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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116939
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】衛生陶器の形状を評価する評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240821BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240821BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G06T7/00 610C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022815
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】清水 滋
(72)【発明者】
【氏名】古賀 拓馬
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD06
2F065FF04
2F065FF61
2F065JJ05
2F065PP25
2F065QQ41
2F065RR08
5L096AA09
5L096BA03
5L096CA05
5L096DA01
5L096DA02
5L096EA14
5L096GA08
(57)【要約】
【課題】 本発明は、衛生陶器の形状を評価する評価方法であって、作業負荷や時間を軽減することができる評価方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 本発明は、衛生陶器の形状を評価する評価方法であって、衛生陶器の形状を測定して測定データを取得する形状測定工程S2と、予め保存されている基準データと測定データとの位置合わせをする位置合わせ工程S4と、基準データに対する測定データの偏差データを算出し、この偏差データに基づいて色付けされたカラーマップデータを生成するカラーマップデータの生成工程S10と、カラーマップデータに対して製造上のバラツキを可視化するための所定の処理を施して評価画像を生成する評価画像の生成工程(S14、S20、又はS30)と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生陶器の形状を評価する評価方法であって、
上記衛生陶器の形状を測定して測定データを取得する形状測定工程と、
予め保存されている基準データと上記測定データとの位置合わせをする位置合わせ工程と、
上記基準データに対する上記測定データの偏差データを算出し、この偏差データに基づいて色付けされたカラーマップデータを生成するカラーマップデータの生成工程と、
上記カラーマップデータに対して製造上のバラツキを可視化するための所定の処理を施して評価画像を生成する評価画像の生成工程と、を含むことを特徴とする評価方法。
【請求項2】
上記所定の処理では、複数の上記カラーマップデータにおいて、各画素値の平均値が算出され、この平均値に基づいて上記評価画像として平均化画像が生成される、請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
上記所定の処理では、複数の上記カラーマップデータにおいて、各画素値における最大値から最小値を引くことによりバラツキ値が算出され、このバラツキ値に基づいて上記評価画像としてバラツキ画像が生成される、請求項1に記載の評価方法。
【請求項4】
上記所定の処理では、上記カラーマップデータにおいて、製造上のバラツキが小さい範囲とそれ以外とに2値化処理されて、上記評価画像として2値化画像が生成される、請求項1に記載の評価方法。
【請求項5】
上記2値化画像が上記衛生陶器の外形の2値化画像に対して適合する割合を表す形状適合率を算出する形状適合率の算出工程をさらに含む、請求項4に記載の評価方法。
【請求項6】
上記形状測定工程は、3Dスキャナによって上記衛生陶器の形状を測定する、請求項1~5の何れか1項に記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生陶器の形状を評価する評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、NC加工やプレス加工により製造された金型やパネルなどの製品における表面ひずみを判定する判定方法の開示がある。この判定方法では、製品の表面形状を測定し、この測定データと基準データとを比較して偏差データを求め、偏差データに基づいて製品の表面ひずみを許容できるか否かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-270134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水洗大便器や洗面器などの衛生陶器は、陶器製であり、製造時に収縮するため、金属や樹脂製の製品と比較して製造上のバラツキが発生する可能性が高い。衛生陶器の製造上のバラツキは、衛生陶器の形状、成形装置や焼成装置の種別、焼成時における位置などの様々な製造条件によって発生する。これらの様々な製造条件の製造上のバラツキへの影響を解析するため、CTスキャン装置による製品の画像解析が行われている。しかしながら、CTスキャン装置による測定やCT画像の解析は作業負荷や時間が掛かる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、衛生陶器の形状を評価する評価方法であって、作業負荷や時間を軽減することができる評価方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、衛生陶器の形状を評価する評価方法であって、衛生陶器の形状を測定して測定データを取得する形状測定工程と、予め保存されている基準データと測定データとの位置合わせをする位置合わせ工程と、基準データに対する測定データの偏差データを算出し、この偏差データに基づいて色付けされたカラーマップデータを生成するカラーマップデータの生成工程と、カラーマップデータに対して製造上のバラツキを可視化するための所定の処理を施して評価画像を生成する評価画像の生成工程と、を含むことを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、カラーマップデータに対して製造上のバラツキを可視化するための所定の処理を施した評価画像を用いて評価することができるので、衛生陶器の形状を直感的に評価することができ、作業負荷や時間を軽減することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、所定の処理では、複数のカラーマップデータにおいて、各画素値の平均値が算出され、この平均値に基づいて評価画像として平均化画像が生成される。
このように構成された本発明によれば、平均化画像を用いて評価することができるので、衛生陶器の形状を評価する精度を向上させることができる。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、所定の処理では、複数のカラーマップデータにおいて、各画素値における最大値から最小値を引くことによりバラツキ値が算出され、このバラツキ値に基づいて評価画像としてバラツキ画像が生成される。
このように構成された本発明によれば、バラツキ画像を用いて評価することができるので、作業負荷や時間をより軽減することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、所定の処理では、カラーマップデータにおいて、製造上のバラツキが小さい範囲とそれ以外とに2値化処理されて、評価画像として2値化画像が生成される。
このように構成された本発明によれば、2値化画像を用いて評価することができるので、作業負荷や時間をより軽減することができる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、2値化画像に基づいて、製造上のバラツキが発生している割合を示すための指標である形状適合率を算出する形状適合率の算出工程をさらに含む。
このように構成された本発明によれば、形状適合率を用いて評価することができるので、作業負荷や時間をより軽減することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、形状測定工程は、3Dスキャナによって衛生陶器の形状を測定する。
このように構成された本発明によれば、3Dスキャナによって測定データを取得することができるので、作業負荷や時間をより軽減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、衛生陶器の形状を評価する評価方法であって、作業負荷や時間を軽減することができる評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による評価システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態による3Dスキャナの概略図である。
図3】本発明の実施形態による第1の評価方法の手順を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態によるカラーマップデータを表す図である。
図5】本発明の実施形態による第1の評価方法の平均化処理の概略を説明するための図である。
図6】本発明の実施形態による第2の評価方法の手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態による第2の評価方法のバラツキ処理の概略を説明するための図である。
図8】本発明の実施形態による第3の評価方法の手順を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施形態による第3の評価方法の2値化処理の概略を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<システム構成>
以下、本発明の実施形態による衛生陶器の形状を評価する評価方法について説明する。先ず、図1により、本発明の実施形態による評価方法を実行するための評価システム1の概要について説明する。図1は、本発明の実施形態による評価システム1の概略構成を示すブロック図であり、図2は、本発明の実施形態による3Dスキャナの概略図である。
【0016】
本発明の実施形態による評価システム1は、衛生陶器の形状を評価するシステムである。ここで、衛生陶器は、衛生設備に用いられる陶器製の器具であり、例えば、水洗大便器、小便器、手洗器、洗面器、汚物流しなどである。衛生陶器は、一般的に、成形工程、乾燥工程、焼成工程の順序で製造される。焼成工程後の衛生陶器は、成形工程時と比較して約10%以上の収縮が発生する。このため、衛生陶器は、金属や樹脂製の製品と比較して製造上のバラツキ(製造誤差)が発生する可能性が高い。
【0017】
図1に示すように、評価システム1は、入力装置2、処理装置4、表示装置6、記憶装置8、及び通信装置10を備えている。
【0018】
図2に示すように、入力装置2は、対象物の立体形状を非接触で測定する3Dスキャナ(3次元測定機)12である。3Dスキャナ12は、評価対象となる水洗大便器14を複数のセンサー群12aにより測定する。複数のセンサー群12aは、カメラ及び距離センサーにより構成されている。複数のセンサー群12aは、水洗大便器14の全表面を一度に測定することができる個数及び位置で配置されている。なお、本発明の実施形態においては、複数のセンサー群12aを備える場合を示しているが、1つのセンサー(カメラ及び距離センサー)をロボットに設置して、このロボットを動かすことにより水洗大便器14を全方位から測定できるようにしてもよい。
【0019】
3Dスキャナ12は、水洗大便器14の表面形状を測定し、水洗大便器14の表面の各点における3次元座標の数値データ(点群データ)を取得するようになっている。なお、本発明の実施形態においては、入力装置2が3Dスキャナである場合を示しているが、3Dスキャナは水洗大便器14の内部形状を測定することができないため、水洗大便器14の内部形状を測定したい場合には、入力装置2としてCT(Computed Tomography)スキャン装置を使用してもよい。
【0020】
処理装置4は、CPU(Central Processing Unit)であり、予め定められたプログラム又は学習したプログラムに基づいて、入力装置2、処理装置4、表示装置6、記憶装置8、及び通信装置10の制御やデータの算出など行う装置である。処理装置4は、データ取得部16、3D形状データ生成部18、カラーマップデータ生成部20、評価画像生成部22、及び適合率算出部24を備えている。また、処理装置4は、後述する第1~第3の評価方法を実行可能に構成されている。
【0021】
データ取得部16は、3Dスキャナ12から3次元座標の数値データ(点群データ)を取得するようになっている。3D形状データ生成部18は、データ取得部16が取得した点群データをメッシュデータに変換して3D形状の測定データを生成する。この3D形状の測定データは、実際に製造された水洗大便器14の3D形状の測定データであり、水洗大便器14の形状を把握できるようになっている。
【0022】
カラーマップデータ生成部20は、記憶装置8に予め保存されている3D形状の基準データを取得するようになっている。この3D形状の基準データは、成形工程で使用される成形型に基づいて算出されたデータであり、製造上のバラツキが生じていない理想的な水洗大便器14の3D形状のデータである。なお、3D形状の基準データとして、製品の設計値から算出された焼成製品の3D形状のデータ、この焼成製品のデータから算出された成形製品又は乾燥製品の3D形状のデータ、その他任意の製造工程における製品の3D形状データ、又は製造工程(成形工程、乾燥工程、焼成工程)におけるシミュレーションから算出された3D形状のデータを採用してもよい。
また、カラーマップデータ生成部20は、基準データと測定データとを比較して位置合わせをするようになっている。さらに、カラーマップデータ生成部20は、基準データに対する測定データの偏差データを算出し、この偏差データに基づいて色付けされたカラーマップデータ(カラーマップ画像)を生成するようになっている。
【0023】
評価画像生成部22は、評価画像として、平均化画像、バラツキ画像、及び2値化画像を選択的に生成するようになっている。また、適合率算出部24は、評価画像生成部22において2値化画像を生成した場合に形状適合率を算出するようになっている。なお、平均化画像、バラツキ画像、及び2値化画像を生成する工程の詳細については後述する。
【0024】
表示装置6は、モニターであり、モニターの画面に、上述した3D形状データ、カラーマップデータ、評価画像(平均化画像、バラツキ画像、2値化画像)、形状適合率などが表示されるようになっている。
【0025】
記憶装置8は、メモリであり、3D形状の基準データが予め保存されている。また、記憶装置8には、3D形状データ生成部18によって生成された3D形状の測定データ、カラーマップデータ生成部20によって生成されたカラーマップデータ、評価画像生成部22によって生成された評価画像、適合率算出部24によって算出された形状適合率が逐次保存されるようになっている。なお、処理装置4で使用される処理プログラムなども保存されている。
【0026】
通信装置10は、電波や光を送信又は受信して外部機器と通信を行う機器である。通信装置10は、処理装置4に学習させるためのデータや水洗大便器14の評価に用いられるデータ(3D形状の基準データ、3D形状の測定データ、カラーマップデータ、評価画像、形状適合率)など、データの種類を問わずに外部機器と送信又は受信することができるようになっている。
【0027】
なお、記憶装置8、評価画像生成部22、及び適合率算出部24は、ビッグデータ化に伴ってクラウド環境(クラウドストレージ、クラウドコンピューティングなど)を活用して実現してもよい。
【0028】
<第1の評価方法>
次に、本発明の実施形態による第1の評価方法の手順について説明する。図3は、本発明の実施形態による第1の評価方法の手順を示すフローチャートであり、図4は、本発明の実施形態によるカラーマップデータを表す図であり、図5は、本発明の実施形態による第1の評価方法の平均化処理の概略を説明するための図である。なお、図3において、「S」は工程を示している。
【0029】
先ず、使用者が評価システム1を操作することにより第1の評価方法が開始される。
【0030】
図3に示されるように、S2は、評価対象となる水洗大便器14の形状を測定する工程である。S2では、3Dスキャナ12(入力装置2)が作動し、評価対象となる水洗大便器14の表面形状を測定する。具体的に、3Dスキャナ12は、水洗大便器14の表面の各点における3次元座標の数値データ(点群データ)を測定して取得する。
【0031】
次に、S4は、S2で取得された3次元座標の数値データ(点群データ)から3D形状の測定データを生成する工程である。S2では、データ取得部16が3Dスキャナ12から点群データを取得する。さらに、3D形状データ生成部18は、データ取得部16が取得した点群データをメッシュデータに変換して3D形状の測定データを生成する。ここで、3D形状の測定データは、実際に製造された水洗大便器14の3D形状の測定データである。
【0032】
S6は、予め保存されている3D形状の基準データと3D形状の測定データとの位置合わせをする工程である。S6では、カラーマップデータ生成部20は、記憶装置8に予め保存されている3D形状の基準データを取得する。ここで、3D形状の基準データは、成形工程で使用される成形型に基づいて算出されたデータであり、製造上のバラツキが生じていない水洗大便器14の3D形状のデータである。なお、3D形状の基準データとして、製品の設計値から算出された焼成製品の3D形状のデータ、この焼成製品のデータから算出された成形製品又は乾燥製品の3D形状のデータ、その他任意の製造工程における製品の3D形状データ、又は製造工程(成形工程、乾燥工程、焼成工程)におけるシミュレーションから算出された3D形状のデータを採用してもよい。
さらに、カラーマップデータ生成部20は、3D形状の基準データと、S4で生成された3D形状の測定データとを位置合わせする。
【0033】
基準データと測定データとの位置合わせは、幾何合わせにより行われる。幾何合わせとは、幾何形状(平面、直線、点など)を基準に位置合わせする手法である。本発明の実施形態における幾何合わせは、床面と製造上のバラツキが比較的小さい便器本体の上縁であるリム面(平面)を基準として行われる。これにより、リム面は他の部分と比較して製造時において歪みの発生が少ないため、S10で算出される偏差データの精度を向上させることができる。
なお、幾何合わせの基準は、リム面に限定されるものではなく、例えば、局部洗浄装置を便器本体に固定するための固定孔といった、製造時における歪みの発生が少ない部分を基準とすればよい。また、任意の基準を設定して先ず本フローを実行し、その結果判明した製造上のバラツキが最も小さい部分を幾何合わせの基準として設定してもよい。
【0034】
なお、他の実施形態として、基準データと測定データとの位置合わせは、ベストフィット合わせにより行われてもよい。ベストフィット合わせとは、特定のパラメータが最も目標値に近くなるように比較対象全体を位置合わせする手法である。
【0035】
次に、S10は、カラーマップデータ(カラーマップ画像)を生成する工程である。S10では、カラーマップデータ生成部20は、3D形状の基準データに対する3D形状の測定データの偏差データ(+5mm~-5mmの範囲)を算出する。さらに、カラーマップデータ生成部20は、偏差データの大きさに基づいて色付けされたカラーマップデータを生成する。S10で生成されたカラーマップデータは、記憶装置8に逐次保存される。
なお、本実施形態では、3D形状の基準データに対する3D形状の測定データの偏差データを+5mm~-5mmの範囲で色付けを行っており、範囲を超える場合、及び、範囲を下回る場合は、それぞれ一律の色を付している。偏差データの色付けの範囲は、製造上のバラツキの大きさに合わせて調整してもよい。
【0036】
具体的に、カラーマップデータは、「色相(Hue):色合い」、「彩度(Satration):色の鮮やかさ」、「明度(Value):色の鮮やかさ」の3つの組み合わせで色を表現する手法(HSV法)により、偏差データを色相値に変換処理してから、マッピングされる。これにより、3変数により1つの色を決定するRGB法と比較して、人が色を判断し易く、画像解析においても処理を単純化することができる。図4に示すように、カラーマップデータは、偏差0mmの領域(バラツキなし)は緑色G、偏差+5mmの領域(凸状のバラツキあり)は赤色R、偏差-5mmの領域(凹状のバラツキあり)は青色Bで区別されている。
なお、本発明の実施形態では、HSV法を使用しているが、その他の色空間が適している場合にはHSV法以外を使用してもよい。
【0037】
S12は、記憶装置8に保存されている多数のカラーマップデータの中から、複数、例えば3つのカラーマップデータ(A~C画像)を選択する工程である。処理装置4は、機械学習により類似する3つのカラーマップデータを自動的に選択する。なお、選択されるカラーマップデータの個数は、3つに限定されるものでなく、複数であればよい。また、カラーマップの選択方法は、機械学習に限定されるものではなく、使用者が適宜選択してもよい。
【0038】
次に、S14は、複数のカラーマップデータの各画素値の平均を算出する工程である。図5に示すように、S14では、評価画像生成部22は、H層、S層、V層毎に、3つのカラーマップデータA~C画像の各画素値の平均を算出する。さらに、評価画像生成部22は、H層、S層、V層毎の平均化された画素値に基づいて、カラーマップデータの平均化画像を生成する(再構築する)。平均化画像は、上述したカラーマップデータと同様に、偏差データの大きさに基づいて色付けされ、偏差0mmの領域(バラツキなし)は緑色、偏差+5mmの領域(凸状のバラツキあり)は赤色、偏差-5mmの領域(凹状のバラツキあり)は青色で区別されている。これにより、水洗大便器14の形状、成形装置や焼成装置の種別、焼成時における位置などの様々な製造条件で平均化画像を生成し、条件毎に画像を比較することによって製造条件と水洗大便器14の形状の相関関係を調べることができる。
【0039】
S16は、平均化画像を表示する工程である。S16では、表示装置6は、S14で生成されたカラーマップデータの平均化画像を表示する。
以上により、本発明の実施形態による第1の評価方法のフローを終了する。
【0040】
<第2の評価方法>
次に、本発明の実施形態による第2の評価方法の手順について説明する。図6は、本発明の実施形態による第2の評価方法の手順を示すフローチャートであり、図7は、本発明の実施形態による第2の評価方法のバラツキ処理の概略を説明するための図である。なお、図6において、「S」は工程を示している。
【0041】
以下、第1の評価方法との相違点を中心に説明する。
まず、S2~S12は、図3の第1評価方法と同じである。
【0042】
S20は、複数のカラーマップデータの各画素値の最大値と最小値との差を算出する工程である。図7に示すように、S20では、評価画像生成部22は、3つのカラーマップデータA~C画像の対応する画素において、H層の画素値の最大値からH層の画素値の最小値を引いたバラツキ値(=画素値の最大値-画素値の最小値)を算出する。さらに、評価画像生成部22は、バラツキ値の大きさに応じて濃淡を変えたバラツキ画像を生成する(再構築する)。バラツキ画像は、白黒画像であり、バラツキ値0(バラツキなし)の領域は白色、バラツキ値が大きくなるほど黒色が濃くなり、バラツキ値120(最大のバラツキあり)の領域は最も濃い黒色になっている。これにより、水洗大便器14の形状、成形装置や焼成装置の種別、焼成時における位置などの様々な製造条件でバラツキ画像を生成し、条件毎に画像を比較することによって製造条件と水洗大便器14の形状の相関関係を調べることができる。
なお、本発明の実施形態では、H層でバラツキ値を算出しているが、H層に代えてS層又はV層でバラツキ値を算出してバラツキ画像を生成してもよい。
【0043】
S22は、バラツキ画像を表示する工程である。S22では、表示装置6は、S20で生成されたバラツキ画像を表示する。
以上により、本発明の実施形態による第2の評価方法のフローを終了する。
【0044】
<第3の評価方法>
次に、本発明の実施形態による第3の評価方法の手順について説明する。図8は、本発明の実施形態による第3の評価方法の手順を示すフローチャートであり、図9は、本発明の実施形態による第3の評価方法の2値化処理の概略を説明するための図である。なお、図8において、「S」は工程を示している。
【0045】
以下、第1の評価方法との相違点を中心に説明する。
まず、S2~S10は、図3の第1評価方法と同じである。
【0046】
S30は、カラーマップデータを2値化処理する工程である。図9に示すように、S30では、評価画像生成部22は、まず、S10で生成されたカラーマップデータを準備する(図9(1)を参照)。次に、評価画像生成部22は、カラーマップデータに基づいて、水洗大便器14以外の領域を黒色、水洗大便器14の領域を白色にして2値化を行い、水洗大便器14の外形を表した2値化画像を生成する(図9(2)を参照)。次に、評価画像生成部22は、カラーマップデータに基づいて、例えば偏差+1mm~-1mmのバラツキが小さい領域(緑色の領域)を白色、それ以外の領域を黒色にして2値化を行い、バラツキが小さい範囲を示した2値化画像を生成する(図9(3)を参照)。なお、2値化する際の白色と黒色との境界である閾値は適宜変更することができ、例えば偏差+2~-2の領域を白色、それ以外の範囲を領域にしてもよい。
【0047】
S32は、形状適合率を算出する工程である。適合率算出部24は、S30で生成した2つの2値化画像において、それぞれの白色の総ピクセル数をカウントする。次に、バラツキが小さい範囲を示した2値化画像(図9(3))の白色の総ピクセル数を、外形の2値化画像(図9(2))の白色の総ピクセル数により除して形状適合率(=バラツキが小さい範囲を示した2値化画像の白色の総ピクセル数/外形の2値化画像の白色の総ピクセル数)を算出する。形状適合率は、バラツキが小さい範囲を示した2値化画像が水洗大便器14の外形の2値化画像に対して適合する割合を表す指標であり、形状適合率が大きいほど製造上のバラツキが発生しておらず、形状適合率が小さいほど製造上のバラツキが発生している。これにより、水洗大便器14の形状、成形装置や焼成装置の種別、焼成時における位置などの様々な製造条件で形状適合率を算出し、条件毎に形状適合率を比較することによって製造条件と水洗大便器14の形状の相関関係を調べることができる。
【0048】
S34は、2値化画像及び形状適合率を表示する工程である。S34では、表示装置6は、S30で生成された2値化画像及びS32で算出された形状適合率を表示する。なお、本発明の実施形態では、表示装置6に2値化画像及び形状適合率を表示するが、2値化画像及び形状適合率のいずれか一方を表示してもよい。
以上により、本発明の実施形態による第3の評価方法のフローを終了する。
【0049】
<評価画像の解析方法>
上述した第1~第3の評価方法により得られた評価画像(平均化画像、バラツキ画像、2値化画像)は、製造された水洗大便器の形状の類似度に基づいてグループ分けされる(クラスタリング)。グループ分けは、処理装置が機械学習して自動的に例えば3つのクラスに分けられる。ここで、類似度とは、例えば平均化画像では、色付けされたカラーマップデータが類似しているか否かである。類似度を判断する際には、カラーマップデータの画像全体を比較してもよく、カラーマップデータの画像の一部、例えば便器本体の台脚部のみを取り出して比較してもよい。
【0050】
次に、各グループにおいて、製造条件(成形装置や焼成装置の種別、焼成時における位置など)が分析される。ここで、水洗大便器14の形状を3Dスキャナ12により測定する際に、製造条件を個体識別番号として測定データにラベリングしておくと、各評価画像における製造条件を容易に特定することができる。
【0051】
次に、製造条件から水洗大便器の形状における出来栄えとしての形状適合率を予測する予測モデルを構築する。具体的に、処理装置にて測定データにラベリングされた製造条件と形状適合率(教師データ)を学習させる。次に、得られた形状適合率のうちで最大となる形状適合率を取り出して、予測モデルを使用して逆解析し、最適な製造条件を導き出す。これにより、形状適合率が良い製造条件を把握することができる。
【0052】
以下、上述した本発明の実施形態による評価方法の作用効果を説明する。
先ず、本発明の実施形態による第1~第3の評価方法においては、衛生陶器、例えば水洗大便器14の形状を評価する評価方法であって、水洗大便器14の形状を測定して測定データを取得する形状測定工程S2と、予め保存されている基準データと測定データとの位置合わせをする位置合わせ工程S4と、基準データに対する測定データの偏差データを算出し、この偏差データに基づいて色付けされたカラーマップデータを生成するカラーマップデータの生成工程S10と、カラーマップデータに対して製造上のバラツキを可視化するための所定の処理を施して評価画像を生成する評価画像の生成工程(S14、S20、又はS30)と、を含む。
このような本発明の実施形態による第1~第3の評価方法によれば、カラーマップデータに対して製造上のバラツキを可視化するための所定の処理を施した評価画像(平均化画像、バラツキ画像、又は2値化画像)を用いて評価することができるので、水洗大便器14の形状を直感的に評価することができ、作業負荷や時間を軽減することができる。
【0053】
また、本発明の実施形態による第1の評価方法においては、上記所定の処理では、複数のカラーマップデータにおいて、各画素値の平均値が算出され、この平均値に基づいて評価画像として平均化画像が生成される(図3のS14)。
このような本発明の実施形態による第1の評価方法によれば、平均化画像を用いて評価することできるので、水洗大便器14の形状を評価する精度を向上させることができる。
【0054】
本発明の実施形態による第2の評価方法においては、上記所定の処理では、複数のカラーマップデータにおいて、各画素値における最大値から最小値を引くことによりバラツキ値が算出され、このバラツキ値に基づいて評価画像としてバラツキ画像が生成される(図6のS20)。
このような本発明の実施形態による第2の評価方法によれば、バラツキ画像を用いて評価することができるので、作業負荷や時間をより軽減することができる。
【0055】
また、本発明の実施形態による第3の評価方法においては、所定の処理では、カラーマップデータにおいて、製造上のバラツキが小さい範囲とそれ以外とに2値化処理されて、評価画像として2値化画像が生成される(図8のS30)。
このような本発明の実施形態による第3の評価方法によれば、2値化画像を用いて評価することができるので、作業負荷や時間をより軽減することができる。
【0056】
本発明の実施形態による第3の評価方法においては、2値化画像が水洗大便器14の外形の2値化画像に対して適合する割合を表す形状適合率を算出する形状適合率の算出工程をさらに含む(図8のS32)。
このような本発明の第3の実施形態による評価方法によれば、形状適合率を用いて評価することができるので、作業負荷や時間をより軽減することができる。
【0057】
また、本発明の実施形態による評価方法においては、形状測定工程は、3Dスキャナによって水洗大便器14の形状を測定する。
このような本発明の実施形態による評価方法によれば、3Dスキャナによって測定データを取得することができるので、作業負荷や時間をより軽減することができる。
【0058】
本発明の上述した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 :評価システム
2 :入力装置
4 :処理装置
6 :表示装置
8 :記憶装置
10 :通信装置
12 :3Dスキャナ
12a :センサー群
14 :水洗大便器
16 :データ取得部
18 :3D形状データ生成部
20 :カラーマップデータ生成部
22 :評価画像生成部
24 :適合率算出部
図1
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