(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117031
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】発酵バター、発酵バターの製造方法、サワークリーム、サワークリームの製造方法、食品、及び、発酵装置
(51)【国際特許分類】
A23C 15/06 20060101AFI20240821BHJP
A23C 13/16 20060101ALI20240821BHJP
A23C 15/12 20060101ALI20240821BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240821BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A23C15/06
A23C13/16
A23C15/12
C12M1/00 C
C12M1/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022962
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北川 範匡
(72)【発明者】
【氏名】下山 世津子
【テーマコード(参考)】
4B001
4B029
【Fターム(参考)】
4B001AC15
4B001AC31
4B001BC07
4B001BC14
4B001BC99
4B001CC01
4B001EC01
4B001EC99
4B029AA01
4B029AA11
4B029BB02
4B029CC01
4B029CC02
4B029DF01
4B029GA02
(57)【要約】
【課題】風味等を劣化させることなく、発酵時間を短くすることが可能な手段を提供すること。
【解決手段】生クリームを乳酸菌発酵させてサワークリームを得る発酵工程を備える発酵バターの製造方法であって、発酵工程において、生クリームを振動させる。発酵工程において、19時間、30℃で、生クリームを乳酸菌発酵させることが好ましい。発酵装置1は、発酵対象を収容する容器101と、容器に振動を与える加振器7(振動部)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生クリームを乳酸菌発酵させてサワークリームを得る発酵工程を備える発酵バターの製造方法であって、
前記発酵工程において、前記生クリームを振動させることを特徴とする発酵バターの製造方法。
【請求項2】
前記発酵工程において、30℃で、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする請求項1に記載の発酵バターの製造方法。
【請求項3】
前記発酵工程において、30~35℃で、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする請求項1に記載の発酵バターの製造方法。
【請求項4】
前記発酵工程において、19時間、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする請求項1に記載の発酵バターの製造方法。
【請求項5】
前記発酵工程において、12~24時間、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする請求項1に記載の発酵バターの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の発酵バターの製造方法によって製造したことを特徴とする発酵バター。
【請求項7】
生クリームを乳酸菌発酵させてサワークリームを得る発酵工程を備えるサワークリームの製造方法であって、
前記発酵工程において、前記生クリームを振動させることを特徴とするサワークリームの製造方法。
【請求項8】
前記発酵工程において、30℃で、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする請求項7に記載のサワークリームの製造方法。
【請求項9】
前記発酵工程において、30~35℃で、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする請求項7に記載のサワークリームの製造方法。
【請求項10】
前記発酵工程において、19時間、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする請求項7に記載のサワークリームの製造方法。
【請求項11】
前記発酵工程において、12~24時間、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする請求項7に記載のサワークリームの製造方法。
【請求項12】
請求項7に記載のサワークリームの製造方法によって製造したことを特徴とするサワークリーム。
【請求項13】
請求項6に記載の発酵バターが用いられることを特徴とする食品。
【請求項14】
請求項12に記載のサワークリームが用いられることを特徴とする食品。
【請求項15】
発酵対象を収容する容器と、
前記容器に振動を与える振動部と、
を備えることを特徴とする発酵装置。
【請求項16】
前記容器を加熱する加熱部と、
前記加熱部による加熱温度及び加熱時間の設定を受け付けるための操作部と、
前記操作部により前記加熱温度及び前記加熱時間の設定を受け付け、設定を受け付けた前記加熱温度及び加熱時間で前記加熱部を動作させる制御部と、をさらに備えることを特徴とする請求項15に記載の発酵装置。
【請求項17】
前記振動部は、加振器であることを特徴とする請求項15に記載の発酵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵バター、発酵バターの製造方法、サワークリーム、サワークリームの製造方法、食品、及び、発酵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパでは、発酵を経て製造される発酵バターが主流である。一方、日本では、非発酵バターが主流である。近年、日本においても、発酵バターが使用される機会が増えている。また、発酵バター、及び、発酵バターの製造方法についての発明も、特許出願されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-061960号公報
【特許文献2】特開2020-061961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、発酵バターの製造には、発酵が必要であるが、発酵には時間が必要である。発酵時間を短くするためには、例えば、高い温度で発酵させることが考えられる。しかしながら、高い温度では、風味等が劣化する可能性がある
【0005】
本発明の目的は、風味等を劣化させることなく、発酵時間を短くすることが可能な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の発酵バターの製造方法は、生クリームを乳酸菌発酵させてサワークリームを得る発酵工程を備える発酵バターの製造方法であって、前記発酵工程において、前記生クリームを振動させることを特徴とする。
【0007】
発酵時間を短くするためには、例えば、高い温度で発酵させることが考えられる。しかしながら、高い温度では、風味等が劣化する可能性がある。ここで、本願の発明者らは、発酵工程において、生クリームを振動させることで、発酵が促進されることを見出した。従って、本発明では、発酵工程において、生クリームを振動させることにより、発酵が促進され、発酵時間を短くすることができる。すなわち、本発明によれば、風味等を劣化させることなく、発酵時間を短くすることができる。
【0008】
第2の発明の発酵バターの製造方法は、第1の発明の発酵バターの製造方法において、前記発酵工程において、30℃で、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする。
【0009】
第3の発明の発酵バターの製造方法は、第1の発明の発酵バターの製造方法において、前記発酵工程において、30~35℃で、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする。
【0010】
第4の発明の発酵バターの製造方法は、第1の発明の発酵バターの製造方法において、前記発酵工程において、19時間、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする。
【0011】
第5の発明の発酵バターの製造方法は、第1の発明の発酵バターの製造方法において、前記発酵工程において、12~24時間、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする。
【0012】
第6の発明の発酵バターは、第1の発明の発酵バターの製造方法によって製造したことを特徴とする。
【0013】
第7の発明のサワークリームの製造方法は、生クリームを乳酸菌発酵させてサワークリームを得る発酵工程を備えるサワークリームの製造方法であって、前記発酵工程において、前記生クリームを振動させることを特徴とする。
【0014】
第8の発明のサワークリームの製造方法は、第7の発明のサワークリームの製造方法において、前記発酵工程において、30℃で、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする。
【0015】
第9の発明のサワークリームの製造方法は、第7の発明のサワークリームの製造方法において、前記発酵工程において、30~35℃で、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする。
【0016】
第10の発明のサワークリームの製造方法は、第7の発明のサワークリームの製造方法において、前記発酵工程において、19時間、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする。
【0017】
第11の発明のサワークリームの製造方法は、第7の発明のサワークリームの製造方法において、前記発酵工程において、12~24時間、前記生クリームを乳酸菌発酵させることを特徴とする。
【0018】
第12の発明のサワークリームは、第7の発明のサワークリームの製造方法によって製造したことを特徴とする。
【0019】
第13の発明の食品は、第6の発明の発酵バターが用いられることを特徴とする。
【0020】
第14の発明の食品は、第12の発明のサワークリームが用いられることを特徴とする。
【0021】
第15の発明の発酵装置は、発酵対象を収容する容器と、前記容器に振動を与える振動部と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明では、発酵装置は、発酵対象を収容する容器に振動を与える振動部を備える。これにより、容器内の発酵対象に振動を与え、発酵対象の発酵を促進し、発酵対象の風味等を劣化させることなく、発酵時間を短くすることができる。
【0023】
第16の発明の発酵装置は、第15の発明の発酵装置において、前記容器を加熱する加熱部と、前記加熱部による加熱温度及び加熱時間の設定を受け付けるための操作部と、前記操作部により前記加熱温度及び前記加熱時間の設定を受け付け、設定を受け付けた前記加熱温度及び加熱時間で前記加熱部を動作させる制御部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0024】
第17の発明の発酵装置は、第15の発明の発酵装置において、前記振動部は、加振器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、風味等を劣化させることなく、発酵時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係る発酵バターの製造方法が備える工程を示す図である。
【
図3】発酵対象を収容する容器(タンク)を示す模式図である。
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る発酵バターの製造方法が備える工程を示す図である。
図1に示すように、発酵バターの製造方法は、分離工程、殺菌工程、冷却工程、発酵工程、冷却工程、エージング工程、転相(チャーニング)工程、除去工程、水洗工程、練圧工程を備える。なお、
図1に示す工程は、一例であり、他の工程が含まれていてもよい。
【0028】
分離工程は、原料乳から、遠心分離等で生クリームを分離する工程である。この工程において、原料乳は、生クリームと脱脂乳とに分離される。また、生クリームの乳脂肪分は、例えば、20~50%となるように、調整される。殺菌工程は、分離工程で得られた生クリームを、加熱殺菌する工程である。冷却工程は、殺菌工程で加熱殺菌された生クリームを、冷却する工程である。発酵工程は、冷却工程で冷却された生クリームを乳酸菌発酵させてサワークリームを得る工程である。発酵工程については、詳述する。
【0029】
冷却工程は、発酵工程で得られたサワークリームを冷却する工程である。エージング工程は、冷却工程で冷却されたサワークリームを、冷却工程と同じ温度で一定時間エージングし、脂肪球を安定な結晶に調整する工程である。転相(チャーニング)工程は、エージング工程でエージングされたサワークリームを攪拌し、脂肪球を凝集させて、バター粒を得る工程である。除去工程は、転相(チャーニング)工程で得られたバター粒から水溶性成分(バターミルク)を取り除く工程である。練圧工程は、除去工程でバターミルクが取り除かれたバター粒を練り合わせ、発酵バターを得る工程である。
【0030】
発酵工程において、例えば、発酵装置1が用いられる。
図2は、発酵装置1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、発酵装置1は、制御部2、操作部3、表示部4、再生部5、増幅部6、加振器7、加熱部8を備える。制御部2は、発酵装置1の各部を制御する。制御部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)により構成される。操作部3は、発酵時の加熱温度、加熱時間等を入力するためのものである。表示部4は、操作部3により入力された発酵時の加熱温度、加熱時間等を表示するためのものであり、操作部3と連動している。再生部5は、音源ファイルを再生するためのものである。増幅部6は、再生部5によって再生された音源を増幅するためのものである。
【0031】
加振器7(振動部)は、生クリーム等の発酵対象を振動させるためのものである。
図3は、生クリーム等の発酵対象を収容する容器(タンク)を示す模式図である。加振器7は、例えば、略円筒形状の容器101の側面に設けられる。なお、容器101の形状は、略円筒形状に限られず、略直方体形状であってもよい。また、加振器7は、側面ではなく、例えば、底面に設けられていてもよい。加振器7は、容器101に振動を付与することで、容器101内の生クリーム等の発酵対象を振動させる。加振器7には、増幅器6によって増幅された音源が供給される。加振器7は、増幅器6から供給される音源により振動する。
【0032】
加振器7は、例えば、ハウジングによって規定される内部空間内に、内磁型の磁気回路を備える動電型の加振器である。加振器7は、軸方向に沿って、交流的に変化する駆動力を発生させることで、加振器7が載置される被設置面(容器101の側面)を振動させる。加振器7を振動させるための音源としては、例えば、クラシック音楽等の音楽が用いられる。
【0033】
加熱部8は、発酵対象を加熱するためのものである。加熱部8は、発酵対象を収容する容器101を加熱することで、発酵対象を加熱する。制御部2は、操作部3により、加熱部8による加熱温度、及び、加熱時間の設定を受け付ける。そして、制御部2は、加熱部8を制御し、受け付けた加熱温度、及び、加熱時間で、加熱部8を動作させる。
【0034】
発酵装置1には、発酵対象の温度を検知するためのセンサーが設けられており、制御部2は、センサーによって検出された温度に基づいて、加熱部8を制御し、受け付けた加熱温度で加熱部8を動作させる。なお、上述のセンサーが設けられていない場合、制御部2は、受け付けた温度で動作するように、加熱部8を動作させる。
【0035】
以下、発酵時において、時間及び温度を変化させた例を示す。
【0036】
(例1)
本例では、生クリームに振動を付与しながら、8時間、40℃で生クリームを発酵させた工程を経て、発酵バターを作成した。なお、エージング工程は、42時間、約3℃で行われている。以下、評価を記載する。
(1)味:振動が付与されていない、同様の製法で作成された発酵バターとの違いなし。
(2)香り:発酵バター独特の香りが強め。
(3)色:振動が付与されていない、同様の製法で作成された発酵バターとの違いなし。
(4)発酵後の状態:全体的に固まりができている状態。
(5)加熱したものを食パンにつけて試食した結果:酸っぱく、香りが強いが、深みが出ている。
(6)バターミルク:酸味がかなり強い。
【0037】
(例2)
本例では、生クリームに振動を付与しながら、10時間、40℃で生クリームを発酵させた工程を経て、発酵バターを作成した。なお、エージング工程は、48時間、約3℃で行われている。以下、評価を記載する。
(1)味:振動が付与されていない、同様の製法で作られた発酵バターと比べて、酸味が強い。
(2)色:振動が付与されていない、同様の製法で作られた発酵バターと比べて、濃い。
(3)つや:あり。
(4)固さ:柔らかい。
(5)発酵後の状態:全体的に固まりができているが、振動が付与されていない、同様の製法で作成された発酵バターとの違いなし。
(6)加熱したものを食パンにつけて試食した結果:クリームチーズのようである。
(7)バターミルク:酸味がくどかった。
【0038】
(例3)
本例では、生クリームに振動を付与しながら、21時間、30℃で生クリームを発酵させた工程を経て、発酵バターを作成した。なお、エージング工程は、48時間、約3℃で行われている。以下、評価を記載する。
(1)味:発酵バターの独特のくさみがなく、食べやすい。
(2)香り:独特のくさみがない。
(3)固さは、やや柔らかく、取り扱いやすい固さ。例1及び2と比較すると、市販されている発酵バターに近い固さ。
(4)発酵後の状態:固まりが微量であった。
【0039】
(例4)
本例では、生クリームに振動を付与しながら、24時間、30℃で生クリームを発酵させた工程を経て、発酵バターを作成した。なお、エージング工程は、48時間、約3℃で行われている。以下、評価を記載する。
(1)味:食べやすい。
(2)香り:独特のくさみがない。
(3)固さ:やや柔らかく、取り扱いやすい固さであった。40℃で発酵させた例1及び2と比較すると、市販されている発酵バターに近い固さであった。
(4)発酵後の状態:固まりが微量。
【0040】
(例5)
本例では、生クリームに振動を付与しながら、30時間、30℃で生クリームを発酵させた工程を経て、発酵バターを作成した。なお、エージング工程は、48時間、約3℃で行われている。以下、評価を記載する。
(1)味:酸味が少しくどい。
(2)香り:多少のくさみがある。
(3)固さ:やや柔らかく、取り扱いやすい固さであった。40℃で発酵させた例1及び2と比較すると、市販されている発酵バターに近い固さであった。
(4)発酵後の状態:固まり多め。
【0041】
例4と例5とは、発酵時間が異なっている(例4:24時間、例5:30時間)である。30℃の低温で、24時間以上の長時間発酵させることで風味が増すが、例4と例5との比較により、30時間では、過発酵であることがわかる。
【0042】
(例6)
本例では、生クリームに振動を付与しながら、19時間、30℃で生クリームを発酵させた工程を経て、発酵バターを作成した。なお、エージング工程は、48時間、約3℃で行われている。以下、評価を記載する。
(1)味:食べやすい。
(2)香り:以下で示す例7と変わらない。
(3)発酵後の状態:以下で示す例7と変わらない。
(4)色:以下で示す例7よりもよい。
【0043】
(例7)
本例では、生クリームに振動を付与しながら、24時間、25℃で生クリームを発酵させた工程を経て、発酵バターを作成した。なお、エージング工程は、48時間、約3℃で行われている。以下、評価を記載する。
(1)味:若干くさみあり。
(2)色:黄色め。
なお、本例では、除去工程において、転相(チャーニング)工程で得られたバター粒から水溶性成分(バターミルク)を取り除くことが難しい。
【0044】
例6と例7とは、発酵時の温度が異なる(例6:30℃、例7:25℃)。例6と例7との比較により、25℃では温度が低すぎることがわかる。
【0045】
以上の例の結果から、発酵工程において、加振器7によって、生クリームに振動を付与しながら、19時間、30℃で生クリームを発酵させることが最もよい条件である。温度の条件として、例2等の40℃での発酵では、酸味が強い等の欠点がある。また、例7の25℃での発酵では、若干くさみがある等の欠点がある。従って、発酵温度としては、30℃が最適である。上述の例1~7より、好ましくは、発酵温度は、30~35℃である。
【0046】
時間の条件として、例5の30時間の発酵では、酸味が少しくどい等の欠点がある。従って、発酵時間は、24時間以下が好ましい。また、発明者らは、例1~7以外での実験により、発酵時間が12時間以上であれば、発酵バターが作成可能であることを見出している。従って、発酵時間は、12~24時間が好ましい。最適な発酵時間は、上述の例1~7より、19時間である。
【0047】
本実施形態により製造された発酵バターは、例えば、菓子等の食品の製造に使用可能である。また、発酵工程により得られたサワークリームは、発酵バターの製造以外にも、例えば、ドレッシングのベースとしても使用可能である。
【0048】
発酵時間を短くするためには、例えば、高い温度で発酵させることが考えられる。しかしながら、高い温度では、風味等が劣化する可能性がある。ここで、発明者らは、発酵工程において、生クリームを振動させることで、発酵が促進させることを見出した。従って、本実施形態では、発酵工程において、生クリームを振動させることにより、発酵が促進され、発酵時間を短くすることができる。すなわち、本実施形態によれば、風味等を劣化させることなく、発酵時間を短くすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、発酵装置1は、発酵対象(例えば、生クリーム)を収容する容器101に振動を与える加振器7(振動部)を備える。これにより、容器101内の発酵対象に振動を与え、発酵対象の発酵を促進し、発酵対象の風味等を劣化させることなく、発酵時間を短くすることができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0051】
発酵装置1は、工場で使用される規模の装置に適用可能であるし、家庭で使用される規模の装置にも適用可能である。例えば、家庭用の装置においては、いわゆる、ヨーグルトメーカーに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、発酵バター、発酵バターの製造方法、サワークリーム、サワークリームの製造方法、食品、及び、発酵装置に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0053】
1 発酵装置
2 制御部
3 操作部
4 表示部
5 再生部
6 増幅部
7 加振器(振動部)
8 加熱部