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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117018
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】減速機および規制部材
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20240821BHJP
   F16C 35/07 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16C35/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022933
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 隆
(72)【発明者】
【氏名】李 慧龍
(72)【発明者】
【氏名】小川 将弘
【テーマコード(参考)】
3J027
3J117
【Fターム(参考)】
3J027FA37
3J027FA38
3J027GC02
3J027GC24
3J027GD03
3J027GD07
3J027GD08
3J027GD12
3J027GD13
3J027GE25
3J027GE26
3J117AA05
3J117CA06
3J117DA01
3J117DB10
(57)【要約】
【課題】偏心体と外歯歯車との間に位置する軸受の軸方向への移動を安定して規制する。
【解決手段】減速機は、外歯歯車と、外歯歯車を偏心揺動させる偏心体を有する軸部材と、外歯歯車と軸部材との間に配置される軸受と、規制部材と、を有する。規制部材は、軸部材上に位置する内周縁を有した内側環状部と、前記内周縁の中心からの距離が変化する外縁を有し軸方向への前記軸受の移動を規制する外側部と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外歯歯車と、
前記外歯歯車を偏心揺動させる偏心体を有する軸部材と、
前記外歯歯車と前記軸部材との間に配置される軸受と、
前記軸部材上に位置する内周縁を有した内側環状部と、前記内周縁の中心からの距離が変化する外縁を有し軸方向への前記軸受の移動を規制する外側部と、を有する規制部材と、を備える、減速機。
【請求項2】
前記規制部材は、前記内側環状部及び前記外側部を連結する段差連結部を有し、
前記偏心体は、前記規制部材に対面する側面に、前記内周縁の中心から偏心した円環状の段差部を有し、
前記段差部及び前記段差連結部が接触して、前記規制部材及び前記軸部材の相対回転を規制する、請求項1に記載の減速機。
【請求項3】
前記段差部は、前記偏心体と同心である、請求項2に記載の減速機。
【請求項4】
前記段差連結部は、前記外縁と同心である、請求項2に記載の減速機。
【請求項5】
前記内側環状部及び前記外側部は、少なくとも部分的に、前記軸方向において互いに同一の領域に位置している、請求項2に記載の減速機。
【請求項6】
前記外側部は、前記偏心体の外周面上に位置する外筒部を有する、請求項1に記載の減速機。
【請求項7】
前記内側環状部は、前記軸部材上に位置する内筒部を有する、請求項6に記載の減速機。
【請求項8】
前記外側部及び前記内側環状部は、一体的に構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の減速機。
【請求項9】
前記外側部は、前記内側環状部と別個に設けられ、前記軸部材上に位置する内周縁を有する環状部を有し、
前記外側部の前記内周縁と前記内側環状部の外周縁とによって囲まれた環状領域において、前記外側部および前記内側環状部は前記軸方向に対面する、請求項1に記載の減速機。
【請求項10】
前記内側環状部は円環状であり、
前記外側部は円環状であり、
前記外側部は、前記内側環状部の中心から偏心して、軸部材上に位置している、請求項9に記載の減速機。
【請求項11】
前記偏心体は、前記規制部材に対面する側面に、前記外側部の前記内周縁に接触する円環状の段差部を有する、請求項9に記載の減速機。
【請求項12】
前記偏心体の中心から前記外縁までの距離は変化する、請求項1~7、9、10及び11のいずれか一項に記載の減速機。
【請求項13】
前記外縁は、前記偏心体と同心である、請求項1~7、9、10及び11のいずれか一項に記載の減速機。
【請求項14】
前記規制部材は、前記軸方向から前記軸受の一部分のみに対面する、請求項1~7、9、10及び11のいずれか一項に記載の減速機。
【請求項15】
前記内周縁の中心は、前記軸部材の回転軸線上に位置する、請求項1~7、9、10及び11のいずれか一項に記載の減速機。
【請求項16】
外歯歯車と、
前記外歯歯車を偏心揺動させる偏心体を有する軸部材と、
前記外歯歯車と前記軸部材との間に配置される軸受と、
前記軸部材上に位置する内周縁を有した内側環状部と、前記偏心体の外周面上に位置する外筒部を有する外側部と、を有し、内周縁の中心から外筒部の各位置までの距離は変化する、規制部材と、を備える、減速機。
【請求項17】
外歯歯車と、
前記外歯歯車を偏心揺動させる偏心体を有する軸部材と、
前記外歯歯車と前記軸部材との間に配置される軸受と、
前記軸部材に貫通されて前記軸部材上に設けられた第1環状部と、前記軸部材に貫通されて前記軸部材上に設けられ前記第1環状部と偏心して配置された第2環状部と、を有する規制部材と、を備える、減速機。
【請求項18】
偏心揺動型減速機の偏心体を有する軸部材上に位置する内周縁を有した内側環状部と、
前記内周縁の中心からの距離が変化する外縁を有し、前記偏心体上に位置する軸受の軸方向への移動を規制する外側部と、を備える、規制部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機及び規制部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、偏心揺動型の減速機が知られている。この減速機は、偏心体を含む軸部材と、偏心体上に支持された外歯歯車と、偏心体及び外歯歯車の間に位置する軸受と、を有する。偏心揺動型の減速機において、軸受は軸方向へ移動し得る。そこで、特許文献1の減速機は、軸部材に固定された押さえ板を有する。押さえ板は、軸部材の回転軸線に直交する径方向に延びるフランジ部を有する。フランジ部が軸方向から軸受に接触することにより、軸受の軸方向への移動を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-135326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の減速機では、環状の押さえ板の中心は、軸部材の回転中心である回転軸線上に位置している。偏心体の偏心量が大きい場合、フランジ部の径方向長さを長くする必要がある。しかしながら、径方向に長く延びたフランジ部は、回転軸線を中心とする円周方向における一部の領域において、軸受から大きく径方向に延びだす。このとき、押さえ板が、外歯歯車等の周辺部材に接触し得る。このような意図しない接触により、減速機の動不良や減速機の損傷が生じ得る。
【0005】
以上のことから、偏心体と外歯歯車との間に位置する軸受の軸方向への移動を十分に規制できないことがあった。本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、偏心揺動型の減速機において、偏心体と外歯歯車との間に位置する軸受の軸方向への移動を安定して規制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態は、次の<1>~<18>に関する。
【0007】
<1> 外歯歯車と、
前記外歯歯車を偏心揺動させる偏心体を有する軸部材と、
前記外歯歯車と前記軸部材との間に配置される軸受と、
前記軸部材上に位置する内周縁を有した内側環状部と、前記内周縁の中心からの距離が一定ではない外縁を有し軸方向への前記軸受の移動を規制する外側部と、を有する規制部材と、を備える、減速機。
【0008】
<2> 前記規制部材は、前記内側環状部及び前記外側部を連結する段差連結部を有し、
前記偏心体は、前記規制部材に対面する側面に、前記内周縁の中心から偏心した円環状の段差部を有し、
前記段差部及び前記段差連結部が接触して、前記規制部材及び前記軸部材の相対回転を規制する、<1>の減速機。
【0009】
<3> 前記段差部は、前記偏心体と同心である、<2>の減速機。
【0010】
<4> 前記段差連結部は、前記外縁と同心である、<2>又は<3>の減速機。
【0011】
<5> 前記内側環状部及び前記外側部は、少なくとも部分的に、前記軸方向において互いに同一の領域に位置している、<2>~<4>のいずれかの減速機。
【0012】
<6> 前記外側部は、前記偏心体の外周面上に位置する外筒部を有する、<1>の減速機。
【0013】
<7> 前記内側環状部は、前記軸部材上に位置する内筒部を有する、<6>の減速機。
【0014】
<8> 前記外側部及び前記内側環状部は、一体的に構成されている、<1>~<7>のいずれかの減速機。
【0015】
<9> 前記外側部は、前記内側環状部と別個に設けられ、前記軸部材上に位置する内周縁を有する環状部を有し、
前記外側部の前記内周縁と前記内側環状部の外周縁とによって囲まれた環状領域において、前記外側部および前記内側環状部は前記軸方向に対面する、<1>の減速機。
【0016】
<10> 前記内側環状部は円環状であり、
前記外側部は円環状であり、
前記外側部は、前記内側環状部の中心から偏心して、軸部材上に位置している、<9>の減速機。
【0017】
<11> 前記偏心体は、前記規制部材に対面する側面に、前記外側部の前記内周縁に接触する円環状の段差部を有する、<9>又は<10>の減速機。
【0018】
<12> 前記偏心体の中心から前記外縁までの距離は一定ではない、<1>~<11>のいずれかの減速機。
【0019】
<13> 前記外縁は、前記偏心体と同心である、<1>~<11>のいずれかの減速機。
【0020】
<14> 前記規制部材は、前記軸方向から前記軸受の一部分のみに対面する、<1>~<13>のいずれかの減速機。
【0021】
<15> 前記内周縁の中心は、前記軸部材の回転軸線上に位置する、<1>~<14>のいずれかの減速機。
【0022】
<16> 外歯歯車と、
前記外歯歯車を偏心揺動させる偏心体を有する軸部材と、
前記外歯歯車と前記軸部材との間に配置される軸受と、
前記軸部材上に位置する内周縁を有した内側環状部と、前記偏心体の外周面上に位置する外筒部を有する外側部と、を有し、内周縁の中心から外筒部の各位置までの距離が一定ではない、規制部材と、を備える、減速機。
【0023】
<17> 外歯歯車と、
前記外歯歯車を偏心揺動させる偏心体を有する軸部材と、
前記外歯歯車と前記軸部材との間に配置される軸受と、
前記軸部材に貫通されて前記軸部材上に設けられた第1環状部と、前記軸部材に貫通されて前記軸部材上に設けられ前記第1環状部と偏心して配置された第2環状部と、を有する規制部材と、を備える、減速機。
【0024】
<18> 偏心揺動型減速機の偏心体を有する軸部材上に位置する内周縁を有した内側環状部と、
前記内周縁の中心からの距離が一定ではない外縁を有し、前記偏心体上に位置する軸受の軸方向への移動を規制する外側部と、を備える、規制部材。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、偏心揺動型の減速機において、偏心体と外歯歯車との間に位置する軸受の軸方向への移動を安定して規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、一実施の形態を説明するための図であって、減速機を示す縦断面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、本実施の形態による減速機に適用可能な軸部材及び規制部材に関する第1の具体例を示す側面図である。
図4図4は、図3に示された規制部材及び軸受を示す正面図である。
図5図5は、図4に示された規制部材を示す側断面図である。
図6図6は、図4に対応する図であって、規制部材の一変形例を示す図である。
図7図7は、図4に対応する図であって、規制部材の他の変形例を示す図である。
図8図8は、図3に対応する図であって、軸部材及び規制部材の更に他の変形例を示す図である。
図9図9は、図8に示された規制部材及び軸受を示す正面図である。
図10図10は、図4に対応する図であって、規制部材の更に他の変形例を示す図である。
図11図11は、本実施の形態による減速機に適用可能な軸部材及び規制部材に関する第2の具体例を示す側面図である。
図12図12は、図11に示された規制部材及び軸受を示す正面図である。
図13図13は、図12に示された規制部材を示す側面図である。
図14図14は、規制部材の一変形例を示す側断面図である。
図15図15は、本実施の形態による減速機に適用可能な軸部材及び規制部材に関する第3の具体例を示す側面図である。
図16図16は、図15に示された規制部材及び軸受を示す正面図である。
図17図17は、図15に示された規制部材を示す側断面図である。
図18図18は、図16に対応する図であって、規制部材の一変形例を示す図である。
図19図19は、図18に示された規制部材を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。図1図19は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。一部の図において示された構成等が、他の図において省略されていることもある。図面間で、縮尺および縦横の寸法比等が異なることもある。
【0028】
まず、図1及び図2を参照して、減速機10の全体的な構成について説明する。減速機10は、モータ等の駆動手段から回転を入力される。減速機10は、入力された回転を減速して出力する。減速機10は、主要な構成として、ケース20、キャリア30、外歯歯車40、及び軸部材50を有する。ケース20は、キャリア30を収容する。ケース20及びキャリア30の間には、主軸受12が設けられている。ケース20及びキャリア30は、主回転軸線MRAを中心として相対回転可能である。減速機10は、入力された回転を減速して、ケース20及びキャリア30の相対回転として出力する。主回転軸線MRAと平行な方向を軸方向D1と呼ぶ。キャリア30は、軸部材50を回転可能に保持する。軸部材50の回転軸線RAは、軸方向D1と平行である。駆動手段は、軸部材50に回転を入力する。軸部材50は、偏心体55を有する。偏心体55は、軸部材50の回転中心から偏心している。外歯歯車40は、軸部材50に貫通されている。外歯歯車40は、偏心体55上に位置している。軸部材50の回転にともなって、外歯歯車40は偏心揺動する。外歯歯車40は、ケース20の内面に設けられた内歯25と噛み合う外歯45を有する。内歯25及び外歯45の歯数が異なる。軸部材50に回転が入力されると、内歯25と外歯45とが噛み合うようにして、外歯歯車40が偏心揺動する。内歯25と外歯45との歯数差により、外歯歯車40及び軸部材50を支持するキャリア30は、ケース20に対して相対回転する。
【0029】
以下、ケース20、キャリア30、外歯歯車40、及び軸部材50について、図示された具体的な構成について、順に詳述する。
【0030】
ケース20は、内歯25を有する。内歯25は、主回転軸線MRAを中心とする円周方向DCに配列されている。円周に沿って配列されている。図示された例において、減速機10は、軸方向D1に配列された二つの外歯歯車40A,40Bを有する。各内歯25は、軸方向D1に延び、二つの外歯歯車40A,40Bの外歯45と噛み合う。
【0031】
図示されたケース20は、略円筒状のケース本体21と、ケース本体21の内面に保持された内歯ピン24と、を有する。ケース本体21には、円周方向DCに配列された複数のピン溝が、形成されている、ピン溝は、軸方向D1に延び、円柱状の内歯ピン24を収容保持している。各内歯ピン24が、一つの内歯25を構成する。
【0032】
キャリア30は、一対の主軸受12を介して、ケース20内に保持されている。キャリア30は、主回転軸線MRAを中心として、ケース20に対して回転可能である。図示されたキャリア30は、互いに固定されたキャリアベース31及びキャリアプレート32を有する。キャリアベース31及びキャリアプレート32は、図示しないボルト等の固定具を用いて互いに固定され得る。キャリアベース31は、円板上のベースプレート部31aと、ベースプレート部31aから軸方向D1に突出した複数の柱部31bと、を有する。ベースプレート部31a及び複数の柱部31bは、一体的に形成されてもよい。複数の柱部31bが、主回転軸線MRAを中心とした円周方向DCに等間隔をあけて設けられてもよい。図示された具体例において、三つの柱部31bが設けられている。
【0033】
図示されたキャリア30は、中央穴34及び貫通穴35を設けられている。中央穴34及び貫通穴35は、キャリアベース31及びキャリアプレート32をそれぞれ貫通する。中央穴34は、主回転軸線MRA上に位置する。キャリア30には、複数の貫通穴35が設けられている。複数の貫通穴35は、回転軸線RAを中心とした円周方向DCに等間隔をあけて、位置している。
【0034】
軸部材50は、キャリア30に回転可能に保持される。図示された軸部材50は、キャリア30の貫通穴35に挿入されている。キャリア30と軸部材50との間には、一対の主軸軸受13が設けられている。主軸軸受13を介して、軸部材50は、キャリア30に対して回転軸線RAを中心として回転可能である。回転軸線RAは、軸方向D1と平行である。図示された減速機10は、複数の貫通穴35にそれぞれ挿入された複数の軸部材50を有する。複数の軸部材50は、回転軸線MRAを中心とした円周方向DCに等間隔をあけて、位置している。図示された具体例において、三つの貫通穴35が設けられている。図示された例において、三つの軸部材50が設けられている。
【0035】
図示された軸部材50は、軸本体部51と、軸本体部51上に位置するする一対の偏心体55と、を有する。偏心体55は、円柱状の部分である。偏心体55は、軸本体部51から拡径している。偏心体55は、軸部材50の回転中心である回転軸線RAから偏心している。一対の偏心体55は、第1偏心体55A及び第2偏心体55Bを含む。第1偏心体55A及び第2偏心体55Bは、回転軸線RAから逆側に同一の偏心量だけ偏心している。言い換えると、軸方向D1に直交する断面において、第1偏心体55Aの中心及び第2偏心体55Bの中心は、回転軸線RA上の一点を中心として点対称な位置にある。
【0036】
軸本体部51は、キャリアプレート32への挿入部となる第1軸受支持部52aと、キャリアベース31への挿入部となる第2軸受支持部52bと、を有する。軸受支持部52a,52bは、それぞれ、主軸軸受13を支持している。一対の偏心体55A,55Bは、軸方向D1において、一対の軸受支持部52a,52bの間に位置する。図示された軸部材50は、軸本体部51に固定された入力歯車59を更に有する。図示された例において、第1軸受支持部52a、第1偏心体55A、第2偏心体55B、第2軸受支持部52b、及び入力歯車59は、軸方向D1にこの順で位置している。
【0037】
図示された減速機10は、外歯歯車40として、第1外歯歯車40A及び第2外歯歯車40Bを有する。第1外歯歯車40Aは、複数の軸部材50の第1偏心体55A上に位置している。第2外歯歯車40Bは、複数の軸部材50の第2偏心体55B上に位置している。第1外歯歯車40A及び第2外歯歯車40Bは、軸方向D1において、キャリアベース31のベースプレート部31aとキャリアプレート32との間に位置している。
【0038】
図示された外歯歯車40は、円板状の中央板部41と、中央板部41の周縁部に配列された外歯45と、を有する。中央板部41には、中央穴42a及び柱部通過穴42bが設けられている。中央穴42aは、主回転軸線MRA上に位置している。中央穴42aは、中央穴34と軸方向D1に対面している。図示された例において、複数の柱部通過穴42bが、中央穴42aを中心とする円周方向DCに等間隔をあけて位置している。キャリア30の柱部31bが、柱部通過穴42bを貫通している。図示された具体例において、三つの柱通過穴43が設けられている。
【0039】
中央板部41には、更に、穴43が設けられている。図示された例において、三つの穴43が、中央穴42aを中心とする円周方向DCに等間隔をあけて位置している。穴43内には、偏心体55が配置されている。偏心体55と外歯歯車40との間には、軸受15が設けられている。軸部材50の第1偏心体55A上に、第1軸受15Aを介して、第1外歯歯車40Aが支持されている。軸部材50の第2偏心体55B上に、第2軸受15Bを介して、第2外歯歯車40Bが支持されている。
【0040】
各外歯歯車40は、三つの偏心体55に支持される。三つの軸部材50に含まれる偏心体55は、位相を揃えられている。したがって、三つの軸部材50が回転することにより、外歯歯車40は偏心揺動する。言い換えると、三つの軸部材50が回転することにより、外歯歯車40は、主回転軸線MRAを中心とする円周経路を並進移動する。第1外歯歯車40A及び第2外歯歯車40Bは、半位相ずらして、動作する。
【0041】
以上の構成を有した減速機10に、モータ等の駆動手段から回転が入力される。例えば、駆動手段の出力歯車が、主回転軸線MRA上に配置され、三つの軸部材50の入力歯車59と噛み合う。出力歯車が回転すると、軸部材50が回転して、外歯歯車40が偏心揺動する。このとき、外歯歯車40の外歯45はケース20の内歯25と噛み合う。外歯45と内歯25との歯数差に起因して、軸部材50を介して外歯歯車40を支持するキャリア30と、ケース20とが、主回転軸線MRAを中心として相対回転する。ケース20が固定されている場合には、キャリア30の回転が出力される。キャリア30が固定されている場合には、ケース20の回転が出力される。
【0042】
ところで、従来技術の欄でも言及したように、外歯歯車と軸部材との間に位置する軸受は、軸方向D1に移動し得る。軸受の移動を規制するため、軸部材の軸本体部上にワッシャを配置することも考えられる。偏心体は、軸部材の回転軸線から偏心している。したがって、回転軸線RAから軸受の周方向における各位置までの径方向D2に沿った長さは変化する。軸本体部上に一定の半径を有する大径ワッシャを設けることによって、このワッシャが偏心体上の軸受に軸方向D1から環状領域にて接触することができる。この場合、軸受の軸方向への移動を安定して規制できる。
【0043】
しかしながら、偏心体の偏心量は、減速比等に基づいて、設計される。つまり、各減速機の設計に応じて変化する。偏心体の偏心量が大きい場合、ワッシャは、軸受の回転軸線RAまでの距離が短い部分を越えて、軸受から径方向に延び出ることもある。この場合、ワッシャが、偏心揺動する外歯歯車や、外歯歯車以外の周辺の部材に接触し得る。ワッシャが外歯歯車等の周辺部材にワッシャが接触すると、減速機の動作が阻害され、減速機の損傷の原因となる。その一方で、小径ワッシャを用いた場合、このワッシャは、軸受に軸方向D1から環状領域にて接触することができず、軸受の偏心体上での移動を安定して規制できない。
【0044】
このような不具合に対し本実施の形態では、以下に説明するように、軸部材50上に規制部材60が設けられている。この規制部材60によれば、軸受の偏心体上での移動を安定して規制することができる。以下、いくつかの具体例に基づき、規制部材60について説明する。異なる具体例の間で、対応する構成要素、部材、部位等については同一の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0045】
なお、以下に説明する規制部材60は、図1及び図2の具体例を参照しながら説明した上述の減速機10に適用可能である。その一方で、規制部材60の適用対象は、図1及び図2に示された具体例に限られない。以下で参照する図面に示された減速機10の具体的構成は、図1及び図2に示された具体例と完全一致しないこともあるが、当該構成は適宜変更可能な構成の一例といえる。
【0046】
以下の説明において、第1偏心体55A及び第2偏心体55Bを区別せずに「偏心体55」と表現する場合、「偏心体55」に関する記載は、第1偏心体55A及び第2偏心体55Bのいずれにも適用可能である。同様に、「外歯歯車40」に関する記載は、第1外歯歯車40A及び第2外歯歯車40Bのいずれにも適用可能である。「軸受15」に関する記載は、第1軸受15A及び第2軸受15Bのいずれにも適用可能である。また、以下の例において、減速機10は、規制部材60として、第1規制部材60A及び第2規制部材60Bを有してもよい。第1規制部材60A及び第2規制部材60Bを区別せずに「規制部材60」と表現する場合、「規制部材60」に関する記載は、第1規制部材60A及び第2規制部材60Bのいずれにも適用可能である。
【0047】
図3図10は、第1の具体例とその変形例を示している。図11図14は、第2の具体例とその変形例を示し、図15図17は、第3の具体例とその変形例を示している。
【0048】
減速機10は、外歯歯車40と、外歯歯車40を偏心揺動させる偏心体55を有する軸部材50と、外歯歯車40と軸部材50との間に配置される軸受15と、を有する。軸部材50は、軸受15に軸方向D1から接触可能な規制部材60を更に有する。規制部材60は、軸受15に軸方向D1おける一方の側から接触して、軸受15が軸方向D1における一方の側へ移動することを規制し得る。
【0049】
一つの軸部材50に関連して、軸方向D1における入力歯車59から離れ第1軸受支持部52aに近い端部の側を、軸方向D1における第1側と呼ぶ。一つの軸部材50に関連して、軸方向D1における第1軸受支持部52aから離れ入力歯車59に近い端部の側を、軸方向D1における第2側と呼ぶ。図2図3の紙面における右側が第軸方向D1側となる。径方向D2とは、軸部材50の回転軸線RAに直交する方向である。径方向D2における回転軸線RAに近い側を内側と呼び、径方向D2における軸方向D1から離れる側を外側と呼ぶ。
【0050】
図3図8図11及び図15に示された例において、減速機10は、規制部材60として、第1規制部材60A及び第2規制部材60Bを有する。第1規制部材60Aは、第1偏心体55A上に位置する第1軸受15Aに、軸方向D1における第1側から接触する。第1規制部材60Aは、第1軸受15Aの軸方向D1における第1側への移動を規制する。第2規制部材60Bは、第2偏心体55B上に位置する第2軸受15Bに、軸方向D1における第2側から接触する。第2規制部材60Bは、第2軸受15Bの軸方向D1における第2側への移動を規制する。
【0051】
図示された例において、軸部材50は、第1フランジ部58A及び第2フランジ部58Bを更に有する。第1フランジ部58Aは、第1偏心体55Aに軸方向D1における第2側から隣接する。第1フランジ部58Aは、第1偏心体55Aより径方向D2における外側に突出している。第1フランジ部58Aは、第1偏心体55Aと同心でもよい。第1フランジ部58Aは、第1偏心体55Aの外周面55sから一定長さ延び出してよい。第1フランジ部58Aは、第1偏心体55A上に位置する第1軸受15Aに、軸方向D1における第2側から接触する。第1フランジ部58Aは、第1軸受15Aの軸方向D1における第2側への移動を規制する。第1偏心体55A上の第1軸受15Aは、軸方向D1における第1フランジ部58A及び第1規制部材60Aの間に位置し、第1フランジ部58A及び第1規制部材60Aへの接触により軸方向D1への移動を規制される。
【0052】
第2フランジ部58Bは、第2偏心体55Bに軸方向D1における第1側から隣接する。第2フランジ部58Bは、第2偏心体55Bより径方向D2における外側に突出している。第2フランジ部58Bは、第2偏心体55Bと同心でもよい。第2フランジ部58Bは、第2偏心体55Bの外周面55sから一定長さ延び出してよい。第2フランジ部58Bは、第2偏心体55B上に位置する第2軸受15Bに、軸方向D1における第1側から接触する。第2フランジ部58Bは、第2軸受15Bの軸方向D1における第1側への移動を規制する。第2偏心体55B上の第2軸受15Bは、軸方向D1における第2フランジ部58B及び第2規制部材60Bの間に位置し、第2フランジ部58B及び第2規制部材60Bへの接触により軸方向D1への移動を規制される。
【0053】
第1フランジ部58Aは、切削加工により、第1偏心体55Aと同一材料で繋ぎ目無しで形成されてもよい。同様に、第2フランジ部58Bは、切削加工により、第2偏心体55Bと同一材料で繋ぎ目無しで形成されてもよい。偏心体55と同心のフランジ部は、旋盤加工時にワークを持ち替えることなく、偏心体55と連続的に形成され得る。したがって、加工精度、作業時間、納期、製造コスト等の面において好ましい。図示された軸部材50において、軸本体部51、第1偏心体55A、第2偏心体55B、第1フランジ部58A、及び第2フランジ部58Bは、旋盤等を用いた切削加工によって、同一材料で繋ぎ目無しで形成されている。図示された軸部材50は、更に、別個に作製された入力歯車59を軸本体部51に固定することにより、一体的に構成されている。
【0054】
図3図8図11及び図15に示された例において、第1規制部材60Aは、軸本体部51上に位置している。第1規制部材60Aは、軸方向D1において第1偏心体55A及び第1軸受支持部52aの間に位置する。第1軸受支持部52a上には、主軸軸受13が配置されている。第1規制部材60Aは、主軸軸受13によって、第1偏心体55Aから軸方向D1に離れることを規制される。同様に、第2規制部材60Bは、軸本体部51上に位置している。第2規制部材60Bは、軸方向D1において第2偏心体55B及び第2軸受支持部52bの間に位置する。第2軸受支持部52b上には、主軸軸受13が配置されている。第2規制部材60Bは、主軸軸受13によって、第2偏心体55Bから軸方向D1に離れることを規制される。なお、第1軸受支持部52a上の主軸軸受13は、キャリアプレート32によって軸方向D1における第1側への移動を規制される。第2軸受支持部52b上の主軸軸受13は、キャリアベース31によって軸方向D1における第2側への移動を規制される。
【0055】
図3図17に示すように、すべての具体例に共通する事項として、規制部材60は環状である。環状の規制部材60は、内周縁61及び外縁62を有する。規制部材60は、内周縁61を形成する内側環状部70を有する。内側環状部70は、内周縁61に沿って環状に延びる環状部である。軸部材50は内側環状部70を通過し、規制部材60は軸部材50上に保持される。内周縁61が軸部材50に接触することにより、規制部材60は、軸部材50に対する径方向D2への相対移動を規制される。
【0056】
規制部材60は、外縁62を形成する外側部80を有する。規制部材60は、外側部80において、偏心体55から径方向D2における外側に延び出る。外側部80は、軸受15と軸方向D1に対面する。外側部80は、外縁62に沿って環状に延びる環状部である。規制部材60は、外側部80において、軸方向D1から軸受15に接触できる。例えば図4図6等に示すように、内周縁61の中心61cから外縁62の各位置までの距離L62は一定ではない。言い換えると、外縁62は、内周縁61の中心61cから偏心している。ここで、「中心」とは、軸方向D1からの観察において、言い換えると軸方向D1に直交する面への投影において、対象となる部分の輪郭によって取り囲まれる形状の重心を意味する。すなわち、内周縁61の中心61cとは、内周縁61によって取り囲まれる形状の重心を意味する。一例として軸方向D1からの観察において内周縁61が円形状である場合、中心61cは、円の中心に一致する。外縁62は、内周縁61の中心61cから偏心した円環に沿って延びてもよい。図4図6等に示された例において、軸方向D1から観察された内周縁61及び外縁62は、共に、円形状である。円形状である内周縁61及び外縁62は、偏心している。
【0057】
以上のように、規制部材60は、軸部材50上に位置する内周縁61を有した内側環状部70と、内周縁61の中心61cからの距離が一定ではない外縁62を有し軸方向D1への軸受15の移動を規制する外側部80と、を有する。内周縁61の中心61cと偏心体55の外周面55s上の各位置までの距離も一定でない。内周縁61の中心61cから偏心体55までの距離の変動に応じて、内周縁61の中心61cから外縁62上の各位置までの距離を調節することにより、軸方向D1からの観察において、外縁62を外周面55sより径方向D2における外側に配置できる。また、内周縁61の中心61cから外縁62上の各位置までの距離を調節することにより、軸方向D1からの観察において、外縁62が、その全長に亘って、軸受15上に位置するようにできる。外縁62が、軸受15を越えて径方向D2における外側に延び出すことを回避することもできる。これらにより、規制部材60が、偏心体55及び軸受15の周辺に位置する外歯歯車40等の周辺部材と接触すること、更には周辺部材を損傷することを効果的に防止することができる。これにともなって、偏心体55と外歯歯車40との間に位置する軸受15の軸方向D1への移動を安定して規制することができる。
【0058】
図3図10を主として参照し、規制部材60を有する減速機10の第1の具体例とその変形例について説明する。
【0059】
上述したように、規制部材60は、内周縁61を有する内側環状部70と、内周縁61の中心61cから偏心した外縁62を有する外側部80と、を有する。図示された例において、内側環状部70及び外側部80は、共に、板状である。第1具体例において、規制部材60は、内側環状部70及び外側部80を連結するに段差連結部65を更に有する。段差連結部65は、軸方向D1にオフセットして内周縁61及び内側環状部70を連結してもよい。図4に示すように、内周縁61の中心61cから段差連結部65の各位置までの距離L65は一定ではない。言い換えると、段差連結部65は、内周縁61の中心61cから偏心している。図4に示すように、軸方向D1から観察された内周縁61及び段差連結部65は、共に、円形状である。円形状である内周縁61及び段差連結部65は、偏心している。
【0060】
図3に示すように、偏心体55は、規制部材60に対面する側面55kを有する。偏心体55は、側面55kに段差部56sを有する。段差部56sは、線状に延びる。段差部56sは、内周縁61の中心61cから偏心した円環に沿って延びる。図示された偏心体55は、規制部材60に対面する側面55kに、軸方向D1に突出した凸部56を有する。凸部56は、高さの低い偏平状の凸部である。段差部56sは、凸部56の側周縁によって構成されている。凸部56及び段差部56sは、切削加工により、偏心体55と同一材料で繋ぎ目無しで形成されてもよい。図示された例において、第1偏心体55Aは、軸方向D1における第1側を向く側面55kに、凸部56及び段差部56sを有する。第2偏心体55Bは、軸方向D1における第2側を向く側面55kに、凸部56及び段差部56sを有する。
【0061】
規制部材60は軸部材50に貫通され、内周縁61が軸部材50上に位置する。したがって、規制部材60は、外力により、軸部材50上で回転しようとすることも想定され得る。この規制部材60の回転は、内周縁61の中心61cを通過して軸方向D1に延びる軸線を中心とする。一方、図3に示すように、偏心体55の段差部56sと、規制部材60の段差連結部65は、軸方向D1に対面する。偏心体55の段差部56sは、円環状であり、内周縁61の中心61cから偏心している。したがって、段差部56s及び段差連結部65が接触して、規制部材60及び軸部材50の相対回転が規制される。すなわち、内周縁61の中心61cからの距離L62が一定ではない外縁62を有する規制部材60は、軸部材50に対する相対回転を規制される。したがって、内周縁61の中心61cからの距離L62が一定でない外縁62が、規制部材60の軸部材50上での回転により、意図せず偏心体55の外周面55sから径方向D2に大きく延び出すことを、効果的に防止することができる。これにより、規制部材60が、偏心体55及び軸受15の周辺に位置する外歯歯車40等の周辺部材と接触すること、更には周辺部材を損傷することを効果的に防止することができる。このため、規制部材60を用いることによって、軸受15の軸方向D1への移動を安定して規制できる。
【0062】
図4に示された例において、規制部材60は、軸方向D1から軸受15の一部分のみに対面してもよい。すなわち、軸受15が、少なくとも部分的に、規制部材60によって軸方向D1から覆われることなく、軸方向D1に露出してもよい。この構成によれば、減速機10内に収容された潤滑油が軸受15に円滑に供給され得る。
【0063】
図4に示すように、偏心体55の中心55cから外縁62までの距離L62Xは一定でなくてもよい。この例によれば、軸受15が、少なくとも部分的に、規制部材60によって軸方向D1から覆われることなく、軸方向D1に露出することができる。これにより、減速機10内に収容された潤滑油が軸受15に円滑に供給され得る。
【0064】
なお、軸受15は、通常、偏心体55の外周面55s上に配置された転動体と、転動体を偏心体55上に保持する保持器16と、を有する。このうち、保持器16が、規制部材60と軸方向に接触することができる。保持器16は、偏心体55の中心55cを中心として、偏心体55上において回転可能である。
【0065】
外縁62は円環状でもよい。図4に示された例において、円環状の外縁62は、偏心体55の中心55cから偏心している。この構成により、偏心体55の中心55cから外縁62までの距離L62Xは一定でなくできる。ただし、距離L62Xは変化させるための構成は、限定されない。図6に示すように、外縁62は、円以外の形状を有しもよい。図6に示された例において、外縁62は、一例として楕円形状である。図6に示された例において、外縁62の中心62cは、偏心体55の中心55cと一致し、軸受15の中心とも一致している。しかしながら、外縁62の外形状が円以外の形状であることから、軸受15が、少なくとも部分的に、規制部材60によって軸方向D1から覆われることなく、軸方向D1に露出することができる。これにより、減速機10内に収容された潤滑油が軸受15に円滑に供給され得る。
【0066】
軸受15は、環状の領域において、規制部材60から露出してもよい。図4に示された例において、規制部材60の外縁62は、その全周に亘って、軸受15の外周縁より径方向D2における内側に位置している。この結果、軸受15は、その外周縁を含む環状の領域において、規制部材60から軸方向D1に露出している。この例によれば、潤滑油を軸受15に円滑に供給することができるとともに、規制部材60の外縁62が、偏心体55及び軸受15の周辺に位置する部材、例えば外歯歯車40に接触することを効果的に防止することができる。
【0067】
更に図4等に示す例では、規制部材60の外縁62は、その全周に亘って、軸受15の内周縁及び偏心体55の外周面55sよりも径方向D2における外側に位置している。すなわち、図4に示された例において、軸受15は、径方向D2における内側となる環状の領域において規制部材60と軸方向D1に対面し、且つ、径方向D2における外側となる環状の領域において軸方向D1に露出して潤滑油に曝され得る。したがって、規制部材60と周辺部材との接触を効果的に回避しながら軸受15の軸方向D1への移動を安定して規制することができるともに、減速機10内に収容された潤滑油を軸受15に円滑に供給することができる。
【0068】
図7に示すように、円形状の外縁62は偏心体55と同心でもよい。この例によれば、軸受15の規制部材60から軸方向D1に露出する領域は、一定の幅を有し易く、又は、回転対称となり易い。この例によれば、保持器16の偏心体55上での回転が安定する。これにより、軸受15への潤滑油供給が促進され、減速機10の動作も安定する。
【0069】
以上に説明した、規制部材60の外縁62と軸受15との関係は、第1の具体例だけでなく、図11図17を参照して後述する第2の具体例および第3の具体例にも適用可能である。
【0070】
図3及び図4に示された例では、円環状の段差部56sは偏心体55の中心55cから偏心している。この例に限られず、図8に示すように、円環状の段差部56s及び凸部56は、偏心体55と同心でもよい。この例によれば、外周面55s、段差部56s及び凸部56を含む偏心体55の全体を、旋盤加工時にワークを持ち替えることなく、連続的に形成することができる。したがって、加工精度、作業時間、納期、製造コスト等の面において好ましい。
【0071】
図9は、図8に示された規制部材60を示す平面図である。図9に示すように、段差連結部65は外縁62と同心でもよい。すなわち、図9に示された例において、段差連結部65の中心65cと、外縁62の中心62cは、軸方向D1からの観察において一致している。この例によれば、段差連結部65と外縁62との間の幅、すなわち、環状の外側部80の幅を、回転軸線RAを中心とした周方向に沿って、一定にできる。これにより、外側部80の周方向に沿った各領域に一定の剛性を付与することができる。これにより、規制部材60により、安定して、軸受15の軸方向D1への移動を規制できる。また、外側部80の損傷を抑制することができる。
【0072】
図示された例において、内周縁61の中心61cは、軸部材50の回転軸線RA上に位置している。この例によれば、軸本体部51のうちの、規制部材60の内周縁61及び内側環状部70を支持する部分を、旋盤加工時にワークを持ち替えることなく、第1軸受支持部52aや第2軸受支持部52bと連続的に形成することができる。したがって、加工精度、作業時間、納期、製造コスト等の面において好ましい。この点は、第1の具体例だけでなく、図11図15を参照して後述する第2の具体例および第3の具体例にもあてはまる。
【0073】
図5は、図3及び図4に示された規制部材60を示す断面図である。図5に示すように、内側環状部70及び外側部80は、少なくとも部分的に、軸方向D1における互いに同一の領域に位置している。言い換えると、内側環状部70の少なくとも一部分と、外側部80の少なくとも一部分とが、軸方向D1の領域で重なりあう位置がある。この例によれば、軸部材50に対する回転を規制された規制部材60の軸方向D1における厚みを小型化できる。これにより、減速機10の小型化を図ることができる。
【0074】
外縁62及び外側部80は、上述したように、円環状でなくてもよい。外縁62及び外側部80は、楕円形状でもよい。外縁62及び外側部80は、六角形形状、四角形形状等の角形状でもよい。外縁62及び外側部80は、環状でなくてもよい。図10に示すように、外縁62及び外側部80は、円の一部分のみに沿って延びてもよい。外縁62及び外側部80は、楕円の一部分のみに沿って延びてもよい。外縁62及び外側部80は、角形状の一分部のみに沿って延びてもよい。同様に、段差連結部65は円環状でなくてもよい。図10に示すように、段差連結部65は、円形状の一部分のみに沿ってのびてもよい。これらの例によっても、偏心体55と外歯歯車40との間に位置する軸受15の軸方向D1向への移動を安定して規制するができる。また、規制部材60を小型軽量化することができる。
【0075】
内側環状部70及び外側部80は、一体的に構成されている。一体的に構成されているとは、内側環状部70及び外側部80が相対動作不可能に固定されていることを意味する。内側環状部70及び外側部80は、一つの材料から継ぎ目無しで一体的に成形されてもよい。別個に作製された内側環状部70及び外側部80が、溶接や、ボルト等の接合具を介して接合されてもよい。内側環状部70及び外側部80が一体的に構成されることによって、軸部材50の高速回転時に、規制部材60の分解等の損傷を抑制することができる。
【0076】
第1の具体例において、規制部材60は、金属板をプレス加工することによって、作製されてもよい。プレス加工によれば、三次元形状を有する規制部材60を、一つの材料を用いて継ぎ目無しで作製することができる。プレス加工によれば、規制部材60の内周縁61や外縁62を種々の形状にすることができる。
【0077】
以上に説明してきた第1の具体例において、規制部材60は、内側環状部70及び外側部80を連結する段差連結部65を有する。偏心体55は、規制部材60に対面する側面55kに、内周縁61の中心61cから偏心した円環状の段差部56sを有する。段差部56s及び段差連結部65が接触することにより、規制部材60及び軸部材50の相対回転を規制することができる。このように規制部材60の回転が規制されることによって、規制部材60が、偏心体55や軸受15の周辺に位置する部材と接触すること、例えば外歯歯車40と接触することを、より安定して回避することができ、軸受15の軸方向D1への移動を安定して規制することができる。
【0078】
次に、図11図14を参照して、第2の具体例及びその変形例について説明する。
【0079】
規制部材60は、軸部材50上に位置する内周縁61を有した内側環状部70と、内周縁61の中心61cからの距離が一定ではない外縁62を有する外側部80と、を有する。外側部80は、軸方向D1から軸受15に接触して、軸方向D1への軸受15の移動を規制することができる。第2の具体例において、外側部80は、外筒部81を有する。
【0080】
外筒部81は、偏心体55の外周面55s上に位置している。外筒部81は、軸方向D1における両側に開口している。外筒部81は、軸方向D1に長さを有する。第2具体例において、偏心体55の外周面55s上には、軸受15と外筒部81が位置している。外筒部81は、外周面55sのうちの軸方向D1における一部分上に位置している。
【0081】
第2の具体例において、偏心体55の外周面55sは、軸部材50上に位置する内周縁61の中心61cから、偏心している。したがって、内周縁61の中心61cから外筒部81までの距離は一定でない。内周縁61と外筒部81は偏心されている。このため、軸部材50上に位置する内周縁61と、偏心体55の外周面55s上に位置する外筒部81と、を有する規制部材60は、軸部材50に対する回転を規制される。すなわち、内周縁61の中心61cからの距離L62が一定ではない外縁62を有する規制部材60は、軸部材50に対する相対回転を規制される。これにより、内周縁61の中心61cからの距離L62が一定でない外縁62が、規制部材60の軸部材50上での回転にともなって意図せず偏心体55の外周面55sから径方向D2に大きく延び出すことを、効果的に防止することができる。この結果、規制部材60が、偏心体55及び軸受15の周辺に位置する外歯歯車40等の周辺部材と接触すること、更には周辺部材を損傷することを効果的に防止することができる。規制部材60を用いることによって、軸受15の軸方向D1への移動を安定して規制できる。
【0082】
図12及び図13に示された例において、外筒部81は円筒状である。円筒状の外周面が、外縁62を構成している。円筒状の外筒部81の外周面及び内周面は、偏心体55と同心である。図12に示すように、軸方向D1からの観察において、軸受15は、その外周縁を含む環状の領域にて、規制部材60から露出している。軸受15は、その内周縁含む環状の領域にて、規制部材60と軸方向D1に対面している。この例によれば、潤滑油を軸受15に円滑に供給することができるとともに、規制部材60の外縁62が、偏心体55及び軸受15の周辺に位置する部材、例えば外歯歯車40に接触することを効果的に防止しながら軸受15の軸方向D1への移動を規制することができる。
【0083】
ただし、第2の具体例において、図示された例と異なり、外縁62は偏心体55と同心でなくてもよい。偏心体55の中心55cから外縁62までの距離L62Xは一定ではなくてもよい。これにより、軸受15への潤滑油の円滑に供給することができる。
【0084】
図11図13に示された例のように、内側環状部70は、軸部材50上に位置する内筒部71を含んでもよい。図示された内側環状部70は、内筒部71及び板状部72を有する。外側部80は、外筒部81のみによって構成されている。
【0085】
内筒部71は、軸本体部51上に位置してもよい。内筒部71は、軸本体部51の軸受支持部52a,52bの一部分上に位置してもよい。内筒部71は、軸方向D1における両側に開口している。内筒部71は、軸方向D1に長さを有する。このような内筒部71を有することにより、より安定して、軸部材50に対する規制部材60の回転を防止することができる。
【0086】
図示された例によれば、内周縁61の中心61cは、軸部材50の回転軸線RA上に位置する。この例によれば、規制部材60を保持する軸部材50を切削加工によって容易に作製することができる。ただし、この例に限られず、内周縁61の中心61cは、軸部材50の回転軸線RAから径方向D2にずれてもよい。
【0087】
板状部72は、軸方向D1と非平行な方向に内筒部71から広がっている。板状部72は、軸方向D1と直交する方向に内筒部71から広がってもよい。図示された板状部72は、偏心体55の側面55kに接触している。板状部72が偏心体55に接触することにより、軸部材50は、軸方向D1において適切に位置決めされる。板状部72によれば、より安定して、軸部材50に対する規制部材60の回転を防止することができる。
【0088】
ただし、図示された例と異なり、内筒部71を規制部材60から省いてもよい。図14に示された例のように、規制部材60は板状部72のみによって構成されてもよい。板状部72は、外筒部81から軸方向D1に非平行な方向、例えば外筒部81から軸方向D1に直交する方向に、広がっている。板状部72には内周縁61によって区画された貫通穴が形成されている。
【0089】
第2の具体例において、外筒部81は、円筒状以外の形状を有してもよい。外筒部81は、楕円筒状でもよく、角筒状でもよい。同様に、内筒部71は、円筒状以外の形状を有してもよい。内筒部71は、楕円筒状でもよく、角筒状でもよい。これらの例によっても、規制部材60の軸部材50に対する相対回転を効果的に防止することができる。
【0090】
第2の具体例において、内側環状部70及び外側部80は、一体的に構成されている。内側環状部70及び外側部80が一体的に構成されることによって、軸部材50の高速回転時に、規制部材60の分解等の損傷を抑制することができる。規制部材60は、旋盤を用いて、作製されてもよい。
【0091】
以上に説明してきた第2の具体例において、規制部材60の外側部80は、偏心体55の外周面55s上に位置する外筒部81を有する。外筒部81と偏心体55の外周面55sとの接触により、規制部材60及び軸部材50の相対回転を規制することができる。このように規制部材60の回転が規制されることによって、規制部材60が、偏心体55や軸受15の周辺に位置する部材と接触すること、例えば外歯歯車40と接触することを、より安定して回避することができ、軸受15の軸方向D1への移動を安定して規制することができる。
【0092】
次に、図15図19を参照して、第3の具体例及びその変形例について説明する。
【0093】
規制部材60は、軸部材50上に位置する内周縁61を有した内側環状部70と、内周縁61の中心61cからの距離L62が一定ではない外縁62を有する外側部80と、を有する。外側部80は、軸方向D1から軸受15に接触して、軸方向D1への軸受15の移動を規制することができる。第3の具体例において、内側環状部70は、環状の第1環状部75を含む。外側部80は、内側環状部70と別個の第2環状部85を含む。
【0094】
第1環状部75は、第1内周縁75a及び第1外周縁75bを有する。第1環状部75は環板状である。第1内周縁75aは、規制部材60の内周縁61を構成する。軸部材50は第1内周縁75aを通過する。第1環状部75は軸部材50上に保持され、第1内周縁75aが軸部材50に接触することにより、規制部材60の軸部材50に対する径方向D2への移動を規制される。
【0095】
第2環状部85は、第2内周縁85a及び第2外周縁85bを有する。第2環状部85は環板状である。第2外周縁85bは、規制部材60の外縁62を構成する。したがって、第1内周縁75aの中心から第2外周縁85bまでの距離L62は一定ではない。軸部材50は第2内周縁85aを通過する。第2環状部85は軸部材50上に保持され、第2内周縁85aが軸部材50に接触することにより、軸部材50に対する径方向D2への移動を規制される。
【0096】
図15図17に示すように、第2環状部85は、軸部材50上において偏心体55及び第1環状部75の間に位置する。外側部80を構成する第2環状部85は、軸方向D1から軸受15に対面する。図16に示すように、第2環状部85の第2内周縁85aと第1環状部75の第1外周縁75bとによって囲まれた環状領域69において、第1環状部75及び第2環状部85は軸方向D1に対面する。このような第3の具体例によれば、軸部材50上における偏心体55の偏心量が大きくても、第2環状部85の中心85cを第1環状部75の中心75cから径方向D2にずらすことにより、外縁62が外周面55sから径方向D2に大きく延び出すことを抑制できる。したがって、第1環状部75及び第2環状部85が軸部材50上で回転したとしても、規制部材60の外縁62が、偏心体55及び軸受15の周辺に位置する部材、例えば外歯歯車40に接触することを効果的に防止することができる。
【0097】
図15図17に示された例において、偏心体55は、規制部材60に対面する側面55kに凸部56を有する。偏心体55は、凸部56の周縁となる位置に段差部56sを有する。第2環状部85は、その第2内周縁85aが段差部56s上に位置するようにして、偏心体55に保持されている。一方、第1環状部75は、軸本体部51上に保持されている。第2環状部85及び第1環状部75は、軸方向D1において偏心体55及び主軸軸受13の間に位置する。偏心体55及び主軸軸受13によって、規制部材60を構成する第2環状部85及び第1環状部75は軸方向D1への移動を規制される。
【0098】
図15に示された例では、上述した第1フランジ部58A及び第2フランジ部58Bに代えて中間フランジ部58Cが配置されている。中間フランジ部58Cは、軸方向D1における第2側から第1軸受15Aに接触し、第1軸受15Aが軸方向D1における第2側へ移動することを規制する。中間フランジ部58Cは、軸方向D1における第1側から第2軸受15Bに接触し、第2軸受15Bが軸方向D1における第1側へ移動することを規制する。ただし、第3の具体例において、中間フランジ部58Cに代えて、上述した第1フランジ部58A及び第2フランジ部58Bを採用することができる。上述の第1の具体例および第2の具体例において、第1フランジ部58A及び第2フランジ部58Bに代えて中間フランジ部58Cを採用してもよい。
【0099】
図示された例において、内側環状部70は、第1環状部75のみよって構成されている。第1環状部75は円環状である。すなわち、第1内周縁75a及び第1外周縁75bは、共に、円形状である。第1内周縁75a及び第1外周縁75bの間の幅は一定である。図示された例において、外側部80は、第2環状部85のみよって構成されている。第2環状部85は円環状である。すなわち、第2内周縁85a及び第2外周縁85bは、共に、円形状である。第2内周縁85a及び第2外周縁85bの間の幅は一定である。図16に示すように、外側部80をなす第2環状部85は、内側環状部70をなす第1環状部75の中心75cから偏心して、軸部材50上に位置している。この例によれば、軸部材50上における偏心体55の偏心量が大きくても、外縁62が外周面55sから径方向D2に大きく延び出すことを抑制できる。そして、第2環状部85が軸部材50上で回転したとしても、規制部材60の外縁62が、偏心体55及び軸受15の周辺に位置する部材、例えば外歯歯車40に接触することをより効果的に防止することができる。
【0100】
図16及び図17に示すように、軸部材50の回転軸線RAに対する外縁62の偏心量D62は、軸部材50の回転軸線RAに対する偏心体55の偏心量D55よりも小さい。この例によれば、軸部材50上における偏心体55の偏心量が大きくても、外縁62が外周面55sから径方向D2に大きく延び出すことを抑制できる。
【0101】
図16に示された例において、軸受15は、一部の領域において、第2環状部85に軸方向D1から覆われず、軸方向D1に露出している。そして、偏心体55の中心55cから外縁62までの距離L62Xは一定ではなくてもよい。この例によれば、軸受15への潤滑油の円滑に供給することができる。
【0102】
軸部材50の回転軸線RAに対する外縁62の偏心量D62は、軸部材50の回転軸線RAに対する偏心体55の偏心量D55の半分でもよい。軸方向D1からの観察において、第2環状部85の中心85cは、第1環状部75の中心75cと偏心体55の中心55cとの間に位置してもよい。軸方向D1からの観察において、第2環状部85の中心85cは、第1環状部75の中心75cと偏心体55の中心55cとの中心に位置してもよい。これらの例によれば、外縁62が外周面55sから径方向D2に大きく延び出すことをより効果的に抑制しながら、規制部材60を用いて軸受15の軸方向D1への移動を安定して規制できる。
【0103】
図16及び図17に示された例と異なり、偏心体55及び外縁62は同心でもよい。図18及び図19に示された例において、偏心体55の中心55cから外縁62までの距離L62Xは一定となっている。偏心体55及び第2環状部85は同心で配置されている。この例によれば、第2環状部85が軸部材50上で回転したとしても、規制部材60の外縁62が、軸受15を越えて径方向D2に延び出すことを防止することができる。これにより、規制部材60の外縁62が、偏心体55及び軸受15の周辺に位置する部材、例えば外歯歯車40に接触することをより効果的に防止することができる。さらに図18及び図19に示された例において、軸受15は、環状の領域において、第2環状部85に軸方向D1から覆われず、軸方向D1に露出している。この例によれば、軸受15への潤滑油の円滑に供給することができる。
【0104】
図18及び図19に示された例において、第2環状部85の第2内周縁85aの中心85cは、偏心体55の中心55cと同心の円形状である。第2環状部85を径方向D2に支持する凸部56及び段差部56sは、偏心体55と同心となる。このような凸部56及び段差部56sは、旋盤等を用いた切削加工によって、偏心体55と同一材料で繋ぎ目無しで形成され得る。
【0105】
図15図17に示された例において、内周縁61の中心61cは、軸部材50の回転軸線RA上に位置している。この例によれば、内側環状部70を保持する軸部材50の構成を切削加工によって容易に作製することができる。
【0106】
ただし、図15及び図16に示された例に限られない。図18に示すように、内周縁61の中心61cは、軸部材50の回転軸線RAから径方向D2にずれてもよい。この例によっても、外縁62が外周面55sから径方向D2に大きく延び出すことを抑制できる。
【0107】
図18及び図19に示すように、軸部材50の回転軸線RAに対する内周縁61の偏心量D61は、軸部材50の回転軸線RAに対する偏心体55の偏心量D55よりも小さい。この例によれば、軸部材50上における偏心体55の偏心量が大きくても、外縁62が外周面55sから径方向D2に大きく延び出すことを抑制できる。
【0108】
軸部材50の回転軸線RAに対する内周縁61の偏心量D61は、軸部材50の回転軸線RAに対する偏心体55の偏心量D55の半分でもよい。軸方向D1からの観察において、第1環状部75の中心75cは、第2環状部85の中心85cと軸部材50の回転軸線RAとの間に位置してもよい。軸方向D1からの観察において、第1環状部75の中心75cは、第2環状部85の中心85cと軸部材50の回転軸線RAとの中心に位置してもよい。これらの例によれば、外縁62が外周面55sから径方向D2に大きく延び出すことをより効果的に抑制しながら、規制部材60を用いて軸受15の軸方向D1への移動を安定して規制できる。
【0109】
以上に説明してきた第3の具体例において、外側部80は、内側環状部70と別個に設けられ、軸部材50上に位置する内周縁61を有する環状部85を有する。外側部80の内周縁85aと内側環状部70の外周縁75bとによって囲まれた環状領域69において、外側部80及び内側環状部70は軸方向D1に対面する。このような構成によれば、軸部材50上における偏心体55の偏心量が大きくても、第2環状部85の中心85cを第1環状部75の中心75cから径方向D2にずらすことにより、外縁62が外周面55sから径方向D2に大きく延び出すことを抑制できる。したがって、第1環状部75及び第2環状部85が軸部材50上で回転したとしても、規制部材60の外縁62が、偏心体55及び軸受15の周辺に位置する部材、例えば外歯歯車40に接触することを効果的に防止することができる。そして、軸受15の軸方向D1への移動を安定して規制することができる。
【0110】
以上に説明してきたように、一実施の形態による減速機10は、外歯歯車40と、外歯歯車40を偏心揺動させる偏心体55を有する軸部材50と、外歯歯車40と軸部材50との間に配置される軸受15と、規制部材60と、を含む。規制部材60は、軸部材50上に位置する内周縁61を有した内側環状部70と、軸受15移動を規制する外側部80と、を有する。内周縁61の中心61cから外縁62の各位置までの距離は一定ではない。本実施の形態によれば、規制部材60が、偏心体55及び軸受15の周辺に位置する外歯歯車40等の周辺部材と接触すること、更には周辺部材を損傷することを効果的に防止することができる。これにともなって、偏心体55と外歯歯車40との間に位置する軸受15の軸方向D1への移動を安定して規制することができる。
【0111】
複数の具体例を参酌して一実施の形態を説明してきたが、具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加を行うことができる。
【0112】
例えば、規制部材60の適用対象が、複数の軸部材50を有する減速機である例を示したが、この例に限られない。規制部材60の適用対象が、主回転軸線MRA上に位置する一つの軸部材50のみを有する減速機としてもよい。
【0113】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0114】
10:減速機
15:軸受
20:ケース
30:キャリア
40:外歯歯車
50:軸部材
55:偏心体
60:規制部材
61:内周縁
61c:中心
62:外縁
L62:距離
65:段差連結部
69:環状領域
70:内側環状部
71:内筒部
75:第1環状部
75a:第1内周縁
75b:第1外周縁
80:外側部
81:外筒部
85:第2環状部
85a:第2内周縁
85b:第2外周縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19