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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116962
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】プラント操業支援装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
G05B23/02 301X
G05B23/02 T
G05B23/02 302R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022848
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 雄太
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA05
3C223AA07
3C223BA03
3C223BB08
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB05
3C223FF02
3C223FF12
3C223FF35
3C223FF42
3C223FF45
3C223FF52
3C223FF53
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH06
3C223HH07
3C223HH29
(57)【要約】
【課題】オペレータの経験や技量に依存することなく、オペレータに異常に対する対処を迅速に実施させることが可能なプラント操業支援装置を提供する。
【解決手段】プラント操業支援装置は、機器制御部と、カメラと、動画データ収集部と、画像解析部と、表示処理部と、を備える。カメラは、プラントに設置された設備を撮影する。動画データ収集部は、カメラにより撮影された動画データを収集する。画像解析部は、収集された動画データから所定の周期で画像を抽出し、抽出した各画像を格納すると共に解析し、各画像の解析結果に基づいてプラントの出力結果の異常を検知し、異常の種類を含む異常情報を出力する。表示処理部は、異常情報に対応する異常の種類と、異常時画像と、異常時画像に対応する正常時画像と、異常情報に対する対処方法を含むガイダンスとを表示器に表示する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの操業を支援するプラント操業支援装置であって、
前記プラントに設置された設備が有する制御対象機器を制御する制御信号を出力する機器制御部と、
前記プラントに設置された設備を撮影するカメラと、
前記カメラにより撮影された動画データを収集する動画データ収集部と、
前記動画データ収集部により収集された前記動画データから所定の周期で画像を抽出し、抽出した各画像を格納すると共に解析し、前記各画像の解析結果に基づいて前記プラントの異常を検知し、前記異常の種類を含む異常情報を出力する画像解析部と、
前記異常情報に対応する異常の種類と、異常時画像と、前記異常時画像に対応する正常時画像と、前記異常情報に対する対処方法を含むガイダンスとを表示器に表示する表示処理部と、を備えるプラント操業支援装置。
【請求項2】
前記表示処理部は、前記異常時画像を第1指定色に着色すると共に透過させ、透過させた前記異常時画像を前記正常時画像に重ね合わせる加工を行う画像加工部を有し、前記画像加工部が加工した加工画像を前記表示器に表示する請求項1に記載のプラント操業支援装置。
【請求項3】
前記画像加工部は、前記正常時画像に重ね合わせた前記異常時画像のうち前記画像解析部により異常と判断された部分を第2指定色に着色する加工を更に行う請求項2に記載のプラント操業支援装置。
【請求項4】
前記画像解析部は、前記各画像の解析結果と、前記制御機器部が出力する前記制御信号に基づいて前記プラントの異常を検知する請求項2に記載のプラント操業支援装置。
【請求項5】
前記画像解析部は、前記各画像の解析結果と前記プラントの状態を検出するセンサからの計測信号に基づいて前記プラントの異常を検知する請求項2に記載のプラント操業支援装置。
【請求項6】
プラントの操業を支援するプラント操業支援装置であって、
前記プラントに設置された設備が有する制御対象機器を制御する制御信号を出力する機器制御部と、
前記プラントに設置された前記設備を撮影するカメラと、
前記カメラにより撮影された動画データを収集する動画データ収集部と、
前記動画データ収集部により収集された前記動画データから所定の周期で画像を抽出し、抽出した各画像を格納すると共に解析する画像解析部と、
表示処理部と、を備え、
前記制御機器部は、前記プラントの状態を検出するセンサからの計測信号と前記制御対象機器に出力する制御信号との比較により前記プラントの異常を検知し、前記異常の種類の情報を含む異常情報を出力し、
前記表示処理部は、前記異常情報に対応する異常の種類と、異常時画像と、前記異常時画像に対応する正常時画像と、前記異常情報に対する対処方法を含むガイダンスとを表示器に表示し、
前記表示処理部は、前記異常時画像を第1指定色に着色すると共に透過させ、透過させた前記異常時画像を前記正常時画像に重ね合わせる加工を行う画像加工部を有し、前記画像加工部が加工した加工画像を前記表示器に表示するプラント操業支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラントの操業を支援するプラント操業支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、化学プラントなどのプラントには、溶解炉のようなプラント設備(以下「設備」という)が設置されている。このような設備は、原料を投入する原料投入機等の機器を複数有し、各機器を制御することで、プロセスを実施している。
【0003】
下記特許文献1には、プラント操業支援装置としての異変検知装置が開示されている。この異変検知装置は、カメラで撮像した画像から特徴量を抽出し、抽出した特徴量を平均の特徴量と比較し、2つの特徴量の差分が閾値を超えた場合に、異常(異変)を検知している。
【0004】
異常が検知された場合、プラントのオペレータが監視する画面上に、異常を示すアラームを表示することで、オペレータに異常を通知するのが一般的である。通知を受けたオペレータは、監視画面上で別途アプリケーションを開き、アプリケーション上で異常に対応する異常時の画像を見ながら、異常原因を特定し、正常状態に復帰するために必要な対処を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-191185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、機器の軽故障が発生した場合のように、異常原因によっては、プロセスを停止させることなく、オペレータに対して迅速な対処を実施することが求められる。
【0007】
しかしながら、オペレータの経験や技量によっては、異常時の画像を見ただけでは異常原因を特定することが難しく、対処が遅れてしまう。異常が頻発する場合に、迅速な対処を実施できないと、異常が見逃される事態が生じる虞もある。
【0008】
そこで、本開示は、オペレータの経験や技量に依存することなく、オペレータに異常に対する対処を迅速に実施させることが可能なプラント操業支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の観点は、プラントの操業を支援するプラント操業支援装置に関連する。プラント操業支援装置は、機器制御部と、カメラと、動画データ収集部と、画像解析部と、表示処理部と、を備える。機器制御部は、プラントに設置された設備が有する制御対象機器を制御する制御信号を出力し、カメラは、プラントに設置された設備を撮影する。動画データ収集部は、カメラにより撮影された動画データを収集する。画像解析部は、動画データ収集部により収集された動画データから所定の周期で画像を抽出し、抽出した各画像を格納すると共に解析し、各画像の解析結果に基づいてプラントの異常を検知し、異常の種類を含む異常情報を出力する。表示処理部は、異常情報に対応する異常の種類と、異常時画像と、前記異常時画像に対応する正常時画像と、前記異常情報に対する対処方法を含むガイダンスとを表示器に表示する。
【0010】
また、本開示の第2の観点は、プラント操業支援装置に関連する。プラント操業支援装置は、機器制御部と、カメラと、動画データ収集部と、画像解析部と、表示処理部と、を備える。機器制御部は、プラントに設置された設備が有する制御対象機器を制御する制御信号を出力する。カメラは、プラントに設置された設備を撮影する。動画データ収集部は、カメラにより撮影された動画データを収集する。画像解析部は、動画データ収集部により収集された動画データから所定の周期で画像を抽出し、抽出した各画像を格納すると共に解析する。さらに、機器制御部は、プラントの状態を検出するセンサからの計測信号と制御対象機器に出力する制御信号との比較によりプラントの異常を検知し、異常の種類の情報を含む異常情報を出力する。表示処理部は、異常情報に対応する異常の種類と、異常時画像と、異常時画像に対応する正常時画像と、異常情報に対する対処方法を含むガイダンスとを表示器に表示する。表示処理部は、異常時画像を第1指定色に着色すると共に透過させ、透過させた異常時画像を正常時画像に重ね合わせる加工を行う画像加工部を有し、画像加工部が加工した加工画像を表示器に表示する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の第1の観点によれば、異常の種類の表示だけでなく、異常時画像と正常時画像と対処方法も表示器に纏めて表示される。このため、異常発生の表示を受けたプラントのオペレータが、異常時画像を表示するために別途アプリケーションを起動して、アプリケーション上で異常時画像を表示する手間が省ける。オペレータは、異常の種類と共に表示された異常時画像と正常時画像を見ながら、併せて表示された対処方法を確認した上で、対処を実施することができる。従って、オペレータの経験や技量に依存することなく、オペレータに異常に対する対処を迅速に実施させることが可能なプラント操業支援装置を提供することができる。
【0012】
本開示の第2の観点によれば、制御信号と計測信号との比較によりプラントの異常を早期に検知可能であるとともに、異常と判断された部分である異常箇所が明確になるため、オペレータが異常箇所を迅速且つ正確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態によるプラント操業支援装置を備えるプラントの構成を示す概略図である。
図2】プラント操業支援装置の構成例を説明する図である。
図3図1に示す紐付テーブルを示す図である。
図4】画像加工部による画像加工例を示す模式図である。
図5】プラント操業支援装置が有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。
図6】画像加工部による他の画像加工例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。
【0015】
図1は、実施の形態によるプラント操業支援装置を備えるプラントPLの構成を示す概略図である。プラントPLとしては、溶解プラント、エチレン製造プラント、石油精製プラント、ポリマー製造プラント、ビール製造プラント、ガラス製造プラントあるいはその他の素材プラント等を例示することができる。
【0016】
プラントPLは、例えば、溶解、精製や製造などのプロセスを実施する設備1と、プラントPLの操業を支援するプラント操業支援装置2を備える。以下、設備1が溶解炉である場合を例に説明する。
【0017】
溶解炉1は、後述する機器制御部21により制御される制御対象機器である原料投入機11を備える。溶解炉1は、原料投入機11から投入された原料を溶解させ、溶解した原料を排出部12から排出するものである。この場合、操作量MVは原料投入量であり、制御量PVは液面センサ13により測定される、溶解した原料の表面の高さ(以下「液面値」という)である。液面センサ13は、測定した液面値をセンサ信号として後述の機器制御部21に送信する。液面センサ13からの液面値を示すセンサ信号に基づき、液面値(制御量PV)が目標値となるように、原料投入機11による原料投入量(操作量MV)が機器制御部21からの制御信号により制御される。なお、センサ信号は計測信号の一例である。また、溶解炉1内には、カメラ14が設置され、機器制御部21からの制御信号により制御される原料投入機11の出力結果、即ち、原料投入機11から投入される原料を撮影する。
【0018】
図2は、プラント操業支援装置2の構成例を説明する図である。プラント操業支援装置2は、機器制御部21と、動画データ収集部22と、画像解析部23と、データベース部24と、表示処理部25と、表示器26を備える。なお、機器制御部21と、動画データ収集部22と、データベース部24と、表示器26等は一体に構成されてもよいが、一部がプラント操業支援装置2の外部に通信可能に配置されていてもよい。
【0019】
機器制御部21は、原料投入機11等の制御対象機器を制御するものであり、例えば、分散制御システム(DCS)やプログラマブルロジックコントローラ(PLC)である。機器制御部21は、原料投入機11等の制御対象機器へ制御信号を出力するとともに、画像解析部23にも、異常診断用として制御対象機器11に出力する制御信号と同一の制御信号を出力する。制御信号とは、制御対象機器を制御する信号であれば何でもよく、デジタル数値信号やアナログ信号の他、制御対象の運転と停止、開と閉などの状態を制御する信号(状態指令)であってもよい。また、機器制御部21は、異常診断用として、画像解析部23に液面センサ13等のセンサからのセンサ信号も出力する。尚、センサ信号は液面センサ13等から直接画像解析部23に入力されてもよい。また、機器制御部21は、プラントPLの異常を検知した場合は異常情報AL1を画像解析部23に出力する。異常情報AL1は、後述の異常情報AL2と同様に、異常の種類、異常のレベル及びプラントPLの条件を含む。プラントPLの条件は、例えば、溶解炉1の各種計測信号の値や制御対象への制御信号の値等を含む。動画データ収集部22は、カメラ14により撮影された動画データを収集する。
【0020】
画像解析部23は、動画データ収集部22により収集された動画データから予め決められた一定周期で画像(画像データ)を抽出する。画像解析部23は、抽出した各画像をデータベース部24に格納すると共に、各画像を解析する。画像解析部23は、抽出した各画像を学習することができる。画像解析部23は、各画像の解析結果に基づいて、プラントPLの異常を検知する。
【0021】
画像解析部23は、自身の解析結果で異常を検知しない場合や制御機器部21にて異常を検知しない場合には、抽出した画像をプラントPLの条件(例えば、時刻と溶解炉1の各種計測信号の値や制御対象への制御信号の値等の条件)に紐付けて、正常時画像としてデータベース部24に格納する。
【0022】
あるいは、画像解析部23は、前述の各画像の解析結果に基づいてプラントPLの異常を検知する場合には、検知した異常の詳細を含む異常情報AL2と、異常検出時の画像である異常時画像を表示処理部25に出力する。また、画像解析部23は、異常情報AL2と、異常検出時の画像である異常時画像をデータベース部24にも登録する。異常情報AL2は、異常の種類、異常のレベルおよびプラントPLの条件(例えば時刻と溶解炉1の各種計測信号の値や制御対象の制御信号の値等の条件)を含む。
【0023】
画像解析部23は、機器制御部21から異常情報AL1を受信すると、その異常情報AL1を異常情報AL2とみなして、画像解析部23自身で異常を検知した場合と同様に異常検出時の画像である異常時画像を表示処理部25に出力する。また、画像解析部23は、異常情報AL2(異常情報AL2とみなした異常情報AL1)と、異常検出時の画像である異常時画像をデータベース部24にも登録する。尚、画像テータの抽出周期は、解析結果に基いた異常の検知時あるいは、その他の外部機器からの警報(異常検知)に、短くしてもよい。
【0024】
ここで、例えば、設備1が溶解炉で、原料投入機11から投入される原料が粉体あるいは粒体等の溶解炉の液面に比較し小さな物質である場合、原料は投入口の直下を中心に盛り上がって堆積する。画像解析部23は、この堆積量はカメラ14等から得られる画像からパターン認識などにより把握することができる。そして、その堆積量がデータベース部23に登録された基準に比べ、大きい場合、あるいは、小さい場合は、画像解析部23はプラントPLの異常を検知することができる。プラントPLの異常を検知した場合には、異常情報AL2を発することが出来る。あるいは、カメラ14がサーモ―グラフィーカメラである場合、液面の温度分布が所定の分布と異なったときや、画像上の特定部位の最高温度や最低温度がそれぞれ定められた所定の温度範囲を超えたとき等に、画像解析部23は、プラントPLの異常を検知し、異常情報AL2を発することができる。なお、推定堆積量や温度分布や最高温度や最低温度の基準は各種操作量、例えば原料投入機11から投入される原料の単位時間当たりの投入量や図示されない加熱装置への供給電力等のセンサ信号や制御信号により可変となる様に設定してもよい。このように画像解析部23は画像解析により得られた結果に基づいて、プラントPL異常の早期検知を図ることができる。
【0025】
また、画像解析部23は、画像解析により得られた結果と制御信号とに基づいて、異常を検出するように構成してもよい。画像解析部23は、例えば原料投入機11への原料投入量を指令する制御信号が変化していないにも関わらず、画像解析結果から得られる堆積量の変化率があらかじめ定められた変化率より大きい場合に、異常を検知し、異常情報AL2を発することができる。あるいは、画像解析部23は、例えば原料投入機11への原料投入量を指令する制御信号を増大させたにも関わらず、画像解析結果から得られる堆積量が予め定められた量に達していない場合、異常を検知し、異常情報AL2を発することができる。このように、制御信号と画像解析の結果を比較して、異常を検知し、異常情報AL2を発するように構成することができる。
【0026】
また、画像解析部23は、画像解析により得られた結果とプラントPLの状態を計測する各種センサからの計測信号とから異常を検出するように構成してもよい。画像解析部23は、例えば、カメラ14がサーモ―グラフィーカメラである場合、図示しない溶解槽の温度センサからの信号に変化がないにも関わらず、サーモ―グラフィーカメラでの解析結果から得られた液面の温度分布に変化があった場合、異常を検知し、異常情報AL2を発することができる。このように、計測信号と画像解析の結果を比較して、異常を検知し、異常情報AL2を発することが出来る。
【0027】
また、制御機器部21は、自身が発する制御信号、例えば、原料投入機11の原料投入量(操作量MV)を指令する信号や液面センサ13の液面値(制御量PV)を示す計測信号を監視し、監視する制御信号や計測信号に基づいて異常を検知し、異常情報AL1を画像解析部23に発することが可能である。制御機器部21は、原料投入機11の制御信号の変化量と液面センサ13のセンサ信号の変化量、あるいは排出部12からの排出量を測定する排出量センサ(図示省略)の変化量に基づいて、異常を検知し、異常情報AL1を画像解析部23に発することができる。例えば、原料投入機11の制御信号が一定であるにも関わらず、液面センサ13のセンサ信号の変化量が予め定めた基準範囲を超える場合に、異常を検知し、異常情報AL1を画像解析部23に発することが可能である。
【0028】
また、後述する変形例(図6参照)のように、例えば、原料投入機11の制御信号を変化させたにも関わらず、液面センサ13のセンサ信号の変化量が所定の基準変化量より少ない場合に、異常を検知し、異常情報AL1を画像解析部23に発することが可能である。尚、計測信号の変化量の基準変化量等の判定基準は制御信号の値に応じて変化させてもよい。このように、機器制御部21は、制御信号と計測信号を監視し比較することで、プラントPLの異常の早期検知を図ることができる。また、画像解析部23は、異常情報AL1を機器制御部21から受信すると、異常情報AL1を異常情報AL2とみなし、異常情報AL2に基づき各種処理を行う。
【0029】
表示処理部25は、紐付テーブル25aと、画像加工部25bを有する。図3に示すように、紐付テーブル25aは、異常の種類と異常のレベルおよびプラントPLの条件(例えば溶解炉1の各種計測信号の値や制御対象への制御信号の値等の条件)を含む異常情報AL2に基づき、ガイダンスと、正常時画像とを紐付けている。ガイダンスは、溶解炉1の条件に応じた異常の種類やレベルに対する対処方法を含み、異常の詳細を更に含むことが好ましい。正常時画像Inは、後述する画像加工部25bによって異常時画像に重ね合わせられるものである。表示処理部25は、紐付テーブル25aを参照し、異常情報AL2に対応する、対処方法を含むガイダンス、異常時画像Iaあるいは、異常情報AL2の内容に紐付く正常時画像Inをデータベース部24から取得する。プラントPL(例えば溶解炉1)の条件とは、例えば、原材の所定の時間当たりの投入量や溶解炉1の温度、圧力、液面値、排出量等の計測信号の値や制御対象への制御信号(例えば、操作量MVの指令値)等である。異常のレベルとは、例えば、各種測定値に対する判定基準との乖離度に対する重みづけであり、例えば乖離度が大きい方から小さい方に従い、重故障、中故障、軽故障等に重みづけをして分類することができる。あるいは異常の種類によりレベルの重みづけをして分類することもできる。
【0030】
ここで、原料投入機11から投入された原料の堆積量が過多となる旨の異常が発生する場合、異常に対する対処方法として、原料投入機11からの原料投入量を減少させる方法だけでなく、排出部12に介在する開閉弁(図示省略)の開度を大きくする等により排出量を増大させる方法もある。紐付テーブル25aに1つの異常情報AL2(または異常情報AL1)に対応する複数の対処方法が定義されている場合には、複数の対処方法を取得すればよい。この場合、表示器26に複数の対処方法を含むガイダンスが表示されるため、オペレータが最適な対処方法を選択することができる。ガイダンスは異常情報AL2(または異常情報AL1)に紐付けられる。
【0031】
図4は、画像加工部25bによる画像加工例を示す模式図である。図4に示すように、画像加工部25bは、画像解析部23から取得した異常時画像Iaを原色(例えば黒)とは異なる第1指定色に着色すると共に背景を透過させる。その後、画像加工部25bは、着色及び透過済の異常時画像Iaをデータベース部24から取得した正常時画像Inに重ね合わせる加工を行う。これにより、オペレータが正常時画像Inと異常時画像Iaの差が比較的僅かであっても、両画像In,Iaの違いを認識し易くなる。なお、画像加工部25bは、異常時画像Iaのうち異常と判断された部分Pa、具体的には、過多に堆積した部分Paを第1指定色とは異なる第2指定色に着色している。表示処理部25は、異常の種類26a及びガイダンス26bと共に、画像加工部25bにより加工された画像である加工画像Ipを表示器26に出力し、加工画像Ipを表示器26に表示させる。尚、表示処理部25は、異常情報AL1あるいは異常情報AL2に含まれるレベルや条件も表示器26に出力し、表示させるようにしてもよい。
【0032】
正常時画像Inは例えば、データベース部24に格納された正常時の画像データのうちプラントPLの異常と検知された条件の項目以外の項目が所定値以内のものを選択するようにしてもよいし、あるいは異常が検知された時刻より所定の時刻遡った正常時の画像データかつプラントPLの異常と検知された条件の項目以外の項目が所定値以内のものを選択するようにしてもよい。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、溶解炉1の異常を検知したときに、異常の種類だけでなく、正常時画像Inに、透過処理を施した異常時画像Iaを重ね合わせた加工画像Ipと、対処方法を含むガイダンスとが、表示器26に纏めて表示される。このため、表示器26を見たプラントPLのオペレータは、異常時画像を表示するために別途アプリケーションを起動して、アプリケーション上で異常時画像を表示する手間が省ける。オペレータは、加工画像Ipを見ながら、併せて表示されたガイダンスの対処方法を確認した上で、対処を実施することができる。従って、オペレータの経験や技量に依存することなく、オペレータが異常に対する対処を迅速に実施することが可能なプラント操業支援装置2を提供することができる。しかも、異常時画像Iaを第1指定色に着色することで、異常と判断された部分Paである異常箇所が明確になるため、オペレータが異常箇所を迅速且つ正確に特定することができ、有利である。
【0034】
また、異常と判断された部分Paを第2指定色に着色することで、これにより、異常箇所をより一層明確にすることができる。これは、特に、異常時画像Iaと正常時画像Inとの差が僅かである場合に有効である。
【0035】
なお、上記プラント操業支援装置2の具体的構造に限定はないが、一例として次のようなものであってもよい。図5は、プラント操業支援装置2が有する処理回路20のハードウェア構成の一例を示す図である。プラント操業支援装置2の機能は、図5に示す処理回路20により実現することができる。この処理回路20は、専用ハードウェア20aであってもよい。この処理回路20は、プロセッサ20b及びメモリ20cを備えていてもよい。この処理回路20は、一部が専用ハードウェア20aとして形成され、更にプロセッサ20b及びメモリ20cを備えていてもよい。図5の例は、処理回路20の一部が専用ハードウェア20aとして形成されると共に、処理回路20がプロセッサ20b及びメモリ20cをも備えている。このメモリ20cが、データベース部24を兼用することもできる。
【0036】
処理回路20の少なくとも一部が、少なくとも1つの専用ハードウェア20aであってもよい。この場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。
【0037】
処理回路20が、少なくとも1つのプロセッサ20b及び少なくとも1つのメモリ20cを備えてもよい。この場合、プラント操業支援装置2の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ20cに格納される。プロセッサ20bは、メモリ20cに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。
【0038】
プロセッサ20bは、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPとも呼ばれる。メモリ20cは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリ等が該当する。このように、処理回路20は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、プラント操業支援装置2の各機能を実現することができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0040】
上記実施の形態では、異常時画像Iaを正常時画像Inに重ね合わせた加工画像Ipを表示器26に表示しているが、異常時画像Iaと正常時画像Inとを重ね合わせずに並べて表示することもできる。このような並列表示は、例えば、両画像Ia,Inの差が大きい場合に用いることができる。並列表示する場合も、オペレータは、異常の種類26aと共に表示された異常時画像Iaと正常時画像Inを見ながら、併せて表示された対処方法を確認した上で、対処を実施することができる。従って、オペレータの経験や技量に依存することなく、オペレータに異常の種類26aに対する対処を迅速に実施させるという効果が損なわれることはない。
【0041】
図6は、画像加工部による他の画像加工例を示す模式図である。本例では、操作量MVである原料投入量を10%から20%に変更した場合の例である。この場合、原料投入機11の詰まり等の理由で、正常時画像Inに対して異常時画像Iaでは原料投入量が増加していないことが判る。この場合、表示処理部25の紐付テーブル25aにおいて、操作量MVの指令値毎(例えば、MV=10%、20%)に、異常時画像Iaに異なる正常時画像Inを紐付けておけばよい。操作量MVの指令値は制御信号の一例であり、プラントPLの条件の一例である。
【0042】
また、上記実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、上述した実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【符号の説明】
【0043】
PL…プラント、1…溶解炉(設備)、11…原料投入機(制御対象機器)、13…液面センサ(センサ)、14…カメラ、2…プラント操業支援装置、21…機器制御部、22…動画データ収集部、23…画像解析部、25…表示処理部、26…表示器、26a…異常の種類、26b…ガイダンス、AL1,AL2…異常情報、Ia…異常時画像、In…正常時画像、Ip…加工画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6