線路情報データベース46とに基づいて、現在位置の測距方向を決定していればよい。
【0083】
<3-3>第3実施形態の効果
鉄道車両において前方の支障物を検知する手法としては、単眼カメラやステレオカメラを用いた手法が知られている。しかしながら、これらのカメラは、第1実施形態で説明されたように、長距離の検出精度に課題を有する。さらに、カメラによる被写体の検出精度は、光量が不足した場合に悪くなる傾向を有する。カメラの撮影は、鉄道車両RVの前方の照明によって補助可能であるが、照明では追従できない領域が発生するおそれがある。
【0084】
これに対して、第3実施形態に係る測距システム1Bは、鉄道車両RVが測距装置20を備えている。測距装置20は、第1実施形態て説明されたように、狭い画角で設定されることによって、カメラよりも高精度に遠距離の支障物を検知することができる。さらに、第3実施形態に係る測距システム1Bは、走行する鉄道車両RVの現在位置に応じて線路情報データベース46を参照し、測距装置20の測距方向を制御する。GNSS装置44は、周辺の光量に依らず計測可能である。つまり、測距システム1Bは、周辺の光量に依らずに、運行情報に基づいた測距方向を測距装置20に設定することができる。
【0085】
その結果、第3実施形態に係る測距システム1Bは、第1実施形態と同様に、測距装置20の画角(FOV)を要求された解像度を有する設定にしつつ、測距方向を注目すべき方向に変更することができる。言い換えると、測距システム1Bは、鉄道車両RVの前方でユースケースから要求される測距領域、すなわち注目する範囲の測距において、要求される測距解像度を確保することができる。また、測距システム1Bは、カメラ及び照明等で視界を確保できない領域における被写体の情報を、測距装置20の方向制御により取得することができる。従って、測距システム1Bを利用する鉄道車両RVは、走行時における安全性を向上させることができる。
【0086】
<4>第4実施形態
第4実施形態に係る測距システム1Cは、鉄道車両RVに搭載され、鉄道車両RVの進行方向における線路の形状に基づいて測距装置20の測距方向を変更する。以下に、第4実施形態に係る測距システム1Cについて、第1~第3実施形態と異なる点を説明する。
【0087】
<4-1>構成
第4実施形態に係る測距システム1Cは、情報処理装置10C、及び測距装置20を備える。情報処理装置10Cのハードウェア構成は、例えば、第3実施形態に係る情報処理装置10Bと同様である。
【0088】
図15は、第4実施形態に係る測距システム1Cの機能構成の一例を示すブロック図である。
図15に示すように、測距システム1Cにおいて、情報処理装置10Cは、画像収集部105、線路検出部106、及び画像処理部102として機能し、測距システム1Cの測距装置20は、第1実施形態と同様に、出射制御部201、投光部202、受光部203、及び計測部204として機能する。画像収集部105は、カメラ45及び画像処理装置42に対応する機能ブロックである。線路検出部106は、画像処理装置42に対応する機能ブロックである。
【0089】
画像収集部105は、カメラ45により撮影された画像を収集する。そして、画像収集部105は、収集した画像を線路検出部106に送信する。線路検出部106は、画像収集部105から受け取った画像から線路を検出する。つまり、線路検出部106は、鉄道車両RVの前方の線路を検出し、線路上で鉄道車両RVが走行する領域を判定する。そして、線路検出部106は、取得した線路の情報に基づいて、測距装置20の測距方向(FOV)を決定する。例えば、線路検出部106は、検出した線路の軌跡に基づいて、進行方向の距離を算出し、別途指定された列車前方距離に対応する点を含むように、測距方向を決定する。列車前方距離は、例えば、鉄道車両RVの前方における線路に沿った距離である。列車前方距離は、プリセットされてもよいし、線路情報データベース46から取得されてもよい。その後、線路検出部106は、決定したFOVに対応する制御パラメータを、出射制御部201と画像処理部102とのそれぞれに送信する。
【0090】
第4実施形態の出射制御部201は、線路検出部106から受け取った制御パラメータに基づいて、投光部202にパルス信号を供給する。以下、第3実施形態と同様に、投光部202は、出射制御部201から受け取ったパルス信号に応じてパルスレーザー(出射光LE)を出射する。受光部203は、FOV内の物体OBから反射された反射光LRを受光して、電気信号に変換する。計測部204は、受光部203から受け取った電気信号(受光結果)を、画像処理部102に送信する。画像処理部102は、計測部204から受け取った距離データと、線路検出部106から受け取った測距方向の情報とを用いて、フレーム単位で画像を生成する。第4実施形態に係る測距システム1Cのその他の構成は、第3実施形態に係る測距システム1Bと同様である。
【0091】
なお、線路検出部106は、所定の基準に基づいた線路らしさを表す尺度となり得る特徴量に基づいて、線路を検出する。線路検出部106は、線路の検出に、検出済みの線路の情報や、線路幅の情報や、分岐の情報等を用いてもよい。線路の具体的な検出方法については、例えば、“線路検出装置”という2018年6月22日に出願された日本国特許出願2018-119125号明細書に記載されている。この特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。
【0092】
<4-2>動作
図16は、第4実施形態に係る測距システム1Cの測距方向調整動作の一例を示すフローチャートである。以下に、
図16を参照して、第4実施形態に係る測距システム1Cの測距方向調整動作について説明する。
【0093】
測距方向調整動作が開始すると(開始)、情報処理装置10Cは、カメラ45から画像を収集する(S41)。
【0094】
次に、情報処理装置10Cは、取得した画像を解析して、線路を検出する(S42)。
【0095】
次に、情報処理装置10Cは、線路の検出結果に基づいて、鉄道車両RVの測距点を決定する(S43)。S43の処理で決定される測距点は、所定の列車前方距離に基づいている。
【0096】
次に、情報処理装置10Cは、決定した測距点の情報に基づいて、測距装置20の測距方向を変更する(S44)。
【0097】
S44の処理が完了すると、測距システム1Cは、
図16の一連の処理、すなわち第4実施形態における測距方向調整動作を終了する(終了)。第4実施形態に係る測距システム1Cのその他の動作は、第1実施形態に係る測距システム1と同様である。
【0098】
図17は、第4実施形態に係る測距システム1Cによる測距方向の調整例を示す概略図である。
図17に示すように、本例では、蛇行する線路RL上に鉄道車両RVが位置している。また、鉄道車両RVの前方に設置されたカメラ45の画角が、“FOVc”として示されている。カメラ45のFOVcは、測距装置20のFOVよりも広く設計される。
【0099】
本例では、鉄道車両RVは、線路RLが右側にカーブしている部分を走行している。鉄道車両RVは、カメラ45の画像に基づいて右側にカーブした線路RLを検出して、線路RLに沿った列車前方距離を算出する。そして、鉄道車両RVは、所定の列車前方距離を含むように、測距方向に設定する。これにより、鉄道車両RVは、進行方向における線路上の支障物の有無などを確認することができる。
【0100】
<4-3>第4実施形態の効果
第4実施形態に係る測距システム1Cは、第1実施形態と同様に、測距装置20の画角(FOV)を要求された解像度を有する設定にしつつ、測距方向を注目すべき方向に変更することができる。また、第4実施形態に係る測距システム1Cは、所定の列車前方距離にFOVを設定するため、進行方向に存在する支障物を早期に発見することができる。従って、測距システム1Cを利用する鉄道車両RVは、走行時における安全性を向上させることができる。
【0101】
<5>第5実施形態
第5実施形態に係る測距システム1Dは、鉄道車両RVに搭載され、鉄道車両RVの周囲で検出された物体に応じて測距装置20の測距方向を変更する。以下に、第5実施形態に係る測距システム1Dについて、第1~第4実施形態と異なる点を説明する。
【0102】
<5-1>構成
第5実施形態に係る測距システム1Dは、情報処理装置10D、及び測距装置20を備える。情報処理装置10Dのハードウェア構成は、第3実施形態に係る情報処理装置10Bと同様である。
【0103】
図18は、第5実施形態に係る測距システム1Dの機能構成の一例を示すブロック図である。
図18に示すように、測距システム1Dの情報処理装置10Dは、画像収集部105、物体認識部107、サンプルデータベース(サンプルDB)47、及び画像処理部102として機能する。測距システム1Cの測距装置20は、第1実施形態と同様に、出射制御部201、投光部202、受光部203、及び計測部204として機能する。物体認識部107は、画像処理装置42に対応する機能ブロックである。サンプルデータベース47は、例えば、ストレージ装置14に記憶される。
【0104】
画像収集部105は、第4実施形態と同様に、カメラ45により撮影された画像を収集する。そして、画像収集部105は、収集した画像を線路検出部106に送信する。物体認識部107は、画像収集部105から受け取った画像から物体を検出する。物体認識部107は、物体の検出に、例えば、サンプルデータベース47を参照する。サンプルデータベース47は、鉄道車両RVの走行における支障物に関するライブラリを含む。サンプルデータベース47に記録される支障物の情報としては、例えば、人物、動物、倒木、車両など、線路内に存在し得る障害物の形状が挙げられる。サンプルデータベース47のライブラリは、これらの障害物の形状等に関する情報を含む。物体認識部107は、例えば、サンプルデータベース47の支障物のライブラリと、画像収集部105から受け取った画像とを照らし合わせて、類似度の高い領域の画像位置を算出する。そして、物体認識部107は、類似度の高い領域を、支障物が存在すると判定する。それから、物体認識部107は、三次元的にみて、支障物が存在すると判定した点の方向に、測距装置20の測距方向(FOV)を決定する。その後、物体認識部107は、決定したFOVに対応する制御パラメータを、出射制御部201と画像処理部102とのそれぞれに送信する。
【0105】
なお、物体認識部107は、第4実施形態で説明されたようなアルゴリズムに基づいて、鉄道車両RVの前方の線路を検出してもよい。そして、物体認識部107は、検出した線路と物体の位置関係に応じて、FOVを設定してもよい。第5実施形態に係る測距システム1Dのその他の構成は、第3実施形態に係る測距システム1Bと同様である。
【0106】
<5-2>動作
図19は、第5実施形態に係る測距システム1Dの測距方向調整動作の一例を示すフローチャートである。以下に、
図19を参照して、第5実施形態に係る測距システム1Dの測距方向調整動作について説明する。
【0107】
測距方向調整動作が開始すると(開始)、情報処理装置10Dは、カメラ45から画像を収集する(S51)。
【0108】
次に、情報処理装置10Dは、取得した画像を解析して、物体OBを検出する(S52)。S52の処理において、情報処理装置10Dは、さらに線路を検出してもよい。
【0109】
次に、情報処理装置10Dは、物体OBが所定の領域内で検出されたか否かを確認する(S53)。所定の領域は、例えば、線路RL上である。これに限定されず、所定の領域は、線路RLの近傍の領域を含んでいてもよい。
【0110】
物体OBが所定の領域内で検出されなかった場合(S53:NO)、測距システム1Dは、
図19の一連の処理、すなわち第5実施形態における測距方向調整動作を終了する(終了)。
【0111】
物体OBが所定の領域内で検出された場合(S53:YES)、測距システム1Dは、物体OBの検出位置の情報に基づいて、測距装置20の測距方向を変更する(S54)。
【0112】
S54の処理が完了すると、測距システム1Cは、
図19の一連の処理、すなわち第5実施形態における測距方向調整動作を終了する(終了)。第5実施形態に係る測距システム1Cのその他の動作は、第1実施形態に係る測距システム1と同様である。
【0113】
図20は、第5実施形態に係る測距システム1Dによる測距方向の調整例を示す概略図である。
図20に示すように、本例では、蛇行する線路RL上に鉄道車両RVが位置している。また、鉄道車両RVの前方に設置されたカメラ45の画角が、“FOVc”として示されている。カメラ45のFOVcは、測距装置20のFOVよりも広く設計される。
【0114】
本例では、鉄道車両RVは、線路RLが右側にカーブしている部分を走行している。鉄道車両RVは、カメラ45の画像に基づいて、右側にカーブした線路RL上に物体OBを検出する。この場合、鉄道車両RVは、物体OB含むように、測距方向に設定する。これにより、鉄道車両RVは、線路上の支障物との距離を正確に取得することができる。
【0115】
<5-3>第5実施形態の効果
第5実施形態に係る測距システム1Dは、第1実施形態と同様に、測距装置20の画角(FOV)を要求された解像度を有する設定にしつつ、測距方向を注目すべき方向に変更することができる。また、第5実施形態に係る測距システム1Dでは、所定の領域内の支障物(物体OB)との距離を正確に算出することができ。従って、第5実施形態に係る測距システム1Dは、走行の危険性の判定や、走行の危険性に基づく車速制御をより精密に行うことができる。従って、測距システム1Dを利用する鉄道車両RVは、走行時における安全性を向上させることができる。
【0116】
<6>第6実施形態
第6実施形態に係る測距システム1Eは、鉄道車両RVに搭載され、第3実施形態~第5実施形態で説明された測距方向の変更方法を使い分ける。以下に、第6実施形態に係る測距システム1Eについて、第1~第5実施形態と異なる点を説明する。
【0117】
<6-1>構成
第6実施形態に係る測距システム1Eは、情報処理装置10B、10C及び10Dのそれぞれの機能を有する情報処理装置10Eと、測距装置20とを備える。情報処理装置10Eのハードウェア構成は、第3実施形態に係る情報処理装置10Bと同様である。情報処理装置10Eにおいて、RAM13は、設定情報を記憶する。設定情報は、測距方向調整動作の設定に関する情報を含む。設定情報は、ストレージ装置14に記憶されてもよいし、測距システム1に有線又は無線で接続された外部の機器に記憶されてもよい。
【0118】
図21は、第6実施形態に係る情報処理装置10Eに記憶された設定情報の一例を示すテーブルである。
図21に示すように、設定情報は、第1設定、第2設定、及び第3設定のそれぞれが有効であるか否かを示す情報を有する。第1設定は、第3実施形態で説明された、鉄道車両RVの位置情報に基づいた測距方向の調整方法に関連付けられている。第2設定は、第4実施形態で説明された、線路の形状に基づいた測距方向の調整方法に関連付けられている。第3設定は、第5実施形態で説明された、特定の物体の検出結果に基づいた測距方向の調整方法に関連付けられている。
【0119】
第6実施形態に係る情報処理装置10Eでは、第1設定、第2設定、及び第3設定のうち一つが有効(“○”)に設定され得る。情報処理装置10Eでは、第3~第5実施形態で説明された測距方向の調整方法を利用しない場合に、第1設定、第2設定、及び第3設定のそれぞれが無効(“-”)に設定される。第6実施形態に係る測距システム1Eのその他の構成は、第3実施形態に係る測距システム1Bと同様である。
【0120】
<6-2>動作
図22は、第6実施形態に係る測距システム1Eの測距方向調整動作の一例を示すフローチャートである。以下に、
図22を参照して、測距システム1Eの測距方向調整動作について説明する。
【0121】
測距システム1Eは、測距動作が開始すると、定期的に
図22の一連の処理を実行する(開始)。
【0122】
まず、測距システム1Eは、RAM13に記憶された設定情報を参照して、第1設定が有効であるか否かを確認する(S61)。
【0123】
S61の処理において第1設定が有効であることが確認された場合(S61:YES)、測距システム1Eは、位置基準の測距方向設定、すなわち第3実施形態で説明された測距方向調整動作を実行する(S62)。測距システム1Eは、S62の処理が完了すると、
図22の一連の処理を終了する(終了)。
【0124】
S61の処理において第1設定が有効でないことが確認された場合(S61:NO)、測距システム1Eは、RAM13に記憶された設定情報を参照して、第2設定が有効であるか否かを確認する(S63)。
【0125】
S63の処理において第2設定が有効であることが確認された場合(S63:YES)、測距システム1Eは、線路基準の測距方向設定、すなわち第4実施形態で説明された測距方向調整動作を実行する(S64)。測距システム1Eは、S64の処理が完了すると、
図22の一連の処理を終了する(終了)。
【0126】
S63の処理において第2設定が有効でないことが確認された場合(S63:NO)、測距システム1Eは、RAM13に記憶された設定情報を参照して、第3設定が有効であるか否かを確認する(S65)。
【0127】
S65の処理において第3設定が有効であることが確認された場合(S65:YES)、測距システム1Eは、物体基準の測距方向設定、すなわち第5実施形態で説明された測距方向調整動作を実行する(S66)。測距システム1Eは、S66の処理が完了すると、
図22の一連の処理を終了する(終了)。
【0128】
S65の処理において第3設定が有効でないことが確認された場合(S65:NO)、測距システム1Eは、現在の測距方向の設定を維持して、
図22の一連の処理を終了する(終了)。
【0129】
<6-3>第6実施形態の効果
以上で説明されたように、第6実施形態に係る測距システム1Eは、第3~第5実施形態で説明された測距方向調整動作を、ユーザのリクエストに応じて使い分け可能に構成される。これにより、測距システム1Eは、鉄道車両RVの使用環境により適した方式を用いて測距方向を調整することができる。
【0130】
<7>その他
上記実施形態は、可能な範囲で組み合わされてもよい。例えば、第2実施形態は、第3~第6実施形態のいずれと組み合わせてもよい。第3~第6実施形態では、輸送機器VEが鉄道車両RVで有る場合について例示したが、これに限定されない。第3~第6実施形態は、線路と同様に経路を示す要素を利用する輸送機器VEに適用され得る。例えば、第3~第6実施形態は、路線バスなどにも適用され得る。
【0131】
上記実施形態で説明された動作を実現可能であれば、情報処理装置10の一部の機能が、測距装置20に搭載されてもよい。例えば、情報処理部101及び101A、経路情報取得部104、線路検出部106、及び物体認識部107のそれぞれの機能が、測距装置20により実現されてもよい。測距方向調整動作において、測距方向(FOV)を決定する処理は、測距装置20の測距制御装置21により実行されてもよい。この場合、測距制御装置21に対して、情報収集装置17の各センサにより取得された情報が転送される。測距制御装置21の機能の一部は、光センサ26や計測装置27に実装されてもよい。これにより、測距装置20は、細かい操作をタイムリーに行うことができる。各実施形態において説明された構成の分類は、各実施形態で説明された動作を実現することが可能であれば、その他の分類であってもよい。測距方向調整動作は、CPU、メモリ、バス、及び入出力回路(I/O)を有する組み込みコンピュータによって実現されてもよい。
【0132】
測距システム1に含まれたCPUは、その他の回路であってもよい。例えば、CPUの替わりに、MPU(Micro Processing Unit)等が使用されてもよい。各実施形態において説明された処理のそれぞれは、専用のハードウェアによって実現されてもよい。各実施形態では、ソフトウェアにより実行される処理と、ハードウェアによって実行される処理とが混在していてもよいし、どちらか一方のみであってもよい。測距制御装置21やCPUは、“制御回路”や“プロセッサ”と呼ばれてもよい。計測装置27は、“計測回路”と呼ばれてもよい。画像処理装置42は、“画像処理回路”と呼ばれてもよい。レーザーダイオード23は、“光源”と呼ばれてもよい。“列車前方距離”は、輸送機器VEの種類に応じて言い換えられてもよい。“線路”は、“進行経路”と言い換えられてもよい。
【0133】
上記実施形態では、測距装置20によりマルチチャネルラスタスキャンが実行される場合について例示したが、その他のスキャン方法が使用されてもよい。例えば、測距装置20は、その他のスキャン方法として、“ラスタスキャン”や、“マルチチャネルスキャン”や、“OPA方法(Optical Phased Array)”等を使用してもよい。つまり、測距装置20は、スキャン方法として機械的な方法とOPA方法とのいずれが使用された場合においても、例えば、パルスレーザーの出射タイミングを調整することによって、測距方向(FOVの位置)を調整可能であればよい。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0135】
1,1A,1B,1C,1D,1E…測距システム、10,10A,10B,10C,10D,10E…情報処理装置、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…ストレージ装置、15…ユーザインターフェース、16…通信インターフェース、17…情報収集装置、20…測距装置、21…測距制御装置、22…レーザードライバ、23…レーザーダイオード、24…ミラー制御装置、25…光学系、26…光センサ、27…計測装置、30…可動台、40…列車制御装置、41…車速制御装置、42…画像処理装置、43…車速センサ、44…GNSS装置、45…カメラ、46…線路情報データベース、47…サンプルデータベース、50…画像処理部、101,101A…情報処理部、102…画像処理部、103…位置情報収集部、104…経路情報取得部、105…画像収集部、106…線路検出部、107…物体認識部、201…出射制御部、202…投光部、203…受光部、204…計測部、251…回転ミラー、252~254…光学素子、254…光学素子、301…モーター制御部