(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116881
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】メッセージ配信装置、メッセージ配信方法及びメッセージ配信プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240821BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022719
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】佐野 絢音
(72)【発明者】
【氏名】澤谷 雪子
(72)【発明者】
【氏名】磯原 隆将
(72)【発明者】
【氏名】臼井 仁志
(72)【発明者】
【氏名】大木 哲史
(72)【発明者】
【氏名】西垣 正勝
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC12
5L050CC12
(57)【要約】
【課題】ユーザ自身によるセキュリティ対策の実施率を向上させられるメッセージ配信装置を提供すること。
【解決手段】情報管理サーバ10は、ユーザの外見を表す元画像と共に、当該ユーザにとって元画像より優る画像、及び元画像より劣る画像を含む加工画像群を順位付けて取得する画像取得部112と、セキュリティ対策の実施状況を含む端末情報を取得する端末情報取得部113と、未実施のセキュリティ対策の実施を求めるメッセージに対して、いずれかの画像を付与した表示データを作成するメッセージ作成部117と、表示データをユーザの端末へ配信するメッセージ配信部118と、配信したメッセージに対して、対策の実施の有無を含む回答を取得するメッセージ回答取得部119と、を備え、メッセージ作成部117は、元画像及び加工画像群のうち、過去のメッセージに対する回答に基づく評価に応じた順位の画像を選択する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザそれぞれについて、当該ユーザの外見を表す元画像と共に、当該ユーザにとって当該元画像より優る一つ以上の画像、及び当該元画像より劣る一つ以上の画像を含む加工画像群を順位付けて取得する画像取得部と、
前記ユーザの端末におけるセキュリティ対策の実施状況を含む端末情報を取得する端末情報取得部と、
前記端末情報に基づいて、未実施のセキュリティ対策の項目を判定し、当該項目の実施を求めるメッセージに対して、前記元画像及び前記加工画像群のうち、いずれかの画像を付与した表示データを作成するメッセージ作成部と、
前記表示データを前記ユーザの端末へ配信するメッセージ配信部と、
配信した前記メッセージに対して、前記項目の実施の有無を含む回答を取得するメッセージ回答取得部と、を備え、
前記メッセージ作成部は、前記元画像及び前記加工画像群のうち、過去のメッセージに対する回答に基づく評価に応じた順位の画像を選択するメッセージ配信装置。
【請求項2】
前記メッセージ作成部は、前回のメッセージに対する回答における前記実施の有無に応じて順位を上下させた画像を選択する請求項1に記載のメッセージ配信装置。
【請求項3】
前記ユーザのセキュリティ対策の実施状況、又は関心度合いを質問する項目を含んだアンケートを配信するアンケート配信部と、
前記アンケートに対する回答を取得するアンケート結果取得部と、
前記アンケートに対する回答、前記端末情報及び前記過去のメッセージに対する回答に基づいて、セキュリティ対策に対する前記ユーザの行動変容ステージを判定する判定部と、を備え、
前記メッセージ作成部は、前記元画像及び前記加工画像群のうち、判定された前記行動変容ステージに応じた順位の画像を選択する請求項1又は請求項2に記載のメッセージ配信装置。
【請求項4】
前記画像取得部は、前記元画像として、前記ユーザの顔画像を取得する請求項1又は請求項2に記載のメッセージ配信装置。
【請求項5】
前記画像取得部は、前記元画像を所定のルールに従って加工し、前記加工画像群を作成する請求項1又は請求項2に記載のメッセージ配信装置。
【請求項6】
前記ユーザの公的自意識の関心度合いを質問する項目を含んだアンケートを配信するアンケート配信部と、
前記アンケートに対する回答を取得するアンケート結果取得部と、を備え、
前記メッセージ作成部は、前記アンケートに対する回答において、前記公的自意識の関心度合いが所定以上のユーザに対してのみ、前記メッセージに対して、前記元画像及び前記加工画像群のうち、いずれかの画像を付与する請求項1又は請求項2に記載のメッセージ配信装置。
【請求項7】
ユーザそれぞれについて、当該ユーザの外見を表す元画像と共に、当該ユーザにとって当該元画像より優る一つ以上の画像、及び当該元画像より劣る一つ以上の画像を含む加工画像群を順位付けて取得する画像取得ステップと、
前記ユーザの端末におけるセキュリティ対策の実施状況を含む端末情報を取得する端末情報取得ステップと、
前記端末情報に基づいて、未実施のセキュリティ対策の項目を判定し、当該項目の実施を求めるメッセージに対して、前記元画像及び前記加工画像群のうち、いずれかの画像を付与した表示データを作成するメッセージ作成ステップと、
前記表示データを前記ユーザの端末へ配信するメッセージ配信ステップと、
配信した前記メッセージに対して、前記項目の実施の有無を含む回答を取得するメッセージ回答取得ステップと、をコンピュータが実行し、
前記メッセージ作成ステップにおいて、前記元画像及び前記加工画像群のうち、過去のメッセージに対する回答に基づく評価に応じた順位の画像を選択するメッセージ配信方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載のメッセージ配信装置としてコンピュータを機能させるためのメッセージ配信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末のセキュリティに関する通知メッセージを配信する装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マルウェアを利用したサイバー攻撃が高度化し、迷惑メール又は不正アクセス等による被害が多数発生している。このような状況において、ユーザが利用する端末におけるセキュリティ対策の実施は、一層重要となっている。
【0003】
特許文献1では、信頼できるサイトから収集したセキュリティ情報のうち、現状のパッチ適用状況等から必要な情報をユーザに通知する装置が提案されている。これにより、ユーザは、セキュリティ情報をタイムリーに入手でき、また、パッチ情報に従ってパッチを適用することにより、常にホストを安全に使用することができる。
【0004】
一方で、一般的に、OS又は他のソフトウェアの更新の際には、たとえ自動更新設定であっても、端末の再起動が必要な場合が多いため、ユーザ自身が対策を実施する必要がある。このため、ユーザの行動(対策実施)を促す方策が重要である。
【0005】
非特許文献1では、自分の顔(外見)が変化することで、他者からの評価が変わり、その結果として自分自身の行動が変化することが紹介されている。ここでは、他者の目に映る自己の姿を意識する公的自意識(印象管理)が示されているが、その度合いは人それぞれである。
【0006】
非特許文献2では、ある行動を実施している自分をイメージさせることで、行動開始を促す方式(自己の再評価)や、ある行動を続けていることに対して報酬を与えることで、行動維持を促す方式(強化マネジメント)等が示されている。
【0007】
非特許文献3では、従業員が「自分が情報セキュリティ対策を実施しなくてはならない」と認識することを自分事認識と定義し,自分事認識を喚起させるセキュリティ教育コンテンツをパスワード運用やSNS運用に適用した結果が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】山本万里子, 顔の印象と対人的影響, 日本化粧品技術者会誌, Vol. 34, No. 4, pp. 351-358, 2000.
【非特許文献2】津田彰 他, 多理論統合モデル(TTM)にもとづくストレスマネジメント 行動変容ステージ別実践ガイド, 久留米大学心理学研究, No. 9, pp. 77-88, 2010.
【非特許文献3】萩谷文, 稲葉緑, 情報セキュリティ教育の効果に対する教育項目及び方法の影響, 情報処理学会研究報告, コンピュータセキュリティ(CSEC), Vol. 88, No. 34, 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の方法で提供されるメッセージは、どのユーザに対しても同一のため、ユーザ自らがセキュリティ対策を実施しようとする意識の向上が期待できなかった。
また、非特許文献1及び2で挙げられている心理効果は、セキュリティ対策の用途ではない上に、各ユーザに対して適切にパーソナライズされてもいなかった。非特許文献3では、教育コンテンツにより自分事認識を喚起させることが示されているとしても、セキュリティ対策に関する通知メッセージにより各ユーザに同様の影響を与えることは難しかった。
【0011】
本発明は、ユーザ自身によるセキュリティ対策の実施率を向上させられるメッセージ配信装置、メッセージ配信方法及びメッセージ配信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るメッセージ配信装置は、ユーザそれぞれについて、当該ユーザの外見を表す元画像と共に、当該ユーザにとって当該元画像より優る一つ以上の画像、及び当該元画像より劣る一つ以上の画像を含む加工画像群を順位付けて取得する画像取得部と、前記ユーザの端末におけるセキュリティ対策の実施状況を含む端末情報を取得する端末情報取得部と、前記端末情報に基づいて、未実施のセキュリティ対策の項目を判定し、当該項目の実施を求めるメッセージに対して、前記元画像及び前記加工画像群のうち、いずれかの画像を付与した表示データを作成するメッセージ作成部と、前記表示データを前記ユーザの端末へ配信するメッセージ配信部と、配信した前記メッセージに対して、前記項目の実施の有無を含む回答を取得するメッセージ回答取得部と、を備え、前記メッセージ作成部は、前記元画像及び前記加工画像群のうち、過去のメッセージに対する回答に基づく評価に応じた順位の画像を選択する。
【0013】
前記メッセージ作成部は、前回のメッセージに対する回答における前記実施の有無に応じて順位を上下させた画像を選択してもよい。
【0014】
前記メッセージ配信装置は、前記ユーザのセキュリティ対策の実施状況、又は関心度合いを質問する項目を含んだアンケートを配信するアンケート配信部と、前記アンケートに対する回答を取得するアンケート結果取得部と、前記アンケートに対する回答、前記端末情報及び前記過去のメッセージに対する回答に基づいて、セキュリティ対策に対する前記ユーザの行動変容ステージを判定する判定部と、を備え、前記メッセージ作成部は、前記元画像及び前記加工画像群のうち、判定された前記行動変容ステージに応じた順位の画像を選択してもよい。
【0015】
前記画像取得部は、前記元画像として、前記ユーザの顔画像を取得してもよい。
【0016】
前記画像取得部は、前記元画像を所定のルールに従って加工し、前記加工画像群を作成してもよい。
【0017】
前記メッセージ配信装置は、前記ユーザの公的自意識の関心度合いを質問する項目を含んだアンケートを配信するアンケート配信部と、前記アンケートに対する回答を取得するアンケート結果取得部と、を備え、前記メッセージ作成部は、前記アンケートに対する回答において、前記公的自意識の関心度合いが所定以上のユーザに対してのみ、前記メッセージに対して、前記元画像及び前記加工画像群のうち、いずれかの画像を付与してもよい。
【0018】
本発明に係るメッセージ配信方法は、ユーザそれぞれについて、当該ユーザの外見を表す元画像と共に、当該ユーザにとって当該元画像より優る一つ以上の画像、及び当該元画像より劣る一つ以上の画像を含む加工画像群を順位付けて取得する画像取得ステップと、前記ユーザの端末におけるセキュリティ対策の実施状況を含む端末情報を取得する端末情報取得ステップと、前記端末情報に基づいて、未実施のセキュリティ対策の項目を判定し、当該項目の実施を求めるメッセージに対して、前記元画像及び前記加工画像群のうち、いずれかの画像を付与した表示データを作成するメッセージ作成ステップと、前記表示データを前記ユーザの端末へ配信するメッセージ配信ステップと、配信した前記メッセージに対して、前記項目の実施の有無を含む回答を取得するメッセージ回答取得ステップと、をコンピュータが実行し、前記メッセージ作成ステップにおいて、前記元画像及び前記加工画像群のうち、過去のメッセージに対する回答に基づく評価に応じた順位の画像を選択する。
【0019】
本発明に係るメッセージ配信プログラムは、前記メッセージ配信装置としてコンピュータを機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ユーザ自身によるセキュリティ対策の実施率を向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態における管理システムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態における情報管理サーバの機能構成を示す図である。
【
図3】実施形態におけるメッセージの表示画面を例示する図である。
【
図4】実施形態におけるメッセージに付加する顔画像を選択する処理を示す第1のフローチャートである。
【
図5】実施形態におけるメッセージに付加する顔画像を選択する処理を示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
本実施形態のメッセージ配信装置は、ユーザの心理特性を用いたメッセージを通知することにより、利用デバイス(端末)におけるOS又は他のソフトウェアの更新等、セキュリティ対策の実施を促進させ、その行動を継続させる。
なお、本実施形態は、OSの更新(修正パッチの適用)、又は他のソフトウェアの更新等、各種のセキュリティ対策に適用できるが、以降は、主にOS更新の場合について例示する。
【0023】
図1は、本実施形態における管理システム1の構成を示す図である。
管理システム1は、データベースを備えた情報管理サーバ10(メッセージ配信装置)と、ユーザ端末20とを備え、ユーザ端末20には、管理用のソフトウェアが配布されている。
【0024】
管理システム1は、情報管理サーバ10とユーザ端末20のソフトウェアとが連携して動作することにより、配信ルール登録処理(1)、顔画像加工処理(2)、端末情報取得処理(3)、アンケート配信処理(4)、アンケート結果取得処理(5)、行動変容ステージ判定処理(6)、メッセージ作成処理(7)、メッセージ配信処理(8)、メッセージ回答取得処理(9)を実行する。
【0025】
これにより、情報管理サーバ10は、メッセージ及びその配信条件を管理し、端末情報に応じて必要なセキュリティ対策の実施(OS更新)を促すメッセージを、ユーザ端末20に対して配信する。
このとき、情報管理サーバ10は、ユーザの心理特性として自分事認識を活用し、OSの更新を促すために通知されるメッセージにユーザの顔画像を提示して当事者意識を高めることで、ユーザの自分事認識を高め、対策実施を促進又は継続させる。
さらに、本実施形態のメッセージ配信方法では、後述のように、自己の再評価及び強化マネジメントを活用し、顔画像を変更することによって、対策実施率の向上が図られる。
【0026】
図2は、本実施形態における情報管理サーバ10の機能構成を示す図である。
情報管理サーバ10は、制御部11及び記憶部12の他、各種データの入出力デバイス及び通信デバイス等を備えた情報処理装置(コンピュータ)である。
【0027】
制御部11は、情報管理サーバ10の全体を制御する部分であり、記憶部12に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、本実施形態における各機能を実現する。制御部11は、CPUであってよい。
【0028】
記憶部12は、ハードウェア群を情報管理サーバ10として機能させるための各種プログラム、及び各種データ等の記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ又はハードディスクドライブ(HDD)等であってよい。
具体的には、記憶部12は、本実施形態の各機能を制御部11に実行させるためのプログラム(メッセージ配信プログラム)の他、各種のデータベースを記憶する。
【0029】
制御部11は、配信ルール登録部111と、画像取得部112と、端末情報取得部113と、アンケート配信部114と、アンケート結果取得部115と、ステージ判定部116と、メッセージ作成部117と、メッセージ配信部118と、メッセージ回答取得部119とを備える。
【0030】
配信ルール登録部111は、配信ルール登録処理(1)を担う機能部であり、アンケート結果等で得られた知見に基づき、セキュリティ対策の実施を促すためのメッセージの端末配信条件121を、予めシステム管理者から直接、あるいはシステム管理者の端末を介して受け付け、記憶部12のデータベースに登録する。
【0031】
アンケート結果等で得られる知見としては、例えば、ユーザのセキュリティ対策への興味、関心、認知度、及び対策実施状況に応じて判断される行動変容ステージ、あるいは、性格やリスク認知度、ユーザ端末20での作業状況に基づく適切な配信タイミング等が挙げられる。
【0032】
ここで、行動変容ステージは、セキュリティ対策の実施に無関心な状態から継続して実施するようになるまでの段階的なステージを表す。
例えば、次のようにステージを定義し、ユーザ毎にいずれのステージであるかが判定される。
無関心期:セキュリティ対策に興味・関心がなく、現状できるセキュリティ対策を把握していない。
関心期:セキュリティ対策に興味・関心があるか、又は現状できるセキュリティ対策を把握しているが、したいと思っていない。
準備期:現状できるセキュリティ対策をしたいと思っているが、するべきセキュリティ対策を自分で実施していない。
実行期:するべきセキュリティ対策を自分で時々実施しているが、継続して実施していない。
維持期:するべきセキュリティ対策を自分で継続して実施している。
【0033】
また、配信ルール登録部111は、セキュリティ対策の種類、及び行動変容ステージ等のユーザの属性に応じて通知する文面をメッセージ122として、記憶部12のデータベースに登録する。
【0034】
端末配信条件121及びメッセージ122が登録されると、配信ルール登録部111は、自動的に、各ユーザの行動変容ステージを含む属性情報と、セキュリティ対策の種類とに適した配信ルール123を初期設定する。
【0035】
さらに、配信ルール登録部111は、ユーザ(ユーザ端末20)それぞれの属性情報に基づいて、個別に配信するメッセージの特徴を規定する複数の要素(メッセージの文面、UIデザイン、配信タイミング等)を決定して、記憶部12のデータベースに端末配信設定ログ124として記録する。
【0036】
その後、配信ルール登録部111は、端末情報取得処理(3)又はメッセージ回答取得処理(9)により得られた各ユーザ端末20の状況に基づいて、所定の規則に従って端末配信設定を新たに決定する度に、端末配信設定ログ124として記録する。
【0037】
画像取得部112は、顔画像加工処理(2)を担う機能部であり、管理システム1のサービスを利用するユーザそれぞれについて、ユーザ自身の現実の外見を表す元画像と共に、ユーザにとって元画像より優る理想的な一つ以上の画像、及び元画像より劣る理想的でない一つ以上の画像を含む加工画像群を順位付けて取得する。取得した画像群は、ユーザに紐づけて記憶部12のデータベースにユーザ画像125として記録される。
【0038】
例えば、画像取得部112は、元画像として、ユーザ自身の顔画像(写真)を取得し、さらに、元画像よりも理想的な顔に加工した画像、及び理想的ではない顔に加工した画像の入力を受け付ける。
このとき、画像取得部112は、既存のソフトウェア(例えば、SNOW(登録商標)等の加工ツール)を用いる等、元画像を所定のルールに従って自動加工、又はユーザの操作入力に応じて加工し、加工画像群を作成してもよい。
なお、登録される画像群(元画像及び加工画像群)は、アバター画像等、ユーザ自身の好みのキャラクタ画像であってもよいが、以下では、顔画像を例に説明する。
【0039】
端末情報取得部113は、端末情報取得処理(3)を担う機能部であり、ユーザによるセキュリティ対策の実施状況を把握するため、ユーザ端末20のソフトウェアを通じて、ユーザ端末20のOSのバージョン及び修正パッチの適用状況等の端末情報を定期的に取得する。取得した端末情報は、記憶部12のデータベースに端末情報ログ126として記録される。
【0040】
アンケート配信部114は、アンケート配信処理(4)を担う機能部であり、ユーザによるセキュリティ対策の実施状況、又は関心度合いを質問する項目を含んだアンケートをユーザ端末20に配信する。
【0041】
アンケート結果取得部115は、アンケート結果取得処理(5)を担う機能部であり、アンケートに対する回答をユーザ端末20から取得する。取得された情報は、記憶部12のデータベースにアンケートログ127として記録される。
【0042】
ステージ判定部116は、行動変容ステージ判定処理(6)を担う機能部であり、アンケートに対する回答、端末情報、及び後述のメッセージに対する過去のユーザの回答に基づいて、セキュリティ対策に対するユーザの行動変容ステージを判定する。
【0043】
情報管理サーバ10は、アンケートの回答から判断されるユーザの意識、及び対策実施状況に応じて、このように分類した行動変容ステージ毎にパーソナライズした文面、UIデザイン、配信タイミングを決定することができる。
本実施形態では、このようにパーソナライズされたメッセージに対して、さらに、ユーザの心理特性を利用した画像を付加する。
【0044】
メッセージ作成部117は、メッセージ作成処理(7)を担う機能部であり、端末情報取得部113により取得された端末情報ログ126に基づいて、ユーザ端末20において未実施のセキュリティ対策の項目(例えば、OSの更新)を判定し、判定した項目の実施を求めるメッセージに対して、ユーザ画像125に含まれる元画像及び加工画像群のうち、対策の実施状況に応じて選択したいずれかの顔画像を付与した表示データを作成する。
【0045】
このとき、メッセージ作成部117は、元画像及び加工画像群のうち、過去のメッセージに対する回答に基づく評価に応じた順位の画像を選択する。
具体的には、メッセージ作成部117は、例えば、元画像及び加工画像群のうち、前回のメッセージに対する回答における実施の有無に応じて順位を上下させた画像を選択する。
あるいは、メッセージ作成部117は、ステージ判定部116により判定された行動変容ステージに応じた順位の画像を選択してもよい。また、行動変容ステージに応じた順位に加えて、さらに、前回のメッセージに対する回答(OS更新の実施の有無)に応じて順位が調整されてもよい。
【0046】
また、アンケート配信部114は、さらに、ユーザの公的自意識(印象管理)についての関心度合いを質問する項目を含んだアンケートを配信してもよい。
印象管理に興味があるユーザに対しては、本実施形態において利用される自分事認識、自己の再評価、強化マネジメントの効果がより期待できる。したがって、メッセージ作成部117は、アンケートに対する回答において、公的自意識の関心度合いが所定以上のユーザに対してのみ、メッセージに対して、元画像及び加工画像群のうち、いずれかの画像を付与してもよい。
【0047】
メッセージ配信部118は、メッセージ配信処理(8)を担う機能部であり、メッセージ作成部117により作成された表示データを、ユーザ端末20へ配信する。
【0048】
メッセージ回答取得部119は、メッセージ回答取得処理(9)を担う機能部であり、メッセージ配信部118により配信されたメッセージに対して、ユーザ端末20から、未実施のセキュリティ対策の項目に対する実施の有無を含む回答を取得する。
ユーザ端末20に配信したメッセージの内容及び回答結果は、メッセージ配信ログ128として記憶部12のデータベースに記録される。
【0049】
図3は、本実施形態におけるメッセージの表示画面を例示する図である。
ここでは、セキュリティ更新プログラムによるOS更新を促す文言と共に、「今すぐ更新」及び「後で更新」のボタンが配置されたダイアログが表示されている。
メッセージ回答取得部119は、ユーザに配信されたメッセージに対して、セキュリティ対策の実施の有無、すなわち「今すぐ更新」又は「後で更新」のいずれが選択(いずれのボタンが押下)されたかを取得する。「今すぐ更新」が選択された場合には、ユーザ端末20に更新プログラムが適用され、「後で更新」が選択された場合には、例えば一定時間経過後、同様のタイミングに再度メッセージが配信される。
【0050】
このメッセージは、OS更新を促す所定のタイミングで配信されるが、この際にユーザの顔画像も一緒に提示される。例示したダイアログには、メッセージの左部分に、ユーザ自身の顔画像(元画像)、あるいは、理想的な顔画像又は理想的でない顔画像が選択的に表示される。
【0051】
図4は、本実施形態におけるメッセージ作成部117により、メッセージに付加する顔画像を選択する処理を示す第1のフローチャートである。
ここでは、対象のユーザの行動変容ステージが不明な場合について示しており、前回のメッセージに対する回答、すなわち対策実施の有無に応じて、ユーザの顔画像が選択される。
【0052】
ステップS1において、メッセージ作成部117は、例えばメッセージ配信ログのない初期状態において、ユーザの元画像を選択し、メッセージに付加する。
【0053】
ステップS2において、メッセージ作成部117は、ステップS1により作成されたメッセージに対する回答を受け、OS更新が行われたか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS3に移り、判定がNOの場合、処理はステップS4に移る。
【0054】
ステップS3において、メッセージ作成部117は、OS更新が行われたことに対する強化マネジメント(報酬)として、前回よりも上位の(理想的な)顔画像を選択し、メッセージに付与する。
【0055】
ステップS4において、メッセージ作成部117は、OS更新が行われなかったことに対する自己の再評価として、あるいは、強化マネジメント(報酬)の逆の作用として、前回よりも下位の(理想的でない)顔画像を選択し、メッセージに付与する。
【0056】
図5は、本実施形態におけるメッセージ作成部117により、メッセージに付加する顔画像を選択する処理を示す第2のフローチャートである。
ここでは、対象のユーザの行動変容ステージが判明している場合について示しており、行動変容ステージに応じて、さらに、前回のメッセージに対する回答、すなわち対策実施の有無に応じて、ユーザの顔画像が選択される。
【0057】
ステップS11において、メッセージ作成部117は、ユーザの行動変容ステージが実行期に達しているか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS12に移り、判定がNOの場合、処理はステップS13に移る。
【0058】
ステップS12において、メッセージ作成部117は、ステージを実行期以上に維持させるための強化マネジメントとして、理想的な顔画像を選択し、メッセージに付与する。
【0059】
ステップS13において、メッセージ作成部117は、ステージを上昇させるために、自己の再評価として、元画像を選択し、メッセージに付与する。
【0060】
ステップS14において、メッセージ作成部117は、ステップS12又はS13により作成されたメッセージに対する回答を受け、OS更新が行われたか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS15に移り、判定がNOの場合、処理はステップS16に移る。
【0061】
ステップS15において、メッセージ作成部117は、OS更新が行われたことに対する強化マネジメント(報酬)として、理想的な顔画像を選択し、メッセージに付与する。
【0062】
ステップS16において、メッセージ作成部117は、OS更新が行われなかったことに対する自己の再評価として、あるいは、強化マネジメント(報酬)の逆の作用として、理想的でない顔画像を選択し、メッセージに付与する。
【0063】
なお、この例では、元の顔画像1枚に対して、理想的な顔画像を1枚、理想的でない顔画像1枚の合計3枚の顔画像が準備されている場合について示したが、さらに多くの順位付けされた顔画像が用意されてもよい。
この場合、ステップS11~S13は、例えば維持期が最上位の理想的な顔画像、無関心期が最下位の顔画像となるように、行動変容ステージ毎に異なる順位の顔画像が選択されるように変更されてもよい。また、ステップS15は、例えば順位を一つ上げた顔画像を、ステップS16は、例えば順位を一つ下げた顔画像が選択されるように変更される。
【0064】
本実施形態によれば、情報管理サーバ10は、ユーザ端末20におけるセキュリティ対策の実施を促すためのメッセージに対して、ユーザ自身の外見を表す画像(例えば、顔画像)を付与し、さらに、この画像は、過去のメッセージに対する回答、すなわち対策実施状況に基づく評価に応じて、ユーザにとってより理想的な画像、又は理想的でない画像に変更される。
したがって、情報管理サーバ10は、対策実施に対するユーザの自分事認識を喚起させると共に、自己の再評価又は強化マネジメントといった心理効果によって、さらには、この心理効果と、文面、UIデザイン、タイミング等のパーソナライズとの相乗効果により、ユーザ自身によるセキュリティ対策の実施率を向上させることができる。
【0065】
情報管理サーバ10は、前回のメッセージに対する回答における対策実施の有無に応じて順位を上下させた画像を選択してメッセージに付与するので、ユーザが対策を実施した場合は、次回以降に理想的に加工した画像が表示され、実施しなかった場合は、次回以降に理想的ではない画像が表示される。
ユーザは現実の自分の顔より理想的な顔に憧れるため、理想的に加工した画像は、強化マネジメント(報酬)となり得る。このため、ユーザの対策実施を促進するだけでなく、対策の継続的な実施を促進することも可能になる。当事者意識が高いユーザ、又は自分の顔を意識しているユーザの場合は、理想的な自分の顔に憧れる傾向が強いと考えられるため、より高い効果が期待できる。
【0066】
情報管理サーバ10は、ユーザの行動変容ステージを判断した場合に、この行動変容ステージの段階に応じた順位の画像を選択してメッセージに付与する。
ユーザに行動を開始させる(ステージを向上させる)場合には、心理効果として自己の再評価を用いるのが適切であり、行動を維持させる(ステージを維持させる)場合には、強化マネジメントが適切である。したがって、情報管理サーバ10は、ステージを向上させる場合(例えば、無関心期~準備期を実行期に向上させる場合)には、元画像を表示し、ステージを維持させる場合(例えば、実行期及び維持期を維持期で継続させる場合)には、理想的な画像を表示させることで、ユーザの心理効果を適切に利用してセキュリティ対策の実施率を向上させることができる。
【0067】
また、情報管理サーバ10は、行動変容ステージに応じて画像を選択することに加えて、さらに、対策実施の有無に応じて次回のメッセージに付与する画像の順位を上下させることにより、強化マネジメントによる心理効果を期待できる。
【0068】
情報管理サーバ10は、ユーザ自身の外見を表す画像として、顔画像(写真)を用いることにより、当事者意識(自分事認識)を強く喚起させることができ、心理効果による実施率の向上が期待できる。
また、顔画像のみではなく、ユーザ好みのキャラクタ画像を利用してもよく、ユーザ毎に、心理効果を適切に得られる画像を適宜用いることで、実施率の向上が期待できる。
【0069】
情報管理サーバ10は、取得した元画像を、所定の加工ツール等を用いて自動的に加工することで、理想的な画像及び理想的でない画像を含んだ加工画像群を作成してもよい。これにより、情報管理サーバ10は、ユーザの作業負荷を低減しつつ、一定の品質でサービスを提供できる。
【0070】
情報管理サーバ10は、公的自意識の関心度合いを質問する項目を含んだアンケートを配信し、回答を評価することにより、この関心度合いが所定以上のユーザに対してのみ、メッセージに対してユーザの顔画像等を付与する。
これにより、情報管理サーバ10は、心理効果が期待できるユーザに対してのみ画像を付加するための処理を実行し、処理負荷を低減できる。
【0071】
なお、本実施形態により、例えば、ユーザ自身によるセキュリティ対策の実施率を向上できることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、前述した実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0073】
管理システム1によるメッセージ配信方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、情報処理装置(コンピュータ)にインストールされる。また、これらのプログラムは、CD-ROMのようなリムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。さらに、これらのプログラムは、ダウンロードされることなくネットワークを介したWebサービスとしてユーザのコンピュータに提供されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 管理システム
10 情報管理サーバ(メッセージ配信装置)
11 制御部
12 記憶部
20 ユーザ端末
111 配信ルール登録部
112 画像取得部
113 端末情報取得部
114 アンケート配信部
115 アンケート結果取得部
116 ステージ判定部
117 メッセージ作成部
118 メッセージ配信部
119 メッセージ回答取得部
121 端末配信条件
122 メッセージ
123 配信ルール
124 端末配信設定ログ
125 ユーザ画像
126 端末情報ログ
127 アンケートログ
128 メッセージ配信ログ