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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116993
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】検出装置及び検出装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20240821BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240821BHJP
   H10K 50/813 20230101ALI20240821BHJP
   H10K 50/822 20230101ALI20240821BHJP
   H10K 71/20 20230101ALI20240821BHJP
   H10K 71/00 20230101ALI20240821BHJP
   H10K 59/60 20230101ALI20240821BHJP
   H10K 59/90 20230101ALI20240821BHJP
   H10K 71/60 20230101ALI20240821BHJP
   G01N 33/483 20060101ALN20240821BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
H10K50/10
H10K50/813
H10K50/822
H10K71/20
H10K71/00
H10K59/60
H10K59/90
H10K71/60
G01N33/483 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022895
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 慎弥
(72)【発明者】
【氏名】青木 逸
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
3K107
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043CA03
2G043DA06
2G043EA01
2G043LA02
2G045FA11
2G045FB12
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB02
3K107CC41
3K107DD25
3K107DD30
3K107EE07
3K107EE27
3K107EE61
3K107EE68
3K107FF15
3K107GG12
3K107GG13
3K107GG15
3K107GG28
(57)【要約】
【課題】蛍光の検出感度が向上する検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、基板と、基板上に設けられたセンサ部と、センサ部に対向して配置された発光部と、を備え、発光部は、励起光を照射する発光素子と、発光素子を覆う透光性の基材と、を有し、基材は、基板に垂直な方向で、第1面と、第1面と反対側の第2面とを備え、基材は、第1面から第2面に向けて凹む、試料を保持する複数の凹部を有し、発光素子は、凹部を囲み、前記センサ部は、励起光により試料が発する蛍光を受光する、凹部と重なる位置に配置された受光素子を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられたセンサ部と、
前記センサ部に対向して配置された発光部と、を備え、
前記発光部は、励起光を照射する発光素子と、
前記発光素子を覆う透光性の基材と、を有し、
前記基材は、前記基板に垂直な方向で、第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを備え、
前記基材は、前記第1面から前記第2面に向けて凹む、試料を保持する複数の凹部を有し、
前記発光素子は、前記凹部を囲み、
前記センサ部は、前記励起光により前記試料が発する蛍光を受光する、前記凹部と重なる位置に配置された受光素子を有する、
検出装置。
【請求項2】
前記発光部と、前記センサ部との間に、遮光層を備え、
前記遮光層は、前記励起光を遮光する遮光部と、前記蛍光が通過可能な、前記遮光部に囲まれた開口部を有し、
前記開口部は、前記凹部と、前記受光素子との間に配置されている、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記発光素子の形状は、平面視で格子状であって、
前記発光素子と、前記遮光層との間に、
前記基板に垂直な方向であって、前記遮光層よりも前記第1面側に突出した樹脂膜を有する、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記発光部は、下部電極と、前記下部電極に対向する上部電極と、前記下部電極及び前記上部電極の間に挟まれた発光層と、を含み、
前記下部電極及び前記上部電極は、平面視で、格子状に配置され、
前記下部電極は一方から引き出され、
前記上部電極は他方から引き出され、
前記下部電極の引き出し部分は、前記発光層と重なり、
前記上部電極の一方側の端部は、前記発光層を挟む、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
基板上に、前記基板の垂直な方向で、センサ部を形成する工程と、
前記センサ部と重なる位置の一部に、光を透過する開口部を形成し、前記開口部の周りを遮光する遮光層を形成する工程と、
前記センサ部に対向する発光部を形成する工程と、を含み、
前記発光部を形成する工程は、
発光素子を形成する工程と、
前記発光素子を覆う基材を形成する工程と、
前記基材に前記発光素子に囲まれた、複数の凹部を形成する工程と、を含む、
検出装置の製造方法。
【請求項6】
前記発光素子を形成する工程は、
所定のパターンの下部電極を形成する工程と、
前記下部電極の露出した面に、発光層を形成する工程と、
前記発光層の上に犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層をフォトエッチングし、前記遮光層の開口部と重なる位置の、前記犠牲層を除去する工程と、
前記犠牲層をマスクとして、前記発光層をエッチングし、前記犠牲層が重ならない発光層が除去される工程と、
前記犠牲層が重ならない発光層が除去される工程の後で、前記犠牲層を除去する工程と、
前記発光層の上に、上部電極を形成する工程と、
前記上部電極をフォトエッチングし、前記遮光層の開口部と重なる位置の、前記下部電極を除去する工程と、を含む、
請求項5に記載の検出装置の製造方法。
【請求項7】
前記発光素子を形成する工程は、
所定のパターンの下部電極を形成する工程と、
前記下部電極の上に、発光層を形成する工程と、
前記発光層の上に、上部電極を形成する工程と、
前記上部電極の上に、犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層をフォトエッチングし、前記遮光層の開口部と重なる位置の、前記犠牲層を除去する工程と、
前記犠牲層をマスクとして、前記上部電極をエッチングして、前記犠牲層が重ならない上部電極が除去される工程と、
前記犠牲層が重ならない上部電極が除去される工程の後で、前記犠牲層をマスクとして、前記発光層をエッチングして、前記犠牲層が重ならない発光層が除去される工程と、
前記犠牲層が重ならない発光層が除去される工程の後で、前記犠牲層を除去する工程と、を含む、
請求項5に記載の検出装置の製造方法。
【請求項8】
前記発光素子を形成する工程は、
所定のパターンの下部電極を形成する工程と、
前記下部電極の上に、発光層を形成する工程と、
前記発光層の上に、犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層をフォトエッチングし、前記遮光層の開口部と重なる位置の、前記犠牲層を除去する工程と、
前記犠牲層をマスクとして、前記発光層をエッチングし、前記犠牲層が重ならない発光層が除去される工程と、
前記犠牲層が重ならない発光層が除去される工程の後で、前記遮光層の開口部と重なる位置に、フォトレジスト層を形成する工程と、
前記フォトレジスト層を形成する工程の後で、前記犠牲層を除去する工程と、
前記発光層及び前記フォトレジスト層の上に、上部電極を形成する工程と、
前記上部電極を形成する工程の後で、前記フォトレジスト層を除去し、上部電極の一部をリフトオフする工程と、を含む、
請求項5に記載の検出装置の製造方法。
【請求項9】
前記発光素子を形成する工程は、
所定のパターンの下部電極を形成する工程と、
前記遮光層の開口部と重なる位置に、犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層の上に、フォトレジスト層を形成する工程と、
前記下部電極、前記犠牲層及び前記フォトレジスト層の全面を覆うようにして、発光層を形成する工程と、
前記発光層が形成する工程の後で、前記発光層の全面を覆うようにして、上部電極を形成する工程と、
前記上部電極を形成する工程した後で、前記犠牲層及び前記フォトレジスト層を除去し、前記発光層及び前記上部電極の一部をリフトオフする工程と、を含む、
請求項5に記載の検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置及び検出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、光導波路と、励起光を発光する有機電界発光素子とを同一基板上に備え、同一基板上で発光素子の端面から光導波路端面に向かって励起光を導波することができる光バイオセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-29330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、発光素子により発生した励起光が受光素子に入射してしまうため、受光素子の検出感度が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、蛍光の検出感度が向上する検出装置及び検出装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の検出装置は、基板と、前記基板上に設けられたセンサ部と、前記センサ部に対向して配置された発光部と、を備え、前記発光部は、励起光を照射する発光素子と、前記発光素子を覆う透光性の基材と、を有し、前記基材は、前記基板に垂直な方向で、第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを備え、前記基材は、前記第1面から前記第2面に向けて凹む、試料を保持する複数の凹部を有し、前記発光素子は、前記凹部を囲み、前記センサ部は、前記励起光により前記試料が発する蛍光を受光する、前記凹部と重なる位置に配置された受光素子を有する。
【0007】
本開示の一態様の検出装置の製造方法は、基板上に、前記基板の垂直な方向で、センサ部を形成する工程と、前記センサ部と重なる位置の一部に、光を透過する開口部を形成し、前記開口部の周りを遮光する遮光層を形成する工程と、前記センサ部に対向する発光部を形成する工程と、を含み、前記発光部を形成する工程は、発光素子を形成する工程と、前記発光素子を覆う基材を形成する工程と、前記基材に前記発光素子に囲まれた、複数の凹部を形成する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る検出装置を示す平面図である。
図2図2は、実施形態に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係るセンサ画素を示す回路図である。
図4図4は、実施形態に係るセンサ画素を示す模式的な平面図である。
図5図5は、図4のV-V’断面図である。
図6図6は、実施形態に係る発光装置を拡大して示す平面図である。
図7図7は、図6のVII-VII’断面図である。
図8図8は、図6のVIII-VIII’断面図である。
図9図9は、実施形態に係る発光装置の遮光層を示す平面図である。
図10図10は、実施形態に係る発光層の蒸着領域を示す平面図である。
図11図11は、図10のXI-XI’断面図である。
図12図12は、図10のXII-XII’断面図である。
図13図13は、比較例に係る検出装置を示す模式的な断面図である。
図14図14は、実施形態の第1変形例に係る検出装置を示す模式的な断面図である。
図15図15は、実施形態に係る検出装置の製造方法を説明するための説明図である。
図16図16は、発光層が蒸着された状態を示す模式的な断面図である。
図17図17は、実施形態の第1変形例に係る検出装置の製造方法を説明するための説明図である。
図18図18は、実施形態の第2変形例に係る検出装置の製造方法を説明するための説明図である。
図19図19は、実施形態の第3変形例に係る検出装置の製造方法を説明するための説明図である。
【0009】
本開示を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、本開示の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本開示と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
本実施形態及び請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0011】
図1は、実施形態に係る検出装置を示す平面図である。図1に示すように、検出装置1は、センサ部10と、発光装置50と、を含む。発光装置50は、表面に複数の凹部53を有している。凹部53は、例えば、マトリクス状に配置されている。凹部53は、試料を保持する保持部である。発光装置50は、発光部51を有する。発光部51の内部に設けられた、複数の発光素子52は、凹部53を囲むようにして格子状に配置される。
【0012】
図2は、実施形態に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、センサ部10は、基板21と、基板21上に設けられた複数のセンサ画素3(受光素子31)と、ゲート線駆動回路15A、15Bと、信号線駆動回路16と、検出制御回路11と、を有する。
【0013】
基板21は、検出領域AAと、周辺領域GAとを有する。検出領域AAは、複数のセンサ画素3(複数の受光素子31)が設けられた領域である。周辺領域GAは、検出領域AAの外周と、基板21の外縁部との間の領域であり、複数のセンサ画素3が設けられない領域である。ゲート線駆動回路15A、15B、信号線駆動回路16及び検出制御回路11は、周辺領域GAに設けられる。受光素子31が形成された基板21は、所定の検出領域ごとにセンサを駆動する駆動回路基板であり、バックプレーン又はアクティブマトリクス基板とも呼ばれる。
【0014】
なお、以下の説明において、第1方向Dxは、基板21と平行な面内の一方向である。第2方向Dyは、基板21と平行な面内の一方向であり、第1方向Dxと直交する方向である。なお、第2方向Dyは、第1方向Dxと直交しないで交差してもよい。第3方向Dzは、第1方向Dx及び第2方向Dyと直交する方向であり、基板21の主面の法線方向である。また、「平面視」とは、基板21と垂直な方向から見た場合の位置関係をいう。
【0015】
複数のセンサ画素3は、それぞれ、受光素子31を有する光センサである。受光素子31は、それぞれに照射される光に応じた電気信号を出力する。受光素子31は、例えば、有機半導体を用いたOPD(Organic Photodiode)やPIN(Positive Intrinsic Negative)フォトダイオードである。複数のセンサ画素3(複数の受光素子31)は、基板21の検出領域AAにマトリクス状に配列される。
【0016】
検出制御回路11は、ゲート線駆動回路15A、15B及び信号線駆動回路16にそれぞれ制御信号Sa、Sb、Sc(図2参照)を供給し、これらの動作を制御する回路である。具体的には、ゲート線駆動回路15Aは、制御信号Saに基づいてリセット制御信号RSTをリセットトランジスタTrR(図2参照)に出力する。ゲート線駆動回路15Bは、制御信号Sbに基づいてゲート駆動信号VGLをゲート線GL(図2参照)に出力する。信号線駆動回路16は、制御信号Scに基づいて選択された信号線SLと検出制御回路11とを電気的に接続する。
【0017】
複数のセンサ画素3が有する受光素子31は、ゲート線駆動回路15A、15Bから供給されるリセット制御信号RST及びゲート駆動信号VGLに従って検出を行う。複数の受光素子31は、それぞれに照射される光に応じた電気信号を、検出信号Vdetとして信号線駆動回路16に出力する。検出制御回路11は、複数の受光素子31からの検出信号Vdetの信号処理を行い、検出信号Vdetに基づくセンサ値VoをホストIC(図示せず)に出力する。これにより、検出装置1は、試料54に関する情報を検出する。
【0018】
検出制御回路11は、検出信号振幅調整回路41、A/D変換回路42及び信号処理回路43を有する。検出制御回路11が有する検出信号振幅調整回路41及びA/D変換回路42は、信号線SL(図5参照)と接続され、検出信号Vdetの信号処理を行う検出回路である。検出信号振幅調整回路41は、受光素子31から出力された検出信号Vdetの振幅を調整する回路であり、例えば増幅器を含み構成される。A/D変換回路42は、検出信号振幅調整回路41から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。信号処理回路43は、複数の受光素子31からの検出信号Vdetの信号処理を行う回路である。信号処理回路43は、A/D変換回路42からのデジタル信号の信号処理を行い、センサ値VoをホストIC(図示せず)へ送信する。
【0019】
図1に示すように、凹部53は、受光素子31と第3方向Dz方向に重なるように配置されている。
【0020】
次に、センサ部10の構成例について説明する。図3は、実施形態に係るセンサ画素を示す回路図である。図3に示すように、センサ画素3は、受光素子31と、容量素子Caと、第1トランジスタTrSと、を含む。第1トランジスタTrSは、受光素子31に対応して設けられる。第1トランジスタTrSは、薄膜トランジスタにより構成されるものであり、この例では、nチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のTFT(Thin Film Transistor)で構成されている。第1トランジスタTrSのゲートはセンサゲート線GLSに接続される。第1トランジスタTrSのソースはセンサ信号線SLSに接続される。第1トランジスタTrSのドレインは、受光素子31のアノード及び容量素子Caに接続される。
【0021】
受光素子31のカソードには、検出制御回路11から電源電位SVSが供給される。また、容量素子Caには、検出制御回路11から、容量素子Caの初期電位となる基準電位VR1が供給される。
【0022】
センサ画素3に光が照射されると、受光素子31には光量に応じた電流が流れ、これにより容量素子Caに電荷が蓄積される。第1トランジスタTrSがオンになると、容量素子Caに蓄積された電荷に応じて、センサ信号線SLSに電流が流れる。センサ信号線SLSは、信号線駆動回路16Aを介して検出制御回路11に接続される。これにより、検出装置1のセンサ部10は、センサ画素3ごとに、受光素子31に照射される光の光量に応じた信号を検出できる。
【0023】
なお、第1トランジスタTrSは、n型TFTに限定されず、p型TFTで構成されてもよい。また、図3に示すセンサ画素3の画素回路はあくまで一例であり、センサ画素3には、1つの受光素子31に対応して、複数のトランジスタが設けられていてもよい。
【0024】
次に、センサ部10の詳細な構成について説明する。図4は、実施形態に係るセンサ画素を示す模式的な平面図である。受光素子31の下部電極23は、2つのゲート線GLと、2つの信号線SLとで囲まれた領域に設けられる。
【0025】
駆動トランジスタTrは、半導体層65、ソース電極66、ドレイン電極63及びゲート電極64を有する。半導体層65は、ゲート線GLに沿って延在し、平面視でゲート電極64と交差して設けられる。ゲート電極64は、ゲート線GLと接続され、ゲート線GLと直交する方向に延在する。半導体層65の一端側はコンタクトホールCH4を介してソース電極66と接続される。下部電極23は、コンタクトホール(図示は省略する)を介して駆動トランジスタTrのソース電極66と電気的に接続される。これにより、駆動トランジスタTrは、受光素子31と電気的に接続される。半導体層65の他端側はコンタクトホールCH3を介してドレイン電極63と接続される。ドレイン電極63は、信号線SLと接続される。
【0026】
図5は、図4のV-V’断面図である。図5に示すように、基板21の上に、回路形成層70、平坦化層29a、受光素子31、平坦化層29bの順に積層される。基板21は絶縁基板であり、例えば、石英、無アルカリガラス等のガラス基板が用いられる。回路形成層70は、基板21上に設けられ、図3、4に示す駆動トランジスタTr等の各種トランジスタ、各種配線等が形成される層である。図4では、駆動トランジスタTrに接続される信号線SLを図示している。
【0027】
平坦化層29aは、信号線SLを覆って、駆動トランジスタTrを含む回路形成層70の上に設けられる。平坦化層29aは、第1トランジスタTrSや、各種導電層で形成される凹凸を平坦化する平坦化層である。平坦化層29aは、例えば、アクリル、ポリイミド、ポリアクリルアミドのいずれかで形成された有機膜である。
【0028】
受光素子31は、平坦化層29aの上に設けられる。受光素子31は、下部電極23と、下部バッファ層37と、活性層36と、上部バッファ層38と、上部電極24と、を有する。受光素子31は、基板21に垂直な方向で、下部電極23、下部バッファ層37、活性層36、上部バッファ層38、上部電極24の順に積層される。
【0029】
下部電極23は、受光素子31のアノード電極であり、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性を有する導電材料で形成される。
【0030】
活性層36は、照射される光に応じて特性(例えば、電圧電流特性や抵抗値)が変化する。活性層36の材料として、有機材料が用いられる。具体的には、活性層36は、p型有機半導体と、n型有機半導体であるn型フラーレン誘導体(PCBM)とが混在するバルクヘテロ構造である。活性層36として、例えば、低分子有機材料であるC60(フラーレン)、PCBM(フェニルC61酪酸メチルエステル:Phenyl C61-butyric acid methyl ester)、CuPc(銅フタロシアニン:Copper Phthalocyanine)、F16CuPc(フッ素化銅フタロシアニン)、rubrene(ルブレン:5,6,11,12-tetraphenyltetracene)、PDI(Perylene(ペリレン)の誘導体)等を用いることができる。
【0031】
活性層36は、これらの低分子有機材料を用いて蒸着型(Dry Process)で形成することができる。この場合、活性層36は、例えば、CuPcとF16CuPcとの積層膜、又はrubreneとC60との積層膜であってもよい。活性層36は、塗布型(Wet Process)で形成することもできる。この場合、活性層36は、上述した低分子有機材料と高分子有機材料とを組み合わせた材料が用いられる。高分子有機材料として、例えばP3HT(poly(3-hexylthiophene))、F8BT(F8-alt-benzothiadiazole)等を用いることができる。活性層36は、P3HTとPCBMとが混合した状態の膜、又はF8BTとPDIとが混合した状態の膜とすることができる。
【0032】
下部バッファ層37は正孔輸送層であり、上部バッファ層38は電子輸送層である。下部バッファ層37及び上部バッファ層38は、活性層36で発生した正孔及び電子が下部電極23又は上部電極24に到達しやすくするために設けられる。
【0033】
下部バッファ層37は、下部電極23の上に直接接し、隣り合う下部電極23の間の領域にも設けられる。活性層36は、下部バッファ層37の上に直接接する。正孔輸送層の材料は、酸化金属層とされる。酸化金属層として、酸化タングステン(WO3)、酸化モリブデン等が用いられる。
【0034】
上部バッファ層38は、活性層36の上に直接接し、上部電極24は、上部バッファ層38の上に直接接する。電子輸送層の材料は、エトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)が用いられる。
【0035】
なお、下部バッファ層37、活性層36及び上部バッファ層38の材料、製法はあくまで一例であり、他の材料、製法であってもよい。例えば、下部バッファ層37及び上部バッファ層38は、それぞれ単層膜に限定されず、電子ブロック層や、正孔ブロック層を含んで積層膜として形成されていてもよい。
【0036】
上部電極24は上部バッファ層38の上に設けられる。上部電極24は、受光素子31のカソード電極であり、検出領域AAの全体に亘って連続して形成される。言い換えると、上部電極24は複数の受光素子31の上に連続して設けられる。上部電極24は、下部バッファ層37、活性層36及び上部バッファ層38を挟んで、複数の下部電極23と対向する。上部電極24は、例えば、ITOやIZO等の透光性を有する導電材料で形成される。
【0037】
なお、図4図5に示す受光素子31の構成はあくまで一例であり、適宜変更することができる。例えば、上部電極24が受光素子31のアノード電極であり下部電極23が受光素子31のカソード電極であってもよい。
【0038】
図6は、実施形態に係る発光装置を拡大して示す平面図である。図7は、図6のVII-VII’断面図である。図8は、図6のVIII-VIII’断面図である。図6において、遮光層62の下方は、図7と同じであるので図示を省略する。図9は、実施形態に係る発光装置の遮光層を示す平面図である。
【0039】
図7に示すように、検出装置1は、基板21と、回路形成層70と、センサ部10、発光装置50と、を有する。検出装置1は、基板21に垂直な第3方向Dzで、基板21、回路形成層70、センサ部10、発光装置50の順に積層される。
【0040】
センサ部10は、回路形成層70の上に設けられる。センサ部10は、受光素子31と、遮光層61と、平坦化層29aと、平坦化層29bと、を備える。平坦化層29aは、第3方向Dzで、回路形成層70の上に設けられている。
【0041】
遮光層61は、上部電極24の上に設けられる。図5に示すように、遮光層61は、第3方向Dzに対して所定方向に傾斜した方向に進行する成分を受光素子31に向けて透過させ、他の方向に進行する成分を減衰させる。遮光層61は、コリメートアパーチャ、あるいは、コリメータとも呼ばれる。遮光層61は、受光素子31の発光装置側に設けられ、遮光層61の開口61aが受光素子31に対向している。遮光層61は、励起光に対して遮光性を有する樹脂や金属などで形成されている。
【0042】
平坦化層29bは、第3方向Dzで、遮光層61の上に設けられている。平坦化層29bは、例えば、アクリル、ポリイミド、ポリアクリルアミドのいずれかで形成された有機膜である。
【0043】
図7に示すように、発光装置50は、遮光層62と、無機膜28と、発光部51と、を有する。発光装置50は、基板21に垂直な第3方向Dzで、遮光層62、無機膜28、発光部51の順に積層される。
【0044】
図7及び図8に示すように、発光部51は、基材29cと、基材29cの内部に配置された発光素子52と、凹部53と、を有する。発光素子52は、樹脂膜55と、下部電極34と、発光層520と、上部電極35と、を有する。発光素子52は、基板21に垂直な第3方向Dzで、樹脂膜55、下部電極34、発光層520、上部電極35の順に積層される。図7及び図8に示すように、発光素子52は、凹部53を囲み、励起光L11を凹部53の内部へ発光することができる。
【0045】
樹脂膜55は、可撓性を有する樹脂で、例えば、ポリイミド等の樹脂で形成される。樹脂膜55は、発光層520の土台として設けられている。樹脂膜55は、例えば、断面形状で半球状である。これにより、発光素子52の発光面が湾曲し、励起光L11が放射状に広がりやすくなる。なお、樹脂膜55は、断面形状で台形や多角形であってもよい。
【0046】
下部電極34は、発光層520のアノード電極であり、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性を有する導電材料で形成される。
【0047】
発光層520は、凹部53に収容された試料54に向けて励起光L11を照射する積層層体である。発光層520は、例えば有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)で構成される。発光層520は、無機ELディスプレイ(マイクロLED、ミニLED)であってもよい。
【0048】
上部電極35は、発光層520を挟んで、下部電極34と対向する。上部電極35は、例えば、ITOやIZO等の透光性を有する導電材料で形成される。上部電極35は、図示しない電源回路に電気的に接続されている。
【0049】
基材29cは、発光素子52で形成される凹凸を平坦化する、透光性を有する平坦化層である。基材29cは、例えば、アクリル、ポリイミド、ポリアクリルアミドのいずれかで形成された有機膜である。
【0050】
基材29cは、第3方向Dzで、基材29cの第1面511から基材29cの第2面512向けて凹む凹部53を有する。遮光層62は、発光素子52の励起光L11が受光素子31に到達することを抑制するための層である。遮光層62は、励起光に対して遮光性を有する樹脂や金属などで形成されている。
【0051】
凹部53には、試料54を含む水溶液が満たされている。凹部53は、受光素子31と重なる位置に配置されている。樹脂膜55が遮光層62よりも第3方向Dzの上側へ突出している。そして、図7及び図8に示すように、樹脂膜55が凹部53の底部よりも第3方向Dzに突出していることにより、発光素子52の第3方向Dzの位置と、凹部53の内部の第3方向Dzの位置とが同程度となる。これにより、発光素子52が励起光L11を照射すると、試料54に対して励起光L11が到達しやすくなる。
【0052】
図6に示すように、発光素子52は、平面視で、無機膜28、遮光層62、上部電極35、発光層520、下部電極34、樹脂膜55の順に、凹部53の周囲を囲んでいる。
【0053】
遮光層62は、第3方向Dzで、センサ部10の上側に配置されている。また、図9に示すように、遮光層62は、第3方向Dzに対して貫通した、複数の開口部62aを有する。つまり、開口部62aは、遮光層62で形成された遮光部で囲まれている。
【0054】
開口部62aの形状は、平面視における受光素子31の形状と同程度の大きさであり、例えば、正八角形である。これにより、凹部53に入射した励起光L11が受光素子31に到達することを抑制することができる。
【0055】
無機膜28は、例えば、酸化シリコン(SiO2)や窒化シリコン(SiN)等の透光性を有する無機絶縁膜である。
【0056】
図10は、実施形態に係る発光層の蒸着領域を示す平面図である。図11は、図10のXI-XI’断面図である。図12は、図10のXII-XII’断面図である。図10に示すように、発光装置50において、下部電極34及び上部電極35は、それぞれ、平面視で、第1方向Dx及び第2方向Dyに向けて間隔を開けて延びている。第1方向Dx及び第2方向Dyに向けて延びた、下部電極34及び上部電極35は、それぞれ、格子状に配置されている。
【0057】
接続部340及び接続部350は、外部の電源(図示せず)に接続される電極パッド部分である。下部電極34は、接続部340に接続され、上部電極35は、接続部350に接続されている。また、下部電極34は、Dx方向の一方から引き出され、上部電極35は、Dx方向の他方から引き出されている。
【0058】
図10に示すように、発光部51は、下部電極34と、下部電極34に対向する上部電極35と、下部電極34及び上部電極35の間に挟まれた発光層520と、を含む。発光層520は検出領域AAよりも大きい範囲で蒸着されている。図10及び図11に示すように、発光層520が蒸着された蒸着領域ABのうち検出領域AAを除く領域において、下部電極34が引き出された引き出し部分34aは、発光層520に覆われている。また、発光層520の上に、上部電極35がDx方向の他方側に引き出され、上部電極35は、引き出し部分34aに重なる前に途切れ、引き出し端部35bが生じている。引き出し端部35bは、引き出し部分34aの上に積層された発光層520を挟み込んでいる。下部電極34及び上部電極35は、平面視で、格子状に配置されている。
【0059】
これにより、発光層520は、引き出し部分34aと、引き出し端部35bとの短絡を抑制することができる。
【0060】
また、図12に示すように、発光層520が蒸着された蒸着領域ABのうち検出領域AAを除く領域において、上部電極35が引き出された引き出し部分35aは、引き出し端部34bの上に積層された発光層520を挟み込んでいる。
【0061】
また、接続部340及び接続部350に発光層520が蒸着されないように、発光層520は、マスキングして、蒸着領域ABにのみ蒸着される。
【0062】
図13は、比較例に係る検出装置を示す模式的な断面図である。比較例の検出装置1aは、検出装置1と比較して、発光素子52から照射される励起光L11の光の経路上に受光素子31が配置され、かつ、発光素子52と受光素子31との間に励起光L11をカットするフィルターfが設けられている。
【0063】
比較例の検出装置1aは、発光素子52から照射された励起光L11が、光導波路311を経由して、凹部53内の試料54で励起された蛍光L12が、フィルターfを介して、受光素子31a、31b、31cにそれぞれ入射される。
【0064】
これに対して、実施形態の検出装置1は、発光素子52から照射される励起光L11の光の経路上に受光素子31が配置されていない。
【0065】
これにより、実施形態の検出装置1は、受光素子31に励起光L11を照射せずに、試料54にのみ励起光L11を照射させることができるため、受光素子31に入射される励起光L11を低減することができる。
【0066】
また、実施形態の検出装置1は、発光素子52と受光素子31との間にフィルターfが設けられていない。
【0067】
これにより、実施形態の検出装置1は、発光素子52と受光素子31との間にフィルターfが設けられていないため、蛍光L12が減衰されずに受光素子31に到達させることができる。また、比較例の検出装置1aと比較して、試料54から受光素子31までの距離が近くなり、受光素子31が検知する蛍光L12の検出感度が向上する。
【0068】
(検出装置1の第1変形例)
図14は、検出装置の第1変形例を示す模式的な断面図である。なお、以下の説明では、上述した検出装置1の製造方法で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0069】
図14に示すように、検出装置2は、回路形成層70と、センサ部10、基板21と、発光装置50と、を有する。検出装置2は、第3方向Dzで、回路形成層70と、センサ部10、基板21と、発光装置50の順に積層される。
【0070】
検出装置1の第1変形例の作用及び効果は、実施形態の検出装置1と同様であるため、詳細な説明は、省略する。
【0071】
(実施形態に係る検出装置1の製造方法)
次に、検出装置1の製造方法について説明する。図15は、実施形態に係る検出装置の製造方法を説明するための説明図である。図16は、発光層が蒸着された状態を示す模式的な断面図である。なお、以下の説明では、上述した検出装置1の製造方法で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0072】
図15に示すように、回路形成層70が、基板21の垂直な方向で、基板21上に形成される。また、センサ部10が、回路形成層70の上に形成される。次に、遮光層62が、基板21の垂直な方向で、センサ部10の上に形成される(ステップST101)。遮光層62は、センサ部10と重なる位置の一部を除き、形成されるので、センサ部10と重なる位置の一部には、光を透過する開口部62aが形成される。これにより、遮光層62は、開口部62aの周りを遮光する。
【0073】
次に、無機膜28が、遮光層62の上の全面を覆うようにして成膜される(ステップST102)。その後、樹脂膜55が、遮光層62の開口部62aに重ならない位置で、開口部62aを囲んで、無機膜28の上に形成される(ステップST103)。
【0074】
次に、樹脂膜55及び無機膜28の上に発光部51を形成する。発光部51を形成する工程は、発光素子52を形成する工程(ステップST104~ST110)と、発光層520を覆う基材29cを形成する工程(ステップST111)と、基材29cに、発光素子52に囲まれた、複数の凹部53を形成する工程(ステップST112)と、を含む。
【0075】
発光素子52を形成する工程は、所定のパターンの下部電極34を形成する工程(ステップST104)と、下部電極の露出した面に、発光層520を蒸着する工程(ステップST105)と、発光層520の上に犠牲層80を積層する工程(ステップST105)と、犠牲層80をフォトエッチングし、遮光層62の開口部62aと重なる位置の、犠牲層80を除去する工程(ステップST106)と、犠牲層80をマスクとして、発光層520をエッチングし、犠牲層80が重ならない発光層520が除去される工程(ステップST107)と、犠牲層80が重ならない発光層520が除去される工程の後で、犠牲層80を除去する工程(ステップST108)と、発光層520の上に、上部電極35を蒸着する工程(ステップST109)と、上部電極35をフォトエッチングし、遮光層62の開口部62aと重なる位置の、上部電極35を除去する工程(ステップST110)と、を含む。
【0076】
以下、発光素子52を形成する工程を詳細に説明する。まず、所定のパターンの下部電極34が、開口部62aに重ならない位置で、開口部62aを囲んで、樹脂膜55の上に形成される(ステップST104)。
【0077】
次に、下部電極34及び無機膜28の露出した面に、発光層520が蒸着される。発光素子52の上に、犠牲層80が積層される(ステップST105)。犠牲層80は、後工程で除去することを前提に形成された層である。
【0078】
ここで、図16に示すように、発光層520は、正孔輸送層57と、自発光層56と、電子輸送層58と、を有する。発光層520は、第3方向Dzで、正孔輸送層57、自発光層56、電子輸送層58の順に積層される。
【0079】
正孔輸送層57としては、例えば、芳香族アミン化合物と、その化合物に対して電子受容性を示す物質とを含む層を用いることが好ましい。ここで、芳香族アミン化合物とは、アリールアミン骨格を有する物質である。芳香族アミン化合物の中でも特に、トリフェニルアミンを骨格に含み、400以上の分子量を有するものが好ましい。電子輸送層58の電子輸送性物質について特に限定はなく、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]-キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)-4-フェニルフェノラト-アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)等の金属錯体の他、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等を用いることができる。また、電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質について特に限定はなく、例えば、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、エルビウム、イッテルビウム等の希土類金属等を用いることができる。また、リチウム酸化物(Li2O)、カルシウム酸化物(CaO)、ナトリウム酸化物(Na2O)、カリウム酸化物(K2O)、マグネシウム酸化物(MgO)等、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物の中から選ばれた物質を、電子輸送性物質に対して電子供与性を示す物質として用いても構わない。
【0080】
自発光層56は、試料54の吸収のピーク波長に応じて、蛍光を励起する材料が適宜選定される。
【0081】
次に、犠牲層80がフォトエッチングされ、遮光層62の開口部62aと重なる位置の、犠牲層80が除去される(ステップST106)。
【0082】
さらに、犠牲層80をマスクとして、発光層520がフォトエッチングされ、犠牲層80が重ならない発光層520が除去される(ステップST107)。
【0083】
そして、遮光層62の開口部62aと重ならない位置の、犠牲層80が除去された後(ステップST108)、上部電極35が発光層520及び無機膜28の露出した面に蒸着される(ステップST109)。
【0084】
次に、開口部62aと重なる位置にある上部電極35がウェットエッチングされ、遮光層62の開口部62aと重なる位置の、上部電極35が除去される(ステップST110)。以上により、センサ部10の上に、発光素子52が形成される。
【0085】
次に、基材29cが、上部電極35及び無機膜28の露出した面を覆うようにして成膜される(ステップST111)。
【0086】
最後に、基材29cに、発光素子52に囲まれた、凹部53が、基材29cの第1面511から、第1面511と反対側の第2面512に向けて形成される(ステップST112)。
【0087】
これにより、実施形態に係る検出装置1の製造方法は、発光素子52を保護する平坦化層に凹部53を形成することで、試料54を保持する凹部53の形成をすることができる。
【0088】
(検出装置1の製造方法の第1変形例)
次に、検出装置1の製造方法の第1変形例について、上記の検出装置1の発光部を形成する工程と異なる点を主に説明する。図17は、実施形態の第1変形例に係る検出装置の製造方法を説明するための説明図である。なお、以下の説明では、上述した検出装置1の製造方法で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0089】
図17に示すように、回路形成層70が、基板21の垂直な方向で、基板21上に形成される。また、センサ部10が、回路形成層70の上に形成される。次に、遮光層62が、基板21の垂直な方向で、センサ部10の上に形成される(ステップST201)。センサ部10と重なる位置の一部には、光を透過する開口部62aが形成される。
【0090】
次に、無機膜28が、遮光層62の上の全面を覆うようにして成膜される(ステップST202)。その後、樹脂膜55が、遮光層62の開口部62aに重ならない位置で、開口部62aを囲んで、無機膜28の上に形成される(ステップST203)。
【0091】
次に、所定のパターンの下部電極34が、開口部62aに重ならない位置で、開口部62aを囲んで、樹脂膜55の上に形成される(ステップST204)。
【0092】
第1変形例では、発光部51を形成する工程において、ステップST204の後、下部電極34が形成された基板の上に、発光層520が蒸着され、発光層520の上面に、上部電極35が積層される(ステップST205)。
【0093】
次に、犠牲層80が、ステップST205で形成された上部電極35の上面に、蒸着される(ステップST206)。そして、犠牲層80がフォトエッチングされ、遮光層の開口部と重なる位置の、犠牲層80が除去される(ステップST207)。
【0094】
次に、犠牲層をマスクとして、上部電極35がフォトエッチングされ、ウェット加工により、犠牲層80が重ならない上部電極35が除去される(ステップST208)。
【0095】
さらに、ステップST208の後で、犠牲層80をマスクとして、発光層520をエッチングして、犠牲層80が重ならない発光層520が除去される(ステップST209)。
【0096】
そして、ステップST209の後で、開口部62aと重ならない位置にある犠牲層80が除去される(ステップST210)。以上により、センサ部10の上に、発光素子52が形成される。
【0097】
次に、基材29cが、上部電極35及び無機膜28の露出した面を覆うようにして成膜される(ステップST211)。
【0098】
最後に、基材29cに、発光素子52に囲まれた、凹部53が、基材29cの第1面511から、第1面511と反対側の第2面512に向けて形成される(ステップST212)。
【0099】
これにより、第1変形例に係る検出装置1の製造方法は、上部電極35及び発光層520を一緒にフォトエッチング処理しているため、実施形態に係る検出装置1の製造方法と比較して、発光層520への損傷を抑制することができる。
【0100】
(検出装置1の製造方法の第2変形例)
次に、検出装置1の製造方法の第2変形例について、上記の検出装置1の発光部を形成する工程と異なる点を主に説明する。図18は、実施形態の第2変形例に係る検出装置の製造方法を説明するための説明図である。
【0101】
図18に示すように、回路形成層70が、基板21の垂直な方向で、基板21上に形成される。また、センサ部10が、回路形成層70の上に形成される。次に、遮光層62が、基板21の垂直な方向で、センサ部10の上に形成される(ステップST301)。センサ部10と重なる位置の一部には、光を透過する開口部62aが形成される。
【0102】
次に、無機膜28が、遮光層62の上の全面を覆うようにして成膜される(ステップST302)。その後、樹脂膜55が、遮光層62の開口部62aに重ならない位置で、開口部62aを囲んで、無機膜28の上に形成される(ステップST303)。
【0103】
次に、所定のパターンの下部電極34が、開口部62aに重ならない位置で、開口部62aを囲んで、樹脂膜55の上に形成される(ステップST304)。
【0104】
第2変形例では、発光部51を形成する工程において、ステップST304の後、下部電極34が形成された基板の上に、発光層520が蒸着され、発光層520の上面に、犠牲層80が積層される(ステップST305)。
【0105】
次に、犠牲層80がフォトエッチングされ、遮光層62の開口部62aと重なる位置の、犠牲層80が除去される(ステップST306)。
【0106】
次に、犠牲層80をマスクとして、発光層520がフォトエッチングされ、犠牲層80が重ならない発光層520が除去される(ステップST307)。
【0107】
次に、ステップST307の後で、遮光層62の開口部62aと重なる位置に、フォトレジスト層81が形成される(ステップST308)。
【0108】
フォトレジスト層81は、フォトリソグラフィにおいて使用される、光や電子線等によって溶解性などの物性が変化する組成物である。本実施形態では、紫外線が照射されなかった範囲が現像剤に溶解し、紫外線が照射された範囲が現像剤に溶解せず残留するネガ型のフォトレジスト層81が採用されている。現像剤は、例えば有機溶剤である。なお、紫外線が照射された範囲が現像剤に溶解し、紫外線が照射されなかった範囲が現像剤に溶解しないポジ型のフォトレジスト層81が利用されてもよい。現像剤は、フォトレジスト層81の具体的組成に応じたものになる。
【0109】
そして、ステップST308の後で、発光層520の上面に形成された犠牲層80が除去される(ステップST309)。
【0110】
次に、フォトレジスト層81及び発光層520の上面を覆うようにして、上部電極35が蒸着される(ステップST310)。
【0111】
次に、フォトレジスト層81が除去され、上部電極の一部がリフトオフされる(ステップST311)。以上により、センサ部10の上に、発光素子52が形成される。
【0112】
次に、基材29cが、上部電極35及び無機膜28の露出した面を覆うようにして成膜される(ステップST312)。
【0113】
最後に、基材29cに、発光素子52に囲まれた、凹部53が、基材29cの第1面511から、第1面511と反対側の第2面512に向けて形成される(ステップST313)。
【0114】
これにより、第2変形例に係る検出装置1の製造方法は、遮光層62の開口部62aと重なる位置の、上部電極35がウェットエッチング加工により除去されないため、ウェットエッチング加工の溶剤で生じる発光層520への損傷を抑制することができる。
【0115】
(検出装置1の製造方法の第3変形例)
次に、検出装置1の製造方法の第3変形例について、上記の検出装置1の発光部を形成する工程と異なる点を主に説明する。図19は、実施形態の第3変形例に係る検出装置の製造方法を説明するための説明図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0116】
図19に示すように、回路形成層70が、基板21の垂直な方向で、基板21上に形成される。また、センサ部10が、回路形成層70の上に形成される。次に、遮光層62が、基板21の垂直な方向で、センサ部10の上に形成される(ステップST401)。センサ部10と重なる位置の一部には、光を透過する開口部62aが形成される。
【0117】
次に、無機膜28が、遮光層62の上の全面を覆うようにして成膜される(ステップST402)。その後、樹脂膜55が、遮光層62の開口部62aに重ならない位置で、開口部62aを囲んで、無機膜28の上に形成される(ステップST403)。
【0118】
次に、所定のパターンの下部電極34が、開口部62aに重ならない位置で、開口部62aを囲んで、樹脂膜55の上に形成される(ステップST404)。
【0119】
ステップST404の後、開口部62aと重なる位置に、リフトオフ層82が積層される(ステップST405)。リフトオフ層82は、犠牲層80と、フォトレジスト層81とを含む。無機膜28の上に犠牲層80、フォトレジスト層81の順に積層される。リフトオフ層82は、例えば、レジスト樹脂で形成される。
【0120】
そして、リフトオフ層82の全面を覆うようにして、発光層520が蒸着される(ステップST406)。
【0121】
次に、リフトオフ層82に形成された発光素子の全面を覆うようにして、上部電極35が蒸着される(ステップST407)。
【0122】
さらに、開口部62aと重なる位置にあるリフトオフ層82、発光層520、上部電極35がリフトオフにより、除去される(ステップST408)。
【0123】
以上により、センサ部10の上に、発光素子52が形成される。
【0124】
次に、基材29cが、上部電極35及び無機膜28の露出した面を覆うようにして成膜される(ステップST409)。
【0125】
最後に、基材29cに、発光素子52に囲まれた、凹部53が、基材29cの第1面511から、第1面511と反対側の第2面512に向けて形成される(ステップST410)。
【0126】
犠牲層80は、リフトオフ層82を除去する工程で使用される溶剤に対して、フォトレジスト層81よりも溶解しやすい材料で形成される。
【0127】
これにより、製造方法の第3変形例に係る検出装置1は、犠牲層80の上にフォトレジスト層81を積層することで、リフトオフ層82の剥離に要する時間を短縮することができる。この結果、発光層520への損傷を抑制することができる。
【0128】
以上、本開示の好適な実施の形態を説明したが、本開示はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本開示の技術的範囲に属する。上述した各実施形態及び各変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0129】
1、1a、2 検出装置
10 センサ部
21 基板
28 無機膜
29a、29b 平坦化層
29c 基材
31 受光素子
34 下部電極
35 上部電極
50 発光装置
51 発光部
52 発光素子
520 発光層
53 凹部
54 試料
55 樹脂膜
61、62 遮光層
62a 開口部
80 犠牲層
81 フォトレジスト層
82 リフトオフ層
AB 蒸着領域
L11 励起光
L12 蛍光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図19