(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117002
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】ダイヤル式調整装置
(51)【国際特許分類】
G02B 23/14 20060101AFI20240821BHJP
F41G 1/38 20060101ALN20240821BHJP
【FI】
G02B23/14
F41G1/38
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022905
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】305013149
【氏名又は名称】有限会社 ディオン光学技研
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】清水 文雄
【テーマコード(参考)】
2H039
【Fターム(参考)】
2H039AB61
2H039AB65
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第1のダイヤルの回転をロックしたりロックを解除したりすることを容易に操作できるダイヤル式調整装置を提供する。
【解決手段】回転可能な第1のダイヤル132を備えた調整機構と、第1のダイヤル132の回転をロックしたりロックを解除したりするように切り替え可能に構成されたロック機構と、を有するダイヤル式調整装置100は、ロック機構が円筒状の第2のダイヤル142を有し、第1のダイヤル132と第2のダイヤル142とはダイヤル式調整装置100の軸線Cに沿って二段に配置されていることを特徴とする。これにより、第2のダイヤル142を第1のダイヤル132の外径の範囲内に収める場合、矩形状のつまみに比べて、第2のダイヤル142の寸法を径方向と軸線方向とに拡大させることができるので、第2のダイヤルの回転操作性を向上させることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な第1のダイヤルを備えた調整機構と、
前記第1のダイヤルの回転をロックしたりロックを解除したりするように切り替え可能に構成されたロック機構と、を有するダイヤル式調整装置であって、
前記ロック機構は円筒状の第2のダイヤルを有し、前記第1のダイヤルと前記第2のダイヤルとはダイヤル式調整装置の軸線に沿って二段に配置されていることを特徴とするダイヤル式調整装置。
【請求項2】
前記第2のダイヤルは前記第1のダイヤルと同一の回転軸線を備えていることを特徴とする請求項1に記載のダイヤル式調整装置。
【請求項3】
前記ロック機構は表示筒をさらに有し、
前記第2のダイヤルは前記表示筒の表面が露出する開口を備えており、
前記表示筒は円筒状であり、前記第2のダイヤルの径方向内側に配置され、前記第2のダイヤルの回転とともに回転しないように構成されており、前記第2のダイヤルがロック位置にあるときの前記開口に対応する位置と前記第2のダイヤルがロック解除位置にあるときの前記開口に対応する位置とに互いに異なる色彩が付与されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイヤル式調整装置。
【請求項4】
前記第2のダイヤルの前記開口は多数あり、前記第2のダイヤルの軸線回りに角度間隔を開けて配列されていることを特徴とする請求項3に記載のダイヤル式調整装置。
【請求項5】
前記第2のダイヤルは多数の切り欠きを備えており、前記多数の切り欠きは円弧状であり、径方向内側に凹んでおり、前記第2のダイヤルの軸線回りに角度間隔を開けて配列されていることを特徴とする請求項3に記載のダイヤル式調整装置。
【請求項6】
前記第2のダイヤルの前記開口は多数あり、前記多数の切り欠きの底部にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項5に記載のダイヤル式調整装置。
【請求項7】
前記調整機構は、
前記第1のダイヤルが固定された調整軸と、
前記調整軸を取り囲む円筒状の係合筒と、を有し、
前記係合筒は内周に第1の凹凸が設けられ、
前記ロック機構は、
前記第2のダイヤルに固定され、前記第2のダイヤルとともに回動する作動環と、
前記調整機構の前記調整軸に係合され、前記作動環によって移動されて前記係合筒の内周に対して着脱可能に構成されたストップピンと、を有し、
前記ストップピンはT字状であり、先端部が前記係合筒の周方向に幅広に形成され、前記前記ストップピンの前記先端部には前記第1の凹凸と噛み合い可能に構成させた第2の凹凸が設けられ、
前記ストップピンの前記第2の凹凸と前記係合筒の前記第1の凹凸とは対向配置され、前記第2のダイヤルをロック位置にすると前記第1の凹凸と前記第2の凹凸とが噛み合って前記第1のダイヤルが回転不能となり、
前記第2のダイヤルをロック解除位置にすると前記第1の凹凸と前記第2の凹凸との噛み合いが解除されて前記第1のダイヤルが回転自在となるように構成される請求項1又は2に記載のダイヤル式調整装置。
【請求項8】
前記第1の凹凸はダイヤル式調整装置の軸線回りに1つずつ交互に配列された多数の凹部と多数の凸部とを有し、
前記第2の凹凸は前記ストップピンの幅広方向に1つずつ交互に配列された多数の凹部と多数の凸部とを有し、
前記第1の凹凸と前記第2の凹凸との噛み合い状態では、前記第1の凹凸の前記多数の凸部が前記第2の凹凸の前記多数の凹部にそれぞれ挿入し、前記第2の凹凸の前記多数の凸部が前記第1の凹凸の前記多数の凹部にそれぞれ挿入することを特徴とする請求項7に記載のダイヤル式調整装置。
【請求項9】
前記ストップピンは磁性体からなり、前記作動環は磁石を備えており、前記ストップピンは前記磁石の磁力によって引き寄せられて前記作動環に当接していることを特徴とする請求項7に記載のダイヤル式調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学装置を調整するためのダイヤルの回転をロックしたりロックを解除したりするダイヤル式調整装置に関する。特に、銃器類や競技用射撃その他の射的競技などに用いられる照準スコープに好適なダイヤル式調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、銃器類や射的競技などには照準スコープが用いられている。この照準スコープは銃器類や射的競技などの狙い、すなわち、照準を定めるためのものである。この照準スコープには銃身の軸線と照準スコープの光軸とを一致させたり、射撃目標までの距離と銃弾の落下位置とを合わせたり、風による銃弾の流れを調整したりするためのダイヤル式調整装置が備えられている。このダイヤル式調整装置はダイヤルを回転させることによって調整するように構成されている。この種類のダイヤル式調整装置にはダイヤルの回転をロック(固定)したりロックを解除したりするロック機構をさらに備えたものがある。このようなロック機構は、例えば、特許文献1と特許文献2に開示されている。
【0003】
この特許文献1に記載の照準望遠鏡と特許文献2に記載のロック式タレット(locking turret)との双方は、ダイヤル(フォーカスノブ,キャップ)を回転させて調整するとともに、そのダイヤル自身を押し込んだり引き上げたりしてダイヤルの回転をロックしたりロックを解除したりするように構成されている。このため、ダイヤルと、ダイヤルの回転をロックしたりロックを解除したりする部材とが同一であるため、ダイヤルを固定する際にダイヤルの回転位置がずれてしまうおそれがあるという問題がある。
【0004】
この問題を解決するために特許文献3が考案されている。この特許文献3には調整機構のダイヤルと、ダイヤルの回転をロックしたりロックを解除したりするロック機構のつまみと、を別部材に構成してなるダイヤル式調整装置が記載されている。このダイヤル式調整装置を
図14に示す。
図14に示すように、このダイヤル式調整装置300,301,302は照準スコープ30のスコープ本体32に取り付けられており、ダイヤル332の上部につまみ342が配置されている。当該つまみ342はダイヤル332の回転軸線と異なる回転軸線を備えている。これにより、ダイヤル332を動かすことなく、つまみ342をロック位置P1とロック解除位置P2とに往復回動させることによってダイヤル332の回転をロックしたりロックを解除したりすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4030857号公報
【特許文献2】特許5543955号公報
【特許文献3】特開2021-196454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載のダイヤル式調整装置300,301,302は、つまみ342が略矩形状であり、円筒状のダイヤル332の上部に配置されていることにより、つまみ342の寸法をダイヤル332の外径の範囲内に収めるためには、つまみ342の寸法を大きくすることが難しい。このため、指先が太い場合や手袋を装着している場合には、つまみ342を操作しにくいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、指先が太い場合や手袋を装着している場合にもダイヤルを容易に操作することができるダイヤル式調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のダイヤル式調整装置は、回転可能な第1のダイヤルを備えた調整機構と、前記第1のダイヤルの回転をロックしたりロックを解除したりするように切り替え可能に構成されたロック機構と、を有するダイヤル式調整装置であって、前記ロック機構は円筒状の第2のダイヤルを有し、前記第1のダイヤルと前記第2のダイヤルとはダイヤル式調整装置の軸線に沿って二段に配置されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、回転可能な第1のダイヤルを備えた調整機構と、前記第1のダイヤルの回転をロックしたりロックを解除したりするように切り替え可能に構成されたロック機構と、を有するダイヤル式調整装置であって、前記ロック機構は円筒状の第2のダイヤルを有し、前記第1のダイヤルと前記第2のダイヤルとはダイヤル式調整装置の軸線に沿って二段に配置されていることにより、前記第2のダイヤルの寸法を前記第1のダイヤルの外径の範囲内に収める場合、矩形状のつまみの寸法に比べて、前記第2のダイヤルの寸法を径方向と軸線方向とに大きくすることができるので、前記第2のダイヤルの回転操作性を向上させることができる。
【0010】
本発明において、前記第2のダイヤルは前記第1のダイヤルと同一の回転軸線を備えていることが好ましい。この発明によれば、前記第2のダイヤルは前記第1のダイヤルと同一の回転軸線を備えていることにより、前記第2のダイヤルの寸法を前記第1のダイヤルの外径の範囲内に収める場合、前記第2のダイヤルが前記第1のダイヤルと異なる回転軸線を備えている場合に比べて、前記第2のダイヤルの寸法を径方向に大きくすることができるので、前記第2のダイヤルの回転操作性をさらに向上させることができる。前記第1のダイヤルと前記第2のダイヤルの双方の回転軸線はダイヤル式調整装置の軸線でもよい。
【0011】
本発明において、前記ロック機構は表示筒をさらに有し、前記第2のダイヤルは前記表示筒の表面が露出する開口を備えており、前記表示筒は円筒状であり、前記第2のダイヤルの径方向内側に配置され、前記第2のダイヤルの回転とともに回転しないように構成されており、前記第2のダイヤルがロック位置にあるときの前記開口に対応する位置と前記第2のダイヤルがロック解除位置にあるときの前記開口に対応する位置とに互いに異なる色彩が付与されていることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、前記ロック機構は表示筒をさらに有し、前記第2のダイヤルは前記表示筒の表面が露出する開口を備えており、前記表示筒は円筒状であり、前記第2のダイヤルの径方向内側に配置され、前記第2のダイヤルの回転とともに回転しないように構成されており、前記第2のダイヤルがロック位置にあるときの前記開口に対応する位置と前記第2のダイヤルがロック解除位置にあるときの前記開口に対応する位置とに互いに異なる色彩が付与されていることにより、前記第2のダイヤルをロック位置にしたときとロック解除位置にしたときとでは前記開口から異なる色彩が露出するので、前記第2のダイヤルがロック位置にあるのかロック解除位置にあるのかを前記第2のダイヤルに触れることなく視認できる。
【0013】
本発明において、前記第2のダイヤルの前記開口は多数あり、前記第2のダイヤルの軸線回りに角度間隔を開けて配列されていることが好ましい。この発明によれば、前記第2のダイヤルの前記開口は多数あり、前記第2のダイヤルの軸線回りに角度間隔を開けて配列されていることにより、前記開口は軸線回りに拡散するように配置されるので、前記第2のダイヤルがロック位置にあるのかロック解除位置にあるのかの視認性を向上させることができる。
【0014】
本発明において、前記第2のダイヤルは多数の切り欠きを備えており、前記多数の切り欠きは円弧状であり、径方向内側に凹んでおり、前記第2のダイヤルの軸線回りに角度間隔を開けて配列されていることが好ましい。この発明によれば、前記第2のダイヤルは多数の切り欠きを備えており、前記多数の切り欠きは円弧状であり、径方向内側に凹んでおり、前記第2のダイヤルの軸線回りに角度間隔を開けて配列されていることにより、前記多数の切り欠きが滑り止めとなるので、前記第2のダイヤルの回転操作性を向上させることができる。
【0015】
本発明において、前記第2のダイヤルの前記開口は多数あり、前記多数の切り欠きの底部にそれぞれ設けられていることが好ましい。この発明によれば、前記第2のダイヤルの前記開口は多数あり、前記多数の切り欠きの底部にそれぞれ設けられていることにより、前記多数の切り欠きの底部は前記第2のダイヤルを回転操作する際に指が接触しにくいので、前記開口が前記第2のダイヤルの回転操作を阻害することを防止できる。
【0016】
本発明において、前記調整機構は、前記第1のダイヤルが固定された調整軸と、前記調整軸を取り囲む円筒状の係合筒と、を有し、前記係合筒は内周に第1の凹凸が設けられ、前記ロック機構は、前記第2のダイヤルに固定され、前記第2のダイヤルとともに回動する作動環と、前記調整機構の前記調整軸に係合され、前記作動環によって移動されて前記係合筒の内周に対して着脱自在に構成されたストップピンと、を有し、前記ストップピンはT字状であり、先端部が前記係合筒の周方向に幅広に形成され、前記ストップピンの前記先端部には前記第1の凹凸と噛み合い可能に構成された第2の凹凸が設けられ、前記ストップピンの前記第2の凹凸と前記係合筒の前記第1の凹凸とは対向配置され、前記第2のダイヤルをロック位置にすると前記第1の凹凸と前記第2の凹凸とが噛み合って前記第1のダイヤルが回転不能となり、前記第2のダイヤルをロック解除位置にすると前記第1の凹凸と前記第2の凹凸との噛み合いが解除されて前記第1のダイヤルが回転自在となるように構成されることが好ましい。
【0017】
この発明によれば、前記調整機構は、前記第1のダイヤルが固定された調整軸と、前記調整軸を取り囲む円筒状の係合筒と、を有し、前記係合筒は内周に第1の凹凸が設けられ、前記ロック機構は、前記第2のダイヤルに固定され、前記第2のダイヤルとともに回動する作動環と、前記調整機構の前記調整軸に係合され、前記作動環によって移動されて前記係合筒の内周に対して着脱自在に構成されたストップピンと、を有し、前記ストップピンはT字状であり、先端部が前記係合筒の周方向に幅広に形成され、前記ストップピンの前記先端部には前記第1の凹凸と噛み合い可能に構成された第2の凹凸が設けられ、前記ストップピンの前記第2の凹凸と前記係合筒の前記第1の凹凸とは対向配置され、前記第2のダイヤルをロック位置にすると前記第1の凹凸と前記第2の凹凸とが噛み合って前記第1のダイヤルが回転不能となり、前記第2のダイヤルをロック解除位置にすると前記第1の凹凸と前記第2の凹凸との噛み合いが解除されて前記第1のダイヤルが回転自在となるように構成されることにより、前記第2のダイヤルをロック位置にすると前記ストップピンの前記第2の凹凸と前記係合筒の前記第1の凹凸とが噛み合うので、クリック機構のボールを前記係合筒の前記第1の凹凸に押し付けて前記第1のダイヤルの回転をロックする場合に比べて、前記第1のダイヤルの回転を強固に固定できる。
【0018】
本発明において、前記第1の凹凸はダイヤル式調整装置の軸線回りに1つずつ交互に配列された多数の凹部と多数の凸部とを有し、前記第2の凹凸は前記ストップピンの幅広方向に1つずつ交互に配列された多数の凹部と多数の凸部とを有し、前記第1の凹凸と前記第2の凹凸との噛み合い状態では、前記第1の凹凸の前記多数の凸部が前記第2の凹凸の前記多数の凹部にそれぞれ挿入し、前記第2の凹凸の前記多数の凸部が前記第1の凹凸の前記多数の凹部にそれぞれ挿入することが好ましい。
【0019】
この発明によれば、前記第1の凹凸はダイヤル式調整装置の軸線回りに1つずつ交互に配列された多数の凹部と多数の凸部とを有し、前記第2の凹凸は前記ストップピンの幅広方向に1つずつ交互に配列された多数の凹部と多数の凸部とを有し、前記第1の凹凸と前記第2の凹凸との噛み合い状態では、前記第1の凹凸の前記多数の凸部が前記第2の凹凸の前記多数の凹部にそれぞれ挿入し、前記第2の凹凸の前記多数の凸部が前記第1の凹凸の前記多数の凹部にそれぞれ挿入することにより、前記第1の凹凸と前記第2の凹凸とを強固に連結できる。
【0020】
本発明において、前記ストップピンは磁性体からなり、前記作動環は磁石を備えており、前記ストップピンは前記磁石の磁力によって引き寄せられて前記作動環に当接していることが好ましい。この発明によれば、前記ストップピンは磁性体からなり、前記作動環は磁石を備えており、前記ストップピンは前記磁石の磁力によって引き寄せられて前記作動環に当接していることにより、ばねによって前記ストップピンを前記作動環に引き寄せる場合に比べて、ばねを配置する必要がないので、前記ストップピンの寸法を大きくすることができ、前記ストップピンと前記係合筒との結合強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上、説明したように本発明によれば、第1のダイヤルの回転をロックしたりロックを解除したりすることを容易に操作できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に本実施形態のダイヤル式調整装置を備えた照準スコープを示す概略斜視図である。
【
図2】照準スコープの中の本実施形態のダイヤル式調整装置を拡大して示す概略斜視図である。
【
図3】
図2の二点鎖線iで囲まれた部分を示す拡大図であり、第2のダイヤルがロック解除位置にある状態を示す図である。
【
図4】
図3の第2のダイヤルがロック位置にある状態を示す図である。
【
図5】本実施形態のダイヤル式調整装置を示す概略分解斜視図である。
【
図6】作動環を一方向から見た状態を示す概略斜視図である。
【
図7】作動環を他方向から見た状態を示す概略斜視図である。
【
図8】ダイヤル式調整装置の第2のダイヤルがロック位置にある状態を示す概略断面図である。
【
図9】
図8の矢印I-I線で切断した状態を示す断面図である。
【
図10】ダイヤル式調整装置の第2のダイヤルがロック解除位置にある状態を示す概略断面図である。
【
図11】
図10の矢印II-II線で切断した状態を示す断面図である。
【
図12】他の実施形態のダイヤル式調整装置を示す概略断面図である。
【
図13】
図12の二点鎖線iiで囲まれた部分を示す拡大図である。
【
図14】従来のダイヤル式調整装置がスコープ本体に取り付けられた状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る本実施形態のダイヤル式調整装置について詳細に説明する。
図1は本発明に係る実施形態のダイヤル式調整装置を備えた照準スコープを示す概略斜視図である。
図2は照準スコープの中の本実施形態のダイヤル式調整装置を拡大して示す概略斜視図である。
図1と
図2に示すように、ダイヤル式調整装置100,101はライフルスコープの如く照準スコープ10に取り付けられている。この照準スコープ10は一方向に伸びており、対物レンズ部11とスコープ本体12とズーム調整部13と接眼レンズ部14とが光軸Oに沿って順次連結されている。スコープ本体12には複数のダイヤル式調整装置100,101とフォーカスダイヤル15とが取り付けられている。これら複数のダイヤル式調整装置100,101とフォーカスダイヤル15とは光軸Oの回りに角度間隔を開けて配列されている。フォーカスダイヤル15は焦点位置を調整するためのダイヤルである。複数のダイヤル式調整装置100,101は照準スコープ10の光学系を調整するためのものであり、内部構造が同一であるため、そのうち1つのダイヤル式調整装置100について以下に説明し、残りのダイヤル式調整装置101については説明を省略する。図示例では、ダイヤル式調整装置100,101は2つある。
【0024】
なお、
図5~
図8と
図10と
図12とおいて、矢印Upで示す方向を上側とし(
図5~
図8と
図10と
図12では紙面の上側である。)、矢印Dwで示す方向を下側とし(
図5~
図8と
図10と
図12では紙面の下側である。)、矢印Upと矢印Dwで示す方向を上下方向とする。これら方向は相対的な位置関係を示すものであり、重力方向に対する絶対的な位置関係を示すものではない。ダイヤル式調整装置100が照準スコープ10のスコープ本体12に取り付けられた状態において、矢印Upで示す上側はスコープ本体12から突出する方向であり、矢印Dwで示す下側はスコープ本体12の側である。矢印Upと矢印Dwで示す上下方向はダイヤル式調整装置100の軸線Cに沿う方向と作動環141の軸線Ctに沿う方向とにそれぞれ一致している。
【0025】
図5は本実施形態のダイヤル式調整装置を示す概略分解斜視図である。
図5に示すように、ダイヤル式調整装置100は調整機構110とロック機構140とを有する。調整機構110は支持部分120と回転部分130とを有する。
【0026】
調整機構110の支持部分120は、調整軸受121と係合筒122とを有する。調整軸受121は中空の円筒状の内筒部121aと円環状の外環部121bとを内外に備えた二重構造を備えている。内筒部121aは外環部121bから矢印Upで示す上側と矢印Dwで示す下側とにそれぞれ突出しており、内筒部121aの下側部分がスコープ本体12の開口部にねじ込まれている。係合筒122は中空の円筒状である。この係合筒122の中に調整軸受121が収容されて、係合筒122と調整軸受121とが固定されている。これにより、調整軸受121と係合筒122がスコープ本体12の外周上に固定される。言い換えると、調整機構110の支持部分120がスコープ本体12の外周上に固定されている。
【0027】
調整機構110の回転部分130は調整軸131と第1のダイヤル132と軸体133とを有する。調整軸131は中空の円筒状であり、径方向の幅長が大きい大径部131aと小さい小径部131bとが上下に連結されている。言い換えると、大径部131aから小径部131bが下側へ突出している。第1のダイヤル132は中空の円筒状である。軸体133は円柱状である。第1のダイヤル132の中に調整軸131が収容され、ねじN1,N1,N1によって第1のダイヤル132と調整軸131とが固定されている。軸体133は調整軸131の小径部131bの中に挿入され、軸体133の一部が調整軸131の小径部131bから下側へ突出している。これにより、調整軸131と第1のダイヤル132と軸体133とが連結されている。
【0028】
図8はダイヤル式調整装置の第2のダイヤルがロック位置にある状態を示す概略断面図である。
図10はダイヤル式調整装置の第2のダイヤルがロック解除位置にある状態を示す概略断面図である。
図8と
図10に示すように、調整機構110の回転部分130と支持部分120とは連結されている。具体的には、回転部分130の調整軸131は小径部131bが支持部分120の調整軸受121の内筒部121aの中に上側からねじ込まれており、回転部分130の軸体133が支持部分120の調整軸受121の内筒部121aから下側へ突出している。
【0029】
この状態において、調整機構110の回転部分130は支持部分120に対して軸線Cの回りに回転可能に構成されている。具体的には、回転部分130の調整軸131は支持部分120の調整軸受121に対して回転可能に連結されており、回転部分130の第1のダイヤル132と調整軸131と軸体133とは固定され、一体として軸線Cの回りに回転するように構成されている。このため、回転部分130の第1のダイヤル132を回転させると、回転部分130の軸体133がスコープ本体12の中へ出没し、照準スコープ10の中の内部機構を押圧したり押圧を解除したりするようになっている。このとき、円環状のストップリング135が調整軸131の小径部131bの下端部に取り付けられ、軸体133のスコープ本体12の中への突出量を規制している。
【0030】
ダイヤル式調整装置100の外周部分において、支持部分120の係合筒122の外周に円筒状の指標筒124が取り付けられている。この指標筒124は回転部分130の第1のダイヤル132の内側に配置されている。第1のダイヤル132と指標筒124とは上下方向に一部が重なるように上下に配置されている。すなわち、回転部分130の第1のダイヤル132の下側から支持部分120の指標筒124が露出している。第1のダイヤル132の外周には目盛が設けられ、指標筒124の外周には基準線が設けられている。このため、指標筒124の基準線に対する第1のダイヤル132の目盛を読み取ることにより、第1のダイヤル132の回転量を把握できるようになっている。
【0031】
図2に戻って、第1のダイヤル132は外周に多数の切り欠き132aが設けられている。この多数の切り欠き132aは円弧状であり、径方向内側に凹んでおり、ダイヤル式調整装置100の軸線Cの回りに角度間隔を開けて配列されている。これにより、この多数の切り欠き132aが滑り止めとなり、第1のダイヤル132の回転操作性が向上されている。図示例では、この多数の切り欠き132aは12個ある。
【0032】
図9は
図8の矢印I-Iの線で切断した状態を示す断面図である。
図11は
図10の矢印II-IIの線で切断した状態を示す断面図である。
図9と
図11に示すように、調整機構110には第1のクリック機構136が設けられている。この第1のクリック機構136は調整軸131の大径部131aと係合筒122との間に配置されている。具体的には、調整軸131の大径部131aに外周から径方向内側に伸びる有底の孔が形成され、この孔の中にコイルばね136cとボール保持部材136bとボール136aとが順次挿入され、ボール136aがボール保持部材136bによって回転自在に支持された状態で、コイルばね136cによって調整軸131の大径部131aの外周に出没自在に配置されている。調整軸131の大径部131aの外周と係合筒122の内周とは対向配置されている。係合筒122の内周には第1の凹凸122aが形成されている。この第1の凹凸122aは上下方向(軸線Cに沿う方向)に伸びる複数の凹部と複数の凸部とが軸線Cの回りに1本ずつ交互に配列されており、複数の凹部はボール136aを係合可能に構成されている。このため、クリック機構136のボール136aと係合筒122の第1の凹凸122aとは対向配置され、ボール136aはコイルばね136cの付勢力に抗って孔の中に没入可能な状態で第1の凹凸122aの複数の凹部の1つと係合している。この状態で、第1のダイヤル132を回転させると、調整軸131が回転して、ボール136aが孔の中に没入しながら第1の凹凸122aにおける複数の凸部を1つずつ乗り越える。これにより、第1のダイヤル132の回転にクリック感が付与されるようになっている。
【0033】
図5に戻って、ロック機構140は、作動環141と第2のダイヤル142とストップピン143とを有する。
図6は作動環を一方向から見た状態を示す概略斜視図である。
図7は作動環を他方向から見た状態を示す概略斜視図である。
図6と
図7に示すように、作動環141は円環状の円環部141aと一方向に伸びる棒状部141bとを有する。円環部141aの底部に棒状部141bの一端が接続されており、棒状部141bは円環部141aの底部から下側に向かって上下方向に伸びている。換言すると、棒状部141bは円環部141aを含む平面に対して直交する方向、つまり、作動環141の軸線Ctに沿う方向に伸びている。この棒状部141bは長手方向の中間部分に段差が設けられ、棒状部141bの円環部141aから遠い先端側部分(下側部分)141baは棒状部141bの円環部141aに近い基端側部分(上側部分)に比べて、円環部141aの径方向内側に配置されている、すなわち、棒状部141bの先端側部分141baは基端側部分より軸線Ctに接近している。
【0034】
図2に戻って、第2のダイヤル142は第1のダイヤル132と同様に外周に多数の切り欠き142aが設けられている。この多数の切り欠き142aは円弧状であり、径方向内側に凹んでおり、軸線Cの回りに角度間隔を開けて配列されている。これにより、この多数の切り欠き142aが滑り止めとなり、第2のダイヤル142の回転操作性が向上されている。図示例では、この多数の切り欠き142aは4個ある。
【0035】
図9と
図11に示すように、ストップピン143はT字状であり、先端部が基端部より幅広に形成されている。この幅広方向は軸線Cに対して直交する方向、すなわち、軸線Cの回りの周方向、換言すると、係合筒122の周方向である。このストップピン143の先端部には第2の凹凸143aが形成されている。この第2の凹凸143aは係合筒122の第1の凹凸122aと噛み合い可能に構成されており、第1の凹凸122aと同様に、上下方向(軸線Cに沿う方向)に伸びる複数の凹部と複数の凸部が先端部の幅広方向に1本ずつ交互に配列されている。
【0036】
図8と
図10に示すように、作動環141は円環部141aが調整軸131の大径部131aの上に回転自在に配置されており、この作動環141の円環部141aの上に第2のダイヤル142が積み重ねられている。
図5に示すように、第2のダイヤル142のねじ孔にねじN2,N2とねじ止めT,Tとが順次挿入されて、第2のダイヤル142と作動環141とが固定されている。これにより、作動環141は第2のダイヤル142とともに回転するようになっている。これら第2のダイヤル142と作動環141との双方は軸線Cの回りに回転するようになっている。
【0037】
図8と
図10に戻って、この状態において、作動環141の棒状部141bは調整軸131の中に上下方向に伸びている。この棒状部141bの先端側部分141baは調整軸受121の内筒部121aの外周に当接して、作動環141の棒状部141bが位置決めされている。この棒状部141bの先端側部分141baは調整軸受121の内筒部121aの外周に対してスライド自在に構成されている。このため、第2のダイヤル142を回転させると作動環141の棒状部141bが軸線Cの回りに回転するようになっている。
【0038】
ストップピン143は調整軸131の大径部131aと係合しており、軸線Cを中心として径方向に移動可能に構成されている。具体的には、調整軸131の大径部131aには径方向に伸びる孔が設けられ、この孔にストップピン143が調整軸131の外周側から挿入されて、ストップピン143は径方向に移動可能に配置されている。このストップピン143は先端部が調整軸131の径方向外側に配置され、基端部が調整軸131の径方向内側に配置されている。
【0039】
作動環141における棒状部141bの先端側部分141baはストップピン143に対応する位置に配置されている。
図6と
図7に示すように、作動環141の先端側部分141baは径方向外側に押面Asが形成されており、径方向内側に凹部Rsが設けられ、この凹部Rsの中に磁石Mgが収容されている。つまり、作動環141の押面Asの反対側に磁石Mgが配置されている。ストップピン143は金属などの磁性体からなり、磁力によって吸引されるように構成されている。このため、
図9と
図11に示すように、ストップピン143は磁石Mgの磁力によって径方向内側に引き寄せられて、押面Asと当接している。すなわち、ストップピン143の基端部が作動環141と当接している。
【0040】
図6に戻って、ここで、作動環141の押面Asは軸線Ctの回りに一側端Q1から他側端Q2まで径方向内側へ漸次凹んでおり、軸線Ctの回りに他側端Q2から一側端Q1まで径方向外側へ漸次張り出している。言い換えると、作動環141の軸線Ctから押面Asの一側端Q1までの距離をD1とし、軸線Ctから押面Asの他側端Q2までの距離をD2とすると、距離D1は距離D2より大きくなっており(D1>D2)、距離D2は距離D1より小さくなっている(D2<D1)。このため、ストップピン143は押面Asの一側端Q1と当接すると、径方向外側に向かって押し出され、押面Asの他側端Q2と当接すると、径方向内側に向かって引き込まれるようになっている。
【0041】
図9と
図11に示すように、ストップピン143の先端部は係合筒122の内周と対向配置されており、ストップピン143の第2の凹凸143aと係合筒122の第1の凹凸122aとが対向している。このため、ストップピン143の基端部が押面Asの一側端Q1と当接すると、ストップピン143が径方向外側へ押し出されてストップピン143の第2の凹凸143aと係合筒122の第1の凹凸122aとが噛み合うようになっている。一方、ストップピン143の基端部が押面Asの他側端Q2と当接すると、ストップピン143が径方向内側へ引き込まれてストップピン143の第2の凹凸143aと係合筒122の第1の凹凸122aとの噛み合いが解除されるようになっている。
【0042】
この第1の凹凸122aと第2の凹凸143aとの噛み合い状態では、第1の凹凸122aの複数の凸部が第2の凹凸143aの複数の凹部にそれぞれ挿入し、第2の凹凸143aの複数の凸部が第1の凹凸122aの複数の凹部にそれぞれ挿入している。これにより、第1の凹凸122aと第2の凹凸143aとを強固に連結でき、ストップピン143と係合筒122とを軸線Cの回りの回転方向に外れ難くすることができる。
【0043】
ロック機構140の作動環141は第2のダイヤル142とともに回転するように構成されており、ストップピン143は回転部分130の調整軸131と係合しており、この調整軸131は第1のダイヤル132と固定されている。支持部分120の係合筒122は調整軸受121に固定されている。このため、
図9に示すように、第2のダイヤル142をロック位置にすると、ストップピン143の第2の凹凸143aと係合筒122の第1の凹凸122aとが噛み合って、第1のダイヤル132が回転不能となり、第1のダイヤル132の回転がロックされるようになっている。これに対して、
図11に示すように、第2のダイヤル142をロック解除位置にすると、ストップピン143の第2の凹凸143aと係合筒122の第1の凹凸122aとの噛み合いが解除されて、第1のダイヤル132が回転自在となり、第1のダイヤル132の回転のロックが解除されるようになっている。
【0044】
図8と
図10に戻って、第2のダイヤル142の内側には表示筒144が設けられている。この表示筒144は中空の円筒状であり、第2のダイヤル142とともに回転しないように構成されている。具体的には、表示筒144は円筒状の蓋部材134の外周に蓋部材を取り囲むように配置され、この蓋部材134は調整軸131の大径部131aの中に配置されている。この状態において、表示筒144は上下方向において調整軸131の大径部131aより上側に配置され、径方向において第2のダイヤル142と蓋部材134との間に配置されている。
【0045】
図3は
図2の二点鎖線iで囲まれた部分を示す拡大図であり、第2のダイヤルがロック解除位置にある状態を示す図である。
図4は
図3の第2のダイヤルがロック位置にある状態を示す図である。
図3と
図4に示すように、第2のダイヤル142には開口Opが設けられており、この開口Opから表示筒144の表面が露出している。表示筒144の表面には、第2のダイヤル142がロック位置にあるときの開口Opに対応する位置と、第2のダイヤル142がロック解除位置にあるときの開口Opに対応する位置とに互いに異なる色彩CL1,CL2が付与されている。このため、第2のダイヤル142をロック位置にすると開口Opから色彩CL1が露出し(
図4参照)、ロック解除位置にすると開口Opから色彩CL2が露出するようになっている(
図3参照)。これにより、第2のダイヤル142がロック位置にあるのかロック解除位置にあるのかを第2のダイヤル142に触れることなく色彩CL1,CL2の違いから視認できるようになっている。例えば、色彩CL1は赤色であり、色彩CL2は青色や白色や無色である。
【0046】
第2のダイヤル142の開口Opは1つでも2つ以上の多数でもよい。図示例では、開口Opは4つある。この複数の開口Opは第2のダイヤル142の軸線回りに角度間隔を開けて配列されている。これにより、開口Opが1つの場合に比べて、第2のダイヤル142がロック位置にあるのかロック解除位置にあるのかの視認性を向上させることができる。
【0047】
また、第2のダイヤル142の開口Opは切り欠き142aの底部(径方向内側部分)に設けられている。切り欠き142aの底部は第2のダイヤル142を回転操作する際に指が接触しにくいので、開口Opが第2のダイヤル142の回転操作を阻害してしまうことを防止できる。図示例では、4つの開口Opが4つの切り欠き142aの底部にそれぞれ設けられている。
【0048】
図5に戻って、ロック機構140には第2のクリック機構146が設けられている。
図8と
図10に示すように、この第2のクリック機構146は調整軸131の大径部131aと作動環141の棒状部141bとの間に配置されている。具体的には、調整軸131の大径部131aには径方向に貫通する孔が形成され、この孔の中にボール146aとコイルばね146cと止めねじ146dとが調整軸131の大径部131aの外周側から順次挿入されている。止めねじ146dは孔の径方向外側を閉鎖している。ボール146aは調整軸131の内側に配置され、コイルばね146cによって径方向内側に向かって付勢されており、コイルばね146cの付勢力に抗って径方向外側に向かって孔の中に没入可能に構成されている。調整軸131の内側には作動環141の棒状部141bが配置され、ボール146aが作動環141の棒状部141bに当接している。
【0049】
図6に示すように、このとき、作動環141の棒状部141bには2つの凹部R1,R2が形成されている。この2つの凹部R1,R2はボール146aと係合可能に構成され、作動環141の軸線Ctの回りに角度間隔を開けて配置されている。一方の凹部R1は押面Asの一側部Q1に対応する角度位置に配置され、他方の凹部R2は押面Asの他側部Q2に対応する角度位置に配置されている。このため、ボール146aは第2のダイヤル142がロック位置にあると一方の凹部R1と係合し、第2のダイヤル142がロック解除位置にあると他方の凹部R2と係合するように構成されている。これにより、第2のダイヤル142のロック位置とロック解除位置との往復回動にクリック感が付与される。図示例では、この2つの凹部R1,R2は先端側部分141baにおける押面Asの上側、つまり、作動環141における棒状部141bの段差と押面Asとの間に配置されている。
【0050】
図2に示すように、第1のダイヤル132と第2のダイヤル142とは上下方向に二段に構成されている。換言すると、第1のダイヤル132と第2のダイヤル142とは軸線Cに沿って二段に配置されている。この第1のダイヤル132と第2のダイヤル142との両方は円筒状である。これにより、第2のダイヤル142の寸法を第1のダイヤル132の外径の範囲内に収める場合、矩形状のつまみに比べて、第2のダイヤル142の寸法を大きくすることができ、回転操作性を向上させることができる。
【0051】
この第2のダイヤル142は第1のダイヤル132と同一の回転軸線を備えている。具体的には、第2のダイヤル142は第1のダイヤル132と同様に、ダイヤル式調整装置100の軸線Cの回りに回転可能に構成されている。このため、第2のダイヤル142の寸法を第1のダイヤルの外径の範囲内に収める場合、第2のダイヤル142が第1のダイヤル132と異なる回転軸線を備えている場合に比べて、第2のダイヤル142の寸法を径方向に大きくすることができ、回転操作性をさらに向上させることができる。
【0052】
図8と
図10に示すように、ダイヤル式調整装置100は、調整軸受121とスコープ本体12との間と、調整軸131と軸体133の間と、調整軸131と調整軸受121との間と、第1のハンドル132と係合筒122の間とにはゴムリングS1,S2,S3,S4がそれぞれ介在されており、ダイヤル式調整装置100の内部への防塵と防水が確保されている。
【0053】
図12は他のダイヤル式調整装置を示す概略断面図である。
図13は
図12の二点鎖線iiで囲まれた部分を示す拡大図である。
図12と
図13に示すように、ダイヤル式調整装置100のロック機構140はストップピン143を係合筒122の第1の凹凸122aに押し付けたり押し付けを解除したりするように構成されているが、他のダイヤル式調整装置200のロック機構240は第1のクリック機構236のボール236aを係合筒122の第1の凹凸122aに押し付けたり押し付けを解除したりするように構成されている。すなわち、他のダイヤル式調整装置200では、ロック機構240と第1のクリック機構236とが兼用されている。他のダイヤル式調整装置200はダイヤル式調整装置100と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。この他のダイヤル式調整装置200の調整機構110と第2のダイヤル142と表示筒144と第2のクリック機構146は上述のダイヤル式調整装置100の調整機構110と第2のダイヤル142と表示筒144と第2のクリック機構146とそれぞれ同一である。他のダイヤル式調整装置200の作動環241は磁石Mgが設けられていないほかはダイヤル式調整装置100の作動環141と同一である。
【0054】
図13に示すように、具体的には、この他のダイヤル式調整装置200はストップピン134が設けられておらず、ダイヤル式調整装置100のストップピン134に対応する位置に第1のクリック機構236が配置されている。この第1のクリック機構236はダイヤル式調整装置100の第1のクリック機構136と同一であり、ボール236aとボール保持部材236bとコイルばね236cとを有する。このコイルばね236cとボール保持部材236bとボール236aとは調整軸131の孔に外周側から順次挿入されている。ボール保持部材236bは径方向内側の端部が作動環241の押面Asと当接しており、径方向外側の端部にボール236aが回転自在に保持されている。ボール236aはコイルばね236cによって径方向外側に向かって付勢され、コイルばね236cの付勢力に抗って径方向内側に向かって孔の中に没入可能な状態で、係合筒122の第1の凹凸122aと係合している。この第1の凹凸122aはダイヤル式調整装置100の第1の凹凸122aと同一である。
【0055】
この状態で、第2のダイヤル142をロック位置にすると、押面Asの一側部Q1がボール保持部材236bと当接して、押面Asと係合筒122との間の距離が狭まり、ボール保持部材236bが径方向外側に向かって押し出され、ボール236aが係合筒122の第1の凹凸122aに押し付けられる。このとき、ボール236aはコイルばね236cの付勢力に抗って径方向内側に向かって移動不能となり、第1のダイヤル132が回転不能となる。一方、第2のダイヤル142をロック解除位置にすると、押面Asの他側部Q2がボール保持部材236bと当接して、押面Asと係合筒122との間の距離が広がり、ボール236aがコイルばね236cの付勢力に抗って径方向内側に向かって移動可能となり、第1のダイヤル132が回転可能となる。このため、他のダイヤル式調整装置200は第1のクリック機構236を用いて第1のダイヤル132の回転をロックしたりロックを解除したりすることができるので、ダイヤル式調整装置100に比べて部品点数を低減できる。
【0056】
上述のように構成されたダイヤル式調整装置100,200は、第1のダイヤル132を回転可能としたり回転不能としたりするために、第2のダイヤル142を往復回動させてロック位置とロック解除位置とを切り替える。
【0057】
本実施形態においては、ダイヤル式調整装置100,200は第2のダイヤル142が円筒状であり、第1のダイヤル132の上部に配置され、第1のダイヤル132と第2のダイヤル142とは二段に配置されていることにより、第2のダイヤル142の寸法を第1のダイヤル132の外径の範囲内に収める場合、矩形状のつまみに比べて、第2のダイヤル142の寸法を径方向と軸線Cに沿う方向とに大きくすることができるので、第2のダイヤル142の回転操作性を向上させることができる。特に、手に手袋を装着したままでも第2のダイヤル142を容易に回転させることができる。
【0058】
この実施形態においては、第2のダイヤル142は第1のダイヤル132と同一の回転軸線を備えていることにより、第2のダイヤル142の寸法を第1のダイヤルの外径の範囲内に収める場合、第2のダイヤル142が第1のダイヤル132と異なる回転軸線を備えている場合に比べて、第2のダイヤル142の寸法を径方向に大きくすることができるので、第2のダイヤル142の回転操作性をさらに向上させることができる。
【0059】
本実施形態においては、第2のダイヤル142は外周に多数の切り欠き142aを備えており、この多数の切り欠き142aは円弧状であり、径方向内側に凹んでおり、軸線Cの回りに角度間隔を開けて配列されていることにより、この多数の切り欠き142aが滑り止めとなるので、第2のダイヤル142の回転操作性をさらに向上させることができる。
【0060】
この実施形態においては、第2のダイヤル142は開口Opを備えており、第2のダイヤル142の内側に円筒状の表示筒144が配置され、この表示筒144は第2のダイヤル142とともに回転しないように構成され、第2のダイヤル142がロック位置にあるときの開口Opに対応する位置と、第2のダイヤル142がロック解除位置にあるときの開口Opに対応する位置とに互いに異なる色彩CL1,CL2が付与されていることにより、第2のダイヤル142をロック位置にしたときとロック解除位置にしたときとでは開口Opから異なる色彩CL1,CL2が露出するので、第2のダイヤル142がロック位置にあるのかロック解除位置にあるのかを第2のダイヤル142に触れることなく、視認できる。
【0061】
本実施形態においては、第2のダイヤル142の開口Opは多数あり、第2のダイヤル142の軸線回りに角度間隔を開けて配列されていることにより、開口Opが1つである場合に比べて、第2のダイヤル142がロック位置にあるのかロック解除位置にあるのかの視認性を向上させることができる。
【0062】
尚、本実施形態のダイヤル式調整装置100、200は上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本実施形態のダイヤル式調整装置100、200は第2のダイヤル142が第1のダイヤル132と同一の回転軸線を備えているが、第2のダイヤル142が第1のダイヤル132と異なる回転軸線を備えていてもよい。
【0063】
なお、本実施形態のダイヤル式調整装置100、200はライフルスコープの如く照準スコープ10に取り付けられているが、望遠鏡や双眼鏡に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…照準スコープ、11…対物レンズ部、12…スコープ本体、13…ズーム調整部、14…接眼レンズ部、15…フォーカスダイヤル、100,101,200…ダイヤル式調整装置、110…調整機構、120…支持部分、121…調整軸受、121a…内筒部、121b…外環部、122…係合筒、122a…第1の凹凸、124…指標筒、130…回転部分、131…調整軸、131a…大径部、131b…小径部、132…第1のダイヤル、132a,142a…切り欠き、133…軸体、134…蓋部材、135…ストップリング、136,236…第1のクリック機構、136a,146a,236a…ボール、136b,236b…ボール保持部材、136c,146c,236c…コイルばね、140,240…ロック機構、141,241…作動環、141a…円環部、141b…棒状部、141ba…先端側部分、142…第2のダイヤル、143…ストップピン、143a…第2の凹凸、144…表示筒、146…第2のクリック機構、146d…止めねじ、As…押面、C,Ct…軸線、CL1,CL2…色彩、D1,D2…距離、Mg…磁石、N1,N2…ねじ、O…光軸、Op…開口、P1…ロック位置、P2…ロック解除位置、Q1…一側端、Q2…他側端、R1,R2,Rs…凹部、S1,S2,S3…ゴムリング、T…ねじ止め、Up,Dw…矢印。