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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117003
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】搬送用ベルト
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/34 20060101AFI20240821BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B65G15/34
B32B27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022906
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 文香
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佑紀
【テーマコード(参考)】
3F024
4F100
【Fターム(参考)】
3F024AA11
3F024BA01
3F024CA02
3F024CA04
3F024CB04
3F024CB07
3F024CB14
4F100AK01B
4F100AK41C
4F100AK46A
4F100AK51B
4F100BA03
4F100BA07
4F100DG11A
4F100DG11C
4F100DG12A
4F100DG15C
4F100GB51
4F100JB16B
4F100JK01
4F100JK01A
4F100JK01C
4F100JK07
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】耳ほつれの発生を抑制することができるとともに、走行時における不具合を従来よりも抑制することができる搬送用ベルトを提供する。
【解決手段】搬送用ベルト1は、中間層として設けられた樹脂層2と、樹脂層2の表面に積層された表面帆布層3と、樹脂層2の裏面に積層された裏面帆布層4と、を備える。また、搬送用ベルト1は、表面帆布層3と樹脂層2と裏面帆布層4との総厚が1mm以下であり、表面帆布層3が、裏面帆布層4よりも厚さが薄く、かつ、長手方向の縦強力が小さい構成を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に形成される搬送用ベルトであって、
中間層として設けられた樹脂層と、
前記樹脂層の表面に積層された表面帆布層と、
前記樹脂層の裏面に積層された裏面帆布層と、
を備え、
前記表面帆布層と前記樹脂層と前記裏面帆布層との総厚が1mm以下であり、
前記表面帆布層は、前記裏面帆布層よりも厚さが薄く、かつ、長手方向の縦強力が小さい構成を有する、搬送用ベルト。
【請求項2】
前記表面帆布層の厚さは、0.4mm以下であり、
前記裏面帆布層の厚さは、0.5±0.2mmである、
請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項3】
前記表面帆布層の幅1mmあたりの長手方向における縦強力は、15±5N/mmであり、
前記裏面帆布層の幅1mmあたりの長手方向における縦強力は、50±5N/mmである、
請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項4】
向かい合う支持台の間に前記搬送用ベルトを張架させた状態で前記表面帆布層に押子部を押し当て、前記支持台の間で前記押子部により前記搬送用ベルトを30度まで曲げたときに、前記押子部に与えている力を曲げ応力として測定する試験を行ったときの前記曲げ応力が、1.1N超8.4N未満である、
請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項5】
直径が15mm以下の小径プーリ、又は、先端の曲率直径が15mm以下のナイフエッジ状のベルト支持部に掛け渡される、
請求項1に記載の搬送用ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送用ベルトでは、帆布やニット、高硬度樹脂等の材料により表面層を形成して表面に滑り性を持たせる手法が考えられている。また、表面及び裏面の両面に優れた滑り性を有する搬送用ベルトとしては、例えば、中間層となる樹脂層の両面に帆布層を設けた搬送用ベルトや、1枚の帆布層単体からなる搬送用ベルトが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一般的に樹脂層の表面及び裏面の両面に帆布層を設けた搬送用ベルトは、総厚が1.0mm程度であり、一方、1枚の帆布層単体からなる搬送用ベルトは、厚さが0.5mm程度で構成されている。例えば、直径が10mm程度でなる小径プーリや、先端の曲率直径が小さいナイフエッジ状のベルト支持部に掛け渡される搬送用ベルト等のように、曲げ剛性が小さい搬送用ベルトが好ましい場合には、厚さが薄く曲げ剛性が小さい1枚の帆布層単体からなる搬送用ベルトが使用されることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平07―002484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ベルト端部同士が接合された無端状の搬送用ベルトでは、ベルト側面にかかる力が大きいと、1枚の帆布層単体のみからなる構成の場合、耳ほつれを生じるおそれがあるという懸念があった。樹脂層の両面に帆布層をそれぞれ設けた搬送用ベルトでは、樹脂層を有することから耳ほつれの発生を抑制できるものの、帆布層単体の搬送用ベルトに比べて厚みがあり、曲げ剛性が大きいことから、例えば、搬送用ベルトを走行させた際に機械への負荷が増大してしまったり、或いは、プーリに沿って搬送用ベルトが走行し難い等、走行時に不具合が生じる可能性があった。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、耳ほつれの発生を抑制することができるとともに、走行時における不具合を従来よりも抑制することができる搬送用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搬送用ベルトは、無端状に形成される搬送用ベルトであって、中間層として設けられた樹脂層と、前記樹脂層の表面に積層された表面帆布層と、前記樹脂層の裏面に積層された裏面帆布層と、を備え、前記表面帆布層と前記樹脂層と前記裏面帆布層との総厚が1mm以下であり、前記表面帆布層は、前記裏面帆布層よりも厚さが薄く、かつ、長手方向の縦強力が小さい構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耳ほつれの発生を抑制することができるとともに、走行時における不具合を従来よりも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る搬送用ベルトの断面構成を示す断面図である。
図2】曲げ応力を測定する応力測定装置の構成を示す概略図である。
図3】曲げ応力を測定した検証試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面について本発明の一実施形態を詳述する。なお、以下の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(1)搬送用ベルトの構成
図1に示すように、本実施形態に係る搬送用ベルト1は、帯状に形成された樹脂層2と、樹脂層2の表面に積層された帯状の表面帆布層3と、樹脂層2の裏面に積層された帯状の裏面帆布層4と、を備えており、表面帆布層3及び裏面帆布層4で樹脂層2が挟み込まれた構成を有する。
【0012】
搬送用ベルト1は、ベルト端部同士が接合されて無端状に形成され、複数のプーリに掛け渡される。搬送用ベルト1は、表面帆布層3の外表面に搬送物が載置され、裏面帆布層4の外表面にプーリが接するように配置され、当該プーリが回転することで搬送用ベルト1が回転移動し、表面帆布層3上に載置された搬送物を移動させる。
【0013】
本実施形態に係る搬送用ベルト1は、無端状の搬送用ベルト1を掛け渡すプーリの直径は特に限定されないが、例えば、直径が15mm以下の小径プーリや、先端直径が15mm以下のナイフエッジ状のベルト支持部に対しても適用することができる。搬送用ベルト1は、直径が15mm以下の小径プーリや、先端の曲率直径が15mm以下のナイフエッジ状のベルト支持部に使用しても、搬送用ベルト1全体の剛性が小さいことから、当該搬送用ベルト1を走行させた際に機械への負荷を軽減でき、また、ずれることなく小径プーリに沿って走行させることができ、走行時に不具合が生じることを抑制し得る。
【0014】
搬送用ベルト1は、露出する表面及び裏面に、帆布が表面帆布層3及び裏面帆布層4として設けられていることで、優れた滑り性を有する。また、搬送用ベルト1は、表面帆布層3の厚さを裏面帆布層4の厚さよりも薄くし、かつ、表面帆布層3の長手方向の縦強力を裏面帆布層4の長手方向の縦強力よりも小さくして、搬送用ベルト1全体の剛性が調整さている。これにより、搬送用ベルト1は、樹脂層2の両面に帆布が表面帆布層3及び裏面帆布層4として設けられているものの、1枚の帆布層単体のみからなる従来の搬送用ベルトと同様に、小径プーリにも使用可能な構成を有している。
【0015】
搬送用ベルト1は、表面帆布層3、樹脂層2及び裏面帆布層4の各層の厚さを合わせた総厚が、1mm以下であることが望ましく、0.85mm以下であることがより好ましい。搬送用ベルト1は、総厚を1mm以下とし、厚さを薄くすることで直径が15mm以下の小径プーリや、先端の曲率直径が15mm以下のナイフエッジ状のベルト支持部にも使用でき、また、総厚を0.85mm以下とすることで、1枚の帆布層単体のみからなる厚さが薄い従来の搬送用ベルトと同様の使用形態で小径プーリやナイフエッジ状のベルト支持部に使用することもできる。
【0016】
樹脂層2は、搬送用ベルト1の中間層として設けられている。樹脂層2は、例えば、熱可塑性樹脂材料により形成されており、搬送用ベルト1において接着性と柔軟性とを付与する。熱可塑性樹脂材料としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン等が挙げられる。樹脂層2は、搬送用ベルト1全体の総厚や曲げ応力(後述する)の観点から、厚さが0.3±0.1mmであることが望ましい。
【0017】
表面帆布層3は、例えば、ポリエステル繊維又はナイロン繊維等から形成されている。ポリエステル繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等が挙げられ、ナイロン繊維としては、例えばナイロン6繊維、ナイロン66繊維等が挙げられる。本実施形態に係る表面帆布層3は、ナイロン繊維により平織されたナイロン帆布からなる。
【0018】
表面帆布層3は、プーリと接する裏面帆布層4よりも厚さが薄く、かつ、長手方向の縦強力が小さい構成を有する。表面帆布層3及び裏面帆布層4の長手方向とは、プーリに掛け渡らされた無端状の搬送用ベルト1が走行する方向である。表面帆布層3は、搬送用ベルト1に対して張力を付与するためのものではなく、搬送用ベルト1の表面に対して滑り性を持たせるためのものであり、裏面帆布層4よりも強度が弱く、薄い帆布により形成されている。
【0019】
表面帆布層3の厚さは、搬送用ベルト1の全体の総厚や曲げ応力の観点から、0.4mm以下、好ましくは0.03~0.4mmであることが望ましい。表面帆布層3の幅1mmあたりの長手方向における縦強力は、15±5N/mmであることが望ましい。
【0020】
表面帆布層3の幅1mmあたりの長手方向における縦強力の数値は、JISL1096に記載の引張強さ及び伸び率A法(ストリップ法)によって測定したときの数値である。
【0021】
裏面帆布層4は、例えば、上述したポリエステル繊維又はナイロン繊維等から形成されている。本実施形態に係る裏面帆布層4は、表面帆布層3とは異なる、ポリエステル繊維によるハーフマット織のポリエステル帆布からなる。
【0022】
裏面帆布層4は、搬送物が載置される表面帆布層3よりも厚さが厚く、かつ、長手方向の縦強力も大きい構成を有する。裏面帆布層4は、表面帆布層3とは異なり、搬送用ベルト1に対して必要な剛性を持たせるため、適度な強度を有した構成としている。
【0023】
裏面帆布層4の厚さは、搬送用ベルト1の全体の総厚や曲げ応力の観点から、0.5±0.2mmであることが望ましい。裏面帆布層4の幅1mmあたりの長手方向における縦強力は、50±5N/mmであることが望ましい。
【0024】
なお、裏面帆布層4の幅1mmあたりの長手方向における縦強力の数値は、上述した表面帆布層3と同様に、JISL1096のA法(ストリップ法)によって測定したときの数値である。
【0025】
(2)搬送用ベルトの製造方法
搬送用ベルト1は、表面帆布層3と裏面帆布層4とが樹脂層2から剥離しないような手法であれば、任意の手法で製造することができる。例えば、帯状に形成された樹脂層2と、同じく帯状に形成された表面帆布層3及び裏面帆布層4とを用意する。次いで、樹脂層2の表面に表面帆布層3を任意の手法で接着させるとともに、樹脂層2の裏面にも裏面帆布層4を任意の手法で接着させて搬送用ベルト1を製造する。
【0026】
樹脂層2の表面及び裏面に対する表面帆布層3及び裏面帆布層4の接着は、接着剤を使用してもよく、或いは、加熱加圧による接着でもよい。なお、樹脂層2、表面帆布層3及び裏面帆布層4の各厚さは、搬送用ベルト1が所定の総厚になるように、「(1)搬送用ベルトの構成」にて説明した各厚さの範囲内で選定する。
【0027】
(3)搬送用ベルトの曲げ応力
次に、本実施形態に係る搬送用ベルト1の曲げ応力について説明する。搬送用ベルト1の曲げ応力の測定は、図2に示すような応力測定装置100により測定することが望ましい。応力測定装置100は、向かい合う対の支持台10,11と、ブロック状の押子部13と、図示しない計測部とを有する。押子部13及び計測部は、オートグラフ(精密万能試験機)であり、例えば、ミネベアミツミ社製の「TGI-50kN」を用いることができる。また、支持台10,11は、曲げ試験治具であり、例えば、ミネベアミツミ社製の「THA-C01」を用いることができる。
【0028】
支持台10,11は、所定の距離(後述する支点間距離とも称する)Wを設けて対向配置されている。支持台10,11は同一構成を有しており、それぞれ平面状の頂上面12aと、互いに対向した垂直な対向面12bとを有する。支持台10,11の頂上面12aと対向面12bと角部は、曲率半径が2mm(すなわち「R2」)のテーパ状に形成されている。支持台10,11には、応力測定時、測定対象となる搬送用ベルト1が、支持台10,11上で支持台10,11間に張架されて頂上面12aに固定される。本実施形態では、測定対象の搬送用ベルト1の表面帆布層3を上面とし、裏面帆布層4を下面として支持台10,11間に張架され、表面帆布層3側から搬送用ベルト1が押子部13で押されるように配置されることが望ましい。
【0029】
ここでは、一方の支持台10の頂上面12a及び対向面12bの交差位置が、搬送用ベルト1の一端を支える支点16となり得、他方の支持台11の頂上面12a及び対向面12bの交差位置が、搬送用ベルト1の他端を支える支点16となり得る。
【0030】
支点16は、向かい合う支持台10,11の間に張架された搬送用ベルト1の表面帆布層3に、押子部13の湾曲先端部14を押し当て、当該搬送用ベルト1を押子部13で曲げていったときに、支持台10,11が搬送用ベルト1を支える位置である。この場合、一方の支持台10の支点16と、他方の支持台11の支点16との支点間距離Wが、40mmに選定されている。
【0031】
押子部13は、支持台10,11間の中間位置に配置されており、支持台10,11間に張架された搬送用ベルト1を上方から下方へと押圧可能な構成を有する。この場合、押子部13は、支持台10,11間に張架された搬送用ベルト1の幅方向に沿って延びており、搬送用ベルト1を押圧する湾曲先端部14が断面逆三角形状に形成されている。
【0032】
湾曲先端部14は、断面逆三角形状の先端部分がなだらかに湾曲状に形成され、押子部13が下降することで、搬送用ベルト1の幅方向全域に亘って接触し、搬送用ベルト1を上方から下方へと押圧する。本実施形態では、支持台10,11の支点間距離Wが40mmに選定されていることから、支持台10,11間の中間距離Wとして、支持台10,11の各支点16から20mmの位置に押子部13の湾曲先端部14が配置されている。
【0033】
図示しない計測部は、押子部13の湾曲先端部14により搬送用ベルト1を上方から下方へと押圧して、搬送用ベルト1を所定の角度θまで曲げたときに、押子部13に与えている力を、曲げ応力として測定する。
【0034】
本実施形態では、向かい合う支持台10,11の間に、搬送用ベルト1を張架させた状態で表面帆布層3に押子部13の湾曲先端部14を押し当て、当該搬送用ベルト1を押子部13で30度まで曲げるときに、押子部13に与える力を曲げ応力として測定する。
【0035】
ここで、搬送用ベルト1が曲がったときの角度θとは、一方の支持台10の支点16から押子部13の湾曲先端部14まで沿って延びる一方のベルト延在方向と、他方の支持台11の支点16から押子部13の湾曲先端部14まで沿って延びる他方のベルト延在方向と、がなす角度であり、支持台10,11の間に搬送用ベルト1が水平状に張架されたときには0度となる。
【0036】
本実施形態では、角度θが30度になるまで押子部13を搬送用ベルト1に押し付け、このときに、押子部13に与えている力を曲げ応力として測定する。なお、ここでは、押子部13の湾曲先端部14を、支持台10,11の支点16の高さ位置から下降距離Hとして5.4mm下降させたときに、搬送用ベルト1が30度に曲げられた状態となる。よって、応力測定装置100では、支持台10,11の支点16の高さ位置から下降距離Hまで押子部13を下降させたときに押子部13に与えている力を曲げ応力として測定する。
【0037】
搬送用ベルト1の曲げ応力は、温度23℃、湿度50%RHの試験室環境下で測定することが望ましい。また、搬送用ベルト1の曲げ応力を測定する際は、搬送用ベルト1を幅25mm、長手方向の長さ80mmの試験片とすることが望ましい。
【0038】
本実施形態に係る搬送用ベルト1は、向かい合う支持台10,11の間に搬送用ベルト1を張架させた状態で表面帆布層3に押子部13を押し当て、支持台10,11の間で押子部13により搬送用ベルト1を30度まで曲げたときに、押子部13に与えている力を曲げ応力として測定する試験を行い、このときの曲げ応力が1.1N超8.4N未満であることが望ましい。
【0039】
搬送用ベルト1の曲げ応力が1.1N以下となると、帆布2層で構成できず、帆布1層のみとなるため、耳ほつれが発生しやすくなり、搬送用ベルト1の曲げ応力が8.4以上となると、小プーリ径やナイフエッジ状のベルト支持部等に巻き付き難いため、上述したように、搬送用ベルト1の曲げ応力は、1.1N超8.4N未満であることが望ましい。
【0040】
(4)作用及び効果
以上の構成において、搬送用ベルト1は、中間層として設けられた樹脂層2と、樹脂層2の表面に積層された表面帆布層3と、樹脂層2の裏面に積層された裏面帆布層4と、を備える。また、搬送用ベルト1は、表面帆布層3と樹脂層2と裏面帆布層4との総厚が1mm以下であり、表面帆布層3が、プーリと接する裏面帆布層4よりも厚さが薄く、かつ、長手方向の縦強力が小さい構成を有する。
【0041】
これにより、搬送用ベルト1は、樹脂層2を有することでベルト側面での密着性が向上し得、1枚の帆布層単体のみからなる従来の搬送用ベルトに比べて、耳ほつれの発生を抑制することができる。また、搬送用ベルト1は、表面帆布層3及び裏面帆布層4の厚みや縦強力を調整することで、一定の剛性を与えつつ総厚を薄くし得るとともに、例えば、搬送用ベルト1を走行させた際に機械へ与える負荷を低減したり、或いは、プーリに沿って搬送用ベルト1が走行し易い剛性とし、走行時における不具合を従来よりも抑制することができる。
【0042】
(5)検証試験
次に、本実施形態に係る搬送用ベルト1と、比較例となる搬送用ベルトとについて、それぞれ曲げ応力を確認する検証試験を行った。本実施形態に係る搬送用ベルト1は、下記の表1に示すような樹脂シートや帆布を、樹脂層2、表面帆布層3及び裏面帆布層4として予め準備し、樹脂層2の表面及び裏面に対して接着剤を用いて表面帆布層3及び裏面帆布層4をそれぞれ接着して製造し、これを実施例1とした。比較例としては、下記の表1に示すような構成でなる搬送用ベルトを比較例1~3として用意した。
【表1】
【0043】
表1では、実施例1や比較例1~3において、それぞれ樹脂層、表面帆布層及び裏面帆布層等として使用した樹脂材料や帆布を明記している。下記の表2には、実施例1や比較例1~3にて使用した各帆布について、経糸及び緯糸の材質と、織構成と、搬送用ベルトが走行する方向を長手方向とし、それぞれ長手方向における幅1mmあたりの縦強力(表2中、「強力(縦)と表記」)N/mmと、厚みmmと、をそれぞれ示した。
【表2】
【0044】
実施例1は、本実施形態に係る搬送用ベルト1であり、樹脂層2として、熱可塑性ポリウレタンを用い、表面帆布層3として表2の帆布4を用い、裏面帆布層4として、表2の帆布2を用い、総厚を0.85mmとした。実施例1は、表2に示したように、表面帆布層3が厚さ0.10mmで縦強力15.2N/mmの平織であり、一方、裏面帆布層4が厚さ0.54mmで縦強力51.0N/mmのハーフマット織であり、表面帆布層3が裏面帆布層4よりも厚さが薄く、かつ、縦強力が小さい構成とした。
【0045】
比較例1は、樹脂層の表面及び裏面の両面に帆布層を設けた、従来の両面帆布構成の搬送用ベルトであり、樹脂層として、熱可塑性ポリウレタンを用い、表面帆布層として、帆布1を用い、裏面帆布層として、帆布1を用い、総厚が1.1mmであった。比較例1は、表2に示したように、表面帆布層と裏面帆布層とについて厚さと縦強力とが同一であった。
【0046】
比較例2は、樹脂層の表面及び裏面の両面に帆布層を設けた、従来の両面帆布構成の搬送用ベルトであり、樹脂層として、熱可塑性ポリウレタンを用い、表面帆布層及び裏面帆布層として、帆布3を用い、総厚が1mmであった。比較例2は、表2に示したように、表面帆布層と裏面帆布層とについて厚さと縦強力とが同一であり、さらに、比較例1の帆布よりも縦強力が小さい帆布を用いている。
【0047】
比較例3は、樹脂層を設けずに、1枚の帆布層単体のみからなる従来の搬送用ベルトであり、帆布層として、帆布5を用い、総厚が0.8mmであった。比較例3では、表2に示したように、厚さ0.77mmで縦強力75.0N/mmの平織(12本ごとに1本)でなる帆布を用いている。
【0048】
次いで、これら実施例1と比較例1~3とについて、図2に示した応力測定装置100を用い、上述した「(3)搬送用ベルトの曲げ応力」に従って、それぞれ曲げ応力を測定した。具体的には、幅25mm、長手方向80mmの大きさでなる、実施例1の搬送用ベルト1と、比較例1~3の搬送用ベルトとを、それぞれ試験片として用意した。
【0049】
次いで、例えば、実施例1の試験片を、応力測定装置100の支持台10,11間に張架し、押子部13を試験片に向けて下降してゆき、予備試験力(例えば、1N)に達するまで押子部13を試験片に押し付けた。この地点を押子部13の移動距離0mmの地点とし、試験片が30度に曲げられるまで(押子部13が、移動距離0mmから下方に5.4mmの位置に移動するまで)、押子部13を試験片に押し付けた。
【0050】
押子部13を試験片に押し付けて、試験片を30度まで曲げるときに、押子部13に与える力を測定し、測定した最大の力を試験片の曲げ応力として測定した。なお、実施例1及び比較例1~3の各試験片の曲げ応力の測定は、温度23℃、湿度50%RHの試験室環境下で行った。このようにして、実施例1及び比較例1~3の試験片ごとに、試験片を30度まで曲げるために押子部13に与える力をそれぞれ5回測定し、5回の平均を算出したところ、図3に示すような結果が得られた。
【0051】
図3に示すように、従来の両面帆布構成の搬送用ベルトである比較例1,2では、曲げ応力がそれぞれ10.4N、8.4Nであった。また、1枚の帆布層単体のみからなる従来の搬送用ベルトである比較例3では、曲げ応力が1.1Nであった。
【0052】
一方、本実施形態に係る搬送用ベルト1である実施例1は、曲げ応力が比較例3の1.1N超で比較例2の8.4N未満の6.1Nであった。
【0053】
実施例1では、耳ほつれが発生し易い、帆布層単体のみからなる従来の搬送用ベルト(比較例3)の曲げ応力よりも大きい曲げ応力となるものの、従来の両面帆布構成の搬送用ベルトである比較例1,2のように、搬送用ベルトの走行時に不具合が生じるおそれがある曲げ応力よりが小さい曲げ応力を実現し得ることが確認できた。
【0054】
また、実施例1では、樹脂層2の両面に表面帆布層3及び裏面帆布層4を設けて優れた滑り性を実現しつつ総厚を0.85mm以下とし、さらに、従来の両面帆布構成の搬送用ベルトである比較例1,2のように、搬送用ベルトの走行時に不具合が生じるおそれがある曲げ応力よりも小さい曲げ応力を実現し得ることが確認できた。
【0055】
なお、本実施形態に係る搬送用ベルト1は、表面帆布層3及び裏面帆布層4の厚さや縦強力を調整することで、1.1N超、8.4N未満の間で曲げ応力を選定することができる。
【0056】
(6)他の実施形態
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、上述した実施形態においては、表面帆布層3及び裏面帆布層4について異なる素材(材質や織)の帆布を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、表面帆布層3及び裏面帆布層4について同一素材の帆布を適用して、表面帆布層3が裏面帆布層4よりも厚さが薄く、かつ、縦強力が小さい構成としてもよい。また、上述した実施形態では、搬送用ベルト1について、表面帆布層3に搬送物を載置し、裏面帆布層4にプーリ等が接するように使用する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、表裏逆に使用してもよく、例えば、裏面帆布層4に搬送物を載置し、表面帆布層3にプーリ等が接するように使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 搬送用ベルト
2 樹脂層
3 表面帆布層
4 裏面帆布層
図1
図2
図3