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特開2024-116883圧縮機システム及びバンドル移動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116883
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】圧縮機システム及びバンドル移動方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/62 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
F04D29/62 E
F04D29/62 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022727
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】木内 大輔
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AA24
3H130AA25
3H130AB27
3H130AB42
3H130AB62
3H130AB65
3H130AB69
3H130AC01
3H130BA91A
3H130BA96Z
3H130BA97Z
3H130BA98Z
3H130CA21
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DD09Z
3H130DE01Z
3H130EA06A
3H130EA07A
(57)【要約】
【課題】複数の圧縮機に対してバンドルを移動させるスペースを抑える。
【解決手段】圧縮機システムは、駆動機と、高圧圧縮機と、軸方向において、前記高圧圧縮機を挟んで前記駆動機に対して反対側に配置される低圧圧縮機と、を備える。前記高圧圧縮機は、高圧バンドルと、前記高圧バンドルを収容し、筒状に形成された高圧ケーシングとを有する。前記低圧圧縮機は、低圧バンドルと、前記低圧バンドルを収容し、筒状に形成された低圧ケーシングとを有する。前記軸方向から見た際に、前記低圧ケーシングの最小内径は、前記高圧バンドルの最大外径よりも大きい。前記高圧バンドルは、前記低圧ケーシングが台板上に固定された状態で、前記低圧ケーシングと前記軸方向の位置が重なるように移動可能とされている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転する駆動軸を有する駆動機と、
前記駆動軸の回転が伝達されることで駆動され、流体を圧縮する高圧圧縮機と、
前記軸線の延びる軸方向において、前記高圧圧縮機を挟んで前記駆動機に対して反対側に配置され、前記駆動軸の回転が伝達されることで駆動される低圧圧縮機と、を備え、
前記高圧圧縮機は、
前記駆動軸とともに前記軸線回りに回転する高圧回転軸及び複数の高圧インペラを有する高圧バンドルと、
前記高圧バンドルを収容し、前記軸線を中心とする筒状に形成された高圧ケーシングとを有し、
前記低圧圧縮機は、
前記駆動軸及び前記高圧回転軸とともに前記軸線回りに回転する低圧回転軸及び複数の低圧インペラを有する低圧バンドルと、
前記低圧バンドルを収容し、前記軸線を中心とする筒状に形成された低圧ケーシングとを有し、
前記軸方向から見た際に、前記低圧ケーシングの最小内径は、前記高圧バンドルの最大外径よりも大きく、
前記高圧バンドルは、前記低圧ケーシングが台板上に固定された状態で、前記低圧ケーシングと前記軸方向の位置が重なるように移動可能とされている圧縮機システム。
【請求項2】
前記高圧ケーシングは、前記軸方向において、前記駆動機に近づく前記高圧バンドルの移動を規制する移動規制部を有する請求項1に記載の圧縮機システム。
【請求項3】
軸線回りに回転する駆動軸を有する駆動機と、
前記駆動軸の回転が伝達されることで駆動され、流体を圧縮する高圧圧縮機と、
前記軸線の延びる軸方向において、前記高圧圧縮機を挟んで前記駆動機に対して反対側に配置され、前記駆動軸の回転が伝達されることで駆動される低圧圧縮機と、
前記高圧圧縮機は、
前記駆動軸とともに前記軸線回りに回転する高圧回転軸及び複数の高圧インペラを有する高圧バンドルと、
前記高圧バンドルを収容し、前記軸線を中心とする筒状に形成された高圧ケーシングとを有し、
前記低圧圧縮機は、
前記駆動軸及び前記高圧回転軸とともに前記軸線回りに回転する低圧回転軸及び複数の低圧インペラを有する低圧バンドルと、
前記低圧バンドルを収容し、前記軸線を中心とする筒状に形成された低圧ケーシングとを有し、
前記軸方向から見た際に、前記低圧ケーシングの最小内径は、前記高圧バンドルの最大外径よりも大きい圧縮機システムでのバンドル移動方法であって、
前記低圧ケーシングが台板上に固定された状態で、前記低圧ケーシングと前記軸方向の位置が重なるように、前記低圧ケーシングの内部を前記高圧バンドルが移動されるステップを有するバンドル移動方法。
【請求項4】
前記高圧バンドルが移動されるステップでは、前記高圧バンドルは、前記低圧ケーシングの内部まで、前記高圧ケーシングに対して前記軸方向のみへ移動される請求項3に記載のバンドル移動方法。
【請求項5】
前記高圧ケーシング内に配置された前記高圧バンドルの外周面の鉛直方向の位置と、前記鉛直方向の位置が一致する調節面を前記低圧ケーシングに対して形成する高さ調節治具が配置されるステップをさらに有し、
前記高圧バンドルが移動されるステップでは、前記高圧バンドルは、前記高さ調節治具上を移動される請求項3又は4に記載のバンドル移動方法。
【請求項6】
前記高圧バンドルが移動されるステップでは、前記高圧ケーシングの中心軸と、前記低圧ケーシングの中心軸とが、前記軸方向から見た際に前記軸線と一致する位置に配置された状態で、前記高圧バンドルが移動される請求項3又は4に記載のバンドル移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機システム及びバンドル移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、回転するインペラに気体を通り抜けさせ、その際に発生する遠心力を利用してそれら気体を圧縮する。遠心圧縮機としては、インペラを複数備え、気体を段階的に圧縮する多段式の遠心圧縮機が知られている。遠心圧縮機では、ケーシングに対して、ダイヤフラムやロータが一体に形成されたバンドルを内部に配置する構造が知られている。
【0003】
また、このような遠心圧縮機は、駆動機(蒸気タービン、電動機)によって駆動される。その際、1台の駆動機に、高圧圧縮機と低圧圧縮機とを直列に連結し、1台の駆動機によって2台の圧縮機を駆動する圧縮機システムがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、一つの駆動機を挟み込むように、低圧側圧縮機である第一圧縮機と、高圧側圧縮機である第二圧縮機とを配置した圧縮機システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6288886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような直列に配置された高圧圧縮機及び低圧圧縮機に対して、ケーシングの内部にバンドルを配置する構造を採用した場合、メンテナンス等で分解や組み立てを行うスペースを圧縮機ごとに、軸方向に隣接して確保する必要がある。つまり、高圧圧縮機及び低圧圧縮機のそれぞれに対して、バンドルを移動させるためのスペースを別々に確保する必要がある。しかしながら、高圧圧縮機及び低圧圧縮機や駆動機の周辺に、バンドルを移動させるためだけのスペースを個別に確保することは、設置場所の制約が大きくなってしまう。そのため、複数の圧縮機に対してバンドルを移動させるスペースを抑えたいという課題がある。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、複数の圧縮機に対してバンドルを移動させるために必要なスペースを抑えることが可能な圧縮機システム及びバンドル移動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示にかかる圧縮機システムは、軸線回りに回転する駆動軸を有する駆動機と、前記駆動軸の回転が伝達されることで駆動され、流体を圧縮する高圧圧縮機と、前記軸線の延びる軸方向において、前記高圧圧縮機を挟んで前記駆動機に対して反対側に配置され、前記駆動軸の回転が伝達されることで駆動される低圧圧縮機と、前記高圧圧縮機は、前記駆動軸とともに前記軸線回りに回転する高圧回転軸及び複数の高圧インペラを有する高圧バンドルと、前記高圧バンドルを収容し、前記軸線を中心とする筒状に形成された高圧ケーシングとを有し、前記低圧圧縮機は、前記駆動軸及び前記高圧回転軸とともに前記軸線回りに回転する低圧回転軸及び複数の低圧インペラを有する低圧バンドルと、前記低圧バンドルを収容し、前記軸線を中心とする筒状に形成された低圧ケーシングとを有し、前記軸方向から見た際に、前記低圧ケーシングの最小内径は、前記高圧バンドルの最大外径よりも大きく、前記高圧バンドルは、前記低圧ケーシングが台板上に固定された状態で、前記低圧ケーシングと前記軸方向の位置が重なるように移動可能とされている。
【0009】
本開示にかかるバンドル移動方法は、軸線回りに回転する駆動軸を有する駆動機と、前記駆動軸の回転が伝達されることで駆動され、流体を圧縮する高圧圧縮機と、前記軸線の延びる軸方向において、前記高圧圧縮機を挟んで前記駆動機に対して反対側に配置され、前記駆動軸の回転が伝達されることで駆動される低圧圧縮機と、を備え、前記高圧圧縮機は、前記駆動軸とともに前記軸線回りに回転する高圧回転軸及び複数の高圧インペラを有する高圧バンドルと、前記高圧バンドルを収容し、前記軸線を中心とする筒状に形成された高圧ケーシングとを有し、前記低圧圧縮機は、前記駆動軸及び前記高圧回転軸とともに前記軸線回りに回転する低圧回転軸及び複数の低圧インペラを有する低圧バンドルと、前記低圧バンドルを収容し、前記軸線を中心とする筒状に形成された低圧ケーシングとを有し、前記軸方向から見た際に、前記低圧ケーシングの最小内径は、前記高圧バンドルの最大外径よりも大きい圧縮機システムでのバンドル移動方法であって、前記低圧ケーシングが台板上に固定された状態で、前記低圧ケーシングと前記軸方向の位置が重なるように、前記低圧ケーシングの内部を前記高圧バンドルが移動されるステップを有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の圧縮機システム及びバンドル移動方法によれば、複数の圧縮機に対してバンドルを移動させるために必要なスペースを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る圧縮機システムの構成を示す模式図である。
図2】本実施形態に係る圧縮機システムのメンテナンス方法を示すフロー図である。
図3】本実施形態に係る圧縮機システムのメンテナンス方法において、低圧バンドルを低圧ケーシングから移動させる様子を示す模式図である。
図4】本実施形態に係る圧縮機システムの高圧バンドルが移動されるステップを示すフロー図である。
図5】本実施形態に係る圧縮機システムのメンテナンス方法において、高さ調節治具が配置される様子を示す模式図である。
図6】本実施形態に係る圧縮機システムのメンテナンス方法において、高圧バンドルが低圧ケーシング上を移動する様子を示す模式図である。
図7】本実施形態に係る圧縮機システムのメンテナンス方法において、高圧バンドルが調節位置に移動される様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本開示による圧縮機システム1及びバンドル移動方法を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0013】
(圧縮機システムの構成)
以下、本開示の実施形態に係る圧縮機システム1について、図1図7を参照して説明する。圧縮機システム1は、例えば、アンモニアプラント等の化学プラントに配置されている。図1に示すように、圧縮機システム1は、蒸気タービン(駆動機)2と、電動機4と、変速機3と、高圧圧縮機5と、低圧圧縮機6とを備えている。電動機4と、変速機3と、蒸気タービン2と、高圧圧縮機5と、低圧圧縮機6とは、それぞれのロータの中心軸が蒸気タービン2の軸線Oと一致するように、同軸上に配置されている。
【0014】
なお、以下では、軸線Oが延びる方向を軸方向Daとする。軸線Oを基準にした径方向を単に径方向Drとする。径方向Drの一部を鉛直方向とする。また、圧縮機システム1において、高圧圧縮機5に対して蒸気タービン2が配置されている側を軸方向Daの第一側Da1と称する。また、圧縮機システム1において、高圧圧縮機5に対して低圧圧縮機6が配置されている側を軸方向Daの第二側Da2と称する。
【0015】
蒸気タービン2は、プロセスガス(流体)の処理に伴って発生する蒸気を利用して、高圧圧縮機5及び低圧圧縮機6を駆動する駆動機である。本実施形態における蒸気タービン2は、タービンロータ(駆動軸)21を有している。タービンロータ21は、軸線Oを中心として回転可能とされている。
【0016】
変速機3は、複数のギアによって、電動機4の回転を増速又は減速して蒸気タービン2に伝達する。変速機3は、蒸気タービン2に対して軸方向Daの第一側Da1に配置されている。変速機3は、変速機ロータ31を有している。変速機ロータ31は、カップリングを介してタービンロータ21と接続されている。変速機ロータ31は、軸線Oを中心として回転可能とされている。
【0017】
電動機4は、蒸気タービン2の回転を補助可能な回転機械である。電動機4は、外部から電圧が印加されて、印加された電圧の大きさに基づく回転速度で回転される。電動機4は、変速機3に対して軸方向Daの第一側Da1に配置されている。電動機4は、電動機ロータ41を備えている。電動機ロータ41は、カップリングを介して変速機ロータ31と接続されている。ロータは、軸線Oを中心として回転可能とされている。
【0018】
高圧圧縮機5は、タービンロータ21の回転が伝達されることで駆動され、プロセスガス(流体)を圧縮する。高圧圧縮機5は、低圧圧縮機6で圧縮された後のプロセスガスをさらに圧縮する。高圧圧縮機5は、蒸気タービン2に対して軸方向Daの第二側Da2に配置されている。高圧圧縮機5は、後述する高圧バンドル51が配置不能なほど軸方向Daで蒸気タービン2に対して近い位置に配置されている。つまり、軸方向Daにおける高圧圧縮機5と蒸気タービン2との間には、高圧バンドル51が配置可能なスペースは確保されていない。高圧圧縮機5は、高圧バンドル51と、高圧ケーシング52とを有している。
【0019】
高圧バンドル51は、軸線Oを中心とする円柱状に形成されている。高圧バンドル51は、軸方向Daに延びている。高圧バンドル51は、高圧回転軸511及び複数の高圧インペラ512を有している。高圧回転軸511は、カップリングを介してタービンロータ21に接続されている。高圧回転軸511は、軸方向Daにおいて変速機ロータ31とは反対側からタービンロータ21に接続されている。高圧回転軸511は、タービンロータ21とともに軸線O回りに回転可能とされている。複数の高圧インペラ512は、軸方向Daに間隔を空けて高圧回転軸511に固定されている。各高圧インペラ512は、高圧回転軸511とともに軸線O回りに回転することで、プロセスガスを圧縮する。
【0020】
高圧ケーシング52は、高圧バンドル51を内部に収容している。高圧ケーシング52は、高圧バンドル51を径方向Drの外側Droから覆うように配置されている。高圧ケーシング52は、台板(不図示)上に設置されている。本実施形態の高圧ケーシング52は、高圧バンドル51を鉛直方向へ移動不能に収容している。さらに、高圧ケーシング52は、高圧バンドル51を軸方向Daの第二側Da2のみへ移動可能に収容している。高圧ケーシング52は、高圧ケーシング本体521と、高圧移動規制部(移動規制部)522と、高圧入口ノズル523と、高圧抽気ノズル524と、高圧出口ノズル525と、を有している。
【0021】
高圧ケーシング本体521は、径方向Drの内側Driに高圧バンドル51を収容している。高圧ケーシング本体521は、軸方向Daの第二側Da2に挿抜可能な状態で高圧バンドル51を収容している。高圧ケーシング本体521は、軸線Oを中心とする筒状に形成されている。高圧ケーシング本体521は、軸方向Daに延びている。高圧ケーシング本体521の中心軸は、軸方向Daから見た際に軸線Oと一致する位置に配置されている。軸方向Daおける高圧ケーシング本体521の一方(第二側Da2)の端部は、高圧バンドル51が挿通可能な大きさで開口している。本実施形態では、高圧ケーシング本体521は、軸方向Daにおいて蒸気タービン2から最も遠い端部で開口している。したがって、高圧ケーシング本体521は、軸方向Daにおいて、蒸気タービン2から離れるように、低圧圧縮機6に向かって高圧バンドル51が挿抜可能な状態で開口している。
【0022】
高圧移動規制部522は、軸方向Daにおいて、蒸気タービン2に近づく高圧バンドル51の移動を規制する。高圧移動規制部522は、軸方向Daおける高圧ケーシング本体521の他方(第一側Da1)の端部に形成されている。本実施形態の高圧移動規制部522は、高圧ケーシング本体521に対して径方向Drの内側Driに突出している。高圧移動規制部522は、高圧ケーシング本体521と一体の一つの部材(例えば、端板)として形成されている。高圧移動規制部522は、軸方向Daに直交するように広がる板状をなしている。高圧移動規制部522の中央部には、高圧回転軸511が挿通可能であって、高圧バンドル51が挿通不能な大きさの開口が形成されている。
【0023】
高圧入口ノズル523は、高圧バンドル51の内部の高圧インペラ512にプロセスガスを導入する。高圧入口ノズル523は、高圧ケーシング本体521に対して径方向Drの外側Droに突出するよう形成されている。本実施形態の高圧入口ノズル523は、高圧ケーシング本体521に対して鉛直方向の下方に延びている。高圧入口ノズル523は、高圧ケーシング本体521と一体の一つの部材として形成されている。高圧入口ノズル523には、プロセスガスの供給源(不図示)と接続された配管が繋がれている。
【0024】
高圧抽気ノズル524は、高圧バンドル51の内部のプロセスガスを抽気する。高圧抽気ノズル524は、高圧ケーシング本体521に対して径方向Drの外側Droに突出するよう形成されている。本実施形態の高圧抽気ノズル524は、高圧ケーシング本体521に対して鉛直方向の上方に延びている。高圧抽気ノズル524には、高圧入口ノズル523に対して軸方向Daの第一側Da1に離れて配置されている。高圧抽気ノズル524は、高圧ケーシング本体521と一体の一つの部材として形成されている。高圧抽気ノズル524には、抽気したプロセスガスの供給するための配管が繋がれている。
【0025】
高圧出口ノズル525は、高圧バンドル51の内部のプロセスガスを外部に排出する。高圧出口ノズル525は、高圧ケーシング本体521に対して径方向Drの外側Droに突出するよう形成されている。本実施形態の高圧出口ノズル525は、高圧ケーシング本体521に対して鉛直方向の下方に延びている。高圧出口ノズル525は、高圧入口ノズル523及び高圧抽気ノズル524に対して軸方向Daの第一側Da1に離れて配置されている。高圧出口ノズル525は、高圧ケーシング本体521と一体の一つの部材として形成されている。高圧出口ノズル525には、プロセスガスの供給先(不図示)と接続された配管が繋がれている。
【0026】
低圧圧縮機6は、高圧圧縮機5を介してタービンロータ21の回転が伝達されることで駆動される。低圧圧縮機6は、高圧圧縮機5に導入される前のプロセスガスを圧縮している。低圧圧縮機6は、高圧圧縮機5に対して軸方向Daの第二側Da2に配置されている。低圧圧縮機6は、軸方向Daにおいて、高圧圧縮機5を挟んで蒸気タービン2と反対側に配置されている。低圧圧縮機6は、高圧バンドル51が配置不能なほど軸方向Daで高圧圧縮機5に対して近い位置に配置されている。つまり、軸方向Daにおける高圧圧縮機5と低圧圧縮機6との間には、高圧バンドル51が配置可能なスペースは確保されていない。低圧圧縮機6は、低圧バンドル61と、低圧ケーシング62とを有している。
【0027】
低圧バンドル61は、軸線Oを中心とする円柱状に形成されている。低圧バンドル61は、軸方向Daに延びている。軸方向Daから見た際に、低圧バンドル61の最大外径は、高圧バンドル51の最大外径に比べて大きい。低圧バンドル61は、低圧回転軸611及び複数の低圧インペラ612を有している。低圧回転軸611は、カップリングを介して高圧回転軸511に接続されている。低圧回転軸611は、軸方向Daにおいてタービンロータ21とは反対側から高圧回転軸511に接続されている。低圧回転軸611は、高圧回転軸511とともに軸線O回りに回転可能とされている。複数の低圧インペラ612は、軸方向Daに間隔を空けて回転軸に固定されている。各低圧インペラ612は、低圧回転軸611とともに軸線O回りに回転することで、プロセスガスを圧縮する。複数の低圧インペラ612の最大外径は、複数の高圧インペラ512の最大外径よりも大きい。
【0028】
低圧ケーシング62は、低圧バンドル61を内部に収容している。低圧ケーシング62は、低圧バンドル61を径方向Drの外側Droから覆うように配置されている。軸方向Daから見た際に、低圧ケーシング62の最小内径は、高圧バンドル51の最大外径よりも大きい。低圧ケーシング62は、台板上に設置されている。低圧ケーシング62は、低圧ケーシング本体621と、低圧移動規制部622と、低圧入口ノズル623と、低圧出口ノズル624と、を有している。
【0029】
低圧ケーシング本体621は、径方向Drの内側Driに低圧バンドル61を収容している。低圧ケーシング本体621は、軸方向Daの第二側Da2に挿抜可能な状態で低圧バンドル61を収容している。低圧ケーシング本体621は、軸線Oを中心とする筒状に形成されている。低圧ケーシング本体621は、軸方向Daに延びている。低圧ケーシング本体621の中心軸は、軸方向Daから見た際に、軸線Oと一致する位置に配置されている。したがって、低圧ケーシング本体621は、その中心軸の位置が高圧ケーシング本体521の中心軸の位置を一致するように配置されている。軸方向Daおける低圧ケーシング本体621の一方(第二側Da2)の端部は、低圧バンドル61が挿通可能な大きさで開口している。本実施形態では、低圧ケーシング本体621は、軸方向Daにおいて蒸気タービン2から最も遠い端部で開口している。したがって、低圧ケーシング本体621は、軸方向Daにおいて、蒸気タービン2及び高圧圧縮機5から離れるように、低圧バンドル61が挿抜可能な状態で開口している。
【0030】
低圧移動規制部622は、軸方向Daおける低圧ケーシング62の他方(第一側Da1)の端部に形成されている。低圧移動規制部622は、軸方向Daにおいて、蒸気タービン2に近づく低圧バンドル61の移動を規制する。本実施形態の低圧移動規制部622は、低圧ケーシング本体621に対して径方向Drの内側Driに突出している。低圧移動規制部622は、低圧ケーシング本体621と一体の一つの部材(例えば、端板)として形成されている。低圧移動規制部622は、軸方向Daに直交するように広がる板状をなしている。低圧移動規制部622の中央部には、低圧回転軸611及び高圧バンドル51が挿通可能であって、低圧バンドル61が挿通不能な大きさの開口が形成されている。低圧移動規制部622の中央部の開口が形成されている位置が、低圧ケーシング62において、最小内径となる位置である。したがって、高圧バンドル51は、低圧移動規制部622の中央部の開口を通って、低圧ケーシング本体621の内部に軸方向Daに移動可能な大きさとなっている。
【0031】
低圧入口ノズル623は、低圧バンドル61の内部の低圧インペラ612にプロセスガスを導入する。低圧入口ノズル623は、低圧ケーシング本体621に対して径方向Drの外側Droに突出するよう形成されている。本実施形態の低圧入口ノズル623は、低圧ケーシング本体621に対して鉛直方向の下方に延びている。低圧入口ノズル623は、低圧ケーシング本体621と一体の一つの部材として形成されている。低圧入口ノズル623には、プロセスガスの供給源(不図示)と接続された配管が繋がれている。
【0032】
低圧出口ノズル624は、低圧バンドル61の内部のプロセスガスを外部に排出する。低圧出口ノズル624は、低圧ケーシング本体621に対して径方向Drの外側Droに突出するよう形成されている。本実施形態の低圧出口ノズル624は、低圧ケーシング本体621に対して鉛直方向の下方に延びている。低圧出口ノズル624は、低圧入口ノズル623に対して軸方向Daの第一側Da1に離れて配置されている。低圧出口ノズル624は、低圧ケーシング本体621と一体の一つの部材として形成されている。低圧出口ノズル624には、プロセスガスの供給先(例えば、高圧入口ノズル523)と接続された配管が繋がれている。
【0033】
(圧縮機システムのメンテナンス方法(バンドル移動方法)の手順)
次に、上記したような圧縮機システム1のメンテナンス方法(バンドル移動方法)S1について説明する。図2に示すように、圧縮機システム1のメンテナンス方法S1は、低圧バンドル61が移動されるステップS10と、高圧バンドル51が移動されるステップS20と、低圧バンドル61及び高圧バンドル51がメンテナンスされるステップS30とを主に含んでいる。
【0034】
図3に示すように、低圧バンドル61が移動されるステップS10では、低圧ケーシング62に対して低圧バンドル61が取り外される。低圧バンドル61が移動されるステップS10では、第一に、低圧回転軸611と高圧回転軸511との接続が解除される。その後、低圧ケーシング62が台板上に固定された状態で、低圧バンドル61が移動される。その際、低圧入口ノズル623及び低圧出口ノズル624には配管が固定された状態のままとなっている。つまり、低圧ケーシング62は、運転時の位置から全く移動されない。低圧バンドル61は、クレーン等の揚重機を用いてワイヤが引かれることで、低圧ケーシング62に対して軸方向Daの第二側Da2に移動される。軸方向Daにおいて、低圧ケーシング62と低圧バンドル61とが重ならない位置まで、低圧バンドル61は移動される。その後、低圧バンドル61は、クレーン等の揚重機を用いてワイヤを介して引き上げられ、メンテナンスを実施する調整位置まで移動される。
【0035】
高圧バンドル51が移動されるステップS20では、高圧ケーシング52及び低圧ケーシング62に対して高圧バンドル51が取り外される。高圧バンドル51が移動されるステップS20では、低圧ケーシング62内を高圧バンドル51が移動される。具体的には、図4に示すように、本実施形態の高圧バンドル51が移動されるステップS20は、高さ調節治具9が配置されるステップS21と、低圧ケーシング62の内部を通って軸方向Daに高圧バンドル51が移動されるステップS22と、高圧バンドル51が調整位置まで移動されるステップS23とを主に含んでいる。
【0036】
図5に示すように、高さ調節治具9が配置されるステップS21では、低圧ケーシング62に対して高さ調節治具9が配置される。高さ調節治具9は、低圧ケーシング62に対して調節面90を形成する。調節面90は、高圧ケーシング52内に配置された高圧バンドル51の外周面の鉛直方向の位置と、鉛直方向の位置が一致する滑らかな面である。高さ調節治具9は、調節面90の上に高圧バンドル51が載置可能とされている。本実施形態では、高さ調節治具9は、外部高さ調節治具9Aと、内部高さ調節治具9Bとを有している。
【0037】
外部高さ調節治具9Aは、低圧ケーシング62と高圧ケーシング52との間に調節面90である外部調節面90Aを形成する。外部高さ調節治具9Aは、軸方向Daにおいて、低圧ケーシング62と高圧ケーシング52との間に配置される。外部高さ調節治具9Aは、台板、低圧ケーシング62、又は高圧ケーシング52に固定される。外部高さ調節治具9Aは、軸方向Daと直交する方向から見た際に、軸方向Daにおける低圧ケーシング62と高圧ケーシング52との隙間を埋めるように配置されている。
【0038】
内部高さ調節治具9Bは、低圧ケーシング62の内部に調節面90である内部調節面90Bを形成する。内部高さ調節治具9Bは、軸方向Daにおいて、低圧ケーシング本体621と重なる位置に配置される。内部高さ調節治具9Bは、低圧ケーシング本体621の内部に取り付けられる。内部高さ調節治具9Bは、軸方向Daと直交する方向から見た際に、低圧ケーシング本体621の内周面の半分以上の領域を覆うように配置される。
【0039】
高さ調節治具9が配置されるステップS21では、外部高さ調節治具9A及び内部高さ調節治具9Bがそれぞれ移動不能な状態で配置される。
【0040】
低圧ケーシング62の内部を通って軸方向Daに高圧バンドル51が移動されるステップS22では、図6に示すように、第一に、タービンロータ21と高圧回転軸511との接続が解除される。その後、高圧ケーシング52及び低圧ケーシング62が台板上に固定された状態で、高圧バンドル51が移動される。その際、高圧入口ノズル523、高圧抽気ノズル524、高圧出口ノズル525、低圧入口ノズル623、及び低圧出口ノズル624には配管が固定された状態のままとなっている。つまり、高圧ケーシング52及び低圧ケーシング62は、運転時の位置から全く移動されない。したがって、低圧ケーシング62の内部を通って軸方向Daに高圧バンドル51が移動されるステップS22では、高圧ケーシング52の中心軸と、低圧ケーシング62の中心軸とが、軸方向Daから見た際に軸線Oと一致する位置に配置された状態と常になっている。高圧バンドル51は、クレーン等の揚重機を用いてワイヤが引かれることで、高圧ケーシング52に対して軸方向Daの第二側Da2に移動される。軸方向Daにおいて、高圧ケーシング52及び低圧ケーシング62と、高圧バンドル51とが重ならない位置まで、高圧バンドル51は移動される。その際、高圧バンドル51は、高圧ケーシング52の内部から低圧ケーシング62の内部まで、高圧ケーシング52に対して軸方向Daのみへ移動される。
【0041】
具体的には、高圧バンドル51は、高圧ケーシング52の内部から外部高さ調節治具9A上を軸方向Daの第二側Da2へ真っすぐ移動される。その後、高圧バンドル51は、外部高さ調節治具9A上から、低圧移動規制部622の中央部の開口を通って、内部高さ調節治具9B上まで軸方向Daの第二側Da2へ真っすぐ移動される。これにより、高圧バンドル51は、内部高さ調節治具9Bを介して、低圧ケーシング62と軸方向Daの位置が重なるように、低圧ケーシング62の内部に移動される。その後、軸方向Daにおいて、低圧ケーシング62と高圧バンドル51とが重ならない位置まで、高圧バンドル51は軸方向Daの第二側Da2へ真っすぐ移動される。つまり、高圧バンドル51は、高圧ケーシング52の内部から低圧ケーシング62の内部を通って低圧ケーシング62の外部に出されるまで、その中心軸が軸線Oと重なった状態で移動される。
【0042】
図7に示すように、高圧バンドル51が調整位置まで移動されるステップS23では、低圧ケーシング62の外部に出された高圧バンドル51が、メンテナンスを実施する調整位置まで移動される。高圧バンドル51は、低圧ケーシング62の外部(軸方向Daで高圧ケーシング52及び低圧ケーシング62と重ならない位置)でクレーン等の揚重機を用いて、ワイヤを介して引き上げられ、調整位置まで移動される。
【0043】
低圧バンドル61及び高圧バンドル51がメンテナンスされるステップS30では、調整位置で低圧バンドル61及び高圧バンドル51のメンテナンスが実施される。同時に、高圧ケーシング52及び低圧ケーシング62のメンテナンスも実施される。
【0044】
(作用効果)
上記構成の圧縮機システム1によれば、軸方向Daから見た際に、低圧ケーシング62の最小内径は、高圧バンドル51の最大外径よりも大きく形成されている。そのため、高圧バンドル51は、低圧ケーシング62の最小内径の位置である低圧移動規制部622の中央部の開口を通って、低圧ケーシング本体621の内部に移動可能とされる。したがって、高圧バンドル51は、低圧ケーシング62が台板上に固定された状態で、低圧ケーシング62と軸方向Daの位置が重なるように移動される。その後、高圧バンドル51は、低圧ケーシング本体621の内部から低圧ケーシング62の外部へと移動される。このように、高圧バンドル51は、低圧ケーシング62の内部を通って、外部へ移動可能とされている。したがって、高圧圧縮機5と低圧圧縮機6との間や高圧圧縮機5と蒸気タービン2との間のような高圧圧縮機5の周辺に、高圧バンドル51を移動させるためのスペースを確保する必要がない。これにより、複数の圧縮機に対してバンドルを移動させるために必要なスペースを抑えることができる。
【0045】
さらに、高圧バンドル51が通過する際に、低圧ケーシング62は台板上に固定されている。つまり、低圧ケーシング62を移動する必要がない。そのため、低圧ケーシング62の分解作業が不要となる。したがって、低圧入口ノズル623や低圧出口ノズル624の接続された配管を取り外す必要もなくなる。したがって、メンテナンス作業の前後での作業工程を簡素ができ、作業時間の短縮を図ることができる。
【0046】
また、高圧バンドル51は、低圧ケーシング62の内部まで、高圧ケーシング52に対して軸方向Daの第二側Da2のみへ移動される。そのため、高圧バンドル51を移動させるために、高圧ケーシング52を分解する必要がない。その結果、高圧ケーシング52も台板上に固定したままの状態とできる。つまり、高圧ケーシング52を移動する必要がない。そのため、高圧ケーシング52の分解作業が不要となる。したがって、高圧入口ノズル523や高圧抽気ノズル524や高圧出口ノズル525に接続された配管を取り外す必要もなくなる。したがって、低圧ケーシング62だけでなく高圧ケーシング52でもメンテナンス作業の前後での作業工程を簡素ができ、作業時間の短縮をより図ることができる。
【0047】
さらに、高圧ケーシング52は、軸方向Daにおいて、蒸気タービン2に近づく高圧バンドル51の移動を規制する高圧移動規制部522を有している。そのため、高圧バンドル51は、高圧ケーシング本体521に対して蒸気タービン2に近づくように、軸方向Daの第一側Da1に移動することができない。つまり、高圧バンドル51は、高圧ケーシング本体521に対して軸方向Daの第二側Da2のみへ移動される。したがって、高圧バンドル51が移動される際には、高圧バンドル51は低圧ケーシング62の内部へ確実に移動される。したがって、高圧圧縮機5と蒸気タービン2との間に、高圧バンドル51を移動させるためのスペースを確保する必要がない。これにより、蒸気タービン2の設置位置の自由度を向上させることができる。
【0048】
また、外部高さ調節治具9A及び内部高さ調節治具9Bが配置された状態で高圧バンドル51が移動されている。そのため、高圧バンドル51は、外部調節面90A上を通って移動した後に、低圧ケーシング本体621の内部の内部調節面90B上に移動される。その際、外部調節面90A及び内部調節面90Bは、高圧ケーシング52内に配置された状態の高圧バンドル51の外周面の鉛直方向の位置と、鉛直方向の位置が一致するように形成されている。そのため、外部調節面90A及び内部調節面90B上を高圧バンドル51が移動される際には、鉛直方向での高圧バンドル51の位置は、高圧バンドル51が高圧ケーシング52の内部に収容された状態から変化しない。つまり、高圧バンドル51は、鉛直方向にずれることなく、高圧ケーシング本体521の内部から低圧ケーシング本体621の内部まで高い精度で移動できる。そのため、高圧バンドル51を移動している途中で、高圧ケーシング52や低圧ケーシング62と高圧バンドル51が接触して損傷してしまうことを抑制できる。
【0049】
また、高圧ケーシング52の中心軸と、低圧ケーシング62の中心軸とが、軸方向Daから見た際に軸線Oと一致する位置に配置された状態で、高圧バンドル51が移動される。つまり、高圧ケーシング52及び低圧ケーシング62は、中心軸がずれることなく、台板上に固定された状態が維持される。そのため、メンテナンス終了後等の高圧バンドル51の移動後の組み立て時に、高圧ケーシング52及び低圧ケーシング62の中心軸の位置を軸線Oに合わせるアライメント調整の作業が実質的に不要となる。これにより、高圧バンドル51の移動前後での作業工程をより簡素ができ、作業時間の短縮をより図ることができる。
【0050】
また、外部高さ調節治具9A及び内部高さ調節治具9Bによって、高圧バンドル51が高圧ケーシング本体521の内部から低圧ケーシング本体621の内部まで高い精度で移動されている。そのため、高圧バンドル51が高圧ケーシング52や低圧ケーシング62に大きく接触して、高圧ケーシング52や低圧ケーシング62の位置がずれてしまうことも抑えられる。これによっても、高圧ケーシング52や低圧ケーシング62の中心軸の位置を軸線Oに合わせるアライメント調整の作業の追加を抑制できる。したがって、メンテナンス作業の前後での作業工程をより一層簡素ができ、作業時間の短縮をより一層図ることができる。
【0051】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0052】
例えば、圧縮機システム1は、駆動機と、高圧圧縮機5と、低圧圧縮機6とを備えていれば、他の装置は配置されていなくてもよい。したがって、圧縮機システム1は、変速機3及び電動機4が配置されていなくてもよい。また、圧縮機システム1は、駆動機として蒸気タービン2ではなく、電動機4が配置されていてもよい。したがって、圧縮機システム1は、電動機4と、高圧圧縮機5と、低圧圧縮機6とのみを有する構造であってもよい。
【0053】
また、高圧ケーシング52が高圧移動規制部522を有していたが、高圧ケーシング52はこのような構造に限定されるものではない。例えば、高圧ケーシング52は高圧移動規制部522を有していなくてもよい。また、仮に高圧移動規制部522を有する場合であっても、高圧移動規制部522は、高圧ケーシング本体521と一体の部材として形成されていることに限定されるものではない。高圧移動規制部522は、高圧ケーシング本体521と分離可能な別の部材(例えば、シアリング)として形成されていてもよい。
【0054】
同様に、低圧ケーシング62が低圧移動規制部622を有していたが、低圧ケーシング62はこのような構造に限定されるものではない。例えば、低圧ケーシング62は低圧移動規制部622を有していなくてもよい。また、仮に低圧移動規制部622を有する場合であっても、また、低圧移動規制部622は、低圧ケーシング本体621と一体の部材として形成されていることに限定されるものではない。低圧移動規制部622は、低圧ケーシング本体621と分離可能な別の部材(例えば、シアリング)として形成されていてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、高圧バンドル51が移動される際に高さ調節治具9を配置したが、高さ調節治具9を配置することに限定されるものではない。例えば、高圧バンドル51が移動される際に高さ調節治具9を配置せず、低圧ケーシング62の内部を移動させてもよい。さらに、高圧バンドル51が移動される際に高さ調節治具9を配置する場合であっても、外部高さ調節治具9A及び内部高さ調節治具9Bの片方のみを配置してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、バンドル移動方法は、圧縮機システム1のメンテナンス方法S1として適用されたが、バンドル移動方法は、メンテナンス方法のみに適用されることに限定されるものではない。例えば、バンドル移動方法は、圧縮機システム1の分解や組立に適用されてもよい。さらに、圧縮機システム1の組立のように、高圧バンドル51を高圧ケーシング52に挿入する場合には、上述した実施形態の手順を逆の順序で行えばよい。
【0057】
<付記>
実施形態に記載の圧縮機システム1及びバンドル移動方法は、例えば以下のように把握される。
【0058】
(1)第1の態様に係る圧縮機システム1は、軸線O回りに回転する駆動軸を有する駆動機と、前記駆動軸の回転が伝達されることで駆動され、流体を圧縮する高圧圧縮機5と、前記軸線Oの延びる軸方向Daにおいて、前記高圧圧縮機5を挟んで前記駆動機に対して反対側に配置され、前記駆動軸の回転が伝達されることで駆動される低圧圧縮機6と、を備え、前記高圧圧縮機5は、前記駆動軸とともに前記軸線O回りに回転する高圧回転軸511及び複数の高圧インペラ512を有する高圧バンドル51と、前記高圧バンドル51を収容し、前記軸線Oを中心とする筒状に形成された高圧ケーシング52とを有し、前記低圧圧縮機6は、前記駆動軸及び前記高圧回転軸511とともに前記軸線O回りに回転する低圧回転軸611及び複数の低圧インペラ612を有する低圧バンドル61と、前記低圧バンドル61を収容し、前記軸線Oを中心とする筒状に形成された低圧ケーシング62とを有し、前記軸方向Daから見た際に、前記低圧ケーシング62の最小内径は、前記高圧バンドル51の最大外径よりも大きく、前記高圧バンドル51は、前記低圧ケーシング62が台板上に固定された状態で、前記低圧ケーシング62と前記軸方向Daの位置が重なるように移動可能とされている。
【0059】
これにより、高圧バンドル51は、低圧ケーシング62の内部に移動可能とされる。したがって、高圧バンドル51は、低圧ケーシング62が台板上に固定された状態で、低圧ケーシング62と軸方向Daの位置が重なるように移動される。その後、高圧バンドル51は、低圧ケーシング62の内部から低圧ケーシング62の外部へと移動される。このように、高圧バンドル51は、低圧ケーシング62の内部を通って、外部へ移動可能とされている。したがって、高圧圧縮機5と低圧圧縮機6との間や高圧圧縮機5と蒸気タービン2との間のような高圧圧縮機5の周辺に、高圧バンドル51を移動させるためのスペースを確保する必要がない。これにより、複数の圧縮機に対してバンドルを移動させるスペースを抑えることができる。
【0060】
(2)第2の態様に係る圧縮機システム1は、(1)の圧縮機システム1であって、前記高圧ケーシング52は、前記軸方向Daにおいて、前記駆動機に近づく前記高圧バンドル51の移動を規制する移動規制部を有する。
【0061】
これにより、高圧バンドル51は、移動規制部によって、高圧ケーシング52に対して蒸気タービン2に近づくように、軸方向Daに移動することができない。つまり、高圧バンドル51は、高圧ケーシング52に対して軸方向Daの方側のみへ移動される。したがって、高圧バンドル51が移動される際には、高圧バンドル51は低圧ケーシング62の内部へ確実に移動される。したがって、高圧圧縮機5と蒸気タービン2との間に、高圧バンドル51を移動させるためのスペースを確保する必要がない。これにより、蒸気タービン2の設置位置の自由度を向上させることができる。
【0062】
(3)第3の態様に係るバンドル移動方法は、軸線O回りに回転する駆動軸を有する駆動機と、前記駆動軸の回転が伝達されることで駆動され、流体を圧縮する高圧圧縮機5と、前記軸線Oの延びる軸方向Daにおいて、前記高圧圧縮機5を挟んで前記駆動機に対して反対側に配置され、前記駆動軸の回転が伝達されることで駆動される低圧圧縮機6と、前記高圧圧縮機5は、前記駆動軸とともに前記軸線O回りに回転する高圧回転軸511及び複数の高圧インペラ512を有する高圧バンドル51と、前記高圧バンドル51を収容し、前記軸線Oを中心とする筒状に形成された高圧ケーシング52とを有し、前記低圧圧縮機6は、前記駆動軸及び前記高圧回転軸511とともに前記軸線O回りに回転する低圧回転軸611及び複数の低圧インペラ612を有する低圧バンドル61と、前記低圧バンドル61を収容し、前記軸線Oを中心とする筒状に形成された低圧ケーシング62とを有し、前記軸方向Daから見た際に、前記低圧ケーシング62の最小内径は、前記高圧バンドル51の最大外径よりも大きい圧縮機システム1でのバンドル移動方法であって、前記低圧ケーシング62が台板上に固定された状態で、前記低圧ケーシング62と前記軸方向Daの位置が重なるように、前記低圧ケーシング62の内部を前記高圧バンドル51が移動されるステップS20を有する。
【0063】
これにより、高圧バンドル51は、低圧ケーシング62の内部に移動される。その後、高圧バンドル51は、低圧ケーシング62の内部から低圧ケーシング62の外部へと移動される。このように、高圧バンドル51は、低圧ケーシング62の内部を通って、外部へ移動可能とされている。したがって、高圧圧縮機5と低圧圧縮機6との間や高圧圧縮機5と蒸気タービン2との間のような高圧圧縮機5の周辺に、高圧バンドル51を移動させるためのスペースを確保する必要がない。これにより、複数の圧縮機に対してバンドルを移動させるスペースを抑えることができる。
【0064】
(4)第4の態様に係るバンドル移動方法は、(3)のバンドル移動方法であって、前記高圧バンドル51が移動されるステップS20では、前記高圧バンドル51は、前記低圧ケーシング62の内部まで、前記高圧ケーシング52に対して前記軸方向Daのみへ移動される。
【0065】
これにより、高圧バンドル51を移動させるために、高圧ケーシング52を分解する必要がない。その結果、高圧ケーシング52も台板上に固定したままの状態とできる。つまり、高圧ケーシング52を移動する必要がない。そのため、高圧ケーシング52の分解作業が不要となる。したがって、高圧ケーシング52に接続された配管を取り外す必要もなくなる。したがって、低圧ケーシング62だけでなく高圧ケーシング52でもメンテナンス作業の前後での作業工程を簡素ができ、作業時間の短縮をより図ることができる。
【0066】
(5)第5の態様に係るバンドル移動方法は、(3)又は(4)のバンドル移動方法であって、前記高圧ケーシング52内に配置された前記高圧バンドル51の外周面の鉛直方向の位置と、前記鉛直方向の位置が一致する調節面90を前記低圧ケーシング62に対して形成する高さ調節治具9が配置されるステップS21をさらに有し、前記高圧バンドル51が移動されるステップS20では、前記高圧バンドル51は、前記高さ調節治具9上を移動される。
【0067】
これにより、高圧バンドル51は、調節面90上を通って移動した後に、低圧ケーシング62の内部に移動される。その際、調節面90は、高圧ケーシング52内に配置された状態の高圧バンドル51の外周面の鉛直方向の位置と、鉛直方向の位置が一致するように形成されている。そのため、調節面90上を高圧バンドル51が移動される際には、鉛直方向での高圧バンドル51の位置は、高圧バンドル51が高圧ケーシング52の内部に収容された状態から変化しない。つまり、高圧バンドル51は、鉛直方向にずれることなく、高圧ケーシング52の内部から低圧ケーシング62の内部まで高い精度で移動できる。そのため、高圧バンドル51を移動している途中で、高圧ケーシング52や低圧ケーシング62と高圧バンドル51が接触して損傷してしまうことを抑制できる。
【0068】
(6)第6の態様に係るバンドル移動方法は、(3)から(5)の何れか一つのバンドル移動方法であって、前記高圧バンドル51が移動されるステップS20では、前記高圧ケーシング52の中心軸と、前記低圧ケーシング62の中心軸とが、前記軸方向Daから見た際に前記軸線Oと一致する位置に配置された状態で、前記高圧バンドル51が移動される。
【0069】
これにより、高圧ケーシング52及び低圧ケーシング62は、中心軸がずれることなく、台板上に固定された状態が維持される。そのため、高圧バンドル51の移動後の組み立て時に、高圧ケーシング52及び低圧ケーシング62の中心軸の位置を軸線Oに合わせるアライメント調整の作業が実質的に不要となる。これにより、高圧バンドル51の移動前後での作業工程をより簡素ができ、作業時間の短縮をより図ることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…圧縮機システム
O…軸線
2…蒸気タービン
21…タービンロータ
3…変速機
31…変速機ロータ
4…電動機
41…電動機ロータ
5…高圧圧縮機
51…高圧バンドル
511…高圧回転軸
512…高圧インペラ
52…高圧ケーシング
521…高圧ケーシング本体
522…高圧移動規制部
523…高圧入口ノズル
524…高圧抽気ノズル
525…高圧出口ノズル
6…低圧圧縮機
61…低圧バンドル
611…低圧回転軸
612…低圧インペラ
62…低圧ケーシング
621…低圧ケーシング本体
622…低圧移動規制部
623…低圧入口ノズル
624…低圧出口ノズル
Da…軸方向
Da1…第一側
Da2…第二側
Dr…径方向
Dro…外側
Dri…内側
S1…圧縮機システムのメンテナンス方法
S10…低圧バンドルが移動されるステップ
S20…高圧バンドルが移動されるステップ
S21…高さ調節治具が配置されるステップ
S22…低圧ケーシングの内部を通って軸方向に高圧バンドルが移動されるステップ
S23…高圧バンドルが調整位置まで移動されるステップ
S30…低圧バンドル及び高圧バンドルがメンテナンスされるステップ
9…高さ調節治具
9A…外部高さ調節治具
9B…内部高さ調節治具
90…調節面
90A…外部調節面
90B…内部調節面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7