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特開2024-11702プローブホルダおよびプローブユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011702
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】プローブホルダおよびプローブユニット
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/073 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G01R1/073 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113933
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 修
(72)【発明者】
【氏名】相馬 一也
(72)【発明者】
【氏名】荒井 肇
【テーマコード(参考)】
2G011
【Fターム(参考)】
2G011AA04
2G011AA09
2G011AA16
2G011AB01
2G011AB07
2G011AC31
2G011AC32
2G011AE22
(57)【要約】
【課題】高周波における損失の増大を抑制することができるプローブホルダおよびプローブユニットを提供すること。
【解決手段】本発明にかかるプローブホルダは、長手方向の両端部で接触対象の電極とそれぞれ接触するコンタクトプローブを保持するプローブホルダであって、複数の部材が積層されてなる第1積層部材と、第1積層部材に接合され、複数の部材が積層されてなる第2積層部材と、を備え、第1および第2積層部材は、低誘電率材料からなる第1部材と、第1部材の一方の表面に設けられ、該第1部材よりも硬質性を有する第2部材と、第1部材の他方の表面に設けられ、該第1部材よりも硬質性を有する第3部材と、をそれぞれ有し、第1および第2積層部材の第3部材同士を接合してなり、第1および第2積層部材の積層方向に貫通し、第2部材側が縮径した段付きの孔形状をなすホルダ孔が形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の両端部で接触対象の電極とそれぞれ接触するコンタクトプローブを保持するプローブホルダであって、
複数の部材が積層されてなる第1積層部材と、
前記第1積層部材に接合され、複数の部材が積層されてなる第2積層部材と、
を備え、
前記第1および第2積層部材は、
低誘電率材料からなる第1部材と、
前記第1部材の一方の表面に設けられ、該第1部材よりも硬質性を有する第2部材と、
前記第1部材の他方の表面に設けられ、該第1部材よりも硬質性を有する第3部材と、
をそれぞれ有し、
前記第1および第2積層部材の前記第3部材同士を接合してなり、
前記第1および第2積層部材の積層方向に貫通し、前記第2部材側が縮径した段付きの孔形状をなすホルダ孔が形成される、
ことを特徴とするプローブホルダ。
【請求項2】
前記第2および/または第3部材において、前記ホルダ孔の周囲に形成される貫通孔によって中空空間を形成する座ぐり部、
を有することを特徴とする請求項1に記載のプローブホルダ。
【請求項3】
前記座ぐり部は、
前記第1積層部材の前記第2部材に形成される貫通孔によって中空空間を形成する第1座ぐり部と、
前記第2積層部材の前記第2部材に形成される貫通孔によって中空空間を形成する第2座ぐり部と、
前記第1および第2積層部材の前記第3部材にそれぞれ形成される貫通孔によって中空空間を形成する第3座ぐり部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載のプローブホルダ。
【請求項4】
前記座ぐり部は、前記第1部材の表面を底面とする、
ことを特徴とする請求項3に記載のプローブホルダ。
【請求項5】
長手方向の両端部で接触対象の電極とそれぞれ接触するコンタクトプローブと、
前記コンタクトプローブを保持する絶縁性の本体部を備えるプローブホルダと、
を備え、
前記プローブホルダは、
複数の部材が積層されてなる第1積層部材と、
前記第1積層部材に接合され、複数の部材が積層されてなる第2積層部材と、
を備え、
前記第1および第2積層部材は、
低誘電率材料からなる第1部材と、
前記第1部材の一方の表面に設けられ、該第1部材よりも硬質性を有する第2部材と、
前記第1部材の他方の表面に設けられ、該第1部材よりも硬質性を有する第3部材と、
をそれぞれ有し、
前記第1および第2積層部材の前記第3部材同士を接合してなり、
前記第1および第2積層部材の積層方向に貫通し、前記第2部材側が縮径した段付きの孔形状をなすホルダ孔が形成される、
ことを特徴とするプローブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブホルダおよびプローブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路や液晶パネルなどの検査対象の導通状態検査や動作特性検査を行う際には、検査対象と検査用信号を出力する信号処理装置との間の電気的な接続を図るために、複数のコンタクトプローブと、コンタクトプローブを複数収容するプローブホルダとを備えたプローブユニットが用いられる(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に示すような従来のプローブホルダは、三枚のプレートを積層してなる。各プレートには、それぞれコンタクトプローブの一部を収容可能な孔が形成されており、各プレートの孔を連通させることによって、各コンタクトプローブを収容するためのホルダ孔が形成される。このホルダ孔は、両端の径が縮径した段付き形状をなす。プローブユニットでは、コンタクトプローブをホルダ孔の段部に係止させることによって、コンタクトプローブがプローブホルダから抜け落ちることを防止している。
【0003】
一般に、高周波数の電気信号を入出力する場合には、挿入損失(インサーションロス)と呼ばれる信号の損失が生じる。プローブユニットにおいて、高精度に高速動作させるには、使用する周波数領域において、このインサーションロスを低減することが重要である。インサーションロス低減のため、誘電率が低い材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いてプローブホルダを形成することによって、特性インピーダンスが調整される。
【0004】
ところで、PTFEを用いてプローブホルダを作製する場合、PTFEが比較的柔らかい材料であるため、該PTFEからなる第1プレートを、比較的硬い材料、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる二つの第2プレートによって挟み込むことによって、プローブホルダの強度を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-36129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、PTFEは、比較的柔らかい材料であるため、ホルダ孔の加工時に、当該ホルダ孔の形成位置にずれが生じる場合があった。このため、第1プレートと第2プレートとを合わせてプローブホルダとした際に、プレート間で孔の位置ずれが生じ、周波数特性が悪化する、特に高周波における損失が増大するおそれがあった。また、一方の第2プレートを第1プレートと合わせた後にホルダ孔を形成し、他方の第2プレートを合わせてプローブホルダを作製する場合、第1プレートのみの場合と比して孔形成の位置精度は向上するものの、プレートの材質の違いによって反りが発生する場合があった。この反りによって孔の位置ずれが生じる。プレート間で孔の位置ずれが生じると、損失が増大する。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高周波における損失の増大を抑制することができるプローブホルダおよびプローブユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るプローブホルダは、長手方向の両端部で接触対象の電極とそれぞれ接触するコンタクトプローブを保持するプローブホルダであって、複数の部材が積層されてなる第1積層部材と、前記第1積層部材に接合され、複数の部材が積層されてなる第2積層部材と、を備え、前記第1および第2積層部材は、低誘電率材料からなる第1部材と、前記第1部材の一方の表面に設けられ、該第1部材よりも硬質性を有する第2部材と、前記第1部材の他方の表面に設けられ、該第1部材よりも硬質性を有する第3部材と、をそれぞれ有し、前記第1および第2積層部材の前記第3部材同士を接合してなり、前記第1および第2積層部材の積層方向に貫通し、前記第2部材側が縮径した段付きの孔形状をなすホルダ孔が形成される、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るプローブホルダは、上記の発明において、前記第2および/または第3部材において、前記ホルダ孔の周囲に形成される貫通孔によって中空空間を形成する座ぐり部、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るプローブホルダは、上記の発明において、前記座ぐり部は、前記第1積層部材の前記第2部材に形成される貫通孔によって中空空間を形成する第1座ぐり部と、前記第2積層部材の前記第2部材に形成される貫通孔によって中空空間を形成する第2座ぐり部と、前記第1および第2積層部材の前記第3部材にそれぞれ形成される貫通孔によって中空空間を形成する第3座ぐり部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るプローブホルダは、上記の発明において、前記座ぐり部は、前記第1部材の表面を底面とする、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るプローブユニットは、長手方向の両端部で接触対象の電極とそれぞれ接触するコンタクトプローブと、前記コンタクトプローブを保持する絶縁性の本体部を備えるプローブホルダと、を備え、前記プローブホルダは、複数の部材が積層されてなる第1積層部材と、前記第1積層部材に接合され、複数の部材が積層されてなる第2積層部材と、を備え、前記第1および第2積層部材は、低誘電率材料からなる第1部材と、前記第1部材の一方の表面に設けられ、該第1部材よりも硬質性を有する第2部材と、前記第1部材の他方の表面に設けられ、該第1部材よりも硬質性を有する第3部材と、をそれぞれ有し、前記第1および第2積層部材の前記第3部材同士を接合してなり、前記第1および第2積層部材の積層方向に貫通し、前記第2部材側が縮径した段付きの孔形状をなすホルダ孔が形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高周波における損失の増大を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態1にかかるプローブユニットの構成を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1にかかるプローブユニットの要部の構成を示す断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1にかかるプローブプローブホルダの製造方法を説明するための断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態1にかかるプローブユニットの要部の構成を示す平面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態2にかかるプローブユニットの要部の構成を示す断面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態2にかかるプローブユニットが備えるプローブホルダの構成を示す平面図である。
図7図7は、本発明の実施の形態2にかかるプローブユニットの要部の構成を示す平面図である。
図8図8は、本発明の実施の形態2の変形例にかかるプローブユニットの要部の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎず、従って、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかるプローブユニットの構成を示す斜視図である。図1に示すプローブユニット1は、検査対象物である半導体集積回路100の電気特性検査を行う際に使用する装置であって、半導体集積回路100と半導体集積回路100へ検査用信号を出力する回路基板200との間を電気的に接続する装置である。
【0017】
プローブユニット1は、長手方向の両端で互いに異なる二つの被接触体である半導体集積回路100および回路基板200の電極に接触する導電性のコンタクトプローブ2(以下、単に「プローブ2」という)と、複数のプローブ2を所定のパターンにしたがって収容して保持するプローブホルダ3と、プローブホルダ3の周囲に設けられ、検査の際に複数のプローブ2と接触する半導体集積回路100の位置ずれが生じるのを抑制するホルダ部材4と、を有する。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態1にかかるプローブユニットの要部の構成を示す断面図である。図2に示すプローブ2は、導電性材料を用いて形成され、半導体集積回路100の検査を行なうときにその半導体集積回路100の電極に接触する第1プランジャ21と、検査回路を備えた回路基板200の電極に接触する第2プランジャ22と、第1プランジャ21と第2プランジャ22との間に設けられて第1プランジャ21および第2プランジャ22を伸縮自在に連結するコイルばね23とを備える。プローブ2を構成する第1プランジャ21、第2プランジャ22およびコイルばね23は同一の軸線を有している。プローブ2は、半導体集積回路100をコンタクトさせた際に、コイルばね23が軸線方向に伸縮することによって半導体集積回路100の電極への衝撃を和らげるとともに、半導体集積回路100および回路基板200に荷重を加える。
【0019】
第1プランジャ21は、当該第1プランジャ21の最大径を有するフランジ部21aを有する。
【0020】
第2プランジャ22は、回路基板200上に形成された電極に当接する。第2プランジャ22は、当該第2プランジャ22の最大径を有するフランジ部22aを有する。なお、本実施の形態1では、フランジ部21aの径と、フランジ部22aの径とは同じである。ここで、フランジ部の径は、プローブの軸線方向と直交する方向の長さに相当する。
【0021】
コイルばね23は、第1プランジャ21側が密着巻き部23aである一方、第2プランジャ22側が粗巻き部23bである。密着巻き部23aの端部は、第1プランジャ21に圧入されて、フランジ部21aに当接している。一方、粗巻き部23bの端部は、第2プランジャ22に圧入され、フランジ部22aに当接している。また、第1プランジャ21および第2プランジャ22とコイルばね23とは、ばねの巻き付き力および/または半田付けによって接合されている。
【0022】
プローブホルダ3には、第1積層部材32および第2積層部材33の積層方向に貫通する貫通孔であり、プローブ2を収容するための複数のホルダ孔31が形成される。ホルダ孔31の形成位置は、プローブ2の配置パターンに応じて定められる。図2では、ホルダ孔31の中心軸と、プローブ2の長手軸とが一致した例について図示している。
【0023】
ホルダ孔31は、貫通方向に沿って径が異なる段付き孔形状をなしている。すなわち、ホルダ孔31は、プローブホルダ3の上端面に開口を有する第1小径部31aと、この第1小径部31aよりも径が大きい大径部31bと、プローブホルダ3の下端面に開口を有する第2小径部31cとからなる、両端が縮径した孔形状をなす。ホルダ孔31の形状(口径)は、収容するプローブ2の構成に応じて定められる。第1プランジャ21のフランジ部21aは、第1小径部31aと大径部31bとの境界壁面に当接することにより、プローブ2のプローブホルダ3からの抜止機能を有する。また、第2プランジャ22のフランジ部22aは、大径部31bと第2小径部31cとの境界壁面に当接することにより、プローブ2のプローブホルダ3からの抜止機能を有する。
【0024】
プローブホルダ3は、図2の上面側に位置する第1積層部材32と、下面側に位置する第2積層部材33とが積層されてなる。
第1積層部材32は、第1部材321と、第1部材321の図6の上面側に位置する第2部材322と、第1部材321の下面側に位置する第3部材323とが積層されてなる。
第2積層部材33は、第1部材331と、第1部材331の図6の下面側に位置する第2部材332と、第1部材331の上面側に位置する第3部材333とが積層されてなる。
【0025】
ここで、第1部材321、331は、低誘電率の材料を用いて形成される。低誘電率の材料としては、比誘電率が低い材料、例えば、1.5~2.5の比誘電率を有する材料が挙げられる。この材料としては、例えば、PTFE等が挙げられる。本実施の形態1では、第1部材321、331がPTFEを用いて形成される例について説明する。
一方、第2部材322、332および第3部材223、333は、第1部材を形成する材料よりも硬質な材料を用いて形成される。この材料としては、例えば、PEEK等の高性能エンジニアリングプラスチックや、ポリイミド、ポリアミド、PPS等が挙げられる。本実施の形態1では、第2部材322、332および第3部材223、333がPEEKを用いて形成される例について説明する。
すなわち、各積層部材は、低誘電率であるPTFEを硬質性のPEEKによって挟み込んだ構成をなす。
そして、第1積層部材32の第3部材323と、第2積層部材33の第3部材333とが接合されて、プローブホルダ3が形成される。
【0026】
ここで、プローブホルダ3の製造方法について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施の形態1にかかるプローブプローブホルダの製造方法を説明するための断面図である。
【0027】
まず、第1積層母材400と、第2積層母材410とを用意する(図3の(a)参照)。
第1積層母材400は、低誘電率であるPTFEからなる板状の第1母材401を、硬質性のPEEKからなる第2母材402および第3母材403によって挟み込んで接合してなる。
第2積層母材410は、低誘電率であるPTFEからなる板状の第1母材411を、硬質性のPEEKからなる第2母材412および第3母材413によって挟み込んで接合してなる。
この際、母材同士の接合は、接着剤や圧着シート等の公知の接合方法を用いることができる。
【0028】
その後、各積層母材に貫通孔を形成する(図3の(b)参照)。具体的には、第1積層母材400に対して貫通孔420を形成する。この貫通孔420は、第2母材402側が縮径した段付きの孔形状をなす。また、第2積層母材410に対して貫通孔421を形成する。この貫通孔421は、第2母材412側が縮径した段付きの孔形状をなす。貫通孔の形成によって、貫通孔420が形成された第1積層部材32、および、貫通孔421が形成された第2積層部材33が作製される。
【0029】
貫通孔形成後、第1積層部材32と第2積層部材33とを接合する(図3の(c)参照)。第1積層部材32の第3部材323と、第2積層部材33の第3部材333とを、貫通孔の位置を合わせて接合することによって、プローブホルダ3が作製される。
なお、プローブユニットを作製する際には、第1積層部材32と第2積層部材33とを接合する前に、プローブ2が貫通孔内に適宜配設される。
【0030】
図4は、プローブホルダ3を用いた半導体集積回路100の検査時の状態を示す図である。半導体集積回路100の検査時には、半導体集積回路100からの接触荷重により、コイルばね23は長手方向に沿って圧縮された状態となる。コイルばね23が圧縮されると、図4に示すように、密着巻き部23aが第2プランジャ22の基端側と接触する。これにより確実な電気導通が得られる。この際には、第2プランジャ22の基端側が密着巻き部23aの下方まで進入しているため、第2プランジャ22の軸線が大きくぶれることはない。
【0031】
検査時に回路基板200から半導体集積回路100に供給される検査用信号は、回路基板200の電極201からプローブ2の第2プランジャ22、密着巻き部23a、第1プランジャ21を経由して半導体集積回路100の接続用電極101へ到達する。このように、プローブ2では、第1プランジャ21と第2プランジャ22が密着巻き部23aを介して導通するため、電気信号の導通経路を最小にすることができる。したがって、検査時に粗巻き部23bに信号が流れるのを防止し、インダクタンスの安定化を図ることができる。
【0032】
上述した実施の形態1では、ホルダ孔31が形成されるプローブホルダ3において、PEEKからなる第2部材322および第3部材323によって、PTFEからなる第1部材321を挟みこんでなる第1積層部材32と、PEEKからなる第2部材332および第3部材333によって、PTFEからなる第1部材331を挟みこんでなる第2積層部材33とを接合した積層部材の二枚構造とした。この際、各積層部材において孔を形成する場合に、PEEKによってPTFEが挟まれているため、孔形成時の反りの発生を抑制しつつ、孔形成の位置精度の低下が抑制される。反りの発生、および、各部材における孔が適切な位置に形成されることによって、周波数特性の低下を抑制、特に、高周波における損失の増大が抑制される。
【0033】
また、本実施の形態1によれば、プローブホルダ3を構成する部材が、PTFEによって形成されることによって、特性インピーダンスの調整が可能であるとともに、PEEKを含むことによって、プローブホルダ3の強度を確保することができる。この際、高周波特性を向上させるためには、PEEKが占める割合を低くすればよく、強度を向上させるためには、PEEKが占める割合を大きくすればよい。
【0034】
また、本実施の形態1によれば、プローブホルダ3における部材の積層方向の中央部にPEEKが存在するため、積層方向の強度のバランスが向上する。
【0035】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図5は、本発明の実施の形態2にかかるプローブユニットの要部の構成を示す断面図である。実施の形態2にかかるプローブユニットは、上述したプローブユニット1のプローブホルダ3に代えてプローブホルダ3Aを備える。プローブホルダ3A以外の構成は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0036】
プローブホルダ3Aは、上述した第1積層部材32および第2積層部材33を備える。プローブホルダ3Aには、上述したホルダ孔31と、ホルダ孔31の周囲に設けられる溝形状をなす第1座ぐり部34~第3座ぐり部36とが形成される。
【0037】
第1座ぐり部34は、第2部材322側に形成される。第1座ぐり部34は、第2部材322を貫通する孔と、第1部材321の外表面とによって形成され、第1部材321の表面を底面とする有底の孔形状をなす。
【0038】
第2座ぐり部35は、第2部材332側に形成される。第2座ぐり部35は、第2部材332を貫通する孔と、第1部材331の外表面とによって形成される有底の孔形状をなす。
【0039】
第3座ぐり部36は、プローブホルダ3Aを構成する部材の積層方向の中央部に形成される。第3座ぐり部36は、第3部材323、333をそれぞれ貫通する孔が、第1部材321、331の外表面によって密閉された空間を形成する。
【0040】
図6は、本発明の実施の形態1にかかるプローブユニットが備えるプローブホルダの構成を示す平面図である。図7は、本発明の実施の形態1にかかるプローブユニットの要部の構成を示す平面図である。図6および図7は、図5に示すプローブホルダの上面側からみた図に対応している。ここで、隣り合って配設される三つのプローブ2に対し、中央部のプローブ2を信号伝送用の電極に接触させ、その他のプローブ2をグランド用の電極に接続した例について考える。この際、信号用の電極に接続するプローブ2をプローブ2Sとし、グランド用の電極に接続するプローブ2をプローブ2Gとする。これらプローブ2S、2Gの周囲には、座ぐり部(図では第1座ぐり部34のみ図示)が形成される。
【0041】
上述した実施の形態2では、実施の形態1の効果を得ることができるとともに、プローブホルダ3Aにおいて、プローブ2の周囲に座ぐり部を設けることによって、高周波側の挿入損失をさらに低減することができる。本実施の形態2によれば、座ぐり部の形成によって、高周波信号の減衰をさらに抑制することができる。
【0042】
(実施の形態2の変形例)
次に、実施の形態2の変形例について、図8を参照して説明する。図8は、本発明の実施の形態2の変形例にかかるプローブユニットの要部の構成を示す平面図である。図8は、図5に示すプローブホルダの上面側からみた図に対応している。ここで、変形例では、隣り合って配設される四つのプローブ2に対し、中央部の二つのプローブ2を信号伝送用のプローブ2Sとし、両側の二つのプローブ2をグランド用のプローブ2Gとする。これらプローブ2S、2Gの周囲には、座ぐり部(図8では第1座ぐり部34のみ図示)が形成される。このGSSG構造とした場合においても、プローブ2の周囲に座ぐり部を設けることによって、高周波側の挿入損失を低減することができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態2および変形例では、PEEKからなる部材(第2および第3部材)に座ぐり部が形成される例について説明したが、第2および第3部材の一部に座ぐり部を形成してもよいし、PTFEからなる第1部材にも座ぐり部を形成してもよい。この際、第1部材に形成される座ぐり部は、貫通孔をなすものであってもよいし、一端または両端が閉じた空間を形成する孔形状をなすものであってもよい。
【0044】
また、上述した実施の形態2および変形例では、座ぐり部として、開口の形状が長円をなす例について説明したが、真円や、文字をかたどった形状、多角形、星形等の他の形状であってもよい。開口を特異的な形状とすることによって、座ぐり部の視認性を向上し、プローブ2の配置を容易に確認することが可能となる。
【0045】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【0046】
また、ここで説明したコンタクトプローブの構成はあくまでも一例に過ぎず、従来知られているさまざまな種類のプローブを適用することが可能である。例えば、上述したようなプランジャとコイルばねとで構成されるものに限らず、パイプ部材を備えるプローブ、ポゴピン、中実の導電性部材、導電性のパイプ、ワイヤーや、電気接点同士を接続する接続端子(コネクタ)でもよいし、これらのプローブを適宜組み合わせてもよい。
【0047】
以上のように、本発明に係るコンタクトプローブおよび信号伝送方法は、耐久性を有し、かつ熱による変形によらず安定した接触抵抗を維持するのに好適である。
【符号の説明】
【0048】
1 プローブユニット
2 コンタクトプローブ(プローブ)
3 プローブホルダ
21 第1プランジャ
22 第2プランジャ
23 コイルばね
34 第1座ぐり部
35 第2座ぐり部
36 第3座ぐり部
100 半導体集積回路
200 回路基板
31 ホルダ孔
32 第1積層部材
33 第2積層部材
321、331 第1部材
322、332 第2部材
323、333 第3部材
400 第1積層母材
410 第2積層母材
401、411 第1母材
402、412 第2母材
403、413 第3母材
420、421 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8