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特開2024-116911表示システムの製造方法および光学フィルム群
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116911
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】表示システムの製造方法および光学フィルム群
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240821BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240821BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022782
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 史枝
(72)【発明者】
【氏名】望月 政和
(72)【発明者】
【氏名】喜多川 丈治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149BA02
2H149BA03
2H149DA04
2H149DA12
2H149EA02
2H149FB06
2H149FD05
2H149FD48
4F100AK25
4F100AK25E
4F100AK45
4F100AK45B
4F100AK45C
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB05
4F100CB05E
4F100EH46
4F100EH46C
4F100EJ37
4F100EJ37B
4F100GB41
4F100JL13
4F100JL13E
4F100JN06D
4F100JN10
4F100JN10A
4F100JN18
4F100JN18B
4F100JN18C
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高精細なディスプレイ付きゴーグル等の表示システムの製造方法および当該表示システムの製造に適した光学部材の提供を目的とする。
【解決手段】偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、前記表示素子の前方に配置され、前記表示素子から出射された光を反射する反射型偏光部材と、前記表示素子と前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射型偏光部材で反射された光を前記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、前記表示素子と前記ハーフミラーとの間の光路上に配置される第1のλ/4部材と、前記ハーフミラーと前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第2のλ/4部材と、を備える、ユーザに対して画像を表示する表示システムの製造方法。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、
前記表示素子の前方に配置され、前記表示素子から出射された光を反射する反射型偏光部材と、
前記表示素子と前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、
前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射型偏光部材で反射された光を前記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、
前記表示素子と前記ハーフミラーとの間の光路上に配置される第1のλ/4部材と、
前記ハーフミラーと前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第2のλ/4部材と、
を備える、ユーザに対して画像を表示する表示システムの製造方法であって;
前記第1のλ/4部材を含む光学フィルムを複数準備し、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類すること、
前記第2のλ/4部材を含む光学フィルムを複数準備し、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類すること、および、
前記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの複数の群および前記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの複数の群から面内位相差が適合する群の組み合わせを選択すること、
を含む、製造方法。
【請求項2】
前記分類後の各群における前記第1のλ/4部材を含む光学フィルム間の面内位相差のばらつきが3nm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記分類後の各群における前記第2のλ/4部材を含む光学フィルム間の面内位相差のばらつきが3nm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの長尺方向における面内位相差のばらつきが3nm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの長尺方向における面内位相差のばらつきが3nm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの一辺の長さが1000mm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの長さが50m以上1000m以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの面内位相差が、前記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの四隅において測定された面内位相差の平均値である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの面内位相差が、前記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの先端の2箇所以上において測定された面内位相差の平均値である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの面内位相差が、前記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの先端の2箇所以上および末端の2箇所以上において測定された面内位相差の平均値である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第1のλ/4部材を含む第一光学フィルムA1を準備する工程I-iと、
前記第一光学フィルムA1を分割して、所定の幅および所定の長さを有する複数の第一光学フィルムA2を得る工程I-iiと、
前記複数の第一光学フィルムA2と前記偏光部材とを積層して、複数の第二光学フィルムB1を得る工程I-iiiと、
前記複数の第二光学フィルムB1を、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類する工程I-ivと、
前記第2のλ/4部材を含む第三光学フィルムC1を準備する工程II-iと、
前記第三光学フィルムC1を分割して、所定の幅および所定の長さを有する複数の第三光学フィルムC2を得る工程II-iiと、
前記複数の第三光学フィルムC2を、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類する工程II-iiiと、
前記第二光学フィルムB1の複数の群および前記第三光学フィルムC2の複数の群から面内位相差が適合する群の組み合わせを選択する工程IIIと、
を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
複数の光学フィルムを含む、光学フィルム群であって、
前記光学フィルムが、λ/4部材を含み、かつ、所定の幅および所定の長さを有し、
前記複数の光学フィルム間における面内位相差の最大値と最小値との差が3nm以下である、光学フィルム群。
【請求項13】
前記光学フィルムの一辺の長さが1000mm以下である、請求項12に記載の光学フィルム群。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ付きゴーグル等の表示システムの製造方法および光学フィルム群に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、偏光部材、位相差部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。VRゴーグルは様々な場面での利用が検討されていることから、その高精細化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-103286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高精細なディスプレイ付きゴーグル等の表示システムの製造方法および当該表示システムの製造に適した光学部材の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の実施形態による表示システムの製造方法は、
偏光部材を介して画像を表す光を前方に出射する表示面を有する表示素子と、
上記表示素子の前方に配置され、上記表示素子から出射された光を反射する反射型偏光部材と、
上記表示素子と上記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、
上記表示素子と上記第一レンズ部との間に配置され、上記表示素子から出射された光を透過させ、上記反射型偏光部材で反射された光を上記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、
上記表示素子と上記ハーフミラーとの間の光路上に配置される第1のλ/4部材と、
上記ハーフミラーと上記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第2のλ/4部材と、
を備える、ユーザに対して画像を表示する表示システムの製造方法であって;
上記第1のλ/4部材を含む光学フィルムを複数準備し、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類すること、
上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムを複数準備し、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類すること、および、
上記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの複数の群および上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの複数の群から面内位相差が適合する群の組み合わせを選択すること、
を含む。
[2]上記[1]において、上記分類後の各群における上記第1のλ/4部材を含む光学フィルム間の面内位相差のばらつきが3nm以下であり得る。
[3]上記[1]または[2]において、上記分類後の各群における上記第2のλ/4部材を含む光学フィルム間の面内位相差のばらつきが3nm以下であり得る。
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、上記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの長尺方向における面内位相差のばらつきが3nm以下であり得る。
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの長尺方向における面内位相差のばらつきが3nm以下であり得る。
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、上記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの一辺の長さが1000mm以下であり得る。
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの長さが50m以上1000m以下であり得る。
[8]上記[1]から[7]のいずれかにおいて、上記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの面内位相差が、上記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの四隅において測定された面内位相差の平均値であり得る。
[9]上記[1]から[8]のいずれかにおいて、上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの面内位相差が、上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの先端の2箇所以上において測定された面内位相差の平均値であり得る。
[10]上記[1]から[8]のいずれかにおいて、上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの面内位相差が、上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの先端の2箇所以上および末端の2箇所以上において測定された面内位相差の平均値であり得る。
[11]上記[1]から[10]のいずれかにおいて、上記製造方法は、
上記第1のλ/4部材を含む第一光学フィルムA1を準備する工程I-iと、
上記第一光学フィルムA1を分割して、所定の幅および所定の長さを有する複数の第一光学フィルムA2を得る工程I-iiと、
上記複数の第一光学フィルムA2と上記偏光部材とを積層して、複数の第二光学フィルムB1を得る工程I-iiiと、
上記複数の第二光学フィルムB1を、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類する工程I-ivと、
上記第2のλ/4部材を含む第三光学フィルムC1を準備する工程II-iと、
上記第三光学フィルムC1を分割して、所定の幅および所定の長さを有する複数の第三光学フィルムC2を得る工程II-iiと、
上記複数の第三光学フィルムC2を、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類する工程II-iiiと、
上記第二光学フィルムB1の複数の群および上記第三光学フィルムC2の複数の群から面内位相差が適合する群の組み合わせを選択する工程IIIと、
を含み得る。
[12]本発明の実施形態による光学フィルムの群は、
複数の光学フィルムを含む、光学フィルム群であって、上記光学フィルムが、λ/4部材を含み、かつ、所定の幅および所定の長さを有し、上記複数の光学フィルム間における面内位相差の最大値と最小値との差が3nm以下である。
[13]上記[12]において、上記光学フィルムの一辺の長さが1000mm以下であり得る。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態による表示システムの製造方法によれば、互いに適合する面内位相差を有するλ/4部材の組み合わせを用いて表示システムを構成することから、高精細な表
示システムを好適に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態による製造方法で得られる表示システムの概略の構成を示す模式図である。
図2図2(a)および2(b)はそれぞれ、第一光学フィルムA1の構成の一例を説明する概略断面図である。
図3】本発明の1つの実施形態による表示システムの製造方法の工程I-iiの一例を説明する模式図である。
図4】本発明の1つの実施形態による表示システムの製造方法の工程I-iiiの一例を説明する模式図である。
図5図5(a)および5(b)はそれぞれ、第二光学フィルムB1の構成の一例を説明する概略断面図である。
図6】本発明の1つの実施形態による表示システムの製造方法の工程I-ivの一例を説明する模式図である。
図7図7(a)および7(b)はそれぞれ、第三光学フィルムC1の構成の一例を説明する概略断面図である。
図8】本発明の1つの実施形態による表示システムの製造方法の工程II-iiの一例を説明する模式図である。
図9】本発明の1つの実施形態による表示システムの製造方法の工程II-iiiの一例を説明する模式図である。
図10】本発明の1つの実施形態による表示システムの製造方法の工程IIIの一例を説明する模式図である。
図11図11(a)および11(b)はそれぞれ、第二光学フィルム片B2および第三光学フィルム片C3の打ち抜きの一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特段の言及がない限り、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。また、本明細書において、「略平行」は、0°±10°である場合を包含し、例えば0°±5°、好ましくは0°±3°、より好ましくは0°±1°の範囲内であり、「略直交」は、90°±10°である場合を包含し、例えば90°±5°、好ましくは90°±3°、より好ましくは90°±1°の範囲内である。
【0011】
A.表示システムの概略
図1は、本発明の実施形態による製造方法で製造される表示システムの概略の構成を示す模式図である。図1では、表示システム(2)の各構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。表示システム(2)は、表示素子(12)と、反射型偏光部材(14)と、第一レンズ部(16)と、ハーフミラー(18)と、第一位相差部材(20)と、第二位相差部材(22)と、第二レンズ部(24)とを備えている。反射型偏光部材(14)は、表示素子(12)の表示面(12a)側である前方に配置され、表示素子(12)から出射された光を反射し得る。第一レンズ部(16)は表示素子(12)と反射型偏光部材(14)との間の光路上に配置され、ハーフミラー(18)は表示素子(12)と第一レンズ部(16)との間に配置されている。第一位相差部材(20)は表示素子(12)とハーフミラー(18)との間の光路上に配置され、第二位相差部材(22)はハーフミラー(18)と反射型偏光部材(14)との間の光路上に配置されている。図示しないが、反射型偏光部材(14)と第二レンズ部(24)との間には、視認性向上の観点から、吸収型偏光部材が配置されてもよい。このとき、反射型偏光部材(14)の反射軸と吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに略平行に配置され得、反射型偏光部材(14)の透過軸と吸収型偏光部材の透過軸とは互いに略平行に配置され得る。
【0012】
ハーフミラーから前方に配置される構成要素(図示例では、ハーフミラー(18)、第一レンズ部(16)、第二位相差部材(22)、反射型偏光部材(14)および第二レンズ部(24))をまとめてレンズ部(レンズ部(4))と称する場合がある。
【0013】
表示素子(12)は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面(12a)を有している。表示面(12a)から出射される光は、例えば、表示素子(12)に含まれ得る偏光部材(代表的には、偏光フィルム)を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0014】
第一位相差部材(20)は、第一位相差部材(20)に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得る第1のλ/4部材を含む。第一位相差部材が第1のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第一位相差部材は第1のλ/4部材に相当し得る。第一位相差部材(20)は、表示素子(12)と一体に設けられてもよい。。
【0015】
ハーフミラー(18)は、表示素子(12)から出射された光を透過させ、反射型偏光部材(14)で反射された光を反射型偏光部材(14)に向けて反射させる。ハーフミラー(18)は、第一レンズ部(16)に一体に設けられている。
【0016】
第二位相差部材(22)は、反射型偏光部材(14)およびハーフミラー(18)で反射させた光を、反射型偏光部材(14)を透過させ得る第2のλ/4部材を含む。第二位相差部材が第2のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第二位相差部材は第2のλ/4部材に相当し得る。第二位相差部材(22)は、第一レンズ部(16)に一体に設けられてもよい。
【0017】
第一位相差部材(20)に含まれる第1のλ/4部材から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー(18)および第一レンズ部(16)を通過し、第二位相差部材(22)に含まれる第2のλ/4部材により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材から出射された第2の直線偏光は、反射型偏光部材(14)を透過せずにハーフミラー(18)に向けて反射される。このとき、反射型偏光部材(14)に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材(14)の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材(14)に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材(14)で反射される。
【0018】
反射型偏光部材(14)で反射された第2の直線偏光は第二位相差部材(22)に含まれる第2のλ/4部材により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材から出射された第2の円偏光は第一レンズ部(16)を通過してハーフミラー(18)で反射される。ハーフミラー(18)で反射された第2の円偏光は、第一レンズ部(16)を通過し、第二位相差部材(22)に含まれる第2のλ/4部材により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射型偏光部材(14)を透過する。このとき、反射型偏光部材(14)に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材(14)の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材(14)に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材(14)を透過する。
【0019】
反射型偏光部材(14)を透過した光は、第二レンズ部(24)を通過して、ユーザの目(26)に入射する。
【0020】
反射型偏光部材(14)は、その透過軸に平行な偏光(代表的には、直線偏光)をその偏光状態を維持したまま透過させ、それ以外の偏光状態の光を反射し得る。反射型偏光部材の直交透過率(Tc)は、例えば0.01%~3%であり得る。反射型偏光部材の単体透過率(Ts)は、例えば43%~49%、好ましくは45~47%であり得る。反射型偏光部材の偏光度(P)は、例えば92%~99.99%であり得る。反射型偏光部材は、例えば、多層構造を有するフィルム(反射型偏光フィルムと称する場合がある)で構成される。反射型偏光フィルムの市販品として、例えば、3M社製の商品名「DBEF」、「APF」、日東電工社製の商品名「APCF」が挙げられる。
【0021】
例えば、表示素子(12)に含まれる偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材(14)の反射軸とは、互いに略平行に配置されてもよいし、略直交に配置されてもよい。表示素子(12)に含まれる偏光部材の吸収軸と第一位相差部材(20)に含まれる第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。表示素子(12)に含まれる偏光部材の吸収軸と第二位相差部材(22)に含まれる第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。第1のλ/4部材および第2のλ/4部材は、好ましくは遅相軸方向が互いに略平行または略直交となるように配置される。
【0022】
第1のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第1のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第1のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0023】
第2のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第2のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第2のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0024】
上述のとおり、表示システム(2)においては、表示素子(12)の表示面(12a)から前方に出射した直線偏光が、第1のλ/4部材および第2のλ/4部材をこの順に透過後、反射型偏光部材(14)での反射およびハーフミラー(18)での再反射により第2のλ/4部材をさらに2回透過し、反射型偏光部材(14)を透過して前方に出射することによって、視認者に視認される。よって、第1のλ/4部材または第2のλ/4部材の面内位相差のずれが大きいと、偏光が崩れて光漏れが生じ、反射されるべき光が視認されるべき光と混じって視認される(結果として、ぼやけた画像が視認される)という問題が生じ得る。これに対し、当該問題を防止して高精細な画像表示を実現するためには、第1のλ/4部材および第2のλ/4部材の面内位相差が略一致していることが望ましい。
【0025】
B.表示システムの製造方法
B-1.表示システムの製造方法の概略
本発明の実施形態による表示システムの製造方法は、
上記第1のλ/4部材を含む光学フィルムを複数準備し、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類すること、
上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムを複数準備し、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類すること、および、
上記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの複数の群および上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの複数の群から面内位相差が適合する群の組み合わせを選択すること、
を含む。
代表的には、本発明の実施形態による表示システムの製造方法は、上記選択された組み合わせの第1のλ/4部材を含む光学フィルムの群および第1のλ/4部材を含む光学フィルムの群からそれぞれ得られた第1のλ/4部材を含む光学フィルム片および第2のλ/4部材を含む光学フィルム片を、上記表示システムの所定の位置に配置することをさらに含む。
本発明の実施形態による表示システムの製造方法によれば、A項に記載の表示システム(2)の構成部材である第1のλ/4部材および第2のλ/4部材として、精度よく適合した面内位相差を有する光学フィルム片を効率的に準備することができ、これにより、第1のλ/4部材および第2のλ/4部材の面内位相差が略一致した表示システムを容易に、かつ、効率的に得ることができる。
1つの実施形態において、上記分類後の各群における上記第1のλ/4部材を含む光学フィルム間の面内位相差のばらつきは、例えば3nm以下、また例えば2nm以下、好ましくは1nm以上1.5nm以下、より好ましくは1nm以上1.3nm以下である。
1つの実施形態において、上記分類後の各群における上記第2のλ/4部材を含む光学フィルム間の面内位相差のばらつきは、例えば3nm以下、また例えば2nm以下、好ましくは1nm以上1.5nm以下、より好ましくは1nm以上1.3nm以下である。
1つの実施形態において、上記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの長尺方向における面内位相差のばらつきは、例えば3nm以下、好ましくは1.5nm以下である。
1つの実施形態において、上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの長尺方向における面内位相差のばらつきは、例えば3nm以下、好ましくは1.5nm以下である。
1つの実施形態において、上記第1のλ/4部材を含む光学フィルムは所定の長さおよび幅を有する。当該光学フィルムの長さは、例えば50m以上1000m以下、50m以上300m以下、または100m以上150m以下である。また、当該光学フィルムの幅は、例えば60mm以上500mm以下、100mm以上400mm以下、または100mm以上300mm以下である。あるいは、当該光学フィルムは、枚葉状であってよく、その一辺の長さは、例えば1000mm以下であり得る。
1つの実施形態において、上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムは所定の長さおよび幅を有する。当該光学フィルムの長さは、例えば50m以上1000m以下、50m以上300m以下、または100m以上150m以下である。また、当該光学フィルムの幅は、例えば40mm以上200mm以下、45mm以上150mm以下、または50mm以上120mm以下である。
1つの実施形態において、上記第1のλ/4部材を含む光学フィルムの面内位相差は、当該光学フィルムの四隅において測定された面内位相差の平均値である。
1つの実施形態において、上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの面内位相差は、当該光学フィルムの先端の2箇所以上において測定された面内位相差の平均値である。
1つの実施形態において、上記第2のλ/4部材を含む光学フィルムの面内位相差は、当該光学フィルムの先端の2箇所以上および末端の2箇所以上において測定された面内位相差の平均値である。
以下、本発明の1つの実施形態による表示システムの製造方法について具体的に説明する。
【0026】
B-2.本発明の1つの実施形態による表示システムの製造方法
1つの実施形態において、本発明の実施形態による表示システムの製造方法は、
上記第1のλ/4部材を含む第一光学フィルムA1を準備する工程I-iと、
上記第一光学フィルムA1を分割して、所定の幅および所定の長さを有する複数の第一光学フィルムA2を得る工程I-iiと、
上記複数の第一光学フィルムA2と上記偏光部材とを積層して、複数の第二光学フィルムB1を得る工程I-iiiと、
上記複数の第二光学フィルムB1を、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類する工程I-ivと、
上記第2のλ/4部材を含む第三光学フィルムC1を準備する工程II-iと、
上記第三光学フィルムC1を分割して、所定の幅および所定の長さを有する複数の第三光学フィルムC2を得る工程II-iiと、
上記複数の第三光学フィルムC2を、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類する工程II-iiiと、
上記第二光学フィルムB1の複数の群および上記第三光学フィルムC2の複数の群から面内位相差が適合する群の組み合わせを選択する工程IIIと、
を含む。
代表的には、上記実施形態による表示システムの製造方法は、工程IIIの後に、上記選択された組み合わせの第二光学フィルムB1の群および第三光学フィルムC2の群からそれぞれ得られた第二光学フィルム片B2および第三光学フィルム片C3を、上記表示システムの所定の位置に配置する工程IVを含む。
【0027】
B-2-1.工程I-i
工程I-iにおいては、第1のλ/4部材を含む第一光学フィルムA1を準備する。図2(a)および2(b)はそれぞれ、第一光学フィルムA1の構成の一例を説明する概略断面図である。
図2(a)に示される第一光学フィルムA1(30a)は、粘着剤層(32)と、第1のλ/4部材(34a)と、第一保護部材(36)と、をこの順に含んでいる。第一光学フィルムA1(30a)の構成によれば、表示システム(2)における第一位相差部材(20)は第1のλ/4部材(34a)からなる。第1のλ/4部材(34a)と第一保護部材(36)とは、代表的には、接着剤層、粘着剤層等の接着層を介して貼り合わせられている。
図2(b)に示される第一光学フィルムA1(30a’)は、粘着剤層(32)と、第1のλ/4部材(34a)と、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示し得る部材(いわゆる、ポジティブCプレート、以下、「第1のポジティブCプレート」とも称する)(34b)と、第一保護部材(36)と、をこの順に含んでいる。第一光学フィルムA1(30a’)の構成によれば、表示システム(2)における第一位相差部材(20)は第1のλ/4部材(34a)と第1のポジティブCプレート(34b)とを含む。換言すれば、第一位相差部材(20)は、第1のλ/4部材(34a)と第1のポジティブCプレート(34b)との積層構造を有する。図示例とは異なり、第一位相差部材(20)において、第1のλ/4部材(34a)がポジティブCプレート(34b)よりも第一保護部材(36)側に位置していてもよい。第1のポジティブCプレート(34b)と第1のλ/4部材(34a)と第一保護部材(36)とはそれぞれ、代表的には、接着剤層、粘着剤層等の接着層を介して貼り合わせられている。
第一光学フィルムA1(30a)、(30a’)はいずれも、粘着剤層(32)表面をはく離ライナー(38)で保護されている。
【0028】
第一光学フィルムA1は、好ましくは長尺状である。1つの実施形態において、第一光学フィルムA1は、長尺状に形成された各部材をロールトゥロールで積層することによって作製され、ロール状に巻き取られていてもよい。ここで、「ロールトゥロール」とは、ロール状のフィルムを搬送しながら互いの長尺方向を揃えて貼り合わせることをいう。
第一光学フィルムA1の長さは、例えば100m以上2000m以下、好ましくは500m以上1000m以下である。
第一光学フィルムA1の幅は、例えば500mm以上1500mm以下、好ましくは900mm以上1200mm以下である。工程IVに関して後述するとおり、第二光学フィルム片B2は、第二光学フィルムB1を打ち抜くことによって得られるが、第一光学フィルムA1の幅は、第二光学フィルム片B2の打ち抜き幅の例えば10倍以上であり、好ましくは15倍以上25倍以下であり、より好ましくは15倍以上20倍以下である。
【0029】
[第1のλ/4部材]
A項において第1のλ/4部材について記載したとおり、上記第1のλ/4部材(34a)の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第1のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第1のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0030】
第1のλ/4部材は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。λ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0031】
1つの実施形態において、第1のλ/4部材は、樹脂フィルムの延伸フィルムであり、例えば、長尺状の樹脂フィルムが幅方向に延伸された延伸フィルムである。
【0032】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。組み合わせる方法としては、例えば、ブレンド、共重合が挙げられる。第1のλ/4部材が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0033】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、第1のλ/4部材に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および第1のλ/4部材の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0034】
樹脂フィルムの延伸フィルムである第1のλ/4部材の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μmであり、より好ましくは20μm~60μmである。
【0035】
別の実施形態において、第1のλ/4部材は、液晶化合物の配向固化層である。液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。第1のλ/4部材においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第1のλ/4部材の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0036】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0037】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0038】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0039】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0040】
液晶配向固化層で構成される第1のλ/4部材の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは1μm~6μmであり、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0041】
[第1のポジティブCプレート]
上記第1のポジティブCプレート(34b)の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nmであり、より好ましくは-70nm~-250nmであり、さらに好ましくは-90nm~-200nmであり、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。第1のポジティブCプレートの面内位相差Re(550)は、例えば10nm未満である。
【0042】
第1のポジティブCプレートは、任意の適切な材料で形成され得るが、第1のポジティブCプレートは、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムから構成される。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであってもよいし、液晶ポリマーであってもよい。このような液晶化合物および第1のポジティブCプレートの形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、第1のポジティブCプレートの厚みは、好ましくは0.5μm~5μmである。
【0043】
[第一保護部材]
上記第一保護部材(36)は、代表的には、基材を含む。基材は、任意の適切なフィルムで構成され得る。基材を構成するフィルムの主成分となる材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の樹脂が挙げられる。基材の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~40μmであり、さらに好ましくは15μm~35μmである。
【0044】
第一保護部材は、好ましくは、基材と基材上に形成される表面処理層とを有する。表面処理層を有する第一保護部材は、表面処理層が前方側に位置するように配置され得る。表面処理層は、任意の適切な機能を有し得る。表面処理層は、例えば、視認性を向上させる観点から、反射防止機能を有することが好ましい。また、表面処理層はハードコート層を含んでいてもよい。表面処理層の厚みは、好ましくは1μm~20μmであり、より好ましくは2μm~15μmであり、さらに好ましくは3μm~10μmである。
【0045】
[粘着剤層]
上記粘着剤層(32)を構成する粘着剤は、代表的には、ベースポリマーとして、(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、またはゴム系ポリマーを含有する。好ましくは、粘着剤は、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含有する(メタ)アクリル系粘着剤である。粘着剤層の厚みは、例えば3μm以上、5μm以上、10μm以上、または12μm以上であり、例えば100μm以下または80μm以下である。
【0046】
[はく離ライナー]
はく離ライナー(38)は、代表的には、基材と、基材の粘着剤層(32)側の面に設けられた剥離処理層(例えばシリコーン処理層)とを備えている。基材は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂から形成される。
【0047】
B-2-2.工程I-ii
工程I-iiにおいては、第一光学フィルムA1を分割して、所定の幅および所定の長さを有する複数の第一光学フィルムA2を得る。具体的には、図3に示すように、第一光学フィルムA1(30a)を長尺方向に沿っておよび幅方向に沿ってスリットすること、および/または、所定のサイズに打ち抜くことにより、所定の幅および所定の長さを有する複数の第一光学フィルムA2(30b)を得る。幅方向に沿ったスリットは行われなくてもよい。第一光学フィルムA2の幅方向における面内位相差のばらつきは、代表的には、第一光学フィルムA1よりも小さい。
【0048】
第一光学フィルムA2は、目的に応じて任意の形状であってよい。
1つの実施形態において、第一光学フィルムA2は長尺状である。長尺状の第一光学フィルムA2の長さは、例えば50m以上1000m以下、50m以上300m以下、または100m以上150m以下であり得る。長尺状の第一光学フィルムA2はロール状に巻き取られてもよい。長尺状の第一光学フィルムA2の幅は、例えば60mm以上500mm以下、好ましくは100mm以上400mm以下、より好ましくは100mm以上300mm以下である。長尺状の第一光学フィルムA2の幅は、第二光学フィルム片B2の打ち抜き幅の例えば2倍以上20倍以下、好ましくは3倍以上10倍以下である。このように比較的狭幅に分割することにより、第一光学フィルムA2の長尺方向および幅方向における面内位相差のばらつきを小さくすることができる。
【0049】
別の実施形態において、第一光学フィルムA2は枚葉状である。枚葉状の第一光学フィルムA2は、一辺の長さが、例えば1000mm以下であり、800mm以下であってよく、500mm以下であってもよい。具体的には、第一光学フィルムA2は、500mm~350mm×450mm~300mm、400mm~250mm×350mm~200mm、または250mm~150mm×200mm~100mmサイズの略矩形状であり得る。第1のλ/4部材が幅方向または長尺方向に遅相軸を有する場合、第一光学フィルムA1を斜めに打ち抜くことにより、辺方向に対して斜め方向に遅相軸を有する第一光学フィルムA2を効率的に得ることができる。
【0050】
第一光学フィルムA2の長尺方向(矩形状の場合は長辺方向)における面内位相差(例えば、Re(590))のばらつきは、例えば3nm以下、好ましくは1.5nm以下である。第一光学フィルムA2の幅方向における面内位相差(例えば、Re(590))のばらつきは、例えば3nm以下、好ましくは1.5nm以下である。長尺方向における面内位相差のばらつきは、長尺状光学フィルムの幅方向の任意の位置(例えば、幅方向の中央)において長尺方向に所定の長さ(例えば50m以上であり、全長であってもよい)にわたって面内位相差を測定し、その最大値と最小値との差として求められ得る。幅方向における面内位相差のばらつきは、長尺状光学フィルムの長尺方向の任意の位置において幅方向に所定の間隔(例えば、約30mm~約350mm間隔)で複数個所の面内位相差を測定し、その最大値と最小値との差として求められ得る。
【0051】
スリットによって第一光学フィルムA1を分割する実施形態において、長尺方向に沿ったスリットによるフィルムの分割数(第一光学フィルムA1が幅方向においていくつに分割されたかを意味する)は、例えば2以上20以下、また例えば3以上10以下である。
【0052】
B-2-3.工程I-iii
工程I-iiiにおいては、図4に示すように、複数の第一光学フィルムA2(30b)と複数の偏光部材(42)とをそれぞれ積層して、複数の第二光学フィルムB1(40a)を得る。偏光部材(42)は、表示システム(2)において表示素子(12)に含まれる偏光部材である。好ましくは第一光学フィルムA2と粘着剤層付偏光部材とを積層する。代表的には、第二光学フィルムB1は、第一光学フィルムA2と同じサイズである。
【0053】
図5(a)および5(b)はそれぞれ、第二光学フィルムB1の構成の一例を説明する概略断面図である。第二光学フィルムB1(40a)、(40a’)はそれぞれ、はく離ライナーが剥離除去された第二光学フィルムA2(30b)、(30b’)の粘着剤層(32)面に偏光部材(42)および粘着剤層(44)がこの順に積層された構成を有する。ここで、偏光部材の吸収軸方向と第一光学フィルムA2の遅相軸方向(より具体的には、第1のλ/4部材(34a)の遅相軸方向)とが、例えば40°~50°、好ましくは42°~48°、より好ましくは約45°となるように配置されている。また、図示しないが、粘着剤層(44)の表面は、好ましくははく離ライナーによって保護されている。
【0054】
上記偏光部材(42)は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルム(吸収型偏光膜と称する場合がある)を含む吸収型偏光部材である。吸収型偏光膜の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、2μm以上15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。吸収型偏光膜の片側または両側には保護層が設けられていてもよい。
【0055】
上記吸収型偏光膜は、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0056】
単層の樹脂フィルムから作製する場合、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理等を施すことにより吸収型偏光膜を得ることができる。中でも、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られる吸収型偏光膜が好ましい。
【0057】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
【0058】
上記二層以上の積層体を用いて作製する場合の積層体としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光膜は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を吸収型偏光膜とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる吸収型偏光膜の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を吸収型偏光膜の保護層としてもよく)、樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような吸収型偏光膜の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0059】
吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の直交透過率(Tc)は、0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.05%以下である。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の単体透過率(Ts)は、例えば41.0%~45.0%であり、好ましくは42.0%以上である。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の偏光度(P)は、例えば99.0%~99.997%であり、好ましくは99.9%以上である。
【0060】
粘着剤層(44)については、B-2-1項に記載の粘着剤層(32)と同様の説明を適用することができる。
【0061】
B-2-4.工程I-iv
工程I-ivにおいては、図6に示すように、第二光学フィルムB1(40a)を、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群(図示例では、A群とB群との2群)に分類する。具体的には、複数の第二光学フィルムB1の各々に関して、面内位相差(例えば、Re(590))を測定し、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類する。分類する群の数は、特に制限されないが、表示システムの高精細化と生産効率とのバランスの観点から、例えば2以上4以下であり、好ましくは2または3である。また、同じ第一光学フィルムA1に由来する第一光学フィルムA2を含み、かつ、同じ群に分類される第二光学フィルムB1の数は、例えば50以上250以下、また例えば80以上200以下である。
【0062】
第二光学フィルムB1の面内位相差(実質的には、第1のλ/4板の面内位相差)は、例えば、その長尺方向の先端および/または末端において、それぞれ2箇所以上(例えば2箇所)において測定される。具体的には、先端および/または末端から500mm以内の距離の2箇所以上(例えば、幅方向に所定の間隔で隔てられた複数箇所)において測定され得る。長尺方向における面内位相差のばらつきが小さい長尺状光学フィルムによれば、50m以上の長さを有する場合であっても、先端および/または末端での測定によってその全体における面内位相差を概ね把握することができる。1つの実施形態において、面内位相差の測定は、図6の左側最上段の第二光学フィルムB1(40a)において「×」印で示されるように、第二光学フィルムB1の四隅(例えば、角部から5mm~50mmの箇所)において行われ、これらの測定値の平均値を第二光学フィルムB1の面内位相差とすることができる。
【0063】
1つの実施形態において、上記分類は、所定の面内位相差(例えば、Re(590))を基準値として、代表的には3nm以下、例えば2nm以下、好ましくは1nm以上1.5nm以下、より好ましくは1nm以上1.3nm以下の分類幅で行われる。具体例として、146nmのRe(590)を基準値として2nmの分類幅(±1nmの分類幅)で分類する場合、例えば、145nm以上147nm未満のRe(590)を有する群、143nm以上145nm未満のRe(590)を有する群、147nm以上149nm未満のRe(590)を有する群、141nm以上143nm未満のRe(590)を有する群、149nm以上151nm未満のRe(590)を有する群等に順次分類することができる。
【0064】
別の実施形態において、上記分類は、面内位相差(例えば、Re(590))の測定値が最も大きいものまたは最も小さいものから順に、所定の分類幅で分類することによって行われる。面内位相差(例えば、Re(590))の分類幅は、代表的には3nm以下、例えば2nm以下、好ましくは1nm以上1.5nm以下、より好ましくは1nm以上1.3nm以下とすることができる。
【0065】
さらに別の実施形態において、上記分類は、1つまたは2つ以上の基準値(面内位相差)で区切ることによって行われる。例えば、所定の面内位相差(例えば、Re(590))を基準値として、当該基準値の上下2群に分類すること、第1基準値と第2基準値を設け、第1基準値未満、第1基準値以上第2基準値以下、第2基準値超の3群に分類すること等ができる。
【0066】
上記分類後の各群における第二光学フィルムB1間の面内位相差のばらつき(群内に含まれる第二光学フィルムB1の面内位相差の最大値と最小値との差)は、分類前の全ての第二光学フィルムB1間の面内位相差のばらつきよりも小さくなり、例えば略半分以下であり得る。各群における第二光学フィルムB1間の面内位相差のばらつきは、例えば3nm以下であってよい。各群における第二光学フィルムB1間の面内位相差のばらつきは、上記分類幅に対応し得、例えば2nm以下、好ましくは1.5nm以下、より好ましくは1nm以上1.3nm以下である。
【0067】
B-2-5.工程II-i
工程II-iにおいては、第2のλ/4部材を含む第三光学フィルムC1を準備する。図7(a)および7(b)はそれぞれ、第三光学フィルムC1の構成の一例を説明する概略断面図である。
図7(a)に示される第三光学フィルムC1(50a)は、粘着剤層(52)と第2のλ/4部材(54a)と第二保護部材(56)とをこの順に含んでいる。第三光学フィルムC1(50a)の構成によれば、表示システム(2)における第二位相差部材(22)は第2のλ/4部材(54a)からなる。
図7(b)に示される長尺状光学フィルム(50a’)は、粘着剤層(52)と第2のλ/4部材(54a)と第2のポジティブCプレート(54b)と第二保護部材(56)とをこの順に含んでいる。第三光学フィルムC1(50a’)の構成によれば、表示システム(2)における第二位相差部材(22)は第2のλ/4部材(54a)と第2のポジティブCプレート(54b)とを含む。換言すれば、第二位相差部材(22)は、第2のλ/4部材(54a)と第2のポジティブCプレート(54b)との積層構造を有する。
図示例の第三光学フィルムC1(50a)、(50a’)はいずれも、粘着剤層(52)表面をはく離ライナー(58)で保護されている。
【0068】
第2のλ/4部材(54a)、第2のポジティブCプレート(54b)、第二保護部材(56)、粘着剤層(52)、およびはく離ライナー(58)についてはそれぞれ、B-2-1項に記載の第1のλ/4部材(34a)、第1のポジティブCプレート(34b)、第一保護部材(36)、粘着剤層(32)、およびはく離ライナー(38)と同様の説明を適用することができる。
【0069】
第三光学フィルムC1は、好ましくは長尺状である。1つの実施形態において、第三光学フィルムC1は、長尺状に形成された各部材をロールトゥロールで積層することによって作製され、ロール状に巻き取られていてもよい。
第三光学フィルムC1の長さは、例えば100m以上2000m以下、好ましくは500m以上1000m以下である。
第三光学フィルムC1の幅は、例えば500mm以上1500mm以下、好ましくは900mm以上1200mm以下である。工程IVに関して後述するとおり、第三光学フィルム片C3は、第三光学フィルムC2を打ち抜くことによって得られるが、第三光学フィルムC1の幅は、第三光学フィルム片C3の打ち抜き幅の例えば10倍以上であり、好ましくは15倍以上25倍以下であり、より好ましくは15倍以上20倍以下である。
【0070】
B-2-6.工程II-ii
工程II-iiにおいては、第三光学フィルムC1を分割して、所定の幅および所定の長さを有する複数の第三光学フィルムC2を得る。例えば、図8に示すように、長尺状に形成された第三光学フィルムC1(50a)を長尺方向に沿ってスリットして、複数の第三光学フィルムC2(50b)を得る。長尺方向へのスリットだけでなく、幅方向へのスリットを行うこともできる。これにより所定の幅および所定の長さを有する複数の第三光学フィルムC2(50b)を得ることができる。必要に応じて、第三光学フィルムC2はロール状に巻き取られてもよい。第三光学フィルムC2の幅方向における面内位相差のばらつきは、代表的には、第三光学フィルムC1よりも小さい。
【0071】
第三光学フィルムC2の長さは、例えば50m以上1000m以下、また例えば50m以上300m以下、また例えば100m以上150m以下である。
【0072】
第三光学フィルムC2の幅は、例えば40mm以上200mm以下、また例えば45mm以上150mm以下、また例えば50mm以上120mm以下である。1つの実施形態において、第三光学フィルムC2の幅は、第三光学フィルム片C3の打ち抜き幅の例えば1.1倍~3.0倍、好ましくは1.2倍~2.0倍、より好ましくは1.2倍~1.5倍である。このように比較的狭幅に分割することにより、第三光学フィルムC2の長尺方向および幅方向における面内位相差のばらつきを小さくすることができる。
【0073】
第三光学フィルムC2の長尺方向における面内位相差(例えば、Re(590))のばらつきは、例えば3nm以下、好ましくは1.5nm以下である。第三光学フィルムC2の幅方向における面内位相差(例えば、Re(590))のばらつきは、例えば3nm以下、好ましくは1.5nm以下である。
【0074】
1つの実施形態において、長尺方向に沿ったスリットによるフィルムの分割数(第三光学フィルムC1が幅方向においていくつに分割されたかを意味する)は、例えば6以上、好ましくは10以上25以下、好ましくは15以上20以下である。
【0075】
B-2-7.工程II-iii
工程II-iiiにおいては、図9に示すように、複数の第三光学フィルムC2(50b)を、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群(図示例では、C群とD群との2群)に分類する。具体的には、複数の第三光学フィルムC2の各々に関して、面内位相差(例えば、Re(590))を測定し、所定の面内位相差を有するものごとに複数の群に分類する。分類する群の数は、特に制限されないが、表示システムの高精細化と生産効率とのバランスの観点から、例えば2以上4以下であり、好ましくは2または3である。1つの実施形態において、工程I-ivにおいて得られる第二光学フィルムB1の群の数と工程II-iiiにおいて得られる第三光学フィルムC2の群の数とは、同じである。
【0076】
第三光学フィルムC2の面内位相差(実質的には、第2のλ/4板の面内位相差)の測定は、例えば、第三光学フィルムC2の先端および/または末端において、それぞれ2箇所以上(例えば、2箇所)において行われる。長尺方向における面内位相差のばらつきが小さい長尺状光学フィルムによれば、50m以上の長さを有する場合であっても、先端および/または末端での測定によってその全体における面内位相差を概ね把握することができる。1つの実施形態において、面内位相差の測定は、図9の左側最上段の第三光学フィルムC2(50b)において「×」印で示されるように、フィルムの先端の幅方向において2箇所以上(例えば、先端から500mm以内の距離の2箇所以上(例えば、幅方向に所定の間隔で隔てられた複数箇所))において行われ、必要に応じて、末端の幅方向において2箇所以上(例えば、末端から500mm以内の距離の2箇所以上(例えば、幅方向に所定の間隔で隔てられた複数箇所))においても行われ得る。よって、面内位相差の測定は、例えば、第三光学フィルムC2の四隅において行われる。これらの測定の平均値を第三光学フィルムC2の面内位相差とすることができる。
【0077】
また例えば、面内位相差の測定は、分割(スリット)前の第三光学フィルムC1に対して行われる。この場合、スリット前の第三光学フィルムC1をスリット予定のラインに沿って区画し、当該区画の先端および/または末端に対応する箇所の面内位相差を上記と同様に測定し、スリット後に得られた当該区画に対応する第三光学フィルムC2の面内位相差とすることができる。
【0078】
上記分類方法としては、工程I-ivにおける分類方法と同様の方法が挙げられる。1つの実施形態においては、工程I-ivにおける分類方法と工程II-iiiにおける分類方法は同じであり、その際、同じ基準値および同じ分類幅を適用することができる。これにより、第二光学フィルムB1の群の面内位相差と第三光学フィルムC2の群の面内位相差との適合(マッチング)が容易になる。
【0079】
分類後の各群における第三光学フィルムC2間の面内位相差のばらつきは、分類前の全ての第三光学フィルムC2間の面内位相差のばらつきよりも小さくなり、例えば略半分以下であり得る。各群における第三光学フィルムC2間の面内位相差のばらつきは、例えば3nm以下であってよい。各群における第三光学フィルムC2間の面内位相差のばらつきは、上記分類幅に対応し得、例えば2nm以下、好ましくは1.5nm以下、より好ましくは1nm以上1.3nm以下である。
【0080】
B-2-8.工程III
工程IIIにおいては、第二光学フィルムB1の複数の群および第三光学フィルムC2の複数の群から面内位相差が適合する群の組み合わせを選択する。具体的には、面内位相差の差が小さくなる群同士を組み合わせる。例えば、群内の光学フィルムの面内位相差の平均値、分類時に適用された面内位相差の基準値等を各群の面内位相差とし、その差が所定の値以下(例えば3nm以下、好ましくは1.5nm以下)である群の組み合わせを選択することができる。
【0081】
以下、図10を参照しながら工程IIIの具体例について説明する。工程I-ivにおいて、第二光学フィルムB1(40a)がRe(590)=145nmを基準値として3nmの分類幅(143.5nm≦Re(590)<146.5nm)で分類された群AとRe(590)=148nmを基準値として3nmの分類幅(146.5nm≦Re(590)<149.5nm)で分類された群Bとの2つの群に分類され、工程II-iiiにおいて、第三光学フィルムC2(50b)がRe(590)=144nmを基準値として3nmの分類幅(142.5nm≦Re(590)<145.5nm)で分類された群CとRe(590)=147nmを基準値として3nmの分類幅(145.5nm≦Re(590)<148.5nm)で分類された群Dとの2つの群に分類されている場合、基準値(Re(590))が145nmである群Aと基準値(Re(590))が144nmである群Cとの組み合わせと、基準値(Re(590))が148nmである群Bと基準値(Re(590))が147nmである群Dとの組み合わせと、が選択される。
【0082】
B-2-9.工程IV
工程IVにおいては、工程IIIで選択された組み合わせの第二光学フィルムB1の群および第三光学フィルムC2の群からそれぞれ得られた第二光学フィルム片B2および第三光学フィルム片C3を、表示システム(2)の所定の位置に配置する。例えば、第二光学フィルム片B2を偏光部材(42)が表示素子(12)に含まれるように粘着剤層(44)を介して所望の光学部材(例えば、液晶セル、有機ELパネル等)に貼り合わせ、第三光学フィルム片C3を粘着剤層(52)を介して第一レンズ部(16)の前方側に貼り合わせる。
【0083】
第二光学フィルム片B2および第三光学フィルム片C3はそれぞれ、任意の適切な形状を有することができる。1つの実施形態において、第二光学フィルム片B2は、略矩形状である。1つの実施形態において、第三光学フィルム片C3は、略円形状である。本明細書中、略円形状とは、円形または楕円形を含み、さらに、円形または楕円形に近いと視認される程度の形状を含む。
【0084】
図11(a)に示すように、第二光学フィルム片B2(40b)は、代表的には、第二光学フィルムB1(40a)を所定の形状に打ち抜くことによって得られる(図中、Xは、第二光学フィルムB1(40a)の幅を表し、Xは、第二光学フィルム片B2(40b)の打ち抜き幅を表す)。1つの第二光学フィルムB1、例えば1枚の枚葉状の第二光学フィルムB1から得られる第二光学フィルム片B2の数は、例えば10以上100以下、また例えば15以上50以下であり得る。
【0085】
図11(b)に示すように、第三光学フィルム片C3(50c)は、代表的には、第三光学フィルムC2(50b)を所定の形状に打ち抜くことによって得られる(図中、Xは、第三光学フィルムC2(50b)の幅を表し、Xは、第三光学フィルム片C3(50c)の打ち抜き幅を表す)。1つの実施形態において、第三光学フィルムC2の幅方向において1つまたは2つの第三光学フィルム片C3が打ち抜かれ、好ましくは1つの第三光学フィルム片C3が打ち抜かれる。1つの第三光学フィルムC2から得られる第三光学フィルム片C3の数は、例えば800以上6000以下、また例えば1000以上3000以下である。
【0086】
上述のとおり、工程IIIで選択された組み合わせの群は互いに適合した面内位相差を有する。さらに、選択された群内の第二光学フィルムB1は互いに面内位相差が近似しており、また、個々の第二光学フィルムB1においても、長尺方向および幅方向における面内位相差のばらつきが小さい。同様に、選択された群内の第三光学フィルムC2は互いに面内位相差が近似しており、また、個々の第三光学フィルムC2においても、長尺方向および幅方向における面内位相差のばらつきが小さい。よって、上記選択された組み合わせの第二光学フィルムB1の群および第三光学フィルムC2の群からそれぞれ得られた第二光学フィルム片B2および第三光学フィルム片C3はいずれも面内位相差のばらつきが小さく(換言すれば、面内位相差の均一性が高く)、かつ、互いに適合した面内位相差を有する。よって、これらの光学フィルム片を、表示システム(2)の所定の位置に配置することにより、高精細な画像を表示可能な表示システム(2)を容易に、かつ、高い生産効率で得ることができる。
【0087】
B-3.変形例
B-2項で説明した実施形態では、第1のλ/4部材を含む光学フィルムの分類において、第1のλ/4部材と偏光部材とを含む光学フィルムの面内位相差に基づいて分類を行っているが、第1のλ/4部材を含み、偏光部材を含まない光学フィルムの面内位相差に基づいて分類を行ってもよい。この場合、分類後に第1のλ/4部材を含み、偏光部材を含まない光学フィルムと偏光部材とを積層することができ、当該積層は、光学フィルム片への打ち抜き前または打ち抜き後に行うことができる。あるいは、第1のλ/4部材を含む光学フィルム片と偏光部材とを別々に表示システムに取り付けてもよい。
また例えば、第一光学フィルムA2が枚葉状である場合、全てのフィルムに対して面内位相差の測定を行う必要はない。例えば、第一光学フィルムA1から打ち抜かれた枚葉状の第一光学フィルムA2については、長手方向に沿って同じ領域から打ち抜かれたものは実質的に同じ面内位相差を有するとみなし、それらの中から任意に選択した1枚の面内位相差または数枚の面内位相差の平均値をそれらの全体に対して適用してもよい。このような第一光学フィルムA2を用いて得られた第二光学フィルムB1の面内位相差を測定する際も同様である。
【0088】
C.光学フィルム群
本発明の実施形態による光学フィルム群は、複数の光学フィルムから構成される。当該光学フィルムは、λ/4部材を含み、かつ、所定の幅および所定の長さを有する。当該光学フィルムは、偏光部材をさらに含んでいてもよい。
光学フィルム群を構成する上記複数の光学フィルム間における面内位相差(例えば、Re(590))の最大値と最小値との差は、例えば3nm以下であり、好ましくは2nm以下であり、より好ましくは1.5nm以下であり、さらに好ましくは1.3nm以下であり、例えば1nm以上である。
すなわち、本発明の実施形態による光学フィルム群は、面内位相差の均一性が高い光学フィルムによって構成されている。
【0089】
1つの実施形態において、光学フィルム群に含まれる光学フィルムは長尺状である。長尺状の光学フィルムの長さは、例えば50m以上1000m以下、好ましくは50m以上3000m以下、より好ましくは100m以上150m以下である。長尺状の光学フィルムの幅は、例えば900mm以上1500mm以下、好ましくは1000mm以上1300mm以下である。
【0090】
別の実施形態において、光学フィルム群に含まれる光学フィルムは枚葉状である。枚葉状の第一光学フィルムA2は、一辺の長さが、例えば1000mm以下であり、800mm以下であってよく、500mm以下であってもよい。具体的には、第一光学フィルムA2は、500mm~350mm×450mm~300mm、400mm~250mm×350mm~200mm、または250mm~150mm×200mm~100mmサイズの略矩形状であり得る。
【0091】
1つの実施形態において、光学フィルム群に含まれる光学フィルムは、大面積で作製された光学フィルムを分割することによって作製されたものであり、1つの光学フィルムに由来する。本実施形態において、光学フィルム群に含まれる光学フィルムの数は、例えば50以上250以下、また例えば80以上200以下である。
【0092】
上記光学フィルム群としては、B項に記載の工程I-i~工程I-ivで得られる第二光学フィルムB1の群が挙げられ、その具体的な説明は上述のとおりである。
【0093】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の実施形態に係る表示システムの製造方法は、例えば、VRゴーグル等の表示体の製造おいて好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0095】
2 表示システム、4 レンズ部、12 表示素子、14 反射型偏光部材、16 第一レンズ部、18 ハーフミラー、20 第一位相差部材、22 第二位相差部材、24 第二レンズ部、30 第一光学フィルム、34a 第1のλ/4部材、34b 第1のポジティブCプレート、40 第二光学フィルム、42 偏光部材、50 第三光学フィルム、54a 第2のλ/4部材、54b 第2のポジティブCプレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11