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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117015
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】厚膜型塗り床材
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
C09D175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022929
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】591167278
【氏名又は名称】中外商工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(72)【発明者】
【氏名】若野 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】和久田 幸嗣
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DG031
4J038DG272
4J038DG282
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA08
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】 白色や淡彩色の厚膜型塗り床材を使用すると、紫外線により、人が視認できる程度に色が変化するという問題が生じていた。この問題を解決した厚膜型塗り床材が知られているが、硬度が十分なものではなかった。そのため、高硬度、且つ、変色しにくい厚膜型塗り床材を提供する。
【解決手段】 ポリオールを含む主剤と、MDIとメチレン系ジイソシアネートとを含む硬化剤とを含み、前記主剤には、さらに紫外線吸収剤と、光安定剤と、酸化アルミニウムと、触媒と、を含むことを特徴とする厚膜型塗り床材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを含む主剤と、
MDIとメチレン系ジイソシアネートとを含む硬化剤とを含み、
前記主剤には、さらに紫外線吸収剤と、光安定剤と、酸化アルミニウムと、触媒と、を含むことを特徴とする厚膜型塗り床材。
【請求項2】
前記硬化剤のMDIは、モノメリックMDIであることを特徴とする請求項1に記載の厚膜型塗り床材。
【請求項3】
前記硬化剤のメチレン系ジイソシアネートは、ペンタン‐1,5‐ジイソシアネート又は、ヘキサン‐1,6‐ジイソシアネートであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の厚膜型塗り床材。
【請求項4】
前記主剤は、体質顔料、着色顔料、湿潤分散剤、消泡剤、沈降防止剤、表面調整剤、レベリング剤の内、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の厚膜型塗り床材。
【請求項5】
前記硬化剤に含まれるMDIとメチレン系ジイソシアネートとの重量比は、10:90~50:50であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の厚膜型塗り床材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜型塗り床材に関し、より特定的には、主剤と硬化剤とを混合する2液反応硬化型の厚膜型塗り床材に関する。
【背景技術】
【0002】
厚膜型塗り床材とは、コテやヘラ等を使用して床面に塗布するものであり、塗布することによって塗膜層を形成する。形成された塗膜層の厚さにより床材は分類されており、薄膜型塗り床材と厚膜型塗り床材とに分類される。薄膜型塗床材の塗膜厚さは0.2mm~0.4mm程度であり、厚膜型塗り床材の塗膜厚さは0.8mm~3mm程度である。なお、厚膜型塗り床材としては、主に、2液反応硬化型の床材が使用されている。2液反応硬化型の厚膜型塗り床材は、主剤と硬化剤とを混合した後、コテやヘラ等を使用して床部分に塗布することで塗膜層を形成する。
【0003】
とりわけその中でもウレタン系の厚膜型塗り床材は、一般的に耐候性が低く、紫外線の影響を受けると変色しやすいという問題が生じていた。そのため、白色や淡彩色等が目立つ色調は採用されにくい、という問題が生じていた。そのため、特許文献1のポリウレタン樹脂系厚膜型塗り床材が開発された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5498247号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のポリウレタン樹脂系厚膜型塗り床材の硬度はショアA83~93と低く、重量物の走行に使用できないなどスペック的に十分なものではなかった。
【0006】
本発明は、かかる従来発明における課題に鑑みてされたものであり、高硬度、且つ、変色しにくい厚膜型塗り床材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。
【0008】
本発明の厚膜型塗り床材は、ポリオールを含む主剤と、MDIとメチレン系ジイソシアネートとを含む硬化剤とを含み、前記主剤には、さらに紫外線吸収剤と、光安定剤と、酸化アルミニウムと、触媒と、を含むことを特徴とする。
かかる構成により、高硬度、且つ、変色しにくい厚膜型塗り床材を提供することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記硬化剤のMDIは、モノメリックMDIであることを特徴とする。
かかる構成により、より硬度を向上させることができる。
【0010】
また、好ましくは、前記硬化剤のメチレン系ジイソシアネートは、ペンタン‐1,5‐ジイソシアネート又は、ヘキサン‐1,6‐ジイソシアネートであることを特徴とする。
かかる構成により、より硬度を向上させることができる。
【0011】
また、好ましくは、前記主剤は、体質顔料、着色顔料、湿潤分散剤、消泡剤、沈降防止剤、表面調整剤、レベリング剤の内、少なくとも1つを含むことを特徴とする。
かかる構成により、より安定した厚膜型塗り床材とすることができる。
【0012】
また、好ましくは、前記硬化剤に含まれるMDIとメチレン系ジイソシアネートとの重量比は、10:90~50:50であることを特徴とする。
かかる構成により、より硬度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、高硬度、且つ、変色しにくい厚膜型塗り床材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態について、具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。
【0015】
本発明に係る厚膜型塗り床材は、主剤と、硬化剤とを含む。また、主剤には、紫外線吸収剤と、光安定剤と、酸化アルミニウムと、触媒とが含まれている。また、必要に応じて、主剤に湿潤分散剤、消泡剤、沈降防止剤、体質顔料、着色顔料、増粘剤、表面調整剤、レベリング剤などを混合して使用する。また、硬化剤は、メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネートであるMDIとメチレン系ジイソシアネートであるペンタン‐1,5‐ジイソシアネート、又はHDIであるヘキサン‐1,6‐ジイソシアネートとを含んでいる。
【0016】
なお、本発明に厚膜型塗り床材の特徴は、硬化剤にMDIを使用している点である。硬度を向上させるためには、MDIを使用するのが好ましいが、MDIを配合すると著しく耐候性が低くすぐに黄変する。しかし、MDIを配合する際、紫外線吸収剤及び光安定剤を使用することで耐候性を向上させることを見出した点が特徴である。
【0017】
主剤には、ポリオールを含む化合物が混合されている。なお、ポリオールを含む化合物としては、DIC株式会社のプライアデックMHF-3500Nを使用するのが好ましい。
【0018】
また、主剤には、紫外線吸収剤が混合されている。なお、紫外線吸収剤としては、BASFジャパン株式会社のチヌビン400を使用するのが好ましい。
【0019】
また、主剤には、光安定剤が混合されている。なお、光安定剤としては、BASFジャパン株式会社のチヌビン123を使用するのが好ましい。
【0020】
また、主剤には、酸化アルミニウムが混合されている。なお、酸化アルミニウムとしては、住友アルミ株式会社のBK112を使用するのが好ましい。
【0021】
また、主剤には、湿潤分散剤を混合しても構わない。なお、主剤に湿潤分散剤を混合する場合、共栄社化学株式会社のフローレンG700を使用するのが好ましい。
【0022】
また、主剤には、消泡剤を混合しても構わない。なお、主剤に消泡剤を混合する場合、共栄社化学株式会社のフローレンAC303―HFを使用するのが好ましい。
【0023】
また、主剤には、沈降防止剤を混合しても構わない。なお、主剤に沈降防止剤を混合する場合、楠本化成株式会社のディスパロンPF911を使用するのが好ましい。
【0024】
また、主剤には、体質顔料を混合しても構わない。なお、主剤に体質顔料を混合する場合、日東粉化株式会社のNN500を使用するのが好ましい。
【0025】
また、主剤には、触媒が混合されている。また、触媒にはスズ系、ビズマス系、チタン系を使用する。特に大阪新薬株式会社のTOS―Kを使用するのが好ましい。
【0026】
また、主剤には、トナーを混合しても構わない。なお、主剤にトナーを混合する場合、御国色素株式会社製のトナーを使用するのが好ましい。
【0027】
硬化剤は、MDIとメチレン系ジイソシアネートとを含んでいる。重量比は、MDIが10~50重量%、メチレン系ジイソシアネートが50~90重量%の範囲である。また、MDIとして、BASF INOAC ポリウレタン株式会社のモノメリックMDIであるルプラネートを使用するのが好ましく、メチレン系ジイソシアネートとして、ペンタン‐1,5‐ジイソシアネートである、三井化学株式会社のスタビオD-376を、又はヘキサン‐1,6‐ジイソシアネートである、東ソー株式会社のコロネートHXLVを使用するのが好ましい。なお、MDIは、モノメリックMDIとポリメリックMDIを含む意味を有する語である。
【0028】
次に、本発明の厚膜型塗り床材を使用した施工方法について説明する。本発明の厚膜型塗り床材は、屋内の床面等に塗布するものであり、一般的な厚膜型塗り床材と同様の方法で施工することができる。具体的には、事前に施工箇所の研磨処理を行い、プライマーを塗布する。これにより、接着性を向上させることができる。プライマーが硬化した後、本発明の厚膜型塗り床材を塗布して塗膜層を形成する。
【実施例0029】
以下、実施例によって本発明を具体的説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。
【0030】
実施例及び比較例で用いた材料は以下の通りである。なお、撹拌機を使用して各材料を混合し試料を作製した。
主剤:ポリオールを含む化合物として、DIC株式会社のプライアデックMHF-3500N。紫外線吸収剤として、BASFジャパン株式会社のチヌビン400。光安定剤として、BASFジャパン株式会社のチヌビン123。酸化アルミニウムとして、住友アルミ株式会社のBK112。湿潤分散剤として、共栄社化学株式会社のフローレンG700。消泡剤として、共栄社化学株式会社のフローレンAC303―HF。沈降防止剤として、楠本化成株式会社のディスパロンPF911。体質顔料として、日東粉化株式会社のNN500。触媒として、大阪新薬株式会社のTOS―K。トナーとして、御国色素株式会社製のトナー。
硬化剤:MDIとして、BASF INOAC ポリウレタン株式会社のモノメリックMDI。メチレン系ジイソシアネートとして、ペンタン‐1,5‐ジイソシアネートである、三井化学株式会社のスタビオD-376又はヘキサン‐1,6‐ジイソシアネートである、東ソー株式会社のコロネートHXLV。
【0031】
<実施例1~8>
実施例1~8の厚膜型塗り床材の試料の結果を表1に示す。なお、試料は、コンクリートの平板に金ゴテにより、厚さ1.0mmで塗布し、7日間養生し硬化させたものである。また、硬度はショアDで試料の硬度測定を行い、耐候性は試料作製後7日間屋外暴露した後、色査計によって測定し、ΔEを測定した。また、硬度が50以上の試料を〇と評価し、50未満の試料を×と評価した。硬度が50以上を〇と評価したのは、フォークリフトで走行しても問題がないと言われている数値であるためである。また、耐候性について、ΔEが1.5以下の試料を〇と評価し、ΔEが1.5より大きい試料を×と評価した。ΔEが1.5以下の試料を〇と評価したのは、人の目で変色度合いがわかる目安となる数値であるためである。表1から実施例1~8の厚膜型塗り床材の試料は、硬度及び耐候性について優れていることが判明した。
【0032】
<表1>
【0033】
<比較例1~6>
比較例1~6の厚膜型塗り床材の試料の結果を表2に示す。なお、試料は、コンクリートの平板に金ゴテにより、厚さ1.0mmで塗布し、7日間養生し硬化させたものである。また、硬度はショアDで試料の硬度測定を行い、耐候性は試料作製後7日間屋外暴露した後、色査計によって測定し、ΔEを測定した。また、硬度が50以上の試料を〇と評価し、50未満の試料を×と評価した。硬度が50以上を〇と評価したのは、フォークリフトで走行しても問題がないと言われている数値であるためである。また、耐候性について、ΔEが1.5以下の試料を〇と評価し、ΔEが1.5より大きい試料を×と評価した。ΔEが1.5より大きい試料を×と評価したのは、人の目で変色度合いがわかる目安となる数値であるためである。表2から比較例1~3は硬度及び耐候性について、十分な性能を有していないことが判明した。これは、主剤に紫外線吸収剤及び光安定剤が含まれておらず、硬化剤にMDIを使用していないためと考えられる。また、比較例4~6は、硬度は基準を満たしているが、耐候性について十分な性能を有していないことが判明した。
【0034】
<表2>
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の厚膜型塗り床材を使用すれば、高硬度、且つ、変色しにくい塗膜を形成することができるため有用である。特に、半屋外となる工場の出荷口、自然からの侵入光が照射される窓付近、蛍光灯や殺菌灯のある部屋においても変色を抑えられるため有用である。また、床面に白色や淡彩色を採用する場合でも、変色を抑えられるため有用である。