(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116942
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】光ファイバ式ひずみセンサの交換方法及び更新方法並びに交換構造及び更新構造
(51)【国際特許分類】
G01L 1/26 20060101AFI20240821BHJP
G01L 1/24 20060101ALI20240821BHJP
G01L 5/101 20200101ALI20240821BHJP
【FI】
G01L1/26 Z
G01L1/24 A
G01L5/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022818
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500271030
【氏名又は名称】株式会社日本工業試験所
(71)【出願人】
【識別番号】000142067
【氏名又は名称】株式会社共和電業
(71)【出願人】
【識別番号】000192626
【氏名又は名称】神鋼鋼線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】篠原 聖二
(72)【発明者】
【氏名】伊佐 政晃
(72)【発明者】
【氏名】服部 駿佑
(72)【発明者】
【氏名】山上 哲示
(72)【発明者】
【氏名】正木 英行
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 伯子ルイザ
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 英樹
(72)【発明者】
【氏名】下田 英司
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 浩二
(72)【発明者】
【氏名】榊 一平
(72)【発明者】
【氏名】白▲浜▼ 昭二
(72)【発明者】
【氏名】武市 知大
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA06
2F051AB03
(57)【要約】
【課題】構造物の線状部材の張力を測定するために設置された光ファイバ式ひずみセンサの交換方法及び更新方法と、上記光ファイバ式ひずみセンサの交換構造及び更新構造を提供する。
【解決手段】
構造物としての橋梁のケーブル1の張力を測定するために設置された光ファイバ式ひずみセンサを、ケーブル1の保護膜6から除去して溝を形成する。この溝内に新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を配置し、溝に充填材9を充填して、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を埋設する。交換により除去される光ファイバ式ひずみセンサと、新たに設置される光ファイバ式ひずみセンサ2は、いずれも、ケーブル1の張力を算出するためにひずみの変動周波数分布を検出するものであるため、保護膜6中に埋設することができるから、光ファイバ式ひずみセンサの交換を容易に行うことができる。
【選択図】
図4C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の線状部材から、この線状部材の張力を測定することを目的として上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するために設置された光ファイバ式ひずみセンサを除去するセンサ除去工程と、
上記線状部材に、この線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための新たな光ファイバ式ひずみセンサを設置するセンサ設置工程と
を備えることを特徴とする光ファイバ式ひずみセンサの交換方法。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバ式ひずみセンサの交換方法において、
上記センサ除去工程は、上記線状部材の表面層に埋め込まれた上記光ファイバ式ひずみセンサを、この上記光ファイバ式ひずみセンサの周りの上記表面層の部分と共に除去して溝を形成する工程を有し、
上記センサ設置工程は、上記溝内に上記新たな光ファイバ式ひずみセンサを配置する工程と、上記溝内に充填材を充填して上記新たな光ファイバ式ひずみセンサを埋める工程とを有する
ことを特徴とする光ファイバ式ひずみセンサの交換方法。
【請求項3】
構造物の線状部材の張力を測定するための光ファイバ式ひずみセンサが設置された状態で、上記線状部材の表面に、上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための新たな光ファイバ式ひずみセンサを配置するセンサ配置工程と、
上記新たな光ファイバ式ひずみセンサを被覆すると共に、上記線状部材の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部材を設置する被覆部材設置工程と
を備えることを特徴とする光ファイバ式ひずみセンサの更新方法。
【請求項4】
構造物の線状部材の表面層に形成された溝と、
上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するために、上記溝の内側に設置された新たな光ファイバ式ひずみセンサと、
上記新たな光ファイバ式ひずみセンサを埋めるように上記溝内に充填された充填材と
を備えることを特徴とする光ファイバ式ひずみセンサの交換構造。
【請求項5】
構造物の線状部材の内部に埋設された鞘管と、
上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するために上記鞘管内に挿入された光ファイバ式ひずみセンサと、
上記光ファイバ式ひずみセンサを上記鞘管に着脱可能に固定する固定構造と
を備えることを特徴とする光ファイバ式ひずみセンサの交換構造。
【請求項6】
請求項5に記載の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造において、
上記固定構造は、
上記光ファイバ式ひずみセンサを収容して保護する保護体と、
上記光ファイバ式ひずみセンサのひずみ検出部の近傍に、上記保護体から径方向外側に突出して設けられた係止部と、
上記鞘管の内周面に形成され、この鞘管内に挿入された上記保護体が軸周りに回動するに伴って上記係止部が係止する係止溝と、
上記保護体に付勢力を作用させて、上記係止部を係止溝内に保持する固定具と
を有することを特徴とする光ファイバ式ひずみセンサの交換構造。
【請求項7】
構造物の線状部材の内部に、この線状部材の張力を測定するために設置された光ファイバ式ひずみセンサと、
上記線状部材の表面に、上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するために設置された新たな光ファイバ式ひずみセンサと、
上記新たな光ファイバ式ひずみセンサを被覆すると共に、上記線状部材の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部材を設置する被覆部材と
を備えることを特徴とする光ファイバ式ひずみセンサの更新構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば橋梁等の構造物の線状部材に作用している張力を検出するために設置された光ファイバ式ひずみセンサの交換方法及び更新方法並びに交換構造及び更新構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、構造物に使用されるプレストレストコンクリート部材では、PC(Prestressed Concrete)鋼撚り線に引張力を与え、コンクリート部分に圧縮力を作用させて引張応力を低減することにより、部材の強度を高めている。このようなプレストレストコンクリート部材では、強度を維持するために、PC鋼撚り線に作用する張力の管理が重要である。従来、上記PC鋼撚り線の張力を測定するため、ひずみ測定用光ファイバを内蔵したPC鋼撚り線が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この光ファイバ付きPC鋼撚り線は、芯材を構成する鋼製の撚り線にひずみ測定用光ファイバが撚り合わされており、PC鋼撚り線に作用する張力によって生じるひずみを、上記ひずみ測定用光ファイバで測定するように構成されている。
【0004】
また、構造物としての斜張橋において、所定の間隔をおいて立設された一対のタワーの上部から、橋桁を吊り下げるために傾斜して配列されたケーブルの張力を測定するため、光ファイバを内蔵したケーブルを用いることが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
この光ファイバを内蔵したケーブルは、複数の鋼線を実質的に平行に束ねて緩やかに撚り合わせて形成された芯材としてのストランドの外側を、被覆層で被覆した所謂パラレルワイヤストランド型のケーブルである。このケーブルのストランド内に、鋼線と同径の光ファイバ内蔵線が、複数個配置されている。複数の光ファイバ内蔵線は、鋼線と同じ長さに形成され、ストランドの断面において、中心部や、半分の径の同心円上や、外周部に配置されている。この光ファイバ内蔵線は、隣接する鋼線に密着すると共に、鋼線と緩やかに撚り合わされて、鋼線と共にストランドを形成している。この光ファイバ内蔵線により、ケーブルの全長に渡るひずみ分布を検出し、このひずみ分布からケーブルの張力を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-70593号公報
【特許文献2】特開2007-297777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記光ファイバ付きPC鋼撚り線が適用されるプレストレストコンクリート部材や、上記光ファイバ内蔵のケーブルが適用される斜張橋は、数十年単位で使用され、場合によっては100年以上使用される場合もある。このような長い使用期間において、光ファイバに不具合が生じる場合がある。
【0008】
ところで、上記光ファイバ付きPC鋼撚り線と上記光ファイバ内蔵のケーブルは、いずれも、張力によって生じるPC鋼撚り線やストランドの延在方向のひずみを、光ファイバで直接測定するものである。上記PC鋼撚り線やストランドの延在方向のひずみの値は微量であるから、上記光ファイバは、微量のひずみの値を検出するために、芯材を構成する鋼撚り線や鋼線に強固に固定されている。そのうえ、上記光ファイバ付きPC鋼撚り線と上記光ファイバ内蔵のケーブルは、鋼撚り線や鋼線と共に、撚り合わされている。したがって、光ファイバに不具合が生じても、供用中のプレストレスコンクリート部材の中の撚り線からひずみ測定用光ファイバを取り外すことや、供用中の斜張橋のケーブルのストランドから光ファイバ内蔵線を取り出すことは、不可能である。
【0009】
また、光ファイバは、芯材を構成する撚り線や鋼線に密着させると共に撚り合わせる必要があるため、供用中のプレストレストコンクリート部材や斜張橋に、張力測定用の光ファイバを新たに設置することは不可能である。
【0010】
そこで、本発明の課題は、構造物の線状部材の張力を測定するために設置された光ファイバ式ひずみセンサの交換方法及び更新方法と、上記光ファイバ式ひずみセンサの交換構造及び更新構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の光ファイバ式ひずみセンサの交換方法は、構造物の線状部材から、この線状部材の張力を測定することを目的として上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するために設置された光ファイバ式ひずみセンサを除去するセンサ除去工程と、
上記線状部材に、この線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための新たな光ファイバ式ひずみセンサを設置するセンサ設置工程と
を備えることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、センサ除去工程で、構造物の線状部材から、この線状部材の張力を測定することを目的として設置された光ファイバ式ひずみセンサを除去する。この光ファイバ式ひずみセンサは、上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するものであり、線状部材のひずみの変動を測定できればよい。このため、光ファイバ式ひずみセンサは、線状部材に、ひずみの変動を測定可能な程度に設置されているので、ひずみそのもの値を測定する場合のようにセンサが芯材に強固に固定されていない。したがって、ひずみの変動周波数分布を検出するために設置された光ファイバ式ひずみセンサは、線状部材から容易に除去することができる。こうして、センサ除去工程では、劣化や故障等に起因して交換が必要となった光ファイバ式ひずみセンサが、除去される。続いて、センサ設置工程で、上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための新たな光ファイバ式ひずみセンサが設置される。この光ファイバ式ひずみセンサは、上記線状部材のひずみの変動を測定可能な程度に設置されればよいので、ひずみそのもの値を測定する場合のように芯材に強固に固定する必要がない。したがって、新たな光ファイバ式ひずみセンサは、線状部材に容易に設置できる。
【0013】
一実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換方法は、上記センサ除去工程は、上記線状部材の表面層に埋め込まれた上記光ファイバ式ひずみセンサを、この上記光ファイバ式ひずみセンサの周りの上記表面層の部分と共に除去して溝を形成する工程を有し、
上記センサ設置工程は、上記溝内に上記新たな光ファイバ式ひずみセンサを配置する工程と、上記溝内に充填材を充填して上記新たな光ファイバ式ひずみセンサを埋める工程とを有する。
【0014】
上記実施形態によれば、光ファイバ式ひずみセンサは、ひずみの変動を測定するものであるから、線状部材の表面層に埋め込まれており、センサ除去工程で容易に除去される。ここで、上記表面層は、線状部材に作用する引張力を受け持つ芯材を被覆するように、線状部材の表面に設けられた層である。上記センサ除去工程で、線状部材の表面層から、光ファイバ式ひずみセンサとこのセンサの周りの表面層の部分とが除去されて溝が形成される。この後、センサ設置工程で、上記溝内に新たな光ファイバ式ひずみセンサが配置され、この溝内に充填材が充填されて上記新たな光ファイバ式ひずみセンサが埋められる。この光ファイバ式ひずみセンサは、ひずみの変動を測定するものであって、線状部材の芯材に強固に固定される必要が無いから、このような簡易なセンサ設置工程により、線状部材に容易に設置することができる。
【0015】
本発明の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法は、構造物の線状部材の張力を測定するための光ファイバ式ひずみセンサが設置された状態で、上記線状部材の表面に、上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための新たな光ファイバ式ひずみセンサを配置するセンサ配置工程と、
上記新たな光ファイバ式ひずみセンサを被覆すると共に、上記線状部材の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部材を設置する被覆部材設置工程と
を備えることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、センサ配置工程で、構造物の線状部材の張力を測定するための光ファイバ式ひずみセンサが設置された状態で、上記線状部材の表面に、上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための新たな光ファイバ式ひずみセンサを配置する。ここで、構造物の線状部材の張力を測定するために設置されていた光ファイバ式ひずみセンサは、線状部材における設置位置は限定されない。例えば、線状部材を構成する芯材の内部や、芯材の表面や、芯材を被覆する表面層の内部等に配置されていてもよい。また、この光ファイバ式ひずみセンサの測定値から線状部材の張力を算出する方法は限定されない。上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための新たな光ファイバ式ひずみセンサは、上記線状部材の張力を測定することを目的として、線状部材のひずみの変動を測定するものである。この後、被覆部材設置工程で、上記新たな光ファイバ式ひずみセンサを被覆すると共に、上記線状部材の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部材を設置する。上記新たな光ファイバ式ひずみセンサは、線状部材のひずみの変動を測定できればよいので、上記センサ配置工程で線状部材の表面に配置され、上記被覆部材設置工程で被覆部材に被覆されるという簡易な方法により設置することができる。したがって、上記線状部材の張力を測定するための光ファイバ式ひずみセンサを、容易かつ効果的に更新することができる。
【0017】
本発明の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造は、構造物の線状部材の表面層に形成された溝と、
上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するために、上記溝の内側に設置された光ファイバ式ひずみセンサと、
上記光ファイバ式ひずみセンサを埋めるように上記溝内に充填された充填材と
を備えることを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、構造物の線状部材の表面層に形成された溝内に、上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための光ファイバ式ひずみセンサが配置され、この光ファイバ式ひずみセンサを埋めるように充填材が充填され、光ファイバ式ひずみセンサの交換構造が形成される。上記線状部材の表面層の溝は、線状部材の張力を測定するために設置されていた光ファイバ式ひずみセンサが除去されて形成された場合に、光ファイバ式ひずみセンサの交換を効率的に行うことができる。上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための光ファイバ式ひずみセンサは、線状部材のひずみの変動を測定できればよいので、線状部材の表面層の溝内に配置され、この溝内で埋められるように充填材が充填されるという簡易な構造により設置することができる。したがって、上記線状部材の張力を測定するための光ファイバ式ひずみセンサを、容易かつ効果的に交換することができる。
【0019】
本発明の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造は、構造物の線状部材の内部に埋設された鞘管と、
上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するために上記鞘管内に挿入された光ファイバ式ひずみセンサと、
上記光ファイバ式ひずみセンサを上記鞘管に着脱可能に固定する固定構造と
を備えることを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、構造物の線状部材の内部に埋設された鞘管に、上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための光ファイバ式ひずみセンサが挿入され、この光ファイバ式ひずみセンサが固定構造によって上記鞘管に着脱可能に固定される。上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための光ファイバ式ひずみセンサは、線状部材のひずみの変動を測定できればよいので、予め設置された鞘管の内側に挿入されて固定構造で固定されるという比較的簡易な構造により、設置することができる。したがって、上記線状部材の張力を測定するための光ファイバ式ひずみセンサを、容易かつ効果的に交換することができる。また、上記固定構造は、光ファイバ式ひずみセンサを鞘管に着脱可能に固定するので、光ファイバ式ひずみセンサが劣化や故障等に起因して交換が必要となったときに、容易に交換を行うことができる。
【0021】
一実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造は、上記固定構造は、
上記光ファイバ式ひずみセンサを収容して保護する保護体と、
上記光ファイバ式ひずみセンサのひずみ検出部の近傍に、上記保護体から径方向外側に突出して設けられた係止部と、
上記鞘管の内周面に形成され、この鞘管内に挿入された上記保護体が軸周りに回動するに伴って上記係止部が係止する係止溝と、
上記保護体に付勢力を作用させて、上記係止部を係止溝内に保持する固定具と
を有する。
【0022】
上記実施形態によれば、固定構造は、保護体に光ファイバ式ひずみセンサが収容されて保護され、上記光ファイバ式ひずみセンサのひずみ検出部の近傍で上記保護体から径方向外側に突出して設けられた係止部が、上記鞘管の内周面に形成された係止溝に、上記保護体が軸周りに回動するに伴って係止される。上記係止部は、固定具により保護体に作用される付勢力で係止溝内に保持される。このように、比較的簡易な構成の固定構造により、光ファイバ式ひずみセンサを、線状部材に固定することができる。したがって、上記線状部材に着脱可能な光ファイバ式ひずみセンサを、容易かつ効果的に線状部材に固定して、安定して線状部材の張力を測定することができる。
【0023】
本発明の光ファイバ式ひずみセンサの更新構造は、構造物の線状部材の内部に、この線状部材の張力を測定するために設置された光ファイバ式ひずみセンサと、
上記線状部材の表面に、上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するために設置された新たな光ファイバ式ひずみセンサと、
上記新たな光ファイバ式ひずみセンサを被覆すると共に、上記線状部材の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部材を設置する被覆部材と
を備えることを特徴としている。
【0024】
上記構成によれば、構造物の線状部材の張力を測定するための光ファイバ式ひずみセンサが設置された状態で、上記線状部材の表面に、上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための新たな光ファイバ式ひずみセンサが配置されている。ここで、構造物の線状部材の張力を測定するために設置された光ファイバ式ひずみセンサは、線状部材における設置位置は限定されない。例えば、線状部材を構成する芯材の内部や、芯材の表面や、芯材を被覆する表面層の内部等に配置されていてもよい。また、この光ファイバ式ひずみセンサの測定値から線状部材の張力を算出する方法は特に限定されない。上記線状部材のひずみの変動周波数分布を検出するための新たな光ファイバ式ひずみセンサは、上記線状部材の張力を測定することを目的として、線状部材のひずみの変動を測定するものである。上記新たな光ファイバ式ひずみセンサが、上記線状部材の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部材で被覆されている。上記新たな光ファイバ式ひずみセンサは、線状部材のひずみの変動を測定できればよいので、線状部材の表面に設置されて被覆部材に被覆されるという簡易な構造により設置される。したがって、上記線状部材の張力を測定するための光ファイバ式ひずみセンサを、容易かつ効果的に更新することができる。
【0025】
上記発明及び実施形態において、光ファイバ式ひずみセンサは、光ファイバ中に伝達される光の物理的特徴に基づいて、ひずみを測定するものを広く採用できる。また、新たな光ファイバ式ひずみセンサの測定の対象である線状部材のひずみの変動とは、時系列におけるひずみの変化であり、ひずみそのものの値は高精度に測定する必要がない。上記新たな光ファイバ式ひずみセンサでひずみの変動を測定すると、このひずみの変動に基づいて、上記線状部材の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動周波数の分布を検出する。ここで、ひずみの変動周波数の分布は、光ファイバ式ひずみセンサの測定値を、例えば高速フーリエ変換等を行うことにより、求めることができる。こうして検出されたひずみの変動周波数分布に基づいて、上記線状部材の固有振動数を特定し、この固有振動数に基づいて、上記線状部材の張力を算出することができる。上記固有振動数に基づく線状部材の張力の算出方法は、公知の種々の算出式を利用できる。本発明において、構造物とは、橋梁、トンネル、ダム、水門、擁壁、堤防及びタンク等の土木構造物や、屋根と柱又は壁を有する建築物等が該当する。また、線状部材とは、素線を撚り合わせたワイヤロープ又はPC鋼撚り線や、素線を平行に束ねた平行線ケーブルや、丸棒や、角棒等が該当し、その材料は限定されない。また、線状部材は、芯材と、この芯材を被覆する保護材とを含むもの等のように、複数の材料で形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明により交換又は更新される光ファイバーセンサを用いて線状部材の張力を検出する様子を示す模式図である。
【
図2】線状部材の張力の検出方法を示すフロー図である。
【
図3】本発明の実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換方法を適用する線状部材を示す断面図である。
【
図4A】第1実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換方法の第1の工程を示す断面図である。
【
図5A】第2実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換方法の第1の工程を示す断面図である。
【
図6A】第3実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法の第1の工程を示す断面図である。
【
図6C】第3実施形態の変形例の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法において、
図6Aに続く他の工程を示す断面図である。
【
図6D】第3実施形態の他の変形例の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法において、
図6Aに続く他の工程を示す断面図である。
【
図7】第4実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造を適用した線状部材を示す断面図である。
【
図8A】第4実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造を構成する鞘管を示す縦断面図である。
【
図8B】
図8Aの鞘管に光ファイバ式ひずみセンサを固定した様子を示す縦断面図である。
【
図10】光ファイバ式ひずみセンサの収容管の先端部分を示す断面図である。
【
図11】光ファイバ式ひずみセンサの交換構造の基端部を示す断面図である。
【
図12A】第5実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造が適用された線状部材を示す縦断面図である。
【
図13】第6実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造が適用された線状部材を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明により交換又は更新される光ファイバ式ひずみセンサを用いて、構造物の線状部材の張力を検出する様子を示す模式図である。この構造物の線状部材の張力検出方法は、構造物としての橋梁に使用されている線状部材としてのケーブルに作用する張力を検出するものである。
【0029】
図1に示すように、構造物の線状部材の張力検出方法では、橋梁用のケーブル1に、光ファイバ式ひずみセンサ2を設置する。光ファイバ式ひずみセンサ2は、FBGセンサを用いるのが好ましい。この光ファイバ式ひずみセンサ2は、予め橋梁用ケーブル1に内蔵されていてもよく、あるいは、測定を行う際に橋梁用ケーブル1に後付けしてもよい。この光ファイバ式ひずみセンサ2により、矢印Aで示すように橋梁用ケーブル1の軸直角方向に変位する振動に起因するひずみの変動を測定する。光ファイバ式ひずみセンサ2としてFBGセンサを用いた場合、このFBGセンサは、光ファイバのコアの所定位置に回折格子が形成されてなるひずみ検出部2aを有し、このひずみ検出部2aの回折格子における光の反射波長の変化に基づいて、ひずみを検出する。光ファイバ式ひずみセンサ2は、FBG測定器3に接続されている。
【0030】
上記FBG測定器3は、光ファイバ式ひずみセンサ2に光信号を送出すると共にひずみ検出部2aからの反射光を受光し、これらの送出光と反射光の差に基づいて、ひずみ検出部2aで検出されたひずみに関する情報を出力する。FBG測定器3は、パーソナルコンピュータ4に接続されており、このパーソナルコンピュータ4は、FBG測定器3から受け取ったひずみに関する情報を記憶すると共に、ひずみに関する情報の解析を行って橋梁用ケーブル1の張力を検出する。
【0031】
図2は、上記構造物の線状部材の張力検出方法を示すフロー図である。
図2のフロー図に示すように、この線状部材の張力検出方法では、まず、光ファイバ式ひずみセンサ2としてのFBGセンサにより、橋梁用ケーブル1のひずみの変動を測定する(ステップS1)。橋梁用ケーブル1のひずみの変動を測定するとき、加振器等を用いて橋梁用ケーブル1に振動を与えてひずみの変動を生じさせてもよいが、風荷重や活荷重等の種々の荷重によって橋梁用ケーブル1に生じる常時微振動に起因するひずみの変動を測定してもよい。ここで、光ファイバ式ひずみセンサ2で測定されるひずみの変動には、橋梁用ケーブル1の軸方向に作用する荷重の変動に起因するひずみの変動と、橋梁用ケーブル1の軸直角方向の振動Aに起因するひずみの変動とが重なっている。上記橋梁用ケーブル1の軸方向に作用する荷重としては、この橋梁用ケーブル1が支持する床版上を走行する車両の荷重が挙げられる。
【0032】
続いて、光ファイバ式ひずみセンサ2によるひずみの測定値にFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)処理を行い、ひずみの変動周波数の分布を検出する(ステップS2)。このFFT処理は、FBG測定器3とパーソナルコンピュータ4のいずれで行ってもよい。
【0033】
この後、ステップS2で検出したひずみの変動周波数の分布に基づいて、橋梁用ケーブル1の軸直角方向の振動Aに起因する固有振動数を特定する(ステップS3)。橋梁用ケーブル1の軸直角方向の振動Aに起因する固有振動数は、ひずみの変動周波数分布のうち、周波数帯域に基づいて特定することができる。あるいは、橋梁用ケーブル1の複数の異なる周方向位置で同時に測定したひずみの変動の差分を取り、この差分にFFT処理を行って周波数分布を検出した結果に基づいて、固有振動数を特定してもよい。ここで、橋梁用ケーブル1には、軸方向に作用する荷重に起因するひずみの変動と、橋梁用ケーブル1の軸直角方向の振動Aに起因するひずみの変動とが重なっており、これらのうち、軸方向の荷重に起因するひずみの変動は、橋梁用ケーブル1のいずれの位置においても互いに同一である。したがって、橋梁用ケーブル1の異なる周方向位置で同時に測定された複数のひずみの変動の差分を取ることにより、軸方向の荷重に起因するひずみの変動を相殺し、橋梁用ケーブル1の軸直角方向の振動Aに起因するひずみの変動のみを抽出することができる。
【0034】
この後、上記ステップS3で特定した橋梁用ケーブル1の固有振動数に基づいて、橋梁用ケーブル1に作用する張力を算出する(ステップS4)。固有振動数を用いた橋梁用ケーブル1の張力の算出は、次の関係式(1)を利用することができる。
【数1】
ここで、Tは橋梁用ケーブル1の張力、wは橋梁用ケーブル1の単位重量、gは重力加速度、fnはn次の固有振動数、Lは橋梁用ケーブル1の長さ、nは固有振動数の次数、Cは定数である。この定数Cは、次の関係式(2)によって求められる。
【数2】
ここで、E・Iは橋梁用ケーブル1の曲げ剛性である。
【0035】
上記式(1)及び(2)に基づく橋梁用ケーブル1の張力の算出は、パーソナルコンピューター4で行う。ここで、固有振動数を用いた橋梁用ケーブル1の張力の算出式は、上記式(1)及び(2)に限定されず、いわゆる振動法として提案される種々の式を用いることができる。
【0036】
このように、上記構造物の線状部材の張力検出方法によれば、光ファイバ式ひずみセンサ2により橋梁用ケーブル1のひずみの変動を測定し、このひずみの変動の測定結果から橋梁用ケーブル1の固有振動数を特定し、特定した固有振動数に基づいて橋梁用ケーブル1の張力を検出する。したがって、光ファイバ式ひずみセンサ2は、橋梁用ケーブル1のひずみの値を正確に測定する必要が無いので、橋梁用ケーブル1に、ひずみの変動を測定可能な程度の強度で固定されていればよい。すなわち、例えば従来の光ファイバ付きPC鋼撚り線のように、PC鋼撚り線の張力をPC鋼撚り線の軸方向のひずみの値から検出することを目的とし、ひずみ測定用光ファイバのひずみを鋼撚り線のひずみと一致させるために、ひずみ測定用光ファイバをフィラーで包むと共に鋼撚り線に撚り合わせて強固に固定する必要が無い。また、従来の光ファイバ内蔵ケーブルのように、ストランドの張力を鋼線の軸方向のひずみの値から検出することを目的とし、光ファイバ内蔵線のひずみをストランドの鋼線のひずみと一致させるために、光ファイバ内蔵線を隣接する鋼線に密着すると共に鋼線と緩やかに撚り合わせる必要が無い。したがって、本発明が対象とする光ファイバ式ひずみセンサ2は、橋梁用ケーブル1に、簡易な構造で容易に取り付けることができ、その結果、光ファイバ式ひずみセンサの交換と更新が可能となる。また、光ファイバ式ひずみセンサの交換構造と更新構造を実現することができる。
【0037】
図3は、本発明の実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換方法が適用される線状部材を示す断面図である。この線状部材は、構造物としての橋梁に使用されているケーブルであり、このケーブル1は、張力を伝達する芯材5と、芯材5を保護する表面層としての保護膜6を有する。芯材5は、高張力鋼の亜鉛メッキ鋼で形成された複数の素線が、実質的に平行に束ねられて緩やかに撚り合わされて形成されたパラレルワイヤストランドである。保護膜6は、ポリエチレンで形成されているが、他の材料で形成されたものでもよい。また、芯材5と保護膜6の間には、芯材5を取り囲む他の樹脂やグラウト等が設けられていてもよい。このケーブル1の保護膜6中には、張力を測定するために光ファイバ式ひずみセンサ12が設置されている。この光ファイバ式ひずみセンサ12は、ひずみの変動周波数分布を検出してケーブルの張力を測定するために設置されたものである。このケーブル1に設置された光ファイバ式ひずみセンサ12が、劣化や故障により交換の必要が生じたため、新たな光ファイバ式ひずみセンサに交換する。
【0038】
図4A乃至4Cは、第1実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換方法の工程を順に示す図である。第1実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換方法では、まず、
図4Aに示すように、ケーブル1の保護膜6から、設置されていた光ファイバ式ひずみセンサ12を除去して溝8を形成する。ここで、光ファイバ式ひずみセンサ12の周囲の保護膜6の部分を、この保護膜6の厚み方向において全て除去する。これにより、溝8の底面に、芯材5や、芯材5を取り囲む樹脂やグラウト等が露出する。続いて、
図4Bに示すように、ケーブル1の表面の溝8内に、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を配置する。この後、
図4Cに示すように、溝8内に充填材9を充填し、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を埋める。充填材9は、樹脂製の接着剤を用いることができる。新たな光ファイバ式ひずみセンサ2もまた、ひずみの変動周波数分布を検出してケーブルの張力を測定するために設置するものである。このように、交換により除去される光ファイバ式ひずみセンサ12と、新たに設置される光ファイバ式ひずみセンサ2は、いずれもひずみの変動周波数分布を検出するものであるため、保護膜6中に埋設することができる。したがって、本実施形態の交換方法により、交換対象の光ファイバ式ひずみセンサ12をケーブル1から容易に除去でき、また、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を容易に設置することができる。
【0039】
図5A乃至5Cは、第2実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換方法の工程を順に示す図である。第2実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換方法では、まず、
図5Aに示すように、ケーブル1の保護膜6から、設置されていた光ファイバ式ひずみセンサ12を除去して溝18を形成する。ここで、保護膜6の光ファイバ式ひずみセンサ12を包含する部分を、保護膜6の内径側部分を残すように除去する。これにより、溝18の側面と底面のいずれも、保護膜6の材質が露出する。続いて、
図5Bに示すように、ケーブル1の表面の溝18内に、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を配置する。この後、
図5Cに示すように、溝18内に充填材9を充填し、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を埋める。充填材9は、樹脂製の接着剤を用いることができる。新たな光ファイバ式ひずみセンサ2もまた、ひずみの変動周波数分布を検出してケーブルの張力を測定するために設置するものである。このように、交換により除去される光ファイバ式ひずみセンサ12と、新たに設置される光ファイバ式ひずみセンサ2は、いずれもひずみの変動周波数分布を検出するものであるため、保護膜6中に埋設することができる。したがって、本実施形態の交換方法により、交換対象の光ファイバ式ひずみセンサ12をケーブル1から容易に除去でき、また、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を容易に設置することができる。
【0040】
図6A及び6Bは、本発明の第3実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法の工程を順に示す図である。第3実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法では、ケーブル1に設置されていた光ファイバ式ひずみセンサ12に劣化や故障が生じたことに対応し、ケーブル1の張力を測定するための新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を設置する。第3実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法では、まず、
図6Aに示すように、保護膜6内に光ファイバ式ひずみセンサ12が設置されている状態で、ケーブル1の表面、すなわち保護膜6の表面に、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を設置する。新たな光ファイバ式ひずみセンサ2もまた、ひずみの変動周波数分布を検出してケーブルの張力を測定するために設置するものである。続いて、
図6Bに示すように、ケーブル1の表面に、被覆材を設置して被覆膜10を形成し、この被覆膜10内に、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を埋める。被覆膜10は、ケーブル1の表面の全周を覆うように形成され、種々の硬化型樹脂を用いて作成できる。このように、新たに設置される光ファイバ式ひずみセンサ2は、ひずみの変動周波数分布を検出するものであるため、新たに設置した被覆膜10内に埋設することができる。したがって、本実施形態の更新方法により、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を容易に設置することができる。
【0041】
第3実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法において、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2は、ケーブル1の全周を覆う被覆膜10のほか、
図6Cで示す変形例のように、ケーブル1の表面の一部を覆う部分被覆膜11中に配置してもよい。すなわち、変形例の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法では、
図6Aのように、保護膜6内に光ファイバ式ひずみセンサ12が設置されているケーブル1の表面に、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を設置した後、ケーブル1の表面の光ファイバ式ひずみセンサ2の周辺部分を覆うように被覆材を配置する。この被覆材が硬化することにより、
図6Cに示すように、光ファイバ式ひずみセンサ2が埋設された部分被覆膜11が形成される。このように、部分被覆膜11中に光ファイバ式ひずみセンサ2を埋設することにより、少ない被覆材を用いて光ファイバ式ひずみセンサ12を更新でき、また、更新作業を簡易にできる。
【0042】
また、第3実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法において、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2は、被覆膜10の中に配置するほか、
図6Dで示す変形例のように、保護層6の表面と、ケーブル1を取り囲むチューブ13との間に配置してもよい。すなわち、変形例の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法では、保護層6の表面に新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を設置した後、この光ファイバ式ひずみセンサ2と保護層6との外側に、チューブ13を配置すればよい。このチューブ13を、熱収縮性の樹脂で形成することにより、容易に光ファイバ式ひずみセンサ2を保護層6の表面に固定することができる。
【0043】
上記第3実施形態及び変形例において、交換対象の光ファイバ式ひずみセンサ12は、ひずみの変動周波数分布を検出するものであり、保護膜6に配置されていたが、第3実施形態及び変形例の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法は、芯材5に固定された光ファイバ式ひずみセンサを更新する場合にも適用可能である。例えば、従来の光ファイバ付きPC鋼撚り線や光ファイバ内蔵ケーブルに対して、鋼撚り線や鋼線に光ファイバ式ひずみセンサが固定されている状態で、表面に光ファイバ式ひずみセンサ2を配置して被覆膜10や部分被覆膜11で被覆することにより、本発明の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法を適用することができる。このように、従来のひずみを直接測定していた光ファイバ式ひずみセンサを、ひずみの変動周波数分布を検出するための光ファイバ式ひずみセンサ2に変更することにより、本発明の光ファイバ式ひずみセンサの更新方法を適用できる。
【0044】
また、上記第1乃至第3実施形態及び変形例において、交換対象の光ファイバ式ひずみセンサ12は、芯材5と保護膜6の間に配置されていてもよい。この交換対象の光ファイバ式ひずみセンサ12は、ひずみの変動周波数分布を検出するものであってもよい。上記芯材5と保護膜6の間に配置された光ファイバ式ひずみセンサ12は、その径方向外側の保護膜6の部分を削除し、除去されてもよい。この場合、削除して形成されたスペースに新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を配置し、保護膜6の表面まで充填材を充填して埋設することができる。また、上記芯材5と保護膜6の間に配置された光ファイバ式ひずみセンサ12を配置したまま、保護膜6に溝を形成し、上記溝に新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を配置して充填材を充填して埋設してもよい。また、また、上記芯材5と保護膜6の間に配置された光ファイバ式ひずみセンサ12を配置したまま、保護膜6の表面に新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を配置し、この光ファイバ式ひずみセンサ2を包含して保護膜6の全周を覆う被覆膜10や、上記光ファイバ式ひずみセンサ2を包含して保護膜6の表面の一部を覆う部分被覆膜11を設けてもよい。
【0045】
また、上記第1乃至第3実施形態及び変形例において、交換対象の光ファイバ式ひずみセンサ12は、保護膜6と、この保護膜6を被覆する被覆膜との間に配置されていてもよい。この交換対象の光ファイバ式ひずみセンサ12は、ひずみの変動周波数分布を検出するものであり、劣化や故障に応じて、被覆膜の少なくとも光ファイバ式ひずみセンサ12を被覆する部分を削除することで容易に除去することができる。保護膜6の表面の上記光ファイバ式ひずみセンサ12を除去した位置に、新たな光ファイバ式ひずみセンサ2を配置し、この光ファイバ式ひずみセンサ2を被覆する新たな被覆膜を形成すればよい。上記被覆膜は、硬化樹脂を塗布することによって形成してもよく、また、熱収縮性の樹脂製のチューブで形成してもよい。
【0046】
図7は、第4実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造を適用した線状部材を示す断面図である。本実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造は、ケーブル1の保護膜6中に鞘管22を設け、この鞘管22内に、光ファイバ式ひずみセンサを着脱可能に固定するように構成したものである。
図7において、芯材5の外側の保護層6は、実際よりも厚く図示している。
【0047】
図8Aは、第4実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造を構成する鞘管22を示す縦断面図であり、
図8Bは、鞘管22に、光ファイバ式ひずみセンサを収容した光ファイバ収容体25を挿入して固定した様子を示す縦断面図である。また、
図9Aは、
図8BのA-A線における断面図であり、
図9Bは、
図8BのB-B線における断面図であり、
図9Cは、
図8BのC-C線における断面図である。また、
図10は、光ファイバ式ひずみセンサ2を収容した光ファイバ収容体25の先端部分を示す縦断面図であり、
図11は、光ファイバ式ひずみセンサの交換構造の基端部分を示す断面図である。
【0048】
本実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造を構成する鞘管22は、樹脂で形成された筒状体であり、ケーブル1の保護膜6の厚み方向のほぼ中央に埋設される。この鞘管22の内部には、軸方向に延在する挿入穴23Aが形成されている。この挿入穴23Aは、
図9Aに示すように、鞘管22と同心の円形部と、この円形部の上下に径方向に連なる2つの矩形部とを有する断面形状に形成されている。この挿入穴23Aは、鞘管22の基端側に開口する一方、先端側は閉止された有底穴に形成されている。この挿入穴23Aの先端部分には、
図9Cに示すように、挿入穴23Aの円形部の左右に径方向に連なる2つの矩形部で形成された係止溝としての固定溝23C,23Cが形成されている。これらの固定溝23C,23Cの先端側には、
図9Bに示すように、挿入穴23Aの上下の矩形部と、左右に延びる固定溝23C,23Cとの間を繋ぐように形成された扇形の2つの回転溝23B,23Bが形成されている。上記固定溝23C,23C及び回転溝23B,23Bは、
図8Aに示すように、軸方向に所定の距離を置いて2組形成されている。
【0049】
上記鞘管22の挿入穴23Aには、
図10に示すように、光ファイバ式ひずみセンサ2が保護体としての光ファイバ収容体25に収容された状態で挿入される。
図10は、光ファイバ収容体25の先端部分を示している。光ファイバ収容体25は、内部に光ファイバ式ひずみセンサ2を収容する筒状の光ファイバ収容管26と、この光ファイバ収容管26の先端部に所定距離をおいて配置された2組の係止部としての固定キー29,29,29,29を有する。光ファイバ収容体25は、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aの周辺を収容するセンサ部25Aと、このセンサ部25Aに連なる接続部25Bと、この接続部25Bに連なって基端側に延びる引出部25Cを有する。
【0050】
光ファイバ収容体25のセンサ部25Aは、軸方向の中央に、光ファイバ収容管26に収容された光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aが位置している。このセンサ部25Aの両端に、固定キー29,29の組がそれぞれ設けられている。1組の固定キー29,29は、光ファイバ収容管26の径方向に、直径上に延びるように設けられている。センサ部25Aの光ファイバ収容管26の内側には、固定キー29,29が設けられた位置に、光ファイバ式ひずみセンサ2を固定するためのガラスソルダリング30,30が設けられている。
【0051】
光ファイバ収容体25の接続部25Bは、センサ部25Aの基端側の固定キー29,29に隣接しており、内部に、光ファイバ式ひずみセンサ2を固定するための樹脂31が充填されている。光ファイバ式ひずみセンサ2の接続部25Bから基端側の部分には、光ファイバの外側を被覆する被覆体28が設けられており、この被覆体28の先端部と、被覆体28から露出した光ファイバの部分が、上記樹脂31で覆われている。
【0052】
光ファイバ収容体25の引出部25Cは、光ファイバ式ひずみセンサ2の光ファイバの被覆体28で覆われた部分を収容している。
【0053】
上記光ファイバ式ひずみセンサ2を収容した光ファイバ収容体25は、次のようにして鞘管22に着脱可能に固定される。まず、ケーブル1の基端に位置する鞘管22の基端側の開口から、挿入穴23Aの内側に、光ファイバ収容体25がセンサ部25Aから挿入される。光ファイバ収容体25が挿入穴23Aに挿入され、センサ部25Aが挿入穴23Aの先端部分に達すると、2組の固定キー29,29,29,29が、それぞれ回転溝23B,23Bが形成された位置に達する。続いて光ファイバ収容体25が、
図9Bの矢印Rで示すように軸周りに時計回りに90°回動され、これにより、回転溝23B,23B内を固定キー29,29が回動し、固定キー29,29が水平方向を向く。この後、光ファイバ収容体25が基端側に引き戻されると、固定キー29,29が、水平方向に延びて回転溝23B,23B基端側に連なる固定溝23C,23C内に移動する。この状態で、光ファイバ収容体25の光ファイバ収容管26の基端部に、
図11に示すように、固定具27が取り付けられる。
【0054】
固定具27は、光ファイバ収容管26の基端の近傍に固定される反力板33と、光ファイバ収容管26の外側に摺動可能に嵌合された押圧板32と、反力板33と押圧板32の間に介設されて押圧板32に付勢力を与えるコイルバネ34を有する。この固定具27は、押圧板32が鞘管22の基端の端面に接するように、反力板33が光ファイバ収容管26の基端の近傍に固定される。上記鞘管22の基端の端面は、ケーブル1の基端の端面と同一面に形成されている。これにより、コイルバネ34の付勢力が押圧板32を介して鞘管22及びケーブル1に伝わり、これにより、光ファイバ収容体25の光ファイバ収容管26が、基端側に常時付勢される。その結果、光ファイバ収容体25のセンサ部25Aの固定キー29,29が、固定溝23C,23C内に嵌合した状態に保持される。こうして、光ファイバ式ひずみセンサ2を収容した光ファイバ収容体25が、鞘管22に固定される。このように、上記光ファイバ収容体25と、固定キー29と、固定溝23Cと、固定具27を含んで、本発明の固定構造を構成している。
【0055】
光ファイバ収容体25を鞘管22から取り出す場合は、光ファイバ収容体25の光ファイバ収容管26の基端部に取り付けられた固定具27を解除し、光ファイバ収容管26に作用する基端側への付勢力を解除する。続いて、光ファイバ収容管26を先端側に移動させることにより、光ファイバ収容体25のセンサ部25Aの2組の固定キー29,29,29,29を、固定溝23C,23Cから回転溝23B,23Bへ移動させる。引き続いて、光ファイバ収容体25を軸周りに反時計回りに90°回動させ、回転溝23B,23B内を固定キー29,29を回動させて、固定キー29,29を上下方向に向ける。これにより、固定キー29,29の位置を挿入穴23Aに一致させ、この後、光ファイバ収容体25を基端側に引き抜いて鞘管22から取り出す。
【0056】
このように、本実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造によれば、光ファイバ式ひずみセンサ2を収容した光ファイバ収容体25を、ケーブル1に設置された鞘管22に、比較的簡易な操作によって着脱でき、また、比較的簡易な操作によって固定できる。したがって、光ファイバ式ひずみセンサ2に劣化や故障が生じた場合に、容易に交換を行うことができる。したがって、ケーブル1の張力を、長期にわたって安定して測定することができる。本実施形態において、鞘管22をケーブル1の保護膜6中に設けたが、ケーブル1の内側の他の位置に設置してもよく、また、ケーブル1の表面に設置してもよい。
【0057】
図12Aは、第5実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造が適用された線状部材を示す縦断面図であり、
図12Bは、
図12AのD-D線における断面図である。本実施形態では、線状部材としての橋梁用のケーブル1の内側に、鞘管22を配置している。このケーブル1は、高張力鋼の亜鉛メッキ鋼で形成された複数の素線からなる芯材5と、この芯材5の外側を被覆する保護膜6を備える。このケーブル1の基端部には、芯材5と保護膜6が内挿された外とう管36が設けられており、この外とう管36の基端側に、ケーブル1の基端部を桁等の他の部材に連結するためのソケット部35が設けられている。外とう管36の先端部の表面と、この外とう管36の先端部よりも先端側に露出する保護膜6の部分の表面には、これらの外とう管36と保護膜6との隙間からの水の侵入を防止するため、第1防水膜40が設けられている。また、ソケット部35の先端部の表面と、このソケット部35の先端部よりも先端側に露出する外とう管36の部分の表面には、これらのソケット部35と外とう管36との隙間からの水の侵入を防止するため、第2防水膜41が設けられている。第1及び第2防水膜40,41は、熱収縮性の樹脂製のチューブで形成することができる。
【0058】
上記ケーブル1の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造を形成する鞘管22は、外とう管36の内側とソケット部35の内側に配置されている。詳しくは、上記鞘管22は、外とう管36とソケット部35の内側に配置された芯材5の外周面に固定されている。この鞘管22の先端は、外とう管36内で保護膜6の基端に対向するように配置されている。一方、鞘管22の基端は、ソケット部35の端面から引き出されている。上記鞘管22内に、第4実施形態と同様の光ファイバ式ひずみセンサを収容した光ファイバ収容体25が挿入され、この光ファイバ収容体25の先端部のセンサ部25Aが、鞘管22の先端部に配置され、第4実施形態と同様の固定構造で固定される。上記光ファイバ収容体25の基端は、鞘管22の基端に配置され、上記光ファイバ収容体25の基端から引き出された光ファイバ式ひずみセンサ2の光ファイバがFBG測定器3に接続される。これにより、鞘管22の先端部で、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aによりケーブル1のひずみの変動が測定され、測定されたひずみの変動に基づいてケーブル1の張力が算出される。
【0059】
第5実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造によれば、ケーブル1の外とう管36の内側とソケット部35の内側に配置された鞘管22内に、光ファイバ式ひずみセンサ2を収容した光ファイバ収容体25を着脱可能に固定するように形成されているので、光ファイバ式ひずみセンサ2に劣化や故障が生じても、容易に光ファイバ式ひずみセンサ2の交換を行うことができる。
【0060】
図13は、第6実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造が適用された線状部材を示す縦断面図である。本実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造は、鞘管22の設置範囲が第5実施形態の交換構造と異なる。
図13において、第5実施形態と実質的に同一の部分は同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0061】
第6実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造は、鞘管22を、外とう管36の内側のみに配置している。上記鞘管22の先端は、外とう管36内で保護膜6の基端に対向する一方、鞘管22の基端は、縦断面視において、第2防水膜41の先端よりも先端側に位置している。この鞘管22の基端側から引き出された光ファイバ式ひずみセンサ2は、外とう管36の第2防水膜41の先端の近傍に設けられた貫通穴から引き出されている。このケーブル1は、第2防水膜41の外周側に、第2防水膜41よりも先端側まで伸びる円筒状の保護管38が設けられており、この保護管38によって、上記外とう管36に設けられた貫通穴への水の侵入が軽減されている。上記外とう管36の貫通穴から引き出された光ファイバ式ひずみセンサ2の光ファイバ部分は、上記保護管38の内側を基端側に向かって延在し、この保護管38の基端部に設けられた貫通穴から外側へ引き出されている。こうしてケーブル1から引き出された光ファイバ式ひずみセンサ2の光ファイバは、図示しないFBG測定器3に接続される。
【0062】
第6実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造によれば、ケーブル1の外とう管36の内側に配置された鞘管22内に、光ファイバ式ひずみセンサ2を収容した光ファイバ収容体25を着脱可能に固定するように形成されているので、光ファイバ式ひずみセンサ2に劣化や故障が生じても、容易に光ファイバ式ひずみセンサ2の交換を行うことができる。また、第5実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造よりも、鞘管22内に光ファイバ収容体25を挿入するためにケーブル1内に挿通させる距離を短縮できる。また、第6実施形態の光ファイバ式ひずみセンサの交換構造は、光ファイバ収容体25を、ソケット部35を通過しないで鞘管22内に装着できる。したがって、ソケット部35へのアクセスや加工が困難な場合に、容易に光ファイバ式ひずみセンサ2の交換を行うことができる。
【0063】
上記第6実施形態において、鞘管22の基端側から引き出された光ファイバ式ひずみセンサ2は、外とう管36の第2防水膜41で被覆された位置に貫通穴を設け、この貫通穴から引き出してもよい。この場合、貫通穴からの水の侵入を第2防水膜41で防止できるので、ケーブル1の劣化を防止できる。この場合、外径側の保護管38は削除してもよい。
【0064】
上記第6実施形態において、鞘管22の軸方向の向きを逆向きとし、ケーブル1の基端側の端に、センサ部25Aが位置するように光ファイバ収容体25を固定してもよい。この場合、光ファイバ式ひずみセンサ2の光ファイバは、ケーブル1の先端に向かって延在させ、外とう管36の先端と保護膜6との間から引き出し、第1防水膜40の内側と保護膜6の表面との間を通って外部に延出させる。この変形例によれば、ケーブル1のソケット部35から遠い側に光ファイバ式ひずみセンサ2の光ファイバを引き出すことができる。したがって、ケーブル1のソケット部35の周辺へのアクセスが困難な場合に、容易に光ファイバ式ひずみセンサ2の交換を行うことができる。
【0065】
上記第5及び第6実施形態において、外とう管36を有するケーブル1に本発明を適用する場合について説明したが、他の構造のケーブルについても、本発明は適用可能である。例えば、
図12Aに示した第5実施形態のケーブル1から外とう管36を削除し、保護膜6がソケット部35まで延在したケーブルについて、本発明を適用可能である。この場合、芯材5と保護膜6の間に、上記芯材5に沿うように鞘管22を配置すればよい。鞘管22の先端は、ソケット部35から任意の位置に設置でき、鞘管22の基端は、第5実施形態と同様に、ソケット部35の基端から引き出した位置でもよい。また、鞘管22の基端は、第6実施形態と同様に、ソケット部35よりも先端側に位置してもよく、この場合、鞘管22の全部が保護膜6の内側に配置される。この場合、鞘管22の基端から引き出した光ファイバ式ひずみセンサ2の光ファイバを、保護膜6に形成した貫通穴から保護膜6の外側に引き出すことができる。保護膜6の貫通穴は、ソケット部35の先端部の表面と保護膜6の基端部の表面とを被覆する防水膜の設置位置に形成するのが好ましい。
【0066】
また、上記第4乃至第6実施形態において、鞘管22は、樹脂で形成したが、金属で形成してもよい。
【0067】
上記第1乃至第6実施形態において、光ファイバ式ひずみセンサ2をケーブル1に1個配置したが、例えば、ケーブル1の軸直角断面において180°をなす位置に、光ファイバ式ひずみセンサ2をもう1個配置してもよい。ケーブル1に光ファイバ式ひずみセンサ2を2個配置し、2個の光ファイバ式ひずみセンサ2による測定値の差分を取ることにより、軸方向に作用する荷重に起因するひずみの変動をキャンセルでき、ケーブル1の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動のみを取り出すことができる。また、2個の光ファイバ式ひずみセンサ2の配置位置は、ケーブル1の軸直角断面において90°等の他の角度を置いた位置でもよい。
【0068】
また、上記各実施形態において、光ファイバ式ひずみセンサ2はFBGセンサを用いたが、ブリルアン散乱式光ファイバセンサ等の他のひずみ測定原理を応用した光ファイバ式ひずみセンサを用いてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態において、橋梁用のケーブル1は、複数の素線を平行に配列して形成された芯材5を有したが、張力を伝達するものであれば、ケーブルの芯材の形態はこれに限定されない。例えば、本発明は、亜鉛メッキPC鋼撚り線等のように、鋼撚り線で形成された芯材を有するケーブルにも適用できる。この場合、光ファイバ式ひずみセンサ2は鋼撚り線に撚り込む必要が無く、芯材の延在方向と平行に、芯材の表面又は表面の近傍に配置すればよい。
【0070】
また、上記各実施形態では、構造物としての橋梁に使用されている線状部材としてのケーブルの張力を光ファイバ式ひずみセンサ2で検出したが、橋梁は、斜張橋やニールセンローゼ橋等の種々の形態のものが該当する。また、線状部材は、桁等を介して床版を吊るために使用されるもののほか、プレストレストコンクリートに関して張力を受け持つために使用されるPC鋼線やPC鋼撚り線やPC鋼棒も該当する。特に、外装型の外ケーブル補強構造を有するプレストレストコンクリートのPC鋼線やPC鋼棒の張力を測定する場合に、本発明は有効である。また、構造物は橋梁に限定されず、種々の土木構造物や建築構造物等が該当する。また、線状部材は、ワイヤロープや合成繊維ロープ等も該当する。また、線状部材は、ケーブルに限定されず、例えば鋼線や鋼棒やロッド等、張力を受け持つために使用される線状の部材が広く該当する。
【0071】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 ケーブル
2,12 光ファイバ式ひずみセンサ
3 FBG測定器
4 パーソナルコンピュータ
5 芯材
6 保護膜
8,18 溝
9 充填材
10 被覆膜
11 部分被覆膜
13 チューブ
22 鞘管
23A 挿入穴
23B 回転溝
23C 固定溝
25 光ファイバ収容体
25A 光ファイバ収容体のセンサ部
25B 光ファイバ収容体の接続部
25C 光ファイバ収容体の引出部
26 光ファイバ収容管
27 固定具
29 固定キー
30 ガラスソルダリング
31 樹脂
32 押圧板
33 反力板
34 コイルバネ
35 ソケット部
36 外とう管
38 保護管
40 第1防水膜
41 第2防水膜