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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000117
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】物理量検出回路及び物理量センサー
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5614 20120101AFI20231225BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20231225BHJP
   H10N 30/80 20230101ALI20231225BHJP
【FI】
G01C19/5614
H01L41/113
H01L41/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098685
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】清水 教史
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105AA02
2F105BB13
2F105BB15
2F105BB20
2F105CC01
2F105CD02
2F105CD06
2F105CD11
(57)【要約】
【課題】物理量検出素子を大型化させることなく検出感度が異常となる故障を診断することが可能な物理量検出回路を提供すること。
【解決手段】物理量検出モードにおいて物理量検出素子の駆動部の振動を励起する第1の信号を前記駆動部に出力し、故障診断モードにおいて前記第1の信号及び前記検出部に前記検出部の共振周波数と前記駆動部の共振周波数との差の周波数である離調周波数の振動を励起する第2の信号を含む信号を前記駆動部に出力する駆動回路と、前記物理量検出モードにおいて前記検出部から出力される信号に基づいて物理量検出信号を生成し、前記故障診断モードにおいて前記検出部から出力される信号に基づいて前記離調周波数を検出して離調周波数検出信号を生成する検出信号生成回路と、前記故障診断モードにおいて前記離調周波数検出信号に基づいて故障診断を行う故障診断回路と、を備える、物理量検出回路。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と検出部とを有する物理量検出素子に接続される物理量検出回路であって、
物理量検出モードにおいて前記駆動部の振動を励起する第1の信号を前記駆動部に出力し、故障診断モードにおいて前記第1の信号及び前記検出部に前記検出部の共振周波数と前記駆動部の共振周波数との差の周波数である離調周波数の振動を励起する第2の信号を含む信号を前記駆動部に出力する駆動回路と、
前記物理量検出モードにおいて前記検出部から出力される信号に基づいて物理量検出信号を生成し、前記故障診断モードにおいて前記検出部から出力される信号に基づいて前記離調周波数を検出して離調周波数検出信号を生成する検出信号生成回路と、
前記故障診断モードにおいて前記離調周波数検出信号に基づいて故障診断を行う故障診断回路と、を備える、物理量検出回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記検出信号生成回路は、前記故障診断モードにおいて、前記検出部から出力される信号に基づく信号に対して離散的フーリエ変換を行って前記離調周波数を検出する、物理量検出回路。
【請求項3】
請求項1において、
前記第2の信号は、周期的に繰り返される矩形状のパルス信号である、物理量検出回路。
【請求項4】
請求項3において、
前記パルス信号の時間幅は、前記第1の信号の前記駆動部への出力を停止してから前記駆動部の振動の振幅が半分に減衰するまでの時間よりも短い、物理量検出回路。
【請求項5】
請求項3において、
前記物理量検出素子は、水晶を材料とする振動片を有し、
前記パルス信号の時間幅は、100ミリ秒以下である、物理量検出回路。
【請求項6】
請求項3において、
前記駆動回路は、前記駆動部に前記パルス信号を出力しない期間に前記第1の信号を出力し、前記駆動部に前記パルス信号を出力する期間は前記第1の信号を出力しない、物理量検出回路。
【請求項7】
請求項3において、
前記駆動回路は、前記駆動部に前記パルス信号を出力しない期間及び前記パルス信号を出力する期間の両方において前記第1の信号を出力する、物理量検出回路。
【請求項8】
請求項3において、
前記パルス信号の振幅は、前記第1の信号の振幅よりも大きい、物理量検出回路。
【請求項9】
請求項1において、
電源投入時の初期状態において、前記故障診断モードに設定される、物理量検出回路。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の物理量検出回路と、
前記物理量検出素子と、
を備える、物理量センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量検出回路及び物理量センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々なシステムや電子機器において、角速度を検出するジャイロセンサーや加速度を検出する加速度センサー等、各種の物理量を検出可能な物理量センサーが広く利用されている。近年、特に、信頼性の高いシステムを構築するために、物理量を検出する物理量検出素子等の故障診断を行う物理量センサーが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、センスドライブ信号により角速度検出素子を検出方向に振動させて得られる出力信号と、第1の擬似信号発生手段、第2の擬似信号発生手段からの出力信号をセンス回路に入力することで得られる出力信号とを比較回路で比較することにより、角速度検出素子の出力信号の感度を監視する角速度センサーが記載されている。この角速度センサーは、角速度検出素子の感度変化の如く、緩やかな故障モードについても検知することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-125100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の角速度センサーでは、角速度検出素子に、角速度の検出に必要なドライブ電極及びセンス電極とは別に、角速度検出素子の感度変化を検出するためのセンスドライブ電極を設ける必要があるため、電極の形状や配置等の設計が複雑になってしまい、それにより角速度検出素子が大型化する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る物理量検出回路の一態様は、
駆動部と検出部とを有する物理量検出素子に接続される物理量検出回路であって、
物理量検出モードにおいて前記駆動部の振動を励起する第1の信号を前記駆動部に出力し、故障診断モードにおいて前記第1の信号及び前記検出部に前記検出部の共振周波数と前記駆動部の共振周波数との差の周波数である離調周波数の振動を励起する第2の信号を含む信号を前記駆動部に出力する駆動回路と、
前記物理量検出モードにおいて前記検出部から出力される信号に基づいて物理量検出信号を生成し、前記故障診断モードにおいて前記検出部から出力される信号に基づいて前記離調周波数を検出して離調周波数検出信号を生成する検出信号生成回路と、
前記故障診断モードにおいて前記離調周波数検出信号に基づいて故障診断を行う故障診断回路と、を備える。
【0007】
本発明に係る物理量センサーの一態様は、
前記物理量検出回路の一態様と、
前記物理量検出素子と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の物理量センサーの構成例を示す図。
図2】物理量検出素子の振動片の平面図。
図3】物理量検出素子の動作について説明するための図。
図4】物理量検出素子の動作について説明するための図。
図5】検出振動腕の共振周波数と駆動振動腕の共振周波数との関係を説明するための図。
図6】検出感度と離調周波数との関係を示す図。
図7】駆動信号の一例を示す図。
図8図7の駆動信号の周波数スペクトラムを示す。
図9】第1実施形態においてパルス信号発生回路から出力される信号の一例を示す図。
図10】第1実施形態において加算器から出力される信号の一例を示す図。
図11図10の信号の周波数スペクトラムを示す図。
図12】DFT回路が離散的フーリエ変換を行って得られる周波数スペクトラムを示す図。
図13】物理量検出回路の動作の手順の一例を示すフローチャート図。
図14】故障診断処理の手順の一例を示すフローチャート図。
図15】第2実施形態においてパルス信号発生回路から出力される信号の一例を示す図。
図16】第2実施形態において加算器から出力される信号の一例を示す図。
図17】I/V変換回路の出力信号の振幅が減衰する様子を示す図。
図18】第3実施形態の物理量センサーの構成例を示す図。
図19】第3実施形態において加算器から出力される信号の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態の物理量センサーの構成例を示す図である。本実施形態の物理量センサー1は、物理量を検出する物理量検出素子100と、物理量検出素子100に接続される物理量検出回路200と、を備える。以下では、物理量センサー1が、物理量として角速度を検出する物理量検出素子100を備えた角速度センサーであるものとして説明する。
【0011】
物理量検出回路200は、外部接続端子として、DS端子、DG端子、S1端子、S2端子、CTL端子、DIAG端子、SS端子、SCK端子、SI端子、SO端子、VO端子を有する。DS端子、DG端子、S1G端子、S2G端子、S1端子及びS2端子は、物理量検出素子100と電気的に接続されている。また、CTL端子、DIAG端子、SS端子、SCK端子、SI端子、SO端子、VO端子は、図示しない外部装置と電気的に接続されている。
【0012】
図2は、物理量検出素子100の振動片の平面図である。物理量検出素子100は、水晶(SiO2)を材料とする振動片を有する。水晶振動片は、温度変化に対する共振周波数の変動が極めて小さいので、角速度の検出精度を高めることができるという利点がある。物理量検出素子100は、例えば、Zカットの水晶基板により形成されたダブルT型の水晶振動片を有する。なお、図2におけるX軸、Y軸、Z軸は水晶の軸を示す。
【0013】
図2に示すように、物理量検出素子100は、駆動部100aと、検出部100bと、検出部100bと駆動部100aとを連結する複数の連結腕105a,105bと、を有する。検出部100bは、検出用基部107と、検出用基部107から延出する複数の検出振動腕102と、を備えている。また、駆動部100aは、複数の連結腕105a,105bの各々により検出用基部107と連結される駆動用基部104a,104bと、駆動用基部104aから延出する複数の駆動振動腕101aと、駆動用基部104bから延出する複数の駆動振動腕101bと、を備えている。
【0014】
より詳細には、物理量検出素子100の振動片は、2つの駆動用基部104a,104bからそれぞれ駆動振動腕101a,101bが+Y軸方向及び-Y軸方向に延出している。駆動振動腕101aの側面及び上面にはそれぞれ駆動電極112,113が形成されており、駆動振動腕101bの側面及び上面にはそれぞれ駆動電極113,112が形成されている。駆動電極112,113は、それぞれ、図1に示す物理量検出回路200のDG端子,DS端子を介して駆動回路210に接続される。
【0015】
駆動用基部104a,104bは、それぞれ-X軸方向と+X軸方向に延びる連結腕105a,105bを介して矩形状の検出用基部107に接続されている。
【0016】
検出振動腕102は、検出用基部107から+Y軸方向及び-Y軸方向に延出している。検出振動腕102の上面には検出電極114,115が形成されており、検出振動腕102の側面には共通電極116が形成されている。検出電極114,115は、それぞれ、図1に示した物理量検出回路200のS1端子,S2端子を介して検出信号生成回路220に接続される。また、共通電極116は接地される。
【0017】
駆動振動腕101a,101bの駆動電極112と駆動電極113との間に駆動信号として交流電圧が与えられると、図3に示すように、駆動振動腕101a,101bは逆圧電効果によって矢印Bのように、2本の駆動振動腕101a,101bの先端が互いに接近と離間を繰り返す屈曲振動をする。この屈曲振動の周波数は、駆動振動腕101a,101bの共振周波数fdrvとほぼ一致する。
【0018】
この状態で、物理量検出素子100の振動片にZ軸を回転軸とした角速度が加わると、駆動振動腕101a,101bは、矢印Bの屈曲振動の方向とZ軸の両方に垂直な方向にコリオリの力を得る。その結果、図4に示すように、連結腕105a,105bは矢印Cで示すような振動をする。そして、検出振動腕102は、連結腕105a,105bの振動に連動して矢印Dのように屈曲振動をする。この屈曲振動の周波数は、駆動振動腕101a,101bの屈曲振動の周波数と一致する。このコリオリ力に伴う検出振動腕102の屈曲振動と駆動振動腕101a,101bの屈曲振動とは位相が90°ずれている。
【0019】
そして、圧電効果によってこれらの屈曲振動に基づいた交流電荷が、検出振動腕102の検出電極114,115に発生する。ここで、コリオリ力に基づいて発生する交流電荷は、コリオリ力の大きさ、言い換えれば、物理量検出素子100に加わる角速度の大きさに応じて変化する。
【0020】
なお、駆動振動腕101a,101bの先端には、駆動振動腕101a,101bよりも幅の広い矩形状の錘部103が形成されている。駆動振動腕101a,101bの先端に錘部103を形成することにより、コリオリ力を大きくするとともに、所望の共振周波数を比較的短い振動腕で得ることができる。同様に、検出振動腕102の先端には、検出振動腕102よりも幅の広い錘部106が形成されている。検出振動腕102の先端に錘部106を形成することにより、検出電極114,115に発生する交流電荷を大きくすることができる。
【0021】
以上のようにして、物理量検出素子100は、Z軸を検出軸としてコリオリ力に基づく交流電荷である角速度成分を、検出電極114,115を介して出力する。
【0022】
前述の通り、駆動振動腕101a,101bが屈曲振動をしている状態において角速度が加わったときの検出振動腕102の屈曲振動の周波数は、駆動振動腕101a,101bの屈曲振動の周波数と一致する。すなわち、検出振動腕102の屈曲振動の周波数は、駆動振動腕101a,101bの共振周波数fdrvとほぼ一致し、検出振動腕102の共振周波数fdetとは一致しない。
【0023】
図5は、検出振動腕102の共振周波数fdetと駆動振動腕101a,101bの共振周波数fdrvとの関係を示す図である。図5に示すように、検出振動腕102の共振周波数fdetと駆動振動腕101a,101bの共振周波数fdrvとは一致しておらず、その差の周波数Δfは「離調周波数」と呼ばれる。一例として、駆動振動腕101a,101bの共振周波数fdrvが50kHzであり、検出振動腕102の共振周波数fdetが51kHzであれば、離調周波数Δfは1kHzとなる。
【0024】
離調周波数Δfが小さいほど、検出振動腕102の屈曲振動の周波数が共振周波数fdetに近いので、その屈曲振動の振幅が大きくなり、検出電極114,115に発生する角速度成分が大きくなる。すなわち、離調周波数Δfが小さいほど角速度の検出感度が高く、離調周波数Δfが大きいほど角速度の検出感度が低くなる。したがって、図6に示すように、検出感度と離調周波数Δfとは反比例の関係にある。
【0025】
図1の説明に戻り、物理量検出回路200は、駆動回路210、検出信号生成回路220、故障診断回路240、制御回路250、記憶部260及びインターフェース回路270を備える。物理量検出回路200は、1チップの集積回路で実現されてもよいし、複数チップの集積回路やディスクリート部品を組み合わせて実現されてもよい。
【0026】
物理量検出回路200は、動作モードとして、起動モード、物理量検出モード及び故障診断モードを有する。起動モードは、物理量センサー1に電源が投入されてから物理量検出素子100が安定的に発振を継続するまでの時間を短縮するための動作モードである。物理量検出モードは、物理量検出素子100に加わった物理量を検出するモードである。故障診断モードは、物理量検出素子100の故障を診断するモードである。本実施形態では、物理量検出回路200は、故障診断モードにおいて、物理量検出素子100の検出感度が正常か否かによって故障の有無を診断する。前述の通り、物理量検出素子100の検出感度と離調周波数Δfとは反比例の関係にあるので、検出感度と離調周波数Δfとは一対一の関係にある。したがって、後述するように、物理量検出回路200は、離調周波数Δfを検出し、離調周波数Δfに基づいて物理量検出素子100の検出感度が正常か否かを判定し、検出感度が異常であれば、物理量検出素子100が故障していると診断することができる。
【0027】
なお、故障診断モードへの切り替えは、例えば、外部装置によって行われる。
【0028】
駆動回路210は、駆動信号DSを生成し、DS端子を介して、物理量検出素子100に駆動信号DSを印加する。本実施形態では、駆動回路210は、I/V変換回路211、AGC回路212、比較器213、起動回路214、パルス信号発生回路215、スイッチ回路216,217及び加算器218を含む。AGCは、Automatic Gain Controlの略である。
【0029】
スイッチ回路216,217は、制御回路250の制御によって導通状態又は非導通状態となる。具体的には、スイッチ回路216は、起動モード及び物理量検出モードにおいて導通状態となり、故障診断モードにおいて導通状態と非導通状態とを繰り返す。また、スイッチ回路217は、起動モード及び物理量検出モードにおいて非導通状態となり、故障診断モードにおいて導通状態となる。
【0030】
物理量センサー1に電源が投入されると、起動回路214が動作する起動モードが開始する。起動回路214は、共振周波数fdrvに近い周波数で自励発振し、発振信号を出力する。起動回路214は、例えば、CR発振回路などで実現することができる。起動回路214から出力される発振信号は、AGC回路212、スイッチ回路216及びDS端子を介して物理量検出素子100の駆動電極113に印加され、物理量検出素子100の駆動部100aが振動を開始する。
【0031】
駆動部100aが振動すると、圧電効果に基づく交流電流が駆動電極112から出力され、当該交流電流はDG端子を介してI/V変換回路211に入力される。I/V変換回路211は、入力された交流電流を駆動部100aの振動周波数と同一の周波数の交流電圧信号に変換して出力する。
【0032】
時間の経過に伴って、駆動部100aの振動が大きくなっていき、I/V変換回路211から出力される交流電圧信号の振幅が大きくなる。そして、駆動部100aの振動が安定し、I/V変換回路211から出力される交流電圧信号の振幅がほぼ一定となると、起動回路214が動作を停止する。例えば、起動回路214が動作を開始してから、駆動部100aの振動が安定するまでの所定時間が経過したら起動回路214が自発的に動作を停止してもよい。あるいは、図示しない振幅検出回路が、I/V変換回路211から出力される交流電圧信号の振幅が所定値に達したことを検出したら、起動回路214の動作を停止させてもよい。
【0033】
I/V変換回路211から出力された交流電圧信号は、AGC回路212及び比較器213に入力される。
【0034】
AGC回路212は、入力された交流電圧信号を増幅し、増幅の利得を制御することにより、振幅が一定電圧に保持された駆動信号DSを生成する。この駆動信号DSは、スイッチ回路216及びDS端子を介して物理量検出素子100の駆動電極113に印加され、駆動部100aが安定した振動を継続する。
【0035】
図7に、駆動信号DSの一例を示す。図7において、横軸は時間であり、縦軸は振幅である。また、図8に、図7の駆動信号DSの周波数スペクトラムを示す。図8において、横軸は周波数であり、縦軸は強度である。図7に示すように、駆動信号DSは、所定の周波数の交流電圧信号であり、物理量検出素子100の駆動部100aの振動を励起する信号である。また、図8に示すように、駆動信号DSは、基本周波数の信号成分としての駆動振動腕101a,101bの共振周波数fdrvの信号成分とその高調波信号成分を含んでいる。なお、駆動信号DSは、「第1の信号」の一例である。
【0036】
比較器213は、I/V変換回路211から出力された交流電圧信号を増幅して2値化信号である方形波電圧信号を出力する。
【0037】
このように、駆動回路210は、物理量検出モードおいて、物理量検出素子100の駆動電極112からの出力信号に基づいて駆動信号DSを生成し、駆動信号DSを物理量検出素子100の駆動部100aに出力する。
【0038】
パルス信号発生回路215は、矩形状のパルス信号PLSを周期的に発生させる。すなわち、パルス信号発生回路215は、周期的に繰り返される矩形状のパルス信号PLSを出力する。なお、消費電力を低減させるために、パルス信号発生回路215は、故障診断モードにおいてパルス信号PLSを周期的に発生させ、起動モード及び物理量検出モードでは動作を停止することが好ましい。
【0039】
図9に、パルス信号発生回路215から出力される信号の一例を示す。図9において、横軸は時間であり、縦軸は振幅である。図9に示すように、本実施形態では、パルス信号発生回路215は、周期的に繰り返されるハイパルスのパルス信号PLSを発生させる。したがって、パルス信号発生回路215から出力される信号は、パルス信号PLSの周期の逆数である基本周波数の信号成分及びその高調波信号成分を含んでいる。パルス信号PLSの周期は駆動信号DSの周期よりも十分に長く、パルス信号発生回路215から出力される信号は、様々な周波数の信号成分を有している。なお、周期的に繰り返される矩形状のパルス信号PLSは、「第2の信号」の一例である。
【0040】
パルス信号PLSは、スイッチ回路217を介して加算器218に入力され、駆動信号DSと加算され、加算器218から出力される信号は、DS端子を介して物理量検出素子100の駆動電極113に印加される。
【0041】
図10に、加算器218から出力される信号の一例を示す。図10において、横軸は時間であり、縦軸は振幅である。また、図11に、図10の信号の周波数スペクトラムを示す。図11において、横軸は周波数であり、縦軸は強度である。図10に示すように、加算器218から出力される信号は、パルス信号PLSを含み、さらにパルス信号PLSが発生していない期間において駆動信号DSを含む。すなわち、故障診断モードでは、スイッチ回路217は常に導通状態であり、スイッチ回路216は、パルス信号PLSが発生する期間は非導通状態であり、パルス信号PLSが発生しない期間は導通状態である。また、図11に示すように、加算器218から出力される信号は、基本周波数の信号成分としての駆動振動腕101a,101bの共振周波数fdrvの信号成分とその高調波信号成分を含み、さらに離調周波数Δfの信号成分も含んでいる。
【0042】
このように、駆動回路210は、故障診断モードにおいて、駆動信号DS及びパルス信号PLSを含む信号を物理量検出素子100の駆動部100aに出力する。具体的には、駆動回路210は、駆動部100aにパルス信号PLSを出力しない期間に駆動信号DSを出力し、駆動部100aにパルス信号PLSを出力する期間は駆動信号DSを出力しない。
【0043】
また、図10に示すように、本実施形態では、パルス信号PLSの振幅は、駆動信号DSの振幅よりも大きい。例えば、パルス信号PLSの振幅は、物理量検出回路200の外部から供給される電源電圧とグラウンド電圧との差に等しい。このように、パルス信号PLSの振幅が大きいほど、駆動部100aに出力される信号に含まれる離調周波数Δfの信号成分も大きい。
【0044】
故障診断モードにおいて、駆動部100aは、駆動信号DSとパルス信号PLSとが加算された信号が入力されて振動するので、駆動部100aには主として共振周波数fdrvの振動が励起されるが、共振周波数fdrvが変調された様々な周波数の振動も励起される。この駆動部100aの様々な周波数の振動のうち検出部100bの共振周波数fdetと一致する周波数の振動により、検出部100bに共振周波数fdetの振動が励起される。また、検出部100bには、駆動部100aの主要な振動と同期した共振周波数fdrvの振動も励起される。そのため、検出部100bには、共振周波数fdetと共振周波数fdrvとの差の周波数である離調周波数Δfの振動も励起される。
【0045】
ここで、パルス信号PLSは、様々な周波数の信号成分を有しているので、物理量検出素子100の状態が変化して離調周波数Δfが変化したとしても、故障診断モードにおいて、検出部100bに離調周波数Δfの振動が励起される。すなわち、パルス信号PLSは、検出部100bに離調周波数Δfの振動を励起する信号である。
【0046】
検出信号生成回路220は、物理量検出モードおいて、物理量検出素子100の検出部100bから出力される信号に基づいて、物理量検出素子100が検出した物理量に応じた物理量検出信号を生成する。本実施形態では、物理量検出素子100の検出部100bは物理量として角速度を検出するので、検出信号生成回路220は、物理量検出信号として角速度に応じた角速度信号を生成する。また、検出信号生成回路220は、故障診断モードおいて、物理量検出素子100の検出部100bから出力される信号に基づいて離調周波数Δfを検出して離調周波数検出信号を生成する。具体的には、検出信号生成回路220は、故障診断モードにおいて、検出部100bから出力される信号に基づく信号に対して離散的フーリエ変換を行って離調周波数Δfを検出する。
【0047】
本実施形態では、検出信号生成回路220は、Q/V変換回路221P、Q/V変換回路221N、差動アンプ222、ハイパスフィルター223、ACアンプ224、スイッチ回路225、同期検波回路226、感度調整アンプ227、スイッチトキャパシターフィルター228、レシオメトリックアンプ229、DFT回路230及び離調周波数検出回路231を含む。DFTは、Discrete Fourier Transformの略である。
【0048】
物理量検出素子100の検出電極114からの出力信号である交流電荷は、S1端子を介してQ/V変換回路221Pに入力される。Q/V変換回路221Pは、入力された交流電荷を交流電圧信号に変換する。
【0049】
物理量検出素子100の検出電極115からの出力信号である交流電荷は、S2端子を介してQ/V変換回路221Nに入力される。Q/V変換回路221Nは、入力された交流電荷を交流電圧信号に変換する。
【0050】
差動アンプ222は、Q/V変換回路221Pの出力信号とQ/V変換回路221Nの出力信号とを差動増幅する。
【0051】
ハイパスフィルター223は、差動アンプ222の出力信号に含まれる直流成分を減衰させる。
【0052】
ACアンプ224は、ハイパスフィルター223の出力信号を増幅する。
【0053】
スイッチ回路225は、制御回路250の制御によって、ACアンプ224の出力端とDFT回路230の入力端及び同期検波回路226の入力端のいずれか一方とを電気的に接続する。具体的には、スイッチ回路216は、物理量検出モードでは、ACアンプ224の出力端と同期検波回路226の入力端とを電気的に接続し、ACアンプ224の出力端とDFT回路230の入力端とを電気的に遮断する。また、スイッチ回路216は、故障診断モードでは、ACアンプ224の出力端とDFT回路230の入力端とを電気的に接続し、ACアンプ224の出力端と同期検波回路226の入力端とを電気的に遮断する。
【0054】
物理量検出モードにおいて、同期検波回路226は、ACアンプ224の出力信号が入力され、比較器213から出力される方形波電圧信号を検波信号として、ACアンプ224の出力信号を同期検波することにより物理量検出素子100が検出した物理量の信号成分を抽出する。
【0055】
感度調整アンプ227は、同期検波回路226の出力信号を、設定された利得で増幅又は減衰し、物理量の検出感度を調整する。
【0056】
スイッチトキャパシターフィルター228は、感度調整アンプ227の出力信号をフィルター処理して高周波のノイズ成分を減衰させる。
【0057】
レシオメトリックアンプ229は、スイッチトキャパシターフィルター228の出力信号を電源電圧に応じた利得で増幅又は減衰させ、ゼロ点電圧及び検出感度を電源電圧に比例して変化させる。そして、レシオメトリックアンプ229の出力信号は、物理量検出信号として、VO端子を介して図示しない外部装置に出力される。
【0058】
故障診断モードにおいて、DFT回路230は、ACアンプ224の出力信号が入力され、ACアンプ224の出力信号をサンプリングしてデジタル値に変換した後、離散的フーリエ変換を行う。この離散的フーリエ変換は、例えば、高速フーリエ変換であってもよい。例えば、DFT回路230は、A/D変換回路、メモリー回路及びMPU等の演算回路によって実現される。なお、MPUは、Micro Processor Unitの略である。
【0059】
図12に、図10に示した信号が物理量検出素子100の駆動部100aに出力された場合にDFT回路230が離散的フーリエ変換を行って得られる周波数スペクトラムを示す。図12において、横軸は周波数であり、縦軸は強度である。図10に示した信号が物理量検出素子100の駆動振動腕101a,101bに出力されると、検出振動腕102は、周波数fdrvに離調周波数Δfが加算された共振周波数fdetで屈曲振動をするとともに、駆動振動腕101a,101bの屈曲振動と同期して周波数fdrvでも屈曲振動をする。そのため、図12に示すように、ACアンプ224の出力信号は、駆動振動腕101a,101bの共振周波数fdrvの信号成分及び検出振動腕102の共振周波数fdetの信号成分とともに、共振周波数fdetと周波数fdrvとの差の周波数である離調周波数Δfの信号成分も含んでいる。
【0060】
離調周波数検出回路231は、DFT回路230による離散的フーリエ変換によって得られる周波数スペクトラムに基づいて離調周波数Δfを検出し、離調周波数Δfに対応する離調周波数検出信号を生成する。例えば、物理量検出素子100が正常であるときの共振周波数fdetと共振周波数fdrvとの差が1kHzである場合、離調周波数検出回路231は、1kHzを含む所定の範囲で強度がピークとなる周波数を離調周波数Δfとして検出する。
【0061】
故障診断回路240は、故障診断モードにおいて、離調周波数検出回路231が生成した離調周波数検出信号に基づいて故障診断を行う。具体的には、故障診断回路240は、離調周波数検出回路231が生成して記憶部260に記憶させた離調周波数検出信号を読み出し、当該離調周波数検出信号に基づいて物理量検出素子100の検出感度が異常であるか否かを判定し、異常である場合に物理量検出素子100が故障していると診断する。
【0062】
例えば、物理量センサー1の出荷前の検査工程において、物理量検出素子100の離調周波数Δfを測定し、初期離調周波数Δfとして記憶部260に記憶させておく。そして、物理量センサー1の出荷後、故障診断モードにおいて、離調周波数検出回路231は、離調周波数Δfのデジタル値を示す離調周波数検出信号を生成して記憶部260に記憶させ、故障診断回路240は、記憶部260に記憶されている離調周波数Δfと初期離調周波数Δfとを比較してその差が所定の範囲に含まれていなければ、物理量検出素子100の検出感度が異常であると判定し、物理量検出素子100が故障していると診断してもよい。
【0063】
また、例えば、物理量センサー1の出荷前の検査工程において、物理量検出素子100の離調周波数Δfを測定して初期離調周波数Δfとし、初期離調周波数Δfを含む正常な周波数範囲と異常な周波数範囲とを含む複数の周波数範囲を決定しておく。そして、物理量センサー1の出荷後、故障診断モードにおいて、離調周波数検出回路231は、離調周波数Δfが複数の周波数範囲のいずれに含まれるかを示す離調周波数検出信号を生成して記憶部260に記憶させ、故障診断回路240は、離調周波数Δfが正常な周波数範囲とは異なる周波数範囲に含まれる場合に、物理量検出素子100の検出感度が異常であると判定し、物理量検出素子100が故障していると診断してもよい。
【0064】
また、故障診断回路240は、故障診断の結果を示す故障診断結果信号を、DIAG端子を介して外部装置に出力する。例えば、故障診断回路240は、物理量検出素子100が故障していないと診断した場合はローレベルの故障診断結果信号を出力し、物理量検出素子100が故障していると診断した場合はハイレベルの故障診断結果信号を出力する。
【0065】
インターフェース回路270は、図示しない外部装置からの要求に応じて記憶部260に記憶されているデータを読み出して外部装置に出力する処理や、外部装置から入力されたデータを記憶部260に書き込む処理を行う。例えば、外部装置は、DIAG端子から出力される故障診断信号がローレベルからハイレベルに変化すると、インターフェース回路270を介して、記憶部260に記憶されている故障フラグを読み出し、故障フラグが1であれば、物理量検出素子100が故障であると判断することができる。また、インターフェース回路270は、外部装置から物理量検出回路200の動作モードの所定のモードへの移行を要求するコマンドを受けて、当該要求を示す信号を制御回路250に出力してもよい。インターフェース回路270は、例えば、SPIバスのインターフェース回路であり、外部装置から送信された選択信号、クロック信号、データ信号が、それぞれ、SS端子,SCK端子,SI端子を介して入力され、SO端子を介してデータ信号を外部装置に出力する。SPIは、Serial Peripheral Interfaceの略である。なお、インターフェース回路270は、SPIバス以外の各種のバス、例えば、ICバス等に対応するインターフェース回路であってもよい。ICは、Inter-Integrated Circuitの略である。
【0066】
制御回路250は、図示しない外部装置からCTL端子に所定のパターンの信号が入力された場合に、物理量検出回路200の動作モードを故障診断モードに移行させる。あるいは、制御回路250は、インターフェース回路270が外部装置から故障診断モードへの移行を要求するコマンドを受けた場合に、物理量検出回路200の動作モードを故障診断モードに移行させてもよい。前述の通り、制御回路250は、各モードに応じてスイッチ回路216,217,225がそれぞれ導通状態又は非導通状態になるように制御する。例えば、物理量センサー1が車両に搭載される場合、外部装置は、車両のエンジン始動後の静止中に、物理量検出回路200の動作モードを故障診断モードに移行させてもよい。また、制御回路250は、物理量センサー1の動作モードを起動モードから故障診断モードに自動的に切り替えてもよいし、故障診断モードから物理量検出モードに自動的に切り替えてもよい。
【0067】
図13は、物理量検出回路200の動作の手順の一例を示すフローチャート図である。
【0068】
図13の例では、工程S10において電源が投入されると、工程S20において、物理量検出回路200は起動処理を行う。具体的には、制御回路250が物理量検出回路200の動作モードを起動モードに初期化することによって起動回路214が動作し、起動回路214から出力される発振信号に基づいて、物理量検出素子100の駆動部100aが振動を開始する。そして、物理量検出素子100の駆動部100aの発振が安定した後、起動回路214が動作を停止する。例えば、物理量検出回路200は、電源投入後、駆動部100aが安定的に発振するまでに必要な時間よりも長い所定時間が経過するまで起動処理を行ってもよいし、I/V変換回路211の出力電圧又はAGC回路212の出力電圧が所定値を超えるまで起動処理を行ってもよい。
【0069】
次に、工程S30において、物理量検出回路200は故障診断処理を行う。例えば、起動処理が終了すると、自動的に、制御回路250が動作モードを故障診断モードに移行させ、物理量検出回路200が故障診断処理を行ってもよい。あるいは、CTL端子に所定のパターンの信号が入力されることにより、制御回路250が動作モードを故障診断モードに移行させ、物理量検出回路200が故障診断処理を行ってもよい。あるいは、インターフェース回路270が故障診断モードへの移行を要求するコマンドを受けることにより、制御回路250が動作モードを故障診断モードに移行させ、物理量検出回路200が故障診断処理を行ってもよい。このように、物理量検出回路200は、電源投入時の初期状態、すなわち起動処理の終了後において、故障診断モードに設定される。工程S30の故障診断処理の詳細な手順については後述する。
【0070】
次に、工程S40において、物理量検出回路200は物理量検出処理を行う。具体的には、駆動回路210が、駆動信号DSを生成して物理量検出素子100の駆動部100aに出力し、検出信号生成回路220が、物理量検出素子100の検出部100bから出力される信号に基づいて物理量検出信号を生成し、生成した物理量検出信号を、VO端子を介して外部装置に出力する。例えば、故障診断処理が終了すると、自動的に、制御回路250が動作モードを物理量検出モードに移行させ、物理量検出回路200が物理量検出処理を行ってもよい。あるいは、インターフェース回路270が物理量検出モードへの移行を要求するコマンドを受けることにより、制御回路250が動作モードを物理量検出モードに移行させ、物理量検出回路200が物理量検出処理を行ってもよい。
【0071】
次に、工程S40の物理量検出処理が行われているときに、工程S50において外部装置から故障診断を要求された場合、物理量検出回路200は、再び、工程S30の故障診断処理を行い、故障診断処理の終了後、工程S40の物理量検出処理に戻る。
【0072】
そして、物理量検出回路200は、工程S60において電源が遮断されるまで、適宜、工程S30~工程S50の処理を繰り返す。
【0073】
図14は、図13の工程S30の故障診断処理の手順の一例を示すフローチャート図である。
【0074】
図14の例では、まず、工程S31において、パルス信号発生回路215がパルス信号PLSを生成する。
【0075】
次に、工程S32において、駆動回路210が、駆動信号DS及びパルス信号PLSを含む信号を生成して物理量検出素子100の駆動部100aに出力する。
【0076】
次に、工程S33において、検出信号生成回路220が、物理量検出素子100の検出部100bから出力される信号に基づいて離調周波数Δfを検出して離調周波数検出信号を生成する。
【0077】
次に、工程S34において、故障診断回路240が、工程S33で生成された離調周波数検出信号に基づいて故障診断を行う。
【0078】
最後に、工程S35において、故障診断回路240が、故障診断の結果を示す故障診断結果信号を外部装置に出力する。
【0079】
以上に説明したように、第1実施形態の物理量センサー1では、故障診断モードにおいて、物理量検出回路200の駆動回路210は、物理量検出素子100の駆動部100aの振動を励起する駆動信号DSとともに様々な周波数の信号成分を含むパルス信号PLSを駆動部100aに出力するので、検出部100bに離調周波数Δfの振動が励起される。そのため、検出部100bから出力される信号には離調周波数Δfの信号成分が含まれている。そして、物理量検出素子100の検出感度は離調周波数Δfに応じて変化するので、故障診断モードにおいて、物理量検出回路200の検出信号生成回路220が離調周波数Δfを検出して離調周波数検出信号を生成し、物理量検出回路200の故障診断回路240が離調周波数検出信号に基づいて検出感度が異常となる故障を診断することができる。また、第1実施形態の物理量センサー1では、故障診断モードにおいて、物理量検出モードにおいて駆動信号DSが印加される物理量検出素子100の電極を、故障診断モードにおいて駆動信号DS及びパルス信号PLSが印加される電極と兼用することができるので、物理量検出素子100に検出感度を検出するための専用電極を設ける必要もない。したがって、第1実施形態の物理量センサー1によれば、物理量検出素子100を大型化させることなく検出感度が異常となる故障を診断することができる。
【0080】
また、第1実施形態の物理量センサー1によれば、パルス信号PLSの振幅を駆動信号DSの振幅よりも大きくすることにより、故障診断モードにおいて検出部100bに離調周波数Δfの振動が励起されやすくなるので、故障診断回路240が誤った診断を行うおそれが低減される。
【0081】
また、第1実施形態の物理量センサー1によれば、物理量検出回路200は、電源投入時の初期状態において故障診断モードに設定されることにより、物理量検出モードに設定される前に故障診断を行うので、外部装置は、故障診断の結果に基づいてVO端子から出力される物理量検出信号の信頼性を判断することができる。
【0082】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態の物理量センサー1について、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して第1実施形態と重複する説明を省略し、主として第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0083】
第1実施形態の物理量センサー1では、物理量検出回路200の駆動回路210は、故障診断モードにおいて、物理量検出素子100の駆動部100aにパルス信号PLSを出力する期間は駆動信号DSを出力しないため、この期間において駆動部100aの振動の振幅が大きく減衰し、その結果、検出部100bの正常な振動が妨げられるおそれがある。そこで、第2実施形態では、故障診断モードにおいて、駆動回路210が駆動部100aに駆動信号DSを出力しない期間を第1実施形態よりも短くする。これにより、駆動部100aの振動の減衰量が小さくなり、検出部100bの正常な振動が妨げられるおそれを低減させる。
【0084】
第2実施形態の物理量センサー1では、物理量検出素子100の構成は、図2と同様であるため、その図示及び説明を省略する。また、物理量検出回路200の構成は図1と同様であるため、その図示及び説明を省略する。ただし、第2実施形態では、パルス信号発生回路215は、第1実施形態と同様、周期的に繰り返される矩形状のパルス信号PLSを出力するが、パルス信号PLSの波形が第1実施形態と異なる。
【0085】
図15は、第2実施形態においてパルス信号発生回路215から出力される信号の一例を示す図である。図15において、横軸は時間であり、縦軸は振幅である。図15に示すように、第2実施形態でも、第1実施形態と同様、パルス信号発生回路215は、周期的に繰り返されるハイパルスのパルス信号PLSを発生させる。したがって、パルス信号発生回路215から出力される信号は、パルス信号PLSの周期の逆数である基本周波数の信号成分及びその高調波信号成分を含んでいる。パルス信号PLSの周期は駆動信号DSの周期よりも十分に長く、パルス信号発生回路215から出力される信号は、様々な周波数の信号成分を有している。したがって、第1実施形態と同様、パルス信号PLSは、検出部100bに離調周波数Δfの振動を励起する信号である。
【0086】
このパルス信号PLSは、スイッチ回路217を介して加算器218に入力され、駆動信号DSと加算され、加算器218から出力される信号は、DS端子を介して物理量検出素子100の駆動電極113に印加される。
【0087】
図16に、加算器218から出力される信号の一例を示す。図16において、横軸は時間であり、縦軸は振幅である。図16に示すように、加算器218から出力される信号は、パルス信号PLSを含み、さらにパルス信号PLSが発生していない期間において駆動信号DSを含む。すなわち、第2実施形態でも、故障診断モードでは、スイッチ回路217は常に導通状態であり、スイッチ回路216は、パルス信号PLSが発生する期間は非導通状態であり、パルス信号PLSが発生しない期間は導通状態である。したがって、第2実施形態でも、故障診断モードにおいて、駆動回路210は、駆動部100aにパルス信号PLSを出力しない期間に駆動信号DSを出力し、駆動部100aにパルス信号PLSを出力する期間は駆動信号DSを出力しない。また、図16に示すように、第2実施形態でも、パルス信号PLSの振幅は、駆動信号DSの振幅よりも大きい。
【0088】
一方、図15に示すように、第2実施形態におけるパルス信号PLSは、図9に示した第1実施形態におけるパルス信号PLSと比較して、周期は同じであるが時間幅が短い。そのため、図16に示すように、第2実施形態では、故障診断モードにおいて、物理量検出素子100の駆動部100aに駆動信号DSが出力されない期間が第1実施形態よりも短い。パルス信号PLSの時間幅は、駆動部100aへの駆動信号DSの出力を停止してからの駆動部100aの振動の振幅の減衰量が許容範囲に収まるように決定される。
【0089】
図17に、駆動部100aへの駆動信号DSの出力を停止してからI/V変換回路211の出力信号の振幅が減衰する様子を示す。図17の例では、時刻t1において、駆動部100aへの駆動信号DSの出力が停止し、時刻t1から時間T2が経過した時刻t3において、I/V変換回路211の出力信号の振幅が半分に減衰している。すなわち、駆動部100aへの駆動信号DSの出力が停止してから時間T2が経過すると、駆動部100aの振動の振幅が半分に減衰している。経験則上、駆動部100aの振動の振幅が最大値の半分に減衰しても検出部100bが正常に振動することがわかっている。そこで、時刻t1と時刻t3との間の時刻t2に対して、パルス信号PLSの時間幅は、時刻t1から時刻t2までの時間T1に決定される。すなわち、パルス信号PLSの時間幅は、駆動信号DSの駆動部100aへの出力を停止してから駆動部100aの振動の振幅が半分に減衰するまでの時間T2よりも短い。例えば、物理量検出素子100がQ値の高い水晶を材料とする振動片を有する場合、時間T2は100ミリ秒程度であるので、パルス信号PLSの時間幅は、100ミリ秒以下であることが好ましい。
【0090】
第2実施形態の物理量センサー1のその他の構成は、第1実施形態の物理量センサー1と同様であるため、その説明を省略する。
【0091】
以上に説明した第2実施形態の物理量センサー1によれば、第1実施形態の物理量センサー1と同様の効果が得られる。さらに、第2実施形態の物理量センサー1によれば、故障診断モードにおいて、駆動回路210が物理量検出素子100の駆動部100aにパルス信号PLSを出力する期間は駆動信号DSを出力しなくても、駆動部100aの振動の振幅が半分に減衰する前に駆動信号DSの出力が再開するので、物理量検出素子100の検出部100bの正常な振動が妨げられるおそれが低減され、故障診断回路240は精度を低下させることなく故障診断を行うことができる。
【0092】
3.第3実施形態
以下、第3実施形態の物理量センサー1について、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成には同じ符号を付して第1実施形態又は第2実施形態と重複する説明を省略し、主として第1実施形態及び第2実施形態と異なる内容について説明する。
【0093】
第1実施形態の物理量センサー1では、物理量検出回路200の駆動回路210は、故障診断モードにおいて、物理量検出素子100の駆動部100aにパルス信号PLSを出力する期間は駆動信号DSを出力しないため、この期間において駆動部100aの振動の振幅が大きく減衰し、その結果、検出部100bの正常な振動が妨げられるおそれがある。また、第2実施形態では、故障診断モードにおいて駆動回路210が駆動部100aにパルス信号PLSを出力する期間、すなわち、駆動信号DSを出力しない期間を短くしているが、検出部100bの正常な振動が妨げられるおそれがゼロではない。そこで、第3実施形態では、故障診断モードにおいて、駆動回路210が駆動部100aに駆動信号DSを出力しない期間が生じないようにする。これにより、駆動部100aの振動が減衰することなく、確実に検出部100bの正常な振動が得られる。
【0094】
第3実施形態の物理量センサー1では、物理量検出素子100の構成は、図2と同様であるため、その図示及び説明を省略する。図18は、第3実施形態の物理量センサー1の構成例を示す図である。図18に示すように、第3実施形態の物理量センサー1は、物理量検出回路200において、駆動回路210にスイッチ回路216がない点が図1と異なり、その他の構成は図1と同様である。
【0095】
第3実施形態では、スイッチ回路216がないので、故障診断モードにおいても、AGC回路212から出力される駆動信号DSは、DS端子を介して物理量検出素子100の駆動電極113に印加され、物理量検出素子100の駆動部100aが安定した振動を継続する。すなわち、第3実施形態では、駆動回路210は、駆動部100aにパルス信号PLSを出力しない期間及びパルス信号PLSを出力する期間の両方において駆動信号DSを出力する。
【0096】
第3実施形態では、パルス信号発生回路215は、第1実施形態と同様、周期的に繰り返される矩形状のパルス信号PLSを出力する。すなわち、第3実施形態でも、第1実施形態と同様、パルス信号発生回路215は、周期的に繰り返されるハイパルスのパルス信号PLSを発生させる。パルス信号PLSは、例えば、図9又は図15と同様であるため、その図示及び説明を省略する。
【0097】
図19は、第3実施形態において加算器218から出力される信号の一例を示す図である。図19において、横軸は時間であり、縦軸は振幅である。図19に示すように、第3実施形態でも、パルス信号PLSの振幅は、駆動信号DSの振幅よりも大きい。さらに、第3実施形態では、図19に示すように、加算器218から出力される信号は、パルス信号PLSを含み、さらにパルス信号PLSが発生する期間とパルス信号PLSが発生しない期間の両方において駆動信号DSを含む。すなわち、第3実施形態では、故障診断モードにおいて、物理量検出素子100の駆動部100aに駆動信号DSが出力されない期間が存在しない。
【0098】
なお、図19には、パルス信号PLSが図15と同様である場合の例を示したが、パルス信号PLSは図9と同様であってもよい。すなわち、第3実施形態では、パルス信号PLSの時間幅は任意の値に決定することができる。
【0099】
第3実施形態の物理量センサー1のその他の構成は、第1実施形態又は第2実施形態の物理量センサー1と同様であるため、その説明を省略する。
【0100】
以上に説明した第3実施形態の物理量センサー1によれば、第1実施形態の物理量センサー1と同様の効果が得られる。さらに、第3実施形態の物理量センサー1によれば、故障診断モードにおいて、物理量検出素子100の駆動部100aに駆動信号DSが出力されない期間が存在しないので、駆動部100aの振動が減衰することなく、その結果、物理量検出素子100の検出部100bが正常な振動を維持することができ、故障診断回路240が誤った診断を行うおそれが低減される。
【0101】
4.変形例
上記の各実施形態では、パルス信号PLSはハイパルスであるが、ローパルスであってもよい。
【0102】
また、上記の各実施形態では、物理量センサー1として、角速度を検出する物理量検出素子100を含む角速度センサーを例に挙げたが、物理量検出素子100が検出する物理量は、角速度に限らず、角加速度、加速度、速度、力などであってもよい。
【0103】
また、物理量検出素子100の振動片は、ダブルT型でなくてもよく、例えば、平面形状がH型であってもよいし、音叉型やくし歯型であってもよいし、三角柱、四角柱、円柱状等の形状の音片型であってもよい。
【0104】
また、物理量検出素子100の振動片の材料としては、水晶(SiO2)の代わりに、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電単結晶やジルコン酸チタン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスなどの圧電性材料を用いてもよい。
【0105】
また、上記の各実施形態では、物理量センサー1として、1つの物理量検出素子100を備えた1軸センサーを例に挙げたが、物理量センサー1は、複数の物理量検出素子100を備えた多軸センサーであってもよい。例えば、物理量センサー1は、互いに異なる3軸周りの角速度を検出する3つの物理量検出素子を備えた3軸ジャイロセンサーであってもよいし、角速度を検出する物理量検出素子と、加速度を検出する物理量検出素子とを備えた複合センサーであってもよい。
【0106】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0107】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0108】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0109】
物理量検出回路の一態様は、
駆動部と検出部とを有する物理量検出素子に接続される物理量検出回路であって、
物理量検出モードにおいて前記駆動部の振動を励起する第1の信号を前記駆動部に出力し、故障診断モードにおいて前記第1の信号及び前記検出部に前記検出部の共振周波数と前記駆動部の共振周波数との差の周波数である離調周波数の振動を励起する第2の信号を含む信号を前記駆動部に出力する駆動回路と、
前記物理量検出モードにおいて前記検出部から出力される信号に基づいて物理量検出信号を生成し、前記故障診断モードにおいて前記検出部から出力される信号に基づいて前記離調周波数を検出して離調周波数検出信号を生成する検出信号生成回路と、
前記故障診断モードにおいて前記離調周波数検出信号に基づいて故障診断を行う故障診断回路と、を備える。
【0110】
この物理量検出回路では、故障診断モードにおいて、駆動回路は、物理量検出素子の駆動部の振動を励起する第1の信号とともに物理量検出素子の検出部に離調周波数の振動を励起する第2の信号を駆動部に出力するので、検出部に離調周波数の振動が励起される。そのため、検出部から出力される信号には離調周波数の信号成分が含まれている。そして、物理量検出素子の検出感度は離調周波数に応じて変化するので、故障診断モードにおいて、検出信号生成回路が離調周波数を検出して離調周波数検出信号を生成し、故障診断回路が離調周波数検出信号に基づいて検出感度が異常となる故障を診断することができる。また、この物理量検出回路では、故障診断モードにおいて、物理量検出モードにおいて第1の信号が印加される物理量検出素子の電極を、故障診断モードにおいて第1の信号及び第2の信号が印加される電極と兼用することができるので、物理量検出素子に検出感度を検出するための専用電極を設ける必要もない。したがって、この物理量検出回路によれば、物理量検出素子を大型化させることなく検出感度が異常となる故障を診断することができる。
【0111】
前記物理量検出回路の一態様において、
前記検出信号生成回路は、前記故障診断モードにおいて、前記検出部から出力される信号に基づく信号に対して離散的フーリエ変換を行って前記離調周波数を検出してもよい。
【0112】
前記物理量検出回路の一態様において、
前記第2の信号は、周期的に繰り返される矩形状のパルス信号であってもよい。
【0113】
この物理量検出回路によれば、周期的に繰り返される矩形状のパルス信号である第2の信号は、様々な周波数の信号成分を含むので、故障診断モードにおいて、駆動回路が駆動部に第2の信号を出力することにより、検出部に離調周波数の振動を励起することができる。
【0114】
前記物理量検出回路の一態様において、
前記パルス信号の時間幅は、前記第1の信号の前記駆動部への出力を停止してから前記駆動部の振動の振幅が半分に減衰するまでの時間よりも短くてもよい。
【0115】
この物理量検出回路によれば、故障診断モードにおいて、例えば、駆動回路が駆動部にパルス信号を出力する期間は第1の信号を出力しなくても、駆動部の振動の振幅が半分に減衰する前に第1の信号の出力が再開するので、検出部の正常な振動が妨げられるおそれが低減され、故障診断回路は精度を低下させることなく故障診断を行うことができる。
【0116】
前記物理量検出回路の一態様において、
前記物理量検出素子は、水晶を材料とする振動片を有し、
前記パルス信号の時間幅は、100ミリ秒以下であってもよい。
【0117】
この物理量検出回路によれば、故障診断モードにおいて、例えば、駆動部にパルス信号を出力する期間は第1の信号を出力しなくても、駆動部の振動の振幅が大きく減衰する前に第1の信号の出力が再開するので、検出部の正常な振動が妨げられるおそれが低減され、故障診断回路は精度を低下させることなく故障診断を行うことができる。
【0118】
前記物理量検出回路の一態様において、
前記駆動回路は、前記駆動部に前記パルス信号を出力しない期間に前記第1の信号を出力し、前記駆動部に前記パルス信号を出力する期間は前記第1の信号を出力しなくてもよい。
【0119】
前記物理量検出回路の一態様において、
前記駆動回路は、前記駆動部に前記パルス信号を出力しない期間及び前記パルス信号を出力する期間の両方において前記第1の信号を出力してもよい。
【0120】
この物理量検出回路によれば、故障診断モードにおいて、物理量検出素子の駆動部に第1の信号が出力されない期間が存在しないので、駆動部の振動が減衰することなく、その結果、物理量検出素子の検出部が正常な振動を維持することができ、故障診断回路が誤った診断を行うおそれが低減される。
【0121】
前記物理量検出回路の一態様において、
前記パルス信号の振幅は、前記第1の信号の振幅よりも大きくてもよい。
【0122】
この物理量検出回路によれば、パルス信号の振幅が相対的に大きく、その結果、故障診断モードにおいて検出部に離調周波数の振動が励起されやすくなるので、故障診断回路が誤った診断を行うおそれが低減される。
【0123】
前記物理量検出回路の一態様は、
電源投入時の初期状態において、前記故障診断モードに設定されてもよい。
【0124】
この物理量検出回路によれば、物理量検出モードに設定される前に故障診断が行われるので、外部装置は、故障診断の結果に基づいて物理量検出信号の信頼性を判断することができる。
【0125】
物理量センサーの一態様は、
前記物理量検出回路の一態様と、
前記物理量検出素子と、
を備える。
【符号の説明】
【0126】
1…物理量センサー、100…物理量検出素子、100a…駆動部、100b…検出部、101a,101b…駆動振動腕、102…検出振動腕、103…錘部、104a,104b…駆動用基部、105a,105b…連結腕、106…錘部、107…検出用基部、112,113…駆動電極、114,115…検出電極、116…共通電極、200…物理量検出回路、210…駆動回路、211…I/V変換回路、212…AGC回路、213…比較器、214…起動回路、215…パルス信号発生回路、216…スイッチ回路、217…スイッチ回路、220…検出信号生成回路、221P,221N…Q/V変換回路、222…差動アンプ、223…ハイパスフィルター、224…ACアンプ、225…スイッチ回路、226…同期検波回路、227…感度調整アンプ、228…スイッチトキャパシターフィルター、229…レシオメトリックアンプ、230…DFT回路、231…離調周波数検出回路、240…故障診断回路、250…制御回路、260…記憶部、270…インターフェース回路
図1
図2
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