(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116880
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
F21S 9/02 20060101AFI20240821BHJP
G09F 13/04 20060101ALI20240821BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240821BHJP
G08B 23/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
F21S9/02 140
G09F13/04 J
F21S2/00 431
F21S2/00 435
G08B23/00 510A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022717
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】冨山 和也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 優
(72)【発明者】
【氏名】世良 大志郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 麻由
(72)【発明者】
【氏名】加古 一行
(72)【発明者】
【氏名】長岡 勉
(72)【発明者】
【氏名】新谷 祐介
(72)【発明者】
【氏名】今西 美音子
(72)【発明者】
【氏名】井手 康弘
(72)【発明者】
【氏名】増田 誠良
(72)【発明者】
【氏名】万本 敦
【テーマコード(参考)】
3K244
5C087
5C096
【Fターム(参考)】
3K244AA06
3K244BA04
3K244CA03
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA12
3K244ED30
3K244GA08
5C087AA02
5C087AA11
5C087AA17
5C087EE05
5C096AA01
5C096BA01
5C096CA02
5C096CB01
5C096FA03
5C096FA07
5C096FA08
(57)【要約】
【課題】色覚特性者による視認性を向上できる表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置10は、緑色および白色の第1表示パターン34を表示する第1表示部30と、第1表示部30の投影面上に配置され、少なくとも第1表示部30の第1表示パターン34の前面側が透光性を有するとともに、第1表示部30とは異なる表示の第2表示パターン44を有する第2表示部40と、を有する。第2表示部40が表示をした場合の第1表示部30と重なる第2表示部40の第2表示パターン44の前面側の光色は、JIS Z 9103:2018で規定された極度の危険を意味する赤紫である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑色および白色のパターンを表示する第1表示部と、
前記第1表示部の投影面上に配置され、少なくとも前記第1表示部の前記パターンの前面側が透光性を有するとともに、前記第1表示部とは異なる表示の表示パターンを有する第2表示部と、を有する表示装置において、
前記第2表示部が表示をした場合の前記第1表示部と重なる前記第2表示部の前記表示パターンの前面側の光色は、JIS Z 9103:2018で規定された極度の危険を意味する赤紫である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
緑色および白色のパターンを表示する第1表示部と、
前記第1表示部の投影面上に配置され、少なくとも前記第1表示部の前記パターンの前面側が透光性を有するとともに、前記第1表示部とは異なる表示の表示パターンを有する第2表示部と、を有する表示装置において、
前記第2表示部が表示をした場合の前記第1表示部と重なる前記第2表示部の前記表示パターンの前面側の光色は、xy色度図上で(0.303,0.065)(0.308,0.230)(0.365,0.258)(0.453,0.135)で囲われた範囲の光色である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
表示部と、
前記表示部に緑色および白色により避難経路を表示する第1パターンと、前記表示部に前記第1パターン上にxy色度図上で(0.303,0.065)(0.308,0.230)(0.365,0.258)(0.453,0.135)で囲われた範囲の光色により避難禁止マークを表示する第2パターンと、を表示させる表示制御部と、
を有することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置として、緑色と白色で表示されるシンボルの表示上に、赤色LEDで侵入禁止マークを表示する誘導灯がある。
【0003】
しかし、この誘導灯では、緑色と赤色の判別が困難な色覚特性者には、侵入禁止マークが判別できない虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、色覚特性者の視認性を向上できる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の表示装置は、緑色および白色のパターンを表示する第1表示部と、第1表示部の投影面上に配置され、少なくとも第1表示部のパターンの前面側が透光性を有するとともに、第1表示部とは異なる表示の表示パターンを有する第2表示部と、を有する。第2表示部が表示をした場合の第1表示部と重なる第2表示部の表示パターンの前面側の光色は、JIS Z 9103:2018で規定された極度の危険を意味する赤紫である。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の表示装置によれば、色覚特性者の視認性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態を示し、(a)は表示装置の第2表示部を表示しない状態の正面図、(b)は表示装置の第2表示部を表示した状態の正面図である。
【
図3】同上表示装置の第1表示部および第2表示部の光色を示すxy色度図である。
【
図4】同上表示装置において視認性の検証実験を行う条件のパターンを示す表である。
【
図5】同上表示装置においてC型の一般特性者による視認性の検証実験の結果を示す表である。
【
図6】同上表示装置においてP型の色覚特性者による視認性の検証実験の結果を示す表である。
【
図7】同上表示装置においてD型の色覚特性者による視認性の検証実験の結果を示す表である。
【
図8】JIS Z 8110:1995に記載の色度図である。
【
図9】第2の実施形態を示し、(a)は表示装置の第2パターンを表示しない状態の正面図、(b)は表示装置の第2パターンを表示した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、第1の実施形態を、
図1ないし
図8を参照して説明する。
【0010】
図1および
図2に表示装置10を示す。表示装置10は、避難者に避難経路を誘導するための誘導灯である。
【0011】
表示装置10は、本体11、この本体11に設けられた第1表示ユニット12および第2表示ユニット13等を備えている。
【0012】
本体11は、非常口等の避難経路に対応して天井面や壁面に設置される。本体11の前面側を表示面側とし、この本体11の表示面側は第1表示ユニット12が配置されるように開口されている。
【0013】
本体11内には、バッテリ20および電源ユニット21が収容されている。バッテリ20は、充放電可能な二次電池が用いられている。電源ユニット21は、商用交流電源等の外部電源からの電力を所定の電力に変換する電力変換部、バッテリ20を充放電する充放電部、上位機と相互に通信する通信部、および表示装置10を制御する制御部等を備えている。そして、電源ユニット21は、商用交流電源等の外部電源からの電力が入力する通常時に、その電力を所定の点灯用電力に変換して第1表示ユニット12に供給するとともに上位機からの制御に応じて第2表示ユニット13に供給し、また、バッテリ20を充電する。また、電源ユニット21は、外部電源の停電時に、バッテリ20からの電力を所定の点灯用電力に変換して第1表示ユニット12に供給するとともに、上位機からの制御に応じて第2表示ユニット13に供給する。
【0014】
また、第1表示ユニット12は、本体11の表示面側に配置されている。第1表示ユニット12は、第1表示部30と、第1光源部31と、本体11の表示面側に配置される第1導光板32と、この第1導光板32の前面側に配置される第1表示板33とを有している。第1表示板33には緑色および白色のパターンである第1表示パターン34が表示されており、この第1表示板33が緑色および白色のパターンを表示する第1表示部30として構成されている。
【0015】
第1光源部31は、基板35、およびこの基板35に実装されたLED素子等の発光素子36を有する発光モジュールにより構成されている。発光素子36は、第1導光板32の入射面に対向され、例えば白色光を第1導光板32の入射面に向けて放射する。そして、第1光源部31は外部電源からの電力またはバッテリ20の電力により常時点灯され、第1表示部30を常時表示させる。
【0016】
第1導光板32は、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の光透過性を有する合成樹脂により四角形板状に形成されている。第1導光板32は、第1光源部31に対向する上部側の端面に光が入射する入射面を有し、前面側の一主面に入射面から入射した光が出射する出射面を有する。なお、第1導光板32には、出射面に対向する反対側の面に、入射面から入射した光が出射面から出射するように配光手段を設けてもよい。配光手段としては、光透過制御材(白色顔料)の入ったインクが規則的に印刷されたドット印刷、出射面に対向する面に複数の凹凸を設けるプリズムカット形状またはドット加工、出射面に対向する面を研磨して微細な凹凸を設ける粗面加工等が含まれる。
【0017】
第1表示板33は、光透過性を有する合成樹脂により四角形のシート状に形成されている。第1表示板33には、誘導経路を示す絵柄、文字、矢印等のピクトグラムを含む緑色および白色の第1表示パターン34が表示されている。第1表示パターン34には、緑色のパターンを表示する緑色パターン34aの領域と、白色のパターンを表示する白色パターン34bの領域とが含まれている。なお、
図1(a)(b)には、説明を簡単にするために、緑色パターン34aを中央の四角形状、白色パターン34bを周囲の四角形枠状にそれぞれ簡略化して示すが、実際には誘導灯として誘導経路を示す絵柄等が緑色パターン34aおよび白色パターン34bによって表示される。
【0018】
第1表示板33の緑色パターン34aは、緑色のインクにより、例えばシルクスクリーン印刷やインクジェット印刷等の印刷により形成されている。また、第1表示板33の白色パターン34bは、白色のインクにより、例えばシルクスクリーン印刷やインクジェット印刷等の印刷により形成されている。
【0019】
そして、第1光源部31の光が第1導光板32から第1表示板33に出射されることにより、緑色パターン34aは緑色に表示され、白色パターン34bは白色に表示される。したがって、第1表示部30は、緑色パターン34aによる緑色の領域と、白色パターン34bによる白の領域との2色の領域で第1表示パターン34を表示する。
【0020】
なお、第1表示部30は第1導光板32と一体に形成されていてもよく、第1導光板32の前面側に第1表示パターン34が形成されてもよい。
【0021】
また、第2表示ユニット13は、本体11の表示面側であって、本体11に配置される第1表示ユニット12のさらに前面側に配置されている。第2表示ユニット13は、第2表示部40と、この第2表示部40が表示をするように光を照射する第2光源部41と、これら第2表示部40および第2光源部41を保持して本体11に取り付けられる取付枠42とを有している。
【0022】
第2表示部40は、本体11に配置されている第1表示部30の前面側に対向して配置される。すなわち、第2表示部40は、第1表示部30の投影面上に配置され、第1表示部30から出射される光が通過するように構成される。また、第2表示部40は、第1表示部30に対して前方に離隔して配置されている。
【0023】
第2表示部40は、第1表示部30の前面側に配置される第2導光板43を有している。第2導光板43は、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の無色透明で光透過性を有する合成樹脂により四角形板状に形成されている。第2導光板43は、第2光源部41に対向する上部側の端面に第2光源部41からの光が入射する入射面を有し、入射面に入射した光を下部側の端面に向かって導光する。
【0024】
第2導光板43の背面側には、避難禁止(侵入禁止)を示す絵柄、文字等のピクトグラムである避難禁止マークを表示する表示パターンである第2表示パターン44が形成されている。この第2表示パターン44は、例えば、白色のシルクスクリーン印刷やインクジェット印刷等の印刷や凹凸加工等により「×」印のパターン形状に形成されている。そして、入射面から入射して第2導光板43内を導光される光が第2表示パターン44で乱反射し、第2表示部40の前面側に出射する。これによって、第2光源部41から照射された光は第2表示パターン44が形成された領域の前方に向かって放射され、第2表示部40は第2表示パターン44の形状で表示する。このため、第2表示部40による表示は、第1表示部30とは色(色の詳細は後述する)および形状が異なる。第2表示部40の第2表示パターン44が設けられた領域は所定の透過率を有しており、第2表示パターン44がない領域は第2表示パターン44が設けられた領域よりも高い透過率となっている。このため、第1表示部30の前面側から放射された光は第2表示パターン44が設けられた領域では所定の透過率で減衰し、その他の領域では第2導光板43が無色透明の場合にはほぼそのまま透過する。そのため、第2表示部40の少なくとも第1表示部30の第1表示パターン34(34a、34b)の前面側は透光性を有する。換言すれば、第2表示部40の少なくとも第1表示部30の第1表示パターン34(34a、34b)と重なる領域は透光性を有する。
【0025】
第2光源部41は、基板45、およびこの基板45に実装されたLED素子等の発光素子46を有する発光モジュールにより構成されており、赤紫色の光を放射する。発光素子46は、第2導光板43の入射面に対向され、光を入射面から第2導光板43に入射させる。発光素子46は、1つの素子内に赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子を有するフルカラー発光素子を用いて赤紫色の光を放射してもよい。また、赤色発光素子と青色発光素子とを用いて混色により赤紫色の光を得るようにしてもよいし、素子と蛍光体とを組み合わせて赤紫色の光を得るようにしてもよい。
【0026】
取付枠42は、前後に開口する枠状に形成され、開口内に第2表示部40を形成した第2導光板43を保持し、上部側に第2光源部41を保持している。取付枠42は、本体11の前面側から取り付けられ、ねじ等で一体的に固定されている。
【0027】
なお、表示装置10は、前面側の片面のみを表示面側とする片面表示タイプであるが、前面側と反対側の両面を表示面側とする両面表示タイプであってもよい。
【0028】
そして、表示装置10は、上位機である自動火災報知機に対して相互に通信可能に接続される。
【0029】
表示装置10は、
図1(a)に示すように、第1表示部30が常時表示をし、避難経路を表示する。第2表示部40は、自動火災報知機から避難禁止信号が入力していない場合には、表示をしない。
【0030】
例えば、ある火災感知器で火災を感知し、その火災感知器からの感知情報を自動火災報知機が取得すると、自動火災報知機から火災を感知した避難経路に対応して設置されている表示装置10に対して避難禁止信号を送信する。
【0031】
表示装置10は、自動火災報知機から避難禁止信号を受信すると、
図1(b)に示すように、第2表示部40を表示する。第2表示部40では、第1表示部30に重ねて「×」印の第2表示パターン44を表示する。これにより、避難者は、第1表示部30に重ねて表示された「×」印の第2表示パターン44を確認することで、該当する避難経路への避難禁止を認識することが可能となる。
【0032】
表示装置10には、第1表示部30の投影面上に第2表示部40が配置され、さらに第2表示部40の第2表示パターン44が表示をしない場合と表示をする場合とが生じる。表示装置10には、第1表示部30の白色パターン34bの投影面上に第2表示パターン44がない領域A1、第1表示部30の白色パターン34bの投影面上に第2表示パターン44がある領域A2、第1表示部30の緑色パターン34aの投影面上に第2表示パターン44がない領域A3、第1表示部30の緑色パターン34aの投影面上に第2表示パターン44がある領域A4の4つの領域が存在する。
【0033】
第1表示部30と第2表示部40の第2表示パターン44との関係では、
図1(a)のように第2表示部40が表示をしない場合、第1表示部30の視認性がよいことが好ましく、また、
図1(b)のように第2表示部40の「×」印の第2表示パターン44を表示する場合、色覚の一般特性者や、色覚特性者にかかわらず、第2表示パターン44の視認性が確保されることが好ましい。
【0034】
次に、
図3に示すxy色度図を参照して、第1表示部30の緑色パターン34aおよび白色パターン34bの光色と、第2表示部40の第2表示パターン44の光色とについて説明する。
【0035】
第1表示部30の緑色パターン34aの光色は、x,y:(0.039,0.812)(0.284,0.619)(0.3,0.475)(0.245,0.377)(0.013,0.494)で囲われた範囲の緑である。
【0036】
第1表示部30の白色パターン34bの光色は、x,y:(0.5,0.405)(0.3,0.3)(0.3,0.34)(0.5,0.445)で囲われた範囲の白の光色である。
【0037】
第1光源部31の点灯時に第1表示部30の白色パターン34bを透過した透過色光の白色は、x,y:(0.285,0.264)(0.285,0.332)(0.44,0.432)(0.44,0.382)で囲われた範囲の透過色光の白である。
【0038】
これら緑の光色の範囲、白の光色の範囲、透過色光の白の光色の範囲は、JIS Z 9103:2005(安全色-一般的事項)信号灯で規定された色度座標の範囲である。
【0039】
また、第2表示部40の「×」印の第2表示パターン44の光色は、JIS Z 9103:2018で規定された極度の危険を意味する赤紫である。この赤紫は、xy色度図上で(0.303,0.065)(0.308,0.230)(0.365,0.258)(0.453,0.135)で囲われた範囲sの光色である。このJIS Z 9103:2018で規定された極度の危険を意味する赤紫は、色覚特性者の視認性を向上させることができるとともに、一般特性者に対して危険性を報知することができる。
【0040】
この第2表示部40の「×」印の第2表示パターン44の光色は、JIS安全色に記載されたマンセル参考値・CMYK・RGBの推奨値で表すと、10P 4/10、C:40 M:90 Y:0 K:0、R:153 G:0 B:153のいずれかに該当する。
【0041】
次に、第2表示部40の「×」印の第2表示パターン44の光色の選定について、視認性の検証実験を行って実証したことを説明する。
【0042】
図4に示すように、検証の条件を変えたパターン1~4およびパターン1B~4Bについて、視認性の検証実験を行った。
【0043】
パターン1~4では、第1表示部30の緑色パターン34aはx=0.202、y=0.574の色度座標の緑(
図3参照)、白色パターン34bはx=0.337、y=0.367の色度座標の白(
図3参照)とし、誘導灯を点灯し(第1光源部31を点灯させて第1表示部30を表示し)、第2光源部41の発光素子46における赤色発光素子を点灯させる電流値を100mAとすることを共通事項とし、第2光源部41の発光素子46における青色発光素子を点灯させる電流値を変えることにより、「×」印の第2表示パターン44の光色を変化させた。パターン1は青色発光素子を点灯させる電流値を27mA、パターン2は青色発光素子を点灯させる電流値を40mA、パターン3は青色発光素子を点灯させる電流値を50mA、パターン4は青色発光素子の電流値を0mA(青色発光素子を消灯)とした。
【0044】
図3のxy色度図には、パターン1~4それぞれの条件での第1表示部30の緑色パターン34aの投影面上に第2表示パターン44がある領域A4の色度座標を示しており、パターン1の光色の色度座標β1、パターン2の光色の色度座標β2、パターン3の光色の色度座標β3、パターン4の光色の色度座標β4を示す。パターン1の光色の色度座標β1、パターン2の光色の色度座標β2、パターン3の光色の色度座標β3は、JIS Z 9103:2018で規定された極度の危険を意味する赤紫の範囲であって、xy色度図上で(0.303,0.065)(0.308,0.230)(0.365,0.258)(0.453,0.135)で囲われた範囲sにある。パターン1の光色の色度座標β1は赤寄りの赤紫、パターン2の光色の色度座標β2は赤と紫の中間の赤紫、パターン3の光色の色度座標β3は紫寄りの赤紫であり、パターン4の光色の色度座標β4は赤色である。
【0045】
パターン1B~4Bでは、第1表示部30の緑色パターン34aはx=0.202、y=0.574の色度座標の緑、白色パターン34bはx=0.202、y=0.574の色度座標の白とし、誘導灯を消灯し(第1光源部31を消灯して外部からの光で第1表示部30が視認される状態とし)、第2光源部41の発光素子46における赤色発光素子を点灯させる電流値を100mAとすることを共通事項とし、第2光源部41の発光素子46における青色発光素子を点灯させる電流値を変えることにより、「×」印の第2表示パターン44の光色を変化させた。パターン1は青色発光素子を点灯させる電流値を27mA、パターン2は青色発光素子を点灯させる電流値を40mA、パターン3は青色発光素子を点灯させる電流値を50mA、パターン4は青色発光素子の電流値を0mA(青色発光素子を消灯)とした。
【0046】
そして、人の光を認識する視細胞には、赤、緑、青の光をそれぞれ感じる錐体と呼ばれるものがあり、赤、緑、青の光を感じる度合いの違いで錐体は様々な色を認識する。赤、緑、青の光を錐体が揃っている一般特性者がC型と呼ばれ、赤の錐体に変異がある色覚特性者がP型、緑の錐体に変異がある色覚特性者がD型と呼ばれる。
【0047】
図5に、C型の一般特性者により表示装置10の視認性の検証実験を行った結果に示す。
【0048】
検証実験では、C型の一般特性者であるC1~C5の5人の被験者が、パターン1~4および1B~4Bについて、第2表示部40の「×」印の第2表示パターン44と、第1表示部30の白(白色パターン34b)および緑(緑色パターン34a)の背景色との色差をそれぞれ評価した。この評価を行う評価基準は、6段階評価とし、数字が大きい方が「×」印の第2表示パターン44の判別がよいものとし、評価が4以上であれば「×」印の第2表示パターン44の判別がよい結果となる。また、第1表示部30の白と緑の背景色における「×」印の第2表示パターン44の判別のいずれか一方の評価が4以上であれば、他方の評価が3以下であっても、「×」印の第2表示パターン44の視認性としては形状を判断できるために問題としない。また、第1表示部30の白および緑の背景色の両方における「×」印の第2表示パターン44の評価とも3以下の場合は「×」印の第2表示パターン44の判別が難しい。
【0049】
C型の一般特性者においては、C1~C5の被験者とも、全てのパターン1~4および1B~4Bで4以上の評価となり、「×」印の第2表示パターン44の視認性が高い結果が得られた。
【0050】
さらに、C型の一般特性者においては、JIS Z 9103:2018で規定された極度の危険を意味する赤紫は危険色として認識されやすかった。
【0051】
また、
図6に、P型の色覚特性者により表示装置10の視認性の検証実験を行った結果を示す。
【0052】
P型の色覚特性者であるP1~P5の5人の被験者が、パターン1~4および1B~4Bについて、第2表示部40の「×」印の第2表示パターン44と、第1表示部30の白(白色パターン34b)および緑(緑色パターン34a)の背景色との色差をそれぞれ評価した。被験者による評価基準は、上記の通りである。
【0053】
P型の色覚特性者において、P1~P5の被験者とも、「×」印の第2表示パターン44が赤紫色の範囲にあるパターン1~3および1B~3Bについては、第1表示部30の白と緑の背景色における「×」印の第2表示パターン44の視認性のいずれか一方の評価が3以下となる場合もあるが、他方の評価が4以上にあるため、「×」印の第2表示パターン44の判別が可能で、視認性が確保された。一方、「×」印の第2表示パターン44が赤色の範囲にあるパターン4および4Bについては、第1表示部30の白および緑の背景色の両方における「×」印の第2表示パターン44の評価とも3以下となり、「×」印の第2表示パターン44の判別が困難となった被験者が存在した。
【0054】
また、
図7に、D型の色覚特性者により表示装置10の視認性の検証実験を行った結果を示す。
【0055】
D型の色覚特性者であるD1~D5の5人の被験者が、パターン1~4および1B~4Bについて、第2表示部40の「×」印の第2表示パターン44と、第1表示部30の白(白色パターン34b)および緑(緑色パターン34a)の背景色との色差をそれぞれ評価した。被験者による評価基準は、上記の通りである。
【0056】
D型の色覚特性者において、D1~D5の被験者の一部に、第1表示部30の白と緑の背景色における「×」印の第2表示パターン44の視認性のいずれか一方の評価が3以下となる場合もあるが、他方の評価が4以上にあるため、「×」印の第2表示パターン44の判別が可能で、視認性が確保された。
【0057】
以上の結果から、「×」印の第2表示パターン44が上述したJIS Z 9103:2018で規定された赤紫の範囲(xy色度図における赤紫の範囲s)にあるパターン1~3および1B~3Bについては、一般特性者および色覚特性者とも、「×」印の判別に有効な結果が得られた。一方で、「×」印の第2表示パターン44が赤色にあるパターン4および4Bについては、P型の色覚特性者において、「×」印の第2表示パターン44の判別が困難な場合がある結果が得られた。
【0058】
したがって、第2表示部40が表示をした場合の第1表示部30と重なる第2表示部40の「×」印の第2表示パターン44の前面側の光色は、JIS Z 9103:2018で規定された極度の危険を意味する赤紫であること、または、xy色度図上で(0.303,0.065)(0.308,0.230)(0.365,0.258)(0.453,0.135)で囲われた範囲sにあることにより、色覚特性者による「×」印の第2表示パターン44が判別しやすく、色覚特性者による視認性を向上できる。
【0059】
さらに、上述したJIS Z 9103:2018で規定された赤紫の範囲(xy色度図における赤紫の範囲s)の光色は、一般特性者において、判別可能であるとともに、危険色として認識されやすいために危険性を報知でき、避難禁止であることを認識しやすくできる。
【0060】
なお、「×」印の第2表示パターン44の光色を青色とした場合、一般特性者および色覚特性者による判別が可能であるが、一般特性者には、危険色として認識されにくく、違和感を与えるため、一般特性者において危険色として認識される上述したJIS Z 9103:2018で規定された赤紫の範囲(xy色度図における赤紫の範囲s)の光色の方が好ましい。
【0061】
また、誘導灯が点灯(第1光源部31を点灯させて第1表示部30を表示し)、消灯(第1光源部31を消灯して外部からの光で第1表示部30が視認される状態)に関わらず、第2表示部40の「×」印の第2表示パターン44の光色は、上述したJIS Z 9103:2018で規定された赤紫の範囲(xy色度図における赤紫の範囲s)にあることにより、第1光源部31や電源ユニット21などの異常により第1表示部30が不点となった場合でも、第2表示部40の「×」印の第2表示パターン44を判別することが可能で、認識性を確保できる。
【0062】
また、
図8にJIS Z 8110:1995に記載の色度図を示す。第2表示部40の単体において、「×」印の第2表示パターン44の光色が上述したJIS Z 9103:2018で規定された赤紫の範囲(xy色度図における赤紫の範囲s)から外れていても、第2表示部40が第1表示部30と重なることにより、「×」印の第2表示パターン44の光色が上述したJIS Z 9103:2018で規定された赤紫の範囲(xy色度図における赤紫の範囲s)に移行して入る場合でもよい。例えば、
図8に示すように、第2表示部40の単体において、「×」印の第2表示パターン44の光色が上述したJIS Z 9103:2018で規定された赤紫の範囲(xy色度図における赤紫の範囲s)から外れた「紫」であっても、第2表示部40が第1表示部30と重なることにより、上述したJIS Z 9103:2018で規定された赤紫の範囲(xy色度図における赤紫の範囲s)の「うすい紫」に移行して入る場合でもよい。
【0063】
また、例えば第2表示部40の単体において、「×」印の第2表示パターン44の光色がJIS Z 8110:1995の「紫」でありJIS Z 9103:2018で規定された赤紫の範囲(xy色度図における赤紫の範囲s)内である場合に、第2表示部40が第1表示部30と重なることにより、「×」印の第2表示パターン44の光色がJIS Z 9103:2018で規定された赤紫の範囲(xy色度図における赤紫の範囲s)内の上述したJIS Z 8110:1995の「赤紫」に移行する場合でもよい。つまり、第2表示部40が第1表示部30と重なることにより、「×」印の第2表示パターン44の光色が上述したJIS Z 9103:2018で規定された赤紫の範囲(xy色度図における赤紫の範囲s)であればよい。
【0064】
次に、
図9に第2の実施形態を示す。なお、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0065】
表示装置10は、表示部50と、この表示部50による表示を制御する表示制御部51と、を備える。
【0066】
表示部50は、カラー表示可能な例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどで構成される。表示部50は、本体11の前面側の片面、あるいは前後面の両面に配置される。
【0067】
表示制御部51は、表示部50に、緑色および白色により避難経路を表示する第1パターン52と、第1パターン52上にxy色度図上で(0.303,0.065)(0.308,0.230)(0.365,0.258)(0.453,0.135)で囲われた範囲s(
図3参照)の光色により「×」印の避難禁止マークを表示する第2パターン53と、を表示可能とする。
【0068】
第1パターン52には、緑色のパターンを表示する緑色パターン52aの領域と、白色のパターンを表示する白色パターン52bの領域とが含まれている。第1パターン52の緑色および白色は、上述したJIS Z 9103:2005(安全色-一般的事項)信号灯で規定された色度座標の範囲の光色である。第2パターン53の「×」印の避難禁止マークの光色は、上述したxy色度図における範囲sであって、JIS Z 9103:2018で規定された極度の危険を意味する赤紫である。
【0069】
そして、
図9(a)に示すように、表示装置10は、自動火災報知機から避難禁止信号が入力していない場合、表示部50に避難経路を示す第1パターン52のみを表示する。
【0070】
図9(b)に示すように、表示装置10は、自動火災報知機から避難禁止信号を受信すると、第1パターン52を表示している表示部50に、第2パターン53の「×」印の避難禁止マークを重ねて表示する。第2パターン53は、第1パターン52に重なる領域を第1パターン52から置き換えて表示してもよい。また、第2パターン53は、第1パターン52の表示と重ねることで変化する光色で表示してもよい。この場合、第2パターン53の単体の光色が上述したxy色度図における赤紫の範囲sから外れていても、第2パターン53が第1パターン52と重なることにより、第2パターン53の光色が上述したxy色度図における赤紫の範囲sに移行して入るようにしてもよい。
【0071】
そして、表示部50に第1パターン52に重ねて表示された第2パターン53の「×」印の避難禁止マークを避難者が確認することで、該当する避難経路への避難禁止を認識することが可能となる。
【0072】
なお、表示装置は、誘導灯に限らず、例えばゲート等での人や車両の進入可、進入禁止を表示する表示装置等にも適用できる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
10 表示装置
30 第1表示部
34 パターンである第1表示パターン
40 第2表示部
44 表示パターンである第2表示パターン
50 表示部
51 表示制御部
52 第1パターン
53 第2パターン