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2024-116998睡眠習慣を考慮した将来の認知機能に関する食物の評価方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116998
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】睡眠習慣を考慮した将来の認知機能に関する食物の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/60 20180101AFI20240821BHJP
【FI】
G16H20/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022901
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】510108858
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤(大塚) 礼
(72)【発明者】
【氏名】木下 かほり
(72)【発明者】
【氏名】荒井 秀典
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 理浩
(72)【発明者】
【氏名】近藤(神通) 寛子
(72)【発明者】
【氏名】今泉 明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克也
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】例えば評価対象とする食物が睡眠に課題がある人における認知機能低下リスクと関連するものか等に関する情報を提供することができる評価方法などを提供することを課題とする。
【解決手段】本実施形態では、Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSerのうちの少なくとも1つのアミノ酸の食物中の量の値、または、前記量の前記値が代入される変数を含む式と前記量の前記値とを用いて算出された前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から食物を評価する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSerのうちの少なくとも1つのアミノ酸の食物中の量の値である第一の値、または、前記第一の値が代入される変数を含む式と前記第一の値とを用いて算出された前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価する評価ステップを含むこと、
を特徴とする評価方法。
【請求項2】
前記評価ステップでは、前記第一の値と前記食物中のエネルギー、たんぱく質、脂質、および炭水化物の量の値のうちの少なくとも1つの値である第二の値とを用いる、または、前記第一の値が代入される変数と前記第二の値が代入される変数とを含む式と前記第一の値と前記第二の値とを用いて算出された前記式の値を用いること、
を特徴とする請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記評価ステップで得られた評価結果に応じた将来の認知機能低下リスクを下げるためのアドバイス情報を作成する作成ステップをさらに含むこと、
を特徴とする請求項1または2に記載の評価方法。
【請求項4】
ユーザの睡眠習慣情報を基に、当該ユーザが、認知機能維持の観点から睡眠に課題がある人かを特定する特定ステップをさらに含み、
前記食物は、前記特定ステップで、認知機能維持の観点から睡眠に課題がある人と特定された前記ユーザに紐づくものであること、
を特徴とする請求項3に記載の評価方法。
【請求項5】
睡眠に課題があるとは、睡眠の量または質に課題があることであり、
前記睡眠習慣情報は、睡眠の量または質に関する情報であること、
を特徴とする請求項4に記載の評価方法。
【請求項6】
前記食物は、一定期間分の食事に相当するものであること、
を特徴とする請求項5に記載の評価方法。
【請求項7】
前記特定ステップ、前記評価ステップ、および前記作成ステップは、制御部を備えた情報処理装置の前記制御部において実行されること、
を特徴とする請求項6に記載の評価方法。
【請求項8】
Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSerのうちの少なくとも1つのアミノ酸の食物中の量の値である第一の値、および、前記第一の値が代入される変数を含む、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価するための式を用いて、前記式の値を算出する算出ステップを含むこと、
を特徴とする算出方法。
【請求項9】
前記算出ステップは、制御部を備えた情報処理装置の前記制御部において実行されること、
を特徴とする請求項8に記載の算出方法。
【請求項10】
制御部を備える評価装置であって、
前記制御部は、
Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSerのうちの少なくとも1つのアミノ酸の食物中の量の値である第一の値、または、前記第一の値が代入される変数を含む式と前記第一の値とを用いて算出された前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価する評価手段
を備えること、
を特徴とする評価装置。
【請求項11】
端末装置とネットワークを介して通信可能に接続され、
前記制御部は、
前記第一の値を算出するための情報、前記情報を用いて算出された前記第一の値、または前記式の値を受信するデータ受信手段と、
前記評価手段で得られた結果を前記端末装置へ送信する結果送信手段と、
をさらに備え、
前記評価手段は、(1)前記データ受信手段で前記情報を受信した場合、受信した前記情報を用いて前記第一の値を算出する処理、または、受信した前記情報を用いて前記第一の値を算出し、算出した前記第一の値と前記式とを用いて前記式の値を算出する処理を実行し、前記処理で得られた前記第一の値または前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価し、(2)前記データ受信手段で前記第一の値または前記式の値を受信した場合、受信した前記第一の値または前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価すること、
を特徴とする請求項10に記載の評価装置。
【請求項12】
制御部を備える算出装置であって、
前記制御部は、
Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSerのうちの少なくとも1つのアミノ酸の食物中の量の値である第一の値、および、前記第一の値が代入される変数を含む、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価するための式を用いて、前記式の値を算出する算出手段
を備えること、
を特徴とする算出装置。
【請求項13】
制御部を備える情報処理装置において実行させるための評価プログラムであって、
前記制御部において実行させるための、
Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSerのうちの少なくとも1つのアミノ酸の食物中の量の値である第一の値、または、前記第一の値が代入される変数を含む式と前記第一の値とを用いて算出された前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価する評価ステップ
を含むこと、
を特徴とする評価プログラム。
【請求項14】
制御部を備える情報処理装置において実行させるための算出プログラムであって、
前記制御部において実行させるための、
Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSerのうちの少なくとも1つのアミノ酸の食物中の量の値である第一の値、および、前記第一の値が代入される変数を含む、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価するための式を用いて、前記式の値を算出する算出ステップ
を含むこと、
を特徴とする算出プログラム。
【請求項15】
請求項13または14に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項16】
制御部を備える評価装置と制御部を備える端末装置とをネットワークを介して通信可能に接続して構成される評価システムであって、
前記端末装置の前記制御部は、
前記評価装置から送信された、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から食物を評価した結果を受信する結果受信手段
を備え、
前記評価装置の前記制御部は、
Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSerのうちの少なくとも1つのアミノ酸の前記食物中の量の値である第一の値を算出するための情報、前記情報を用いて算出された前記第一の値、または、前記第一の値が代入される変数を含む式と前記第一の値とを用いて算出された前記式の値を受信するデータ受信手段と、
(1)前記データ受信手段で前記情報を受信した場合、受信した前記情報を用いて前記第一の値を算出する処理、または、受信した前記情報を用いて前記第一の値を算出し、算出した前記第一の値と前記式とを用いて前記式の値を算出する処理を実行し、前記処理で得られた前記第一の値または前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価し、(2)前記データ受信手段で前記第一の値または前記式の値を受信した場合、受信した前記第一の値または前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価する評価手段と、
前記評価手段で得られた前記結果を前記端末装置へ送信する結果送信手段と、
を備えること、
を特徴とする評価システム。
【請求項17】
制御部を備えた端末装置であって、
前記制御部は、
睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から食物を評価した結果を取得する結果取得手段
を備え、
前記結果は、Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSerのうちの少なくとも1つのアミノ酸の食物中の量の値である第一の値、または、前記第一の値が代入される変数を含む式と前記第一の値とを用いて算出された前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価した結果であること、
を特徴とする端末装置。
【請求項18】
前記評価を行う評価装置とネットワークを介して通信可能に接続されており、
前記結果取得手段は、前記評価装置から送信された前記結果を受信すること、
を特徴とする請求項17に記載の端末装置。
【請求項19】
穀類、砂糖及び甘味類、豆類、種実類、その他の野菜、きのこ類、魚介類、肉類、卵類、および乳類のうちのいずれか1つの食品群に属する食物における、Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSerのうちの少なくとも1つのアミノ酸の過不足に関する情報を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価する評価ステップを含むこと、
を特徴とする評価方法。
【請求項20】
Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSerのうちの少なくとも1つのアミノ酸の食物中の量の値である第一の値、または、前記第一の値が代入される変数を含む式と前記第一の値とを用いて算出された前記式の値を用いて、睡眠に課題がある評価対象の認知機能低下リスクを評価する評価ステップを含むこと、
を特徴とする評価方法。
【請求項21】
ユーザの睡眠習慣情報を基に、当該ユーザが、認知機能維持の観点から睡眠に課題がある人かを特定する特定ステップと、
前記特定ステップで、認知機能維持の観点から睡眠に課題がある人と特定された前記ユーザに、Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSerのうちの少なくとも1つのアミノ酸または当該アミノ酸を含む食物に関する推奨情報を提供する提供ステップと、
を含むことを特徴とする情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価方法、算出方法、評価装置、算出装置、評価プログラム、算出プログラム、記録媒体、評価システム、端末装置および情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の加速に伴い認知症患者数の増加が見込まれている。認知症患者数は、2050年には1000万人を上回ると算出されている。認知症を発症すると、中核症状と言われる認知機能の低下などの症状の回復は見込まれない。そのため、認知症は、発症前の予防が非常に重要な疾患である。また、アルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease:AD)の研究において、ADが発症する20年以上前から脳内変化が始まっていることが明らかになりつつある。この研究から、より若年層からの予防が重要であることがわかる。
【0003】
認知症発症に関わる危険因子として、ApoE4遺伝子などの遺伝的背景および糖尿病や高血圧などの生活習慣病などが挙げられる。さらに、喫煙、社会参画状況、外出頻度の低下および食事内容などの生活習慣も、認知症発症に関わると云われている。特に、食事内容と認知症発症または認知機能との関わりについて、タンパク質摂取量が多いと認知症の前段階である軽度認知障害のリスクが低下するという報告(非特許文献1)および高齢者のタンパク摂取量と認知機能は正の相関を示すという報告(非特許文献2)などがある。また、食事からのアミノ酸摂取量と認知機能との関連を示す報告(特許文献1)もある。そのため、タンパク質摂取量およびアミノ酸摂取量は、認知症発症または認知機能に関わる重要な因子であると考えられる。さらに、認知機能の改善に対する食事からのメラトニンおよびトリプトファン摂取の効果が検討されている(非特許文献3)。また、リジン摂取が健康者の認知機能を改善するという報告や(特許文献2)、ADまたは不安様症状の改善に対するL-アルギニンまたはリシン摂取の効果を示唆する報告(非特許文献4~7)および作業記憶低下および認知機能低下の改善に対するチロシン摂取の改善を示唆する報告(非特許文献8)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2020/255743号
【特許文献2】欧州特許第2367547号(A1)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Alzheimers Dis. 32(2) 329-339(2012)
【非特許文献2】Am. J. Clin. Nutr. 65(1) 20-29(1997)
【非特許文献3】Angro Food Industry Hi-Tech 22 (4) 23-24 (2011)
【非特許文献4】The American Journal of Medicine 108 (5) 439 (2000 Apr 1)
【非特許文献5】Neuropsychiatric Disease and Treatment 6 707-710 (2010)
【非特許文献6】Biomedical Research 28 (2) 85-90 (2007)
【非特許文献7】J. Nutr. 132 (12) 3744-3746 (2002)
【非特許文献8】Amino Acids 45 (5) 1035-1045 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した報告の中には、認知機能低下に対し十分な予防または改善の効果があるとはいえないものおよび有効性の検証が必要なものが存在する。さらに、睡眠習慣が考慮された上での、食物からのアミノ酸摂取量と認知機能低下との関連については、未だ明らかになっていない。
【0007】
本発明は、例えば評価対象とする食物が睡眠に課題がある人における認知機能低下リスクと関連するものか等に関する情報を提供することができる評価方法、算出方法、評価装置、算出装置、評価プログラム、算出プログラム、記録媒体、評価システムおよび端末装置、睡眠に課題がある人における認知機能低下リスクを知る上で参考となり得る信頼性の高い情報を提供することができる評価方法、ならびに、睡眠に課題がある人における認知機能低下リスクを抑制するための情報を提供することができる情報提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(National Institute for Longevity Science - Longitudinal Study of Aging : NILS-LSA)のデータを用いて睡眠時間と認知機能に関連があるかを先行研究(実施例1に記載した文献1および文献2)と同様に解析することにより睡眠習慣と認知機能との関連性を評価し、その後、睡眠時間の特性別に分けた集団に対して、認知機能に関する臨床評価指標と栄養摂取情報との関連、当該臨床評価指標と食事中のアミノ酸関連情報との関連、及び当該臨床評価指標と同一タンパク質摂取量中におけるアミノ酸関連情報との関連を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる評価方法は、12種類のアミノ酸(Ile、Leu、Cys、Phe、Tyr、Trp、Val、Arg、Ala、Asp、Pro、およびSer)のうちの少なくとも1つのアミノ酸の食物中の量の値である第一の値、または、前記第一の値が代入される変数を含む式と前記第一の値とを用いて算出された前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価する評価ステップを含むこと、を特徴とする。
【0010】
ここで、本明細書では各種アミノ酸を主に略称で表記するが、それらの正式名称は以下の通りである。
(略称) (正式名称)
AAA Aromatic amino acids (Tyrosine and Phenylalanine)
Ala Alanine
Arg Arginine
Asp Aspartic acid and Asparagine
BCAA Branched-chain amino acids (Isoleucine, Leucine and Valine)
Cys Cystine
Glu Glutamic acid and Glutamine
Gly Glycine
His Histidine
Ile Isoleucine
Leu Leucine
Lys Lysine
Met Methionine
Phe Phenylalanine
Pro Proline
SAA Sulfur-containing amino acids (Methionine and Cystine)
Ser Serine
Thr Threonine
Trp Tryptophan
Tyr Tyrosine
Val Valine
Hypro Hydroxyproline
【0011】
なお、本発明にかかる評価方法において、前記評価ステップでは、前記第一の値と前記食物中のエネルギー、たんぱく質、脂質、および炭水化物の量の値のうちの少なくとも1つの値である第二の値とを用いてもよく、また、前記第一の値が代入される変数と前記第二の値が代入される変数とを含む式と前記第一の値と前記第二の値とを用いて算出された前記式の値を用いてもよい。
【0012】
また、本発明にかかる評価方法は、前記評価ステップで得られた評価結果に応じた将来の認知機能低下リスクを下げるためのアドバイス情報を作成する作成ステップをさらに含んでもよい。
【0013】
また、本発明にかかる評価方法は、ユーザの睡眠習慣情報を基に、当該ユーザが、認知機能維持の観点から睡眠に課題がある人かを特定する特定ステップをさらに含んでもよく、また、本発明にかかる評価方法において、前記食物は、前記特定ステップで、認知機能維持の観点から睡眠に課題がある人と特定された前記ユーザに紐づくものでもよい。
【0014】
また、本発明にかかる評価方法において、睡眠に課題があるとは、睡眠の量または質に課題があるということでもよく、また、前記睡眠習慣情報は、睡眠の量または質に関する情報でもよい。
【0015】
また、本発明にかかる評価方法において、前記食物は、一定期間分の食事に相当するものでもよい。
【0016】
また、本発明にかかる評価方法において、前記特定ステップ、前記評価ステップ、および前記作成ステップは、制御部を備えた情報処理装置の前記制御部において実行されてもよい。
【0017】
また、本発明にかかる算出方法は、前記第一の値、および、前記第一の値が代入される変数を含む、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価するための式を用いて、前記式の値を算出する算出ステップを含むこと、を特徴とする。
【0018】
なお、本発明にかかる算出方法において、前記算出ステップは、制御部を備えた情報処理装置の前記制御部において実行されてもよい。
【0019】
また、本発明にかかる評価装置は、制御部を備える評価装置であって、前記制御部は、前記第一の値、または、前記第一値が代入される変数を含む式と前記第一の値とを用いて算出された前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価する評価手段を備えること、を特徴とする。
【0020】
なお、本発明にかかる評価装置は、端末装置とネットワークを介して通信可能に接続されてもよく、前記制御部は、前記第一の値を算出するための情報、前記情報を用いて算出された前記第一の値、または前記式の値を受信するデータ受信手段と、前記評価手段で得られた結果を前記端末装置へ送信する結果送信手段と、をさらに備えてもよく、前記評価手段は、(1)前記データ受信手段で前記情報を受信した場合、受信した前記情報を用いて前記第一の値を算出する処理、または、受信した前記情報を用いて前記第一の値を算出し、算出した前記第一の値と前記式とを用いて前記式の値を算出する処理を実行し、前記処理で得られた前記第一の値または前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価し、(2)前記データ受信手段で前記第一の値または前記式の値を受信した場合、受信した前記第一の値または前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価してもよい。
【0021】
また、本発明にかかる算出装置は、制御部を備える算出装置であって、前記制御部は、前記第一の値、および、前記第一の値が代入される変数を含む、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価するための式を用いて、前記式の値を算出する算出手段を備えること、を特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかる評価プログラムは、制御部を備える情報処理装置において実行させるための評価プログラムであって、前記制御部において実行させるための、前記第一の値、または、前記第一の値が代入される変数を含む式と前記第一の値とを用いて算出された前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価する評価ステップを含むこと、を特徴とする。
【0023】
また、本発明にかかる算出プログラムは、制御部を備える情報処理装置において実行させるための算出プログラムであって、前記制御部において実行させるための、前記第一の値、および、前記第一の値が代入される変数を含む、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価するための式を用いて、前記式の値を算出する算出ステップを含むこと、を特徴とする。
【0024】
また、本発明にかかる記録媒体は、前記評価プログラムまたは前記算出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。具体的には、本発明にかかる記録媒体は、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、情報処理装置に前記評価方法または前記算出方法を実行させるためのプログラム化された命令を含むこと、を特徴とするものである。
【0025】
また、本発明にかかる評価システムは、制御部を備える評価装置と制御部を備える端末装置とをネットワークを介して通信可能に接続して構成される評価システムであって、前記端末装置の前記制御部は、前記評価装置から送信された、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から食物を評価した結果を受信する結果受信手段を備え、前記評価装置の前記制御部は、前記第一の値を算出するための情報、前記情報を用いて算出された前記第一の値、または、前記第一の値が代入される変数を含む式と前記第一の値とを用いて算出された前記式の値を受信するデータ受信手段と、(1)前記データ受信手段で前記情報を受信した場合、受信した前記情報を用いて前記第一の値を算出する処理、または、受信した前記情報を用いて前記第一の値を算出し、算出した前記第一の値と前記式とを用いて前記式の値を算出する処理を実行し、前記処理で得られた前記第一の値または前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価し、(2)前記データ受信手段で前記第一の値または前記式の値を受信した場合、受信した前記第一の値または前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価する評価手段と、前記評価手段で得られた前記結果を前記端末装置へ送信する結果送信手段と、を備えること、を特徴とする。
【0026】
また、本発明にかかる端末装置は、制御部を備えた端末装置であって、前記制御部は、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から食物を評価した結果を取得する結果取得手段を備え、前記結果は、前記第一の値、または、前記第一の値が代入される変数を含む式と前記第一の値とを用いて算出された前記式の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価した結果であること、を特徴とする。
【0027】
なお、本発明にかかる端末装置は、前記評価を行う評価装置とネットワークを介して通信可能に接続されてもよく、前記結果取得手段は、前記評価装置から送信された前記結果を受信してもよい。
【0028】
また、本発明にかかる評価方法は、10種類の食品群(穀類、砂糖及び甘味類、豆類、種実類、その他の野菜、きのこ類、魚介類、肉類、卵類、および乳類)のうちのいずれか1つの食品群に属する食物における、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つのアミノ酸の過不足に関する情報を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から前記食物を評価する評価ステップを含むこと、を特徴とする。
【0029】
また、本発明にかかる評価方法は、前記第一の値、または、前記第一の値が代入される変数を含む式と前記第一の値とを用いて算出された前記式の値を用いて、睡眠に課題がある評価対象の認知機能低下リスクを評価する評価ステップを含むこと、を特徴とする。
【0030】
また、本発明にかかる情報提供方法は、ユーザの睡眠習慣情報を基に、当該ユーザが、認知機能維持の観点から睡眠に課題がある人かを特定する特定ステップと、前記特定ステップで、認知機能維持の観点から睡眠に課題がある人と特定された前記ユーザに、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つのアミノ酸または当該アミノ酸を含む食物に関する推奨情報を提供する提供ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明にかかる評価方法等よれば、例えば評価対象とする食物が睡眠に課題がある人における認知機能低下リスクと関連するものか等に関する情報を提供することができるという効果を奏する。また、本発明にかかる評価方法よれば、睡眠に課題がある人における認知機能低下リスクを知る上で参考となり得る信頼性の高い情報を提供することができるという効果を奏する。また、本発明にかかる情報提供方法よれば、睡眠に課題がある人における認知機能低下リスクを抑制するための情報を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、第1実施形態の基本原理を示す原理構成図である。
図2図2は、第2実施形態の基本原理を示す原理構成図である。
図3図3は、本システムの全体構成の一例を示す図である。
図4図4は、本システムの全体構成の他の一例を示す図である。
図5図5は、本システムの評価装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、アミノ酸関連データファイル106aに格納される情報の一例を示す図である。
図7図7は、指標状態情報ファイル106bに格納される情報の一例を示す図である。
図8図8は、指定指標状態情報ファイル106cに格納される情報の一例を示す図である。
図9図9は、式ファイル106d1に格納される情報の一例を示す図である。
図10図10は、評価結果ファイル106eに格納される情報の一例を示す図である。
図11図11は、評価部102dの構成を示すブロック図である。
図12図12は、本システムのクライアント装置200の構成の一例を示すブロック図である。
図13図13は、本システムのデータベース装置500の構成の一例を示すブロック図である。
図14図14は、GEE(Generalized Estimating Equations)解析の結果を示す図である。
図15図15は、エネルギー摂取量並びにたんぱく質、脂質、及び炭水化物の摂取量を評価した解析結果を示す図である。
図16図16は、食事からのアミノ酸摂取量を評価した解析結果を示す図である。
図17図17は、食事からのアミノ酸摂取量を評価した解析結果を示す図である。
図18図18は、食事からのアミノ酸摂取量を評価した解析結果を示す図である。
図19図19は、食事からのアミノ酸摂取量を評価した解析結果を示す図である。
図20図20は、長睡眠時間群における各アミノ酸摂取量の分位点を示す図である。
図21図21は、長睡眠時間群における各アミノ酸摂取量の標準偏差を示す図である。
図22図22は、Q1群の最大摂取量として考えられるデータの範囲を示す図である。
図23図23は、Q1群の最大摂取量として考えられるデータの範囲を示す図である。
図24図24は、体重情報に基づくアミノ酸摂取範囲を示す図である。
図25図25は、体重情報に基づくアミノ酸摂取範囲を示す図である。
図26図26は、GEE解析の結果を示す図である。
図27図27は、統計的仮説検定の実施結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明にかかる評価方法、算出方法、および情報提供方法等の実施形態(第1実施形態)ならびに本発明にかかる評価装置、算出装置、評価方法、算出方法、評価プログラム、算出プログラム、記録媒体、評価システム、および端末装置等の実施形態(第2実施形態)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施形態により限定されるものではない。
【0034】
[第1実施形態]
ここでは、第1実施形態について図1を参照して説明する。図1は第1実施形態の基本原理を示す原理構成図である。
【0035】
まず、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つのアミノ酸の食物中の量の値(第一の値)に関するアミノ酸関連データを取得する(ステップS11)。なお、当該食物中のエネルギー、たんぱく質、脂質、および炭水化物の量の値のうちの少なくとも1つの値(第二の値)に関する栄養関連データをさらに取得してもよい。また、当該食物中のアミノ酸の量に関する算出ができずに第一の値が得られない場合において、当該食物が10種類の食品群(「穀類」、「砂糖及び甘味類」、「豆類」、「種実類」、「その他の野菜」、「きのこ類」、「魚介類」、「肉類」、「卵類」、および「乳類」)のうちのいずれか1つの食品群に属するときは、当該食物における前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つのアミノ酸の過不足に関する情報(アミノ酸過不足データ)を得てもよい(後述する実施例8参照)。
【0036】
ここで、食物には、食事(メニュー)、食材、アミノ酸を含む組成物等が含まれる。また、食物は、睡眠に課題があるユーザ(例えば認知機能維持の観点から睡眠に課題があるユーザ等)に紐づくもの(例えば、ユーザが実際に摂取した一回分または一定期間分のもの、ユーザが購入したもの、またはユーザが購入検討中のもの、など)でよい。また、食事は、一回分の食事(例えば、朝食、昼食または夕食など)に相当するものに限らず、一定期間(例えば3日間、1週間または1か月など)分の食事に相当するものであってもよく、睡眠に課題があるユーザ(例えば、家族などの集団の構成員などの個人、など)の食事傾向、食事習慣または食事(食生活)パターンに相当するものなどであってもよい。また、食事は、1週間分のトータルの食事、1月分のトータルの食事、1週間あたりの1日平均に相当する食事、または、1月あたりの1日平均に相当する食事、などであってもよい。また、食事について、睡眠に課題があるユーザが実際に摂取したものかは問わない。
【0037】
また、量は、例えば、含有量、摂取量、アミノ酸スコアまたはアミノ酸スコア(充足率)などを含んでもよい。ここで、アミノ酸スコアとは、食物中の必須アミノ酸の含有比率を評価するための指標であり、例えばその値が100に近いほど良質なタンパク質を含む食物であることを意味する。アミノ酸スコアの概念には、具体的には、1)基準とする必須アミノ酸パターン(例えば、1985年にFAO/WHO/UNUにより提案されたアミノ酸基準値)と各食品たんぱく質中の必須アミノ酸の比率を比較したときの最も数値の低いアミノ酸(第一制限アミノ酸)の数値、2)たんぱく質の消化性で補正を行ったたんぱく質消化性補正アミノ酸スコア(PDCAAS:Protein Digestibility Corrected Amino Acid Score)(「“Protein quality evaluation : report of the Joint FAO/WHO Expert Consultation, Bethesda, Md., USA 4-8 December 1989”, FAO food and nutrition paper ; 51, Food and Agriculture Organization of the United Nations, 1991」を参照)、3)個々の必須アミノ酸の消化吸収率(回腸までの消化吸収率)で補正を行った消化性不可欠アミノ酸スコア(DIAAS, Digestible Indispensable Amino Acid Score)(「“Dietary protein quality evaluation in human nutrition : report of an FAO expert consultation, 31 March-2 April, 2011, Auckland, New Zealand”, FAO food and nutrition paper, 92, Food and Agriculture Organization of the United Nations, 2013」を参照)、などが含まれる。アミノ酸スコア(充足率)とは、基準アミノ酸(例えば、1985年にFAO/WHO/UNUにより提案されたアミノ酸基準値)に対する各アミノ酸の割合を意味する。
【0038】
また、量の値(具体的には第一の値および第二の値)は、例えば、食物に関する情報から算出したものでもよい。食物に関する情報は、例えば、1)食事または食材等の写真、2)食事または食事を構成する食材等に関する購買データ(例えばPOS(Point Of Sales)データなど)または電子決済データ、3)食事内容の説明に関する文字情報(例えばスマートフォンやタブレット端末などの電子機器を用いて入力されたものなど)、または、4)料理のジャンルに関する複数の選択肢(例えば「和食」「洋食」「中華」など)を含む画面においてユーザ(例えば睡眠に課題があるユーザなど)により選択された選択肢に分類される料理に関する複数の選択肢(例えば「和食」に分類される「とんかつ」「しゃぶしゃぶ」など)を含む画面がスマートフォンやタブレット端末などの電子機器が有するモニタに表示されている状態において当該ユーザにより選択された料理に関する情報(例えば料理に使用される食材およびその分量(例えば重さなど)など)、などでもよい。例えば、食物に関する情報が食事の写真(具体的には、摂取した一食分の食事の写真、または、一日または数日など任意の期間に摂取した食事の写真、など)である場合、量の値は、例えば3日間食事秤量法(「今井具子ら,3日間食事記録調査における写真撮影の有効性,日本食生活学会誌,2009,20(3):203-210.」)などの手法を基に食事の写真から求めたものでもよい。また、例えば、食物に関する情報が購買実績データ(例えば小売店側のPOSシステムから提供されたものなど)または購買検討データ(例えばネットショッピングで買い物かごに入っているものなど)の場合、量の値は、購入したものまたは購入検討中のものを食事として摂取したと仮定して推定した食材中のアミノ酸等の量の値またはその値に補正を加えて計算した値でもよい。
【0039】
つぎに、ステップS11で取得したアミノ酸関連データに含まれる第一の値を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から食物を評価する、または、睡眠に課題があるユーザ(例えば認知機能維持の観点から睡眠に課題があるユーザ等)の認知機能低下リスク(具体的には将来のリスク)を評価する(ステップS12)。なお、ステップS11でアミノ酸過不足データを取得した場合は、アミノ酸過不足データに含まれるアミノ酸の過不足に関する情報を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下の観点から食物を評価してもよい。
【0040】
ここで、睡眠に課題があるとは、例えば睡眠の量または質に課題があることであり、具体的には睡眠時間が長いまたは睡眠中に中途覚醒がみられることなどである。また、認知機能低下リスクは、例えば、睡眠に課題があるユーザ(例えば認知機能維持の観点から睡眠に課題があるユーザ等)が食物を摂取した時点より将来の認知機能低下リスク、であってもよい。また、睡眠に課題がある人の認知機能低下の観点から食物を評価するとは、例えば、評価対象とされる食物が、睡眠に課題がある人の認知機能低下リスクと関連するものか(例えば、評価対象とされる食物が、睡眠に課題がある人の認知機能低下リスクを高める可能性(リスク)があるものか、など)、または、睡眠に課題がある人の認知機能低下の観点からみて、評価対象とされる食物でアミノ酸の摂取量が充足されているか、などを評価することある。また、食物評価またはリスク評価の際に、例えば、アミノ酸摂取量と実施例に示したアミノ酸摂取量の閾値との比や差分等の情報を用いてもよく、また、アミノ酸摂取量の最小値または要約統計量(平均値等)の情報を用いてもよい。
【0041】
認知機能の低下とは、記憶力、注意力、遂行力、情報処理能力、または言語能力などで分類される能力が低下することである。たとえば、神経心理検査(MMSE(Mini-Mental State Examination)、MoCA(Montreal CognitiveAssessment)、FAB(Frontal Assessment Battery)、HDS-R(改訂 長谷川式簡易知能評価スケール)、WAISTM(ウェクスラー成人知能検査)、WMSTM-R(ウェクスラー記憶検査 改訂版)、CDR(臨床的認知症尺度)、ADAMS-Cog(Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale)、またはGDS(Geritaric Depression Scale(老年期うつ病評価尺度))等の検査結果から得られる値を使って認知機能の低下を判断してもよい。
【0042】
以上、第1実施形態によれば、例えば評価対象とする食物が睡眠に課題がある人における認知機能低下と関連するものか等に関する情報を提供したり、例えば睡眠に課題がある人における認知機能低下リスクを知る上で参考となり得る信頼性の高い情報等を提供したりすることができる。
【0043】
なお、ステップS11で栄養関連データを取得した場合、第一の値と栄養関連データに含まれる第二の値とを用いて、前記食物評価または前記リスク評価を行ってもよい。
【0044】
また、第一の値および当該値が代入される変数を含む式を用いて式の値を算出することで前記食物評価または前記リスク評価を行ってもよい。また、第一の値、第二の値、および第一の値が代入される変数と第二の値が代入される変数とを含む式を用いて、式の値を算出することで、前記食物評価または前記リスク評価を行ってもよい。
【0045】
また、前記食物評価または前記リスク評価で得られた評価結果を基に、当該評価結果に応じた認知機能低下リスク(具体的には将来のリスク)を下げるためのアドバイス情報(例えば、認知機能低下リスクを下げるための生活改善プログラムなどといった、指導または助言に関する情報、など)を作成してもよい。当該作成は、情報処理装置が備える制御部が実行してもよい。
【0046】
例えば、評価結果(例えば睡眠に課題がある人における認知機能低下との関連性という観点からみた食事内容の評価結果、または、睡眠に課題があるユーザの認知機能低下リスクの評価結果、など)を用いて、「当該評価結果に応じた、睡眠に課題がある人の食生活の改善に繋がる情報(例えば、食事のバランスに関する情報または献立・食材の提案に関する情報など)」または「当該評価結果に応じた、睡眠に課題がある人向けのソリューションに関する情報(例えば、食事指導、宅食サービスミールキットまたはサプリメントなどに関する情報)」を作成してもよい。
【0047】
また、例えば、評価結果を用いて、人の属性情報(例えば年齢、性別または家族構成など)、人の行動情報(例えば歩数、歩行速度、音声、視線または表情などに関するデジタルデータなど)または身体情報(例えば身長、体重、筋量、体脂肪量、臨床検査値、バイタルサイン、代謝物濃度情報または健康関連情報など)と連動させた「睡眠に課題がある人向けの健康プログラムに関する情報」または「フィットネスにおける、睡眠に課題がある人向けのプログラムに関する情報」を作成してもよい。
【0048】
また、例えば、評価結果と「例えば個人の属性情報(例えば年齢、性別または家族構成など)、個人の食事傾向、個人の食事習慣、個人の食生活パターン、または個人の嗜好性などに関する情報」とを組み合わせて、睡眠に課題がある個人にパーソナライズした情報を作成してもよい。また、例えば、評価結果を用いて、認知機能低下と関連する疾患リスク、寝たきり等の身体状態変化リスク、行動変化リスクまたは余命等の評価情報を作成してもよい。また、例えば、評価結果を用いて、保険会社における保険料計算または保険商品開発につながるまたは関連する、睡眠に課題がある人向けの情報を作成してもよい。
【0049】
また、睡眠に課題があるユーザ(例えば認知機能維持の観点から睡眠に課題があるユーザ等)は、当該ユーザの睡眠習慣情報(例えば、長時間睡眠の習慣があるまたは中途覚醒が多いなどといった、睡眠の量または質の情報)を基に特定されたものでもよい。つまり、ユーザの睡眠習慣情報を基に、当該ユーザが睡眠に課題がある人(例えば認知機能維持の観点から睡眠に課題がある人など)か、を特定してもよい。また、当該特定は、情報処理装置が備える制御部が実行してもよい。また、睡眠に課題がある人と特定されたユーザに、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つのアミノ酸または当該アミノ酸を含む食物に関する推奨情報を提供してもよい(この場合、前記食事評価および前記リスク評価は行わなくてもよい)。また、当該提供は、情報処理装置が備える制御部が実行してもよい。例えば、制御部を備える情報処理装置であって、制御部が、1)ユーザの睡眠習慣情報を取得する取得部と、2)取得したユーザの睡眠習慣情報を基に、当該ユーザが、認知機能維持の観点から睡眠に課題がある人かを特定する特定部と、3)特定部で、当該ユーザが認知機能維持の観点から睡眠に課題がある人と特定された場合に、前記12種類のアミノ酸のうちの少なくとも1つのアミノ酸または当該アミノ酸を含む食物に関する推奨情報を、当該ユーザの情報処理装置に送信する送信部と、を備えるもの、により、食物に関する推奨情報の提供を実現してもよい。
【0050】
また、第一の値または第一の値と第二の値の両方が閾値(例えば各アミノ酸別に設定された閾値および各栄養別に設定された閾値など)に達しているか判定し、閾値に達していないと判定された値に対応する「アミノ酸またはアミノ酸と栄養の両方」が多く含まれる食物(例えば当該値に対応する「アミノ酸またはアミノ酸と栄養の両方」が当該閾値と当該値との差分以上含まれる食物など)に関する情報を検索し、検索した食物に関する情報を、睡眠に課題があるユーザに、睡眠に課題がある人における認知機能低下を抑制するための情報として提供してもよい(この場合、前記食事評価および前記リスク評価は行わなくてもよい)。ここで、「睡眠に課題がある人における認知機能低下を抑制する」には、例えば、睡眠に課題がある人を対象とした、認知機能の維持、認知症の予防、脳機能の維持または脳の健康維持などを行うことも含まれる。当該提供は、情報処理装置が備える制御部が実行してもよい。例えば、制御部を備える情報処理装置であって、制御部が、1)食物に関する情報を取得する取得部と、2)取得部で取得した食物に関する情報から量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)を算出する算出部と、3)算出部で算出した量の値が閾値に達しているか判定する判定部と、4)判定部で閾値に達していないと判定された量の値に対応するアミノ酸またはアミノ酸と栄養の両方が多く含まれる食物に関する情報を検索する検索部と、5)検索部で検索した食物に関する情報を、睡眠に課題があるユーザの情報処理装置に、睡眠に課題がある人における認知機能低下を抑制するための情報として送信する送信部と、を備えるもの、により、食物に関する情報の提供を実現してもよい。
【0051】
また、第一の値を前記食物評価または前記リスク評価の結果として扱ってもよい(第二の値と式の値についても同様)。また、第一の値を例えば以下の手法などで変換し、変換後の値を前記食物評価または前記リスク評価の結果として扱ってもよい(第二の値と式の値についても同様)。また、本明細書における第一の値は、量の値そのものであってもよく、また、量の値を変換した後の値であってもよい(第二の値と式の値についても同様)。ここで、変換の手法について、以下に説明する。なお、以下の説明は、第一の値を変換対象としたものであるが、第二の値と式の値に対しても同様である。
第一の値の取り得る範囲が所定範囲(例えば0.0から1.0までの範囲、0.0から10.0までの範囲、0.0から100.0までの範囲、又は-10.0から10.0までの範囲、など)に収まるようにするためなどに、例えば、第一の値に対して任意の値を加減乗除したり、第一の値を所定の変換手法(例えば、指数変換、対数変換、角変換、平方根変換、プロビット変換、逆数変換、Box-Cox変換、又はべき乗変換など)で変換したり、また、第一の値に対してこれらの計算を組み合わせて行ったりすることで、第一の値を変換してもよい。例えば、第一の値を指数としネイピア数を底とする指数関数の値(具体的には、認知機能評価指標の値が所定値である確率pを定義したときの自然対数ln(p/(1-p))が第一の値と等しいとした場合におけるp/(1-p)の値)をさらに算出してもよく、また、算出した指数関数の値を1と当該値との和で割った値(具体的には、確率pの値)をさらに算出してもよい。
また、特定の条件のときの変換後の値が特定の値となるように、第一の値を変換してもよい。例えば、特異度が80%のときの変換後の値が5.0となり且つ特異度が95%のときの変換後の値が8.0となるように第一の値を変換してもよい。
また、第一の値の分布を正規分布化した後、平均が50且つ標準偏差が10となるように第一の値を偏差値化してもよい。
なお、これらの変換は、男女別や年齢別に行ってもよい。
【0052】
また、モニタ等の表示装置又は紙等の物理媒体に視認可能に示される所定の物差し上における所定の目印の位置に関する位置情報を、第一の値又は当該値を変換した場合にはその変換後の値を用いて生成し、生成した位置情報が前記食物評価または前記リスク評価の結果であると決定してもよい(第二の値と式の値についても同様)。なお、所定の物差しとは、前記食物評価または前記リスク評価を行うためのものであり、例えば、目盛りが示された物差しであって、「第一の値又は変換後の値の取り得る範囲、又は、当該範囲の一部分」における上限値と下限値に対応する目盛りが少なくとも示されたもの、などである(第二の値と式の値についても同様)。また、所定の目印とは、第一の値又は変換後の値に対応するものであり、例えば、丸印又は星印などである(第二の値と式の値についても同様)。
【0053】
また、第一の値が、所定値(平均値±1SD(Standard Deviation:標準偏差)、2SD、3SD、N分位点、Nパーセンタイル又は臨床的意義の認められたカットオフ値など)より低い若しくは所定値以下の場合又は所定値以上若しくは所定値より高い場合に、前記食物評価または前記リスク評価を行ってもよい(第二の値と式の値についても同様)。その際、第一の値そのものではなく偏差値を用いてもよい(第二の値と式の値についても同様)。例えば、偏差値が平均値-2SD未満の場合(偏差値<30の場合)又は偏差値が平均値+2SDより高い場合(偏差値>70の場合)に、前記評価を行ってもよい(第二の値と式の値についても同様)。
【0054】
また、評価対象の食物が、睡眠に課題がある人における認知機能低下と関連するものかを定性的に評価してもよい。例えば、「量の値(具体的には第一の値および第二の値のうちいずれか一方または両方)および予め設定された1つまたは複数の閾値」、「量の値(具体的には第一の値および第二の値のうちいずれか一方または両方)、当該値が代入される変数を含む式、および予め設定された1つまたは複数の閾値」、または「アミノ酸過不足データに含まれる過不足に関する情報」を用いて、睡眠に課題がある人における認知機能低下との関連性の程度を少なくとも考慮して定義された複数の区分のうちのどれか1つに、評価対象の食物を分類してもよい。なお、複数の区分には、関連性が高い対象を属させるための区分、関連性が低い対象を属させるための区分および関連性が中程度である対象を属させるための区分が含まれてもよい。また、複数の区分には、関連性が高い対象を属させるための区分および関連性が低い対象を属させるための区分が含まれてもよい。また、量の値または式の値を所定の手法で変換し、変換後の値を用いて、評価対象の食物を複数の区分のうちのどれか1つに分類してもよい。
【0055】
また、睡眠に課題がある評価対象の認知機能低下リスクを定性的に評価してもよい。例えば、「量の値(具体的には第一の値および第二の値のうちいずれか一方または両方)および予め設定された1つまたは複数の閾値」または「量の値(具体的には第一の値および第二の値のうちいずれか一方または両方)、当該値が代入される変数を含む式、および予め設定された1つまたは複数の閾値」を用いて、認知機能低下リスクの程度を少なくとも考慮して定義された複数の区分のうちのどれか1つに、評価対象のユーザを分類してもよい。なお、複数の区分には、リスクが高い対象を属させるための区分、リスクが低い対象を属させるために区分およびリスクが中程度の対象を属させるための区分が含まれてもよい。また、複数の区分には、リスクが高い対象を属させるための区分およびリスクが低い対象を属させるために区分が含まれてもよい。また、量の値または式の値を所定の手法で変換し、変換後の値を用いて、評価対象のユーザを複数の区分のうちのどれか1つに分類してもよい。
【0056】
また、前記食物評価または前記リスク評価の際に用いる式について、その形式は特に問わないが、例えば、以下に示す形式のものでもよい。
・最小二乗法に基づく重回帰式、線形判別式、主成分分析、正準判別分析などの線形モデル
・最尤法に基づくロジスティック回帰、Cox回帰などの一般化線形モデル
・一般化線形モデルに加えて個体間差、施設間差などの変量効果を考慮した一般化線形混合モデル
・一般化線形モデルにおけるスコア方程式を多次元に拡張した一般化推定方程式
・K-means法、階層的クラスタ解析などクラスタ解析で作成された式
・MCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ法)、ベイジアンネットワーク、階層ベイズ法などベイズ統計に基づき作成された式
・サポートベクターマシンや決定木などクラス分類により作成された式
・分数式など上記のカテゴリに属さない手法により作成された式
・異なる形式の式の和で示されるような式
【0057】
また、前記食物評価または前記リスク評価の際に用いる式を、例えば、本出願人による国際出願である国際公開第2004/052191号に記載の方法又は本出願人による国際出願である国際公開第2006/098192号に記載の方法で作成してもよい。なお、これらの方法で得られた式であれば、前記食物評価または前記リスク評価を行うのに好適に用いることができる。
【0058】
ここで、重回帰式、多重ロジスティック回帰式、正準判別関数などにおいては各変数に係数及び定数項が付加されるが、この係数及び定数項は、好ましくは実数であれば構わず、より好ましくは、データから前記の各種分類を行うために得られた係数及び定数項の99%信頼区間の範囲に属する値であれば構わず、さらに好ましくは、データから前記の各種分類を行うために得られた係数及び定数項の95%信頼区間の範囲に属する値であれば構わない。また、各係数の値及びその信頼区間は、それを実数倍したものでもよく、定数項の値及びその信頼区間は、それに任意の実定数を加減乗除したものでもよい。ロジスティック回帰式、線形判別式、重回帰式などを評価の際に用いる場合、線形変換(定数の加算、定数倍)及び単調増加(減少)の変換(例えばlogit変換など)は評価性能を変えるものではなく変換前と同等であるので、これらの変換が行われた後のものを用いてもよい。
【0059】
また、分数式とは、当該分数式の分子が変数A,B,C,・・・の和で表わされ及び/又は当該分数式の分母が変数a,b,c,・・・の和で表わされるものである。また、分数式には、このような構成の分数式α,β,γ,・・・の和(例えばα+βのようなもの)も含まれる。また、分数式には、分割された分数式も含まれる。なお、分子や分母に用いられる変数にはそれぞれ適当な係数がついても構わない。また、分子や分母に用いられる変数は重複しても構わない。また、各分数式に適当な係数がついても構わない。また、各変数の係数の値や定数項の値は、実数であれば構わない。ある分数式と、当該分数式において分子の変数と分母の変数が入れ替えられたものとでは、目的変数との相関の正負の符号が概して逆転するものの、それらの相関性は保たれるが故に、評価性能も同等と見做せるので、分数式には、分子の変数と分母の変数が入れ替えられたものも含まれる。
【0060】
そして、前記食物評価または前記リスク評価を行う際、量の値(具体的には第一の値および第二の値)以外に、例えば以下の項目に関する情報などをさらに用いても構わない。また、前記食物評価または前記リスク評価を行う際に用いる式には、量の値(具体的には第一の値および第二の値)が代入される変数以外に、例えば以下に挙げた項目に関する値などが代入される1つ又は複数の変数がさらに含まれてもよい。
・無機質およびビタミン
・五大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質、無機質、およびビタミン)を細分化した複数の栄養素
・三色食品群という食品分類法で定義される3つの食品群(「赤」に分類される食品群、「黄」に分類される食品群および「緑」に分類される食品群)
・基礎食品群という食品分類法で定義される6つの食品群(1群から6群)
・属性情報(例えば年齢、性別または家族構成など)、身体情報(例えば身長、体重、筋量、体脂肪量、臨床検査値、バイタルサイン、代謝物濃度など)、健康情報(例えば健康に関連する情報など)、食事または生活に関する調査情報(例えば食事または生活に対する悩みについての調査結果を含むものなど)、行動情報(例えば歩数、歩行速度、音声、視線または表情などに関するデジタルデータ)
【0061】
[第2実施形態]
[2-1.第2実施形態の概要]
ここでは、第2実施形態の概要について図2を参照して説明する。図2は第2実施形態の基本原理を示す原理構成図である。なお、本第2実施形態の説明では、上述した第1実施形態と重複する説明を省略する場合がある。特に、ここでは、前記食事評価または前記食物を行う際に式の値又はその変換後の値を用いるケースを一例として記載しているが、例えば、量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)またはその変換後の値を用いてもよい。
【0062】
制御部は、量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)および当該値が代入される変数を含む予め記憶部に記憶された式を用いて式の値を算出することで前記食物評価または前記リスク評価を行う(ステップS21)。これにより、例えば評価対象とする食物が睡眠に課題がある人における認知機能低下と関連するものか等に関する情報を提供したり、例えば睡眠に課題がある人における認知機能低下リスクを知る上で参考となり得る信頼性の高い情報等を提供したりすることができる。
【0063】
また、ステップS21で用いられる式は、以下に説明する式作成処理(工程1~工程4)に基づいて作成されたものでもよい。ここで、式作成処理の概要について説明する。なお、ここで説明する処理はあくまでも一例であり、式の作成方法はこれに限定されない。
【0064】
まず、制御部は、アミノ酸関連データと認知機能評価指標の値に関する指標データとを含む予め記憶部に記憶された指標状態情報(欠損値や外れ値などを持つデータが事前に除去されているものでもよい)から所定の式作成手法に基づいて、候補式(例えば、y=a1x1+a2x2+・・・+anxn、y:指標データ、xi:アミノ酸関連データ、ai:定数、i=1,2,・・・,n)を作成する(工程1)。
【0065】
なお、工程1において、指標状態情報から、複数の異なる式作成手法(主成分分析や判別分析、サポートベクターマシン、重回帰分析、Cox回帰分析、ロジスティック回帰分析、k-means法、クラスター解析、決定木などの多変量解析に関するものを含む。)を併用して複数の候補式を作成してもよい。具体的には、指標状態情報に対して、複数の異なるアルゴリズムを利用して複数群の候補式を同時並行的に作成してもよい。例えば、異なるアルゴリズムを利用して判別分析およびロジスティック回帰分析を同時に行い、2つの異なる候補式を作成してもよい。また、主成分分析を行って作成した候補式を利用して指標状態情報を変換し、変換した指標状態情報に対して判別分析を行うことで候補式を作成してもよい。これにより、最終的に、前記評価に最適な式を作成することができる。
【0066】
ここで、主成分分析を用いて作成した候補式は、全てのアミノ酸関連データの分散を最大にするような各変数を含む一次式である。また、判別分析を用いて作成した候補式は、各群内の分散の和の全てのアミノ酸関連データの分散に対する比を最小にするような各変数を含む高次式(指数や対数を含む)である。また、サポートベクターマシンを用いて作成した候補式は、群間の境界を最大にするような各変数を含む高次式(カーネル関数を含む)である。また、重回帰分析を用いて作成した候補式は、全てのアミノ酸関連データからの距離の和を最小にするような各変数を含む高次式である。また、Cox回帰分析を用いて作成した候補式は、対数ハザード比を含む線形モデルで、そのモデルの尤度を最大とするような各変数とその係数を含む1次式である。また、ロジスティック回帰分析を用いて作成した候補式は、確率の対数オッズを表す線形モデルであり、その確率の尤度を最大にするような各変数を含む一次式である。また、k-means法とは、各アミノ酸関連データのk個近傍を探索し、近傍点の属する群の中で一番多いものをそのデータの所属群と定義し、入力されたアミノ酸関連データの属する群と定義された群とが最も合致するような変数を選択する手法である。また、クラスター解析とは、全てのアミノ酸関連データの中で最も近い距離にある点同士をクラスタリング(群化)する手法である。また、決定木とは、変数に序列をつけて、序列が上位である変数の取りうるパターンからアミノ酸関連データの群を予測する手法である。
【0067】
式作成処理の説明に戻り、制御部は、工程1で作成した候補式を、所定の検証手法に基づいて検証(相互検証)する(工程2)。候補式の検証は、工程1で作成した各候補式に対して行う。なお、工程2において、ブートストラップ法やホールドアウト法、N-フォールド法、リーブワンアウト法などのうち少なくとも1つに基づいて、候補式の判別率や感度、特異度、情報量基準、ROC_AUC(受信者特性曲線の曲線下面積)などのうち少なくとも1つに関して検証してもよい。これにより、指標状態情報や評価条件を考慮した予測性または頑健性の高い候補式を作成することができる。
【0068】
ここで、判別率とは、本実施形態にかかる評価手法で、真の状態が陰性である評価対象(例えば、睡眠に課題がある人における認知機能低下との関連性が低い食物など)を正しく陰性と評価し、真の状態が陽性である評価対象(例えば、睡眠に課題がある人における認知機能低下との関連性が高い食物など)を正しく陽性と評価している割合である。また、感度とは、本実施形態にかかる評価手法で、真の状態が陽性である評価対象を正しく陽性と評価している割合である。また、特異度とは、本実施形態にかかる評価手法で、真の状態が陰性である評価対象を正しく陰性と評価している割合である。また、赤池情報量規準とは、回帰分析などの場合に、観測データが統計モデルにどの程度一致するかを表す基準であり、「-2×(統計モデルの最大対数尤度)+2×(統計モデルの自由パラメータ数)」で定義される値が最小となるモデルを最もよいと判断する。また、ROC_AUCは、2次元座標上に(x,y)=(1-特異度,感度)をプロットして作成される曲線である受信者特性曲線(ROC)の曲線下面積として定義され、ROC_AUCの値は完全な判別では1となり、この値が1に近いほど判別性が高いことを示す。また、予測性とは、候補式の検証を繰り返すことで得られた判別率や感度、特異性を平均したものである。また、頑健性とは、候補式の検証を繰り返すことで得られた判別率や感度、特異性の分散である。
【0069】
式作成処理の説明に戻り、制御部は、所定の変数選択手法に基づいて候補式の変数を選択することで、候補式を作成する際に用いる指標状態情報に含まれるアミノ酸関連データの組み合わせを選択する(工程3)。なお、工程3において、変数の選択は、工程1で作成した各候補式に対して行ってもよい。これにより、候補式の変数を適切に選択することができる。そして、工程3で選択したアミノ酸関連データを含む指標状態情報を用いて再び工程1を実行する。また、工程3において、工程2での検証結果からステップワイズ法、ベストパス法、近傍探索法、遺伝的アルゴリズムのうち少なくとも1つに基づいて候補式の変数を選択してもよい。なお、ベストパス法とは、候補式に含まれる変数を1つずつ順次減らしていき、候補式が与える評価指標を最適化することで変数を選択する方法である。
【0070】
式作成処理の説明に戻り、制御部は、上述した工程1、工程2および工程3を繰り返し実行し、これにより蓄積した検証結果に基づいて、複数の候補式の中から評価の際に用いる候補式を選出することで、評価の際に用いる式を作成する(工程4)。なお、候補式の選出には、例えば、同じ式作成手法で作成した候補式の中から最適なものを選出する場合と、すべての候補式の中から最適なものを選出する場合とがある。
【0071】
以上、説明したように、式作成処理では、指標状態情報に基づいて、候補式の作成、候補式の検証および候補式の変数の選択に関する処理を一連の流れで体系化(システム化)して実行することにより、前記評価に最適な式を作成することができる。換言すると、式作成処理では、アミノ酸関連データを多変量の統計解析に用い、最適でロバストな変数の組を選択するために変数選択法とクロスバリデーションとを組み合わせて、評価性能の高い式を抽出する。
【0072】
[2-2.第2実施形態の構成]
ここでは、第2実施形態にかかる評価システム(以下では本システムと記す場合がある。)の構成について、図3から図14を参照して説明する。なお、本システムはあくまでも一例であり、本発明はこれに限定されない。特に、ここでは、前記食事評価または前記リスク評価を行う際に式の値又はその変換後の値を用いるケースを一例として記載しているが、例えば、量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)またはその変換後の値を用いてもよい。
【0073】
まず、本システムの全体構成について図3および図4を参照して説明する。図3は本システムの全体構成の一例を示す図である。また、図4は本システムの全体構成の他の一例を示す図である。本システムは、図3に示すように、前記食事評価または前記リスク評価を行う評価装置100と、食物に関する情報の一例である食事・食材等の写真または食事内容の説明に関する文字情報などを提供し且つ前記評価の結果などを受け取るユーザのクライアント装置200(本発明の端末装置に相当)とを、ネットワーク300を介して通信可能に接続して構成されている。ここで、図3に示すシステム構成において、クライアント装置200は、食事・食材等の写真または食事内容の説明に関する文字情報を用いて量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)を算出し、当該算出した値を提供してもよい。また、図3に示すシステム構成において、クライアント装置200は、食事・食材等の写真または食事内容の説明に関する文字情報を用いて量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)を算出し、当該算出した量の値および当該値が代入される変数を含む予め設定された式を用いて当該式の値を算出し、当該算出した式の値を提供してもよい。
【0074】
なお、本システムにおいて、評価に用いられるデータの提供元となるクライアント装置200と評価結果の提供先となるクライアント装置200は別々のものであってもよい。本システムは、図4に示すように、評価装置100と、前記評価の結果などを受け取るユーザのクライアント装置200と、食物に関する情報の一例である購買実績データを提供する小売店側のPOSシステム400とを、ネットワーク300を介して通信可能に接続して構成されてもよい。ここで、POSシステム400は、小売業等で使用されている一般的なものである。なお、図4に示すシステム構成において、POSシステム400は、購買実績データを用いて量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)を算出し、当該算出した値を提供する機能をさらに有するものであってもよい。
【0075】
また、図3または図4に示すシステム構成において、評価装置100で式を作成する際に用いる指標状態情報や評価の際に用いる式などを格納したデータベース装置500(図3,4には図示せず)がさらに備えられてもよい。
【0076】
つぎに、本システムの評価装置100の構成について図5から図11を参照して説明する。図5は、本システムの評価装置100の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0077】
評価装置100は、当該評価装置を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)等の制御部102と、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して当該評価装置をネットワーク300に通信可能に接続する通信インターフェース部104と、各種のデータベースやテーブルやファイルなどを格納する記憶部106と、入力装置112や出力装置114に接続する入出力インターフェース部108と、で構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0078】
通信インターフェース部104は、評価装置100とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信を媒介する。すなわち、通信インターフェース部104は、他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。
【0079】
入出力インターフェース部108は、入力装置112や出力装置114に接続する。ここで、出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる(なお、以下では、出力装置114をモニタ114として記載する場合がある。)。入力装置112には、キーボードやマウスやマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。
【0080】
記憶部106は、ストレージ手段であり、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置や、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等を用いることができる。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPUに命令を与え各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。記憶部106は、図示の如く、アミノ酸関連データファイル106aと、指標状態情報ファイル106bと、指定指標状態情報ファイル106cと、式関連情報データベース106dと、評価結果ファイル106eと、を格納する。
【0081】
アミノ酸関連データファイル106aは、第一の値に関するアミノ酸関連データを格納する。図6は、アミノ酸関連データファイル106aに格納される情報の一例を示す図である。アミノ酸関連データファイル106aに格納される情報は、図6に示すように、評価対象を一意に識別するための識別データと、アミノ酸関連データとを相互に関連付けて構成されている。ここで、図6では、アミノ酸関連データを数値、すなわち連続尺度として扱っているが、アミノ酸関連データは名義尺度や順序尺度でもよい。なお、名義尺度や順序尺度の場合は、それぞれの状態に対して任意の数値を与えることで解析してもよい。また、アミノ酸関連データに前記項目に関する情報を組み合わせてもよい。また、アミノ酸関連データファイル106aには、第二の値に関する栄養関連データをさらに格納してもよい。
【0082】
指標状態情報ファイル106bは、式を作成する際に用いる指標状態情報を格納する。図7は、指標状態情報ファイル106bに格納される情報の一例を示す図である。指標状態情報ファイル106bに格納される情報は、図7に示すように、識別データと、認知機能(例えば記憶力、注意力、遂行力、情報処理能力、または言語能力など)を評価するための指標(指標T1、指標T2、指標T3・・・)に関する指標データ(T)と、アミノ酸関連データと、を相互に関連付けて構成されている。ここで、図7では、指標データおよびアミノ酸関連データを数値(すなわち連続尺度)として扱っているが、指標データおよびアミノ酸関連データは名義尺度や順序尺度でもよい。なお、名義尺度や順序尺度の場合は、それぞれの状態に対して任意の数値を与えることで解析してもよい。
【0083】
指定指標状態情報ファイル106cは、後述する指定部102bで指定した指標状態情報を格納する。図8は、指定指標状態情報ファイル106cに格納される情報の一例を示す図である。指定指標状態情報ファイル106cに格納される情報は、図8に示すように、個体番号と、指定した指標データと、指定したアミノ酸関連データと、を相互に関連付けて構成されている。
【0084】
式関連情報データベース106dは、後述する式作成部102cで作成した式を格納する式ファイル106d1で構成される。式ファイル106d1は、評価の際に用いる式を格納する。図9は、式ファイル106d1に格納される情報の一例を示す図である。式ファイル106d1に格納される情報は、図9に示すように、ランクと、式と、各式作成手法に対応する閾値と、各式の検証結果(例えば各式の値)と、を相互に関連付けて構成されている。
【0085】
評価結果ファイル106eは、後述する評価部102dで得られた評価結果を格納する。図10は、評価結果ファイル106eに格納される情報の一例を示す図である。評価結果ファイル106eに格納される情報は、識別データと、アミノ酸関連データと、評価結果(例えば、後述する算出部102d1で算出した式の値、後述する変換部102d2で得られた変換後の値、後述する生成部102d3で生成した位置情報、又は、後述する分類部102d4で得られた分類結果、など)と、を相互に関連付けて構成されている。
【0086】
制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。制御部102は、図示の如く、大別して、取得部102aと指定部102bと式作成部102cと評価部102dと結果出力部102eと送信部102fとを備えている。制御部102は、指標状態情報やアミノ酸関連データに対して、欠損値のあるデータの除去・外れ値の多いデータの除去・欠損値のあるデータの多い変数の除去などのデータ処理を行ってもよい。
【0087】
取得部102aは、情報(具体的には、食物に関する情報、アミノ酸関連データ、栄養関連データ、指標状態情報、式、睡眠習慣情報、睡眠課題の有無情報など)を取得する。例えば、取得部102aは、クライアント装置200やPOSシステム400、データベース装置500から送信された情報(具体的には、食物に関する情報、アミノ酸関連データ、栄養関連データ、指標状態情報、式など)を、ネットワーク300を介して受信することで、情報の取得を行ってもよい。取得部102aは、評価結果の送信先のクライアント装置200とは異なるクライアント装置200から送信された評価に用いられるデータを受信してもよい。例えば、記録媒体に記録されている情報の読み出しを行うための機構(ハードウェアおよびソフトウェアを含む)を評価装置100が備える場合、取得部102aは、記録媒体に記録されている情報(具体的には、食物に関する情報、アミノ酸関連データ、栄養関連データ、指標状態情報、式など)を当該機構を介して読み出すことで、情報の取得を行ってもよい。また、睡眠課題の有無は通信インターフェース部104を通じて課題の有無を受信してもよいし、通信インターフェース部104を通じて受信した睡眠習慣情報から後述する評価部102dにて課題の有無を判断した結果を受信してもよい。
【0088】
指定部102bは、式を作成するにあたり対象とする指標データおよびアミノ酸関連データを指定する。
【0089】
式作成部102cは、取得部102aで取得した指標状態情報や指定部102bで指定した指標状態情報に基づいて式を作成する。式が予め記憶部106の所定の記憶領域に格納されている場合には、式作成部102cは、記憶部106から所望の式を選択することで、式を作成してもよい。式作成部102cは、式を予め格納した他のコンピュータ装置(例えばデータベース装置500)から所望の式を選択しダウンロードすることで、式を作成してもよい。
【0090】
評価部102dは、事前に得られた式(例えば、式作成部102cで作成した式、又は、取得部102aで取得した式など)および事前に得られた量の値(例えば、取得部102aで取得した第一の値または第一の値と第二の値の両方または評価部102dで算出した第一の値または第一の値と第二の値の両方など)を用いて式の値を算出することで前記評価を行う。評価部102dは、量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)又は当該値の変換後の値を用いて前記評価を行ってもよい。また、評価部102dは、睡眠習慣情報を用いて睡眠課題の有無を評価してもよい。
【0091】
ここで、評価部102dの構成について図11を参照して説明する。図11は、評価部102dの構成を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。評価部102dは、算出部102d1と変換部102d2と生成部102d3と分類部102d4とをさらに備えている。
【0092】
算出部102d1は、量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)および当該値が代入される変数を含む式を用いて、式の値を算出する。算出部102d1は、食物に関する情報(例えばPOSシステム400から送信された購買データ、クライアント装置200から送信された食事・食材等の写真、またはクライアント装置200から送信された食事の内容の説明に関する文字情報など)を用いて、量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)を算出してもよい。評価部102dは、算出部102d1で算出した値を評価結果として評価結果ファイル106eの所定の記憶領域に格納してもよい。
【0093】
変換部102d2は、算出部102d1で算出した式の値を例えば上述した変換手法などで変換する。評価部102dは、変換部102d2で変換した後の値を評価結果として評価結果ファイル106eの所定の記憶領域に格納してもよい。変換部102d2は、量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)を例えば上述した変換手法などで変換してもよい。
【0094】
生成部102d3は、モニタ等の表示装置又は紙等の物理媒体に視認可能に示される所定の物差し上における所定の目印の位置に関する位置情報を、算出部102d1で算出した式の値又は変換部102d2で変換した後の値(量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)又は当該値の変換後の値でもよい)を用いて生成する。評価部102dは、生成部102d3で生成した位置情報を評価結果として評価結果ファイル106eの所定の記憶領域に格納してもよい。
【0095】
分類部102d4は、算出部102d1で算出した式の値又は変換部102d2で変換した後の値(量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)又は当該値の変換後の値でもよい)を用いて、評価対象を前記複数の区分のうちのどれか1つに分類する。
【0096】
結果出力部102eは、制御部102の各処理部での処理結果(評価部102dで得られた評価結果を含む)等を出力装置114に出力する。
【0097】
送信部102fは、クライアント装置200に対して評価結果や食物に関する情報、量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)、式の値などの情報を送信したり、データベース装置500に対して評価装置100で作成した式や評価結果などの情報を送信したりする。なお、送信部102fは、評価に用いられるデータの送信元のクライアント装置200とは異なるクライアント装置200に対して評価結果を送信してもよい。
【0098】
つぎに、クライアント装置200の構成について図12を参照して説明する。図12は、クライアント装置200の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0099】
クライアント装置200は、制御部210とROM220とHD(Hard Disk)230とRAM240と入力装置250と出力装置260と入出力IF270と通信IF280とで構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。クライアント装置200は、例えば、既知のパーソナルコンピュータ・ワークステーション・家庭用ゲーム装置・インターネットTV・PHS(Personal Handyphone System)端末・携帯端末・移動体通信端末・PDA(Personal Digital Assistant)・スマートフォン・タブレット端末等の情報処理端末などを基にしたものであってもよい。
【0100】
入力装置250はキーボードやマウスやマイク等である。なお、後述するモニタ261もポインティングデバイス機能を実現する。出力装置260は、通信IF280を介して受信した情報を出力する出力手段であり、モニタ(家庭用テレビを含む)261を含む。この他、出力装置260にスピーカ等を設けてもよい。入出力IF270は入力装置250や出力装置260に接続する。なお、クライアント装置200は、カメラ等の撮像装置をさらに備えてもよい。
【0101】
通信IF280は、クライアント装置200とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)とを通信可能に接続する。
【0102】
制御部210は、送信部211および受信部212を備えている。送信部211は、通信IF280を介して、食物に関する情報の一例である食事・食材等の写真または食事内容の説明に関する文字情報などの情報を、評価装置100へ送信する。受信部212は、通信IF280を介して、評価装置100から送信された評価結果や食物に関する情報、量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)、式の値などの情報を受信する。
【0103】
制御部210は、当該制御部で行う処理の全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈して実行するプログラムで実現してもよい。ROM220またはHD230には、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。当該コンピュータプログラムは、RAM240にロードされることで実行され、CPUと協働して制御部210を構成する。また、当該コンピュータプログラムは、クライアント装置200と任意のネットワークを介して接続されるアプリケーションプログラムサーバに記録されてもよく、クライアント装置200は、必要に応じてその全部または一部をダウンロードしてもよい。また、制御部210で行う処理の全部または任意の一部を、ワイヤードロジック等によるハードウェアで実現してもよい。
【0104】
ここで、制御部210は、評価装置100に備えられている評価部102dが有する機能と同様の機能を有する評価部210a(算出部210a1、変換部210a2、生成部210a3、及び分類部210a4を含む)を備えていてもよい。例えば、評価部210aは、評価装置100から量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)または式の値を受信した場合には、変換部210a2で当該受信した値を変換したり、生成部210a3で当該受信した値又は変換後の値に対応する位置情報を生成したり、分類部210a4で当該受信した値又は変換後の値を用いて評価対象を前記複数の区分のうちのどれか1つに分類したりしてもよい。また、例えば、評価部210aは、評価装置100から量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)または式の値の変換後の値を受信した場合には、生成部210a3で当該受信した値に対応する位置情報を生成したり、分類部210a4で当該受信した値を用いて評価対象を複数の区分のうちのどれか1つに分類したりしてもよい。また、例えば、評価部210aは、評価装置100から量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)もしくは式の値または変換後の値と位置情報とを受信した場合には、分類部210a4で当該受信した値を用いて評価対象を複数の区分のうちのどれか1つに分類してもよい。
【0105】
つぎに、本システムのネットワーク300について図3図4を参照して説明する。ネットワーク300は、評価装置100とクライアント装置200とPOSシステム400とデータベース装置500(図3,4には図示せず)とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやイントラネットやLAN(Local Area Network)(有線/無線の双方を含む)等である。なお、ネットワーク300は、VAN(Value-Added Network)や、パソコン通信網や、公衆電話網(アナログ/デジタルの双方を含む)や、専用回線網(アナログ/デジタルの双方を含む)や、CATV(Community Antenna TeleVision)網や、携帯回線交換網または携帯パケット交換網(IMT(International Mobile Telecommunication)2000方式、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)方式またはPDC(Personal Digital Cellular)/PDC-P方式等を含む)や、無線呼出網や、Bluetooth(登録商標)等の局所無線網や、PHS網や、衛星通信網(CS(Communication Satellite)、BS(Broadcasting Satellite)またはISDB(Integrated Services Digital Broadcasting)等を含む)等でもよい。
【0106】
つぎに、本システムのデータベース装置500の構成について図13を参照して説明する。図13は、本システムのデータベース装置500の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0107】
データベース装置500は、評価装置100または当該データベース装置で式を作成する際に用いる指標状態情報や、評価装置100で作成した式、評価装置100での評価結果などを格納する機能を有する。図13に示すように、データベース装置500は、当該データベース装置を統括的に制御するCPU等の制御部502と、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回路を介して当該データベース装置をネットワーク300に通信可能に接続する通信インターフェース部504と、各種のデータベースやテーブルやファイル(例えばWebページ用ファイル)などを格納する記憶部506と、入力装置512や出力装置514に接続する入出力インターフェース部508と、で構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0108】
記憶部506は、ストレージ手段であり、例えば、RAM・ROM等のメモリ装置や、ハードディスクのような固定ディスク装置や、フレキシブルディスクや、光ディスク等を用いることができる。記憶部506には、各種処理に用いる各種プログラム等を格納する。通信インターフェース部504は、データベース装置500とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信を媒介する。すなわち、通信インターフェース部504は、他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。入出力インターフェース部508は、入力装置512や出力装置514に接続する。ここで、出力装置514には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。また、入力装置512には、キーボードやマウスやマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。
【0109】
制御部502は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。制御部502は、図示の如く、大別して、送信部502aと受信部502bを備えている。送信部502aは、指標状態情報や式などの各種情報を、評価装置100へ送信する。受信部502bは、評価装置100から送信された、式や評価結果などの各種情報を受信する。
【0110】
なお、本説明では、評価装置100が、アミノ酸関連データ等の取得から、式の値の算出、評価対象の区分への分類、そして評価結果の送信までを実行し、クライアント装置200が評価結果の受信を実行するケースを例として挙げたが、クライアント装置200に評価部210aが備えられている場合は、例えば量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)または式の値の算出、量の値(具体的には第一の値または第一の値と第二の値の両方)または式の値の変換、位置情報の生成、及び、評価対象の区分への分類などは、評価装置100とクライアント装置200とで適宜分担して実行してもよい。
【0111】
[2-3.他の実施形態]
本発明にかかる評価装置、算出装置、評価方法、算出方法、評価プログラム、算出プログラム、記録媒体、評価システム、および端末装置は、上述した第2実施形態以外にも、請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0112】
また、第2実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0113】
このほか、上記文献中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0114】
また、評価装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0115】
例えば、評価装置100が備える処理機能、特に制御部102にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、情報処理装置に本発明にかかる評価方法または算出方法を実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて評価装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部106などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0116】
また、このコンピュータプログラムは評価装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0117】
また、本発明にかかる評価プログラムまたは算出プログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)(登録商標)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0118】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0119】
記憶部106に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0120】
また、評価装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、評価装置100は、当該情報処理装置に本発明の評価方法または算出方法を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0121】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【実施例0122】
睡眠時間と認知機能低下リスクに関連があることは以下の文献1と文献2で明らかになっている。そこで、本実施例で用いるデータにおいても睡眠時間と認知機能に関連があることを確認するべく解析を実施した。ここで、文献1は、睡眠時間と平均8.8年後の認知症発症の有無に関して検討された研究に関するものである。文献1では、睡眠時間が5.0-6.9時間の人と比較して、睡眠時間が5時間未満の人、睡眠時間が8-9.9時間の人、および睡眠時間が10時間以上の人で認知症発症のリスクが高くなることが報告されている。また、文献2では、睡眠時間が5時間未満の人と9時間以上の人は認知機能検査のスコアが低いという結果が報告されており、さらに、普段の睡眠時間が5時間未満と回答した高齢の人は研究開始時点で既に認知機能検査の点数が低く、普段の睡眠時間が9時間以上と回答した人は3年後に認知機能が低下するリスクが高い、という結果が報告されている。
・文献1:Ohara T, Honda T, Hata J, et al. Association Between Daily Sleep Duration and Risk of Dementia and Mortality in a Japanese Community. J Am Geriatr Soc. 2018;66(10):1911-1918.
・文献2:Benito-Leon J, Louis ED, Bermejo-Pareja F. Cognitive decline in short and long sleepers: a prospective population-based study (NEDICES). J Psychiatr Res. 2013;47(12):1998-2003.
【0123】
NILS-LSA研究の3次調査(2002年5月~2004年5月)に参加した、認知機能が低下しておらず(認知機能評価指標であるMini Mental State Examination(MMSE)のスコアが27以下でなく)且つ60歳以上で且つ解析に必要なデータが揃った623名(年齢平均68.5歳、標準偏差5.7歳、年齢範囲は60-83歳)を解析対象とした。そして、解析対象となる623名を、3次調査で得た睡眠時間の情報に基づき、1日の睡眠時間が6時間未満の群(以下、短睡眠時間群と記す)、1日の睡眠時間が6時間より長く8時間未満の群(以下、通常睡眠時間群と記す)、および1日の睡眠時間が8時間より長い群(以下、長睡眠時間群と記す)の3群のうちのいずれかに分類した。なお、当該分類の際に用いた睡眠時間は活動量調査で得られたものだが、当該623名について、活動量調査で得られた睡眠時間と住民に対する自記式のアンケートに記載された睡眠時間との差分を計算したところ、平均0.52時間、標準偏差1.06時間の誤差が観察された。よって、睡眠時間の調査方法により誤差が生じる可能性があることから、当該分類にて採用した「6時間」および「8時間」といった境界値は、類似した値(例えば、当該誤差を考慮した値(具体的には当該境界値の前後1時間以内の値など)など)に置き換えることも可能と考えられる。
【0124】
この睡眠時間に関する群を説明変数とし、NILS-LSA研究の4次調査(2004年6月~2006年6月)、5次調査(2006年7月~2008年6月)、6次調査(2008年7月~2010年6月)、および7次調査(2010年7月~2012年7月)で得た認知機能低下の有無(MMSEのスコアが27以下を認知機能低下と定義)を目的変数とした一般化推定方程式(Generalized Estimating Equations(GEE))を用いて、3次調査時点の睡眠時間と3次調査後の認知機能低下の経時的な関係について評価を行った。なお、本実施例では、3次調査時点から8年後(すなわち7次調査時点)の認知機能低下の状態を評価するのではなく、認知機能低下の状態について3次調査後どのような推移が起きるかといった、認知機能低下の経時的な傾向を評価するため、GEEを解析手法として選択した。
【0125】
当該GEEの解析において、以下に列挙した11項目に関する説明変数が当該GEEに影響を調整する共変量として追加された追加モデル1と、脳血管障害の有無、高血圧の有無、虚血性心疾患の有無、脂質異常症の有無、および糖尿病の罹患の有無に関する説明変数が当該追加モデル1に影響を調整する共変量として追加された追加モデル2の解析も行った。なお、統計的仮説検定は有意水準両側5%で実施した。
・経過年数、性、年齢、BMI(Body Mass Index)、MMSE、CES-D(The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(うつ病自己評価尺度))、教育歴(0~7年/8~15年/16年以上の3群)、喫煙の有無、仕事の有無、催眠鎮静剤または抗不安剤の内服の有無、及び総身体活動量(METs-min/day)
【0126】
解析結果を図14に示す。通常睡眠時間群の将来の認知機能低下リスクに対して、短睡眠時間群の将来の認知機能低下リスクと長睡眠時間群の将来の認知機能低下リスクを評価したところ、いずれの解析モデルにおいても、長睡眠時間群において認知機能低下リスクが有意に上昇することが明らかとなった。以上の解析から、本実施例で用いるデータにおいても睡眠時間と認知機能に関連があることが確認できた。
【0127】
実施例2以降は、将来の認知機能低下と関連が見られた長睡眠時間群と、短睡眠時間群と通常睡眠時間群からなる短・通常睡眠時間群の2群で睡眠に関する特性の検討を実施する。
【実施例0128】
NILS-LSAの3次調査において、長睡眠時間群と短・通常睡眠時間群の群間に睡眠に関する特性の差があるか評価を行うため、両側有意水準5%のカイ二乗検定を用いて群間比較を行った。睡眠の課題の一例として中途覚醒の有無について検討を行った。「夜中に目が覚めて、眠れなくなることがよくある」という問いに対し、「はい」と回答した場合を中途覚醒あり、「いいえ」と回答した場合を中途覚醒なしと定義した。短・通常睡眠時間群では446名中146名(32.7%)に睡眠中の中途覚醒が見られたが、長睡眠時間群では177名中85名(48.0%)に睡眠中の中途覚醒が見られ、長睡眠時間群の割合は短・通常睡眠時間群の割合に対し有意に高いことが明らかったとなった(P=0.0004)。このことから、長睡眠時間群は睡眠に課題がある集団としても解釈が可能と考えられた。
【実施例0129】
NILS-LSAの3次調査において、長睡眠時間群と短・通常睡眠時間群の群間に、エネルギー摂取量、エネルギー産生に関連するたんぱく質、脂質、及び炭水化物の摂取量、並びに食事からのアミノ酸摂取量(具体的には以下に列挙した19種類のアミノ酸の摂取量)に差があるか評価を行った。これらの摂取量は、栄養士が、3次調査期間中の連続する3日間(平日2日間と休日1日)に各人が実際に摂取した各日の食事の写真(各人が摂取前に撮ったもの)から、3日間食事秤量法(「今井具子ら,3日間食事記録調査における写真撮影の有効性,日本食生活学会誌,2009,20(3):203-210.」)に基づき推定した。なお、これらの摂取量の評価について、1日総量の評価を行うだけでなく、朝食、昼食、夕食それぞれの摂取量の評価も行った。
・イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン、アルギニン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、及びヒドロキシプリン
【0130】
エネルギー摂取量並びにたんぱく質、脂質、及び炭水化物の摂取量を評価した解析結果を図15に示す。短・通常睡眠時間群に対し長睡眠時間群では、たんぱく質の1日総量、脂質の1日総量、及びたんぱく質の夕食の摂取量が有意に少ないことが明らかとなった。
【0131】
食事からのアミノ酸摂取量を評価した解析結果を図16から図19に示す。短・通常睡眠時間群に対し長睡眠時間群では、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、セリン、含硫アミノ酸合計、芳香族アミノ酸合計、及び分岐鎖アミノ酸合計の1日総量と、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、含硫アミノ酸合計、芳香族アミノ酸合計、及び分岐鎖アミノ酸合計の夕食の摂取量が有意に少ないことが明らかとなった。
【実施例0132】
実施例1において、長睡眠時間群の認知機能低下リスクが高いことが明らかとなったことから、睡眠時間が8時間より長い長時間睡眠者の認知機能低下リスクを高める食事中アミノ酸があるか評価を実施した。実施例1の対象者のうち、長睡眠時間群の177名を解析対象者とした。19種類のアミノ酸それぞれの1日摂取量を性別ごとに四分位で分類して、摂取量が少ない順にQ1群、Q2群、Q3群、及びQ4群の4群を生成した。なお、各アミノ酸の1日摂取量等に関して、Q1群、Q2群、Q3群、およびQ4群の分位点を図20に示す。Q1群は摂取量が最小値以上25%分位点未満の集団、Q2群は摂取量が25%分位点以上50%分位点未満の集団、Q3群は摂取量が50%分位点以上75%分位点未満の集団、及びQ4群は摂取量が75%分位点以上最大値までの集団である。例えば、イソロイシンに関しては、Q1群の男性の摂取量は1946.7mg/day以上、2875.3mg/day未満であり、Q1群の女性の摂取量は1371.4mg/day以上、2368.5mg/day未満である。
【実施例0133】
長睡眠時間群を構成するQ1群におけるデータのばらつきを意味する標準偏差を図21に示す。例えば、イソロイシンの場合、女性は286.7mg/day、男性は279.8mg/dayである。Q1群において今回観察された最大摂取量を中心にデータが正規分布する場合を考えると、当該最大摂取量±1.96×標準偏差の範囲に95%のデータが含まれると考えられることから、図22に示した、Q1群の最大摂取量として考えられる範囲内に、閾値を設定することが妥当と考えられた。例えば、イソロイシンに関しては、女性の場合、1806.5mg/day以上2930.5mg/day未満の範囲内に、男性の場合、2326.8mg/day以上3423.8mg/day未満の範囲内に、閾値を設定し、その閾値より多く摂取することが望ましいと考えられる。
【0134】
また、Q1群において今回観察された最大摂取量を中心にデータが正規分布する場合を考えると、当該最大摂取量±標準偏差の範囲に68%のデータが含まれると考えられることから、図23に示した、Q1群の最大摂取量として考えられる範囲内に、閾値を設定することも妥当と考えられた。例えば、イソロイシンに関しては、女性の場合2081.8mg/day以上2655.3mg/day未満の範囲内に、男性の場合、2595.5mg/day以上3155.2mg/day未満の範囲内に、閾値を設定し、その閾値より多く摂取することが望ましいと考えられる。
【実施例0135】
なお、厚生労働省ホームページに公開されている「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf)において、不可欠アミノ酸の推定平均必要量として、「たんぱく質必要量(g/kg体重/日)に対するアミノ酸必要量(mg/kg体重/日)」が示されている。実施例4の長睡眠時間群(177名)における体重を計算したところ、女性の平均値は51.4kg、標準偏差は7.1kg、男性の平均値は60.7kg、標準偏差は8.5kgであった。この体重の平均値の情報を用いて、図22の結果をmg/kg体重/dayの単位に変換した結果を図24に示す。また、図22の平均値を、体重の平均値±1.96×標準偏差で割った値を図25に示す。
【0136】
図22図23に示した値を図24図25に示した値に変更すること、あるいは栄養指導の現場ではアミノ酸以外の栄養素も含めて総合的に栄養指導を行う可能性があることから、イソロイシン、ロイシン、リジン、スレオニン、トリプトファン、バリン、及びヒスチジンに対しては「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に記載されている必要量の情報を採用することも可能であると考えられる。なお、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」には、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、及びチロシンに関して単独アミノ酸としての記載がなく、メチオニンとシスチンが含まれた含硫アミノ酸の必要量およびフェニルアラニンとチロシンが含まれた芳香族アミノ酸の必要量が記載されている。したがって、含硫アミノ酸に関しては、設定したメチオニンまたはシスチンの閾値を摂取すれば、少なくとも含硫アミノ酸の閾値は満たされることから、このメチオニンまたはシスチンの閾値を含硫アミノ酸の下限値として代用することも可能であると考えられる。同様に、芳香族アミノ酸に関しては、設定したフェニルアラニンまたはチロシンの閾値を摂取すれば、少なくとも芳香族アミノ酸の閾値は満たされることから、このメチオニンまたはシスチンの閾値を芳香族アミノ酸の下限値として代用することも可能であると考えられる。
【実施例0137】
実施例1に記載した4次調査(2004年6月~2006年6月)、5次調査(2006年7月~2008年6月)、6次調査(2008年7月~2010年6月)、及び7次調査(2010年7月~2012年7月)で得た認知機能低下の有無(MMSEのスコアが27以下を認知機能低下と定義)を目的変数とし、対象とされる1種類のアミノ酸の1日摂取量がQ1群に該当するか否かの2値データを説明変数としたGEEを、19種のアミノ酸それぞれを対象に実施し、19種のアミノ酸それぞれの1日摂取量がQ1群に該当する場合の認知機能低下リスクを評価した。
【0138】
当該GEEの解析において、以下に列挙した17項目に関する説明変数が当該GEEに影響を調整する共変量として追加された追加モデルの解析も行った。すなわち、たんぱく質1日摂取量が等しい場合において、認知機能低下リスクと関連するアミノ酸に関しても検討を行った。なお、実施例4においては、長睡眠時間群177名と解析対象者が少ないことから、有意水準を両側10%とし、統計的仮説検定を実施した。
・経過年数、性、年齢(60-69歳/70-79歳/80歳以上の3群)、BMI、MMSE、CES-D、教育歴(0-7年/8-15年/16年以上の3群)、喫煙の有無)、仕事の有無、催眠鎮静剤または抗不安剤の内服の有無、総身体活動量(10METs-min/dayごと)、脳血管障害の有無、高血圧の有無、虚血性心疾患の有無、脂質異常症の有無、糖尿病の有無、及びたんぱく質1日摂取量
【0139】
評価結果を図26に示す。GEE解析では、イソロイシン、ロイシン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、バリン、アルギニン、アラニン、アスパラギン酸、プロリン、及びセリンの12種においてオッズ比が有意な結果が得られたことから、これら12種のアミノ酸の1日摂取量が、長睡眠時間群における将来の認知機能低下に関連することが示された。したがって、睡眠時間が8時間より長い長時間睡眠の場合、上記12種のアミノ酸に関して、性ごとに図20に示した25%分位点を超える量を1日に摂取することで、認知機能低下リスクの増加を抑えると考えられた。また、追加モデルでは、イソロイシン、ロイシン、シスチン、フェニルアラニン、バリン、アルギニン、プロリン、及びセリンの8種においてオッズ比が有意な結果が得られたことから、特にこれら8種のアミノ酸の摂取の重要性を主張することも可能と考えらえる。
【0140】
なお、本実施例の結果から、長時間睡眠の場合に摂取が重要と考えられるアミノ酸は、本出願人による国際出願である国際公開2020/255743号で示されたアミノ酸種と異なることから、認知機能低下リスクの高い長時間睡眠の際に留意が必要なアミノ酸として新規な情報と考えられる。
【実施例0141】
実施例4に記載の長睡眠時間群177名を対象に、実施例7で実施した評価において将来の認知機能低下と関連が特に強かった、シスチン、プロリン、およびセリンという3種のアミノ酸(図26参照)のそれぞれについて、摂取量下位4分の1の集団(Q1群)と、摂取量上位4分の3の集団(Q2群、Q3群、およびQ4群)で、摂取している食品群が異なるか評価を行った。なお、Q1群、Q2群、Q3群、およびQ4群は、実施例4で生成されたものである。また、長睡眠時間群は177名と解析対象者が少ないことから、有意水準を両側10%とし、統計的仮説検定を実施した。
【0142】
評価結果を図27に示す。シスチンについては、摂取量下位4分の1の集団では、「穀類」と「砂糖及び甘味類」の摂取が多く、「豆類」、「その他の野菜」、「肉類」及び「卵類」の摂取が有意に少ないことが明らかとなった。プロリンについては、摂取量下位4分の1の集団では、「穀類」の摂取が多く、「種実類」及び「乳類」の摂取が有意に少ないことが明らかとなった。セリンについては、摂取量下位4分の1の集団では、「穀類」と「砂糖及び甘味類」の摂取が多く、「豆類」、「その他の野菜」、「きのこ類」及び「魚介類」の摂取が有意に少ないことが明らかとなった。これらの結果から、アミノ酸の摂取量の代わりに、「穀類」、「砂糖及び甘味類」、「豆類」、「種実類」、「その他の野菜」、「きのこ類」、「魚介類」、「肉類」、「卵類」及び「乳類」といった食品群の情報を用いて、将来の認知機能低下リスクの評価を行うことも可能であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
以上のように、本発明は、産業上の多くの分野、特に医薬品や食品、医療などの分野で広く実施することができ、極めて有用である。
【符号の説明】
【0144】
100 評価装置(算出装置を含む)
102 制御部
102a 取得部
102b 指定部
102c 式作成部
102d 評価部
102d1 算出部
102d2 変換部
102d3 生成部
102d4 分類部
102e 結果出力部
102f 送信部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a アミノ酸関連データファイル
106b 指標状態情報ファイル
106c 指定指標状態情報ファイル
106d 式関連情報データベース
106d1 式ファイル
106e 評価結果ファイル
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 クライアント装置(端末装置(情報通信端末装置))
300 ネットワーク
400 POSシステム
500 データベース装置
図1
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