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特開2024-116875制御装置、空調システム、制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116875
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】制御装置、空調システム、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/80 20180101AFI20240821BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20240821BHJP
   F24F 11/79 20180101ALI20240821BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20240821BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240821BHJP
【FI】
F24F11/80
F24F11/74
F24F11/79
F24F11/65
F24F11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022708
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】石塚 浩史
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA02
3L260CA12
3L260CA23
3L260CA25
(57)【要約】
【課題】室内の高さ方向の温度ムラに対して適切な空調制御を行う方法を提供する。
【解決手段】制御装置は、空調機の制御装置であって、空調対象の空間の天井側の高所温度と、前記空間の床近傍の低所温度と、前記空間の中間的な高さの中央温度と、を取得する温度情報取得部と、前記高所温度と、前記低所温度と、前記中央温度と、に基づいて、前記空調機を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機の制御装置であって、
空調対象の空間の天井側の高所温度と、前記空間の床近傍の低所温度と、前記空間の中間的な高さの中央温度と、を取得する温度情報取得部と、
前記高所温度と、前記低所温度と、前記中央温度と、に基づいて、前記空調機を制御する制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記高所温度と前記低所温度の温度差である第1温度差が所定の第1閾値以上となるか、又は、前記中央温度と前記低所温度の温度差である第2温度差が所定の第2閾値以上となると、前記空調機の室内機が備えるファンを運転する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ファンを運転する際に、風量をそれまでより増加させ、ルーバーを下向きにする制御を行う、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ファンを運転した後の前記高所温度と前記低所温度の差、又は、前記中央温度と前記低所温度の差が所定の閾値以上となる場合、前記第1温度差が前記第1閾値以上となるか、又は、前記第2温度差が前記第2閾値以上となったとしても、前記ファンの運転を行わない、
請求項2または請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記高所温度と前記低所温度と前記中央温度から算出される基準温度と、設定温度と、に基づいて冷房運転又は暖房運転を行う、
請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記基準温度の算出における前記高所温度、前記低所温度、前記中央温度それぞれに対する重み付けの設定を受け付ける設定受付部、
をさらに備える請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、空調条件および/又は空間条件に基づいて、前記高所温度、前記低所温度、前記中央温度それぞれに対する重み付けを算出し、算出したそれぞれの重み付けと、前記高所温度と、前記低所温度と、前記中央温度と、に基づいて前記基準温度を算出する、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項8】
前記空調条件は、冷房と暖房のうちの何れかを示す運転モードおよび/又は風量の大きさであり、
前記空間条件は、前記空間の高さおよび/又は前記空間の広さである、
請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記空調条件と前記空間条件ごとに前記空間の高さ方向の温度のばらつきの生じやすさを定義した設定テーブルに基づいて、前記重み付けを算出する、
請求項7に記載の制御装置。
【請求項10】
空調対象の空間の天井側の温度を検出する高所温度センサと、
前記空間の床近傍の温度を検出する低所温度センサと、
前記空間の中間的な高さの温度を検出する中央温度センサと、
前記空間に設けられる室内機を備えた空調機と、
請求項1または請求項2に記載の制御装置と、
を備える空調システム。
【請求項11】
前記高所温度センサが、前記空調機に設けられ、
前記中央温度センサが、前記空調機のリモコンに設けられ、
前記低所温度センサが、冷媒漏洩検知器に設けられた、
請求項10に記載の空調システム。
【請求項12】
空調機の制御方法であって、
空調対象の空間の天井側の高所温度と、前記空間の床近傍の低所温度と、前記空間の中間的な高さの中央温度と、を取得するステップと、
前記高所温度と、前記低所温度と、前記中央温度と、に基づいて、前記空調機を制御するステップと、
を有する制御方法。
【請求項13】
空調機を制御するコンピュータに、
空調対象の空間の天井側の高所温度と、前記空間の床近傍の低所温度と、前記空間の中間的な高さの中央温度と、を取得するステップと、
前記高所温度と、前記低所温度と、前記中央温度と、に基づいて、前記空調機を制御するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、空調システム、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
天井付近から風を供給して室内の空調を行う空調機の場合、天井付近から床面にかけて温度分布ができてしまう。温度分布が大きくなることが想定される場合、空調機の吸込口に設けられた温度センサが計測する温度だけではなく、壁面に取り付けられたリモートコントローラ(以下、リモコンと称する。)に設けられた温度センサが計測する温度を用いて空調することがある(例えば、特許文献1)。しかし、リモコンが設置される位置の床面からの高さは1m程度であり、床面近傍の空気温度までは検出できない。これに対し、床面の空気温度を予想し、温度分布を解消するための風量や風向を調整する制御が提案されている。しかし、このような制御の場合、実際の床面近傍の空気温度を検出している訳ではないため、適切な空調ができずにかえって不快感を与える可能性がある。特許文献2には、空調機吸込口の温度センサが計測した温度と床近傍の温度センサが計測した温度の温度差が所定値に達するとファンを運転し、室内の空気を撹拌することで室内温度を均一化する制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-101871号公報
【特許文献2】特開2014-159908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
室内の温度ムラに関する空調環境の問題を解決するためには、室内の高さ方向の温度分布を把握して、制御を行う必要がある。空調機が設けられた天井付近の温度に加え、リモコンが設置された高さの温度だけ、又は、床面近傍の温度だけ、を参考にして空調を行うだけでは必ずしも空調環境を改善できない場合がある。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる制御装置、空調システム、制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、制御装置は、空調機の制御装置であって、空調対象の空間の天井側の高所温度と、前記空間の床近傍の低所温度と、前記空間の中間的な高さの中央温度と、を取得する温度情報取得部と、前記高所温度と、前記低所温度と、前記中央温度と、に基づいて、前記空調機を制御する制御部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様によれば、空調システムは、空調対象の空間の天井側の温度を検出する高所温度センサと、前記空間の床近傍の温度を検出する低所温度センサと、前記空間の中間的な高さの温度を検出する中央温度センサと、前記室内に設けられる室内機を備えた空調機と、上記の制御装置と、を備える。
【0008】
本開示の一態様によれば、制御方法は、空調機の制御方法であって、空調対象の空間の天井側の高所温度と、前記空間の床近傍の低所温度と、前記空間の中間的な高さの中央温度と、を取得するステップと、前記高所温度と、前記低所温度と、前記中央温度と、に基づいて、前記空調機を制御するステップと、を有する。
【0009】
本開示の一態様によれば、プログラムは、空調機を制御するコンピュータに、空調対象の空間の天井側の高所温度と、前記空間の床近傍の低所温度と、前記空間の中間的な高さの中央温度と、を取得するステップと、前記高所温度と、前記低所温度と、前記中央温度と、に基づいて、前記空調機を制御するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の制御装置、空調システム、制御方法及びプログラムによれば、室内の高さ方向の温度分布のばらつきに対して適切な制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る空調システムの全体構成を示す概略図である。
図2】実施形態に係る制御装置の一例を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る撹拌運転の実行条件の設定例を示す図である。
図4】実施形態に係る撹拌運転に関する温度分布の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る撹拌運転の制御の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る基準温度の算出方法の設定例を示す図である。
図7】実施形態に係る空調条件と空間条件に基づく温度ムラの生じやすさ及び採用する温度の設定例を示す図である。
図8】実施形態に係る状況に応じた基準温度の算出方法の一例を示す第1の図である。
図9】実施形態に係る状況に応じた基準温度の算出方法の一例を示す第2の図である。
図10】実施形態に係る基準温度の算出処理の一例を示すフローチャートである。
図11】実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、実施形態に係る空調システムについて図1図11を参照して説明する。
(システム構成)
図1は、本開示の実施形態に係る空調システムの全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、空調システム100は、空調機1と、リモコン7と、冷媒漏洩検知器8と、を備えている。
空調機1は、室内機2と室外機3とを備えている。室内機2は、室外機3と冷媒配管4で接続されている。室外機3は、図示しない圧縮機、膨張弁、室外熱交換器、四方弁等を備えており、室内機2と室外機3は、冷凍サイクルを構成する。空調機1は、冷媒を冷凍サイクル内で循環させることによって冷媒の加熱・冷却を行う。また、室内機2と室外機3とは、図示しない通信線で接続されており、室内機2と室外機3の間で制御信号が送受信される。
【0013】
室内機2は、利用者が存在する空間Aの壁面、天井等に設置され、制御装置10による制御指令に従って、空間A内の空調環境を調整するための各種動作を行う。室内機2は、風量を調整可能とするファン5と、風向を調整可能とするルーバー6と、温度センサTh1と、制御装置10と、を備えている。温度センサTh1は、室内機2の吸込口付近に設けられ、室内から吸入された空気の温度を計測する。温度センサTh1は、空間Aの天井付近、高所の温度を計測する。温度センサTh1が計測する温度を高所温度と称する。制御装置10は、リモコン7を通じて、ユーザの空調環境に対する要求を受け付けて、当該要求を満たすように室内機2を制御し、室外機3の制御装置(図示せず)と協調して室外機3を含めた冷凍サイクルの制御を行う。制御装置10は、温度センサTh1が計測する高所温度を取得する。
【0014】
リモコン7は、空調環境に対するユーザの要求操作を受け付ける。リモコン7は、制御装置10と通信可能に接続されている。リモコン7は、ユーザの要求操作に基づく要求信号を制御装置10に送信する。リモコン7には、温度センサTh2が設けられている。リモコン7は、空間A壁面の床からの高さ1m前後(例えば、1~1.2m)の位置に設けられている。温度センサTh2は、空間Aにおける中間的な高さ(1m付近)の室内温度を計測する。温度センサTh2が計測する温度を中央温度と称する。リモコン7は、温度センサTh2が計測した中央温度を、制御装置10へ送信する。
【0015】
冷媒漏洩検知器8は、冷媒センサ9を備え、室内機2から漏洩した冷媒を検知する。冷媒漏洩検知器8は、制御装置10と通信可能に接続されている。冷媒漏洩検知器8は、冷媒センサ9によって検知した冷媒量などを含む冷媒検知信号を制御装置10へ送信する。冷媒漏洩検知器8は、床面からの高さが0.3m以下で、室内機2から水平方向に10m以内の壁面付近に設けられる。また、冷媒漏洩検知器8には、温度センサTh3が設けられている。温度センサTh3は、空間Aにおける低所(高さ0.3m以下)の室内温度を計測する。温度センサTh3が計測する温度を低所温度と称する。冷媒漏洩検知器8は、温度センサTh3が計測した低所温度を、制御装置10へ送信する。
【0016】
(制御装置の機能構成)
図2は、実施形態に係る制御装置の一例を示すブロック図である。
制御装置10は、センサ情報取得部11と、設定受付部12と、制御部13と、記憶部14とを備えている。
【0017】
センサ情報取得部11は、温度センサTh1が計測した高所温度と、温度センサTh2が計測した中央温度と、温度センサTh3が計測した低所温度と、冷媒センサ9が計測した計測値とを取得する。センサ情報取得部11は、各センサから取得した温度等を記憶部14に記録する。
【0018】
設定受付部12は、ユーザがリモコン7から入力した指示操作や設定情報を含む要求信号を取得する。例えば、設定受付部12は、ユーザが入力した空間Aの設定温度、運転モード(冷房か暖房か等)、風量、風向、運転指示、停止指示等の要求信号を取得する。また、例えば、設定受付部12は、温度センサTh1~Th3が計測した温度への重み付けの設定(後述)を取得する。設定受付部12は、受け付けた設定を記憶部14に記録する。
【0019】
制御部13は、ファン5、ルーバー6、室内機2の制御を行う。例えば、制御部13は、ユーザがリモコン7を操作して設定した風量が送出されるような回転数でファン5を運転する。制御部13は、ユーザがリモコン7を操作して設定した風向で風が送出されるようにルーバー6を制御する。制御部13は、室外機3の制御装置(図示せず)と協調して、冷凍サイクルの運転を行う。例えば、制御部13は、ユーザがリモコン7を操作して設定した設定温度となるように冷房運転又は暖房運転を行う。
【0020】
また、制御部13は、空間Aにおける高さ方向の温度ムラに対処する制御を行う。例えば、制御部13は、高所温度と、中央温度と、低所温度とを用いて、高さ方向の温度差を算出し、温度差が大きい場合には、高さ方向の温度ムラが解消されるように室内の空気を撹拌する“撹拌運転”を行う。また、制御部13は、高所温度、中央温度、低所温度を用いて“基準温度”を算出し、この基準温度を室内空気の温度とみなして、冷房運転又は暖房運転を行う。
【0021】
記憶部14は、センサ情報取得部11が取得した温度の計測値、設定受付部12が取得した各種設定情報など種々の情報を記憶する。また、記憶部14は、制御装置10の機能を実現する各種プログラムを記憶する。
【0022】
<撹拌運転>
次に図3図5を参照して、空間Aの高さ方向の温度ムラを解消するための撹拌運転について説明する。
【0023】
(1)撹拌運転の実行条件
図3に、本実施形態の撹拌運転の実行条件設定の一例を示す。図3の項番1の設定例(撹拌条件1と称する。)は、天井と床近傍の温度差が7℃以上の場合、ファン5を運転して撹拌運転を行うことを定めている。項番2の設定例(撹拌条件2と称する。)は、部屋中央と床近傍の温度差が4℃以上の場合、ファン5を運転して撹拌運転を行うことを定めている。撹拌運転を行うと、空間Aの上下の空気が混合して室内空気が均一化される。つまり、高さ方向の温度ムラが解消される。快適な空調環境に関する基準を定めたISO7730では、室内の床上0.1mの温度と1.1mの温度の温度差を3℃以内とすることが推奨されている。撹拌条件2の設定は、この推奨に基づく撹拌運転の実行条件の設定例である。撹拌条件1の設定は、中央温度と低所温度の温度差が3℃を上回るならば、同様の温度差が高所温度と中間温度の間にも生じているであろうとの想定に基づく設定例である。
【0024】
図4に、室内の温度分布の一例を示す。温度例分布1は、高所温度が28℃、中央温度が25℃、低所温度が21℃である。この場合、高所温度と低所温度の差は7℃であり、撹拌条件1を満たす。また、中央温度と低所温度の差は4℃であり、撹拌条件2を満たす。制御部13は、撹拌条件1または撹拌条件2が成立する場合、撹拌運転を行う。従って、制御部13は、温度センサTh1~Th3が計測する温度が、温度例分布1のようになると撹拌運転を行う。
【0025】
温度例分布2は、高所温度が28℃、中央温度が26℃、低所温度が22℃である。この場合、高所温度と低所温度の差は6℃であり、撹拌条件1を満たさない。中央温度と低所温度の差は4℃であり、撹拌条件2を満たす。温度センサTh1~Th3が計測する温度が温度例分布2のようになると、撹拌条件2が成立するため、制御部13は、撹拌運転を行う。
【0026】
温度例分布3は、高所温度が28℃、中央温度が24℃、低所温度が21℃である。この場合、高所温度と低所温度の差は7℃であり、撹拌条件1を満たす。中央温度と低所温度の差は3℃であり、撹拌条件2を満たさない。温度センサTh1~Th3が計測する温度が温度例分布3のようになると、撹拌条件1が成立するため、制御部13は、撹拌運転を行う。
【0027】
温度例分布4は、高所温度が28℃、中央温度が25℃、低所温度が22℃である。この場合、高所温度と低所温度の差は6℃であり、撹拌条件1を満たさない。中央温度と低所温度の差は3℃であり、撹拌条件2を満たさない。温度センサTh1~Th3が計測する温度が温度例分布3のようになると、撹拌条件1、2の何れも成立しないため、制御部13は、撹拌運転を行わない。
【0028】
なお、図3の撹拌条件1、2は一例であり、これに限定されない。また、撹拌条件は、ユーザがリモコン7を用いて任意に設定できてもよい。
【0029】
(2)撹拌運転の内容
ここで撹拌運転の内容について説明する。撹拌運転では、制御部13は、ルーバー6を制御して、風向を下向きに設定して、撹拌運転前よりも風量が増加するようにファン5の回転数を上昇させる。風向を下向きにしてファン5を運転することで、室内の空気を高さ方向に撹拌することができるので、高さ方向の温度ムラを解消することができる。
【0030】
(3)撹拌運転の制御
次に図5を参照して、撹拌運転の制御について説明する。制御装置10は、空調機1の運転中、以下の処理を繰り返し実行する。
前提として、温度センサTh1~Th3は温度を計測し、所定の制御周期で計測した温度を制御装置10へ送信している。センサ情報取得部11は、高所温度、中央温度、低所温度を取得する(ステップS1)。センサ情報取得部11は、取得した各温度を記憶部14に記録する。次に制御部13は、空調機1の運転条件が変化したかどうかを判定する(ステップS2)。例えば、制御部13は、冷房運転、暖房運転が開始されると空調機1の運転条件が変化したと判定する。また、例えば、制御部13は、冷暖房運転の設定温度が変更された場合やファン5による風量が変更されると運転条件が変化したと判定する。制御部13が、運転条件が変化していないと判定した場合(ステップS2;No)、ステップS4の処理に進む。なお、ここに挙げた運転条件は一例であって、これに限定されない。例えば、冷房運転や暖房運転が開始された場合のみ運転条件が変化したと判定してもよいし、リモコン7を用いて、任意の条件を設定することができてもよい。
【0031】
運転条件が変化したと判定した場合(ステップS2;Yes)、制御部13は、撹拌運転を有効化する(ステップS3)。撹拌運転の有効化とは、上記の撹拌条件1,2等が成立する場合に、撹拌運転の実行を許可することである。制御部13は、撹拌運転に効果が認められる場合には、撹拌運転を有効化し、撹拌運転を行っても温度ムラが解消されないときには撹拌運転を無効化する。運転条件が変化した場合には、その条件下における初回の撹拌運転の実行を許可するために、撹拌運転を有効化する。制御部13は、例えば、撹拌運転フラグに“1”を設定する。
【0032】
次に制御部13は、室内温度と設定温度の差が所定の閾値以内となっているかどうかを判定する(ステップS4)。この判定は、例えば、空調開始直後には、室内空気に温度ムラが存在する可能性が高いが、そのような状態の場合には、撹拌運転を行わずに冷暖房運転を優先するための判定である。室内温度(例えば、高所温度あるいは後述する基準温度)と設定温度の温度差が所定の閾値以内に到達していない場合(ステップS4;No)、ステップS1からの処理を繰り返す。室内温度と設定温度の差が所定の閾値以内となっている場合(ステップS4;Yes)、制御部13は、ステップS1で取得された高所温度、中央温度、低所温度を記憶部14から読み出して取得し、撹拌条件を満たすかどうかを判定する(ステップS5)。例えば、制御部13は、図3にて例示した撹拌条件1又は撹拌条件2を満たすかどうかを判定する。撹拌条件を満たさない場合(ステップS5;No)、ステップS1からの処理を繰り返す。
【0033】
撹拌条件を満たす場合(ステップS5;Yes)、制御部13は、撹拌運転が無効化されているかどうかを判定する(ステップS6)。運転条件変更後の初回の判定では、撹拌運転は有効化されている為、この判定はNoとなり、一旦、撹拌運転が無効化された後は、同じ運転条件下で空調機1が運転する限り、この判定はYesとなる。撹拌運転が無効化されている場合(ステップS6;Yes)、ステップS1からの処理が繰り返される。これにより、撹拌運転に温度ムラ解消の効果が認められないにもかかわらず、風量を増加させてファン5を運転することを回避する。これにより、ファン5の動作音や風が当たる等の不快感をユーザに与えることを防止することができる。また、撹拌運転が空調環境に影響することを抑制することができる。
【0034】
撹拌運転が無効化されていない(有効化されている)場合(ステップS6;No)、制御部13は、撹拌運転を行う(ステップS7)。具体的には、制御部13は、風向が下向き(例えば、最も下方向(垂直に近い方向)となるような角度)となるようにルーバー6を制御する。そして、制御部13は、撹拌運転前よりも風量が増加するようにファン5を高速で回転させる。例えば、制御部13は、最大の回転数でファン5を運転してもよい。制御部13は、所定時間だけ撹拌運転を継続する。
【0035】
撹拌運転を実行すると、センサ情報取得部11は、高所温度、中央温度、低所温度を取得する(ステップS8)。制御部13は、撹拌運転後に取得された高所温度、中央温度、低所温度に基づいて、温度ムラが解消したかどうかを判定する(ステップS9)。この判定は、撹拌運転停止直後に実行してもよいし、撹拌運転停止から所定時間経過後に実行してもよい。例えば、制御部13は、撹拌運転後に取得された高所温度、中央温度、低所温度が、撹拌条件1と撹拌条件2を満たすかどうかを判定する。撹拌条件1と撹拌条件2の両方を満たさない場合、制御部13は、温度ムラが解消されたと判定する。撹拌条件1または撹拌条件2の何れかを満たす場合、制御部13は、温度ムラが解消されていないと判定する。あるいは、制御部13は、撹拌条件1,2ではない他の基準に基づいて、温度ムラが解消したかどうかを判定してもよい。温度ムラが解消した場合(ステップS9;Yes)。ステップS1からの処理を繰り返す。温度ムラが解消していない場合(ステップS9;No)。制御部13は、撹拌運転を無効化する(ステップS10)。例えば、制御部13は、撹拌運転フラグに“0”を設定する。撹拌運転フラグは、運転条件が変更された際に再び有効化される。例えば、ユーザによって冷房運転や暖房運転が停止され、その後、ユーザによって運転が開始された場合に、撹拌運転フラグは、有効化される。あるいは、冷房又は暖房運転中に、設定温度が変更されたときに撹拌運転フラグが有効化されてもよい。
【0036】
(4)撹拌運転の効果
以上説明したように、本実施形態の撹拌運転によれば、高所温度、中央温度、低所温度に基づいて、空間Aに生じている高さ方向の温度ムラを検出し、風向を下向きに制御してファン5を運転する。これにより、温度ムラを解消することができる。例えば、特許文献2に開示された空調機の温度センサと床面の温度センサだけで温度ムラを検知する場合、室内の床上0.1mの温度と1.1mの温度の温度差が3℃以上となっていたとしてもこれを見逃す可能性がある(例えば、図4の温度分布例2)。例えば、特許文献1に開示された空調機の温度センサとリモコンの温度センサだけで温度ムラを検知する場合であっても同様に、室内の床上0.1mの温度と1.1mの温度の温度差が3℃以上となっている状況を見逃す可能性がある(例えば、図4の温度分布例2)。このように、高所温度、中央温度、低所温度を監視することにより、空間Aの温度ムラを精度よく検出することができる。
【0037】
また、例えば、室内機2の温度センサTh1とリモコン7の温度センサTh2だけを用いる場合には、空間Aの低所の温度を無視して空調制御を行うことになる為、例えば、暖房運転時の足元付近の冷えを解消できない可能性がある。これに対し、本実施形態では、高所温度、中央温度、低所温度から基準温度を算出し、この基準温度を室内温度とみなして空調制御を行う。次に高所温度、中央温度、低所温度から基準温度を算出する方法について説明する。
【0038】
<基準温度による空調制御>
(1)基準温度の算出
基準温度とは、空調制御の制御対象となる温度であり、温度分布のばらつきを反映した室内温度である。基準温度は、例えば、空調機1がサーモON(室温が設定温度に到達していないため、冷暖又は暖房運転を実行すること)、サーモOFF(室温が設定温度に到達したため、一旦、冷暖又は暖房運転を休止すること)を切り替える際に用いられる。空調機1が計測する室温(高所温度)の代わりに基準温度を用いることで、例えば、暖房運転時に、低所温度を考慮してサーモON、サーモOFFを切り替えることができる。簡単な例としては、高所温度、中央温度、低所温度の平均値を算出して、この平均値を基準温度としてもよい。また、高所温度、中央温度、低所温度を全て用いる必要は無く、状況に応じて、ある場面では高所温度を基準温度として採用し、別の場面では、中央温度、低所温度の平均値を基準温度として採用してもよい。また、基準温度の算出方法は、ユーザが、任意に設定できてもよいし、制御部13が、状況に適した基準温度を算出してもよい。
【0039】
(1-1)ユーザによる設定
ユーザによる基準温度の算出方法の設定例を図6に示す。図1の室内機2のように、天井付近から空調済みの空気を供給して空調を行う場合、冷房運転時には、空間Aに温度ムラが生じにくく、暖房運転時には温度ムラが発生しやすい。このような知見に基づくと、例えば、ユーザは、図6に示すように、冷房運転時の基準温度として、室内機2の温度センサTh1が計測する高所温度を選択し、暖房運転時の基準温度として、人が存在する高さの範囲の温度である、リモコン7の温度センサTh2が計測する中央温度および冷媒漏洩検知器8の温度センサTh3が計測する低所温度を選択するよう設定することができる。ユーザは、リモコン7を操作して、運転モード別に、基準温度として選択する温度センサの設置機器(設置位置・高さ)を選択する(例えば、図6)。設定受付部12は、図6に例示する設定を受け付け、記憶部14に記録する。制御部13は、冷房運転時には、高所温度を基準温度、即ち室内温度として冷房運転を行い、例えば、高所温度が設定温度に達するとサーモOFFし、高所温度が設定温度から乖離するとサーモONする。暖房運転時には、制御部13は、中央温度と低所温度の平均値を基準温度として算出し、基準温度が設定温度となるように暖房運転を行う。そして、制御部13は、例えば、基準温度が設定温度に達するとサーモOFFし、基準温度が設定温度から乖離するとサーモONする。なお、図6では、各機器の温度を選択するか否かを設定する例を示したが、各機器の温度に対して重み付けを設定することができてもよい。例えば、ユーザは、リモコン7を操作して、暖房運転時の「リモコン(中央)」に対して“6”を設定し、「冷媒検知器(床近傍)」に対して“4”を設定する。この場合には、制御部13は、(中央温度×6+低所温度×4)÷10によって基準温度を算出する。
【0040】
(1-2)空調機による自動設定
次に、制御部13が自動的に基準温度を算出する方法について説明する。図7に、空調条件と空間条件に基づく温度ムラの生じやすさ及び温度ムラに対して採用する温度位置を設定した設定テーブルの一例を示す。空調条件とは、運転モード(冷房又は暖房)と風量である。空間条件とは、空調対象の空間高さ(天井の高さ)と空間の広さである。
【0041】
空調条件の運転モードに関し、運転モードが冷房の場合、上下方向の温度差は小さく、運転モードが暖房の場合、上下方向の温度差は大きくなる傾向がある。図7の設定テーブルでは、温度ムラが小さい冷房に対しては、高所温度(図の“天井”、以下省略)を採用することが設定され、その重みとして“2”が設定されている。また、温度ムラが大きい暖房に対しては、中央温度(図の“中央”、以下省略)と低所温度(図の“床近傍”、以下省略)を採用することが設定され、それぞれの重みとして“2”が設定されている。
【0042】
空調条件の風量に関し、風量が多い程、室内空気が撹拌され、上下方向の温度差は小さくなる傾向がある。図7の設定テーブルでは、風量が多い場合(温度ムラが小さい場合)に対して、高所温度を採用することが設定され、その重みとして“2”が設定されている。風量が中間の場合(温度ムラが中間の場合)に対して、中央温度を採用することが設定され、その重みとして“2”が設定されている。また、風量が少ない場合(温度ムラが大きい場合)に対して、中央温度(中央)と低所温度(床近傍)を採用することが設定され、それぞれの重みとして“2”が設定されている。
【0043】
空間条件の空間高さに関し、空間高さが高い程、上下方向の温度差が大きくなる傾向がある。図7の設定テーブルでは、空間高さが高い場合(温度ムラが大きい場合)に対して、中央温度と低所温度を採用することが設定され、それぞれの重みとして“1”が設定されている。空間高さが通常の場合(温度ムラが小さい場合)に対して、高所温度を採用することが設定され、その重みとして“1”が設定されている。
【0044】
空間条件の空間の広さに関し、空間が広い程、上下方向の温度差が大きくなる傾向がある。図7の設定テーブルでは、空間広さが広い場合(温度ムラが大きい場合)に対して、高所温度と中央温度と低所温度を採用することが設定され、それぞれの重みとして“1”が設定されている。空間広さが狭い場合(温度ムラが小さい場合)に対して、高所温度を採用することが設定され、その重みとして“1”が設定されている。
【0045】
空間条件に比べて空調条件の方が、温度ムラへの影響が大きいことから、空調条件については重み“2”が設定され、空間条件については重み“1”が設定されている。記憶部14には、予め図7に例示する設定テーブルが格納されていて、制御部13は、この設定テーブルに基づいて、状況に応じた基準温度を算出し、基準温度に基づいて空調制御を行う。次に図8図9を参照して、制御部13が、設定テーブルに基づいて、どのように基準温度の算出に用いる温度を選択し、基準温度を算出するかについて説明する。
【0046】
事前に、空間高さと広さについての設定を行う。例えば、空間高さと広さについて予め基準が設定されており、ユーザは、この基準に従って、空間Aの空間高さが高いか通常か、また、空間Aの広さが広いか狭いかを判断する。そして、ユーザは、リモコン7を操作して、空間Aの空間高さ、広さを設定する。設定受付部12は、リモコン7からユーザが設定した空間高さ、広さに関する設定を取得し、空間高さ、広さに関する設定内容を記憶部14に記録する。また、空間広さに関しては、空調機1の容量から制御部13が自動的に判定してもよい。具体的には、記憶部14には、予め空調機1の容量を示す情報と空間広さに関する閾値が記録されていて、制御部13は、この情報によって空調機1の容量を認識する。空調機1の容量が空間広さに関する閾値以上であれば、制御部13は、空間Aを広いと判定し、閾値未満であれば空間Aを狭いと判定し、判定結果を空間広さの設定として記憶部14に記録する。また、風量についての判定基準は、予め定められていて、その判定基準は記憶部14に記録されている。
【0047】
(例1:運転モード「暖房」、風量「多い」、部屋高さ「高い」、部屋広さ「広い」)
図8は、実施形態に係る状況に応じた基準温度の算出方法の一例を示す第1の図である。空調機1が、風量が多い状態で暖房運転しているとする。制御部13は、空調条件の運転モードについて「暖房」と判定する。制御部13は、記憶部14に記録された風量の判定基準に基づいて、風量が「多い」と判定する。また事前に記憶部14に記録された空間高さと空間広さの設定に基づいて、制御部13は、空間条件の空間高さについて「高い」、空間広さについて「広い」と判定する。状況に応じた空調条件と空間条件を判定すると、制御部13は、図7の設定テーブルに基づいて、基準温度の算出に用いる温度の選択とその温度への重み付けの設定を行う。例えば、制御部13は、運転モードについて、「暖房」と図7の設定テーブルの「暖房」行の設定に基づいて中央温度と低所温度を選択し、それぞれに重み“2”を設定する。制御部13は、風量について、「多い」と図7の設定テーブルの「多い」行の設定に基づいて高所温度を選択し、重み“2”を設定する。制御部13は、空間高さについて、「高い」と図7の設定テーブルの「高い」行の設定に基づいて中央温度と低所温度を選択し、それぞれに重み“1”を設定する。制御部13は、空間広さについて、「広い」と図7の設定テーブルの「広い」行の設定に基づいて高所温度、中央温度、低所温度を選択し、それぞれに重み“1”を設定する。これらの処理により、図8の表の「運転モード」の行から「部屋広さ」の行までの「天井」、「中央」、「床近傍」の各列の設定が得られる。制御部13は、設定した重み値を列ごとに合計する。すると、高所温度、中央温度、低所温度の重み値の合計は3、4、4、となる。制御部13は、重み値の合計に差があまりないこと等から、高所温度、中央温度、低所温度の全てを基準温度の算出に用いることを決定し、各重み値に基づく加重平均で基準温度を算出する。例えば、制御部13は、(高所温度×3+中央温度×4+低所温度×4)÷11によって、当該空調条件および空間条件における基準温度を算出する。制御部13は、このようにして算出された基準温度に基づいて暖房運転を行う。運転モード又は風量が変更されると、制御部13は、同様の手順で基準温度の算出方法(採用する温度と各温度への重み付け)を決定し、新たに決定した方法で基準温度を算出する。
【0048】
(例2:運転モード「冷房」、風量「少ない」、部屋高さ「通常」、部屋広さ「狭い」)
図9は、実施形態に係る状況に応じた基準温度の算出方法の一例を示す第2の図である。空調機1が、風量が少ない状態で冷房運転しているとする。空間Aについて、事前に部屋高さ「通常」、部屋広さ「狭い」が設定されているとする。制御部13は、運転モードについて「冷房暖房」、風量について「少ない」、空間高さについて「通常」、空間広さについて「狭い」と判定する。制御部13は、これらの判定結果と図7の設定テーブルとに基づいて、運転モード、風量、部屋高さ、部屋広さの各々について、採用する温度と重み付けの設定を行う。設定結果を図9の表の「運転モード」行から「部屋広さ」行の「天井」、「中央」、「床近傍」の各列に示す。制御部13は、設定した重み値を列ごとに合計する。すると、高所温度、中央温度、低所温度の重み値の合計は4、2、2となる。制御部13は、重み値の合計に差があること等から、高所温度だけを基準温度の算出に用いることを決定する。つまり、制御部13は、温度センサTh1が計測する高所温度を基準温度として採用する。なお、高所温度、中央温度、低所温度の重み値合計の比率4、2、2から高所温度だけを採用するように決定することについては、例えば、重み値の合計に2倍以上の開きがある場合には、大きな重み値が付された温度だけを採用するという基準を設け、制御部13は、この基準に基づいて、高所温度だけを基準温度の算出に用いることを決定してもよい。あるいは、重み値に2以上の開きがある場合には大きな重み値が付された温度だけを採用するという基準を設け、制御部13は、この基準に基づいて、高所温度だけを基準温度の算出に用いることを決定してもよい。また、図9のような重み値の合計が算出された場合であっても、図8の場合と同様に各温度の加重平均で基準温度を算出するという基準を設け、制御部13は、(高所温度×4+中央温度×2+低所温度×2)÷8によって、基準温度を算出してもよい。
【0049】
このように本実施形態によれば、制御部13は、空調条件および空間条件に応じた温度ムラの生じやすさに基づいて、高所温度、中央温度、低所温度のどの温度を空調制御において重要視するかを判定し、その判定結果に基づいて基準温度を算出する。これにより、温度ムラが生じた空間Aにおける局所的な温度ではなく、空間Aの全体の温度分布を考慮して算出された基準温度に基づいて空調を行うことができる。従って、ユーザの快適性の向上が期待できる。
【0050】
(2)基準温度の算出処理
次に図10を参照して、基準温度の算出処理について説明する。
図10は、実施形態に係る基準温度の算出処理の一例を示すフローチャートである。
制御部13は、記憶部14を参照して、基準温度の算出方法に関するユーザ設定(例えば、図6)が登録済みか否かを判定する(ステップS11)。ユーザ設定が登録済みの場合(ステップS11;Yes)、制御部13は、ユーザ設定に基づいて基準温度を算出する(ステップS15)。図6の設定が等速されている場合であれば、制御部13は、暖房運転時には温度センサTh2が計測する中央温度と温度センサTh3が計測する低所温度の平均値を算出し、この平均値を基準温度とする。冷房運転の場合、制御部13は、温度センサTh1が計測する高所温度を基準温度とする。
【0051】
ユーザ設定が登録済みではない場合(ステップS11;No)、制御部13は、空調条件と空間条件に基づいて、基準温度の算出方法を導出する。まず、制御部13は、空調条件に基づいて、各高さの温度への重み付けを設定する(ステップS12)。制御部13は、運転モードと図7の設定テーブルに基づいて、高所温度、中央温度、低所温度に対する重み付けを設定する。制御部13は、風量と図7の設定テーブルに基づいて、高所温度、中央温度、低所温度に対する重み付けを設定する。
【0052】
次に制御部13は、空間条件に基づいて、各高さの温度への重み付けを設定する(ステップS13)。制御部13は、空間高さと図7の設定テーブルに基づいて、高所温度、中央温度、低所温度に対する重み付けを設定する。制御部13は、空間広さと図7の設定テーブルに基づいて、高所温度、中央温度、低所温度に対する重み付けを設定する。
【0053】
次に制御部13は、各高さの温度への重み付けの合計を算出する(ステップS14)。例えば、制御部13は、高所温度、中央温度、低所温度に対する重み付けの合計3、4、4(図8)や4、2、2(図9)を算出する。次に制御部13は、基準温度を算出する(ステップS15)。図8の例の場合、制御部13は、(高所温度×3+中央温度×4+低所温度×4)÷11によって基準温度を算出する。制御部13は、基準温度に基づいて空調制御を行う(ステップS16)。例えば、制御部13は、上式によって算出された基準温度と設定温度に基づいて空間Aの暖房運転を行う。これにより、従来であれば、高所温度のみによって暖房運転が実行されるところ、中央温度や低所温度が考慮された基準温度に基づいて暖房運転が実行されるので、天井付近だけが暖かくなり、足元が冷えた状態が継続するなどの温度ムラに起因する空調制御の過不足を改善することができる。
【0054】
(3)基準温度に基づく空調制御の効果
以上、説明したように本実施形態の基準温度によれば、高所温度、中央温度、低所温度から基準温度を算出する。また、基準温度の算出にあたっては、空調条件や空間条件に応じて温度ムラの生じやすさを考慮し、温度ムラが生じる場合には、例えば、上下方向の幅広い温度を用いて基準温度を算出するように、各高さの温度に対して重み付けを設定し、部屋全体の温度分布を考慮して空間Aの基準温度を算出することができる。また、ユーザが重要視する高さの温度が存在すれば、その高さの温度に対してより大きな値の重み付けを付すことにより、部屋全体の温度分布を考慮しつつもユーザの要望に応じた空調環境を作ることができる。例えば、ユーザが暖房時の足元の温度を重要視する場合、図7の設定テーブルの「暖房」行の「床近傍」列に“3”を設定してもよい。また、上記の実施形態では、空調条件と空間条件の両方を用いることとしたが、空調条件だけ又は空間条件だけに基づいて、高所温度、中央温度、低所温度の各々に対して重み付けを設定し、基準温度を算出するようにしてもよい。また、空調条件について、運転モードと風量のうち、運転モードだけを用いて各高さの温度に対して重み付けを設定してもよいし、風量だけを用いて各高さの温度に対する重み付けを設定してもよい。同様に、空間条件について、空間高さと空間広さのうち、空間高さだけを用いて各高さの温度に対する重み付けを設定してもよいし、空間広さだけを用いて各高さの温度に対する重み付けを設定してもよい。
【0055】
(効果)
以上、説明したように本実施形態によれば、空間Aの高さ方向の温度分布のばらつきに対し、撹拌運転を行うことによって温度ムラを解消することができる。また、温度分布のばらつきを反映した基準温度を算出し、算出した基準温度に基づいて空調制御を行うことにより、温度ムラによって生じる空調制御の過不足を是正し、ユーザの不快感を低減することができる。また、上記の実施形態では、撹拌運転と基準温度に基づく空調制御を分けて説明したが、制御部13は、撹拌運転と基準温度に基づく空調制御の両方を並行して実行してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、室内機2が備える温度センサTh1、リモコン7が備える温度センサTh2、冷媒漏洩検知器8が備える温度センサTh3を活用して、撹拌運転や基準温度に基づく空調制御を行うことができるので、新たに温度センサを設ける必要が無い。また、上記の実施形態では、天井付近に空調機を設けることとしたが、天井付近に温度センサを設け、床置き式の空調機を備える空調システムへ本実施形態の撹拌運転や基準温度に基づく空調制御を適用してもよい。また、空調システム100は家庭用のルームエアコンであってもよいし、大型店舗、工場等の多数の利用者が存在する空間に設けられる空調システムであってもよい。
【0057】
図11は、実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の制御装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0058】
制御装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0059】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
<付記>
各実施形態に記載の制御装置、空調システム、制御方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0061】
(1)第1の態様の制御装置10は、空調機1の制御装置10であって、空調対象の空間の天井側の高所温度と、前記空間の床近傍の低所温度と、前記空間の中間的な高さの中央温度と、を取得する温度情報取得部(センサ情報取得部11)と、前記高所温度と、前記低所温度と、前記中央温度と、に基づいて、前記空調機を制御する制御部13と、を備える。
これにより、室内の高さ方向の温度分布のばらつき(温度ムラ)に対して適切な制御を行うことができる。
【0062】
(2)第2の態様に制御装置10は、(1)の制御装置10であって、前記制御部13は、前記高所温度と前記低所温度の温度差である第1温度差が所定の第1閾値以上となるか、又は、前記中央温度と前記低所温度の温度差である第2温度差が所定の第2閾値以上となると、前記空調機の室内機が備えるファンを運転する。
これにより、室内に生じた温度ムラを漏れなく検知し、室内の空気を拡販することで温度ムラを解消することができる。
【0063】
(3)第3の態様に係る制御装置10は、(2)の前記制御装置であって、前記制御部13は、前記ファンを運転する際に、風量をそれまでより増加させ、ルーバーを下向きにする制御を行う。
上下方向に風を送ることで、高さ方向の温度ムラを解消することができる。
【0064】
(4)第4の態様に係る制御装置は、(2)~(3)の制御装置であって、前記制御部13は、前記ファンを運転した後の前記高所温度と前記低所温度の差、又は、前記中央温度と前記低所温度の差が所定の閾値以上となる場合、前記第1温度差が前記第1閾値以上となるか、又は、前記第2温度差が前記第2閾値以上となったとしても、前記ファンの運転を行わない。
撹拌運転によって温度ムラを解消できない場合には、次回以降の撹拌運転の実行を回避することができる。これにより、ファン5を高速で運転することによって生じる音や風によって、ユーザが不快に感じる可能性を低減することができる。
【0065】
(5)第5の態様に係る制御装置は、(1)~(4)の制御装置であって、前記制御部は、前記高所温度と前記低所温度と前記中央温度から算出される基準温度と、設定温度と、に基づいて冷房運転又は暖房運転を行う。
これにより、空間Aの温度分布が反映された空調制御の基準とすべき温度に基づいて、空調制御を行うことができる。
【0066】
(6)第6の態様に係る制御装置は、(1)~(5)の制御装置であって、前記基準温度の算出における前記高所温度、前記低所温度、前記中央温度それぞれに対する重み付けの設定を受け付ける設定受付部、をさらに備える。
これにより、ユーザは、任意の重み付けを、高所温度、低所温度、中央温度の各温度に設定することができる。
【0067】
(7)第7の態様に係る制御装置は、(1)~(6)の制御装置であって、前記制御部は、空調条件および/又は空間条件に基づいて、前記高所温度、前記低所温度、前記中央温度それぞれに対する重み付けを算出し、算出したそれぞれの重み付けと、前記高所温度と、前記低所温度と、前記中央温度と、に基づいて前記基準温度を算出する。
これにより、自動的に状況に応じた基準温度を算出し、その基準温度に基づいて空調制御を行うことができるので、自動的に状況に応じた空調制御を実行することができる。
【0068】
(8)第8の態様に係る制御装置は、(1)~(7)の制御装置であって、前記空調条件は、冷房と暖房のうちの何れかを示す運転モードおよび/又は風量の大きさであり、前記空間条件は、前記空間の高さおよび/又は前記空間の広さである。
これにより、運転モード、風量、空間の高さ、広さに応じた基準温度を算出することができる。
【0069】
(9)第9の態様に係る制御装置は、(1)~(8)の制御装置であって、前記制御部は、前記空調条件と前記空間条件ごとに前記空間の高さ方向の温度のばらつきの生じやすさを定義した設定テーブル(図7)に基づいて、前記重み付けを算出する。
これにより、空間Aに生じる温度ムラの大きさを推定し、温度ムラの大きさに応じた基準温度を算出することができる。
【0070】
(10)第10の態様に係る空調システムは、空調対象の空間の天井側の高所の温度を検出する高所温度センサTh1と、前記空間の床近傍の低所の温度を検出する低所温度センサTh3と、前記空間の中間的な高さの温度を検出する中央温度センサTh2と、前記空間に設けられる室内機を備えた空調機と、(1)~(9)の制御装置と、を備える。
これにより、室内の高さ方向の温度ムラに対して適切な空調を行うことができる。
【0071】
(11)第11の態様に係る空調システムは、(10)の空調システムであって、前記高所温度センサが、前記空調機に設けられ、前記中央温度センサが、前記空調機のリモコンに設けられ、前記低所温度センサが、冷媒漏洩検知器に設けられている。
これにより、温度センサを有するリモコンと冷媒漏洩検知器が設置された環境であれば、温度センサの追設を行う必要が無い。
【0072】
(12)第12の態様に係る制御方法は、空調機の制御方法であって、空調対象の空間の天井側の高所温度と、前記空間の床近傍の低所温度と、前記空間の中間的な高さの中央温度と、を取得するステップと、前記高所温度と、前記低所温度と、前記中央温度と、に基づいて、前記空調機を制御するステップと、を有する。
【0073】
(12)第12の態様に係るプログラムは、空調機を制御するコンピュータに、空調対象の空間の天井側の高所温度と、前記空間の床近傍の低所温度と、前記空間の中間的な高さの中央温度と、を取得するステップと、前記高所温度と、前記低所温度と、前記中央温度と、に基づいて、前記空調機を制御するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0074】
1・・・空調機
2・・・室内機
3・・・室外機
4・・・冷媒配管
5・・・ファン
6・・・ルーバー
7・・・リモコン
8・・・冷媒漏洩検知器
9・・・冷媒センサ
10・・・制御装置
11・・・センサ情報取得部
12・・・設定受付部
13・・・制御部
14・・・記憶部
Th1、Th2、Th3・・・温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11