(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116908
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】電子機器、集積回路、及び入力システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20240821BHJP
G06F 3/0354 20130101ALI20240821BHJP
【FI】
G06F3/03 400A
G06F3/0354 445
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022776
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】北原 徳之
(72)【発明者】
【氏名】畑野 雄飛
【テーマコード(参考)】
5B087
【Fターム(参考)】
5B087AA04
5B087AC05
5B087AC14
5B087BC03
5B087BC27
(57)【要約】
【課題】静電容量方式のタッチセンサと表示パネルとが隙間を設けるように離間配置される装置構成において、タッチセンサの変形に起因する指示体の検出精度の低下を抑制可能な電子機器、集積回路、及び入力システムを提供する。
【解決手段】電子機器(12)が有する集積回路(20)は、タッチセンサ(18)に接近する指示体(14,16)とセンサ電極(18x,18y)との間に形成される静電容量に相関する信号分布を取得し、信号分布に信号処理を施して指示体(14,16)を検出し、タッチセンサ(18)に対する過荷重の検出結果に応じて信号処理を異ならせる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像又は映像を表示する表示パネルと、
複数のセンサ電極を含んで構成され、かつ前記表示パネルの上方に隙間を設けるように離間配置される静電容量方式のタッチセンサと、
前記タッチセンサに接近する指示体と前記センサ電極との間に形成される静電容量に相関する信号分布を取得し、前記信号分布に信号処理を施して前記指示体を検出する集積回路と、
を備え、
前記集積回路は、前記タッチセンサに対する過荷重の検出結果に応じて前記信号処理を異ならせる、電子機器。
【請求項2】
前記信号処理には、前記信号分布が示す位置毎の信号値と閾値の間の大小関係から、前記指示体の有無を検出する閾値判定処理が含まれ、
前記集積回路は、前記過荷重が検出された場合、前記過荷重が検出されていない場合と比べて前記閾値を小さくする、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記指示体は、ペン先に作用する筆圧に相関する筆圧値を出力する筆圧センサを有する電子ペンであり、
前記集積回路は、前記電子ペンから供給された前記筆圧値が飽和している場合、前記過荷重が発生していると判定する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記集積回路は、前記電子ペンとの間の静電容量結合方式の通信により、前記電子ペンから前記筆圧値を取得する、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記静電容量結合方式の通信とは別の通信により前記電子ペンとの間でデータのやり取りを行う通信部をさらに備え、
前記集積回路は、前記通信部を介して前記電子ペンから前記筆圧値を取得する、
請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記表示パネル上に設けられる圧力センサをさらに備え、
前記集積回路は、前記圧力センサにより前記タッチセンサからの圧力を検出した場合、前記過荷重が発生していると判定する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記集積回路は、前記過荷重が検出された後、前記過荷重の継続時間に応じて前記閾値を異ならせる、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項8】
前記集積回路は、前記継続時間が長くなるにつれて、前記閾値を連続的又は段階的に小さくする、
請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記集積回路は、前記過荷重が検出された場合、前記指示体による指示位置に応じて前記閾値を異ならせる、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項10】
前記集積回路は、前記タッチセンサがなす検出領域内の中央部にて前記指示位置が検出された場合、前記検出領域内の周縁部にて前記指示位置が検出された場合と比べて前記閾値を小さくする、
請求項9に記載の電子機器。
【請求項11】
前記集積回路は、前記過荷重が検出された場合、前記電子ペンの種別又は前記ペン先の種別に応じて前記閾値を異ならせる、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項12】
前記集積回路は、前記過荷重が検出された場合、当該電子機器の種別に応じて前記閾値を異ならせる、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項13】
電子機器に組み込まれる集積回路であって、
前記電子機器は、
画像又は映像を表示する表示パネルと、
複数のセンサ電極を含んで構成され、かつ前記表示パネルの上方に隙間を設けるように離間配置される静電容量方式のタッチセンサと、
を備え、
前記タッチセンサに接近する指示体と前記センサ電極との間に形成される静電容量に相関する信号分布を取得し、前記信号分布に信号処理を施して前記指示体を検出する検出ステップと、
前記タッチセンサに対する過荷重の検出結果に応じて前記信号処理を異ならせる処理ステップと、
を実行する、集積回路。
【請求項14】
電子ペンと、前記電子ペンとともに用いられる電子機器と、を備える入力システムであって、
前記電子機器は、
画像又は映像を表示する表示パネルと、
複数のセンサ電極を含んで構成され、かつ前記表示パネルの上方に隙間を設けるように離間配置される静電容量方式のタッチセンサと、
前記タッチセンサに接近する前記電子ペンと前記センサ電極との間に形成される静電容量に相関する信号分布を取得し、前記信号分布に信号処理を施して前記電子ペンを検出する集積回路と、
を備え、
前記集積回路は、前記タッチセンサに対する過荷重の検出結果に応じて前記信号処理を異ならせる、入力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、集積回路、及び入力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子ペンや指などの指示体による指示位置を検出するための位置センサ(以下、「タッチセンサ」ともいう)を、画像表示機能を有する表示装置に組み込んだ電子機器が知られている。タッチセンサの検出方式の一例として、指示体とセンサ電極の間に発生する静電容量の変化を示す信号分布から、当該指示体による指示位置を検出する「静電容量方式」が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、ガラスなどのカバーの裏面にタッチセンサが接着されたタッチパネルと、表示パネルとの間に隙間(あるいは、エアギャップ)を設けて配置する構成が開示されている。このように、タッチパネルと表示パネルとを別々のモジュールとして構成することで、例えば、カバーの破損時にタッチパネルの交換によって電子機器の修理が済み、その分だけ修理コストを下げられるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/046865号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示される装置構成では、タッチパネルの外側から大きな荷重が作用することにより、タッチセンサの変形が起こり、タッチセンサの裏面が表示パネルの表面に接近又は接触する場合がある。その結果、タッチセンサの変形前後にわたってタッチセンサから出力される信号分布の形状が変化し、指示体の検出結果が異なってしまうことがあり得る。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、静電容量方式のタッチセンサと表示パネルとが隙間を設けるように離間配置される装置構成において、タッチセンサの変形に起因する指示体の検出精度の低下を抑制可能な電子機器、集積回路、及び入力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様における電子機器は、画像又は映像を表示する表示パネルと、複数のセンサ電極を含んで構成され、かつ前記表示パネルの上方に隙間を設けるように離間配置される静電容量方式のタッチセンサと、前記タッチセンサに接近する指示体と前記センサ電極との間に形成される静電容量に相関する信号分布を取得し、前記信号分布に信号処理を施して前記指示体を検出する集積回路と、を備え、前記集積回路は、前記タッチセンサに対する過荷重の検出結果に応じて前記信号処理を異ならせる。
【0008】
本発明の第2態様における集積回路は、電子機器に組み込まれる回路であって、前記電子機器は、画像又は映像を表示する表示パネルと、複数のセンサ電極を含んで構成され、かつ前記表示パネルの上方に隙間を設けるように離間配置される静電容量方式のタッチセンサと、を備え、前記タッチセンサに接近する指示体と前記センサ電極との間に形成される静電容量に相関する信号分布を取得し、前記信号分布に信号処理を施して前記指示体を検出する検出ステップと、前記タッチセンサに対する過荷重の検出結果に応じて前記信号処理を異ならせる処理ステップと、を実行する。
【0009】
本発明の第3態様における入力システムは、電子ペンと、前記電子ペンとともに用いられる電子機器と、を備えるシステムであって、前記電子機器は、画像又は映像を表示する表示パネルと、複数のセンサ電極を含んで構成され、かつ前記表示パネルの上方に隙間を設けるように離間配置される静電容量方式のタッチセンサと、前記タッチセンサに接近する前記電子ペンと前記センサ電極との間に形成される静電容量に相関する信号分布を取得し、前記信号分布に信号処理を施して前記電子ペンを検出する集積回路と、を備え、前記集積回路は、前記タッチセンサに対する過荷重の検出結果に応じて前記信号処理を異ならせる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、静電容量方式のタッチセンサと表示パネルとが隙間を設けるように離間配置される装置構成において、タッチセンサの変形に起因する指示体の検出精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態における入力システムの全体構成図である。
【
図2】
図1のタブレット端末の概略構成を示す図である。
【
図3】
図1及び
図2に示すタブレット端末の模式的な断面図である。
【
図4】
図1のペン検出部に関する機能ブロック図である。
【
図5】
図1に示すペン検出部の動作に関するフローチャートである。
【
図7】タッチセンサから出力される信号分布の一例を示す図である。
【
図8】タッチセンサの通常荷重時における閾値判定処理の結果を示す図である。
【
図9】タッチセンサの過荷重時におけるタブレット端末の断面形状を示す図である。
【
図10】過荷重の発生前後にわたる信号分布の形状変化の一例を示す図である。
【
図11】タッチセンサの過荷重時における筆圧値の時間変化の一例を示す図である。
【
図12】タッチセンサの過荷重時における閾値判定処理の結果を示す図である。
【
図13】別の構成例におけるタブレット端末の模式的な断面図である。
【
図14】閾値を設定するための第1規則を示す図である。
【
図15】閾値を設定するための第2規則を示す図である。
【
図16】閾値を設定するための第3規則を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
[入力システム10の構成]
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態における入力システム10の全体構成図である。この入力システム10は、タブレット端末12(「電子機器」に相当)と、電子ペン14(「指示体」に相当)と、から基本的に構成される。
【0014】
タブレット端末12は、タッチパネルディスプレイを有する電子機器である。この電子機器は、タブレット端末の他に、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、又はウェアラブル端末であってもよい。ユーザは、電子ペン14を片手で把持し、タブレット端末12のタッチ面12sにペン先14tを押し当てながら移動させることで、タブレット端末12に絵や文字を書き込むことができる。また、ユーザは、自身の指16(「指示体」に相当)でタッチ面12sに接触することで、表示中のユーザコントロールを介して所望の操作を行うことができる。
【0015】
電子ペン14は、アクティブ静電結合方式(AES)によって動作するペン型のポインティングデバイスであり、スタイラスともいう。電子ペン14は、少なくとも静電容量結合方式の通信により、タブレット端末12との間で通信可能に構成される。以下、タブレット端末12から電子ペン14に向けて送信される信号を「アップリンク信号」と称し、電子ペン14からタブレット端末12に向けて送信される信号を「ダウンリンク信号」と称する。
【0016】
<タブレット端末12の構成>
図2は、
図1のタブレット端末12の概略構成を示す図である。タブレット端末12は、タッチセンサ18と、タッチ集積回路(IC:Integrated Circuit)(以下、「タッチIC20」という)と、ホストプロセッサ22と、を含んで構成される。
【0017】
タッチセンサ18は、複数のセンサ電極18x,18yを面状に組み合わせてなる、静電容量方式の位置センサである。具体的には、タッチセンサ18は、X軸上の位置を検出するための複数のセンサ電極18xと、Y軸上の位置を検出するための複数のセンサ電極18yと、を含む。本図に示すX方向,Y方向は、タッチセンサ18がなす検出領域内において定義される直交座標系のX軸,Y軸に相当する。センサ電極18x,18yは、ITO(Indium Tin Oxide)を含む透明導電性材料から構成されてもよいし、ワイヤメッシュから構成されてもよい。
【0018】
センサ電極18xは、Y方向に延びて設けられるとともに、X方向に沿って等間隔に配置されている。センサ電極18yは、X方向に延びて設けられるとともに、Y方向に沿って等間隔に配置されている。なお、タッチセンサ18は、上記した相互容量方式のセンサに代えて、ブロック状の電極を二次元格子状に配置した自己容量方式のセンサであってもよい。
【0019】
タッチIC20は、ファームウェア24を実行可能に構成された集積回路であり、タッチセンサ18を構成する複数のセンサ電極18x,18yにそれぞれ接続されている。このファームウェア24は、ユーザの指16などによるタッチを検出するタッチ検出部26と、電子ペン14の状態を検出するペン検出部28と、を実現可能に構成される。
【0020】
タッチ検出部26は、例えば、タッチセンサ18のスキャン機能、タッチセンサ18上の信号分布(あるいは、ヒートマップ)の作成機能、信号分布上の領域分類機能(例えば、指16、手の平の分類)を含む。ペン検出部28は、例えば、タッチセンサ18のスキャン機能(グローバルスキャン又はセクタスキャン)、ダウンリンク信号の受信・解析機能、電子ペン14の状態(例えば、位置、傾き、筆圧など)の推定機能、電子ペン14に対する指令を含むアップリンク信号の生成・送信機能を含む。
【0021】
ホストプロセッサ22は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)からなる演算処理装置である。ホストプロセッサ22は、図示しないメモリからプログラムを読み出し実行することで、例えば、タッチIC20からのデータを用いてデジタルインクを生成する処理、当該デジタルインクが示す描画内容を表示させるためのレンダリング処理などを行う。
【0022】
図3は、
図1及び
図2に示すタブレット端末12の模式的な断面図である。このタブレット端末12は、上記したタッチセンサ18(
図2)の他に、筐体40、制御基板42、表示パネル44、及び保護板46を含んで構成される。
【0023】
筐体40は、タブレット端末12内の電子部品を収容する部材である。
図3の例では、筐体40には、底側から上側(Z方向)にわたって順番に、制御基板42、表示パネル44、及びタッチセンサ18が重ねて配置されている。
【0024】
制御基板42は、タブレット端末12を作動するための電気回路を構成する単体の基板又は基板の集合体である。
図3に示すように、制御基板42上には、タッチIC20及びホストプロセッサ22の他に、図示しない様々な電子部品が実装されている。
【0025】
表示パネル44は、例えば、液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)パネル、電子ペーパーなどによって構成される。表示パネル44は、行方向及び列方向に配列されたマトリクス状の信号線に駆動電圧を印加して複数の画素を駆動することで、表示領域内に画像又は映像を表示する。
【0026】
保護板46は、ガラスなどの透光性材料からなる板材であり、筐体40が有する開口の全面を覆うように設けられている。タッチセンサ18は、図示しない接着層を介して、保護板46の裏面に接着されている。
図3から理解されるように、タッチセンサ18は、表示パネル44の上方に隙間Gを設けるように離間配置されている。
【0027】
<機能ブロック>
図4は、
図1のペン検出部28に関する機能ブロック図である。ペン検出部28は、取得部50と、判定部52と、検出部54と、を備える。
【0028】
取得部50は、タッチセンサ18への荷重状態を判定するための情報(以下、「判定情報」ともいう)を取得する。この判定情報には、例えば、[1]ペン先14tに作用する筆圧、[2]表示パネル44の表面上に作用する圧力、又は[3]タッチセンサ18又は保護板46の変形量などが含まれる。
【0029】
筆圧は、例えば、電子ペン14が有する筆圧センサ60(
図6)を用いて測定される。測定された筆圧は、当該筆圧に相関する信号値(つまり、筆圧値)に変換されてタブレット端末12に出力される。この場合、取得部50は、[1]電子ペン14との間の静電容量結合方式の通信、又は[2]静電容量結合方式の通信とは別の通信(有線通信又は無線通信)により、電子ペン14から筆圧値を取得する。
【0030】
圧力は、例えば、表示パネル44の表面上に配置される圧力センサ72(
図13)を用いて測定される。このセンサ方式の一例として、圧力の変化に応じて変形するダイアフラムの変位量を静電容量の変化として計測し、この変化量を圧力に換算して出力する「静電容量方式」が挙げられる。変形量は、例えば、歪みセンサ又は光学式変位センサを用いて測定される。
【0031】
判定部52は、取得部50により取得された判定情報を用いてタッチセンサ18に対する荷重状態を判定し、荷重状態を示す判定結果を出力する。この荷重状態は、[1]無荷重・通常荷重・過荷重・非過荷重などの定性値、又は[2]変位量・変形量・たわみ量(単位:mm)などの定量値により表現される。判定部52は、例えば、[1]電子ペン14から供給された筆圧値が飽和している場合、[2]圧力センサ72によりタッチセンサ18からの圧力を検出した場合、又は[3]タッチセンサ18の変位量が閾値を上回った場合、過荷重(つまり、筆圧値の許容範囲の上限を超えた荷重)が発生していると判定してもよい。
【0032】
検出部54は、タッチセンサ18に接近する指示体(ここでは、電子ペン14)とセンサ電極18x,18yの間に形成される静電容量(ここでは、静電容量又は該静電容量の変化)に相関する信号分布を取得し、得られた信号分布に様々な信号処理を施して電子ペン14を検出する。この信号処理には、[1]信号分布が示す位置毎の信号値と閾値の間の大小関係から、電子ペン14の有無を検出する「閾値判定処理」、又は[2]信号分布に対して補間演算又は近似演算を施して電子ペン14の指示位置を算出する「位置算出処理」が含まれる。
【0033】
検出部54は、判定部52による判定結果に応じて、閾値判定処理に用いられる閾値を異ならせてもよい。具体的には、検出部54は、タッチセンサ18に対する過荷重が検出された場合、過荷重が検出されていない場合と比べて閾値を小さくする。また、閾値判定処理に用いられる信号値は、タッチセンサ18のスキャン毎に得られる信号値(つまり、瞬間値)であってもよいし、予め定められた時間内に逐次的に取得される瞬間値を積算した値(つまり、積算値)であってもよい。特に、瞬間値に代えて積算値を用いることで、検出信号に含まれるノイズの影響がより小さくなり、その分だけ電子ペン14の検出精度が向上する。
【0034】
また、検出部54は、判定部52による判定結果の他に、追加情報をさらに用いて、閾値判定処理に用いられる閾値を設定してもよい。ここで、「追加情報」とは、タッチセンサ18から出力される信号分布の全体形状又は局所形状に影響を与え得る様々な情報に相当する。追加情報の一例として、[1]過荷重状態の継続時間、[2]電子ペン14の指示位置、[3]電子ペン14の種別、[4]ペン先14tの種別、又は[5]タブレット端末12の種別が挙げられる。上記した継続時間は、判定部52による判定結果の解析を通じて求められる。上記した指示位置は、検出部54により直近に検出された電子ペン14の指示位置に相当する。上記した電子ペン14又はペン先14tの種別は、電子ペン14からのダウンリンク信号を通じて取得される。上記したタブレット端末12の種別は、ホストプロセッサ22から提供される。
【0035】
[入力システム10の動作]
この実施形態における入力システム10は、以上のように構成される。続いて、タブレット端末12による電子ペン14の検出動作について、
図5のフローチャート及び
図6~
図12を参照しながら説明する。
【0036】
<通常荷重時>
図5のステップSP10において、タッチIC20のペン検出部28は、電子ペン14の検出タイミングが到来したか否かを確認する。まだ検出タイミングに達していない場合(ステップSP10:NO)、ペン検出部28は、検出タイミングが到来するまでの間、ステップSP10に留まる。一方、電子ペン14の検出タイミングが到来した場合(ステップSP10:YES)、ペン検出部28は、次のステップSP12に進む。
【0037】
ステップSP12において、ペン検出部28(より詳しくは、取得部50)は、タッチセンサ18の荷重状態を判定するための情報(つまり、判定情報)を取得する。ここでは、判定情報が「筆圧値」である場合を例に挙げて説明する。
【0038】
図6は、筆圧値の取得方法を模式的に示す図である。ここでは、タブレット端末12の構成として、タッチセンサ18、タッチIC20、ホストプロセッサ22、及び無線モジュール30が図示されている。また、電子ペン14の構成として、筆圧センサ60、第1通信部62、及び第2通信部64が図示されている。
【0039】
第1に、タブレット端末12は、静電容量結合方式による通信を介して、電子ペン14から筆圧値を取得する。電子ペン14の第1通信部62は、筆圧センサ60から出力された筆圧値を取得し、当該筆圧値を含むデータにより変調されたダウンリンク信号を生成し、当該ダウンリンク信号をペン先14tの電極から送信する。その後、タブレット端末12のタッチIC20は、タッチセンサ18を介してダウンリンク信号を受信し、当該ダウンリンク信号の復調を通じて筆圧値を含むデータを取得する。このようにして、筆圧値が取得される。
【0040】
第2に、タブレット端末12は、静電容量結合方式による通信とは別の通信を介して、電子ペン14から筆圧値を取得する。電子ペン14の第2通信部64は、筆圧センサ60から出力された筆圧値を取得し、当該筆圧値を含むデータにより変調された無線信号を生成し、当該無線信号を図示しない電極から送信する。その後、タブレット端末12のタッチIC20は、無線モジュール30を介して無線信号を受信し、当該無線信号の復調を通じて筆圧値を含むデータを取得する。このようにして、筆圧値が取得される。
【0041】
図5のステップSP14において、ペン検出部28(より詳しくは、判定部52)は、ステップSP12で取得された判定情報(ここでは、筆圧値)を用いて、タッチセンサ18の荷重状態を判定する。その判定結果として、タッチセンサ18の荷重状態を示すフラグ(以下、状態フラグ)が出力される。この状態フラグは、例えば、「通常荷重」である場合に「0」の値をとり、「過荷重」である場合に「1」の値をとる。
【0042】
ステップSP16において、ペン検出部28(より詳しくは、検出部54)は、ステップSP14での判定結果を参照し、タッチセンサ18の荷重状態を確認する。例えば、状態フラグの値が「0」、つまり「通常荷重」状態である場合(ステップSP16:通常荷重)、検出部54は、ステップSP18に進む。
【0043】
ステップSP18において、検出部54は、閾値判定処理に用いられる閾値を「THn」に設定した後、ステップSP22に進む。
【0044】
ステップSP22において、検出部54は、タッチセンサ18から出力された信号分布を取得する。
【0045】
図7は、タッチセンサ18から出力された信号分布の一例を示す図である。グラフの横軸はX軸上の位置(単位:mm)を示すとともに、グラフの縦軸は信号値(単位:無次元)を示している。本図の例では、信号分布は、略同じ高さの2つのピークを有する。そして、電子ペン14の指示位置は、2つのピークに挟まれた谷の位置(Xp)に対応する。なお、信号分布の形状は、
図7の例に限られず、装置構成によって信号分布のピーク数が1つになる場合もあり得る。
【0046】
図5のステップSP24において、検出部54は、ステップSP22により取得された信号分布に対して、閾値判定処理及び位置算出処理を含む信号処理を施すことにより、電子ペン14の有無又は指示位置を検出する。
【0047】
図8は、タッチセンサ18の通常荷重時における閾値判定処理の結果を示す図である。この閾値判定処理を通じて、信号値(具体的には、瞬間値又は積算値)が閾値THnよりも大きい領域、具体的には、2つのピーク頂部を示す領域A1,A2が抽出される。その後、位置算出処理を通じて、領域A1,A2及び周辺位置における信号値同士の関係から、電子ペン14の指示位置Xpが算出される。
【0048】
図5のステップSP26において、検出部54は、ステップSP24にて得られた検出結果を外部(ここでは、ホストプロセッサ22)に出力する。
【0049】
以下、ペン検出部28は、定期的又は不定期に、
図5のフローチャートを繰り返して実行する。タッチセンサ18の「通常荷重」状態が続いている間、ステップSP16→SP18→SP22の分岐が選択される。
【0050】
<過荷重時>
続いて、ユーザが電子ペン14を必要以上の力で押し込むことにより、タッチセンサ18に対する過荷重が発生した場合を想定する。
【0051】
図9は、タッチセンサ18の過荷重時におけるタブレット端末12の断面形状を示す図である。より詳しくは、
図9は、過荷重が発生する部位の周辺におけるタブレット端末12の部分拡大断面図に相当する。タッチセンサ18は、ポリエチレンテレフタレートを含む樹脂からなる基台18bと、基台18bの下面に設けられる複数のセンサ電極18xと、を含む。ペン先14tに設けられるペン電極と、ペン先14tの近傍に位置するセンサ電極18xとの間には、静電容量が形成されている。
【0052】
タッチセンサ18と表示パネル44との間に隙間Gが設けられているので、タッチセンサ18の過荷重時に、タッチセンサ18と基台18bとが一体となって下凸に変形する。センサ電極18xの接近に伴い、表示パネル44から発生する電気ノイズが静電容量に取り込まれることで、信号にノイズが混入しやすくなる。また、センサ電極18xの接触に伴い、静電容量をなす電荷が表示パネル44側に流出することで、信号レベルが低下しやすくなる。
【0053】
図10は、過荷重の発生前後にわたる信号分布の形状変化の一例を示す図である。このグラフの定義は、
図7の場合と同様である。
図10から理解されるように、過荷重時の信号分布(実線で図示)は、通常荷重時の信号分布(破線で図示)との間の相似関係を保ちながら、全体にわたって信号値が減少する傾向を有する。そこで、ペン検出部28は、信号分布の形状が変化するという傾向を考慮しつつ、電子ペン14の検出処理を行う。
【0054】
図5のステップSP10において、ペン検出部28は、電子ペン14の検出タイミングが到来したか否かを確認する。ステップSP12において、取得部50は、タッチセンサ18の荷重状態を判定するための筆圧値を取得する。
【0055】
図11は、タッチセンサ18の過荷重時における筆圧値の時間変化の一例を示す図である。グラフの横軸は時間(単位:s)を示すとともに、グラフの縦軸は筆圧値(単位:無次元)を示している。ここで、10ビットの筆圧値は、ペン先14tに作用する筆圧の有効範囲において、筆圧に比例するように定義されている。
【0056】
例えば、ユーザは、時点t=T1にてペンダウン操作を行った後、ペン先14tを押し込む操作を継続する場合を想定する。そうすると、時間が経過するにつれて筆圧値が線形的に増加し、時点t=T2にて筆圧値が最大(=1023)になる。その後、筆圧値は、最大値又はその近傍値を維持する。例えば、t=T2からの経過時間が時間閾値Bを上回った場合に、判定部52は、ペン先14tに作用する筆圧が飽和しているとみなし、タッチセンサ18の「過荷重」を検出する。
【0057】
図5のステップSP16において、検出部54は、ステップSP14での判定結果を参照し、タッチセンサ18の荷重状態を確認する。例えば、状態フラグの値が「1」、つまり「過荷重」状態である場合(ステップSP16:過荷重)、検出部54は、ステップSP18に代わってステップSP20に進む。
【0058】
ステップSP20において、検出部54は、閾値判定処理に用いられる閾値を「THw」に設定した後、ステップSP22に進む。ここで、THn>THwの大小関係が成り立っている点に留意する。
【0059】
ステップSP22において、検出部54は、タッチセンサ18から出力された信号分布を取得する。タッチセンサ18の過荷重時には、
図10の実線で示すような信号分布が得られる。
【0060】
ステップSP24において、検出部54は、ステップSP22により取得された信号分布に対して、閾値判定処理及び位置算出処理を含む信号処理を施すことにより、電子ペン14の有無又は指示位置を検出する。
【0061】
図12は、タッチセンサ18の過荷重時における閾値判定処理の結果を示す図である。この閾値判定処理を通じて、信号値が閾値THwよりも大きい領域、具体的には、2つのピーク頂部を示す領域A3,A4が抽出される。その後、位置算出処理を通じて、領域A3,A4及び周辺位置における信号値同士の関係から、電子ペン14の指示位置Xpが算出される。
【0062】
図5のステップSP26において、検出部54は、ステップSP24にて得られた検出結果を外部(ここでは、ホストプロセッサ22)に出力する。
【0063】
以下、ペン検出部28は、定期的又は不定期に、
図5のフローチャートを繰り返して実行する。タッチセンサ18の「過荷重」状態が続いている間、ステップSP16→SP20→SP22の分岐が選択される。このように、過荷重時の場合、通常荷重時の場合と比べて閾値を下げることにより、電子ペン14の有無又は指示位置を検出しやすくなる。
【0064】
[閾値判定処理の別の例]
続いて、閾値判定処理の別の例について、
図13~
図16を参照しながら説明する。
【0065】
<第1例>
タッチIC20のペン検出部28は、電子ペン14のペン先14tに作用する筆圧とは別の物理量を用いて、タッチセンサ18に対する荷重状態を判定してもよい。
【0066】
図13は、別の構成例におけるタブレット端末70の断面図である。タブレット端末70は、
図3に示すタブレット端末12の各構成の他に、圧力センサ72をさらに含んで構成される。圧力センサ72は、表示パネル44の表面上に設けられ、制御基板42に接続されている。このセンサ方式の一例として、ダイアフラムの変位を静電容量の変化量として求め、当該変化量を変換して圧力を測定する「静電容量方式」が挙げられる。
【0067】
上記した装置構成の場合、タッチIC20のペン検出部28は、ペン先14tに作用する筆圧に代えて、圧力センサ72に作用する圧力を用いて、タッチセンサ18に対する荷重状態を検出することができる。具体的には、ペン検出部28(より詳しくは、判定部52)は、圧力センサ72によりタッチセンサ18からの圧力が検出されていない場合には「通常荷重」であると判定する一方、圧力センサ72によりタッチセンサ18からの圧力が検出されている場合には「過荷重」状態であると判定する。
【0068】
第1例によれば、タッチセンサ18の接触に伴い表示パネル44の表面に圧力が作用することを利用することで、タッチセンサ18の荷重を実際に測定することなく過荷重を検出することができる。
【0069】
<第2例>
タッチIC20のペン検出部28は、タッチセンサ18が「過荷重」状態であると判定した場合、過荷重の継続時間に応じて、閾値処理に用いられる閾値を動的に設定してもよい。例えば、ペン検出部28は、継続時間が長くなるにつれて、閾値を連続的又は段階的に小さくしてもよい。
【0070】
図14は、閾値を設定するための第1規則を示す図である。グラフの横軸は過荷重の継続時間ΔTd(単位:s)を示すとともに、グラフの縦軸は閾値THwを示している。過荷重の開始時点(ΔTd=0)では、閾値はTHw=D1に設定される。そして、継続時間ΔTdが増加するにつれて、閾値THwは線形的に減少するように設定される。そして、継続時間がΔTd≧Cの範囲では、閾値は一定値(THw=D2;ただし、0<D2<D1)に設定される。
【0071】
第2例によれば、過荷重の継続時間が長くなるにつれて、信号値の低下が起こりやすくなるという傾向を考慮した検出を行うことができる。
【0072】
<第3例>
タッチIC20のペン検出部28は、タッチセンサ18が「過荷重」状態であると判定した場合、電子ペン14の指示位置に応じて、閾値処理に用いられる閾値を動的に設定してもよい。例えば、ペン検出部28は、タッチセンサ18がなす検出領域内の中央部にて指示位置が検出された場合、検出領域内の周縁部にて指示位置が検出された場合と比べて閾値を小さくしてもよい。
【0073】
図15は、閾値を設定するための第2規則を示す図である。グラフの横軸は電子ペン14の指示位置(単位:mm)を示すとともに、グラフの縦軸は閾値THwを示している。位置X=0は検出領域の中央に相当するとともに、位置X=Eは検出領域の周縁に相当する。検出領域の中央位置(X=0)では、閾値はTHw=F1に設定される。そして、中央部から辺縁部に向かうにつれて、閾値THwは線形的に増加するように設定される。そして、検出領域の辺縁位置(X=E)では、閾値はTHw=F2(F1<F2)に設定される。
【0074】
第3例によれば、検出領域内の中央部に近づくにつれてタッチセンサ18の変形量が多くなり、その分だけ信号値の低下が起こりやすくなるという傾向を考慮した検出を行うことができる。
【0075】
<第4例>
タッチIC20のペン検出部28は、タッチセンサ18が「過荷重」状態であると判定した場合、電子ペン14、ペン先14t及びタブレット端末12の種別又はこれらの種別の組み合わせに応じて、閾値処理に用いられる閾値を設定してもよい。
【0076】
図16は、閾値を設定するための第3規則を示す図である。より詳しくは、本図は、物品区分、種別、及び閾値の間の対応関係を示すテーブルを示している。「物品区分」には、装置名(例えば、電子ペン・タブレットなど)又は部品名(例えば、ペン先など)が含まれる。「種別」には、メーカ名、製品名、型名、規格名、仕様などが含まれる。例えば、「種別X1である電子ペン」に適した閾値は、THw=Th11に設定される。
【0077】
第4例によれば、電子ペン14の種別又はペン先14tの種別に応じて、タッチセンサ18の変形の度合い又は信号分布の形状が異なる点を考慮した検出を行うことができる。また、第4例によれば、タブレット端末12の種別に応じて、タッチセンサ18の変形の度合い又は隙間Gの大きさが異なる点を考慮した検出を行うことができる。
【0078】
[実施形態による効果]
以上のように、入力システム10は、電子ペン14と、電子ペン14とともに用いられる電子機器(ここでは、タブレット端末12)と、を備える。タブレット端末12は、画像又は映像を表示する表示パネル44と、複数のセンサ電極18x,18yを含んで構成され、かつ表示パネル44の上方に隙間Gを設けるように離間配置される静電容量方式のタッチセンサ18と、タッチセンサ18に接近する指示体(ここでは、電子ペン14又は指16)とセンサ電極18x,18yとの間に形成される静電容量に相関する信号分布を取得し、信号分布に信号処理を施して指示体を検出する集積回路(ここでは、タッチIC20)と、を備える。タッチIC20は、信号分布に信号処理を施して指示体を検出する検出ステップ(SP24)と、タッチセンサ18に対する過荷重の検出結果に応じて信号処理を異ならせる処理ステップ(SP18,SP20)と、を実行する。
【0079】
上記した構成のように、タッチセンサ18に対する過荷重の検出結果に応じて信号処理を異ならせることにより、タッチセンサ18の変形前後にわたってタッチセンサ18から出力される信号分布が変化する傾向が反映された検出を行うことができる。これにより、静電容量方式のタッチセンサ18と表示パネル44とが隙間Gを設けるように離間配置される装置構成において、タッチセンサ18の変形に起因する指示体の検出精度の低下を抑制することができる。
【0080】
また、信号処理には、信号分布が示す位置毎の信号値と閾値の間の大小関係から、指示体の有無又は指示位置を検出する閾値判定処理が含まれる場合、タッチIC20は、過荷重が検出された場合、過荷重が検出されていない場合と比べて閾値を小さくしてもよい。過荷重が検出されている場合、タッチセンサ18が表示パネル44の表面に接近又は接触に伴う信号値の低下が起こりやすい。そこで、閾値を相対的に下げることにより、過荷重が発生した場合であっても指示体がより検出されやすくなる。
【0081】
また、指示体が、ペン先14tに作用する筆圧に相関する筆圧値を出力する筆圧センサ60を有する電子ペン14である場合、タッチIC20は、電子ペン14から供給された筆圧値が飽和している場合、過荷重が発生していると判定してもよい。ペン先14t及びタッチセンサ18に同時に荷重が作用することを利用することで、タッチセンサ18の荷重を実際に測定することなく過荷重を検出することができる。
【0082】
また、タッチIC20は、電子ペン14との間の静電容量結合方式の通信により、電子ペン14から筆圧値を取得してもよい。あるいは、タブレット端末12が、静電容量結合方式の通信とは別の通信により電子ペン14との間でデータのやり取りを行う通信部(ここでは、無線モジュール30)をさらに備える場合、タッチIC20は、無線モジュール30を介して電子ペン14から筆圧値を取得してもよい。
【0083】
また、タブレット端末70が、表示パネル44上に設けられる圧力センサ72をさらに備える場合、タッチIC20は、圧力センサ72によりタッチセンサ18からの圧力を検出した場合、過荷重が発生していると判定してもよい。タッチセンサ18の接触に伴い表示パネル44の表面に圧力が作用することを利用することで、タッチセンサ18の荷重を実際に測定することなく過荷重を検出することができる。
【0084】
また、タッチIC20は、過荷重が検出された後、過荷重の継続時間に応じて閾値を異ならせてもよい。具体的には、タッチIC20は、継続時間が長くなるにつれて、閾値を連続的又は段階的に小さくしてもよい。これにより、過荷重の継続時間が長くなるにつれて、信号値の低下が起こりやすくなるという傾向を考慮した検出を行うことができる。
【0085】
また、タッチIC20は、過荷重が検出された場合、指示体による指示位置に応じて閾値を異ならせてもよい。具体的には、タッチIC20は、タッチセンサ18がなす検出領域内の中央部にて指示位置が検出された場合、検出領域内の周縁部にて指示位置が検出された場合と比べて閾値を小さくしてもよい。これにより、検出領域内の中央部に近づくにつれてタッチセンサ18の変形量が多くなり、その分だけ信号値の低下が起こりやすくなるという傾向を考慮した検出を行うことができる。
【0086】
また、タッチIC20は、過荷重が検出された場合、電子ペン14の種別又はペン先14tの種別に応じて閾値を異ならせてもよい。これにより、電子ペン14の種別又はペン先14tの種別に応じて、タッチセンサ18の変形の度合い又は信号分布の形状が異なる点を考慮した検出を行うことができる。
【0087】
また、タッチIC20は、過荷重が検出された場合、タブレット端末12の種別に応じて閾値を異ならせてもよい。これにより、タブレット端末12の種別に応じて、タッチセンサ18の変形の度合い又は隙間Gの大きさが異なる点を考慮した検出を行うことができる。
【0088】
[変形例]
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。あるいは、技術的に矛盾が生じない範囲で各々の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0089】
上記した実施形態では、ペン検出部28により電子ペン14を検出する場合について例を挙げて説明したが、タッチ検出部26による指16を検出する場合にも上記した処理方法を適用し得る。指16を検出する際、指16による押圧を測定できない場合には、
図13に示す装置構成が採用される。
【符号の説明】
【0090】
10…入力システム、12,70…タブレット端末(電子機器)、14…電子ペン(指示体)、16…指(指示体)、18…タッチセンサ、20…タッチIC(集積回路)、22…ホストプロセッサ、44…表示パネル、46…保護パネル、50…取得部、52…判定部、54…検出部、72…圧力センサ、G…隙間