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特開2024-117042カートリッジタンクの取っ手の構造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117042
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】カートリッジタンクの取っ手の構造装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/22 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
B65D25/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023035075
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】505274863
【氏名又は名称】大坪 正志
(72)【発明者】
【氏名】大坪 正志
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062AA06
3E062AB03
3E062AC03
3E062BB06
3E062BB10
3E062GA05
3E062HA05
3E062HB02
3E062HB09
3E062HC03
3E062KA04
(57)【要約】
【課題】給油時のカートリッジタンクの上下反転作業に於いて、カートリッジタンクの取っ手を持ち替える事なく、持ち上げ、反転させ、装着する、一連の作業が安定かつ安全に行える様にすると共に、既存のカートリッジタンクにも応用できる簡素で安全確実な取っ手の構造装置の具現化を課題とする。
【解決手段】給油時に反転してカートリッジタンクの下に隠れる取っ手の把手部分を、延長してタンクの外側に突出させて、把手部分を床等の基盤から浮き上がらせる構造とすることで、給油後に把手部分を直接掴むことを可能にし、持ち替えることなく暖房器具本体へ収納可能とする。
更に、タンク外に延長した取っ手をカートリッジタンク上面内に納めるため、上面端部に近接位置に回動接続機構を設けて、追加取っ手の設置を可能とすると共に折り畳み可能と成して、既存カートリッジタンクへの後付けを可能とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に灯油を燃料とする石油暖房器具に使用されていて、給油時には反転されて、上部にあった取っ手が隠されて、床や作業台等の基盤上に安置する時や給油後に持ち上げる時に両手での保持が必要があって、取っ手の持ち替え操作を不可欠としているカートリッジタンクの取っ手に於いて、
タンク上面に設けられている取っ手を単独または複数個として延長させることで把手部をタンク上面より突出させ、
(1)単独の場合は、延長した吊下部分の構造部材を、タンク上面端部の外側に隣接させて設けた屈曲部で下向きに折り曲げ、
(2)複数個とする場合は、タンク上面端部付近設けた回動自在の接合装置を介して増設取っ手を組み付けると共に、接合装置に隣接させて屈曲部または突起部を設け、
(3)反転されて基盤に安置された給油状態に於いて、増設取っ手の屈曲部または突起部を梃子の支点と成し、接合装置部およびタンク底部を力点、増設取っ手の把手部を作用点、として梃子の関係条件を成立させて、
反転させられた給油時に、把手部がタンク外面より離れた位置にタンクの自重によって基盤面より浮いた状態にすることで、手掛け操作を容易にする
ことを特徴とするカートリッジタンクおよび其の取っ手の構造装置。
【請求項2】
剛性を備えると共に中心線上に薄肉部を有して折り曲げ可能な蝶番機能を備えて、蝶番機能部位に近接して従来取っ手の把手部を挟み込んで保持する為の狭着部と、狭着部に隣接して梃子の支点と成す突起とを備えて成る略ロ字形をした耐油性樹脂成型品に、
蝶番機能部位破損時のタンク荷重に耐え得る剛性を備えると共に中心線上を折り曲げ可能とした略ロ字形の補強部材を内蔵させて、
中心線上に近接設置した狭着部で従来取っ手の把手部を挟み込んで略コ字形に折り畳むことにより、追加取っ手の後付けによる装着を可能と成した
ことを特徴とする請求項1項記載のカートリッジタンクおよび其の取っ手の構造装置。
【請求項3】
給油後のタンク荷重を支える主構造材に環状に成形された編組線を使用し、二個のカバーで編組線を取っ手と成すように矯正すると共に既存把手部を挟み込むように折り曲げて、カバーを最中合わせにしてからクリップで挟み付けることを基にして、更に、
(1)編組線は結合又は溶着等による接続部で環状の略ロ字形に成形されて、接続部を中心に左右に二個の形状矯正の為の耐油性樹脂成型品のカバーが備わり、カバー内に設けられた収納溝に圧入され、
(2)カバーには編組線の収納溝のほかに既存の把手部両端を摺動可能とする間隙を設けると共に、梃子の支点になる突起物を取り付けるための取付穴を複数個設けて調整可能として、突起ピン等を取り付け、
(3)既存取っ手の把手部を折り込んで、二個のカバーを最中合わせにしてから両方をクリップで挟み込んで一体化させ、
(4)編組線の折曲部は露出させることで常時目視確認を可能とし、接合に於いて結び接合を採る場合は、結び目を追加取っ手の把手部中央から外側に突出配置させることで常時目視確認を可能と成して異常管理の手段と成す、
ことを特徴とする請求項1項記載のカートリッジタンクおよび其の取っ手の構造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に家庭用可搬型の石油ストーブや石油ファンヒーターに使用されて、一般的にカートリッジタンクと称されるている、着脱可能な小形石油タンクの取っ手の構造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主に家庭用として用いられる可搬型の反射形石油ストーブや石油ファンヒーターには、石油の供給手段として着脱可能な石油タンクが採用されている。これは一般的にカートリッジタンクと称されているので、以下、本願書内に於いても、カートリッジタンクと記述する。また、カートリッジタンクは登場してから種々の改良が行われてタンク単品としての安全性は高度なものになっている。
【0003】
一方で、カートリッジタンク2による石油供給に於いては、タンクからの石油流出に因って生じる内部負圧と残留石油の重圧が平衡することで燃焼装置の油面を一定に保つという構造は変わる事なく継続採用されている。その為、カートリッジタンク2は絶対的な気密性が要求されて、石油供給口以外からの空気流入は絶対に避ける必要が有るので、石油の供給口と取出口は一箇所に機能集約されて給油口2aと呼称されて共用されている。
【0004】
図1に既存の暖房器具本体1のタンク収納部カバーを開いた状態での、カートリッジタンク収納状態の上部斜視図を示す。暖房器具本体1に設けられたタンク装着穴1aにカートリッジタンク2が挿入されており、タンク上面2bには固着された取っ手基板2cが設けられている。取っ手基板2cには、取っ手3を組み付ける為の取っ手装着部2dと、反転させて給油する際にタンク本体2eと接合端部2fを保護すると共に給油時にタンクを安定させる為の保護用突起2gが設けてある。
【0005】
取っ手基板2cは、四角形金属板の中央部と両端部を逆U字形に盛上げて成型されて、中央部は取っ手装着部2dが成形されて取っ手3の引掛部3cを収納保持すると共に、両端部には反転されて基盤4に安置された際に取っ手3やタンクの接合端部2f等が基盤4に接触し難い様に、高さを調整された保護用突起2gが設けられている。
【0006】
取っ手3は、金属線材を折曲げ加工されて成型され、略コ字形に成型された両先端に内側へ折曲げられた引掛部3cを有する。取っ手3は単純な形状であるが、作業時に手指で掴まれる把手部3aと、運搬時に吊り下げ荷重を支える吊下部3bと、取っ手基板2cと組み合わされて回動可能とすると共に引き上げ且つ吊り下げ荷重を支える引掛部3cが組み合わされて、複数の機能を有している。
【0007】
留意されるべき点は、取っ手装着部2dの中間部は、給油したカートリッジタンク2の重心からの垂直延長線上に配置される必要が有る事である。これは、カートリッジタンク2をタンク装着穴1aに差し込む際に於いて、取っ手3の把手部3aを手指で保持するだけでタンクを安定且つ直立させることが成されて、円滑に挿入することを可能として、カートリッジタンク2を用いた給油方法では重要な制約事項となっている。
【0008】
以上の制約等から、カートリッジタンク2を使用した石油供給作業に於いては、給油する際には給油口2aを上向きに、暖房器具へ組み込む際は給油口2aを下向きに、給油口の向きを変える必要がある。故に、給油作業に於いては、カートリッジタンク2を上下反転させる操作が必要となっている。
【0009】
この一連の一般的給油作業の一例は、概ね下記の操作手順で行われている。
(1)暖房器具本体1のタンク上部のカバーを開け、取っ手3の把手部3aに手指を掛けて、カートリッジタンク2を持ち上げ、吊り下げて運ぶ。
(2)給油場所に到着後、両手で保持しながら把手部3aから手指を放して、給油口2aが上向きになる様に、上下を反転させて基盤に置く。
(3)給油口2aの蓋を開け、給油して、蓋を締める。
(4)両手でカートリッジタンク2を持ち上げて、取っ手3の把手部3aに手指を掛け、給油口2aが下向きになる様に、上下を反転させる。
(5)カートリッジタンク2を吊り下げて運び、暖房器具本体1のタンク装着穴に位置を合わせて挿入し、手指を放して本体カバーを閉じる。
【0010】
この実際の作業を経験した本発明者は、実作業時間は極短時間ではあるものの、不安定状態での不安全作業が要求されていることを痛感し、この一連の給油作業は作業者に大きな負担を強いるものである事を確信した。そして、その大きな比重を占める要因が、カートリッジタンク2の反転操作に関わるものである事に着目した。
【0011】
具体的には、上記操作手順(2)と(4)の反転操作時に於いて、床面や作業台等の基盤4にカートリッジタンク2を安置させるには取っ手3の把手部3aから手指を外して両手で確実に保持する必要が有ること、持ち上げる際には両手で確実に保持しながら片方の手指で把手部3aを探りあてること、が要求され過渡的に不安定な状態と不安全な操作が常態化しており、滑落等の危険性を秘めている。
【0012】
これらの、把手部3aからタンク本体部への手指の移動や、タンク本体部から把手部3aへの手指の移動、という過渡的操作については改善すべき事項であることが既に認知されている。それ故、その改善案の一例として以下の解決手段が提案されている。
【0013】
特許文献「特開2001-153345」に於いては、カートリッジタンクを上下反転する為の、回転可能な架台を設けることが提案されている。この提案は、ポンプ等の備品を収納したり、持ち上げる作業が容易になる等の効果があるものの、カートリッジタンク単品の改善では無く、短時間の使用に対する作業性と時間と空間の使用効率が良いとは言い難いものである。
【0014】
公開実用新案公報「平4-129636」に於いては、カートリッジタンクの略四角断面の対面中央部に回転支点を設け、概ねタンクに近接する大形の取っ手を設けることが提案されている。この提案は、容易に上下反転可能とするものの、カートリッジタンクの外側に張り出す幅が拡がり、回転軸はタンク長辺の中心部になるので長くなり大形になって収納空間の拡大を要し、ストーブ本体への挿入時においても回動して不安定になる恐れがある。また、既存カートリッジタンクへの改善の為の追加装着も不可能である。
【0015】
一部の石油ファンヒーター用の大容量カートリッジタンクに於いては、給油口側に取っ手を追加した例がある。これは、従来の取っ手とは別の位置に追加されたもので、重いタンクを両手で運べる利点はあるが、給油後の重いタンクを持ち上げるのは追加された取っ手を使い、本体への挿入時には従来の取っ手を使うので持ち替える必要は残る。また、取っ手一式が追加となるので、スペース確保も問題になり、製造コストも上昇する。
【0016】
それ故か、小形の反射型石油ストーブやファンヒーターへの全面的な普及は遅れている様にも思われる。また、既存タンクへの後付け装着とすることも不可能である。
【0017】
これら事例の元となるカートリッジタンクの反転操作は、タンクの気密確保を安価で確実に達成する方法として有効であるものの、操作時に於いて確実で連続した保持ができないことが、その主原因であることが理解される。
【0018】
本発明者は、以上の事項を総合的に鑑み、給油時に反転されることによってタンク上面2bに有る取っ手3がカートリッジタンク2と基盤4の間に隠されることが、不安定作業の主要因である事に着眼し、従来の英知を尊重し継続すると共に、新規生産品だけに限ることなく既存品への応用も視野に入れて安全確実な取っ手装置の具体化を指向した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】公開特許公報 特開2001-153345号
【実用新案文献】
【0020】
【実用新案文献1】
公開実用新案公報 平4-129636号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】ダイニチ工業株式会社 2022年7月現在の、一般販売店向け暖房機器 総合カタログ2022 石油暖房機 1ページの「タンクWとって」の記載内容。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
給油時のカートリッジタンクの上下反転作業に於いて、カートリッジタンクの取っ手を持ち替える事なく、持ち上げ、反転させ、装着する、一連の作業が安定かつ安全に行えると共に、簡素で既存品へも応用できる安全確実な取っ手の構造装置の具現化を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明による課題の解決は、給油時にカートリッジタンク2の底部より外側上方に突き出すと共に収納時には反転してタンク上面2bと成った其の上面範囲内に収まる構造とすることで解決されるものである。図2に、本発明が提供する解決手段の基本的な具体例を給油時の外観斜視図として示す。そして、その展開は概ね次の三つの形態で展開される。
【0024】
(1)取っ手3の吊下部3bを延長して把手部3aをタンク上面2bより突出させ、給油時に把手部3aが基盤4より浮き上がる様に、吊下部3bを折り曲げた屈曲部3dをタンク上面2bの外周付近に設ける。
【0025】
しかしながら装着時は、吊下部3bが延びたことにより、図3に示す様に把手部3aが既存の暖房器具本体1と干渉するので収納空間の確保が問題になる。因って、これは取っ手3と暖房器具本体1の双方に改造を要するので新規製造品に於いて実施可能となる。
【0026】
(2)既存の取っ手3に増設取っ手5を追加して、その増設結合部5cを回動可能とすることで、給油時には増設把手部5aをタンク上面2bより突出可能とすると共に暖房器具本体1への収納時には折り畳むことで収納可能とする。
【0027】
図4及び図5に概略構造図を示す。この解決手段は、カートリッジタンク2への施工で済むので、補修部品への増設装備とすることで既存の暖房器具への展開が可能となる。
【0028】
(3)環状補強部材を収納し、略ロ字形にして成形されたの追加取っ手の中央部を折り曲げ可能として、その折り曲げ部分で既存取っ手3の把手部3a両端付近を挟み込み、最中合わせにすることで略コ字形の取っ手を追加可能とする。
【0029】
図7から図12に基本的な構造図を示す。この解決手段は、追加施工が可能で、吊り下げ時の安全対策も備えているので、既存カートリッジタンクへの適用も可能になる。
【発明の効果】
【0030】
本発明による最大の効果は、給油前後の移動運搬および反転操作に於いて、安定した状態で取っ手を掴める様になり、カートリッジタンクを暖房器具本体から持ち上げて給油場所に安置するまで連続して保持可能となり不安定な持ち替え操作が無くなる事にある。つまり、片方の手は常にカートリッジタンクを確実に保持できるので、反転操作時や基盤に安置する際には残る片手の軽い支えを要するものの、滑落などの危険性は排除できる。
【0031】
新規製造のカートリッジタンクに於いては、増設取っ手を一つ結合すれば良いので、最小限のコストで安全性と安心感を提供することができる。
【0032】
追加取っ手については、後付けが可能であるから、既存のカートリッジタンクへの装着が可能となる。その際に於ける安全性の確保として、補強部材の組み込みを行うと共に、初期の破損不具合を異常表示として速やかに認識される様に配慮している。その異常表示により、使用期間の制限や使用中止を警告可能として製造物責任法(PL法)への対応をも可能としている。
【0033】
追加取っ手の場合は、少なくとも補強部材を樹脂成型品等で覆うので、必然的に把手部は太くなる。この太くなった把手部は、給油後の重いタンクを支える手指に柔らかな感触をもたらすので、機能面だけでなく触感の改善に甚だ好都合である。更に適度な剛性感を維持し、既存の重心配置等も変わることは無いので、取扱上の違和感も最小に収まる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】 既存暖房器具へのカートリッジタンク収納状態を示す上部斜視図である。
図2】 取っ手を延長し屈曲させた時の、給油時の状態を示す外観斜視図である。
図3】 取っ手を延長屈曲させた時の、本体との接触状態を示す外観斜視図である。
図4】 取っ手を増設し屈曲可能とした時の、折り畳んだ状態の外観斜視図である。
図5】 増設取っ手の拡大図で、外側へ展開した時と折り畳み時の斜視図である。
図6】 増設取っ手を使用した反転操作時の、側面から見た動作説明図である。
図7】 後付け取っ手を追加した時の、反転させた給油時の外観斜視図である。
図8】 反転させて下になったタンク上面を、下側から見た外観斜視図である。
図9】 金属薄板補強の後付け取っ手単品の、組立形状を示す外観斜視図である。
図10】 金属薄板補強の後付け取っ手単品の、展開形状を示す外観斜視図である。
図11】 編組線補強の後付け取っ手単品の、組立形状を示す外観斜視図である。
図12】 編組線補強の後付け取っ手単品の、展開形状を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明を行う。同等または類似の機能を有する部材や構成部品および機能装置等には同一の符号を付与することによって重複する説明は省略する。
【0036】
図2に給油時に於ける、本発明の取っ手3の把手部分3aの望ましい位置を、カートリッジタンク2を反転させて基盤4に安置した状態として、斜め上方からの斜視図として示す。
【0037】
把手部3aは手指が掴み易い様に、床や作業台などの基盤4から浮き上がり、カートリッジタンク2から離れた位置に設定されている。この構造により、給油後の重くなったカートリッジタンク2を片方の手指で確実に掴めると共に、持ち上げてからの反転操作および本体への装着まで、連続した一連の作業を持ち替え無しで行うことが可能となる。
【実施例0038】
図3に、第一の実施形態を示す。
第一の実施形態は、従来の取っ手3の吊下部3bを延長して、タンク上面2bの外周付近で折り曲げて屈曲部3dを設けた、簡単なものであるが安全性を新たに付与したものである。吊下部3bの延長寸法と屈曲部3dの曲げ角度によって、把手部3aの位置が決まることになる。
【0039】
この吊下部3bの屈曲という形状変更は、カートリッジタンク2に重心位置を考慮されて設置された取っ手基板2cの取っ手装着部2dの位置を変えるものではないので、持ち上げた際の把手部3aの位置は給油したカートリッジタンク2の重心の垂直延長線上にあり、カートリッジタンク2をタンク装着穴1aへ挿入する際の安定姿勢への影響はない。
【0040】
この実施形態では、吊下部3bの延長が必要なので、把手部3aが既存のタンク装着穴1aに収まらない事が容易にい推測できる。しかし、新規製造品あればタンク装着穴1aに隣接して収納空間を設けることで解決可能である。
【0041】
他の方法として、屈曲部3dの折り曲げ位置と角度をタンク上面2bに収まる様に設定し、カートリッジタンク2のタンク本体2eの手指挿入時に接触する部分を凹ませる形状とする事が考えられる。しかし、タンク本体2eは、接合部分を最小にするために金属板の深絞り加工で成形されているので、形状を複雑にすることで加工が困難になり、部分的なファインクラックを誘発させる恐れもある。故に、この代案は不適当と判断する。
【実施例0042】
図4に、第二の実施形態を示す。
第二の実施形態は、既存の取っ手3に同様の材料による増設取っ手5を、追加工程で増設した実施形態である。増設取っ手5に増設吊下部5bと増設屈曲部5dを設置すると共に、吊下部の先端を増設結合部5cとして既存の把手部3a両端に巻き付けられている。この増設結合部5cは既存の把手部3aを回転軸として回動可能として動作する。
【0043】
図5は増設取っ手5を追加した際の、給油時に増設取っ手5を展開した状態を図5(A)に、タンク装着穴1aに納めて増設取っ手5を折り畳んだ状態を図5(B)に示している。図5(A)の状態は、給油時に反転させて基盤4に安置した状態であるから、下側つまり基盤4側から見上げた状態の図となる。
【0044】
本構造に於いては、増設屈曲部5dの曲げ角度と増設吊下部5bの長さと共に増設結合部5cと増設屈曲部5dの位置関係が重要であって、後者は給油時にタンクを安置した際にタンクの自重によって増設結合部5cが押し下げられることで増設把手部5aが持ち上がるように設定されている。つまり、梃子の原理により、増設屈曲部5dが支点で、増設結合部5cが力点となって、作用点となる増設把手部5aが持ち上がる。
【0045】
タンクの自重に比べて増設取っ手5は極軽量であるので、増設結合部5cと増設屈曲部5dの距離は短くても十分であるから、タンク上面2bの外周部付近に設置されるのが望ましい。これは、給油時に誤って増設把手部5aを踏んだ場合等の安全対策として重要である。例えば増設把手部5aを踏んだ場合、梃子の原理で増設結合部5cが持ち上がる事で、カートリッジタンク2が傾くことになる。この時、持ち上がる高さが小さく、保護用突起2gまでの距離が大きい程、傾く角度は小さくなるので誤操作に対する耐性が高く成って安定性の確保が容易になる。
【0046】
取っ手3を取り付ける取っ手基板2cは、取っ手装着部2dの中央部が給油後のカートリッジタンク2の重心の垂直延長線上にあれば良いので、タンク上面2bの概ね四角形の各辺に対しての縦横の向きは限定されるものではない。
【0047】
取っ手基板2cには、部分的に盛り上がっている接合端部2fや取っ手装着部2dおよび取っ手3を保護し、給油時の反転安置時の安定性を確保するために、保護用突起2gが設けられている。そして、その目的からして保護用突起2gは取っ手基板2cに於ける四隅が重要であることは既存タンクと変わらないものの、留意すべきは保護用突起2gの高さであって、その高さは接合端部2fの外径寸法を超えて設定される必要がある。
【0048】
図6(1/6)から図6(6/6)に、増設取っ手5を用いた給油作業に於ける状態変化を、側面から見た場合の説明図として示している。本図に於いて、増設把手部5aが常にカートリッジタンク2の外側に在る事に留意されたい。その装置構造によって、タンク装着穴1aから安定した状態で持ち上げて安定した基盤4安置するまで、増設把手部5aから手指を離すことなく安全な作業遂行を可能と成すものである。
【0049】
(1/6)は、暖房器具本体1のタンク装着穴1aに収まっている状態である
(2/6)は、、吊り下げ運搬している状態を示す。
(3/6)は、残る片手を添えて、反転開始後約45度の状態を示す。
(4/6)は、同上約90度の状態を示す。増設結合部5cが取っ手基板2cに接している事に留意されたい。
(5/6)は、片手を添えて、反転開始後約135度の状態を示す。
(6/6)は、反転終了し、基盤4に安置した状態を示す。増設屈曲部5dが基盤4に密着し、増設結合部5cが取っ手基板2cまたはタンク本体2eから押さえられる関係に成っている事に留意されたい。
【0050】
そして給油後は上記と逆の手順となり、カートリッジタンク2は重くなるが増設把手部5aを掴んで持ち上げるだけで安定した吊り下げ状態に至り、持ち替える必要もなく暖房器具本体1のタンク装着穴1aに装着される。
【実施例0051】
図7に、第三の実施形態を示す。
第三の実施形態は、既存の取っ手3に追加取っ手6を後付けできる構造とした実施形態である。図7に、既存の取っ手3に追加取っ手6を取り付けて、反転させた給油時の斜め上方からの斜視図を示す。また図8に、図7の状態を基盤4側から、下側から見た場合の外観斜視図を示す。図9に、金属薄板による補強部材6fを組み込んだ追加取っ手6の組立単品の外観斜視図を示す。そして図10は、追加取っ手6単品の、展開形状を示す外観斜視図である
【0052】
追加取っ手6は略ロ字形の耐油性の樹脂成型品で基本形状を成し、補強部材6fの収納溝6jと中央に肉薄成形による蝶番部6hを設け、蝶番部6hに近接して把手装着穴6cと成る半円形の切り欠きを設け、追加把手部6aの両端部に掛止装置6e設け、追加把手部6aを基盤4から浮かせるための突起リブ6dを設けている。
【0053】
追加取っ手6の既存取っ手への追加作業は、補強部材6fを収納溝6jに納めてから、既存取っ手3の把手部3aを把手装着穴6cに合わせて、蝶番部6hを180度折り曲げて、掛止装置6eの凹部と凸爪部を嵌合させることで、追加取っ手6が把手部3aを包み込む状態になり略コ字形と成って終了する。
【0054】
本発明の基本構造に於いては、通常時のタンク荷重は耐油性の樹脂成型品に掛け、補強部材6fは概ね無負荷状態としている。この補強部材6fの設置目的は、樹脂成型品の破損時にタンク荷重を支えて、作業者に異常を認知させると共に危害を与えない事を成す施策としている。
【0055】
樹脂成形品は蝶番部6hを最弱部分として設定し、最初に破損する部分としている。この蝶番部6hが破断して把手部3aが滑落した時に、補強部材6fに荷重が掛かる様に意図されている。その万一の際に、手指に対する安全性確保と負荷状態の形態を急変させない為に、補強部材6fに金属薄板を用いると共に折曲部6gを除く直線部両端には可能な限り丸め加工の補強を施して剛性を確保し、収納溝6jの内側肉厚を増して、過度な変形を防ぐ施策が成されている。
【0056】
補強部材6fは、基本的に引張荷重に対応するものであるから、金属薄板に限るものではなく、上記の異常表示と安全性確保が可能であれば、耐油性の編組線や編組糸、金属線材でも良い。その場合は、補強材部材の剛性は期待できなくなるので、追加把手部6aの強度増加を考慮する必要がある。
【0057】
突起リブ6dは、追加把手部6aを基盤4から浮き上がらせる為の梃子の支点となるもので、把手装着穴6cや追加吊下部6bとの位置関係と突起リブ6dの突出寸法によって追加把手部6aの位置が決まる。故に突起リブ6dの位置や突出量を変動可能とすれば、既存タンクの取っ手3への適合性が高まり、応用範囲の拡大に貢献するものとなる。
【実施例0058】
図11に、紐等の柔構造物を使用した場合の実施形態を示す。
図11は、編組線を使用した後付取っ手単品の組立状態の外観斜視図で、図12は分解して展開した状態を示す外観斜視図である。
【0059】
本例では、環状編組線7が主構造材としてタンク荷重を支えて、樹脂成形部品は編組線の形状を整えるための補助的なものであって、把手クリップ9や突起ピン10と共に、主に作業者の作業性向上や手指の保護の為の、編組線カバー8として機能させている。環状編組線7の素線の材料は、主に灯油に対する耐油特性を有する材料であれば金属に限るものではなく、合成樹脂の繊維でも使用できる。
【0060】
編組線は、接続部7aにおいて、接続スリーブ等で環状に圧着接続されて環状編組線7と成されている。この状態では屈曲自在なので、二個の編組線カバー8に納められて形状が整えられる。特に、カバー把手部8aと、その両端から伸びた編組線収納溝8bは重要で、前者は掴める空間と剛性強度の確保であり、後者は既存把手部3aの両端部に環状編組線7を誘導する機能が与えられている。
【0061】
編組線カバー8の編組線収納溝8bの底部には、カバー把手部8aを基盤4から浮き上がらせる為の突起ピン10を取り付ける突起装着穴8dが複数箇所設けられている。突起ピン10の取り付け位置と突出寸法を調節することっで、カバー把手部8aの浮き上がり寸法が調整できて、後付けの追加取っ手としての汎用性を高める。
【0062】
編組線カバー8は、環状編組線7を納めるには二個を必要とし、既存把手部3aを編組線折曲部7bで包み込む状態で折り曲げて、位置合わせを行い、把手クリップ9で挟み付けることで取付作業が完了する。把手クリップ9の開口部先端には、カバー把手部8aから容易に外れないように掛止爪9aが設けられている。そして把手クリップ9は、カバー把手部8aを補強することにも貢献している。
【0063】
作業時に、二個の編組線カバー8を所定の位置関係に保つ為に、蝶番シート11が双方を繋ぐ様に貼り付けられて、追加作業を容易にしている。そして、追加後には剥がすことができる。故に、この蝶番シート11は、編組線収納溝8の複数個所に狭小部を設けて環状編組線7を圧入して掛止可能とすれば、不要にすることもできる。
【0064】
編組線カバー8には摺動用切欠8cが設けられていて、二個を最中合わせにすることで既存把手部3aを摺動可能としている。この摺動効果は、暖房器具本体1への収納時に於ける収納形態の汎用性を高める。
【0065】
そして当然の事であるが、カバー把手部8aを持ち上げた場合には、既存把手部3aは摺動して編組線折曲部7bに収まる。その際に、カバー把手部8aの両端から伸びた編組線収納溝8bは、編組線折曲部7bを既存把手部3aの両端部に配置させて、吊り下げ時の重心位置の変動を防止し、適度な剛性を確保して装着時に於ける位置合わせの容易性を維持している。
【0066】
カバー把手部8aの両端から編組線折曲部7bへ伸びた編組線収納溝8bが無い場合では、吊り下げ部分の編組線は自由に動いて捩れ、既存把手部3aとカバー把手部8aの平行性が維持できなくなる。更に、編組線折曲部7bも既存把手部3a上を自由に動き、手指の力点がタンク重心の垂直延長線から外れる可能性がある。その結果として、タンク装着穴1aに挿入する際に、カートリッジタンク2が傾いたり、角度の微調整が難しくなる可能性がある。由って、安全性と信頼性を優先に熟慮すれば、この様な簡易構造の採用はあり得ない事と判断される。
【0067】
図11に於いて、編組線折曲部7bは露出しているが、これは編組線の特徴を異常表示に利用するための意図的な構造としている。編組線は、複数本の芯線の周囲に極細素線を編み上げて成るものであるから、引っ張り荷重に対する耐性は高く、切断に対する冗長度も高くて信頼性に富むものである。そして摩耗損傷する場合は、先ず編組素線が切れて毛羽立ち現象が見られるので、これを異常表示に利用する。
【0068】
編組線折曲部7bは本実施形態に於いて、回動摩耗が発生する箇所であり最弱点箇所になるので、敢えて露出構造として、常時監視による毛羽立ち現象の有無にて異常の有無を表示する異常表示としている。つまり、使用者に対して、毛羽立ち減少が見られたら寿命なので使用停止、を警告することができる。無論、それ以前の使用期限設定を妨げるものではない。
【0069】
もう一つの弱点部は、環状編組線7の接続部7aである。静荷重状態ではあるが目視困難な状態では不安が残る。編組線カバー8を透明材料にすれば良いが、制約条件により困難である。それらの解決策としては、接続部7aを結び目として、カバー把手部8aの外側に引き出す構造にすることを提案する。
【0070】
図示は省略するが、接続部7aから所要の長さに延長した編組線の両端を揃えて、カバー把手部8aの中央部分の外壁の一部を切り欠いて外側に引き出して結び目を設けることで完了する。切り欠きは編組線二本が通る最小寸法として掛止箇所とする。
【0071】
この構造は、二箇所の弱点部分を常時目視可能とするので、損傷に対する冗長度が高くなって安全性と信頼性が向上すると共に、既存取っ手3への対応性も向上する。
【符号の説明】
【0072】
1 暖房器具本体
1a タンク装着穴
2 カートリッジタンク
2a 給油口 2b タンク上面 2c 取っ手基板
2d 取っ手装着部 2e タンク本体 2f 接合端部
2g 保護用突起
3 取っ手
3a 把手部 3b 吊下部 3c 引掛部
3d 屈曲部
4 基盤
5 増設取っ手
5a 増設把手部 5b 増設吊下部 5c 増設結合部
5d 増設屈曲部
6 追加取っ手
6a 追加把手部 6b 追加吊下部 6c 把手装着穴
6d 突起リブ 6e 掛止装置 6f 補強部材
6g 折曲部 6h 蝶番部
7 環状編組線
7a 接続部 7b 編組線折曲部
8 編組線カバー
8a カバー把手部 8b 編組線収納溝 8c 摺動用切欠
8d 突起装着穴
9 把手クリップ
9a 掛止爪
10 突起ピン
11 蝶番シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12