(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117029
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】研磨終点検出装置及び方法並びにCMP装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/013 20120101AFI20240821BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240821BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20240821BHJP
B24B 37/20 20120101ALI20240821BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B24B37/013
H01L21/304 622S
B24B37/10
B24B37/20
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022960
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】中原 翔太
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA07
3C034BB93
3C034CA02
3C034CA22
3C034CB03
3C034CB14
3C034DD10
3C158AA07
3C158AC02
3C158BA07
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3C158CB01
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3C158EA14
3C158EA23
3C158EB01
3C158EB14
5F057AA02
5F057BA15
5F057BB03
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5F057BB12
5F057BB15
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5F057FA14
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5F057GA02
5F057GA12
5F057GA16
5F057GA17
5F057GA27
5F057GB02
5F057GB13
5F057GB20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薄い膜厚のワークを研磨する際に、研磨終点を精度良く検出する研磨終点装置及び方法並びにCMP装置を提供する。
【解決手段】研磨終点検出装置70は、ワークWの研磨中にワークに向けて測定光を照射し、ワークからの反射光を分光して、反射光の波長と反射光の強度及び予め取得された波長成分毎の基準強度の比である反射率との関係を示す分光波形を取得する測定部71と、分光波形にフーリエ解析を適用して熱酸化膜の膜厚を算出する検出部72と、を備えている。基準強度は、回転する研磨パッド5との間にCMPスラリーを介在させた状態でワークの基板と略同じ反射率特性を示すサンプルワークを研磨パッドに接触させ、測定部が、研磨パッドの観察窓80を介してサンプルワークに向けて測定光を照射し、サンプルワークからの反射光を分光して算出される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを研磨パッドに接触させて前記ワークの被研磨層をCMP研磨する際に研磨終点を検出する研磨終点検出装置であって、
前記ワークの研磨中に前記ワークに向けて測定光を照射し、前記ワークからの反射光を分光して、前記反射光の波長と前記反射光の強度及び予め取得された波長成分毎の基準強度の比である反射率との関係を示す分光波形を取得する測定部と、
前記分光波形に基づいて前記被研磨層の膜厚を算出する検出部と、
を備え、
前記基準強度は、回転する前記研磨パッドとの間にスラリーを介在させた状態で前記ワークと略同じ反射率特性を示すサンプルワークを前記研磨パッドに接触させ、前記測定部が、前記研磨パッドの観察窓を介して前記サンプルワークに向けて測定光を照射し、前記サンプルワークからの反射光を分光して算出されることを特徴とする研磨終点検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記分光波形にフーリエ解析を適用して前記被研磨層の膜厚を算出することを特徴とする請求項1に記載の研磨終点検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記分光波形に前記分光波形の理論波形とのカーブフィッティングを適用して前記被研磨層の膜厚を算出することを特徴とする請求項1に記載の研磨終点検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の研磨終点検出装置を備えていることを特徴とするCMP装置。
【請求項5】
ワークを研磨パッドに接触させて前記ワークの被研磨層をCMP研磨する際に研磨終点を検出する研磨終点検出方法であって、
前記ワークの研磨中に前記ワークに向けて測定光を照射し、前記ワークからの反射光を分光して、前記反射光の波長と前記反射光の強度及び予め取得された波長成分毎の基準強度の比である反射率との関係を示す分光波形を取得するステップと、
前記分光波形に基づいて前記被研磨層の膜厚を算出するステップと、
を含み、
前記基準強度は、回転する前記研磨パッドとの間にスラリーを介在させた状態で前記ワークと略同じ反射率特性を示すサンプルワークを前記研磨パッドに接触させ、前記研磨パッドの観察窓を介して前記サンプルワークに向けて測定光を照射し、前記サンプルワークからの反射光を分光して算出されることを特徴とする研磨終点検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨終点検出装置及び方法並びにCMP装置に関し、特に、化学的機械的研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)を用いてワークを研磨する際に、研磨終点を検出する研磨終点検出装置及びCMP装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク研磨装置としては、ワークの基板表面に形成された二酸化ケイ素膜等を研磨するCMP研磨装置が知られている。CMPによる研磨は、プラテンに貼付された研磨パッドとワークとを回転させながら、ワークを研磨パッドに所定の圧力で押し付け、研磨パッドとワークとの間に研磨材(スラリー)を供給することによって行われる。
【0003】
このようなCMP装置において、ウェハからの反射光に基づいて生成された反射率スペクトルに対し、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を用いて、周波数成分とその強度を抽出し、得られた周波数成分からウェハの膜厚を推定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のCMP装置では、基準となるリファレンススペクトルを水の存在下で鏡を用いて予め取得し、ウェハの研磨中に、ウェハからの反射光の波長と反射光の強度及び基準強度の比(相対反射率)との関係を示す反射率スペクトルを生成するところ、例えば500nm以下の薄いワークでは、反射率スペクトルに含まれるピークの数が1又は2個と少ないため、ウェハの膜厚を算出できないという問題があった。
【0006】
また、基板の屈折率と被研磨層の屈折率との差が小さい場合、反射率スペクトルの振幅が小さいことが一般的に知られており、CMP研磨時のスラリーの厚みや回転時の影響を特に受けやすいという問題があった。
【0007】
そこで、薄いワークを研磨する際に、研磨終点を精度良く検出するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は、この課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る研磨終点検出装置は、ワークを研磨パッドに接触させて前記ワークの被研磨層をCMP研磨する際に研磨終点を検出する研磨終点検出装置であって、前記ワークの研磨中に前記ワークに向けて測定光を照射し、前記ワークからの反射光を分光して、前記反射光の波長と前記反射光の強度及び予め取得された波長成分毎の基準強度の比である反射率との関係を示す分光波形を取得する測定部と、前記分光波形に基づいて前記被研磨層の膜厚を算出する検出部と、を備え、前記基準強度は、回転する前記研磨パッドとの間にスラリーを介在させた状態で前記ワークと略同じ反射率特性を示すサンプルワークを前記研磨パッドに接触させ、前記測定部が、前記研磨パッドの観察窓を介して前記サンプルワークに向けて測定光を照射し、前記サンプルワークからの反射光を分光して算出される。
【0009】
また、本発明に係るCMP装置は、上述した研磨終点検出装置を備えている。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る研磨終点検出方法は、ワークを研磨パッドに接触させて前記ワークの被研磨層をCMP研磨する際に研磨終点を検出する研磨終点検出方法であって、前記ワークの研磨中に前記ワークに向けて測定光を照射し、前記ワークからの反射光を分光して、前記反射光の波長と前記反射光の強度及び予め取得された波長成分毎の基準強度の比である反射率との関係を示す分光波形を取得するステップと、前記分光波形に基づいて前記被研磨層の膜厚を算出するステップと、を含み、前記基準強度は、回転する前記研磨パッドとの間にスラリーを介在させた状態で前記ワークと略同じ反射率特性を示すサンプルワークを前記研磨パッドに接触させ、前記研磨パッドの観察窓を介して前記サンプルワークに向けて測定光を照射し、前記サンプルワークからの反射光を分光して算出される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ワークと略同じ反射率特性を示すサンプルワークを使用し、スラリーに含まれる研磨剤の有無やプラテンの回転又は静止等のリファレンス測定条件をCMP研磨の研磨条件と統一してサンプルワークの基準強度を算出することにより、薄いワークの研磨終点を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るCMP装置を模式的に示す斜視図。
【
図3】加工中にワークの状態を観察している様子を示す模式図。
【
図4】ワークの研磨終点を検出する手順を示すフローチャート。
【
図5】研磨の進行に伴って変化する、反射光の波長と反射率との関係を示す分光波形。
【
図6】
図5の分光波形にフーリエ解析を適用して得られる、熱酸化膜の膜厚と周波数成分の強度との関係を示す周波数スペクトル。
【
図7】被研磨層の膜厚の変化のトレンドを示すグラフ。
【
図9】本発明の一実施形態及びその変形例で得られた分光波形。
【
図10】
図9の分光波形から得られた周波数スペクトル。
【
図11】変形例で得られた、被研磨層の膜厚の変化のトレンドを示すグラフ
【
図12】研磨の進行に伴って変化する、比較例1で得られた分光波形。
【
図14】比較例1において、被研磨層の膜厚の変化のトレンドを示すグラフ。
【
図16】本発明の一実施形態及び比較例2で得られた分光波形。
【
図18】本発明の一実施形態及び比較例3で得られた分光波形。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0014】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0015】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0016】
<CMP装置>
図1は、本発明の一実施形態に係るCMP装置1を模式的に示す斜視図である。CMP装置1は、プラテン2と、研磨ヘッド10と、を備えている。
【0017】
プラテン2は、円盤状に形成されており、プラテン2の下方に配置された回転軸3に連結されている。回転軸3がモータ4の駆動によって回転することにより、プラテン2は
図1中の矢印D1の方向に回転する。プラテン2の上面には、研磨パッド5が貼付されており、研磨パッド5上には、ノズル6から研磨剤及び化学薬品を含むCMPスラリーが供給される。
【0018】
研磨ヘッド10は、プラテン2より小径の円盤状に形成されており、研磨ヘッド10の上方に配置された回転軸10aに連結されている。回転軸10aが図示しないモータの駆動によって回転することにより、研磨ヘッド10は、
図1中の矢印D2の方向に回転する。研磨ヘッド10は、図示しない昇降装置によって垂直方向Vに昇降自在である。
【0019】
CMP装置1の動作は、コントローラ7によって制御される。コントローラ7は、CMP装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。コントローラ7は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ等により構成される。なお、コントローラ7の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作するものにより実現されても良い。
【0020】
次に、研磨ヘッド10の構成について
図2、
図3及び
図4に基づいて説明する。
図2に示すように、研磨ヘッド10は、ヘッド本体20と、キャリア30と、リテーナリング40と、メンブレンフィルム50と、バッキングフィルム60と、を備えている。
【0021】
ヘッド本体20は、回転軸10aに接続されており、回転軸10aとともに回転する。ヘッド本体20は、回転部21を介してヘッド本体20の下方に配置されたキャリア30に連結されており、ヘッド本体20及びキャリア30は連動して回転する。
【0022】
ヘッド本体20とキャリア30との間には、キャリア押圧手段31が設けられている。キャリア押圧手段31は、図示しないエア供給源から供給されるエアによって膨張するエアバッグ等である。エア供給源から供給されるエアの圧力は、図示しないレギュレータによって調整される。キャリア押圧手段31は、供給されるエアの圧力に応じて、キャリア30を介してワークWを研磨パッド5に押圧する。
【0023】
キャリア30には、キャリア30の周縁に等間隔に離間して配置されたエアライン32が設けられている。エアライン32の下端は、キャリア30の下面30aとメンブレンフィルム50との間に形成されたエア室Aに開口している。エアライン32は、図示しないエア供給手段としてのエア供給源に接続されており、エア室Aには、エアライン32を介してエアが導入される。エアライン32に供給されるエアの圧力は、図示しないレギュレータによって調整される。エアライン32からエア室Aに供給されるエアが、キャリア押圧手段31によってキャリア30に伝えられた圧力を押し返す空気圧層をエア室Aに形成するとともに余剰圧力を大気に逃がすことにより、ワークWを均一な圧力分布で押圧することができる。
【0024】
キャリア30の下面30aには、同軸上に配置された図示しない複数の弾性押圧部材が設けられている。また、複数の押圧部材は、それぞれ径の異なる円環状に形成されている。弾性押圧部材は、キャリア30の下面30aに図示しないブラケットを介してボルト固定されている。弾性押圧部材は、研磨ヘッド10の回転軸10aと同軸上に配置されており、エア室Aを区画する。
【0025】
リテーナリング40は、キャリア30の周囲を囲むように配置されている。リテーナリング40は、上面にメンブレンフィルム50及びバッキングフィルム60が設けられた枠体41を備えている。
【0026】
枠体41は、円環状に形成されており、中央にワークWを収容する収容ポケット41aを備えている。枠体41は、スナップリング42を介してリテーナ押圧部材43に取り付けられている。ヘッド本体20とリテーナ押圧部材43との間には、リテーナ押圧手段44が設けられている。なお、符号45は、スナップリング42の上方を覆うカバーである。
【0027】
リテーナ押圧手段44は、図示しないエア供給源から供給されるエアによって膨張するエアバッグ等である。エア供給源から供給されるエアの圧力は、図示しないレギュレータによって調整される。リテーナ押圧手段44は、供給されるエアの圧力に応じて、リテーナ押圧手段44を介してリテーナリング40を研磨パッド5に押圧する。
【0028】
メンブレンフィルム50は、例えば、四フッ化エチレンペルフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂から成る。メンブレンフィルム50は、バッキングフィルム60の上面に接合されており、エア室Aに圧縮空気が導入されると、空気圧で収容ポケット41a内に向かって弾性変形する。
【0029】
バッキングフィルム60は、例えば、スウェードフィルムである。バッキングフィルム60は、収容ポケット41aを覆うように枠体41に貼着されており、エア室Aに圧縮空気が導入されると、メンブレンフィルム50の弾性変形に伴って弾性変形してワークWを加圧する。
【0030】
<研磨終点検出装置>
図3に示すように、CMP装置1は、研磨中にワークWの研磨終点を検出する研磨終点検出装置70を備えている。研磨終点検出装置70は、測定部71と、検出部72と、を備えている。なお、
図3では、CMP装置1の構成を一部省略して図示している。
【0031】
測定部71は、例えば、レンズ73に複数の光ファイバー74、75を結束して接続して構成されている。光ファイバー74は、光源ユニット76に接続されている。光源ユニット76は、例えば、波長400~800nmの白色光を出射するハロゲン光源であるが、これに限定されるものではない。光ファイバー75は、分光器77に接続されている。
【0032】
レンズ73は、プラテン2及び研磨パッド5に設けられた透明な観察窓80に対向して配置されている。レンズ73は、観察窓80に対して垂直に光を照射するものに限定されず、光路が反射部材等で屈折されても構わない。なお、観察窓80は、例えばアクリル製である。
【0033】
光源ユニット76から出射された測定光は、光ファイバー74及びレンズ73を介し、観察窓80を透過してワークWの被研磨層に向けて照射される。また、ワークWで反射してレンズ73で受光された反射光は、光ファイバー75を介して分光器77に導かれる。
【0034】
ワークWの被研磨層の表面及び被研磨層の裏面(被研磨層と基板との界面)でそれぞれ反射した反射光は互いに干渉し、被研磨層の膜厚(光路長)に応じて干渉の仕方が変化する。分光器77は、ワークWからの反射光を波長に応じて分解して、波長と反射率との関係を示す分光波形を生成する。なお、反射率とは、反射光の強度を後述する基準強度で除した数値である。
【0035】
検出部72は、分光器77が生成した分光波形に基づいて、研磨中のワークWにおける被研磨層の膜厚を算出する。分光波形に基づいて被研磨層の膜厚を算出する方法としては、例えば、フーリエ解析を用いることができる。
【0036】
具体的には、分光波形から得られるフーリエ級数より周波数成分とその強度を抽出し、得られた周波数成分を被研磨層の屈折率の減衰率を考慮した所定の関係式を用いて被研磨層の膜厚に変換する。
【0037】
<研磨終点検出方法>
次に、研磨終点検出装置70を用いてワークWの研磨終点を検出する手順を説明する。
図4は、ワークWの研磨終点を検出する手順を示すフローチャートである。なお、以下では、ワークWとして、表面に被研磨層としての二酸化ケイ素膜(以下、「熱酸化膜」という)が形成されたシリコン基板を用いる場合を例に説明するが、ワークWの基板及び膜の種類はこれらに限定されるものではない。
【0038】
(リファレンス測定)
まず、屈折率や減衰率等の光学定数が既知のサンプルワークを用いて、基準強度を算出する(ステップS1)。
【0039】
具体的には、ノズル6からCMPスラリーを研磨パッド5上に供給するとともにプラテン2を回転させ、サンプルワークを保持する研磨ヘッド10を回転する研磨パッド5に向けて降下させて、サンプルワークを研磨パッド5に接触させる。なお、サンプルワークを研磨パッド5に接触させる際、研磨ヘッド10は、回転状態又は静止(非回転)状態の何れであっても構わないが、プラテン2の回転数、CMPスラリーの供給量等その他のサンプルワークの基準強度を算出する上で任意に設定可能なリファレンス測定条件は、後述するワークWの研磨条件と統一するのが好ましい。
【0040】
その後、サンプルワークに向けてレンズ73から観察窓80を介して測定光を照射し、サンプルワークからの反射光が観察窓80を介してレンズ73に入射し、分光器77がサンプルワークからの反射光及びサンプルワークの光学定数に基づいて、波長成分毎の基準強度を算出する。
【0041】
サンプルワークには、ワークWと略等しい反射率特性を示すものが用いられる。なお、「反射率特性」とは、ワークWの被研磨層及び基板の各反射率やワークWの構造に起因する反射光の態様等を考慮して、ワークWとの比較として好適なサンプルワークが具備する反射光に関する特性である。したがって、サンプルワークは、本実施形態のように、ワークWの基板と同じ材質から成り、膜が形成されていないものに限らない。
【0042】
例えば、ワークWが、シリコン基板と熱酸化膜との間にポリシリコン膜が形成されたものである場合、シリコン及びポリシリコンの各屈折率が十分に近いため、サンプルワークには、シリコン基板を採用してもよいし、ポリシリコン膜が形成されたシリコン基板を採用しても構わない。
【0043】
また、ワークWが、シリコン基板と熱酸化膜との間に100nm程度のチタン層が形成されたものである場合、チタン膜からシリコン基板側には光がほとんど透過しないことから、サンプルワークには、上面にチタン膜が形成されたものであれば、基板の材質はシリコンに限らずガラス等であっても構わない。
【0044】
さらに、サファイア基板上に二酸化ケイ素膜が形成されたワークWのように基板及び基板上に形成された被研磨層の各屈折率が近い場合、サンプルワークには、膜が形成されていない基板、又は被研磨層が形成された基板の何れを採用しても構わない。
【0045】
(CMP研磨)
次に、コントローラ7がCMP装置1を起動させて、ワークWのCMP研磨を開始して、研磨ヘッド10の下面に取り付けられたワークWの一面に形成された熱酸化膜を平坦に研磨する(ステップS2)。ワークWのCMP研磨は、CMPスラリーが研磨パッド5上に供給されながら、プラテン2及び研磨ヘッド10が何れも回転した状態で、ワークWの二酸化ケイ素膜が研磨パッド5上に接触することで行われる。
【0046】
(分光波形生成)
次に、ワークWの研磨中に、光源ユニット76が測定光を照射し、分光器77がワークWからの反射光に基づいて分光波形を生成する(ステップS3)。
【0047】
図5に示す分光波形は、横軸にデータ数(反射光の波長に相当する。以下、単に「波長」という)、縦軸にワークWからの反射光の強度をステップS1で算出されたサンプルワークの基準強度で除して算出される反射率をそれぞれ設定したグラフであって、
図5(a)は、熱酸化膜の膜厚が1.5μmのときの分光波形を示し、
図5(b)は、熱酸化膜の膜厚が1.0μmのときの分光波形を示し、
図5(c)は、熱酸化膜の膜厚が0.6μmのときの分光波形を示し、
図5(d)は、熱酸化膜の膜厚が0.2μmのときの分光波形を示す。
【0048】
(膜厚算出)
次に、検出部72は、所定間隔おきに研磨中のワークWにおける熱酸化膜の膜厚を算出する(ステップS4)。
【0049】
具体的には、検出部72は、分光器77が生成した分光波形にフーリエ解析を用いて、研磨中に熱酸化膜の膜厚を算出する。
図5(a)~(d)に示す分光波形にそれぞれフーリエ解析を適用して得られる、熱酸化膜の膜厚と周波数成分の強度との関係を示す周波数スペクトルを
図6(a)~(d)に示し、研磨が進行するにしたがって減少する熱酸化膜の膜厚の連続的な変化のトレンドを示すグラフを
図7に示す。さらに、
図8は、
図7のグラフに対して膜厚1.0μm以下で最適化法による理論波形とのカーブフィッティングを適用した熱酸化膜の膜厚の変化のトレンドを示すグラフである。
【0050】
次に、検出部72が、ステップS4で算出した研磨中のワークWにおける熱酸化膜の膜厚が、所定閾値に達したか否かを判定する(ステップS5)。
【0051】
具体的には、検出部72は、熱酸化膜の膜厚における周波数スペクトルのシグナルピークが所定の閾値を超えた場合に、そのシグナルピークに対応する熱酸化膜の膜厚を、研磨中のワークWにおける熱酸化膜の膜厚と推定する。なお、検出部72は、膜厚をスムーズに検出するために、熱酸化膜の膜厚の変化のトレンドから研磨中のワークWの膜厚を補助的に推定しても構わない。
【0052】
研磨中のワークWにおける熱酸化膜の膜厚が、所定閾値より小さい場合には(ステップS5でNo)、ステップS4に戻り、検出部72は、研磨中のワークWにおける熱酸化膜の膜厚を再び算出する。
【0053】
(研磨終点検出)
研磨中のワークWにおける熱酸化膜の膜厚が、所定閾値に達した場合には(ステップS5でYes)、検出部72は、熱酸化膜の膜厚が目標厚みに達して研磨終点に至ったと判定し、コントローラ7に対してCMP装置1の停止信号を出力して、ワークWに対するCMP研磨を終了する(ステップS6)。
【0054】
なお、本実施形態では、ワークWの基板(シリコン基板)と被研磨層(熱酸化膜)との屈折率差が相対的に大きい場合を例に説明したが、ワークWの基板及び被研磨層の屈折率差が相対的に小さい場合にも適用可能である。以下、熱酸化膜が形成されたサファイア基板を研磨する場合(変形例)を例に説明する。なお、波長632.8nmにおける熱酸化膜、シリコン基板及びサファイア基板の屈折率は、それぞれ1.457、3.882、1.770である。
【0055】
本変形例では、サンプルワークに熱酸化膜が形成されていないサファイア基板を使用し、ワークWに熱酸化膜が形成されたサファイア基板を使用した。なお、変形例では、上述した点を除き、基準強度を算出するためのリファレンス測定条件及びワークWの研磨条件は上述した実施形態と同一に設定した。
【0056】
図9(a)は、本変形例に係る分光波形を示し、
図9(b)は、上述した実施形態に係る分光波形を示す。
図9(a)、(b)によれば、基板と熱酸化膜との反射率差が相対的に小さいワークWに対応する分光波形は、基板と熱酸化膜との反射率差が相対的に大きいワークWに比べて、反射率の振幅が小さいことが分かる。
【0057】
また、
図10(a)~(b)に示す分光波形にそれぞれフーリエ解析を適用して得られる周波数スペクトルを
図9(a)~(b)に示す。
図9(a)~(b)によれば、基板と熱酸化膜との反射率差が相対的に小さいワークWに対応する周波数スペクトルは、基板と熱酸化膜との反射率差が相対的に大きいワークWに対応する周波数スペクトルよりも多くのノイズが含まれ、またシグナルピークの幅も広くなるため解析が困難になる傾向があることが分かる。このような傾向は、分光波形の反射率の振動中心に傾きが存在する場合、基板と熱酸化膜との屈曲率差が小さいワークWほど大きい。したがって、比較例1のように基板と熱酸化膜との屈折率差が小さく膜厚算出にあたって外乱の影響が大きい場合には、ワークWと同様の屈折率特性を示すサンプルワークを用いて基準強度を算出して、分光波形の反射率の振動中心の傾きを除外することにより、
図11に示すように、研磨が進行するにしたがって減少する熱酸化膜の膜厚の変化のトレンドを示すグラフを精度良く得ることができる。なお、
図11では、膜厚1.5μmまではフーリエ解析のみを適用し、1.5μm以下ではフーリエ解析に加えて最適化法を適用している。
【0058】
次に、上述したリファレンス測定(ステップS1)、分光波形生成(ステップS3)及び膜厚算出(ステップS4)の各工程について、種々の比較例との比較によりその特徴を詳しく説明する。
【0059】
<サンプルワークの反射率特性が膜厚算出に与える影響について>
上述した実施形態のように熱酸化膜が形成されたシリコン基板からの反射光に関する分光波形を取得するにあたり、サンプルワークとしてのシリコン基板を用いて基準強度を算出した場合と、ミラーを用いて基準強度を算出した場合(比較例1)とについて、それらの分光波形、周波数スペクトル及び膜厚解析の結果を比較した。
【0060】
比較例1では、サンプルワークに代えてミラーを使用し、CMP装置1において観察窓80の上方に非回転状態のミラーを配置し、このミラーに向けて非回転状態のプラテン2の下方から観察窓80を通して測定光を照射し、ミラーからの反射光に基づいて、分光器77が、ミラーの基準強度を算出した。また、リファレンス測定において、研磨パッド5上にCMPスラリーは供給しなかった。なお、比較例1では、上述した点を除き、基準強度を算出するためのリファレンス測定条件及びワークW(熱酸化膜が形成されたシリコン基板)の研磨条件は上述した実施形態と同一に設定した。
【0061】
図12は、横軸にワークWからの反射光の波長、縦軸にワークWからの反射光の強度をミラーからの反射光に基づいて算出された基準強度で除し反射率にそれぞれ設定した分光波形であって、
図12(a)は、熱酸化膜の膜厚が1.5μmのときの分光波形を示し、
図12(b)は、熱酸化膜の膜厚が1.0μmのときの分光波形を示し、
図12(c)は、熱酸化膜の膜厚が0.8μmのときの分光波形を示し、
図12(d)は、熱酸化膜の膜厚が0.6μmのときの分光波形を示す。
図12(a)~(d)によれば、波長約100nm付近に特異なピークが含まれており、且つ分光波形の振動中心は波長が長くなるにしたがって反射率が低下するように傾いていることが分かる。これは、ミラーを用いて基準強度を算出したために、ワークWの材質による反射率特性、ワークWのうねり、研磨パッド5の回転に伴う振動、観察窓80の厚みムラ、CMPスラリーの有無等の影響を受けたためと考えられる。
【0062】
また、
図12(a)~(d)に示す分光波形にそれぞれフーリエ解析を適用して得られる、熱酸化膜の膜厚と周波数成分の強度との関係を示す周波数スペクトルを
図13(a)~(d)に示す。
図13(a)~(d)によれば、膜厚1.5μm、1.0μmにおいて、膜厚に相当するシグナルピークよりも顕著なシグナルピークが薄膜側(膜厚約0.5μm付近)に1つ表れ、膜厚0.8μm、0.6μmにおいて、膜厚に相当するシグナルピークとこれより薄膜側の顕著なシグナルピークとが一体化して幅が広がっていることが分かる。これらは、サンプルワークの反射率特性とワークWの反射率特性との相違が影響していると考えられる。
【0063】
さらに、
図14に、研磨が進行するにしたがって減少する熱酸化膜の膜厚の変化のトレンドを示すグラフを示す。
図14によれば、1μm程度以下では安定して膜厚を測定できていないことが分かる。また、
図15は、
図14に示す周波数スペクトルに対して膜厚1.5μm以下で最適化法による理論波形とのカーブフィッティングを適用した熱酸化膜の膜厚の変化のトレンドを示すグラフである。
図15によれば、0.5μm程度以下では安定して膜厚を測定できていないことが分かる。これらは、上述した周波数スペクトルに表れた膜厚0.5μm付近のシグナルピークが存在することに起因すると考えられる。
【0064】
一方、本実施形態では、
図5(a)~(d)によれば、分光波形に特異なピークが含まれておらず、且つ分光波形の振動の中心(反射率約0.9)が略平坦であることが分かる。また、
図6(a)~(d)によれば、周波数スペクトルには膜厚に相当する顕著なシグナルピークが1つのみ表れていることが分かる。また、
図7によれば、研磨の進行に伴って減少する熱酸化膜の膜厚の変化のトレンドが規則的である0.5μm程度まで安定して膜厚を測定できていることが分かる。さらに、
図8によれば、熱酸化膜の膜厚の変化のトレンドが規則的である0.11μm程度まで膜厚を測定できていることが分かる。
【0065】
<スラリーに含まれる研磨剤が膜厚算出に与える影響について>
上述した実施形態のように研磨時にCMPスラリーを介在させた場合と、研磨時に研磨剤を含まない超純水(DIW)を介在させた場合(比較例2)とについて、それらの分光波形、周波数スペクトル及び膜厚解析の結果を比較した。
【0066】
比較例2では、サンプルワークにシリコン基板を使用し、超純水を供給しながら静止状態(非回転状態)のサンプルワークを、静止状態(非回転状態)の研磨パッド5に接触させながらサンプルワークの基準強度を測定した。なお、比較例2では、上述した点を除き、基準強度を算出するためのリファレンス測定条件及びワークWの研磨条件は上述した実施形態と同一に設定した。
【0067】
図16(a)は、比較例2に係る分光波形を示し、
図16(b)は、上述した実施形態に係る分光波形を示す。
図16(a)によれば、反射率の振動中心が、波長の長短にかかわらず反射率1付近で安定していることが分かる。一方、
図16(b)によれば、反射率の振動中心が、波長が長くなるにつれて反射率が増加するように傾いていることが分かる。このような傾きは、スラリーに研磨剤が含まれていることにより起因すると考えられ、波長全体で0.05程度ではあるが、例えば、比較例1のような基板と被研磨層との反射率差が相対的に小さいワークWにおいては、膜厚算出への影響は避けられない。
【0068】
また、
図17(a)、(b)は、
図16(a)、(b)に示す分光波形にフーリエ解析を適用して得られる周波数スペクトルである。また、
図18は、
図17(a)に示す周波数スペクトルにフーリエ解析を適用して得られる周波数スペクトルである。なお、
図17(a)、(b)は、本明細書で説明する他の周波数スペクトルと異なり、縦軸を最大シグナルピークで規格化していない。
図17(a)、(b)を比較すると、
図17(b)には、膜厚約0.5μm付近に特異なシグナルピークが表れており、これが膜厚算出の妨げになることが考えられる。このように、基準強度の測定時に研磨剤を含まないスラリーを用いて、研磨時に研磨剤を含むスラリーを用いると、膜厚算出への影響が避けられない。したがって、基準強度の測定時であっても、研磨時と同様に研磨剤を含むスラリーを用いることが好ましい。
【0069】
<プラテンの回転が膜厚算出に与える影響について>
上述した実施形態のようにリファレンス測定時にプラテン2を回転させた場合と、リファレンス測定時にプラテン2を回転させなかった場合(比較例3)とについて、それらの30回平均の分光波形を比較した。
【0070】
比較例3では、サンプルワークにシリコン基板を使用し、CMPスラリーを供給しながら回転状態のサンプルワークを、静止状態(非回転状態)の研磨パッド5に接触させながらサンプルワークの基準強度を測定した。なお、比較例3では、上述した点を除き、基準強度を算出するためのリファレンス測定条件及びワークWの研磨条件は上述した実施形態と同一に設定した。
【0071】
図18(a)は、比較例3に係る分光波形を示し、
図18(b)は、上述した実施形態に係る分光波形を示す。
図18(a)によれば、反射率の振動中心が、反射率0.995付近で安定していることが分かる。一方、
図18(b)によれば、反射率の振動中心が、反射率0.96付近であり、且つ波長400nm以下では、周波数が小さくなるにつれて反射率が増加するように傾いていることが分かる。このような傾きは、測定光のスポット径が約3mm程度であるのに対し、観察窓80の内径が約2.5mmであるため、静止状態の研磨パッド5では、測定光及び反射光は観察窓80に対応する直径2.5mmの円内を通過するのに対し、研磨パッド5が回転する場合、観察窓80の回転半径が165mm、光源ユニット76の露光時間が5m秒のとき、観察窓80も研磨パッド5と一体で回転して周方向に約5.2mm移動するため、測定光及び反射光が、比較例3と比べて約4.3倍の広範囲を通過することに起因すると考えられる。さらに、低波長域での反射率の振動中心の傾きは、回転状態の研磨パッド5上のスラリーの厚みと静止状態の研磨パッド5上のスラリーの厚みとが異なることも上述した傾きが生じる原因と考えられる。
【0072】
このようにして、上述した本実施形態に係る研磨終点検出装置70は、ワークWを研磨パッド5に接触させてワークWの熱酸化膜をCMP研磨する際に研磨終点を検出する研磨終点検出装置70であって、ワークWの研磨中にワークWに向けて測定光を照射し、ワークWからの反射光を分光して、反射光の波長と反射光の強度及び予め取得された波長成分毎の基準強度の比である反射率との関係を示す分光波形を取得する測定部71と、分光波形にフーリエ解析を適用して熱酸化膜の膜厚を算出する検出部72と、を備え、基準強度は、回転する研磨パッド5との間にCMPスラリーを介在させた状態でワークWの基板と略同じ反射率特性を示すサンプルワークを研磨パッド5に接触させ、測定部71が、研磨パッド5の観察窓80を介してサンプルワークに向けて測定光を照射し、サンプルワークからの反射光を分光して算出される構成とした。
【0073】
この構成により、ワークWと略同じ反射率を示すサンプルワークを使用し、膜厚算出に影響し得るスラリーに含まれる研磨剤の有無やプラテン2の回転又は静止等のリファレンス測定条件をワークWを研磨する際の研磨条件と統一して、サンプルワークの基準強度を算出することにより、薄いワークWの膜厚を精度良く検出することができる。
【0074】
また、本実施形態に係るCMP装置1は、研磨終点検出装置70を備えている構成とした。
【0075】
この構成により、薄いワークWの研磨終点を精度良く検出することができる。
【0076】
また、上述した本実施形態に係る研磨終点検出方法は、ワークWを研磨パッド5に接触させてワークWの熱酸化膜をCMP研磨する際に研磨終点を検出する研磨終点検出方法であって、ワークWの研磨中にワークWに向けて測定光を照射し、ワークWからの反射光を分光して、反射光の波長と反射光の強度及び予め取得された波長成分毎の基準強度の比である反射率との関係を示す分光波形を取得するステップと、分光波形にフーリエ解析を適用して熱酸化膜の膜厚を算出するステップと、を含み、基準強度は、回転する研磨パッドとの間にスラリーを介在させた状態でワークWと略同じ反射率特性を示すサンプルワークを研磨パッド5に接触させ、研磨パッド5の観察窓80を介してサンプルワークに向けて測定光を照射し、サンプルワークからの反射光を分光して算出される構成とした。
【0077】
この構成により、ワークWと略同じ反射率を示すサンプルワークを使用し、膜厚算出に影響し得るスラリーに含まれる研磨剤の有無やプラテン2の回転又は静止等のリファレンス測定条件をワークWを研磨する際の研磨条件と統一して、サンプルワークの基準強度を算出することにより、薄いワークWの膜厚を精度良く検出することができる。
【0078】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【0079】
上述した本実施形態では、分光波形にフーリエ解析を適用して被研磨層の膜厚を算出するとしたが、これに限らず、例えば、高速フーリエ変換(FFT)や理論波形とのカーブフィッティングを適用しても構わない。理論波形とのカーブフィッティングを適用する場合には、予め実験等で分光波形の理論波形を用意し、測定部71が取得した分光波形が、最も当てはまる理論波形を求めて被研磨層の膜厚に変換する。
【0080】
また、上述した本実施形態で例示した材質以外の物質から成るワークW、例えば炭化ケイ素(シリコンカーバイド:SiC)を含む物質から成るワークW、又は窒化ガリウム(GaN)から成るワークW等にも適用可能である。これらに対応するサンプルワークには、これらワークWと略等しい反射率特性を示すものが用いられる。
【符号の説明】
【0081】
1 ・・・CMP装置
2 ・・・プラテン
3 ・・・回転軸
4 ・・・モータ
5 ・・・研磨パッド
6 ・・・ノズル
7 ・・・コントローラ
10 ・・・研磨ヘッド
10a ・・・回転軸
20 ・・・ヘッド本体
21 ・・・回転部
30 ・・・キャリア
30a ・・・下面
31 ・・・エアライン
32 ・・・キャリア押圧手段
40 ・・・リテーナリング
41 ・・・リテーナリングホルダ
41a ・・・収容ポケット(収容部)
42 ・・・スナップリング
43 ・・・リテーナ押圧部材
44 ・・・リテーナ押圧手段
50 ・・・メンブレンフィルム
60 ・・・バッキングフィルム
70 ・・・研磨終点検出装置
71 ・・・測定部
72 ・・・検出部
73 ・・・レンズ
74、75・・・光ファイバー
76 ・・・光源ユニット
77 ・・・分光器
80 ・・・観察窓
A ・・・エア室
W ・・・ワーク