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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116882
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】電子内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
A61B1/06 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022720
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】萩原 雅之
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161NN01
4C161QQ09
4C161RR02
4C161RR26
4C161SS06
(57)【要約】
【課題】電子内視鏡システムにおいて、発光素子の点灯開始時刻を安定化させる。
【解決手段】本発明の一態様は、本開示の一態様は、生体組織の撮像をローリングシャッター方式で行うように構成されたCMOSイメージセンサ14を備える電子スコープ100と、生体組織に対する照明光を生成するための発光素子を含む光源装置30と、ドライバ信号処理部15と、を備えた電子内視鏡システム1である。ドライバ信号処理部15は、発光素子の各々に流す電流の振幅に対応するレベルの信号であって、発光素子に流す電流を設定するための電流設定信号に基づいて、発光素子を発光動作させるとともに、CMOSイメージセンサ14が撮像を行うときのフレームの発光開始時刻よりも前に電流設定信号のレベルがゼロから立ち上がるように電流設定信号を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の撮像をローリングシャッター方式で行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡と、
前記生体組織に対する照明光を生成する発光素子と、
前記発光素子に流す電流の振幅に対応するレベルの信号であって、前記発光素子に流す電流を設定するための電流設定信号に基づいて、前記発光素子を発光動作させる発光駆動部と、
前記撮像素子が撮像を行うときのフレームの発光開始時刻よりも前に前記電流設定信号のレベルがゼロから立ち上がるように前記電流設定信号を制御する制御部と、を備えた、
電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記発光開始時刻よりも前に前記発光素子に流す電流の値が、前記発光素子が出力可能な電流の最小値の10倍以上となるように、前記電流設定信号を制御する、
請求項1に記載された電子内視鏡システム。
【請求項3】
第1フレームの発光開始時刻から前記電流設定信号のレベルを第1レベルとする第1期間を設定し、
前記第1期間の終了時刻から前記第1フレームの次の第2フレームの発光開始時刻までの所定期間において、前記電流設定信号のレベルを負とする、
請求項1又は2に記載された電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記所定期間の開始時刻は、前記第1期間の終了時刻又はその直後である、
請求項3に記載された電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記制御部は、
第1フレームの発光開始時刻から前記電流設定信号のレベルを第1レベルとする第1期間と、
前記第1期間の終了時刻から前記電流設定信号のレベルを前記第1レベルより小さい第2レベルとする第2期間と、を設定し、
前記第2期間の終了時刻から前記第1フレームの次の第2フレームの発光開始時刻までの所定期間において、前記電流設定信号のレベルを負とする、
請求項1又は2に記載された電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記所定期間の開始時刻は、前記第2期間の終了時刻又はその直後である、
請求項5に記載された電子内視鏡システム。
【請求項7】
複数の前記発光素子と、
複数の前記発光素子のうち対応する発光素子を発光動作させる複数の前記発光駆動部と、を備え、
前記発光開始時刻までに各発光素子が生成する光を第1光としたときに、前記制御部は、生体組織の撮像を行う前に、前記第1光の光量の所定の基準光量に対する光量比が、複数の前記発光素子の間で同一となる、又は所定の許容変動値以内に収まるように、各発光素子に対する前記電流設定信号を調整する、
請求項1又は2に記載された電子内視鏡システム。
【請求項8】
生体組織の撮像を行う前に、前記第1光を基準となる被写体に照射したときに得られる前記被写体の第1画像、及び、前記第1光と、前記発光開始時刻以降に各発光素子が生成する光である第2光と、を前記被写体に照射したときに得られる前記被写体の第2画像に基づいて、前記第1光の光量、及び、前記基準光量を取得する光量取得部を備え、
前記制御部は、前記光量取得部によって取得された光量に基づいて、各発光素子に対する前記光量比を算出する、
請求項7に記載された電子内視鏡システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1光を生成するための前記電流設定信号のピークレベルが所定値となるように、前記電流設定信号のレベルがゼロから立ち上がる時刻を調整する、
請求項7に記載された電子内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡に用いられる電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器分野においては、体腔内の生体組織を照明し、照明された体腔内の生体組織を被写体として撮像することにより、体腔内に潜む病変部の診断を行うのに好適な画像を生成することが可能な内視鏡システムが知られている。従来、照明光として白色光を発するキセノンランプやハロゲンランプ等のランプ光源が使用されていたが、最近では、ランプ光源に代えて、特定の波長帯域の光を発する発光ダイオード(LED:Light emitting diode)等の発光素子を有する半導体光源が用いられている。
【0003】
他方、体腔内の生体組織を被写体として撮像するための撮像素子として、CMOSイメージセンサが用いられる場合が多い。CMOSイメージセンサを用いる場合、ローリングシャッター方式で順次時間差を設けて露光し画像信号を順次出力する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-137614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内視鏡システムでは、例えば内視鏡の先端部から被写体までの距離が近いとき等に微弱なパルス発光を行う場合がある。そのような場合に、発光素子の電流を設定するための電流設定信号のパルスの立ち上がりが1フレームの発光開始時刻に同期するように設定すると、発光開始時刻に対して発光素子の点灯開始時刻が遅延することがある。発光素子の点灯開始時刻が発光開始時刻に対して遅延すると、撮像素子によって得られる静止画が劣化する。
【0006】
そこで、本発明は、電子内視鏡システムにおいて、発光素子の点灯開始時刻を安定化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、生体組織の撮像をローリングシャッター方式で行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡と、
前記生体組織に対する照明光を生成する発光素子と、
前記発光素子に流す電流の振幅に対応するレベルの信号であって、前記発光素子に流す電流を設定するための電流設定信号に基づいて、前記発光素子を発光動作させる発光駆動部と、
前記撮像素子が撮像を行うときのフレームの発光開始時刻よりも前に前記電流設定信号のレベルがゼロから立ち上がるように前記電流設定信号を制御する制御部と、を備えた、
電子内視鏡システムである。
【0008】
前記制御部は、前記発光開始時刻よりも前に前記発光素子に流す電流の値が、前記発光素子が出力可能な電流の最小値の10倍以上となるように、前記電流設定信号を制御してもよい。
【0009】
第1フレームの発光開始時刻から前記電流設定信号のレベルを第1レベルとする第1期間を設定してもよい。その場合、前記第1期間の終了時刻から前記第1フレームの次の第2フレームの発光開始時刻までの所定期間において、前記電流設定信号のレベルを負とする。
前記所定期間の開始時刻は、前記第1期間の終了時刻又はその直後であることが好ましい。
【0010】
前記制御部は、
第1フレームの発光開始時刻から前記電流設定信号のレベルを第1レベルとする第1期間と、
前記第1期間の終了時刻から前記電流設定信号のレベルを前記第1レベルより小さい第2レベルとする第2期間と、を設定してもよい。
その場合、前記第2期間の終了時刻から前記第1フレームの次の第2フレームの発光開始時刻までの所定期間において、前記電流設定信号のレベルを負とする。
前記所定期間の開始時刻は、前記第2期間の終了時刻又はその直後であることが好ましい。
【0011】
前記電子内視鏡システムは、複数の前記発光素子と、複数の前記発光素子のうち対応する発光素子を発光動作させる複数の前記発光駆動部と、を備えてもよい。
その場合、前記発光開始時刻までに各発光素子が生成する光を第1光としたときに、前記制御部は、生体組織の撮像を行う前に、前記第1光の光量の所定の基準光量に対する光量比が、複数の前記発光素子の間で同一となる、又は所定の許容変動値以内に収まるように、各発光素子に対する前記電流設定信号を調整することが好ましい。
【0012】
前記電子内視鏡システムは、生体組織の撮像を行う前に、前記第1光を基準となる被写体に照射したときに得られる前記被写体の第1画像、及び、前記第1光と、前記発光開始時刻以降に各発光素子が生成する光である第2光と、を前記被写体に照射したときに得られる前記被写体の第2画像に基づいて、前記第1光の光量、及び、前記基準光量を取得する光量取得部を備えてもよい。その場合、前記制御部は、前記光量取得部によって取得された光量に基づいて、各発光素子に対する前記光量比を算出する。
【0013】
前記制御部は、前記第1光を生成するための前記電流設定信号のピークレベルが所定値となるように、前記電流設定信号のレベルがゼロから立ち上がる時刻を調整してもよい。
【発明の効果】
【0014】
上述の電子内視鏡システムによれば、発光素子の点灯開始時刻を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の電子内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】CMOSイメージセンサによるグローバル露光の動作について説明するタイミングチャートである。
図3図1のシステムに含まれる光源装置の構成を示すブロック図である。
図4】従来技術の課題である電流設定信号とLED点灯開始タイミングのずれを説明する図である。
図5】一実施形態の電子内視鏡システムにおける電流設定信号とLED点灯状態を示すタイミングチャートである。
図6】電流設定信号とLED点灯開始タイミングのずれを説明する図である。
図7】一実施形態の電子内視鏡システムにおける電流設定信号とLED点灯状態を示すタイミングチャートである。
図8】1フレームにおいて複数のLEDの光量を示す波形の一例であり、予備発光期間がばらついた状態を示している。
図9】一実施形態の電子内視鏡システムにおける電子スコープの主要部のブロック図である。
図10】一実施形態の電子内視鏡システムにおいて予備発光に対するキャリブレーションを示すフローチャートである。
図11】予備発光期間及び基準発光期間における光量を説明する図である。
図12】1フレームにおいて複数のLEDの光量を示す波形の一例であり、キャリブレーション後の状態を示している。
図13】プロセッサが光源装置を内蔵する電子内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態の電子内視鏡システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、医療用に特化されたシステムであり、電子スコープ(内視鏡)100、電子内視鏡用プロセッサ200(以下、単に「プロセッサ200」)、及びモニタ300を備えている。
【0017】
プロセッサ200は、システムコントローラ21を備える。システムコントローラ21は、メモリ23に記憶された各種プログラムを実行し、電子内視鏡システム1全体を統合的に制御する。また、システムコントローラ21は、操作パネル24に接続されている。システムコントローラ21は、操作パネル24に入力される術者からの指示に応じて、電子内視鏡システム1の各動作及び各動作のためのパラメータを変更する。システムコントローラ21は、電子内視鏡システム1内の各部の動作のタイミングの基準となるクロックパルスをシステム内の各部に供給する。
【0018】
電子スコープ100の先端部分には、光源装置30が設けられている。光源装置30は、体腔内の生体組織等の被写体を照明するための照明光を出射する発光素子(LED:Light Emitting Device)を有する。照明光は、白色光あるいは擬似白色光である。白色光は、可視光帯域においてフラットな分光強度分布を有する光であり、擬似白色光は、分光強度分布はフラットではなく、複数の波長帯域の光が混色された光である。
光源装置30の照明光は、配光レンズ12を介して被写体に照射される。配光レンズ12からの照明光によって照明された被写体からの戻り光は、対物レンズ13を介してCMOSイメージセンサ14の受光面上で光学像を結ぶ。
【0019】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ14(撮像素子の一例)は、ベイヤ型画素配置を有するイメージセンサである。CMOSイメージセンサ14は、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して読み出し、撮像データを生成して出力する。なお、CMOSイメージセンサ14に代えて、CCDイメージセンサやその他の種類の撮像デバイスに置き換えられてもよい。CMOSイメージセンサ14はまた、補色系フィルタを搭載したものであってもよい。
【0020】
電子スコープ100は、プロセッサ200との接続部内にドライバ信号処理部15を備える。
ドライバ信号処理部15は、CMOSイメージセンサ14及び光源装置30に対する駆動し、制御する処理を行うとともに、CMOSイメージセンサ14から撮像データを取得する。
一実施形態では、ドライバ信号処理部15は、CMOSイメージセンサ14に対して1フレームの同期信号(例えば垂直同期信号)を供給するとともに、CMOSイメージセンサ14から被写体の撮像データをフレーム単位で取得し、プロセッサ200の画像処理部22に送信する。フレーム周期は、例えば、1/30秒又は1/60秒である。なお、ドライバ信号処理部15が1フレームの同期信号を供給する場合に限られない。CMOSイメージセンサによっては自身が作成する同期信号に基づいて撮像データを送信する場合もある。その場合には、ドライバ信号処理部15が1フレームの同期信号をCMOSイメージセンサに供給する必要はない。
【0021】
ドライバ信号処理部15は、光源装置30に対して、LEDの発光タイミングやLEDに流すLED電流を制御するための電流設定信号を送信する。電流設定信号、及び光源装置30の構成については、後述する。
【0022】
図1に示した電子スコープ100では、CMOSイメージセンサ14の受光面を露光し画像として出力する露光・出力方法として、ローリングシャッター方式が用いられる。ローリングシャッター方式は、撮像素子の受光面の複数の画素単位の画素領域に分け、画素領域毎に順次時間差を設けて露光を行う方式で、画素領域毎に、蓄積されている電荷を順次リセットした後、露光による電荷の蓄積を開始して蓄積した画像信号となる電荷を出力する(読み出す)方式である。画素領域は、例えば1ライン又は連続した複数のラインである。
電子内視鏡システム1では、照明光を一定の間隔でパルス状に点灯を行って生体組織を照明する。このとき、全ての有効画素領域における露光期間が照明光の点灯期間を含むように、グローバル露光期間を設けることが行われる。グローバル露光期間を設けることで、ローリングシャッター方式特有の歪み(ローリングシャッター歪み)による画質の低下が防止される。
【0023】
プロセッサ200の画像処理部22は、ドライバ信号処理部15から出力される撮像データのバッファリングや撮像データに対して所定の画像処理を行った後に、ビデオフォーマット信号を生成してモニタ300に出力する。画像処理の例として、デモザイク処理、マトリックス演算やエッジ強調処理等が挙げられる。
【0024】
図2のタイミングチャートには、電子内視鏡システム1においてCMOSイメージセンサ14の動作が示される。図2(b),(c)に示すように、プロセッサ200では、光源装置30に含まれるLED(Light Emitting Device)に対して、必要とする光量に応じた電流(LED電流)を流し、それによってパルス状の点灯期間LTが設定される。なお、LEDは一般に、アナログ調光方式とPWM(Pulse Width Modulation)調光方式のいずれかが適用される。図3に示す例では、アナログ調光方式を示しているが、その限りではなくPWM調光方式を適用してもよい。
図2(a)に示すように、CMOSイメージセンサ14では、無効画素領域RINVを除く有効画素領域において画素領域R1,R2,…,Rnの順に時間差を設けて1フレームにおける露光を開始する。ここで、全ての画素領域R1,R2,…,Rnにおける露光期間がLEDの点灯期間LTを含むように構成されており、図中の斜線部分が実質的な露光期間といえる。
【0025】
次に、図3のブロック図を参照して、発光駆動部31の概略的な構成とともに、LEDの点灯動作について説明する
ドライバ信号処理部15は、光源装置30内のLEDを駆動するための発光駆動部31を備えている。
一実施形態では、発光駆動部31は、アナログ調光方式によりLEDを発光駆動させる回路であり、電圧レギュレータ311、電流検出回路312、及び、誤差回路313を含む。発光駆動部31は、電子スコープ100内の図示しないCPUによって生成される電流設定信号により、LEDの発光タイミングやLEDに流すLED電流が制御される。なお、CPUが電流設定信号を生成する場合に限られず、ASIC(application specific integrated circuit)やFPGA(field-programmable gate array)等が電流設定信号を生成してもよい。
図3に示すように、電源部26から電圧レギュレータ311に供給される入力電圧VINを基に、LED電流を得るための電圧Vccを生成する。電圧レギュレータ311の出力端子(電圧Vccを出力する端子)にはインダクタL1の一端が接続される。インダクタL1の他端には、センス抵抗RsとLEDがキャパシタC1と並列接続される。
【0026】
センス抵抗Rsは、電圧レギュレータ311からLEDに流れる電流を検出するために設けられており、その両端が電流検出回路312に接続される。電流検出回路312は、センス抵抗Rsの両端電圧からLEDに定常的に流れる電流を検出する。発光駆動部31では、センス抵抗Rsを流れる電流に基づいてフィードバック制御を行い、LED電流を安定化させる。すなわち、誤差回路313は、ドライバ信号処理部15から供給される電流設定信号のレベルに応じた目標電流値と、センス抵抗Rsを流れる電流から得られるLED電流値と、の誤差を求める。電圧レギュレータ311は、当該誤差がゼロとなるように電圧Vccを調整する。その結果、発光駆動部31により、電流設定信号に応じた振幅のLED電流が得られるように制御される。
【0027】
ここで、図2に示したように、1フレームのグローバル露光期間の開始時刻に合わせて電流設定信号のレベルがゼロから立ち上がるように電流設定信号を制御した場合、実際にLEDの点灯が開始する時刻が前後にばらつくことがある。図4は、電流設定信号の立ち上がり時刻に対してLEDの点灯開始時刻がずれる場合の2つの比較例(タイミングずれ1、タイミングずれ2)を示すタイミングチャートである。ここで、「点灯開始時刻」とは、LEDの点灯が実際に開始される時刻である。
図4(a)では、図2の点灯期間LTに合わせて、1フレーム期間内に電流設定信号をLEDの目標電流値に応じた所定のレベルとする場合が想定されている。なお、以下の説明では、「発光開始時刻」は、1フレーム単位でLEDを発光させるときの基準となる時刻であり、図4では、グローバル露光期間の開始時刻t0に相当する。
【0028】
しかし、LED電流が立ち上がってLEDの点灯が実際に開始する時刻(点灯開始時刻)は、発光開始時刻t0よりも遅れ、かつその遅延時間がばらつく。図4(b)の例では点灯開始時刻がt1aであり、図4(c)の例では点灯開始時刻がt1aより遅いt1bである。このように、発光開始時刻に対して点灯開始時刻が遅れ、かつその遅延時間がばらつくのは、電圧レギュレータ311の回路内素子のばらつきや雰囲気温度に起因する。遅延時間(図4の(t1a-t0)及び(t1b-t0))はLED電流の大きさ(すなわち、電流設定信号のレベルの大きさ)によって変動する。特に、消灯の状態から微弱発光させる(つまり、LED電流をゼロから微小な値に変化させる)場合には、電圧レギュレータ311の応答遅れが生じやすく遅延時間が長くなる傾向にある。
【0029】
そこで、本実施形態のプロセッサ200では、予備発光期間を設けることでLED電流の大きさ如何に関わらず点灯開始時刻を安定化させるように構成される。予備発光期間とは、グローバル露光期間の開始時刻t0(つまり、発光開始時刻)より前に電流設定信号のレベルをゼロより大きくする期間である。これは、ドライバ信号処理部15が発光駆動部31に供給する電流設定信号のタイミング(特に、ゼロから立ち上がる時刻)、及びそのレベル(特に、ピークレベル)を制御することにより行われる。以下の説明では、予備発光期間におけるLEDの発光を「予備発光」ということがある。
図5には、本実施形態の電子内視鏡システム1におけるCMOSイメージセンサの動作、電流設定信号、LEDの光量、及び、LED点灯状態を示すタイミングチャートである。図5に示すように、グローバル露光期間の開始時刻t0よりも前の時刻t3にゼロから立ち上がるように、電流設定信号が制御され、それによって時刻t0よりも前の時刻t4に点灯が開始される。
【0030】
予備発光期間における電流設定信号のレベルは、電圧レギュレータ311の回路内素子のばらつきや雰囲気温度の影響を受け難くする程度に大きくすることが好ましい。また、予備発光期間はグローバル露光期間ではないため、画面の下の数ラインの領域においてローリングシャッター歪みが発生してしまうが(図5の拡大図参照)、ローリングシャッター歪みが発生する領域が多くても画面の下の2ライン程度となるように予備発光期間を極力短くすれば、画像として目立たなくて済む。したがって、予備発光期間は極力短く、かつ予備発光期間における電流設定信号のレベルをローリングシャッター歪みが目立たない程度に大きくすることが好ましい。
予備発光期間を設けることで、グローバル露光期間の開始時刻t0から安定して、電流設定信号のレベルに応じた大きさのLED電流を流すことができる。予備発光の光強度を比較的大きい方が点灯開始時刻の安定化に対する効果を発揮する。
【0031】
グローバル露光期間では、例えばLED電流のレベルが1~200mA(可変)となるように電流設定信号が設定される。予備発光期間では、例えばLED電流のレベルが100mA固定となるように電流設定信号が設定される。好ましくは、システムコントローラ21は、グローバル露光期間の開始時刻t0よりも前にLEDに流す電流の値が、LEDが出力可能な電流の最小値の10倍以上となるように、電流設定信号を制御する。その理由は以下のとおりである。
【0032】
電圧レギュレータ311では、内部のスイッチング素子が動作することでLEDに供給する電圧Vccを生成しているが、電流設定信号がゼロになるとスイッチング動作が停止する。その後、予備発光期間の開始に伴って電流設定信号がゼロから立ち上がり、電圧レギュレータ311内のスイッチング動作が再開するが、電圧レギュレータ311の雰囲気温度、電圧レギュレータ311の特性ばらつきにより、再開直後はスイッチング動作が不安定となっている。このスイッチング動作が不安定な期間が予備発光期間に重なると、予備発光期間の電流設定信号のレベルが小さい場合には、センス抵抗Rsを流れる電流から得られるLED電流値と、目標電流値(電流設定信号のレベルに応じた値)との誤差が小さいため、電圧レギュレータ311で生成される電圧Vccが急速に応答しない(つまり、電圧Vccの上昇速度が低い)。その結果、スイッチング動作が不安定な期間が長くなる。
それに対して、予備発光期間の電流設定信号のレベルを、LEDが出力可能な電流の最小値の10倍以上となる目標電流値に対応する値とした場合、再開直後はスイッチング動作が不安定となっていても、センス抵抗Rsを流れる電流から得られるLED電流値と、目標電流値との誤差が十分に大きいため、電圧レギュレータ311で生成される電圧Vccが急速に応答する。そのため、スイッチング動作が不安定な状態から安定的にスイッチングが行われる状態に即座に移行するため、点灯開始時刻がさらに安定する。
【0033】
なお、1フレームにおいて要求されるLEDの光量がグローバル露光期間のみでは足りない場合、グローバル露光期間(第1期間の一例)以外の期間(「追加発光期間」という;第2期間の一例)においてLEDを追加で点灯させる場合がある。追加発光期間におけるLEDの光量は、グローバル露光期間におけるLEDの光量に対して補助的なものであるため、グローバル露光期間におけるLEDの光量よりも小さい。つまり、追加発光期間における電流設定信号のレベル(第2レベルの一例)は、グローバル露光期間における電流設定信号のレベル(第1レベルの一例)よりも小さい。
このような予備発光期間を設けた場合、LEDの点灯開始時刻がばらつくことがある。この点灯開始時刻のばらつきを図6に示す。追加発光期間における電流設定信号のレベルは、グローバル露光期間における電流設定信号のレベルよりも小さく設定される。追加発光期間では、例えばLED電流のレベルが1~30mA(可変)となるように電流設定信号が設定される。
【0034】
図6は、ケース1,ケース2に対してそれぞれ、CMOSイメージセンサ14の動作、電流設定信号、光量(LED電流)、及び、LED点灯状態を示すタイミングチャートを示している。図6では、ケース1,ケース2のいずれの場合も時刻t0~t9がグローバル露光期間である。
ケース1の場合、追加発光期間が比較的短い時刻t9~t10の間である。このとき、グローバル露光期間の開始時刻t0より前の時刻t6に電流設定信号をゼロから立ち上げて予備発光期間を設けた場合に、点灯開始時刻は時刻t0より後の時刻t7aとなる。
他方、ケース2の場合、追加発光期間が比較的長い時刻t9~t11の間である。このとき、ケース1と同様に、グローバル露光期間の開始時刻t0より前の時刻t6に電流設定信号をゼロから立ち上げて予備発光期間を設けた場合であっても、点灯開始時刻は時刻t0より前の時刻t7bとなる。
【0035】
図6のケース1とケース2とで点灯開始時刻が変動するのは、追加発光期間の長さの違いに起因する。これは以下の理由による。
あるフレームにおける追加発光期間が終了しても(つまり、電流設定信号をゼロにしても)、LEDに接続されるLC成分(図3のインダクタL1,キャパシタC1)があるために、実際にはLED電流が流れ続け、徐々にLED電流がゼロに向かう。この過渡現象のために、次のフレームにおける予備発光期間の開始時点のLED電圧が、追加発光期間の長短に応じて異なり、その結果、点灯開始時刻が変動する。
【0036】
そこで、一実施形態では、上記過渡現象の影響を排除するために、あるフレームの追加発光期間の終了時刻から次のフレームの予備発光期間の開始時刻までの所定期間において電流設定信号のレベルを負とする。それによって、追加発光期間の長短に関わらず、次のフレームの予備発光期間の開始時刻におけるLED電流をゼロにすることができ、LEDの点灯開始時刻を安定化させることができる。
【0037】
図7に、電流設定信号のレベルを負とする所定期間を設けた場合の、CMOSイメージセンサ14の動作、電流設定信号、光量(LED電流)、及び、LED点灯状態を示すタイミングチャートを示す。図7に示す例では、あるフレームの追加発光期間の終了時刻t11から次のフレームの予備発光期間の開始時刻t6までの期間内の所定期間内に電流設定信号を負とする。
好ましくは、図7に示すように、電流設定信号のレベルを負とする所定期間の開始時刻は、追加発光期間の終了時刻t11又はその直後(時刻t11~t12の期間)である。すなわち、電流設定信号のレベルを負とした後にLEDに接続されるLC成分からの放電にも時間が掛かるため、予備発光期間の開始時刻において確実にLEDを消灯させるために、追加発光期間が終了した後は極力早く電流設定信号のレベルを負とすることが好ましい。
「終了時刻t11の直後」の時刻は、限定しないが、例えば終了時刻t11から1ms以内の任意の時刻である。
【0038】
同様に、追加発光期間を設けない場合であっても、あるフレームのグローバル露光期間の終了時刻から次のフレームの予備発光期間の開始時刻までの所定期間において電流設定信号のレベルを負とすることが好ましい。これは、グローバル露光期間の長さ及び/又は光量次第では、あるフレームのグローバル露光期間のLED電圧が次のフレームに対応する予備発光期間の開始時刻までに十分に低下しない場合もあり得るためである。
好ましくは、電流設定信号のレベルを負とする所定期間の開始時刻は、グローバル露光期間の終了時刻又はその直後である。
「グローバル露光期間の終了時刻の直後」の時刻は、限定しないが、例えばグローバル露光期間の終了時刻から1ms以内の任意の時刻である。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の電子内視鏡システム1によれば、ドライバ信号処理部15は、CMOSイメージセンサ14が撮像を行うときのフレームの発光開始時刻よりも前に電流設定信号のレベルがゼロから立ち上がるように、発光駆動部31に供給する電流設定信号を制御するため、各LEDの点灯開始時刻を安定化させることができる。
また、電流設定信号のレベルをゼロにしても直ちにLED電圧が低下しないことを考慮して、あるフレームのグローバル露光期間の終了時刻から、あるいは追加発光期間がある場合には追加発光期間の終了時刻から次のフレームの予備発光期間の開始時刻までの所定期間において電流設定信号のレベルを負とすることが好ましい。それによってLEDの点灯開始時刻をさらに安定化させることができる。
【0040】
一実施形態では、光源装置30に複数のチャンネルのLEDが設けられ、この複数のLEDが照射光の出射面において並列に配置される。
その場合、各チャンネルのLEDは生体組織を照射するための白色光又は疑似白色光を生成するが、複数のLEDのばらつきや経年劣化、及び/又は、各LEDを駆動する駆動回路のばらつき等により、各LEDの予備発光期間や予備発光期間における光量がばらつくこと(以下、総称して「予備発光のばらつき」)がある。図8は、1フレームにおいて複数のLEDの光量を示す波形の一例であり、予備発光期間がばらついた状態を示している。図8に示す例では、4チャンネルのLEDが設けられた例であり、第1のLED及び第3のLEDにおいて予備発光(発光開始時刻t0より前の発光)の光量が、第2のLED及び第4のLEDにおけるそれよりも大きくなっている。
【0041】
予備発光のばらつきが大きく、複数のLEDのうち予備発光期間が必要以上に長いLEDが含まれており、当該LEDの予備発光の光量(光強度の時間に対する積分値)が大き過ぎる場合には、電子スコープ100の先端を被写体に近接させたときに適切に光量を調整できないという問題がある。すなわち、電子スコープ100の先端を被写体に近接させたときにはLEDの光量を絞る必要があるが、予備発光の光量が大き過ぎる場合、予備発光が全体の光量に対して支配的となっており、発光開始時刻以降の光量を絞ったとしても全体の光量を十分に下げることができない。
また、複数のLEDにおいて予備発光のばらつきが大きい場合、照射光の出射面に並列に配置された複数のLEDの位置に応じて画面上の明るさが異なるという問題もある。
【0042】
上述した予備発光のばらつき、及び、それに伴う問題は、術者が生体組織の診断を行う前(つまり、生体組織の撮像を行う前)に、以下で説明するキャリブレーションを実行することで除去又は軽減することができる。
【0043】
図9に、光源装置30に複数のチャンネルのLEDが設けた場合の電子スコープ100の主要部のブロック図を示す。
図9を参照すると、光源装置30は、複数(一例として4個)のLED35-1~35-4のLEDを含む。ドライバ信号処理部15は、4個のLED35-1~35-4の各々を発光動作させる発光駆動部31-1~31-4を備える。発光駆動部31-1~31-4の各々は、図3に示した発光駆動部31と同一の構成となっている。以下の説明では、発光駆動部31-1~31-4に共通した事項について言及するときには、「発光駆動部31」と表記する。
ドライバ信号処理部15はさらに、画像信号処理部16及び光量取得部17を含む。画像信号処理部16は、CMOSイメージセンサ14によって取得された画像信号に対してノイズ除去処理等を行う。光量取得部17は、画像信号処理部16によって信号処理が施された画像信号を基に光量を取得する処理を行う。光量は、例えば画像信号の輝度を基に算出される。
発光駆動部31-1~31-4の各々は、予備発光のキャリブレーションを実行する際には、光量取得部17によって取得される輝度を基に予備発光の調整を行う。
なお、図示しないが、電子スコープ100は、CPUを有しており、CPUがプログラムを実行することで予備発光のキャリブレーションの処理が行われる。なお、電子スコープ100は、CPUに代えて、予備発光のキャリブレーションの処理を行うASICやFPGA等を備えてもよい。
【0044】
一実施形態では、図9に示すように、電子スコープ100の先端にホワイトバランス調整器具Cを設置し、ホワイトバランスの調整を行うとともに、あるいはホワイトバランスの調整前若しくは調整後に予備発光のキャリブレーションを実行する。ホワイトバランス調整器具Cは、基準となる被写体の一例であって白色の筒状器具である。なお、予備発光のキャリブレーションを行う際に使用する器具は、同一の照射光を基に取得される光量が変動しなければよいので、白色の器具に限られず、白色以外の色の基準となる被写体となる器具であってもよい。
【0045】
次に、図10のフローチャートを参照して、複数のLEDによる予備発光のキャリブレーションについて説明する。
図10のキャリブレーションの処理は、術者が生体組織の診断を行う前に実行される。図10を参照すると、キャリブレーションの処理は、複数のLEDの各々について順に、ステップS2~S16の処理を実行することで行われる(ステップS18)。
電子スコープ100は、先ず、発光開始時刻の前に予備発光(第1光の一例)を行うように処理対象のLEDに対応する発光駆動部31を制御する(ステップS2)。電子スコープ100は、予備発光をホワイトバランス調整器具Cに照射して得られた画像信号(第1画像の一例)を基に、予備発光の光量Q1を取得し(ステップS4)、その後発光を停止する(ステップS6)。予備発光の光量Q1は、図11に示すように、発光開始時刻t0より前の予備発光期間で取得された光量(光強度の時間積分値)である。なお、予備発光の光量Q1を取得する際には、複数回取得した光量を平均化することで光量のばらつきを抑制することが好ましい。
【0046】
次いで電子スコープ100は、予備発光と、発光開始時刻以降の基準発光(第2光の一例)とを行うように、処理対象のLEDに対応する発光駆動部31を制御する(ステップS8)。ここで、「基準発光」とは、発光開始時刻以降に行われる所定光量の発光を意味する。基準発光は、例えば、発光開始時刻以降に所定時間、所定の電流を処理対象のLEDに流すことで行われる。
電子スコープ100は、予備発光及び基準発光をホワイトバランス調整器具Cに照射して得られた画像信号(第2画像の一例)を基に、予備発光及び基準発光の合計の光量Q2を取得し(ステップS10)、その後発光を停止する(ステップS12)。光量Q2は、図11に示すように、発光開始時刻t0より前の予備発光期間で取得された光量Q1と、発光開始時刻t0以降に取得される光量と、を含む合計の光量(光強度の時間積分値)である。なお、光量Q2を取得する際には、複数回取得した光量を平均化することで光量のばらつきを抑制することが好ましい。
【0047】
次に電子スコープ100は、ステップS4,S10でそれぞれ取得した光量Q1,Q2を基に、予備発光の光量Q1の基準光量(Q2-Q1)に対する光量比(Q1/(Q2-Q1);予備発光の光量比)を算出する(ステップS14)。電子スコープ100は、ステップS14で算出した光量比と、既知の目標光量比との差分の絶対値が所定の閾値Th以下であるか否か判断する(ステップS16)。差分の絶対値が閾値Th以下でない場合(ステップS16:NO)、予備発光パラメータを調整してステップS2に戻る。予備発光パラメータとは、予備発光の光量Q1を変動させるためのパラメータであって、予備発光期間において電流設定信号がゼロから立ち上がる時刻、及び/又は、電流設定信号のピークレベルである。この電流設定信号のピークレベルは、予備発光の光強度のピーク値に対応する。
一実施形態では、電子スコープ100は、上記差分の絶対値が所定の閾値Th以下となるまで、段階的に予備発光パラメータを変更してステップS2~S16を繰り返し実行する。
【0048】
電子スコープ100は、上記差分の絶対値が所定の閾値Th以下となった場合には(ステップS16:YES)、すべてのLEDに対して処理が完了していない限り(ステップS18:NO)、次の処理対象のLEDに対する処理を実行するためにステップS2に戻る。
以上のキャリブレーションの処理を実行することで、すべてのLEDに対して、ステップS14で算出される光量比が複数のLEDの間で同一となる、又は所定の許容変動値以内に収まるように調整される。許容変動値は、限定しないが、例えば目標光量比の±10%以内である。
図12は、1フレームにおいて複数のLEDの光量を示す波形の一例であり、予備発光のキャリブレーション後の状態を示している。図12では、図8に示した状態(キャリブレーション前の状態)と比較して、すべてのLEDの間で予備発光の光量が同一、又は所定の許容変動値以内に収まっている。
【0049】
図10では、複数のLEDに対する予備発光の光量比が既知の目標光量比と同一、又はその差分が所定の許容変動値以内に収まるように調整されるが、その限りではない。例えば、最初に処理対象としたLEDに対して算出した光量比を目標光量比とし、2番目以降に処理対象としたLEDに対して算出した光量比が目標光量比と同一、又は所定の許容変動値以内に収まるように2番目以降に処理対象としたLEDの予備発光パラメータを調整してもよい。
【0050】
図10のステップS20において、予備発光パラメータを調整することで予備発光の光量を調整する際には、電流設定信号のピークレベルよりも、電流設定信号がゼロから立ち上がる時刻を優先して調整することが好ましい。つまり、予備発光の光量を調整する際には、予備発光の光強度よりも予備発光期間を優先して調整することが好ましい。予備発光の光強度は、LEDの点灯開始時刻の安定化に対する寄与度が高いため、予備発光の光強度のピーク値(つまり、電流設定信号のピークレベル)をある程度大きい値に固定した上で、予備発光期間の長さを調整するのがよい。
【0051】
一実施形態では、光源装置がプロセッサに内蔵されるシステムが開示される。
図13は、プロセッサが光源装置を内蔵する電子内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。図13に示すシステムは、電子スコープ100Aとプロセッサ200Aを含む。プロセッサ200Aは、照明光Lとして白色光あるいは擬似白色光を出射するLEDを備えた光源装置30Aを内蔵する。光源装置30Aから出射した照明光Lは、集光レンズ25によりLCB(Light Carrying Bundle)11の入射端面に集光されて、電子スコープ100AのLCB11内に入射される。LCB11内に入射された照明光Lは、LCB11内を伝播する。LCB11内を伝播した照明光Lは、電子スコープ100Aの先端に配置されたLCB11の射出端面から射出され、配光レンズ12を介して生体組織(被写体)に照射される。
電子スコープ100Aのドライバ信号処理部15Aは、発光駆動部を備えていない点でドライバ信号処理部15(図1)と異なる。ドライバ信号処理部15Aは、1フレームのタイミングに関する情報をシステムコントローラ21に通知する。図13に示すシステムでは、光源装置30Aは、LEDに対応する発光駆動部31を備え、システムコントローラ21から供給される電流設定信号によりLEDの光量が調整される。
【0052】
一実施形態では、図13に示すシステムにおいて予備発光のキャリブレーションの際にLEDの光量を検出する場合、システムコントローラ21が画像処理部22で取得した画像信号に基づいてLEDの光量を検出してもよい。
一実施形態では、図13に示す光源装置30Aが、LEDが出射する照明光の光強度又は光量を検出する光検出器を備えてもよい。そして、システムコントローラ21は、予備発光のキャリブレーションの際にLEDの光量を検出する際には、光検出器で検出された光強度又は光量を取得する。
【0053】
以上、本発明の電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明の電子内視鏡システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0054】
1…電子内視鏡システム
11…LCB
12…配光レンズ
13…対物レンズ
14…CMOSイメージセンサ
15,15A…ドライバ信号処理部
16…画像信号処理部
17…光量取得部
21…システムコントローラ
22…画像処理部
23…メモリ
24…操作パネル
25…集光レンズ
26…電源部
30,30A…光源装置
31,31-1~31-4…発光駆動部
35-1~35-4…LED
311…電圧レギュレータ
312…電流検出回路
313…誤差回路
100,100A…電子スコープ
200,200A…プロセッサ
300…モニタ
C…ホワイトバランス調整器具
L…照明光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13