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特開2024-116904車両用電源装置及び車両用ドアラッチ装置
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  • 特開-車両用電源装置及び車両用ドアラッチ装置 図1
  • 特開-車両用電源装置及び車両用ドアラッチ装置 図2A
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  • 特開-車両用電源装置及び車両用ドアラッチ装置 図3
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  • 特開-車両用電源装置及び車両用ドアラッチ装置 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116904
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】車両用電源装置及び車両用ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20240821BHJP
   E05B 81/82 20140101ALI20240821BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240821BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240821BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240821BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20240821BHJP
   E05B 81/86 20140101ALN20240821BHJP
【FI】
H02J1/00 304E
E05B81/82
B60R16/02 645C
H02J7/00 302C
H02J7/34 G
H02J1/00 306B
H02P29/00
E05B81/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022771
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】高田 祐輔
【テーマコード(参考)】
2E250
5G165
5G503
5H501
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250CC06
2E250CC08
2E250HH01
2E250KK02
2E250LL01
2E250PP04
2E250PP05
2E250RR11
5G165BB02
5G165DA02
5G165EA04
5G165GA09
5G165HA01
5G165LA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA11
5G503DA05
5G503FA06
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD06
5H501AA20
5H501CC04
5H501HA04
5H501HA15
5H501HB20
5H501LL23
5H501MM11
5H501PP10
(57)【要約】
【課題】車載の電気モータを安定して作動させることができる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置1が、バックアップ電源10と、バックアップ電源電圧Vbuを所定電圧Vbstに昇圧する昇圧部11と、バッテリ電圧Vbと所定電圧Vbstとの一方に基づいて電気モータ2を駆動するモータ駆動部12と、バッテリ9とモータ駆動部12との間の導通可否を切り替えるスイッチング部13と、バックアップ電源電圧Vbuを検出する電圧検出部16と、昇圧部11及びスイッチング部13を制御する制御部19とを備える。制御部19は、電気モータ2の起動指令に応じてバックアップ電源電圧Vbuが閾値Vt以上であるか否かを判断し、バックアップ電源電圧Vbuが閾値Vt以上である場合に、バッテリ9をモータ駆動部12から遮断するようにスイッチング部13を制御すると共に、バックアップ電源電圧Vbuを昇圧するように昇圧部11を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアップ電源と、
前記バックアップ電源の電圧であるバックアップ電源電圧を所定電圧に昇圧する昇圧部と、
車載のバッテリの電圧と、前記昇圧部から出力される前記所定電圧とのいずれか一方に基づき、車載の電気モータを駆動するモータ駆動部と、
前記バッテリと前記モータ駆動部との間の導通可否を切り替えるスイッチング部と、
前記バックアップ電源電圧を検出する電圧検出部と、
前記昇圧部及び前記スイッチング部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記電気モータの起動指令に応じて、前記電圧検出部で検出された前記バックアップ電源電圧が所定の閾値以上であるか否かを判断し、
前記バックアップ電源電圧が前記閾値以上である場合に、前記バッテリを前記モータ駆動部から遮断するように前記スイッチング部を制御するとともに、前記バックアップ電源電圧を昇圧するように前記昇圧部を制御する、
車両用電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電圧検出部で検出された前記バックアップ電源電圧が前記閾値未満である場合に、前記バッテリを前記モータ駆動部と導通させるように前記スイッチング部を制御するとともに、前記バックアップ電源電圧を昇圧しないように前記昇圧部を制御する、
請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記バッテリを、前記スイッチング部を介して前記モータ駆動部に接続するバッテリ電圧供給線と、
前記バックアップ電源を、前記昇圧部を介して前記モータ駆動部に接続するブースト電圧供給線と、
前記昇圧部に設けられ、電流が前記ブースト電圧供給線を介して前記バックアップ電源から前記モータ駆動部に向かう一方向にのみ流れることを許容するダイオードと、
を更に備える、請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記閾値は、前記バックアップ電源の定格電圧以下、且つ前記昇圧部の作動に必要とされる最低動作電圧以上である、
請求項1から3のいずれかに記載の車両用電源装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の車両用電源装置と、
前記車両用電源装置によって制御される電気モータと、
車両のドアに取り付けられ、前記電気モータによって駆動されるラッチ機構と、
を備える、車両用ドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源装置、及びこれを備える車両用ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電気モータでドアを施錠及び解錠する車両用ドアロックシステムを開示している。このシステムは、車載のバッテリの電力で充電されるバックアップ電源を備える。バッテリから電気モータへの給電が遮断されていない場合、すなわち正常時には、常にバッテリの電力で電気モータを作動させる。バッテリから電気モータへの給電が遮断された場合、すなわち緊急時には、バックアップ電源の電力で電気モータを作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-144441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載のバッテリの電圧は定格電圧から変動する。そのため、バッテリが電気モータの電源として常用される正常時、電気モータが安定して作動できないおそれがある。
【0005】
本発明は、車載の電気モータを安定して作動させることができる車両用電源装置、及びこれを備える車両用ドアラッチ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、バックアップ電源と、前記バックアップ電源の電圧であるバックアップ電源電圧を所定電圧に昇圧する昇圧部と、車載のバッテリの電圧と、前記昇圧部から出力される前記所定電圧とのいずれか一方に基づき、車載の電気モータを駆動するモータ駆動部と、前記バッテリと前記モータ駆動部との間の導通可否を切り替えるスイッチング部と、前記バックアップ電源電圧を検出する電圧検出部と、前記昇圧部及び前記スイッチング部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電気モータの起動指令に応じて、前記電圧検出部で検出された前記バックアップ電源電圧が所定の閾値以上であるか否かを判断し、前記バックアップ電源電圧が前記閾値以上である場合に、前記バッテリを前記モータ駆動部から遮断するように前記スイッチング部を制御すると共に、前記バックアップ電源電圧を昇圧するように前記昇圧部を制御する、車両用電源装置を提供する。
【0007】
本発明の一態様は、上記の車両用電源装置と、前記車両用電源装置によって制御される電気モータと、車両のドアに取り付けられ、前記電気モータによって駆動されるラッチ機構と、を備える、車両用ドアラッチ装置を提供する。
【0008】
上記構成によれば、バックアップ電源電圧が所定の閾値以上であれば、バックアップ電源電圧が所定電圧に昇圧され、この所定電圧がモータ駆動部に供給される。これにより、車載のバッテリの電圧が変動していたとしても、その影響を受けずに、バックアップ電源からの電力によって電気モータを安定して作動させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車載の電気モータを安定して作動させることができる車両用電源装置、及びこれを備える車両用ドアラッチ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る電源装置及びこれを備えるドアラッチ装置を示す概念図。
図2A】電源装置のスイッチング部の一例を示す回路図。
図2B】スイッチング部の他例を示す回路図。
図3】電源装置の昇圧部を示す回路図。
図4A】電源装置の制御部により実行される処理を示すフローチャート。
図4B】電源装置の制御部により実行される処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。同一の又は対応する要素には全図を通じて同一の符号を付し、詳細な説明の重複を省略する。
【0012】
図1を参照して、本実施形態に係る車両用のドアラッチ装置100は、車両用の電源装置1と、電源装置1によって制御される電気モータ2と、車両のドア(不図示)に取り付けられ、電気モータ2によって駆動されるラッチ機構3とを備える。
【0013】
電気モータ2は、正逆回転可能な直流モータである。ラッチ機構3は、フォーク3a及びクロー3bを有する。フォーク3aは、車体に設けられたストライカ4と係合するラッチ位置と、該係合が解除されるオープン位置との間で回転変位可能である。クロー3bは、フォーク3aをラッチ位置に保持する保持位置と、該保持が解除される非保持位置との間で回転変位可能である。
【0014】
ドアラッチ装置100の施錠動作及び解錠動作を利用者が操作する操作部5の一例として、車両のドアには、ドアロックスイッチが設けられている。操作部5には、ドアロックスイッチの他、車両外側に設置されたアウタハンドル、車両内側に設置されたインナハンドル、及びスマートキーに設置されたボタンスイッチ等が含まれる。操作部5が操作されると、操作信号、あるいは電気モータ2の起動指令が、操作部5から出力される。起動指令に応じて、電気モータ2が作動し、クロー3bが回転駆動される。クロー3bの非保持位置から保持位置への変位によりドアが施錠状態にされ、クロー3bの保持位置から非保持位置への変位によりドアが解錠状態にされる。
【0015】
電源装置1は、車載のバッテリ9と接続され、バッテリ9の電力を利用して電気モータ2を駆動できる。バッテリ9は、車両の作動に必要な電力を蓄電し、必要に応じて原動機及び電装品等の車載機器に給電する。バッテリ9の蓄電量が低下すると、例えば原動機により回転駆動される発電機又は回生ブレーキにより、バッテリ9が充電される。バッテリ9は、蓄電された電力が出力される出力端子9aを有する。バッテリ9の定格電圧は、DC12Vである。以下、バッテリ9の電圧を「バッテリ電圧Vb」と称する。
【0016】
電源装置1は、バックアップ電源10、昇圧部11、モータ駆動部12、スイッチング部13、充電スイッチ14、レギュレータ15、電圧検出部16、及び制御部19等を備える。
【0017】
バックアップ電源10は、電力が出力又は入力される入出力端子10aを有し、充放電可能である。バックアップ電源10は、一例としてキャパシタによって構成される。図示のとおり、2個のキャパシタが直列に接続されていてもよい。各キャパシタの電圧は、放電により降下し、満充電時に例えばDC2.7Vである。満充電時におけるバックアップ電源10の全体としての電圧、すなわちバックアップ電源10の定格電圧は、例えばDC5.4Vである。以下、バックアップ電源10の全体としての電圧を「バックアップ電源電圧Vbu」と称する。
【0018】
昇圧部11は、バックアップ電源電圧Vbuを所定のブースト電圧Vbstに昇圧する。ブースト電圧Vbstは、昇圧部11に入力されるバックアップ電源電圧Vbuの値に関わらず一定であり、例えばDC10Vである。昇圧部11は、一例としてインダクタ式の昇圧回路によって構成されている(図3を参照)。
【0019】
モータ駆動部12は、電力が供給される入力端子12aと、電気モータ2に電力を供給する出力端子12bと、制御部19からの制御信号が入力される制御端子12cとを有する。モータ駆動部12は、制御信号に基づいて電気モータ2を正転又は逆転させるように電気モータ2に給電し、電気モータ2を駆動する。
【0020】
バッテリ9の出力端子9aは、バッテリ電圧供給線21を介し、モータ駆動部12の入力端子12aに接続されている。バッテリ電圧供給線21上に、スイッチング部13が設けられている。スイッチング部13は、バッテリ9とモータ駆動部12との間の導通可否を切り替える。スイッチング部13が閉であれば、バッテリ電圧Vbを入力端子12aに供給可能となる。スイッチング部13が開であれば、バッテリ9からモータ駆動部12への給電が遮断される。スイッチング部13の動作は、電子的に制御される。スイッチング部13は、ノーマルオープン型である。
【0021】
バックアップ電源10の入出力端子10aは、ブースト電圧供給線22を介し、モータ駆動部12の入力端子12aに接続されている。昇圧部11は、ブースト電圧供給線22上に設けられている。
【0022】
モータ駆動部12は、入力端子12aに入力されるバッテリ電圧Vb及びブースト電圧Vbstのいずれか一方に基づいて、電気モータ2を駆動する。
【0023】
バッテリ9の出力端子9aは、充電線23を介し、バックアップ電源10の入出力端子10aに接続されている。一例として、充電線23は、ブースト電圧供給線22のうち昇圧部11よりもバックアップ電源10側の接続点に接続され、入出力端子10aから当該接続点までのラインは、線22,23の共用部である。充電線23(の共用部以外の部分)上には、充電スイッチ14が設けられている。充電スイッチ14が閉であれば、スイッチング部13の状態に関わらず、バッテリ9の電力でバックアップ電源10が充電される。充電スイッチ14が開であれば、バッテリ9からバックアップ電源10への給電が遮断される。充電スイッチ14が開であれば、バックアップ電源10は放電可能であり、ブースト電圧供給線22を介してバックアップ電源10からモータ駆動部12に給電可能である。充電スイッチ14の動作は、電子的に制御される。充電スイッチ14は、ノーマルオープン型である。
【0024】
バッテリ9の出力端子9aは、制御電源線24を介し、制御部19に接続されている。一例として、制御電源線24は、充電線23のうち充電スイッチ14よりも出力端子9a側の接続点で、充電線23に接続されており、出力端子9aから当該接続点までのラインは、線23,24の共用部である。制御電源線24(の共用部以外の部分)上には、レギュレータ15が設けられている。バッテリ9からの電力がレギュレータ15で5Vに降圧されて制御部19に供給される。スイッチング部13及び充電スイッチ14の状態に関わらず、制御部19は、バッテリ9を電源として作動可能である。
【0025】
バックアップ電源10の入出力端子10aは、電圧検出線25を介し、制御部19に接続されている。一例として、電圧検出線25は、ブースト電圧供給線22のうち昇圧部11よりもバックアップ電源10側の接続点に接続され、入出力端子10aから当該接続点までのラインは、線22,25の共用部である。制御部19には、電圧検出線25を介して供給されるバックアップ電源電圧Vbuを検出する電圧検出部16の回路が実装されている。制御部19は、DC5Vで作動する一方、バックアップ電源電圧Vbuは、DC5V以上になり得る。そこで、電圧検出部16は、バックアップ電源電圧Vbuを分圧する分圧回路(不図示)を備える。電圧検出部16は、分圧回路によって分圧された電圧値を検出し、検出値に分圧比の逆数を乗算することによってバックアップ電源電圧Vbuを算出する。これにより、バックアップ電源電圧VbuがDC5V以上である場合でも、バックアップ電源電圧VbuがDC5Vであるとの誤検出を回避でき、電圧検出部16が正しい値を検出できる。
【0026】
制御部19は、CPU、メモリ、及び入出力インタフェースを備えたコンピュータと、コンピュータに実装されたソフトウェアとにより実現される。
【0027】
制御部19は、操作信号線36を介して操作部5に接続されており、衝突信号線37を介して車両のECU6に接続されている。制御部19は、これら要素から電源装置1の制御に必要な情報あるいは信号が入力される。利用者が操作部5を操作すると、操作部5は、操作信号、あるいは電気モータ2の起動指令を制御部19に出力する。ECU6は、車載の加速度センサ及びミリ波レーダ等の衝突センサ7の検出信号に基づき、車両に衝突状態にあるか否かを判断する。ECU6は、車両が衝突状態にあると判断すると、制御部19に衝突信号を出力する。車両が衝突状態であれば、車載のバッテリ9の故障あるいは断線が生じる等、バッテリ9を電源として使用することが困難もしくは不可能となる。
【0028】
制御部19は、昇圧制御線31を介して昇圧部11に接続される。制御部19は、駆動制御線32を介してモータ駆動部12の制御端子12cに接続される。制御部19は、スイッチング制御線33を介してスイッチング部13に接続される。制御部19は、充電制御線34を介して充電スイッチ14と接続されている。制御部19は、昇圧部11、モータ駆動部12、スイッチング部13、及び充電スイッチ14に制御信号を出力し、これら要素の動作を制御する。
【0029】
図2Aは、スイッチング部13の一例を示す。本例では、スイッチング部13が、入力端子13a、出力端子13b、制御端子13c、1つのnpn型トランジスタ13d、及び一対のPチャネル型FET(電解効果トランジスタ)13eを有する。入力端子13aは、バッテリ9の出力端子9aに接続され、出力端子13bは、モータ駆動部12の入力端子12aに接続され、スイッチング部13内における端子13a,13b間のラインは、バッテリ電圧供給線21の一部を構成する。制御端子13cは、スイッチング制御線33を介して制御部19に接続される。FET13eは、そのボディダイオードが互いに反対向きとなるようにして、端子13a,13b間のライン上で直列に接続される。トランジスタ13dのベースは、制御端子13cに接続され、エミッタは接地され、コレクタは一対のFET13eに並列接続される。
【0030】
制御端子13cに制御信号としてオン信号が入力されると、スイッチング部13が閉となり、入力端子13aが出力端子13bと導通する。制御端子13cに制御信号としてオフ信号が入力される(別の言い方では、制御信号が入力されていなければ)、スイッチング部13は開となり、入力端子13aは出力端子13bから遮断される。
【0031】
図2Bは、スイッチング部13の他例を示す。本例では、スイッチング部13が、一対のFET13e(図2Aを参照)に代えて、1つのリレー13fを有する。このスイッチング部13も、制御端子13cに入力される制御信号に応じて、上記同様にして作動する。図2Aのスイッチング部13は、図2Bのものと比べ、スイッチング動作がより静粛である点で有益である。
【0032】
図3は、インダクタ(コイル)を使用した昇圧回路によって構成される昇圧部11を示す。昇圧部11は、昇圧チョッパ回路40及び分圧回路46を有する。分圧回路46は、昇圧チョッパ回路40から出力されたブースト電圧Vbstを検出するための分圧を行い、分圧の結果として得られる電圧検出信号を出力する。
【0033】
昇圧部11は、入力端子49a、出力端子49b、制御端子49c、IC入力端子49d、及び第2出力端子49eを有する。入力端子49aは、バックアップ電源10の入出力端子10aに接続され、出力端子49bは、モータ駆動部12の入力端子12aに接続される。昇圧部11内における端子49a,49b間のラインは、ブースト電圧供給線22の一部を構成する。
【0034】
昇圧チョッパ回路40は、一般的なものであり、昇圧IC41、コイル42、ダイオード43、コンデンサ44、及び電解効果トランジスタ(FET)45を有する。コイル42及びダイオード43が、端子49a,49b間のライン上に入力端子49a側からこの順番で設けられている。ダイオード43は、逆流防止用である。ダイオード43は、バックアップ電源10からモータ駆動部12に向かう一方向にのみ電流が流れるのを許容する。コンデンサ44は、当該ラインのうちダイオード43よりも出力端子49b側の部分に接続されている。FET45は、当該ラインのうちコイル42とダイオード43との間の部分に接続されている。分圧回路46は、当該ラインのうちコンデンサ44との接続点よりも出力端子49b側の部分に接続されている。
【0035】
昇圧IC41は、IC入力端子49dに入力される入力電圧、FET45から入力されるフィードバック信号(電流検出信号)、及び分圧回路46から出力されるフィードバック信号(電圧検出信号)に基づいて、FET45のスイッチング動作を制御する。それにより、入力端子49aに入力されるバックアップ電源電圧Vbuをブースト電圧Vbstに昇圧させる。ブースト電圧Vbstは、端子49a,49b間のラインのうちコンデンサ44との接続点よりも出力端子49b側で得られる。
【0036】
ブースト電圧Vbstは、入力端子49aに入力されるバックアップ電源電圧Vbuに関わらず一定値であり、例えばDC10Vである。昇圧IC41は、入力されるバックアップ電源電圧Vbuに関わらずブースト電圧Vbstが一定値となるように、FET45のスイッチング動作を制御する。
【0037】
図1の全体回路図を併せて参照して、本実施形態において、IC入力端子49dは、昇圧IC電源線26を介してバックアップ電源10の入出力端子10aに接続されている。そのため、昇圧IC41に入力される入力電圧は、バックアップ電源電圧Vbuである。IC入力端子49d及び昇圧IC電源線26は、省略されてもよい。代わりに、昇圧部11内に、入力端子49aとコイル42との間のラインから分岐して昇圧IC41に入力電圧としてのバックアップ電源Vbuを供給する電源線が設けられてもよい。
【0038】
昇圧チョッパ回路40は、昇圧IC41への入力電圧がある下限値を下回ると、適切に昇圧動作を行えなくなる。以下、この下限値、すなわち、昇圧部11が昇圧動作を行うために最低限必要な昇圧部11の昇圧IC41への入力電圧を「最低動作電圧」という。最低動作電圧は、例えばDC3.0Vである。入力電圧としてのバックアップ電源電圧Vbuは、使用状況あるいは車両の周辺環境等により、最低動作電圧を上回っていることもあれば下回っていることもある。
【0039】
第2出力端子49eは、端子49a,49b間のラインと接続され、ブースト電圧Vbstが供給される。第2出力端子49eは、バックアップ制御電源線27を介し、レギュレータ15に接続されている。一例として、バックアップ制御電源線27は、バッテリ9の出力端子9aと接続され、出力端子9aからレギュレータ15までのラインは、線24,27の共用部である。これにより、バッテリ9から制御部19への電力供給が困難な場合であって、尚且つバックアップ電源電圧Vbuが制御部19の動作電圧(5.0V)未満に降圧している場合においても、ブースト電圧Vbstに基づいて制御部19を作動させることが可能となる。ブースト電圧Vbstは、動作電圧よりも高圧であり、レギュレータ15でこの高圧が調整されるため、制御部19は安定して作動できる。
【0040】
図4A及び図4Bは、制御部19により実行される処理を示す。図4Aを参照して、起動指令が操作部5から制御部19に出力されると(ステップS1)、制御部19は、ECU6からの衝突信号の有無に基づいて、車両が衝突状態にあるか否かを判断する(ステップS2)。車両が衝突状態にあれば(S2:YES)、バッテリ9からの電力で電気モータ2を駆動することができない。制御部19は、バックアップ電源10の電力で電気モータ2を駆動する「緊急時モード」を実行する(ステップS3)。本書では、緊急時モードS3の処理内容に関する詳細な説明を割愛する。
【0041】
車両が衝突状態になければ(S2:NO)、制御部19は、バッテリ9の電力又はバックアップ電源10の電力で電気モータ2を駆動する「正常時モード」を実行する(ステップS4)。
【0042】
図4Bを参照して、正常時モードS4が開始すると、電圧検出部16がバックアップ電源電圧Vbuを検出する(ステップS11)。制御部19は、検出されたバックアップ電源電圧Vbuが、所定の閾値Vt以上であるか否かを判断する(ステップS12)。閾値Vtは、制御部19を構成するメモリに予め記憶されている。閾値Vtは、バックアップ電源10の定格電圧以下であり、昇圧部11の最低動作電圧以上である。バックアップ電源10の定格電圧は、例えばDC5.4Vであり、昇圧部11の最低動作電圧は、例えばDC3.0Vである。閾値Vtは、この2値間に設定されていればよく、好ましくは最低動作電圧に極力近い値に設定される。閾値Vtは、例えばDC3Vである。
【0043】
バックアップ電源電圧Vbuが閾値Vt以上であれば(S12:YES)、制御部19は、バッテリ9をモータ駆動部12から遮断するようにスイッチング部13を制御する(ステップS21)。同時に、制御部19は、バックアップ電源電圧Vbuを所定のブースト電圧Vbstに昇圧するように昇圧部11を制御する(ステップS22)。
【0044】
ステップS21に関し、スイッチング部13がノーマルオープン型である場合、所定電圧値の制御信号が出力されればスイッチング部13が閉じ、制御信号が出力されなければスイッチング部13が開く。ステップS21の直前には、スイッチング部13は開いており、制御信号は出力されていない。ステップS21の処理「スイッチング部13を制御する」には、制御部19が単にスイッチング部13に制御信号を出力しない状態を継続することも含まれる。
【0045】
ステップS22に関し、昇圧部11の入力電圧としてのバックアップ電源電圧Vbuは、閾値Vt以上であるから、昇圧部11の最低動作電圧以上である。そのため、昇圧部11(特に、その昇圧IC41)は、問題なく昇圧動作を行える。入力電圧の値に関わらず、昇圧部11は、一定のブースト電圧Vbstを出力する。
【0046】
ステップS21,S22の結果、ブースト電圧Vbstがモータ駆動部12の入力端子12aに供給される。制御部19は、モータ駆動部12に制御信号を出力し(ステップS23)、それにより、モータ駆動部12は、ブースト電圧Vbstに基づいて電気モータ2を駆動する(ステップS24)。ブースト電圧Vbstは一定である。そのため、電気モータ2が安定して作動できる。
【0047】
一方、バックアップ電源電圧Vbuが閾値Vt未満であれば(S12:NO)、制御部19は、バッテリ9をモータ駆動部12と導通させるようにスイッチング部13を制御する(ステップS31)。同時に、制御部19は、バックアップ電源電圧Vbuを昇圧しないように昇圧部11を制御する(ステップS32)。
【0048】
ステップS31に関し、制御部19は、スイッチング部13に制御信号を出力し、それにより、スイッチング部13が閉じる。ステップS32に関し、ステップS32の直前には、制御信号が昇圧部11に出力されておらず、昇圧部11は昇圧動作を行っていない。ステップS32の処理「バックアップ電源電圧Vbuを昇圧しないように昇圧部11を制御する」には、制御部19が単に昇圧部11に制御信号を出力しない状態を継続することも含まれる。
【0049】
ステップS31,S32の結果、バッテリ電圧Vbがモータ駆動部12の入力端子12aに供給される。この後の処理は、バックアップ電源圧Vbuが閾値Vt以上である場合と同様であり、ステップS23,S24に進む。バックアップ電源電圧Vbuが低く、昇圧部11が適切に作動し得ない場合であっても、車載のバッテリ9を使用して電気モータ2を起動指令に応じて作動させることが可能となる。
【0050】
バッテリ9からの電流は、モータ駆動部12の入力端子12aからブースト電圧供給線22を逆流する。しかし、昇圧部11は、バックアップ電源10からモータ駆動部12に向かう一方向にのみ電流が流れるのを許容するダイオード43を有する。そのため、この逆流は、ダイオード43で阻止され、昇圧部11に対してバックアップ電源10側の要素に影響を及ぼさない。
【0051】
制御部19が、充電スイッチ14に制御信号を出力し、充電スイッチ14が閉じられてもよい。これにより、バックアップ電源10が充電され、バックアップ電源電圧Vbuを回復できる。バッテリ9を使用して電気モータ2を駆動しながら、この充電が行われてもよい。充電線23の一部がブースト電圧供給線22と共用される関係上、バッテリ9からの電流は、充電線23を介してブースト電圧供給線22にも流れる。この電流は、昇圧部11のダイオード43によって許容される方向にブースト電圧供給線22を流れるものの、このダイオード43で電圧降下が生じる。そのため、充電スイッチ14が閉じていても、バッテリ電圧供給線21を介した給電による電気モータ2の作動には影響が及ばない。すなわち、バッテリ9を利用して電気モータ2を作動させることと、バッテリ9の電力でバックアップ電源10を充電することとを支障なく並行できる。
【0052】
上記の実施形態の構成は、本発明の範囲内で適宜変更、追加、又は削除可能である。
【0053】
ステップS11のバックアップ電源電圧Vbuの検出は、ステップS1の起動指令の出力およびステップS2の衝突状態の判定に関わらず、定期的に実行されるようにしてもよい。
【0054】
電源装置1は、ドアラッチ装置100以外の車載電動装置に適用できる。このような車載電動装置には、例えば、電動サイドミラー、パワーウィンドウ、電動燃料キャップ、電動テールゲート、電動スライドドア等が含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 電源装置
2 電気モータ
3 ラッチ機構
9 バッテリ
10 バックアップ電源
11 昇圧部
12 モータ駆動部
13 スイッチング部
16 電圧検出部
19 制御部
21 バッテリ電圧供給線
22 ブースト電圧供給線
43 ダイオード
100 ドアラッチ装置
Vb バッテリ電圧
Vbu バックアップ電源電圧
Vbst ブースト電圧
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B