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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116909
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240821BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240821BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240821BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240821BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240821BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20240821BHJP
   H01M 10/6561 20140101ALI20240821BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240821BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20240821BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240821BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240821BHJP
   H01G 11/18 20130101ALI20240821BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20240821BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/103
H01M50/15
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6557
H01M10/6561
H01M50/209
H01M50/289
H01M50/249
H01G11/78
H01G11/18
H01G11/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022779
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H028
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5E078AA13
5E078AB06
5E078AB12
5E078AB13
5E078FA02
5E078FA13
5E078HA04
5E078HA22
5E078JA02
5E078JA07
5H011AA01
5H011AA03
5H011DD03
5H028AA07
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC24
5H031AA09
5H031KK08
5H040AA18
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT02
5H040AY06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】各蓄電デバイスが蓄電デバイス自身によって電極体の電極積層部を電極体厚み方向に弾性的に圧縮してなる蓄電モジュールを提供すること。
【解決手段】蓄電モジュール100は、複数の蓄電デバイス1を備える。蓄電デバイス1は、直方体箱状で、第1主壁部11、第2主壁部12及び4つの側壁部13~16を有するケース10と、直方体状の電極積層部50eを有する電極体50とを備え、電極体50は、電極体厚み方向FHがケース厚み方向CHに平行になる姿勢でケース10内に収容されてなり、蓄電デバイス1は、ケース10の第1主壁部11と第2主壁部12とで、電極体50の電極積層部50eを電極体厚み方向FHに弾性的に圧縮してなる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電デバイスを備える蓄電モジュールであって、
上記蓄電デバイスは、
直方体箱状のケースと上記ケース内に収容された電極体とを備え、
上記ケースは、
矩形状の第1主壁部、上記第1主壁部に対向する矩形状の第2主壁部、及び、上記第1主壁部と上記第2主壁部との間を結び、ケース厚み方向に延びる矩形状の4つの側壁部を有し、
上記電極体は、
電極板を含み、
上記電極板が電極体厚み方向に積層された直方体状の電極積層部を有し、
上記電極体厚み方向が上記ケース厚み方向に平行になる姿勢で上記ケース内に収容されてなり、
上記蓄電デバイスは、
上記ケースの上記第1主壁部と上記第2主壁部とで、上記電極体の上記電極積層部を上記電極体厚み方向に弾性的に圧縮してなる
蓄電モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電モジュールであって、
前記蓄電デバイスの前記ケースは、
前記第2主壁部及び4つの前記側壁部をなし、4つの上記側壁部で構成された矩形状の開口部を有する有底角筒状のケース本体部材と、
前記第1主壁部をなし、上記ケース本体部材の上記開口部の開口周縁部に全周にわたり蓋周縁部が接合された矩形状の蓋部材と、を有する
蓄電モジュール。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電モジュールであって、
複数の前記蓄電デバイスは、前記ケース厚み方向に積層されてなり、
上記蓄電デバイスの前記ケースのうち前記第1主壁部及び前記第2主壁部の少なくともいずれかに、上記ケース厚み方向の厚み方向内側に向けて凹設され、隣り合う上記蓄電デバイス同士の間に、冷却エアを流通させるデバイス冷却路を構成するケース凹部を有する
蓄電モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電モジュールであって、
前記蓄電デバイスは、
前記ケースのうち前記側壁部のいずれかに固設され、上記ケース内で前記電極体に接続し、当該側壁部を貫通して上記ケース外まで延びる電極端子を備えており、
前記ケース凹部は、
前記デバイス冷却路の流出口から流出する前記冷却エアにより、または、上記デバイス冷却路の流入口に流入する上記冷却エアにより、上記電極端子を冷却する形態を有する
蓄電モジュール。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の蓄電モジュールであって、
前記蓄電デバイスの前記ケースの表面に、隣り合う他の蓄電デバイスと絶縁する絶縁層を有する
蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直方体箱状のケース内に電極体が収容された角形の蓄電デバイスを複数備える蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
直方体箱状のケース内に電極体が収容された複数の角形電池を、そのケース厚み方向に積層した電池モジュールが知られている。このうち、特に車両等に搭載されて長期間にわたり使用される電池モジュールでは、各電池のサイクル特性を向上させるなどの理由から、各電池を積層方向に圧縮する必要がある。詳細には、ケース内に収容された電極体の電極積層部をそれぞれ電極体厚み方向に圧縮する必要がある。そこで、従来の電池モジュールでは、一対のエンドプレート及び複数の拘束バンドからなる電池外部の拘束部材を用いて、積層された複数の電池を外部拘束し、各電極体の電極積層部をそれぞれ電極体厚み方向に圧縮している。関連する従来技術として、例えば特許文献1,2が挙げられる(特許文献1の図1、請求項1、及び、特許文献2の図1、請求項1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-32581号公報
【特許文献2】特開2016-91665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、拘束部材を用いて電池モジュールをなす複数の電池を外部拘束すると、コスト高になる、体格が大きくなる、重量が増える、部品点数が増えるなどの課題がある。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、複数の蓄電デバイスを備える蓄電モジュールにおいて、各蓄電デバイスが蓄電デバイス自身によって電極体の電極積層部を電極体厚み方向に弾性的に圧縮してなる蓄電モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、複数の蓄電デバイスを備える蓄電モジュールであって、上記蓄電デバイスは、直方体箱状のケースと上記ケース内に収容された電極体とを備え、上記ケースは、矩形状の第1主壁部、上記第1主壁部に対向する矩形状の第2主壁部、及び、上記第1主壁部と上記第2主壁部との間を結び、ケース厚み方向に延びる矩形状の4つの側壁部を有し、上記電極体は、電極板を含み、上記電極板が電極体厚み方向に積層された直方体状の電極積層部を有し、上記電極体厚み方向が上記ケース厚み方向に平行になる姿勢で上記ケース内に収容されてなり、上記蓄電デバイスは、上記ケースの上記第1主壁部と上記第2主壁部とで、上記電極体の上記電極積層部を上記電極体厚み方向に弾性的に圧縮してなる蓄電モジュールである。
【0007】
上述の蓄電モジュールを構成する蓄電デバイスは、ケースの第1主壁部と第2主壁部とで、電極体の電極積層部を電極体厚み方向に弾性的に圧縮している。即ち、蓄電デバイスは、蓄電デバイス自身によって電極体の電極積層部を弾性的に圧縮している自己圧縮型である。このため、蓄電モジュールは、拘束部材によって各蓄電デバイスの電極体の電極積層部を圧縮する必要がなく、拘束部材を用いなくて済む、或いは、簡易な拘束部材による外部拘束で足りる。
【0008】
なお、「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池等の二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタなどが挙げられる。
【0009】
(2)更に(1)に記載の蓄電モジュールであって、前記蓄電デバイスの前記ケースは、前記第2主壁部及び4つの前記側壁部をなし、4つの上記側壁部で構成された矩形状の開口部を有する有底角筒状のケース本体部材と、前記第1主壁部をなし、上記ケース本体部材の上記開口部の開口周縁部に全周にわたり蓋周縁部が接合された矩形状の蓋部材と、を有する蓄電モジュールとすると良い。
【0010】
上述の蓄電モジュールを構成する蓄電デバイスは、ケースが、第2主壁部及び4つの側壁部をなすケース本体部材に、第1主壁部をなす蓋部材を接合したものであるため、自己圧縮型の蓄電デバイスを容易に製造でき、安価な蓄電モジュールとすることができる。
【0011】
(3)更に(1)または(2)に記載の蓄電モジュールであって、複数の前記蓄電デバイスは、前記ケース厚み方向に積層されてなり、上記蓄電デバイスの前記ケースのうち前記第1主壁部及び前記第2主壁部の少なくともいずれかに、上記ケース厚み方向の厚み方向内側に向けて凹設され、隣り合う上記蓄電デバイス同士の間に、冷却エアを流通させるデバイス冷却路を構成するケース凹部を有する蓄電モジュールとすると良い。
【0012】
従来の電池モジュールでは、隣り合う蓄電デバイス同士の間にスペーサをそれぞれ配置し、このスペーサによって、隣り合う電池同士の間に、冷却エアを流通させるデバイス冷却路を形成している(前述の特許文献1の図1、請求項1、及び、特許文献2の図1、請求項1等を参照)。
これに対し、上述の蓄電モジュールでは、蓄電デバイスのケースのうち第1主壁部及び第2主壁部の少なくともいずれかに上述のケース凹部を設け、このケース凹部により、隣り合う蓄電デバイス同士の間に冷却エアのデバイス冷却路を構成している。このため、隣り合う蓄電デバイス同士の間に、デバイス冷却路をなすスペーサを配置する必要がない。
【0013】
(4)更に(3)に記載の蓄電モジュールであって、前記蓄電デバイスは、前記ケースのうち前記側壁部のいずれかに固設され、上記ケース内で前記電極体に接続し、当該側壁部を貫通して上記ケース外まで延びる電極端子を備えており、前記ケース凹部は、前記デバイス冷却路の流出口から流出する前記冷却エアにより、または、上記デバイス冷却路の流入口に流入する上記冷却エアにより、上記電極端子を冷却する形態を有する蓄電モジュールとすると良い。
【0014】
上述の蓄電モジュールでは、ケース凹部が上述の形態を有するので、冷却エアによって電極端子を冷却できる。
【0015】
(5)更に(1)~(4)のいずれかに記載の蓄電モジュールであって、前記蓄電デバイスの前記ケースの表面に、隣り合う他の蓄電デバイスと絶縁する絶縁層を有する蓄電モジュールとすると良い。
【0016】
上述の蓄電モジュールでは、蓄電デバイスのケースの表面に上述の絶縁層を有するので、隣り合う蓄電デバイスのケース同士を電気的に絶縁できる。
【0017】
なお、「絶縁層」としては、例えば、ケースの表面に絶縁フィルムを貼り付けることにより形成された、絶縁フィルムからなる絶縁層や、ケースをシュリンクフィルムで包むことによりケースの表面に設けられた、シュリンクフィルムの一部からなる絶縁層、ケースの表面に樹脂をコーティングすることにより形成された絶縁層などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る電池の第1主壁部側から見た斜視図である。
図2】実施形態に係る電池の第2主壁部側から見た斜視図である。
図3】実施形態に係る電池のうち、ケースの第1主壁部の平面図である。
図4】実施形態に係る電池のうち、ケースの第2主壁部の平面図である。
図5】実施形態に係る電池の上面図である。
図6】実施形態に係る電池の底面図である。
図7】実施形態に係る電池のケース幅方向及びケース厚み方向に沿う、図1図4におけるA-A矢視断面図である。
図8】実施形態に係る電池の分解斜視図である。
図9】実施形態に係る電極体の斜視図である。
図10】ケース厚み方向に重ねた複数の電池の上面図である。
図11】ケース厚み方向に重ねた複数の電池の底面図である。
図12】実施形態に係る電池モジュールの部分破断断面図である。
図13】実施形態に係る電池の製造方法に関し、ケース本体部材内に電極体を収容した様子を示す説明図である。
図14】実施形態に係る電池の製造方法に関し、外部の力を掛けて、電極体を電極体厚み方向に押圧する様子を示す説明図である。
図15】実施形態に係る電池の製造方法に関し、蓋部材の蓋周縁部をケース本体部材の開口周縁部にレーザ溶接する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1及び図2に本実施形態に係る電池(蓄電デバイス)1の斜視図を示す。また図3に電池1のうちケース10の第1主壁部11の平面図を、図4に電池1のうちケース10の第2主壁部12の平面図を、図5に電池1の上面図を、図6に電池1の底面図を示す。また図7に電池1の断面図を、図8に電池1の分解斜視図を示す。また図9に電極体50の斜視図を示す。また図10及び図11に、ケース厚み方向CHに重ねた複数の電池1の上面図及び底面図を示す。更に図12に本実施形態に係る電池モジュール(蓄電モジュール)100の部分破断断面図を示す。なお、以下では、ケース高さ方向AH、ケース幅方向BH、ケース厚み方向CH、電極体軸線方向DH、電極体幅方向EH及び電極体厚み方向FHを、図1図12に示す方向と定めて説明する。
【0020】
電池1は、角形(直方体状)で密閉型のリチウムイオン二次電池である。電池モジュール100は、複数の電池1を備える。この電池モジュール100は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される。
まず電池1について説明する。この電池1は、ケース10と、ケース10内に収容された扁平状捲回型の電極体50と、ケース10にそれぞれ支持された正極端子(電極端子)60及び負極端子(電極端子)70等から構成されている。電極体50は、ケース10内で、絶縁フィルムからなる袋状の図示しない絶縁ホルダに覆われている。またケース10内には、電解液3が収容されており、その一部は電極体50内に含浸され、残りはケース10の底壁部である第2側壁部14上に溜まっている。
【0021】
このうちケース10は、金属(本実施形態ではアルミニウム)からなる。このケース10は、直方体箱状であり、各々矩形状をなす第1主壁部11、第2主壁部12及び4つの側壁部13~16(第1側壁部13、第2側壁部14、第3側壁部15及び第4側壁部16)を有する。
第1主壁部11及び第2主壁部12は、側壁部13~16よりも面積が広い。第1主壁部11及び第2主壁部12は互いに対向しており、第1主壁部11がケース厚み方向CHの一方側CH1(図1及び図8中、右手前側、図2中、右奥側、図5中、下側、図6及び図7中、上側)、第2主壁部12はケース厚み方向CHの他方側CH2(図1及び図8中、左奥側、図2中、左手前側、図5中、上側、図6及び図7中、下側)に位置する。
【0022】
一方、側壁部13~16は、第1主壁部11と第2主壁部12との間を結んで、ケース厚み方向CHにそれぞれ延びている。第1側壁部13と第2側壁部14は互いに対向しており、第1側壁部13がケース高さ方向AHの上側AH1、第2側壁部14がケース高さ方向AHの下側AH2に位置する。また第3側壁部15と第4側壁部16は互いに対向しており、第3側壁部15がケース幅方向BHの一方側BH1、第4側壁部16がケース幅方向BHの他方側BH2に位置する。
【0023】
このケース10は、矩形状の開口部21cを有角筒状のケース本体部材21と、矩形状の蓋部材31とから構成されている。このうちケース本体部材21は、前述の第2主壁部12及び4つの側壁部13~16をなし、ケース本体部材21の開口部21cは、4つの側壁部13~16で構成されている。一方、蓋部材31は、前述の第1主壁部11をなし、ケース本体部材21の開口部21cを閉塞している。具体的には、蓋部材31の蓋周縁部31fが全周にわたりケース本体部材21の開口部21cの開口周縁部21fに接合(溶接)されている。
【0024】
ケース10の上壁部でもある第1側壁部13には、ケース10の内圧が開弁圧を超えたときに破断して開弁する安全弁17が設けられている。また第1側壁部13には、ケース10の内外を連通する注液孔13kが設けられており、アルミニウムからなる円板状の封止部材18で気密に封止されている。
更に第1側壁部13のうち、ケース幅方向BHの一方側BH1の端部近傍には、正極端子60が固設されている。具体的には、正極端子60は、アルミニウムからなる複数の金属部材を加締め接続してなり、複数の樹脂部材からなる樹脂部65を介して、第1側壁部13と絶縁された状態で第1側壁部13に固設されている。この正極端子60は、ケース10内で、電極体50の正極集電部50cに接続し導通する一方、第1側壁部13を貫通してケース10外まで延びている。
【0025】
また第1側壁部13のうち、ケース幅方向BHの他方側BH2の端部近傍には、負極端子70が固設されている。具体的には、負極端子70は、銅からなる複数の金属部材を加締め接続してなり、複数の樹脂部材からなる樹脂部75を介して、第1側壁部13と絶縁された状態で第1側壁部13に固設されている。この負極端子70は、ケース10内で、電極体50の負極集電部50dに接続し導通する一方、第1側壁部13を貫通してケース10外まで延びている。
【0026】
ケース10の第1主壁部11には、ケース厚み方向CHの厚み方向内側CH3に向けて凹むケース凹部11eが設けられている(図1図3図7及び図8参照)。このケース凹部11eは、第1主壁部11の周囲部11sを除く、第1主壁部11の中央部をなす。ケース凹部11eは、電極体50の電極積層部50eに対向しており、ケース10の第1主壁部11及び第2主壁部12による弾性的な圧縮により、電極積層部50eを電極体厚み方向FHに押圧している。
【0027】
ケース10の第2主壁部12には、ケース厚み方向CHの厚み方向内側CH3に向けて凹むケース凹部12eが設けられている(図2図4図8図10及び図11参照)。このケース凹部12eは、第2主壁部12の中央部をなす第1凹部12e1と、第2主壁部12の周囲部のうち、ケース高さ方向AHの下側AH2でケース幅方向BHの中央に位置する第2凹部12e2と、第2主壁部12の周囲部のうち、ケース高さ方向AHの上側AH1でケース幅方向BHの両端近傍(正極端子60及び負極端子70の近傍)にそれぞれ位置する第3凹部12e3とからなる。なお、第2主壁部12の周囲部のうち、第2凹部12e2及び第3凹部12e3を除く、厚み方向内側CH3に凹んでいない部位が、部分周囲部12sである。ケース凹部12eのうち第1凹部12e1は、電極体50の電極積層部50eに対向しており、ケース10の第1主壁部11及び第2主壁部12による弾性的な圧縮により、電極積層部50eを電極体厚み方向FHに押圧している。
【0028】
ケース凹部11e,12eは、複数の電池1を同じ向きでケース厚み方向CHに積層したときに(図10図12参照)、隣り合う電池1同士の間に、冷却エアARを流通させるデバイス冷却路130を構成する。このデバイス冷却路130は、冷却エアARを流通させて電極体50の電極積層部50eを冷却する冷却部130aと、冷却エアARをデバイス冷却路130の外部から(具体的にはケース高さ方向AHの下側AH2から)冷却部130a内に流入させる1つの流入口130bと、冷却部130a内の冷却エアARをデバイス冷却路130の外部に(具体的にはケース高さ方向AHの上側AH1に)流出させる2つの流出口130cとを有する。
【0029】
デバイス冷却路130の冷却部130aは、一の電池1の第1主壁部11のうちケース凹部11eと、これに隣り合う他の電池1の第2主壁部12のうちケース凹部12eの第1凹部12e1とが対向することによって構成される直方体状の空間である。またデバイス冷却路130の流入口130bは、一の電池1の第1主壁部11のうち周囲部11sと、これに隣り合う他の電池1の第2主壁部12のうちケース凹部12eの第2凹部12e2とが対向することによって構成される。またデバイス冷却路130の2つの流出口130cは、それぞれ、一の電池1の第1主壁部11のうち周囲部11sと、これに隣り合う他の電池1の第2主壁部12のうちケース凹部12eの第3凹部12e3とが対向することによって構成される。
【0030】
またケース10の表面10m、具体的には、第2主壁部12の部分周囲部12sの表面12smには、絶縁層80が形成されている。この絶縁層80は、部分周囲部12sの表面12smに貼り付けられた絶縁フィルムからなる。このため、複数の電池1をケース厚み方向CHに積層したときに、隣り合う電池1のケース10同士が、具体的には、一方の電池1の第1主壁部11のうち周囲部11sと、他方の電池1の第2主壁部12のうち部分周囲部12sとが、直接当接することなく、絶縁層80を介して当接する。従って、隣り合う電池1のケース10同士を電気的に絶縁できる。
【0031】
次に電極体50について説明する(図1図7図9参照)。この電極体50は、帯状の正極板(電極板)51と帯状の負極板(電極板)54とを、帯状で樹脂製の多孔質膜からなる一対のセパレータ57を介して互いに重ね、捲回軸線DXの周りに円筒状に捲回した後、扁平状にプレスしたものである。即ち、電極体50は、電極体幅方向EHの両端部にそれぞれ位置する一対の電極R部50rと、これらの間に位置する電極積層部50eとを有する。電極R部50rは、正極板51、負極板54及びセパレータ57が半円筒状に屈曲しつつ重なった半円柱状の部位である。一方、電極積層部50eは、正極板51、負極板54及びセパレータ57が平板状に電極体厚み方向FHに積層された直方体状の部位である。更に電極体50は、捲回軸線DXに沿う電極体軸線方向DHの一方側DH1の端部に、後述する正極集電部50cを、電極体軸線方向DHの他方側DH2の端部に、後述する負極集電部50dを有する。
【0032】
電極体50は、電極体軸線方向DHがケース幅方向BHに平行で、電極体幅方向EHがケース高さ方向AHに平行で、電極体厚み方向FHがケース厚み方向CHに平行となる姿勢で、ケース10内に収容されている。また電極体50は、電極体厚み方向FH(ケース厚み方向CH)に圧縮された状態で、ケース10内に収容されている。即ち、電池1は、自己圧縮型の電池であり、ケース10が弾性変形し、ケース10の第1主壁部11と第2主壁部12とで、電極体50の電極積層部50eを電極体厚み方向FHに弾性的に圧縮している。
【0033】
正極板51は、帯状のアルミニウム箔からなる正極集電箔52を有する。この正極集電箔52の両主面上には、それぞれリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質粒子を含む正極活物質層53が帯状に形成されている。正極板51のうち、幅方向の片方の端部は、正極集電箔52上に正極活物質層53が存在せず、正極集電箔52が露出している。この正極集電箔52の露出部は、電極体50において、電極積層部50eから電極体軸線方向DHの一方側DH1に渦巻き状をなして突出し、前述の正極集電部50cを形成している。正極集電部50cは、正極端子60と接続している。
【0034】
負極板54は、帯状の銅箔からなる負極集電箔55を有する。この負極集電箔55の両主面上には、それぞれリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質粒子を含む負極活物質層56が帯状に形成されている。負極板54のうち、幅方向の片方の端部は、負極集電箔55上に負極活物質層56が存在せず、負極集電箔55が露出している。この負極集電箔55の露出部は、電極体50において、電極積層部50eから電極体軸線方向DHの他方側DH2に渦巻き状をなして突出し、前述の負極集電部50dを形成している。負極集電部50dは、負極端子70と接続している。
【0035】
次に、電池モジュール100について説明する(図12図10及び図11参照)。電池モジュール100は、ケース厚み方向CHに積層された複数の電池1と、これらを収容するパックケース110とを備える。
パックケース110は、樹脂からなり、矩形状の開口部110cを有する有角筒状である。パックケース110の底壁部111には、複数の貫通孔111hが設けられている。
ケース厚み方向CHに積層された電池1の正極端子60同士及び負極端子70同士は、それぞれバスバ(導電接続部材)120を介して電気的に接続されており、電池モジュール100を構成する各電池1が並列に接続されている。バスバ120は、矩形板状であり、バスバ120と正極端子60または負極端子70とは、それぞれ溶接により接合されている。
【0036】
前述のように、各電池1には、第1主壁部11にケース凹部11eが設けられ、第2主壁部12にケース凹部12eが設けられているため、電池モジュール100において隣り合う電池1同士の間には、それぞれ冷却エアARを流通させるデバイス冷却路130が構成されている。そのデバイス冷却路130は、前述のように、冷却部130aと1つの流入口130bと2つの流出口130cとを有する。パックケース110の底壁部111に、下側AH2から上側AH1に向けて冷却エアARを供給すると、冷却エアARは、パックケース110の底壁部111に設けられた各貫通孔111hを通じて、パックケース110内に流れる。更にこの冷却エアARは、隣り合う電池1同士の間に構成された各デバイス冷却路130の流入口130bを通じて、各デバイス冷却路130の冷却部130a内に流通する。
【0037】
その後、2つの流出口130cを通じて、デバイス冷却路130の外部に(上側AH1に)流出する。各流出口130cから流出した冷却エアARの一部は、流出口130cの近傍に位置する正極端子60または負極端子70に接触するため、この冷却エアARによって正極端子60及び負極端子70を冷却できる。また冷却エアARは、バスバ120にも当たるため、バスバ120を冷却でき、これによって間接的に正極端子60及び負極端子70を冷却できる。
【0038】
以上で説明したように、電池モジュール100を構成する各電池1は、ケース10の第1主壁部11と第2主壁部12とで、電極体50の電極積層部50eを電極体厚み方向FHに弾性的に圧縮している。即ち、各電池1は、電池1自身によって電極体50の電極積層部50eを弾性的に圧縮している自己圧縮型である。このため、電池モジュール100は、拘束部材によって各電池1の電極体50の電極積層部50eを圧縮する必要がなく、積層された電池1をパックケース110に収容するだけの簡易な外部拘束で足りる。
【0039】
更に本実施形態では、各電池1は、ケース10が、第2主壁部12及び4つの側壁部13~16を有するケース本体部材21に、第1主壁部11をなす蓋部材31を接合したものであるため、後述するように自己圧縮型の電池1を容易に製造でき、安価な電池モジュール100とすることができる。
また本実施形態では、各電池1のケース10のうち第1主壁部11及び第2主壁部12にケース凹部11e,12eを設け、これらのケース凹部11e,12eにより、隣り合う電池1同士の間に冷却エアARのデバイス冷却路130を構成している。このため、隣り合う電池1同士の間に、デバイス冷却路をなすスペーサを配置する必要がない。
【0040】
また本実施形態では、各電池1に設けたケース凹部11e,12eは、デバイス冷却路130の流出口130cから流出する冷却エアARにより、正極端子60及び負極端子70を冷却する形態を有する。このため、電池モジュール100は、流出口130cから流出する冷却エアARによって正極端子60及び負極端子70を冷却できる。
また本実施形態では、各電池1のケース10の表面10m(具体的には第2主壁部12の部分周囲部12sの表面12sm)に絶縁層80を有し、隣り合う電池1のケース10同士が絶縁層80を介して当接しているので、隣り合う電池1のケース10同士を電気的に絶縁できる。
【0041】
次いで、電池1及び電池モジュール100の製造方法について説明する(図13図15参照)。まず電池1を製造する。即ち、予め、正極端子60及び負極端子70を固設したケース本体部材21と、蓋部材31とを用意しておく。また各々帯状をなす正極板51、負極板54及び一対のセパレータ57を、捲回軸線DXの周りに円筒状に捲回した後、扁平状にプレスして、電極体50を形成する。更にこの電極体50を袋状の絶縁ホルダ(不図示)で包んでおく。
【0042】
そして、正極端子60及び負極端子70を固設したケース本体部材21内に、絶縁ホルダで包んだ電極体50を収容する(図13参照)。具体的には、押圧装置500の平坦な載置台510の上に、ケース本体部材21を、その第2主壁部12の全体が載置台510に当接する姿勢で載置する。その後、ケース本体部材21内に、電極体50を電極体軸線方向DHがケース幅方向BHに平行で、電極体幅方向EHがケース高さ方向AHに平行で、電極体厚み方向FHがケース厚み方向CHに平行となる姿勢で収容する。その後、電極体50の正極集電部50cとケース本体部材21に固設された正極端子60とを、レーザ溶接により接続する。また電極体50の負極集電部50dとケース本体部材21に固設された負極端子70を、レーザ溶接により接続する。
【0043】
次にケース本体部材21内に収容された電極体50の上に蓋部材31を配置し、蓋部材31がなす第1主壁部11及びケース本体部材21の第2主壁部12に外部の力Faを掛けて、電極体50の電極積層部50eを電極体厚み方向FHに押圧し圧縮する(図14参照)。具体的には、押圧装置500の押圧部520を蓋部材31がなす第1主壁部11に当接させ、押圧部520と載置台510との間に蓋部材31及びケース本体部材21を挟んで、第1主壁部11及び第2主壁部12に外部の力Faを掛ける。そして、電極体50の電極積層部50eを電極体厚み方向FHに押圧し圧縮して、蓋部材31の蓋周縁部31fを全周にわたりケース本体部材21の開口部21cの開口周縁部21fに当接させる(図15参照)。
【0044】
次に押圧装置500により電極体50を押圧し圧縮した状態で、蓋部材31の蓋周縁部31fをケース本体部材21の開口周縁部21fに全周にわたり接合し、ケース10を形成する(図15参照)。本実施形態では、蓋周縁部31f及び開口周縁部21fにレーザ光LBを照射して、レーザ溶接を行うことで、蓋周縁部31fと開口周縁部21fを全周にわたり接合する。
その後、前述の外部の力Faを解除する。即ち、押圧装置500の押圧部520を蓋部材31から遠ざけて、外部の力Faを解除する。その際、既にケース10が形成されているため、圧縮された電極体50は、元の状態(厚み)には戻らない。外部の力Faを解除した後は、ケース10の第1主壁部11と第2主壁部12とで、電極体50の電極積層部50eを弾性的に圧縮した状態となる。
【0045】
次に電解液3を注液孔13kを通じてケース10内に注液し、電解液3を電極体50内に含浸させる。その後、注液孔13kを外部から封止部材18で覆い、封止部材18をケース10にレーザ溶接して、封止部材18とケース10との間を気密に封止する。またケース10の第2主壁部12のうち部分周囲部12sの表面12smに、絶縁フィルムを貼り付けて絶縁層80を形成する。
次にこの電池1に充電装置(不図示)を接続して、電池1に初充電を行う。その後、初充電した電池1を所定時間にわたり静置して、電池1をエージングする。
【0046】
次に複数の電池1を同じ向きでケース厚み方向CHに積層してパックケース110内に収容する(図12参照)。その後、各電池1の正極端子60同士及び負極端子70同士をそれぞれバスバ120を用いて接続する。具体的には、バスバ120を各正極端子60または各負極端子70に溶接する。かくして、電池モジュール100が完成する。
【0047】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば実施形態では、電極体として、偏平状捲回型の電極体50を例示したが、これに限られない。電極体は、例えば、複数の矩形状の正極板(電極板)と複数の矩形状の負極板(電極板)とを、それぞれ矩形状のセパレータを介して積層した積層型の電極体でもよい。
【0048】
また実施形態では、複数の電池1を一列に積層した電池モジュール100を例示したが、複数の電池1を複数列に積層した電池モジュールでもよい。
また実施形態では、電池モジュールをなす複数の電池1を並列接続しているが、電池1同士の電気的接続はこれに限らず、電池1同士を直列接続としてもよい。
【0049】
また実施形態では、ケース10の第1主壁部11と第2主壁部12にそれぞれケース凹部11e,12eを設け、これらのケース凹部11e,12eによって、冷却エアARのデバイス冷却路130を構成したがこれに限られない。第1主壁部11及び第2主壁部12のいずれか一方にのみ、ケース凹部を設け、このケース凹部によってデバイス冷却路を構成してもよい。
【0050】
また実施形態では、デバイス冷却路130の流出口130cから流出する冷却エアARによって正極端子60及び負極端子70を冷却する構成としているが、これに限られない。デバイス冷却路の流入口に流入する冷却エアARによって正極端子及び負極端子を冷却する構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 電池(蓄電デバイス)
10 ケース
10m (ケースの)表面
11 第1主壁部
11e ケース凹部
12 第2主壁部
12sm (部分周囲部の)表面
12e ケース凹部
13 第1側壁部(上壁部)
14 第2側壁部(底壁部)
15 第3側壁部
16 第4側壁部
21 ケース本体部材
21c 開口部
21f 開口周縁部
31 蓋部材
31f 蓋周縁部
50 電極体
50e 電極積層部
51 正極板(電極板)
54 負極板(電極板)
60 正極端子(電極端子)
70 負極端子(電極端子)
80 絶縁層
100 電池モジュール(蓄電モジュール)
110 パックケース
120 バスバ(導電接続部材)
130 デバイス冷却路
130a 冷却部
130b 流入口
130c 流出口
CH ケース厚み方向
CH3 厚み方向内側
FH 電極体厚み方向
AR 冷却エア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15