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特開2024-116905車両用電源装置及び車両用ドアラッチ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116905
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】車両用電源装置及び車両用ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20240821BHJP
   E05B 81/82 20140101ALI20240821BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240821BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20240821BHJP
   E05B 81/86 20140101ALN20240821BHJP
【FI】
H02J1/00 309B
E05B81/82
B60R16/02 645C
H02J1/00 304E
H02P29/00
E05B81/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022772
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】高田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】浅井 邦仁
【テーマコード(参考)】
2E250
5G165
5H501
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250CC06
2E250CC08
2E250HH01
2E250JJ31
2E250KK02
2E250LL01
2E250PP04
2E250PP05
2E250RR11
5G165BB02
5G165BB11
5G165DA02
5G165DA07
5G165EA02
5G165GA09
5G165HA03
5G165LA01
5H501AA20
5H501CC04
5H501HA04
5H501HA15
5H501HB20
5H501LL23
5H501MM11
5H501PP10
(57)【要約】
【課題】バックアップ電源が機能できる時間を長く確保する。
【解決手段】電源装置1は、バックアップ電源10と、車載の電気モータ2を駆動するモータ駆動部12と、入力電圧に基づいて作動する昇圧チョッパ回路40を有し、バックアップ電源電圧Vbuを第1電圧Vbst1に昇圧し、第1電圧Vbst1をモータ駆動部12に出力する第1昇圧部11Aと、バックアップ電源10を第2電圧Vbst2に昇圧し、第2電圧Vbst2を昇圧チョッパ回路40の入力電圧として第1昇圧部11Aに出力する第2昇圧部11Bとを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアップ電源と、
車載の電気モータを駆動するモータ駆動部と、
入力電圧に基づいて作動する昇圧回路を有し、前記バックアップ電源の電圧であるバックアップ電源電圧を第1電圧に昇圧し、前記第1電圧を前記モータ駆動部に出力する第1昇圧部と、
前記バックアップ電源電圧を第2電圧に昇圧し、前記第2電圧を前記昇圧回路の前記入力電圧として前記第1昇圧部に出力する第2昇圧部と、
を備える、車両用電源装置。
【請求項2】
前記第2昇圧部が、チャージポンプによって構成される、
請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記チャージポンプは、前記第2電圧が前記バックアップ電源電圧の2倍となるように、前記バックアップ電源電圧を昇圧する、
請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
第1最低動作電圧とは、前記昇圧回路の前記入力電圧として、前記第1昇圧部に昇圧動作を行わせるために最低限必要な電圧であり、
第2最低動作電圧とは、前記第2昇圧部の入力電圧として、前記第2昇圧部に昇圧動作を行わせるために最低限必要な電圧であり、
前記第2最低動作電圧が、前記第1最低動作電圧の半分値以上である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用電源装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用電源装置と、
前記車両用電源装置によって制御される電気モータと、
車両のドアに取り付けられ、前記電気モータによって駆動されるラッチ機構と、
を備える、車両用ドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源装置、及びこれを備える車両用ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電気モータでドアを施錠及び解錠する車両用ドアロック装置を開示している。この装置には、車載のバッテリで充電されるバックアップ電源が設けられている。車両の衝突等によりバッテリから電気モータへの給電が遮断された場合、すなわち緊急時には、バックアップ電源が電気モータの電源として使用される。バックアップ電源電圧は、昇圧回路で昇圧されたうえで電気モータに供給される。それにより、電気モータの作動に必要な電力が電気モータに供給できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-231269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昇圧回路への入力電圧が最低動作電圧以上でなければ、昇圧回路が適切に作動できず、電気モータが作動できない。他方、車両に衝突が生じた後、バックアップ電源電圧は、自己放電により徐々に低下していく。車両が置かれている環境によっては、自己放電が促進され、電圧が速く低下する場合もある。すると、バックアップ電源が機能できる時間(すなわち、車両に衝突が生じてから、バックアップ電源電圧が最低動作電圧を下回って電気モータが作動し得なくなるまでの時間)を十分に確保できない。
【0005】
本発明は、バックアップ電源が機能できる時間を長く確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、バックアップ電源と、車載の電気モータを駆動するモータ駆動部と、入力電圧に基づいて作動する昇圧回路を有し、前記バックアップ電源の電圧であるバックアップ電源電圧を第1電圧に昇圧し、前記第1電圧を前記モータ駆動部に出力する第1昇圧部と、前記バックアップ電源電圧を第2電圧に昇圧し、前記第2電圧を前記昇圧回路の前記入力電圧として前記第1昇圧部に出力する第2昇圧部と、を備える、車両用電源装置を提供する。
【0007】
本発明の一態様は、上記の車両用電源装置と、前記車両用電源装置によって制御される電気モータと、車両のドアに取り付けられ、前記電気モータによって駆動されるラッチ機構と、を備える、車両用ドアラッチ装置を提供する。
【0008】
上記構成によれば、バックアップ電源電圧は、まず第2昇圧部で第2電圧に昇圧され、この第2電圧が、第1昇圧部の昇圧回路への入力電圧となる。第1昇圧部の昇圧回路は、このように昇圧された電圧を入力電圧として作動し、第1昇圧部は、バックアップ電源電圧を第1電圧に昇圧し、この第1電圧をモータ駆動部に出力する。バックアップ電源電圧が、バックアップ電源の自己放電により第1昇圧部の最低動作電圧を下回っていても、第2昇圧部の作用により、昇圧回路への入力電圧がバックアップ電源電圧よりも高くなり、第1昇圧部が適切に作動し得る。したがって、バックアップ電源電圧が電気モータの電源として機能できる時間がより長くなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バックアップ電源が機能できる時間を長く確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る電源装置及びこれを備えるドアラッチ装置の概念図。
図2】電源装置の第1昇圧部及び第2昇圧部を示す回路図。
図3】電源装置の制御部によって実行される処理を示すフローチャート。
図4】バックアップ電源電圧の経時変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。同一の又は対応する要素には全図を通じて同一の符号を付し、詳細な説明の重複を省略する。
【0012】
図1を参照して、本実施形態に係る車両用のドアラッチ装置100は、車両用の電源装置1と、電源装置1によって制御される電気モータ2と、車両のドア(不図示)に取り付けられ、電気モータ2によって駆動されるラッチ機構3とを備える。
【0013】
電気モータ2は、正逆回転可能な直流モータである。ラッチ機構3は、フォーク3a及びクロー3bを有する。フォーク3aは、車体に設けられたストライカ4と係合するラッチ位置と、該係合が解除されるオープン位置との間で回転変位可能である。クロー3bは、フォーク3aをラッチ位置に保持する保持位置と、該保持が解除される非保持位置との間で回転変位可能である。
【0014】
ドアラッチ装置100の施錠動作及び解錠動作を利用者が操作する操作部5の一例として、車両のドアには、ドアロックスイッチが設けられている。操作部5には、ドアロックスイッチの他、車両外側に設置されたアウタハンドル、車両内側に設置されたインナハンドル、及びスマートキーに設置されたボタンスイッチ等が含まれる。操作部5が操作されると、操作信号、あるいは電気モータ2の起動指令が、操作部5から出力される。起動指令に応じて、電気モータ2が作動し、クロー3bが回転駆動される。クロー3bの非保持位置から保持位置への変位によりドアが施錠状態にされ、クロー3bの保持位置から非保持位置への変位によりドアが解錠状態にされる。
【0015】
電源装置1は、車載のバッテリ9と接続され、バッテリ9の電力を利用して電気モータ2を駆動できる。バッテリ9は、車両の作動に必要な電力を蓄電し、必要に応じて原動機及び電装品等の車載機器に給電する。バッテリ9の蓄電量が低下すると、例えば原動機により回転駆動される発電機又は回生ブレーキにより、バッテリ9が充電される。バッテリ9は、蓄電された電力が出力される出力端子9aを有する。バッテリ9の定格電圧は、DC12Vである。以下、バッテリ9の電圧を「バッテリ電圧Vb」と称する。
【0016】
電源装置1は、バックアップ電源10、第1昇圧部11A、第2昇圧部11B、モータ駆動部12、スイッチング部13、充電スイッチ14、レギュレータ15、電圧検出部16、及び制御部19等を備える。
【0017】
バックアップ電源10は、電力が出力又は入力される入出力端子10aを有し、充放電可能である。バックアップ電源10は、一例としてキャパシタによって構成される。図示のとおり、2個のキャパシタが直列に接続されていてもよい。各キャパシタの電圧は、放電により降下し、満充電時に例えばDC2.7Vである。満充電時におけるバックアップ電源10の全体としての電圧、すなわちバックアップ電源10の定格電圧VbuR(図4を参照)は、例えばDC5.4Vである。以下、バックアップ電源10の全体としての電圧を「バックアップ電源電圧Vbu」と称する。
【0018】
第1昇圧部11Aは、昇圧対象であるバックアップ電源電圧Vbuが入力される入力端子49aと、昇圧回路(昇圧チョッパ回路40の昇圧IC41)の入力電圧が入力されるIC入力端子49dとを有する。第1昇圧部11Aは、入力端子49aに入力されたバックアップ電源電圧Vbuを所定の第1電圧Vbst1に昇圧する。第1電圧Vbst1は、入力端子49aに入力されるバックアップ電源電圧Vbuの値に関わらず一定であり、例えばDC10Vである。第1昇圧部11Aは、一例としてインダクタを使用した昇圧回路によって構成されている(図2を参照)。
【0019】
第2昇圧部11Bは、バックアップ電源電圧Vbuを所定の第2電圧Vbst2に昇圧する。第2電圧Vbst2は、第2昇圧部11Bに入力されるバックアップ電源電圧Vbuの整数倍であり、例えば2倍である。第2昇圧部11Bは、一例としてキャパシタを使用した昇圧回路によって構成され(図2を参照)、チャージポンプと称される。第2電圧Vbst2は、第2昇圧部11Bから出力され、第1昇圧部11AのIC入力端子49dに入力される。
【0020】
モータ駆動部12は、電力が供給される入力端子12aと、電気モータ2に電力を供給する出力端子12bと、制御部19からの制御信号が入力される制御端子12cとを有する。モータ駆動部12は、制御信号に基づいて電気モータ2を正転又は逆転させるように電気モータ2に給電し、電気モータ2を駆動する。
【0021】
バッテリ9の出力端子9aは、バッテリ電圧供給線21を介し、モータ駆動部12の入力端子12aに接続されている。バッテリ電圧供給線21上に、スイッチング部13が設けられている。スイッチング部13は、バッテリ9とモータ駆動部12との間の導通可否を切り替える。スイッチング部13が閉であれば、バッテリ電圧Vbを入力端子12aに供給可能となる。スイッチング部13が開であれば、バッテリ9からモータ駆動部12への給電が遮断される。スイッチング部13の動作は、電子的に制御される。スイッチング部13は、ノーマルオープン型である。
【0022】
バックアップ電源10の入出力端子10aは、ブースト電圧供給線22を介し、モータ駆動部12の入力端子12aに接続されている。第1昇圧部11Aは、ブースト電圧供給線22上に設けられている。
【0023】
モータ駆動部12は、入力端子12aに入力されるバッテリ電圧Vb及び第1電圧Vbst1のいずれか一方に基づいて、電気モータ2を駆動する。
【0024】
バッテリ9の出力端子9aは、充電線23を介し、バックアップ電源10の入出力端子10aに接続されている。一例として、充電線23は、ブースト電圧供給線22のうち第1昇圧部11Aよりもバックアップ電源10側の接続点に接続され、入出力端子10aから当該接続点までのラインは、線22,23の共用部である。充電線23(の共用部以外の部分)上には、充電スイッチ14が設けられている。充電スイッチ14が閉であれば、スイッチング部13の状態に関わらず、バッテリ9の電力でバックアップ電源10が充電される。充電スイッチ14が開であれば、バッテリ9からバックアップ電源10への給電が遮断される。充電スイッチ14が開であれば、バックアップ電源10は放電可能であり、ブースト電圧供給線22を介してバックアップ電源10からモータ駆動部12に給電可能である。充電スイッチ14の動作は、電子的に制御される。充電スイッチ14は、ノーマルオープン型である。
【0025】
バッテリ9の出力端子9aは、制御電源線24を介し、制御部19に接続されている。一例として、制御電源線24は、充電線23のうち充電スイッチ14よりも出力端子9a側の接続点で、充電線23に接続されており、出力端子9aから当該接続点までのラインは、線23,24の共用部である。制御電源線24(の共用部以外の部分)上には、レギュレータ15が設けられている。バッテリ9からの電力がレギュレータ15で5Vに降圧されて制御部19に供給される。スイッチング部13及び充電スイッチ14の状態に関わらず、制御部19は、バッテリ9を電源として作動可能である。
【0026】
バックアップ電源10の入出力端子10aは、電圧検出線25を介し、制御部19に接続されている。一例として、電圧検出線25は、ブースト電圧供給線22のうち第1昇圧部11Aよりもバックアップ電源10側の接続点に接続され、入出力端子10aから当該接続点までのラインは、線22,25の共用部である。制御部19には、電圧検出線25を介して供給されるバックアップ電源電圧Vbuを検出する電圧検出部16の回路が実装されている。制御部19は、DC5Vで作動する一方、バックアップ電源電圧Vbuは、DC5V以上になり得る。そこで、電圧検出部16は、バックアップ電源電圧Vbuを分圧する分圧回路(不図示)を備える。電圧検出部16は、分圧回路によって分圧された電圧値を検出し、検出値に分圧比の逆数を乗算することによってバックアップ電源電圧Vbuを算出する。これにより、バックアップ電源電圧VbuがDC5V以上である場合でも、バックアップ電源電圧VbuがDC5Vであるとの誤検出を回避でき、電圧検出部16が正しい値を検出できる。
【0027】
制御部19は、CPU、メモリ、及び入出力インタフェースを備えたコンピュータと、コンピュータに実装されたソフトウェアとにより実現される。
【0028】
制御部19は、操作信号線36を介して操作部5に接続されており、衝突信号線37を介して車両のECU6に接続されている。制御部19は、これら要素から電源装置1の制御に必要な情報あるいは信号が入力される。利用者が操作部5を操作すると、操作部5は、操作信号、あるいは電気モータ2の起動指令を制御部19に出力する。ECU6は、車載の加速度センサ及びミリ波レーダ等の衝突センサ7の検出信号に基づき、車両が衝突状態にあるか否かを判断する。ECU6は、車両が衝突状態にあると判断すると、制御部19に衝突信号を出力する。車両が衝突状態であれば、車載のバッテリ9の故障あるいは断線が生じる等、バッテリ9を電源として使用することが困難もしくは不可能となる。
【0029】
制御部19は、昇圧制御線31Aを介して第1昇圧部31Aに接続され、昇圧制御線31Bを介して第2昇圧部31Bに接続される。制御部19は、駆動制御線32を介してモータ駆動部12の制御端子12cに接続される。制御部19は、スイッチング制御線33を介してスイッチング部13に接続される。制御部19は、充電制御線34を介して充電スイッチ14と接続されている。制御部19は、第1昇圧部11A、第2昇圧部11B、モータ駆動部12、スイッチング部13、及び充電スイッチ14に制御信号を出力し、これら要素の動作を制御する。
【0030】
図2は、第1昇圧部11A及び第2昇圧部11Bを示す。第1昇圧部11Aは、昇圧チョッパ回路40及び分圧回路46を有する。分圧回路46は、昇圧チョッパ回路40から出力された第1電圧Vbst1を検出するための分圧を行い、分圧の結果として得られる電圧検出信号を出力する。
【0031】
第1昇圧部11Aは、前述した入力端子49a及びIC入力端子49dの他、出力端子49b、制御端子49c、及び第2出力端子49eを有する。入力端子49aは、バックアップ電源10の入出力端子10aに接続され、出力端子49bは、モータ駆動部12の入力端子12aに接続される。第1昇圧部11A内における端子49a,49b間のラインは、ブースト電圧供給線22の一部を構成する。
【0032】
昇圧チョッパ回路40は、一般的なものであり、昇圧IC41、コイル42、ダイオード43、コンデンサ44、及び電解効果トランジスタ(FET)45を有する。コイル42及びダイオード43が、端子49a,49b間のライン上に入力端子49a側からこの順番で設けられている。ダイオード43は、逆流防止用であり、バックアップ電源10からモータ駆動部12に向かう一方向にのみ電流が流れるのを許容する。コンデンサ44は、当該ラインのうちダイオード43よりも出力端子49b側の部分に接続されている。FET45は、当該ラインのうちコイル42とダイオード43との間の部分に接続されている。分圧回路46は、当該ラインのうちコンデンサ44との接続点よりも出力端子49b側の部分に接続されている。
【0033】
昇圧IC41は、IC入力端子49dに入力される入力電圧、FET45から入力されるフィードバック信号(電流検出信号)、及び分圧回路46から出力されるフィードバック信号(電圧検出信号)に基づいて、FET45のスイッチング動作を制御する。それにより、入力端子49aに入力されるバックアップ電源電圧Vbuを第1電圧Vbst1に昇圧させる。第1電圧Vbst1は、端子49a,49b間のラインのうちコンデンサ44との接続点よりも出力端子49b側で得られる。
【0034】
第1電圧Vbst1は、入力端子49aに入力されるバックアップ電源電圧Vbuに関わらず一定値であり、例えばDC10Vである。昇圧IC41は、入力されるバックアップ電源電圧Vbuに関わらず第1電圧Vbst1が一定値となるように、FET45のスイッチング動作を制御する。
【0035】
第2出力端子49eは、端子49a,49b間のラインと接続され、第1電圧Vbst1が供給される。第2出力端子49eは、バックアップ制御電源線27を介し、レギュレータ15に接続されている。一例として、バックアップ制御電源線27は、バッテリ9の出力端子9aと接続され、出力端子9aからレギュレータ15までのラインは、線24,27の共用部である。これにより、バッテリ9から制御部19への電力供給が困難な場合であって、尚且つバックアップ電源電圧Vbuが制御部19の動作電圧(5.0V)未満に降圧している場合においても、第1電圧Vbst1に基づいて制御部19を作動させることが可能となる。第1電圧Vbst1は、動作電圧よりも高圧であり、レギュレータ15でこの高圧が調整されるため、制御部19は安定して作動できる。
【0036】
IC入力端子49dは、昇圧IC電源線26を介し、バックアップ電源10の入出力端子10aに接続される。ここで、昇圧チョッパ回路40は、昇圧IC41への入力電圧がある下限値を下回ると、適切に昇圧動作を行えなくなる。以下、この下限値、すなわち、第1昇圧部11Aが昇圧動作を行うために最低限必要な第1昇圧部11Aの昇圧IC41への入力電圧を「第1最低動作電圧」という。第1最低動作電圧VAmin(図4を参照)は、例えばDC3.0Vである。入力電圧としてのバックアップ電源電圧Vbuは、使用状況あるいは車両の周辺環境等により、第1最低動作電圧VAminを上回っていることもあれば下回っていることもある。
【0037】
そこで、第2昇圧部11Bが、昇圧IC電源線26上に設けられている。第2昇圧部11Bの昇圧回路は、倍電圧のチャージポンプ回路である。第2昇圧部11Bは、入力端子59a、出力端子59b、及び制御端子59cを有する。入力端子59aは、バックアップ電源10の入出力端子10aに接続される。出力端子59bは、昇圧IC電源線26の一部を構成する第2電圧供給線26aを介し、第1昇圧部11AのIC入力端子49dに接続されている。端子59a,59b間のラインも、昇圧IC電源線26の一部を構成する。
【0038】
第2昇圧部11Bは、発振器51と、キャパシタ52,53と、ダイオード54,55とを有する。発振器51は、バックアップ電源電圧Vbuをハイレベル、接地電圧をローレベルとする発振信号Vaを生成する。発振信号Vaがローレベルのとき、キャパシタ52の両端間に電圧ΔV(ΔV=Vbu-Vf)が印加され、キャパシタ52が充電される。Vfは、ダイオード54の順方向電圧である。発振信号Vaがハイレベルのとき、キャパシタ52の一端の電圧Vbは、Vb=Va+ΔV=2Vbu-Vfとなる。キャパシタ53は、電圧Vb-Vfで充電される。この動作を繰り返すことにより、第2昇圧部11Bの出力電圧としての第2電圧Vbst2が、Vbst2=2Vbu-2Vfとなる。2Vfを無視すると、第2電圧Vvst2は、バッテリ電源電圧Vbuの2倍の電圧となる。このようにして生成された第2電圧Vbst2は、第2電圧供給線26aを介し、第1昇圧部11Aの昇圧IC41の入力電圧として、IC入力端子49dに出力される。
【0039】
このように、第1昇圧部11Aにおいては、昇圧の対象とされる入力端子49aへの入力電圧が、バックアップ電源電圧Vbuである一方、昇圧IC41に入力される入力電圧は、バックアップ電源電圧Vbuを2倍に昇圧した第2電圧Vbst2である。
【0040】
なお、第2昇圧部11Bにおいても、第1昇圧部11Aと同様にして、入力端子59aへの入力電圧がある下限値を下回ると、適切に昇圧動作を行えなくなる。以下、この下限値、すなわち、第2昇圧部11Bが昇圧動作を行うために最低限必要な第2昇圧部11Bへの入力電圧を「第2最低動作電圧」という。第2最低動作電圧VBmin(図4を参照)は、第1最低動作電圧VAminの半分値以上であり、例えばDC2.0Vである。
【0041】
図3は、制御部19により実行される処理を示す。図3を参照して、起動指令が操作部5から制御部19に出力されると(ステップS1)、制御部19は、ECU6からの衝突信号の有無に基づいて、車両が衝突状態にあるか否かを判断する(ステップS2)。
【0042】
車両が衝突状態にあれば(S2:YES)、バッテリ9からの電力で電気モータ2を駆動することができないおそれがある。制御部19は、バックアップ電源10の電力で電気モータ2を駆動する「緊急時モード」を実行する(ステップS3)。
【0043】
緊急時モードS3において、制御部19は、バッテリ9をモータ駆動部12から遮断するようにスイッチング部13を制御する(ステップS31)。本実施形態では、スイッチング部13がノーマルオープン型であるため、制御部19は、所定電圧値の制御信号を出力しないことによって、自ずとバッテリ9をモータ駆動部12から遮断できる。これにより、バックアップ電源10が電気モータ2の電源として採用されている状態となる。
【0044】
次に、制御部19は、第1昇圧部11A及び第2昇圧部11Bに昇圧動作を行わせるべく、昇圧制御線31A,31Bを介して第1昇圧部11A及び第2昇圧部11Bに制御信号を出力する(ステップS32)。これにより、第2昇圧部11Bが、バックアップ電源電圧Vbuを第2電圧Vbst2に昇圧し、第2電圧Vbst2が、第1昇圧部11AのIC入力端子49dに出力される。第2最低動作電圧VBminは、第1最低動作電圧VAminの半分値以上である。第2昇圧部11Bは、入力を2倍化するチャージポンプである。このため、バックアップ電源電圧Vbuが第2最低動作電圧VBminを上回ってさえいれば、第2昇圧部11Bが作動可能となり、第1昇圧部11Aの昇圧IC41への入力電圧は第1最低動作電圧VAmin以上となる。このため、第1昇圧部11Aも作動可能となる。
【0045】
第1昇圧部11Aは、バックアップ電源電圧Vbuを第1電圧Vbst1に昇圧し、モータ駆動部12の入力端子12aに出力する。スイッチング部13は開であるため、バッテリ9からモータ駆動部12への給電は遮断されており、入力端子12aには第1電圧Vbst1のみが出力されている。
【0046】
制御部19は、モータ駆動部12に制御信号を出力し(ステップS33)、それにより、モータ駆動部12は、第1電圧Vbst1に基づいて電気モータ2を駆動する(ステップS34)。第1電圧Vbst1は一定である。そのため、電気モータ2が安定して作動できる。
【0047】
なお、第1電圧Vbst1は、バックアップ制御電源線27及びレギュレータ15を介して制御部19に給電される。そのため、バッテリ9を電源として利用することが困難な緊急時においても、制御部19をバックアップ電源10で作動させることができる。
【0048】
図4を参照して、バックアップ電源電圧Vbuが、定格電圧VbuRで維持されている状態で、車両が時刻t1にて衝突状態になったとする。バックアップ電源10は、自己放電を行うため、バックアップ電源電圧Vbuは徐々に低下していく。
【0049】
仮に第2昇圧部11Bが存在せず、バックアップ電源電圧Vbuが第1昇圧部11AのIC入力端子49dに入力されている場合には、バックアップ電源電圧Vbuが、第1最低動作電圧VAminまで降下した時点t2a以降、バックアップ電源10で電気モータ2を作動させることができない。衝突発生時点t1から当該時点t2aまでの期間Taが、十分に長く確保されず、ドアを開放して車両利用者の救助をすることに支障が出る可能性がある。
【0050】
本実施形態においては、第2昇圧部11Bで昇圧された第2電圧Vbst2が第1昇圧部11AのIC入力端子49dに入力される。そのため、バックアップ電源電圧Vbuが、第1最低動作電圧VAminよりも低圧の第2最低動作電圧VBminに降圧する時点t2まで、バックアップ電源10で電気モータ2を作動させることができる。衝突発生時点t1から当該時点t2までの期間Tは、前述の期間Taに対して長くなる。衝突発生後の車両利用者あるいは救助担当者に対し、便宜が図られる。
【0051】
なお、正常時モードS4において、バッテリ9を電源として電気モータ2を駆動する場合には、制御部19は、スイッチング部13に制御信号を出力する。スイッチング部13が閉じ、バッテリ電圧Vbがモータ駆動部12の入力端子12aに供給される。電気モータ2は、バッテリ9から給電されて作動する。このとき、制御部19は、第1昇圧部11A及び第2昇圧部11Bには制御信号を出力せず、第1昇圧部11A及び第2昇圧部11Bは作動しない。
【0052】
一方、正常時モードS4において、バックアップ電源10を電源として電気モータ2を駆動する場合には、制御部19は、スイッチング部13には制御信号を出力しない。スイッチング部13が開き、バッテリ9とモータ駆動部12との間の導通が遮断される。制御部19は、第1昇圧部11A及び第2昇圧部11Bに制御信号を出力する。これにより、第1昇圧部11Aにおいてバックアップ電源電圧Vbuが第1電圧Vbst1に昇圧され、第1電圧Vbst1がモータ駆動部12の入力端子12aに供給される。電気モータ2は、バックアップ電源10から給電されて作動する。
【0053】
正常時モードS4において、バッテリ9を電源として選択するのかバックアップ電源10を電源として選択するのか、これを決定あるいは判断する条件は、どのように設定されていてもよい。一例として、制御部19は、バッテリ電圧Vb及び/又はバックアップ電源電圧Vbuを参照して、いずれを電源として選択するのか決定してもよい。
【0054】
上記の実施形態の構成は、本発明の範囲内で適宜変更、追加、又は削除可能である。
【0055】
第2昇圧部11Bに、キャパシタ52,53と、ダイオード54,55と、で構成されたチャージポンプを用いたが、ダイオード54,55の代わりにそれぞれFETを使用し、各FETを発振器51で制御して昇圧するように構成されてもよい。
【0056】
第2昇圧部11Bにチャージポンプを用いたが、第2昇圧部11Bは、第1昇圧部11Aと同様にしてインダクタを使用した昇圧回路によって構成されていてもよい。
【0057】
第2電圧Vbst2が、第1昇圧部11AのIC入力端子49dに入力される一方、バックアップ電源電圧Vbuが、第1昇圧部11Aの入力端子49aに入力されているが、第2電圧Vbst2は、IC入力端子49dのみならず入力端子49aにも入力されてもよい。
【0058】
電源装置1は、ドアラッチ装置100以外の車載電動装置に適用できる。このような車載電動装置には、例えば、電動サイドミラー、パワーウィンドウ、電動燃料キャップ、電動テールゲート、電動スライドドア等が含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 電源装置
2 電気モータ
3 ラッチ機構
9 バッテリ
10 バックアップ電源
11A 第1昇圧部
11B 第2昇圧部
12 モータ駆動部
19 制御部
40 昇圧チョッパ回路
41 昇圧IC
100 ドアラッチ装置
Vbu バックアップ電源電圧
Vbst1 第1電圧
Vbst2 第2電圧
VAmin 第1最低動作電圧
VBmin 第2最低動作電圧
図1
図2
図3
図4