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特開2024-117005車両用ハーネス支持部材及び車両用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117005
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】車両用ハーネス支持部材及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20240821BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20240821BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240821BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240821BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20240821BHJP
   H01B 7/40 20060101ALI20240821BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H02G3/30
B60N2/90
H02G3/04 062
H02G3/04
H01B7/00 301
H01B7/18 G
H01B7/40 307Z
B60R16/02 623A
B60R16/02 620A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022910
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】井山 知之
(72)【発明者】
【氏名】矢ノ下 克尚
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 悠馬
【テーマコード(参考)】
3B087
5G309
5G313
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3B087DE09
3B087DE10
5G309AA09
5G309GA01
5G313AA10
5G313AB02
5G313AC09
5G313AD05
5G313AE01
5G357DA06
5G357DA10
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD14
5G357DG04
5G357DG05
5G363AA07
5G363AA12
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA20
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】少ない部品で構成され、ハーネスの取付位置を安定させることができる車両用ハーネス支持部材及び車両用シートを得る。
【解決手段】車両用ハーネス支持部材10は、ハーネスを包むシート状の外装材60と、外装材60を貫通して設けられる取付部材70とを備えている。取付部材70は、ハーネスHが外装材60に包まれた状態で、外装材60の内側にハーネスHを保持する第1保持部71を有し、外装材60の外側に車室内の所定の位置に係止可能な係止部74を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーネスを包むシート状の外装材と、
前記外装材を貫通して設けられる取付部材とを備え、
前記取付部材は、前記ハーネスが前記外装材に包まれた状態で、前記外装材の内側に前記ハーネスを保持する保持部を有し、前記外装材の外側に車室内の所定の位置に係止可能な係止部を有する、
車両用ハーネス支持部材。
【請求項2】
前記外装材は、前記ハーネスの曲げ剛性よりも高い曲げ剛性を有する、
請求項1に記載の車両用ハーネス支持部材。
【請求項3】
前記保持部は、前記係止部と一体に形成された第1保持部と、当該第1保持部に連結された第2保持部と、を有する、
請求項1又は請求項2に記載の車両用ハーネス支持部材。
【請求項4】
前記第2保持部は、前記第1保持部と分離可能に連結されている、請求項3に記載の車両用ハーネス支持部材。
【請求項5】
前記外装材は、所定の折り返し線に沿って折り畳み、厚さ方向に重なる第1側面と第2側面との間に前記ハーネスを包むように構成され、
前記第1側面を貫通して前記取付部材が設けられる、
請求項1又は請求項2に記載の車両用ハーネス支持部材。
【請求項6】
車両用シートの骨格を構成するシートフレームと、
前記シートフレームに架け渡されるシートスプリングと、
前記シートスプリングに一体成形された板状の取付パネルと、
前記取付パネルに取り付けられた車両用ハーネス支持部材と、を有し、
前記車両用ハーネス支持部材は、
ハーネスを包むシート状の外装材と、
前記外装材を貫通して設けられる取付部材とを備え、
前記取付部材は、前記ハーネスが前記外装材に包まれた状態で、前記外装材の内側に前記ハーネスを保持する保持部を有し、前記外装材の外側に前記取付パネルに係止可能な係止部を有する、
車両用シート。
【請求項7】
前記シートフレームには、複数の前記シートスプリングが所定の間隔を空けて架け渡され、
前記取付パネルは、複数の前記シートスプリング間を連結して設けられている、
請求項6に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ハーネス支持部材及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、内側にケーブルを包むシート状の外装材と、ケーブルを包んだ状態で外装材の重なる部分を連結する連結部材と、外装材に設けられて車室内の取付け部に取り付けられる係合部材とを含む車両用ワイヤーハーネスを提案している。この文献では、外装材において厚さ方向に対向する部分が連結部材によって連結されると、外装材によってケーブルが保持された状態となるため、構成部品の低減が可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-100324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のようにシート状の外装材でハーネスを包んで保持する構成は、ハーネスの取付位置を安定させる点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、少ない部品で構成され、ハーネスの取付位置を安定させることができる車両用ハーネス支持部材及び車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用ハーネス支持部材は、ハーネスを包むシート状の外装材と、前記外装材を貫通して設けられる取付部材とを備え、前記取付部材は、前記ハーネスが前記外装材に包まれた状態で、前記外装材の内側に前記ハーネスを保持する保持部を有し、前記外装材の外側に車室内の所定の位置に係止可能な係止部を有する。
【0007】
請求項1に記載する本発明の車両用ハーネス支持部材では、ハーネスを包むシート状の外装材と、当該外装材に貫通して設けられた取付部材とを有している。取付部材は、ハーネスが外装材に包まれた状態で、外装材の内側に保持部を有しており、当該保持部にハーネスが保持される。また、取付部材は、外装材の外側に係止部を有しており、当該係止部が車室内の所定の位置に取り付けられる。
【0008】
このように、車両用ハーネス支持部材では、シート状の外装材を貫通するように取付部材が設けられており、外装材と取付部材を実質的に一つの部材とみなすことができる。このため、車両用ハーネス支持部材を少ない部品で構成することができる。また、ハーネスを保持する保持部が係止部とともに取付部材に設けられているため、ハーネスの取付位置を安定させることができる。
【0009】
請求項2に記載する本発明の車両用ハーネス支持部材は、請求項1に記載の構成において、前記外装材は、前記ハーネスの曲げ剛性よりも高い曲げ剛性を有する。
【0010】
請求項2に記載する本発明の車両用ハーネス支持部材では、外装材は、ハーネスの曲げ剛性よりも高い曲げ剛性を有するため、内側に包まれたハーネスとの干渉により変形されにくく、形状を維持することができる。その結果、ハーネスが外装材に包まれた状態で、ハーネスの取り付け、取り外し等の作業を行う際に、ハーネスを安定して支持することができる。
【0011】
請求項3に記載する本発明の車両用ハーネス支持部材は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記保持部は、前記係止部と一体に形成された第1保持部と、当該第1保持部に連結された第2保持部と、を有する。
【0012】
請求項3に記載する本発明の車両用ハーネス支持部材によれば、取付部材は、係止部と一体に形成された第1保持部と、当該第1保持部に連結された第2保持部とを有している。従って、第1保持部で所定のハーネスを保持した後に、後から組付けられる他のハーネスを第2保持部で保持することができる。これにより、組付けの工程に応じて後から追加されるハーネスも安定して支持することができるとともに、共通の外装材で外装することができる。
【0013】
請求項4に記載する本発明の車両用ハーネス支持部材は、請求項3に記載の構成において、前記第2保持部は、前記第1保持部と分離可能に連結されている。
【0014】
請求項4に記載する本発明の車両用ハーネス支持部材では、取付部材の第2保持部は、第1保持部と分離可能に連結されている。これにより、同束するハーネスの数に応じて、第2保持部が不要とされる箇所では、第1保持部との連結を解除して省略することができるため、部品点数を最適化させることができる。
【0015】
請求項5に記載する本発明の車両用ハーネス支持部材は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記外装材は、所定の折り返し線に沿って折り畳み、厚さ方向に重なる第1側面と第2側面との間に前記ハーネスを包むように構成され、前記第1側面を貫通して前記取付部材が設けられている。
【0016】
請求項5に記載する本発明の車両用ハーネス支持部材では、外装材は、所定の折り返し線に沿って折り畳み、厚さ方向に重なる第1側面と第2側面との間にハーネスを包むように構成されている。かかる構成により、外装材は、ハーネスの取付位置に応じた仕様の変更を容易に行うことができ、汎用性に優れる。
【0017】
請求項6に記載する本発明の車両用シートは、車両用シートの骨格を構成するシートフレームと、前記シートフレームに架け渡されるシートスプリングと、前記シートスプリングに一体成形された板状の取付パネルと、前記取付パネルに取り付けられた車両用ハーネス支持部材と、を有し、前記車両用ハーネス支持部材は、ハーネスを包むシート状の外装材と、前記外装材を貫通して設けられる取付部材とを備え、前記取付部材は、前記ハーネスが前記外装材に包まれた状態で、前記外装材の内側に前記ハーネスを保持する保持部を有し、前記外装材の外側に前記取付パネルに係止可能な係止部を有する。
【0018】
請求項6に記載する本発明の車両用シートでは、シートフレームに架け渡されたシートスプリングに取付パネルが一体成形されており、当該取付パネルを介して車両用ハーネス支持部材が取り付けられている。
【0019】
ここで、上述のように車両用ハーネス支持部材の外装材はシート状の部材であるため、シートスプリングの変形に追従することができる。従って、車両用シートの座り心地を左右するシートスプリングの反力性能を阻害することなく、ハーネスをシートスプリングに取り付けることができる。
【0020】
また、車両用ハーネス支持部材によれば、取付部材の保持部で複数のハーネスを保持することにより、共通の外装材を用いて複数のハーネスを外装することができる。これにより、車両用シートの電動化に伴ってハーネスが増加した場合にも、シートスプリングの設計変更を伴うことなく対応することができ、汎用性に優れる。
【0021】
請求項7に記載する本発明の車両用シートは、請求項6に記載の構成において、前記シートフレームには、複数の前記シートスプリングが所定の間隔を空けて架け渡され、前記取付パネルは、複数の前記シートスプリング間を連結して設けられている。
【0022】
請求項7に記載する本発明の車両用シートによれば、取付パネルは、複数のシートスプリング間を連結して設けられている。従って、取付パネルを介して伝達されるハーネスの荷重が複数のシートスプリングに分散される。これにより、両用シートの電動化に伴ってハーネスが増加した場合に、ハーネスの荷重を複数のシートスプリングで負担することができるため、個々のシートスプリングの反力性能の低下を抑制し、車両用シートの座り心地を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係る車両用ハーネス支持部材及び車両用シートでは、少ない部品で構成され、ハーネスの取付位置を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る車両用ハーネス支持部材によってハーネスが支持された車両用シートをシート下方側から見た下面図である。
図2図1の2-2線に沿って切断した状態を拡大して示す車両用ハーネス支持部材の断面図である。
図3】シート状の外装材が展開された状態を示す平面図である。
図4】(A)は、取付部材の正面図であり、(B)は、取付部材の側面図である。
図5】ハーネスを車室内の所定の位置に取り付ける手順を説明するための模式図であり、(A)は外装材に貫通孔を形成する工程を示しており、(B)は外装材の貫通孔に取付部材を貫通させる工程を示しており、(C)は取付部材にハーネスを保持させる工程を示しており、(D)は外装材を折り畳む工程を示しており、(E)はハーネス支持部材を車室内の所定の位置に取り付ける工程を示している。
図6】本実施形態に係る外装材の変形例を示しており、外装材が展開された状態を示す平面図である。
図7】(A)~(B)は、本実施形態に係る外装材の変形例を示しており、二枚のシート状部材からなる外装材を重ね合わせてハーネスを保持する構造を模式的に示す分解斜視図である。
図8】本実施形態に係る取付部材の変形例を示す図であり、図4(A)に対応する取付部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1図5を参照して、本実施形態に係る車両用ハーネス支持部材10(以下、単に「ハーネス支持部材10」とも称する。)と、当該ハーネス支持部材10を用いたハーネス構造が適用された車両用シート12について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRはシート前方向を示し、矢印UPはシート上方向を示し、矢印RHはシート右方向を示している。また、各図においては、図面を見易くするために、符号を省略している場合がある。
【0026】
車両用シート12は、一例として、図示しない車両の運転席、助手席、後部座席等として配置される。この車両用シート12には、電動式シートスライド機構や電動式リクライニング機構等に代表される種々の電装品が搭載されている。
【0027】
図1には、車両用シート12のシートクッション14をシート下方側から見た下面図が示されている。この図に示されるように、車両用シート12は、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション14と、着座乗員の背部を支持する図示しないシートバックと、着座乗員の頭部を支持する図示しないヘッドレストとを備えている。
【0028】
一例として、シートクッション14には、電動式シートスライド機構20の駆動ユニット22が配置されている。駆動ユニット22から延びるハーネスHは、シートクッション14の骨格を構成するシートクッションフレーム40に沿って配策され、図示しない車両の電源に接続されている。また、シートクッションフレーム40には、バックルユニット30やサイドエアバッグユニット(不図示)に接続されたハーネスHも配策されている。
【0029】
このように、シートクッションフレーム40には、種々の電装品に接続された複数のハーネスHが配策される。これらの複数のハーネスHは、ハーネス支持部材10の外装材60によって外装された状態で、シートクッションフレーム40に架け渡されたシートスプリング50に取り付けられている。以下、車両用シート12の詳細について説明する。
【0030】
(シートクッションフレーム)
シートクッションフレーム40は、左右一対の状態で設けられたサイドフレーム41と、左右のサイドフレーム41の前端部間に架け渡されたパンフレーム42と、左右のサイドフレーム41の後端部間に架け渡されたリヤフレーム43とを含んでいる。
【0031】
左右のサイドフレーム41には、電動式シートスライド機構20を構成するアッパレール24が固定されており、このアッパレール24は、図示しない車体のフロアに固定されたロアレール26に支持されている。
【0032】
電動式シートスライド機構20の駆動ユニット22は、特に限定されるものではないが、一例として、パンフレーム42のシート下方側に搭載された電動モータ22Aを含んで構成されている。電動モータ22Aは、シートクッション14の側方に設けられた操作部ユニット28への操作により作動する。この電動モータ22Aは、シート幅方向に延びる回転軸22Bの駆動源となっている。回転軸22Bは、電動モータ22Aの駆動により、シート幅方向の軸周りに正逆回転し、図示しないウォームギヤを介してアッパレール24側に固定されたシートスライドスクリュー(不図示)を回転させる。シートスライドスクリューは、ロアレール26側に固定されたナット(不図示)に螺合されており、シートスライドスクリューの正逆回転によりアッパレール24がロアレールに対してシート前後方向に移動する。
【0033】
シートクッションフレーム40の下方側には、電動モータ22A及び操作部ユニット28から延びるハーネスHに加え、シート側方に設けられたバックルユニット30から延びるハーネスH、シートクッション14の下方側を通り、車両の電源に接続されるサイドエアバッグユニット(不図示)に接続されたハーネスH等が配策される。これらのハーネスHは、後述するハーネス支持部材10を介してシートスプリング50に取り付けられている。
【0034】
(シートスプリング)
シートスプリング50は、金属の線細工バネであり、パンフレーム42とリヤフレーム43の間に架け渡されている。本実施形態の例では、Sバネで構成した四本のシートスプリング50が、シート幅方向に所定の間隔を空けて架け渡されている。Sバネは、一本の線材をS字状に連続して蛇行した形状をなしている。
【0035】
各シートスプリング50は、S字状に蛇行した形状であるため、シート幅方向に沿って円弧状に突出した湾曲部51がバネの伸長方向(シート前後方向)の両側に交互に形成されている。各シートスプリングは、互いの湾曲部51の位置がシート幅方向に沿って横並びになるように設けられている。また、隣り合って配置された湾曲部51の間を連結するようにして、取付パネル52が設けられている。
【0036】
取付パネル52は、射出成型等によって、シートスプリング50に一体形成された長尺板状の樹脂部材である。取付パネル52は、シート上下方向を板厚方向とし、隣接するシートスプリング50間をシート幅方向に連結して設けられている。この取付パネル52には、シートスプリング50の連結方向(即ち、シート幅方向)に沿って、複数の取付孔54が貫通形成されている。これらの取付孔54には、後述するハーネス支持部材10の係止部74が係止可能となっている。
【0037】
(車両用ハーネス支持部材)
図2には、図1の2-2線に沿って切断したハーネス支持部材10の断面が示されている。この図に示されるように、ハーネス支持部材10は、シート状の外装材60と、外装材60を貫通して設けられた取付部材70とを有している。
【0038】
(外装材)
外装材60は、一枚のシート状部材で構成されている。外装材60の材料は特に限定されない。本実施形態の一例では、外装材60は、ナイロンやポリウレタン等の化学繊維を交織した織物生地によって構成されている。
【0039】
外装材60は、複数のハーネスHを束ねるようにして外装するため、内側に包まれたハーネスHの曲げ剛性よりも高い曲げ剛性を有することが好ましい。これにより、ハーネスとの干渉により変形されにくく、外装材としての形状を維持することができる。
【0040】
図3には、一枚のシート状をなす外装材60の展開状態が示されている。この図に示されるように、外装材60は、所定の折り返し線Pに対して対称構造をなす形状に切り出されており、折り返し線Pに沿って外装材60を折り畳むことにより、厚さ方向に重なる第1側面61と第2側面62とを有している。
【0041】
第1側面61及び第2側面62の外縁部には、外装材60を折り畳んだ状態で、厚さ方向に重なる端部同士を接合させる接合部64が設けられている。本実施形態の一例では、第1側面61の外縁部が接合部64のオス側64Aとされ、第2側面62の外縁部が接合部64のメス側64Bとされている。
【0042】
接合部64のオス側64Aには、所謂「面ファスナ」のオス側と同様に、表面がフック状に起毛するように加工された生地が縫合等によって固定されている。一方、接合部64のメス側64Bは、所謂「面ファスナ」のメス側と同様に、フック状に起毛したオス側64Aの繊維が係着し易いように、ループ状に起毛した生地で構成されている。メス側64Bは、外装材60の外縁部に表面がループ状に起毛した生地を縫合等で固定して形成してもよいが、本実施形態では、外装材60の端部の繊維を引き出すようにして、ループ状に起毛させて形成している。即ち、本実施形態において、接合部64のメス側64Bは、外装材60自体に「面ファスナ」のメス側と同様の加工が施されることにより形成されている。
【0043】
外装材60は、折り返し線Pに沿って折り畳まれることにより、第1側面61の外縁部と第2側面62の外縁部とが厚さ方向に重ねられ、接合部64のオス側64Aの繊維がメス側64Bの繊維に係着する。これにより、外装材60の内側に、ハーネスを包む内方空間が形成される(図2参照)。
【0044】
(取付部材)
取付部材70は、ハーネスHを保持が可能な第1保持部71と、第1保持部71に連結された第2保持部72と、第1保持部71に一体形成された係止部74と、を含んで構成されている。
【0045】
第1保持部71は、所謂「結束バンド」と同様の構成であり、長尺帯状に形成されたバンド部711と、バンド部711の先端が挿通されるヘッド部712を有している。バンド部711には、延在方向に沿って複数の突起(図示省略)が設けられている。
【0046】
ヘッド部712は、バンド部711が挿通可能な筒形状をなしており、内側面に形成された爪(符号省略)に、バンド部711の突起が係合可能になっている。またヘッド部712には、後述する係止部74に向かって庇状に傾斜して延びる押え片713が設けられている。この押え片713は、一対の状態で設けられ、係止部74が取付パネル52に係止されると、押し広げられるように弾性変形する。これにより、外装材60は、押え片713の弾性復帰により取付パネル52側に押し当てられる。
【0047】
図4(A)に示されるように、ハーネスHにバンド部711を巻き付け、バンド部711の先端をヘッド部712に挿通させて引っ張ると、バンド部711の突起がヘッド部の爪に係止される。これにより、ハーネスHが第1保持部71に保持される。
【0048】
ここで、第1保持部71に連結された第2保持部72について説明する。第2保持部72は、第1保持部71と連結される連結部721と、ハーネスHの保持が可能なクリップ部722を有している。連結部721は、第2保持部72の基端側に設けられ、筒形状をなしている。第2保持部72は、連結部721に第1保持部71のバンド部711を挿通させることにより、第1保持部71に連結される。
【0049】
クリップ部722は、第2保持部72の先端側に設けられ、連結部721と一体に形成されている。クリップ部722は、略C字形に成形された弾性片であり、ハーネスHをC形の開口部に押し当てながら挿入し、保持する構成となっている。
【0050】
かかる第2保持部72は、第1保持部71でハーネスHを保持した後に、後の工程で追加される他のハーネスHを第1保持部71と一体に保持することを可能とする。また、第2保持部72は、第1保持部71と分離可能な構成であるため、第2保持部72が不要な箇所では省略することができる。
【0051】
なお、図2図3及び図5では、第1保持部71及び第2保持部72が一本のハーネスHを保持する状態が示されているが、これに限定されない。一つの保持部で複数のハーネスHを保持してもよい。
【0052】
上記第1保持部71及び第2保持部72は、ハーネスHが外装材60に包まれた状態で、外装材60の内側に配置される。
【0053】
一方、係止部74は、ハーネスHが外装材60に包まれた状態で、外装材60の外側に配置される。係止部74は、略楔形のクリップで構成されており、楔状に広がった突起部741を有する。係止部74は、突起部741を弾性変形させながら取付パネル52に形成された取付孔54に挿通されることにより取り付けられる。突起部741は、取付孔54を乗り越えると弾性復帰し、取付孔54の周縁部に係止される。これにより、シートスプリング50の取付パネル52に取付部材70が固定される。
【0054】
(作用並びに効果)
次に、図5を参照し、ハーネスHを車室内の所定の位置に支持させる手順について説明しつつ、本実施形態の作用並びに効果を説明する。なお、図5では、図面を分かり易くするために、外装材60及び取付部材70の形状を簡略化して示している。
【0055】
図5(A)に示されるように、先ず、シート状の外装材60を展開状態にし、外装材60の第1側面61を厚さ方向に貫通する貫通孔68を形成する。
【0056】
図5(B)に示されるように、取付部材70の係止部74を貫通孔68に挿通させるとともに、第1保持部71のバンド部711に第2保持部72を挿通して連結させる。
【0057】
図5(C)に示されるように、第1保持部71及び第2保持部72にハーネスHを保持させる。
【0058】
その後、所定の折り返し線Pに沿って外装材60を折り畳むことにより、外装材60によってハーネスHが包まれる(図5(D))。この状態で、外装材60の外側に突出した係止部74を車室内の所定の位置に設けられた取付孔54に挿通させて係止させる(図5(E))。本実施形態では、クッションフレームに架け渡されたシートスプリング50に取付パネル52が一体形成されており、当該取付パネル52に形成された取付孔54に係止部74が(ハーネス支持部材10)が係止される。これにより、複数のハーネスHを取りまとめて外装した状態で、シートスプリング50に取り付けることができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の車両用ハーネス支持部材10では、シート状の外装材60を貫通するように取付部材70が設けられており、外装材60と取付部材70を実質的に一つの部材とみなすことができる。このため、車両用ハーネス支持部材10を少ない部品で構成することができる。また、ハーネスHを保持する第1保持部71が係止部74と共に取付部材70に設けられているため、ハーネスHの取付位置を安定させることができる。
【0060】
また、外装材60は、ハーネスHの曲げ剛性よりも高い曲げ剛性を有することにより、内側に包まれたハーネスHとの干渉により変形されにくく、形状を維持することができる。その結果、ハーネスHが外装材60に包まれた状態で、ハーネスHの取り付け、取り外し等の作業を行う際に、ハーネスHを安定して支持することができる。
【0061】
また、本実施形態において、取付部材70は、係止部74と一体に形成された第1保持部71と、当該第1保持部71に連結された第2保持部72とを有している。従って、第1保持部71で所定のハーネスHを保持した後に、後から組付けられる他のハーネスHを第2保持部72で保持することができる。これにより、組付けの工程に応じて後から追加されるハーネスHも安定して支持することができるとともに、共通の外装材を用いて外装することができる。
【0062】
また、本実施形態において、第2保持部72は、第1保持部71と分離可能に連結されている。これにより、同束されるハーネスの数に応じて、第2保持部72が不要とされる箇所では、第1保持部71との連結を解除して省略することができるため、部品点数を最適化させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、外装材60は、一枚のシート状をなしている。これにより、外装材60は、所定の折り返し線Pに沿って折り畳み、厚さ方向に重なる第1側面61と第2側面62との間にハーネスHを包むように構成されている。かかる構成により、外装材60は、ハーネスの取付位置に応じた仕様の変更を容易に行うことができ、汎用性に優れる。
【0064】
また、本実施形態のように、シートスプリング50で支持されるハーネスHをハーネス支持部材10で外装すると、シート状の外装材が、シートスプリング50の変形に追従する。従って、車両用シート12の座り心地を左右するシートスプリング50の反力性能を阻害することなく、ハーネスHをシートスプリング50に取り付けることができる。
【0065】
また、ハーネス支持部材10の取付相手として設けられた取付パネル52は、複数のシートスプリング50間を連結して設けられている。従って、取付パネル52を介して伝達されるハーネスHの荷重が複数のシートスプリング50に分散される。これにより、車両用シート12の電動化に伴ってハーネスHが増加した場合に、ハーネスHの荷重を複数のシートスプリング50で負担することができるため、個々のシートスプリング50の反力性能の低下を抑制し、車両用シート12の座り心地を良好にすることができる。
【0066】
[変形例の説明]
本発明に係る車両用ハーネス支持部材10は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図6に示されるように、外装材60の第1側面61にシートスプリング50の湾曲部51を挿通させる切り込み部80を設ける構成としてもよい。この変形例によれば、外装材60の切り込み部80にシートスプリング50の湾曲部51を挿入することで、シートスプリング50によって外装材60を安定して支持することができる。これにより、シート側の取付孔54に対する係止部74の位置決めを容易にすることができ、作業性に優れる。
【0067】
なお、上記実施形態では、外装材が一枚のシート状部材で構成される場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、図7(A)及び図7(B)に示されるように、複数のシート状部材によって外装材を構成してもよい。
【0068】
図7(A)に示される外装材90は、二枚一組のシート状部材からなる外装材90Aと外装材90Bを厚さ方向に重ね合わせることでハーネスHを包む構成となっている。この変形例では、外装材90Aの端部に接合部64のオス側64Aの構成が設けられ、外装材90Bの端部に接合部64のメス側64Bの構成が設けられ、外装材90A及び外装材90Bの一方(図示では、外装材90A側)に取付部材70が貫通して設けられている。
【0069】
一方、外装材60の端部同士を接合する接合部は、上記実施形態のように面ファスナと同様の構成からなるものに限らない。図7(B)に示されるように、外装材の端部同士をクリップ等の接合部材92を用いて接合してもよい。この変形例では、二枚一組のシート状部材からなる外装材90A,90Bの一方(図示では外装材90B側)に貫通孔94が設けられる。また、他方の外装材90A,90Bに接合部材92を設け、外装材90Aと外装材90Bを厚さ方向に重ねる際に、接合部材92を貫通孔94に挿通させて係止させる。
【0070】
また、上記実施形態では、第2保持部72が第1保持部71と分離可能に設けられる構成としたが、これに限らない。図8に示される取付部材700のように、第1保持部71と第2保持部72が一体に形成される構成としてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、外装材がハーネスの曲げ剛性よりも高い曲げ剛性を有する場合を説明したが、外装材の物性は、剛性の高い素材に限定されることはない。例えば、クリップ状の係止部をシートスプリングに取り付ける際に、シートスプリングの撓みに外装材を追従させる観点から、外装材を伸縮性を有するシート状部材で構成してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、シートクッションフレームのシートスプリングに固定されるハーネスにハーネス支持部材10を適用する例について説明したが、これに限らない。シートクッションフレームに取付孔54を形成し、ハーネス支持部材10を組付けることもできる。また、シートバックの骨格を構成するシートバックフレームや、シートバックフレームに架け渡されるシートスプリングにハーネス支持部材10を組付けることもできる。なお、上記実施形態では、シートスプリングがSバネで構成されているが、これに限定されない。シートスプリングは、フォームドワイヤ、フラットマット等であってもよい。
【0073】
さらに、ハーネス支持部材10は、車両の室内壁を構成しているインナートリムやコンソール、車体のフレーム部材に組付けることも可能である。
[符号の説明]
【0074】
10 車両用ハーネス支持部材
12 車両用シート
14 シートクッション
40 シートクッションフレーム
50 シートスプリング
52 取付パネル
60 外装材
61 第1側面
62 第2側面
70 取付部材
71 第1保持部(保持部)
74 係止部
72 第2保持部(保持部)
700 取付部材
Hハーネス
P 折り返し線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8