(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116910
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】光学フィルム片の製造方法および長尺状光学フィルムの管理方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022781
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 史枝
(72)【発明者】
【氏名】喜多川 丈治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149DA02
2H149DA12
2H149DB01
2H149FA13Y
2H149FA26Y
2H149FA58Y
2H149FA66
2H149FB05
2H149FB06
2H149FD05
2H149FD48
(57)【要約】
【課題】本発明は、高精細なディスプレイ付きゴーグル等の表示システムの製造に適した光学部材の提供を主たる目的とする。
【解決手段】光学フィルム片の製造方法であって、位相差部材を含む、第1の長尺状光学フィルムを準備する工程と、前記第1の長尺状光学フィルムを長尺方向に沿ってスリットして、複数の第2の長尺状光学フィルムを得る工程と、を含み、前記第1の長尺状光学フィルムの幅が、前記光学フィルム片の幅の10倍以上であり、前記第2の長尺状光学フィルムの幅が、前記光学フィルム片の幅の1.1倍以上3.0倍以下である、製造方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルム片の製造方法であって、
位相差部材を含む、第1の長尺状光学フィルムを準備する工程と、
前記第1の長尺状光学フィルムを長尺方向に沿ってスリットして、複数の第2の長尺状光学フィルムを得る工程と、を含み、
前記第1の長尺状光学フィルムの幅が、前記光学フィルム片の幅の10倍以上であり、
前記第2の長尺状光学フィルムの幅が、前記光学フィルム片の幅の1.1倍以上3.0倍以下である、製造方法。
【請求項2】
前記第2の長尺状光学フィルムを長尺方向に搬送しながら、前記光学フィルム片を連続的に打ち抜く工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2の長尺状光学フィルムにおいて、長尺方向における面内位相差のばらつきが1.5nm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記複数の第2の長尺状光学フィルムを、面内位相差に基づいて2つ以上の群に分類する工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記分類する工程が、前記複数の第2の長尺状光学フィルムを、所定の面内位相差の幅ずつ2つ以上の群に分類することを含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記面内位相差が、前記スリットの前および/または前記スリットの後に測定される、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記面内位相差が、前記第2の長尺状光学フィルムの先端の2箇所以上において測定される、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記面内位相差が、前記第2の長尺状光学フィルムの末端の2箇所以上においてさらに測定される、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1の長尺状光学フィルムの長さが、100m以上2000m以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1の長尺状光学フィルムを準備する工程が、幅方向における面内位相差のばらつきが5nm以下であり、長尺方向における面内位相差のばらつきが1.5nm以下である長尺状光学フィルムを第1の長尺状光学フィルムとして選択することを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
位相差部材を含む、第1の長尺状光学フィルムを準備する工程と、
前記第1の長尺状光学フィルムを長尺方向に沿ってスリットして、複数の第2の長尺状光学フィルムを得る工程と、
前記複数の第2の長尺状光学フィルムを、面内位相差に基づいて2つ以上の群に分類する工程と、を含む、
長尺状光学フィルムの管理方法。
【請求項12】
前記分類する工程が、前記複数の第2の長尺状光学フィルムを、所定の面内位相差の幅ずつ2つ以上の群に分類することを含む、請求項11に記載の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ付きゴーグル等の表示システムに用いられる光学フィルム片の製造方法および長尺状光学フィルムの管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、偏光部材、位相差部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。VRゴーグルは様々な場面での利用が検討されていることから、その高精細化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高精細なディスプレイ付きゴーグル等の表示システムの製造に適した光学部材の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の実施形態による光学フィルム片の製造方法は、位相差部材を含む、第1の長尺状光学フィルムを準備する工程と、上記第1の長尺状光学フィルムを長尺方向に沿ってスリットして、複数の第2の長尺状光学フィルムを得る工程と、を含み、上記第1の長尺状光学フィルムの幅が、上記光学フィルム片の幅の10倍以上であり、上記第2の長尺状光学フィルムの幅が、上記光学フィルム片の幅の1.1倍以上3.0倍以下である。
[2]上記[1]において、上記製造方法は、上記第2の長尺状光学フィルムを長尺方向に搬送しながら、上記光学フィルム片を連続的に打ち抜く工程をさらに含み得る。
[3]上記[1]または[2]において、上記第2の長尺状光学フィルムにおいて、長尺方向における面内位相差のばらつきが1.5nm以下であり得る。
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、上記製造方法は、上記複数の第2の長尺状光学フィルムを、面内位相差に基づいて2つ以上の群に分類する工程をさらに含み得る。
[5]上記[4]において、上記分類する工程が、上記複数の第2の長尺状光学フィルムを、所定の面内位相差の幅ずつ2つ以上の群に分類することを含み得る。
[6]上記[4]または[5]において、上記面内位相差が、上記スリットの前および/または上記スリットの後に測定され得る。
[7]上記[4]から[6]のいずれかにおいて、上記面内位相差が、上記第2の長尺状光学フィルムの先端の2箇所以上において測定され得る。
[8]上記[7]において、上記面内位相差が、上記第2の長尺状光学フィルムの末端の2箇所以上においてさらに測定され得る。
[9]上記[1]から[8]のいずれかにおいて、上記第1の長尺状光学フィルムの長さが、100m以上2000m以下であり得る。
[10]上記[1]から[9]のいずれかにおいて、上記第1の長尺状光学フィルムを準備する工程が、幅方向における面内位相差のばらつきが5nm以下であり、長尺方向における面内位相差のばらつきが1.5nm以下である長尺状光学フィルムを第1の長尺状光学フィルムとして選択することを含み得る。
[11]本発明の実施形態による長尺状光学フィルムの管理方法は、位相差部材を含む、第1の長尺状光学フィルムを準備する工程と、上記第1の長尺状光学フィルムを長尺方向に沿ってスリットして、複数の第2の長尺状光学フィルムを得る工程と、上記複数の第2の長尺状光学フィルムを、面内位相差に基づいて2つ以上の群に分類する工程と、を含む。
[12]上記[11]において、上記分類する工程が、上記複数の第2の長尺状光学フィルムを、所定の面内位相差の幅ずつ2つ以上の群に分類することを含み得る。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態による光学フィルム片の製造方法によれば、面内位相差のばらつきが小さい光学フィルム片を得ることができる。このような光学フィルム片を用いることにより、高精細なディスプレイ付きゴーグル等の表示システムを好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態による光学フィルム片の製造方法で得られる光学フィルム片が適用され得る表示システムの概略の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2(a)および2(b)はそれぞれ、第1の長尺状光学フィルムの構成の一例を説明する概略断面図である。
【
図3】本発明の実施形態による光学フィルム片の製造方法の工程IIの一例を説明する模式図である。
【
図4】本発明の実施形態による光学フィルム片の製造方法の工程IIIの一例を説明する模式図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の実施形態による光学フィルム片の製造方法の工程IVの一例を説明する模式図であり、
図5(b)は
図5(a)を上から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特段の言及がない限り、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。また、本明細書において、「略平行」は、0°±10°である場合を包含し、例えば0°±5°、好ましくは0°±3°、より好ましくは0°±1°の範囲内であり、「略直交」は、90°±10°である場合を包含し、例えば90°±5°、好ましくは90°±3°、より好ましくは90°±1°の範囲内である。
【0011】
A.表示システムの概略
図1は、本発明の実施形態による光学フィルム片の製造方法で得られる光学フィルム片が適用され得る表示システムの概略の構成を示す模式図である。
図1では、表示システム2の各構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。表示システム2は、表示素子12と、反射型偏光部材14と、第一レンズ部16と、ハーフミラー18と、第一位相差部材20と、第二位相差部材22と、第二レンズ部24とを備えている。反射型偏光部材14は、表示素子12の表示面12a側である前方に配置され、表示素子12から出射された光を反射し得る。第一レンズ部16は表示素子12と反射型偏光部材14との間の光路上に配置され、ハーフミラー18は表示素子12と第一レンズ部16との間に配置されている。第一位相差部材20は表示素子12とハーフミラー18との間の光路上に配置され、第二位相差部材22はハーフミラー18と反射型偏光部材14との間の光路上に配置されている。図示しないが、反射型偏光部材14と第二レンズ部24との間には、視認性向上の観点から、吸収型偏光部材が配置されてもよい。このとき、反射型偏光部材14の反射軸と吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに略平行に配置され得、反射型偏光部材14の透過軸と吸収型偏光部材の透過軸とは互いに略平行に配置され得る。
【0012】
ハーフミラーから前方に配置される構成要素(図示例では、ハーフミラー18、第一レンズ部16、第二位相差部材22、反射型偏光部材14および第二レンズ部24)をまとめてレンズ部(レンズ部4)と称する場合がある。
【0013】
表示素子12は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面12aを有している。表示面12aから出射される光は、例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材(代表的には、偏光フィルム)を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0014】
第一位相差部材20は、第一位相差部材20に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得る第1のλ/4部材を含む。第一位相差部材が第1のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第一位相差部材は第1のλ/4部材に相当し得る。第一位相差部材20は、表示素子12に一体に設けられてもよい。
【0015】
ハーフミラー18は、表示素子12から出射された光を透過させ、反射型偏光部材14で反射された光を反射型偏光部材14に向けて反射させる。ハーフミラー18は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0016】
第二位相差部材22は、反射型偏光部材14およびハーフミラー18で反射させた光を、反射型偏光部材14を透過させ得る第2のλ/4部材を含む。第二位相差部材が第2のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第二位相差部材は第2のλ/4部材に相当し得る。第二位相差部材22は、第一レンズ部16に一体に設けられてもよい。
【0017】
第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材から出射された第2の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過せずにハーフミラー18に向けて反射される。このとき、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14で反射される。
【0018】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光は第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射される。ハーフミラー18で反射された第2の円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。このとき、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。
【0019】
反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0020】
例えば、表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とは、互いに略平行に配置されてもよいし、略直交に配置されてもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。第1のλ/4部材および第2のλ/4部材は、好ましくは遅相軸方向が互いに略平行または略直交となるように配置される。
【0021】
第1のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第1のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第1のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0022】
第2のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第2のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第2のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0023】
上述のとおり、表示システム2においては、表示素子12の表示面12aから前方に出射した直線偏光が、第1のλ/4部材および第2のλ/4部材をこの順に透過後、反射型偏光部材14での反射およびハーフミラー18での再反射により第2のλ/4部材をさらに2回透過し、反射型偏光部材14を透過して前方に出射することによって、視認者に視認される。よって、第1のλ/4部材または第2のλ/4部材の面内位相差のずれが大きいと、偏光が崩れて光漏れが生じ、反射されるべき光が視認されるべき光と混じって視認される(結果として、ぼやけた画像が視認される)という問題が生じ得る。これに対し、当該問題を防止し、高精細な画像表示を実現するためには、第1のλ/4部材および第2のλ/4部材の面内位相差の精度が高いことが望ましい。また、第1のλ/4部材および第2のλ/4部材の面内位相差が高度に一致していることが望ましい。
【0024】
B.光学フィルム片の製造方法
B-1.光学フィルム片の製造方法の概略
本発明の実施形態による光学フィルム片の製造方法は、
位相差部材を含む、第1の長尺状光学フィルムを準備する工程Iと、
上記第1の長尺状光学フィルムを長尺方向に沿ってスリットして、複数の第2の長尺状光学フィルムを得る工程IIと、を含み、
上記第1の長尺状光学フィルムの幅が、前記光学フィルム片の幅の10倍以上であり、
上記第2の長尺状光学フィルムの幅が、前記光学フィルム片の幅の1.1倍以上3.0倍以下である。
1つの実施形態において、上記光学フィルム片の製造方法は、上記複数の第2の長尺状光学フィルムを、面内位相差に基づいて2つ以上の群に分類する工程IIIをさらに含む。
1つの実施形態において、上記光学フィルム片の製造方法は、第2の長尺状光学フィルムを長尺方向に搬送しながら、上記光学フィルム片を連続的に打ち抜く工程IVをさらに含む。
広幅の位相差部材は、一般に、幅方向において面内位相差のばらつきを有することから、幅方向端部で打ち抜かれた光学フィルム片と幅方向中央部で打ち抜かれた光学フィルム片とでは、面内位相差の差が大きい場合がある。このように面内位相差にばらつきがある光学フィルム片をA項に記載の表示システムの製造に適用すると、高精細な表示システムを安定して製造することが困難である。これに対し、本発明の実施形態による光学フィルム片の製造方法によれば、広幅の長尺状光学フィルムを長尺方向に沿ってスリットして狭幅の長尺状光学フィルムとする。これにより、幅方向における面内位相差のばらつきが低減された長尺状光学フィルムを打ち抜き工程に供することができ、結果として、面内位相差のばらつきが抑制された光学フィルム片を効率的に得ることができる。
【0025】
本発明の実施形態による製造方法で得られる光学フィルム片は、任意の適切な形状を有することができる。1つの実施形態において、光学フィルム片は、略円形状である。本明細書中、略円形状とは、円形または楕円形を含み、さらに、円形または楕円形に近いと視認される程度の形状を含む。例えば、略円形状は、円形、楕円形、またはこれらの周に凹凸が形成された形状もしくはこれらの周の一部が直線で形成された形状等であってもよい。
【0026】
光学フィルム片の長径と短径との比率(短径/長径)は、例えば0.8以上1以下、また例えば0.9以上1以下であり得る。光学フィルム片の長径は、例えば40mm以上60mm以下、また例えば42mm以上50mm以下である。なお、光学フィルム片の長径および短径はそれぞれ、光学フィルム片の平行線間隔の最大値および最小値を意味する。
【0027】
以下、
図2~5を参照しながら、各工程について具体的に説明する。
【0028】
B-2.工程I
工程Iにおいては、位相差部材を含む、第1の長尺状光学フィルムを準備する。当該位相差部材は、例えば、A項に記載の表示システム2における第二位相差部材22であり、第2のλ/4部材としてのλ/4部材を含む。第1の長尺状光学フィルムは、ロール状に巻回されていてもよい。以下、ロール状に巻回された第1の長尺状光学フィルムを「親ロール」と称する場合がある。
【0029】
1つの実施形態において、第1の長尺状光学フィルムの長尺方向における面内位相差(例えば、Re(590))のばらつきは、例えば3nm以下、好ましくは1.5nm以下である。また、第1の長尺状光学フィルムの幅方向における面内位相差のばらつきは、例えば5nm以下、好ましくは3nm以下であり、例えば0.5nm以上である。面内位相差のばらつきが小さい第1の長尺状光学フィルムから第2の長尺状光学フィルムの作製を経て、光学フィルム片を作製することにより、本発明の効果が好適に得られ得る。長尺方向における面内位相差のばらつきは、長尺状光学フィルムの幅方向の任意の位置(例えば、幅方向の中央)において長尺方向に所定の長さ(例えば約50m以上であり、全長であってもよい)にわたって面内位相差を測定し、その最大値と最小値との差として求められ得る。また、幅方向における面内位相差のばらつきは、長尺状光学フィルムの長尺方向の任意の位置において幅方向に所定の間隔(例えば、約30mm~約350mm間隔)で複数個所の面内位相差を測定し、その最大値と最小値との差として求められ得る。
【0030】
図2(a)および2(b)はそれぞれ、第1の長尺状光学フィルムの構成の一例を説明する概略断面図である。
図2(a)に示される第1の長尺状光学フィルム30aは、粘着剤層32とλ/4部材22aと保護部材34とをこの順に含んでいる。
図2(a)に示される構成の光学フィルム30aによれば、位相差部材(表示システム2における第二位相差部材)22はλ/4部材(表示システム2における第2のλ/4部材)22aからなる。
図2(b)に示される第1の長尺状光学フィルム30bは、粘着剤層32とλ/4部材22aと屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示し得る部材(いわゆる、ポジティブCプレート)22bと保護部材34とをこの順に含んでいる。
図2(b)に示される構成の光学フィルム30bによれば、位相差部材(表示システム2における第二位相差部材)22はλ/4部材(表示システム2における第2のλ/4部材)22aとポジティブCプレート22bとを含む。換言すれば、位相差部材22は、λ/4部材22aとポジティブCプレート22bとの積層構造を有する。
図2(b)に示す構成とは異なり、位相差部材22において、λ/4部材22aがポジティブCプレート22bよりも保護部材34側に位置していてもよい。図示例の第1の長尺状光学フィルム30a、30bはいずれも、粘着剤層32表面をはく離ライナー36で保護されている。長尺状光学フィルム30a、30bから最終的に得られる光学フィルム片は、表示システム2の製造において、粘着剤層32を介して第一レンズ部16に貼り合わせられ得る。
【0031】
第1の長尺状光学フィルムの幅は、製造対象の光学フィルム片の幅の10倍以上であり、好ましくは15倍以上25倍以下であり、より好ましくは15倍以上20倍以下である。本明細書中、光学フィルム片の幅とは、第2の長尺状光学フィルムから光学フィルム片を打ち抜く際の打ち抜き幅(
図5において矢印X
1で示される長さ)または光学フィルム片の長径であり得、好ましくは打ち抜き幅である。1つの実施形態において、第1の長尺状光学フィルムの幅は、例えば500mm以上1500mm以下、また例えば900mm以上1200mm以下である。
【0032】
第1の長尺状光学フィルムの長さは、例えば100m以上2000m以下、また例えば500m以上1000m以下である。
【0033】
B-2-1.λ/4部材
A項において第2のλ/4部材について記載したとおり、上記λ/4部材22aの面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。λ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。λ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0034】
λ/4部材は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。λ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0035】
1つの実施形態において、λ/4部材は、樹脂フィルムの延伸フィルムであり、例えば、長尺状の樹脂フィルムが幅方向に延伸された延伸フィルムであり得る。
【0036】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。組み合わせる方法としては、例えば、ブレンド、共重合が挙げられる。λ/4部材が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0037】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、λ/4部材に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂およびλ/4部材の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0038】
樹脂フィルムの延伸フィルムであるλ/4部材の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μmであり、より好ましくは20μm~60μmである。
【0039】
1つの実施形態において、λ/4部材は、液晶化合物の配向固化層である。液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。λ/4部材においては、代表的には、棒状の液晶化合物がλ/4部材の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0040】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0041】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0042】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0043】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0044】
液晶配向固化層で構成されるλ/4部材の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは1μm~6μmであり、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0045】
B-2-2.ポジティブCプレート
上記ポジティブCプレート22bの厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nmであり、より好ましくは-70nm~-250nmであり、さらに好ましくは-90nm~-200nmであり、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。ポジティブCプレートの面内位相差Re(550)は、例えば10nm未満である。
【0046】
ポジティブCプレートは、任意の適切な材料で形成され得るが、ポジティブCプレートは、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムから構成される。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであってもよいし、液晶ポリマーであってもよい。このような液晶化合物およびポジティブCプレートの形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、ポジティブCプレートの厚みは、好ましくは0.5μm~5μmである。
【0047】
B-2-3.保護部材
上記保護部材34は、代表的には、基材を含む。基材は、任意の適切なフィルムで構成され得る。基材を構成するフィルムの主成分となる材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の樹脂が挙げられる。基材の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~40μmであり、さらに好ましくは15μm~35μmである。
【0048】
保護部材は、好ましくは、基材と基材上に形成される表面処理層とを有する。表面処理層を有する保護部材は、表面処理層が前方側に位置するように配置され得る。表面処理層は、任意の適切な機能を有し得る。表面処理層は、例えば、視認性を向上させる観点から、反射防止機能を有することが好ましい。また、表面処理層はハードコート層を含んでいてもよい。表面処理層の厚みは、好ましくは1μm~20μmであり、より好ましくは2μm~15μmであり、さらに好ましくは3μm~10μmである。
【0049】
保護部材が基材とその上に形成された表面処理層とを有する場合、当該表面処理層を保護するための第二保護部材がさらに設けられてもよい。第二保護部材としては、上記基材と同様のフィルムを用いることができる。
【0050】
B-2-4.粘着剤層
上記粘着剤層32を構成する粘着剤は、代表的には、ベースポリマーとして、(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、またはゴム系ポリマーを含有する。好ましくは、粘着剤は、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含有する(メタ)アクリル系粘着剤である。粘着剤層の厚みは、例えば12μm以上、好ましくは15μm以上であり、例えば100μm以下、好ましくは80μm以下である。
【0051】
B-2-5.はく離ライナー
はく離ライナー36は、代表的には、基材と、基材の粘着剤層32側の面に設けられた剥離処理層(例えばシリコーン処理層)とを備えている。基材は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂から形成される。
【0052】
B-2-6.製造方法
第1の長尺状光学フィルムは、任意の適切な方法で作製される。例えば、第1の長尺状光学フィルムは、上記各部材を長尺状に形成すること、および、必要により接着層を介して各部材を順次積層することを含む製造方法によって得ることができ、必要に応じてロール状に巻き取られる。上記積層は、好ましくはロールトゥロールで行われる。ここで、「ロールトゥロール」とは、ロール状のフィルムを搬送しながら互いの長尺方向を揃えて貼り合わせることをいう。接着層としては、粘着剤層または接着剤層が用いられる。
【0053】
1つの実施形態においては、上記のようにして作製された長尺状光学フィルムから長尺方向および/または幅方向における面内位相差のばらつきが上記所定の範囲内(具体的には、幅方向における面内位相差のばらつきが例えば5nm以下、長尺方向における面内位相差のばらつきが例えば3nm以下、また例えば1.5nm以下)にあるものを選択して第1の長尺状光学フィルムとして用いることができる。
【0054】
B-3.工程II
工程IIにおいては、
図3に示すように、工程Iで準備した第1の長尺状光学フィルム30を長尺方向に沿ってスリットして、複数の第2の長尺状光学フィルム40を得る。長尺方向へのスリットだけでなく、幅方向へのスリットを行うこともできる。これにより所定の幅および所定の長さを有する第2の長尺状光学フィルムを複数得ることができる。
【0055】
1つの実施形態において、第2の長尺状光学フィルム40は、ロール状に巻き取られてから次工程に供される(以下、ロール状の第2の長尺状光学フィルムを「子ロール」と称する場合がある)。
【0056】
第2の長尺状光学フィルムの幅は、製造対象の光学フィルム片の幅以上であり、製造対象の光学フィルム片の幅の例えば1.1倍以上、好ましくは1.2倍以上であり、例えば3.0倍以下、好ましくは2.0倍以下、より好ましくは1.5倍以下である。上記幅を有する第2の長尺状光学フィルムの幅方向における面内位相差(例えば、Re(590))のばらつきは、例えば3nm以下、好ましくは1.5nm以下であり得る。また、第2の長尺状光学フィルムの長尺方向における面内位相差(例えば、Re(590))のばらつきは、例えば3nm以下、好ましくは1.5nm以下であり得る。このような第2の長尺状光学フィルムによれば、1つの第2の長尺状光学フィルムから得られる光学フィルム片における面内位相差のばらつきを非常に小さくすることができる。
1つの実施形態において、第2の長尺状光学フィルムの幅は、例えば40mm以上200mm以下、また例えば45mm以上150mm以下、また例えば50mm以上120mm以下である。
1つの実施形態において、長尺方向に沿ったスリットによるフィルムの分割数(第1の長尺状光学フィルムが幅方向においていくつに分割されたかを意味する)は、例えば6以上、好ましくは10以上25以下、好ましくは15以上20以下である。
【0057】
第2の長尺状光学フィルムの長さは、例えば50m以上1000m以下、50m以上300m以下、または100m以上150m以下である。
【0058】
B-4.工程III
工程IIIにおいては、
図4に示すように、複数の第2の長尺状光学フィルム40を、面内位相差(実質的には、λ/4部材の面内位相差)に基づいて2つ以上の群に分類する。具体的には、工程IIIに先立って、複数の第2の長尺状光学フィルムの各々において、面内位相差(例えば、Re(590))を測定し、測定された面内位相差に基づいて、各群内の面内位相差のばらつきが全体の面内位相差のばらつきよりも小さくなるように、複数の第2の長尺状光学フィルムをN個の群に分類する。図示例ではA群とB群との2つの群に分類しているが、Nは、2以上の整数であればよく、例えば3以上であり、本発明の効果を好適に得る観点から、好ましくは2以上4以下であり、より好ましくは2または3である。
【0059】
面内位相差の測定は、例えば、スリット後に、第2の長尺状光学フィルムの先端および/または末端において、それぞれ2箇所以上(例えば、2箇所)において行われる。長尺方向における面内位相差のばらつきが小さい長尺状光学フィルムによれば、50m以上の長さを有する場合であっても、先端および/または末端での測定によってその全体における面内位相差を概ね把握することができる。1つの実施形態において、面内位相差の測定は、
図4の左側最上段の第2の長尺状光学フィルム40において「×」印で示されるように、フィルムの先端の幅方向において2箇所以上(例えば、先端から500mm以内の距離の2箇所以上(例えば、幅方向に所定の間隔で隔てられた複数箇所))において行われ、必要に応じて、末端の幅方向において2箇所以上(例えば、末端から500mm以内の距離の2箇所以上(例えば、幅方向に所定の間隔で隔てられた複数箇所))においても行われ得る。これらの測定の平均値を当該第2の長尺状光学フィルムの面内位相差とすることができる。
【0060】
また例えば、面内位相差の測定は、スリット前に、第1の長尺状光学フィルムに対して行われる。この場合、スリット前の第1の長尺状光学フィルムをスリット予定のラインに沿って区画し、当該区画の先端および/または末端に対応する箇所の面内位相差を上記と同様に測定し、スリット後に得られた当該区画に対応する第2の長尺状光学フィルムの面内位相差とすることができる。
【0061】
上記分類は、例えば、複数の第2の長尺状光学フィルムを、上記のようにして測定された面内位相差に基づいて所定の面内位相差の幅ずつ分類することによって行うことができる。各群の面内位相差の分類幅は、例えば2nm以下、好ましくは1nm以上1.5nm以下、より好ましくは1nm以上1.3nm以下とすることができる。
1つの実施形態において、当該分類は、予め設定した基準値から所定の面内位相差の幅ずつ分類することによって行われる。具体例として、146nmのRe(590)を基準値として2nmの分類幅(±1nmの分類幅)で分類する場合、例えば、145nm以上147nm未満のRe(590)を有する群、143nm以上145nm未満のRe(590)を有する群、147nm以上149nm未満のRe(590)を有する群、141nm以上143nm未満のRe(590)を有する群、149nm以上151nm未満のRe(590)を有する群等に順次分類することができる。
別の実施形態において、当該分類は、面内位相差の測定値が最も大きいものまたは最も小さいものから順に、所定の面内位相差の幅ずつ分類することによって行われる。面内位相差(例えば、Re(590))の分類幅は、例えば2nm以下、好ましくは1nm以上1.5nm以下、より好ましくは1nm以上1.3nm以下とすることができる。
以上のようにして分類された各群における第2の長尺状光学フィルム間の面内位相差のばらつきは、分類前の全ての第2の長尺状光学フィルム間の面内位相差のばらつきよりも小さくなる。
【0062】
B-5.工程IV
工程IVにおいては、
図5(a)に示すように、第2の長尺状光学フィルム40を長尺方向に搬送しながら、光学フィルム片50を連続的に打ち抜く。例えば、第2の長尺状光学フィルムは、表面保護フィルムとロールトゥロール方式で貼り合わせられた後に、光学フィルム片に打ち抜かれ得る。打ち抜かれた光学フィルム片は、必要に応じて品質検査等を経た後に、表示システム2の組み立てに供される。
【0063】
図5(b)は、
図5(a)を上から見た模式図である。上述のとおり、第2の長尺状光学フィルム40の幅X
2は光学フィルム片50の打ち抜き幅X
1の例えば1.1倍~3.0倍、好ましくは1.2倍~2.0倍、より好ましくは1.2倍~1.5倍である。よって、第2の長尺状光学フィルムの幅方向において打ち抜かれる光学フィルム片の数は、代表的には1つまたは2つであり、好ましくは1つである。広幅の親ロールを作製し、長尺方向に沿ってスリットして狭幅の子ロールを作製し、子ロール1つあたり幅方向に1つまたは2つ、好ましくは1つのみの光学フィルム片を打ち抜くことにより、面内位相差のばらつきが低減された光学フィルム片を得ることができる。さらにまた、面内位相差が近似する子ロールを同じ群に分類しておくことにより、同じ群に属する子ロールから得られた光学フィルム片は面内位相差の均一性が高いという特徴を有する。
【0064】
本発明の実施形態による製造方法で得られた光学フィルム片は、面内位相差の均一性が高いことから、第二位相差部材22を構成する部材として用いられることにより、高精細な表示システム2の効率的な生産に寄与することができる。さらにまた、高精細化に重要な第1のλ/4部材と第2のλ/4部材との面内位相差のマッチングが容易であるという利点も有する。
【0065】
C.長尺状光学フィルムの管理方法
本発明の実施形態による長尺状光学フィルムの管理方法は、
位相差部材を含む、第1の長尺状光学フィルムを準備する工程Aと、
上記第1の長尺状光学フィルムを長尺方向に沿ってスリットして、複数の第2の長尺状光学フィルムを得る工程Bと、
上記複数の第2の長尺状光学フィルムを、面内位相差に基づいて2つ以上の群に分類する工程Cと、を含む。
工程A、工程B、および工程Cについてはそれぞれ、B項に記載の工程I、工程II、および工程IIIと同様の説明を適用することができる。
上記管理方法によれば、広幅の長尺状光学フィルムを作製後、長尺方向に沿ってスリットして複数の狭幅の長尺状光学フィルムに分割することにより、さらには、複数の狭幅の長尺状光学フィルムを面内位相差に基づいて群分けすることにより、幅方向における面内位相差のばらつきが低減され、かつ、互いに近似した面内位相差を有する長尺状光学フィルム群を得ることができる。よって、狭幅の長尺状光学フィルムを群ごとに管理し、その後の打ち抜き工程に供することにより、所望の面内位相差を有し、かつ、面内位相差のばらつきが小さい光学フィルム片をまとめて得ることができる。
【実施例0066】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。なお、「部」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量部」を意味し、「%」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量%」を意味する。
【0067】
(1)厚み
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
(2)面内位相差Re(λ)
KOBRA(王子計測株式会社製)を用いて、23±2℃、65±15%RHにおける面内位相差を測定した。
【0068】
[λ/4部材Aの作製]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置に、ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60重量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21重量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28重量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77重量部(0.298mol)、および、触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2重量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み130μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度140℃、延伸倍率2.7倍で延伸し、ロール状に巻き取った。これにより、厚みが47μmのλ/4部材Aを得た。λ/4部材Aの幅方向中央部におけるRe(590)は147nmであった。
【0069】
[ポジティブCプレートAの作製]
下記化学式(1)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、垂直配向処理を施したPET基材に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、厚みが4μm、Rth(550)が-100nmのポジティブCプレートを基材上に形成した。
【化1】
【0070】
[親ロールの作製]
λ/4部材Aに紫外線硬化型接着剤(硬化後の厚み1μm)を介してポジティブCプレートAを貼り合わせ、基材を剥離して、[λ/4部材A/ポジティブCプレートA]の構成を有する位相差部材Aを得た。位相差部材Aのλ/4部材A側表面にアクリル系粘着剤(厚み50μm)およびはく離ライナーを貼り合わせた。また、位相差部材AのポジティブCプレートA側表面に保護部材としてハードコート層付アクリル系樹脂フィルムを、アクリル系樹脂フィルム側がポジティブCプレートA側となるように、アクリル系粘着剤(厚み23μm)を介して貼り合わせた。上記貼り合わせはいずれも、ロールトゥロールで行った。
以上より、[はく離ライナー/粘着剤層/λ/4部材A/ポジティブCプレートA/保護部材]の構成を有するロール状の光学フィルム(親ロール)を得た。親ロールの長さは1000mであり、幅は1120mmであった。
【0071】
[子ロールの作製1]
上記親ロールから光学フィルムを繰り出し、長尺方向に沿って所定の間隔でスリットし、ロール状に巻き取って3つのロールを含む子ロール1を得た。
[子ロールの作製2]
異なる間隔で長尺方向および/または幅方向へスリットしたこと以外は、子ロールの作製1と同様にして、種々の長さおよび幅を有する子ロール2~6を得た。
【0072】
[面内位相差のばらつき評価]
子ロール1~6に含まれる各ロールおよび親ロールに対して、幅方向に約60mm間隔の複数箇所におけるRe(590)を全長にわたって測定し、各測定箇所における測定値の平均値の最大値と最小値との差を幅方向における面内位相差のばらつきとした。結果を表1に示す。なお、表中、子ロール1~6の面内位相差のばらつきは、子ロール1~6に含まれる各ロールの幅方向における面内位相差のばらつきの平均値である。また、「幅方向の分割数」は、長尺方向に沿ったスリットによる幅方向への分割数(分割後のブロック数)である。なお、子ロール1~6に含まれる各ロールおよび親ロールにおいて、各測定箇所における長尺方向における面内位相差のばらつきはいずれも1.5nm以下であった。
【0073】
【0074】
表1に示されるとおり、狭幅の長尺状光学フィルムにおいては、広幅の長尺状光学フィルムにおいてよりも幅方向における面内位相差のばらつきが小さい。このような幅方向における面内位相差のばらつきが小さい(例えば1.5nm以下、1.2nm以下、1nm以下のばらつき)長尺状光学フィルムは、広幅の長尺状光学フィルムを長尺方向に沿ってスリットすることによって得ることができる。また、このような幅方向における面内位相差のばらつきが小さい長尺状光学フィルムを連続して打ち抜くことにより、面内位相差の均一性に優れた光学フィルム片を高い生産効率で得ることができる。
【0075】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。