(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116885
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/02 20060101AFI20240821BHJP
H01H 9/04 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H01H50/02 T
H01H9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022730
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 博貴
【テーマコード(参考)】
5G052
【Fターム(参考)】
5G052AA07
5G052BB06
5G052HA01
(57)【要約】
【課題】樹脂部品が有するフィラーがケース内空間へ侵入することを抑制することが可能な継電器を提供する。
【解決手段】ケース内空間50aに面する樹脂部品であるケース50は、フィラー60を含有する樹脂基材501と、その樹脂基材501の表面を覆う表面層502とを有している。そして、その表面層502は、ケース50のうちケース内空間50aに面する空間側表面50bを形成し、表面層502におけるフィラー60の含有比率は、樹脂基材501におけるフィラー60の含有比率よりも小さい。従って、ケース50が有するフィラー60がケース内空間50aへ侵入することが、表面層502によって防止される。そのため、例えば表面層502が無い場合と比較して、ケース50が有するフィラー60がケース内空間50aへ侵入することを抑制することが可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内空間(50a)が内側に形成されたケース(50)と、
前記ケース内空間に配置された第1接点(31)と、
前記ケース内空間に配置され、前記第1接点に対し離接させられ、前記第1接点に接触することにより前記第1接点に対して電気的に接続される第2接点(32)と、
前記ケースまたは該ケースとは別の部品に該当し、フィラー(60)を含有する樹脂で構成された樹脂基材(211、501、511)と該樹脂基材の表面を覆う表面層(212、502、512)とを有し、前記ケース内空間に面する樹脂部品(21、50、51)とを備え、
前記表面層は、前記樹脂部品のうち前記ケース内空間に面する空間側表面(21b、50b、51b)を形成し、
前記表面層における前記フィラーの含有比率は、前記樹脂基材における前記フィラーの含有比率よりも小さい、継電器。
【請求項2】
前記表面層は、メッキまたは塗装によって形成された被膜である、請求項1に記載の継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路の開閉を行う継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の継電器として、例えば特許文献1に記載された継電器が従来から知られている。この特許文献1に記載された継電器では、その継電器のケース内に形成されたケース内空間に固定接点と可動接点とが配置されている。そして、その可動接点は固定接点に対し離接動作させられ、その離接動作によって電気回路の開閉が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の継電器では、ケースなど1つまたは複数の樹脂部品がケース内空間に面している。特許文献1には記載されていないが、一般的に、そのケース内空間に面する樹脂部品は、フィラーを含有した樹脂で構成されている。そして、その樹脂部品の強度確保等の観点から、その樹脂部品を、フィラーを含有しない樹脂で構成することは難しい。
【0005】
しかしながら、樹脂部品の成形、組付け、または経年劣化などが原因で、ケース内空間に樹脂部品からフィラーが脱落し、ケース内空間に残留することがある。そうなると、例えば2つの接点間における接点不良など、フィラーに起因した種々の不具合が生じるおそれがある。発明者の詳細な検討の結果、以上のようなことが見出された。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、樹脂部品が有するフィラーがケース内空間へ侵入することを抑制することが可能な継電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の継電器は、
ケース内空間(50a)が内側に形成されたケース(50)と、
ケース内空間に配置された第1接点(31)と、
ケース内空間に配置され、第1接点に対し離接させられ、第1接点に接触することにより第1接点に対して電気的に接続される第2接点(32)と、
ケースまたはそのケースとは別の部品に該当し、フィラー(60)を含有する樹脂で構成された樹脂基材(211、501、511)とその樹脂基材の表面を覆う表面層(212、502、512)とを有し、ケース内空間に面する樹脂部品(21、50、51)とを備え、
表面層は、樹脂部品のうちケース内空間に面する空間側表面(21b、50b、51b)を形成し、
表面層におけるフィラーの含有比率は、樹脂基材におけるフィラーの含有比率よりも小さい。
【0008】
このようにすれば、樹脂部品が有するフィラーがケース内空間へ侵入することが、表面層によって防止される。そのため、樹脂部品がその表面層を有さない場合と比較して、樹脂部品が有するフィラーがケース内空間へ侵入することを抑制することが可能である。
【0009】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。この場合、参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の単なる一例を示すものであるにすぎない。よって、本発明は、参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の継電器の概略構成を示した斜視図であって、継電器が有する固定接点、ストッパ、第2負荷端子、ケース、およびベースの図示を省略して示した図である。
【
図2】第1実施形態において
図1のII-II断面を示した断面図であって、コイル軸心を含む断面で継電器を示した図である。
【
図3】第1実施形態において、
図2のIII部分を拡大して模式的に示したケース単体の部分断面図である。
【
図4】第1実施形態において、
図2のIV部分を拡大して模式的に示したベース単体の部分断面図である。
【
図5】第1実施形態において、
図2のV部分を拡大して模式的に示したスプール単体の部分断面図である。
【
図6】第1実施形態に対する比較例において、
図2のIII部分に相当する部分を拡大して模式的に示したケース単体の部分断面図であって、
図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施形態を説明する。なお、後述の他の実施形態を含む以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態の継電器10は例えば車両に搭載される。継電器10は、電磁石の通電状態の切替えに応じて車載部品への電流供給のオン、オフを行う電磁継電器である。この継電器10は、リレー装置とも称される。
【0013】
図1、
図2に示されるように、継電器10は、スプール21、コイル巻線26、コア27、ヨーク28、アーマチャプレート29、板バネ30、第1接点としての可動接点31、第2接点としての固定接点32、ストッパ33、第1負荷端子41、第2負荷端子42、第1コイル端子46、第2コイル端子47、ケース50、およびベース51などを備えている。
【0014】
継電器10のケース50とベース51は継電器10の外殻を成すものである。ケース50の内側にはケース内空間50aが形成されている。そのケース内空間50aには、スプール21、コイル巻線26、コア27、ヨーク28、アーマチャプレート29、板バネ30、可動接点31、固定接点32、およびストッパ33が収容されている。
【0015】
そして、ベース51は、そのケース内空間50aを、端子41、42、46、47が設けられた側から塞いでおり、ケース50に固定されている。例えば、ケース50内に収容されたスプール21やヨーク28などはベース51に対して固定されている。また、継電器10が有する各端子41、42、46、47はそれぞれ、ベース51から外側へ突き出ている。
【0016】
継電器10は、その継電器10に対する外部の電気部品である電気基板11に実装され、継電器10が有する各端子41、42、46、47はその電気基板11にハンダ付けされる。それらの各端子41、42、46、47は、例えば導電性が高い銅合金などの金属材料で構成されている。なお、
図1では、固定接点32、ストッパ33、第2負荷端子42、ケース50、およびベース51の図示が省略されている。また、
図2において、電気基板11は二点鎖線で図示されている。
【0017】
スプール21は、スプール軸部22と一方側スプール基部23と他方側スプール基部24とを有している。スプール軸部22と一方側スプール基部23と他方側スプール基部24は一体化されており、例えば、スプール21は、そのスプール軸部22と一方側スプール基部23と他方側スプール基部24とを含む一部品として構成されている。
【0018】
スプール軸部22は、スプール21のうちコイル巻線26が巻かれたボビン部であり、コイル巻線26の軸方向Daに延びた円筒形状を成している。コイル巻線26とスプール軸部22は何れも共通の軸心CL(以下、コイル軸心CLとも称する)を中心とした円筒状であるので、コイル巻線26の軸方向Daはスプール軸部22の軸方向でもあり、コイル巻線26の径方向Drはスプール軸部22の径方向でもある。なお、本実施形態の説明では、コイル巻線26の軸方向Daをコイル軸方向Daとも称し、コイル巻線26の径方向Drをコイル径方向Drとも称する。
【0019】
一方側スプール基部23は、コイル巻線26およびスプール軸部22に対しコイル軸方向Daの一方側に設けられ、一方側スプール基部23にはスプール軸部22の一端が連結している。一方側スプール基部23は、スプール軸部22から第1交差方向D1とその第1交差方向D1に交差する第2交差方向D2とのそれぞれへ拡がるように形成されている。その第1交差方向D1と第2交差方向D2はコイル軸方向Daに交差する方向であり、厳密に言えば、第1交差方向D1と第2交差方向D2とコイル軸方向Daは互いに垂直な方向である。従って、一方側スプール基部23は、スプール軸部22からコイル径方向Drへ拡がるように形成されているとも言える。例えば、一方側スプール基部23は、コイル巻線26よりもコイル径方向Drの外側へ拡がるように形成されている。
【0020】
また、一方側スプール基部23は、コイル軸方向Daを厚み方向とした板状に形成されている。一方側スプール基部23は、コイル巻線26に対しコイル軸方向Daに当接している。要するに、一方側スプール基部23はコイル巻線26に接触している。
【0021】
他方側スプール基部24は、コイル巻線26およびスプール軸部22に対しコイル軸方向Daの一方側とは反対側の他方側に設けられ、他方側スプール基部24にはスプール軸部22の他端が連結している。他方側スプール基部24は、スプール軸部22から第1交差方向D1と第2交差方向D2とのそれぞれへ拡がるように形成されている。従って、他方側スプール基部24は、スプール軸部22からコイル径方向Drへ拡がるように形成されているとも言える。例えば、他方側スプール基部24は、コイル巻線26よりもコイル径方向Drの外側へ拡がるように形成されている。
【0022】
また、他方側スプール基部24は、コイル軸方向Daを厚み方向とした板状に形成されている。他方側スプール基部24は、コイル巻線26に対しコイル軸方向Daに当接している。要するに、他方側スプール基部24はコイル巻線26に接触している。
【0023】
また、スプール21には、スプール軸部22の内側を通って一方側スプール基部23と他方側スプール基部24とを貫通するスプール貫通孔21aが形成されている。このスプール貫通孔21aはコイル軸心CLを中心としてコイル軸方向Daに延びている。
【0024】
コイル巻線26は、通電されることで磁力を発生する電磁コイルである。コイル巻線26は、スプール軸部22の外周壁面に沿って線材が巻回されることで構成されている。コイル巻線26は、コイル軸方向Daの一方側に設けられたコイル一端面261と、コイル軸方向Daの他方側に設けられたコイル他端面262とを有している。そのコイル一端面261は一方側スプール基部23に対して接触し、コイル他端面262は他方側スプール基部24に対して接触している。
【0025】
コア27は、磁路を形成するものであって磁性体金属材料で構成され、コイル軸心CLを中心とした略円柱状に形成されている。コア27は、スプール貫通孔21aに挿入されている。これにより、コイル巻線26が通電されると、コイル巻線26が磁界を形成してコア27が磁気吸引力を発生する。
【0026】
ヨーク28は、磁路を形成するものであって磁性体金属材料の板状部材で構成され、略L字状とされている。具体的に、ヨーク28は、第1ヨーク板部281と第2ヨーク板部282とを有している。その第1ヨーク板部281は、第2交差方向D2を厚み方向とした板状であり、コイル軸方向Daに延びるように形成されている。第1ヨーク板部281は、コイル巻線26に対し第2交差方向D2の一方側にコイル巻線26から離れて配置されている。
【0027】
第2ヨーク板部282は、コイル軸方向Daを厚み方向とした板状であり、第1ヨーク板部281におけるコイル軸方向Daの他方側の端部から第2交差方向D2の他方側へ延びるように形成されている。そして、第2ヨーク板部282は、コイル巻線26との間に他方側スプール基部24を挟んでコイル巻線26に対しコイル軸方向Daの他方側に配置されている。そして、第2ヨーク板部282には、コア27におけるコイル軸方向Daの他方側の端部がカシメ固定されている。
【0028】
アーマチャプレート29は、磁路を形成するものであり、磁性体金属材料で構成されて板状とされている。アーマチャプレート29は、第2交差方向D2の一方側に設けられた一端部291を有し、その一端部291は、第1ヨーク板部281におけるコイル軸方向Daの一方側の端部に保持されている。そして、アーマチャプレート29は、その一端部291を支点として揺動可能になっている。また、アーマチャプレート29は、一端部291よりも第2交差方向D2の他方側に配置された対向面29aを有している。この対向面29aは、コア27におけるコイル軸方向Daの一方側の一端面27aに対向している。
【0029】
このような構成からアーマチャプレート29は、コイル巻線26が通電されると、コア27の磁気吸引力により、一端部291を支点として揺動し対向面29aがコア27に近づくように吸引される。
【0030】
可動接点31と固定接点32は、第1負荷端子41と第2負荷端子42との間の電気的な接続と遮断とを切り替えるための金属製の電気接点部材である。
【0031】
板バネ30は、弾力性を有する金属製の板状部材で構成されており、アーマチャプレート29と第1ヨーク板部281とに沿って略L字状に形成されている。そして、板バネ30は、アーマチャプレート29に沿った部位にてアーマチャプレート29にカシメ固定され、第1ヨーク板部281に沿った部位にて第1ヨーク板部281にカシメ固定されている。板バネ30は、アーマチャプレート29の対向面29aをコア27の一端面27aから離す向きにアーマチャプレート29を付勢している。
【0032】
また、板バネ30は、第2交差方向D2の他方側に設けられた自由端部を有し、その自由端部には可動接点31が固定されている。この可動接点31は、板バネ30を介して第1負荷端子41に電気的に接続されている。一方、固定接点32は第2負荷端子42に固定され、その第2負荷端子42に電気的に接続されている。その第2負荷端子42は他方側スプール基部24に固定されている。そして、固定接点32は可動接点31に接触することにより、その可動接点31に対して電気的に接続される。
【0033】
可動接点31に対するコイル軸方向Daの他方側には固定接点32が配置され、可動接点31に対するコイル軸方向Daの一方側にはストッパ33が配置されている。すなわち、ストッパ33と可動接点31と固定接点32は、コイル軸方向Daの一方側から、ストッパ33、可動接点31、固定接点32の順番でコイル軸方向Daに並んで配置されている。そして、ストッパ33と可動接点31と固定接点32はアーマチャプレート29よりも第2交差方向D2の他方側に配置され、可動接点31と固定接点32はコイル軸方向Daに対向している。
【0034】
従って、コイル巻線26への通電が行われた場合には、そのコイル巻線26への通電によりアーマチャプレート29がコア27に吸引され、それに伴って、可動接点31はコイル軸方向Daの他方側へ移動し、固定接点32に当接する。これにより、第1負荷端子41と第2負荷端子42とが電気的に接続される。
【0035】
逆に、コイル巻線26への通電が遮断された場合、すなわち、コイル巻線26が非通電状態とされた場合には、板バネ30の付勢力により、アーマチャプレート29がコア27から離れた状態になる。そのため、可動接点31は、固定接点32からコイル軸方向Daの一方側へ離れると共にストッパ33に対し当接した状態になる。これにより、第1負荷端子41と第2負荷端子42との間の電気的な接続が遮断される。
【0036】
このように、コイル巻線26は、そのコイル巻線26の通電状態に応じて、可動接点31を固定接点32に対し離接動作させる。なお、アーマチャプレート29と可動接点31は、アーマチャプレート29がコア27に吸引されることによって変位するが、固定接点32とストッパ33は変位しない。また、
図2は、コイル巻線26は通電されておらず可動接点31が固定接点32から離れストッパ33に当接した状態を示している。
【0037】
ストッパ33は、板バネ30の自由端部に固定された可動接点31がコイル軸方向Daの一方側へ移動する範囲を規定する。すなわち、ストッパ33は、コイル巻線26が通電されていないときの板バネ30の自由端部および可動接点31の移動範囲を規定する。具体的には、コイル巻線26が通電されていないときには、板バネ30の自由端部または可動接点31が、板バネ30の付勢力により、ストッパ33に対しコイル軸方向Daの他方側から当接する。なお、ストッパ33は、黄銅等の金属材料をプレス成形して構成され、圧入または接着等にて他方側スプール基部24に固定されている。
【0038】
図1、
図2に示されるように、第1負荷端子41、第2負荷端子42、第1コイル端子46、および第2コイル端子47はそれぞれ、ベース51からコイル軸方向Daの他方側へ突き出ている。そして、それらの端子41、42、46、47はそれぞれ、ハンダ付けにより、例えば電気基板11が有する配線パターンに電気的に接続される。また、それらの端子41、42、46、47は、本実施形態では他方側スプール基部24またはベース51に固定されている。
【0039】
図1、
図2に示されるように、第1コイル端子46と第2コイル端子47は、コイル巻線26を電気基板11に電気的に接続するための端子である。そのため、コイル巻線26から延びた一対のリード線の一方は第1コイル端子46に電気的に接続され、その一対のリード線の他方は第2コイル端子47に電気的に接続されている。要するに、第1コイル端子46と第2コイル端子47はそれぞれ、コイル巻線26に対し電気的に接続されている。
【0040】
第1コイル端子46と第2コイル端子47は第1交差方向D1に並んでいる。すなわち、第1交差方向D1はコイル端子46、47の並び方向である。詳細には、第1コイル端子46はコイル軸心CLに対し第1交差方向D1の一方側に配置され、第2コイル端子47はコイル軸心CLに対し第1交差方向D1の他方側に配置されている。
【0041】
上記したようにケース50の内側にはケース内空間50aが形成されているので、そのケース50はケース内空間50aに面している。そのため、ケース50は、そのケース50の内側に、ケース内空間50aに面する空間側表面50bを有している。
【0042】
また、ケース50は樹脂製の部品であるが、詳細には、
図3に示されるように、フィラー60を含有する樹脂で構成された樹脂基材501とその樹脂基材501の表面を覆う表面層502とを有する樹脂部品である。なお、フィラー60は充填剤とも称される。フィラー60としては、例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、およびタルクなどを挙げることができる。
【0043】
また、ケース50とは別の部品であるベース51およびスプール21についても、上記したケース50と同様ことが言える。具体的に、ベース51は、上記したようにケース内空間50aをコイル軸方向Daの他方側から塞いでいるので、ベース51もケース内空間50aに面している。そのため、ベース51も、ケース内空間50aに面する空間側表面51bを有している。
【0044】
また、ベース51も樹脂製の部品であるが、詳細には、
図4に示されるように、フィラー60を含有する樹脂で構成された樹脂基材511とその樹脂基材511の表面を覆う表面層512とを有する樹脂部品である。
【0045】
スプール21は、上記したようにケース内空間50aに収容されているので、スプール21もケース内空間50aに面している。そのため、スプール21も、ケース内空間50aに面する空間側表面21bを有している。
【0046】
また、スプール21も樹脂製の部品であるが、詳細には、
図5に示されるように、フィラー60を含有する樹脂で構成された樹脂基材211とその樹脂基材211の表面を覆う表面層212とを有する樹脂部品である。
【0047】
上記したスプール21、ケース50、およびベース51の樹脂基材211、501、511は、例えばPBTまたはLCPで構成されている。そのPBTとは、Poly butylene terephthalate(すなわち、ポリブチレンテレフタレート)の略であり、LCPとは、Liquid Crystal Polymer(すなわち、液晶ポリマー)の略である。
【0048】
また、スプール21、ケース50、およびベース51の表面層212、502、512は、メッキによって形成された被膜である。従って、その表面層212、502、512は、スプール21、ケース50、およびベース51の何れでも樹脂基材211、501、511に比して格段に薄く形成されている。例えば、何れの表面層212、502、512も銅等の金属を含んで構成されている。
【0049】
また、スプール21、ケース50、およびベース51の何れでも表面層212、502、512はメッキによって形成されたメッキ層であるので、樹脂基材211、501、511の全面を覆うように形成されている。従って、スプール21、ケース50、およびベース51の何れでも、表面層212、502、512は空間側表面21b、50b、51bを形成する。
【0050】
また、スプール21、ケース50、およびベース51において表面層212、502、512は上記したようにメッキ層であるので、基本的にフィラー60を含有せず、含有したとしても僅かである。従って、スプール21、ケース50、およびベース51の何れにおいても、表面層212、502、512におけるフィラー60の含有比率は、樹脂基材211、501、511におけるフィラー60の含有比率と比較して格段に小さい。
【0051】
その樹脂基材211、501、511におけるフィラー60の含有比率は、「その含有比率=樹脂基材が含有するフィラーの質量/樹脂基材の質量」で算出される。また、表面層212、502、512におけるフィラー60の含有比率は、「その含有比率=表面層が含有するフィラーの質量/表面層の質量」で算出される。例えばスプール21、ケース50、およびベース51の何れでも、樹脂基材211、501、511におけるフィラー60の含有比率は30~40%である。
【0052】
なお、スプール21、ケース50、およびベース51と、それらに接触し又はそれらの周りに配置され、通電される金属部品との間の電気的な絶縁は、例えば絶縁シートを介在させ又は十分な間隔をあけて配置するなどして、適切に確保されている。
【0053】
上述したように、本実施形態によれば、ケース内空間50aに面する樹脂部品であるケース50は、フィラー60を含有する樹脂基材501と、その樹脂基材501の表面を覆う表面層502とを有している。そして、その表面層502は、ケース50のうちケース内空間50aに面する空間側表面50bを形成し、表面層502におけるフィラー60の含有比率は、樹脂基材501におけるフィラー60の含有比率よりも小さい。
【0054】
従って、ケース50が有するフィラー60がケース内空間50aへ侵入することが、表面層502によって防止される。そのため、例えば表面層502を有さない
図6のケース80を備える比較例の継電器と比較して、本実施形態ではケース50が有するフィラー60がケース内空間50aへ侵入することを抑制することが可能である。
【0055】
その結果、本実施形態では、例えば、フィラー60に起因した、可動接点31と固定接点32との間の接点不良を抑制することができる。また、アーマチャプレート29の一端部291と第1ヨーク板部281とが互いに接触する摺動箇所など、可動部分の摺動箇所において摺動動作がフィラー60に起因して阻害されること等も、抑制することができる。
【0056】
なお、フィラー60がケース内空間50aへ侵入することが抑制されるという上記の作用効果は、ベース51およびスプール21でも同様に得ることができる。なぜなら、ベース51とスプール21もそれぞれ、フィラー60を含有する樹脂基材211、511と、その樹脂基材211、511の表面を覆う表面層212、512とを有する樹脂部品だからである。
【0057】
また、本実施形態によれば、スプール21、ケース50、およびベース51の表面層212、502、512はそれぞれ、メッキによって形成された被膜である。従って、スプール21、ケース50、およびベース51のそれぞれにおいて、樹脂基材211、501、511の表面に薄い被膜を容易に形成することが可能である。
【0058】
また、樹脂基材211、501、511に用いられる樹脂は、経年により水分を透過してしまうところ、表面層212、502、512はメッキ層であるので、その樹脂基材211、501、511の水分の透過を抑制することができる。そのため、表面層212、502、512が無い場合に比して、経年によるケース内空間50aの湿度上昇が抑えられるので、継電器10の耐氷結性を向上させることができる。
【0059】
その継電器10の耐氷結性の向上とは、ケース内空間50a内での氷結に起因した種々の不具合の発生が抑制されることである。例えば、そのような氷結に起因した種々の不具合は、継電器10の周囲温度が氷点下になった場合などに発生することが想定される。そして、その氷結に起因した種々の不具合としては、例えば、可動接点31と固定接点32との互いの接触面が氷結することにより生じた氷の膜によって可動接点31と固定接点32との電気的な接続が阻害されること等を挙げることができる。
【0060】
(他の実施形態)
(1)上述の実施形態では、
図3~
図5に示すように、スプール21、ケース50、およびベース51の表面層212、502、512は、メッキによって形成された被膜であるが、これは一例である。例えば、それらの表面層212、502、512は、メッキではなく塗装によって形成された被膜であっても差し支えない。
【0061】
このようにしても、フィラー60がケース内空間50aへ侵入することを抑制することが可能である。そして、表面層212、502、512を構成する塗料として、樹脂基材211、501、511よりも透湿性の低い塗料を採用することで、継電器10の耐氷結性を向上させることも可能である。
【0062】
(2)上述の実施形態では、
図3~
図5に示すように、スプール21、ケース50、およびベース51は何れも、表面層212、502、512を有する樹脂部品であるが、これは一例である。例えば、スプール21とケース50とベース51との何れかが、表面層212、502、512を有さない部品として構成されていることも想定できる。
【0063】
また、スプール21、ケース50、ベース51以外の部品が、上記の樹脂基材211、501、511と同様の構成部分と、上記の表面層212、502、512と同様の構成部分とを有し、ケース内空間50aに面していてもよい。
【0064】
(3)上述の実施形態において、スプール21、ケース50、およびベース51の何れでも表面層212、502、512は、樹脂基材211、501、511の全面を覆うように形成されているが、これは一例である。その表面層212、502、512は空間側表面21b、50b、51bを形成していれば、樹脂基材211、501、511の全面を覆っていなくても差し支えない。例えば、ケース50において、ケース内空間50a側とは反対側に設けられケース50の外部へ露出した外側表面には、表面層502が設けられていなくても差し支えない。
【0065】
(4)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0066】
また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
10 継電器
21 スプール(樹脂部品)
31 可動接点(第1接点)
32 固定接点(第2接点)
50 ケース(樹脂部品)
50a ケース内空間
51 ベース(樹脂部品)
21b、50b、51b 空間側表面
211、501、511 樹脂基材
212、502、512 表面層