(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117050
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】積層型キャパシタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
H01G4/30 512
H01G4/30 515
H01G4/30 517
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121548
(22)【出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】10-2023-0020671
(32)【優先日】2023-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャ、ユン ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】イン、エウンジ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ユラ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】誘電体結晶粒のコア-シェル分率を制御して積層型キャパシタの誘電率、耐電圧特性、DC電圧印加時の誘電率、温度安定性等の性能を改善する積層型キャパシタおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】積層型キャパシタ100は、誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディ110と、キャパシタボディ110の外側に配置される外部電極(第1外部電極131、第2外部電極132)と、を含み、誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、複数の誘電体結晶粒の少なくとも1つ以上は、コア-シェル構造を有し、コア-シェル構造の誘電体結晶粒中における、結晶粒の直径に対するコアの直径の比率は、60%~80%である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディと、
前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極とを含み、
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒の少なくとも1つ以上は、コア-シェル構造を有し、
コア-シェル構造の誘電体結晶粒中における、結晶粒の直径に対するコアの直径の比率は、60%~80%である、積層型キャパシタ。
【請求項2】
前記結晶粒の直径に対するコアの直径の比率は、60%~76%である、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項3】
前記結晶粒の直径に対するコアの直径の比率は、70%~80%である、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項4】
前記結晶粒の直径に対するコアの直径の比率は、74.5%~80%である、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項5】
前記コア-シェル構造の誘電体結晶粒中において、結晶粒の直径は、300nm~500nmであり、前記コアの直径は、200nm~400nmである、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項6】
シェルの平均厚さの標準偏差は、コア-シェル構造の誘電体結晶粒の直径対比10%以下である、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項7】
前記誘電体結晶粒は、主成分として、チタン酸バリウム系化合物を含み、
副成分として、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項8】
前記コア-シェル構造の誘電体結晶粒において、
前記シェルは、前記主成分100モル対比、前記副成分を0.1モル超過30.0モル以下で含み、
前記コアは、前記主成分100モル対比、前記副成分を0.1モル以下で含む、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項9】
前記主成分は、BaTiO3、Ba(Ti、Zr)O3、Ba(Ti、Sn)O3、(Ba、Ca)TiO3、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O3、(Ba、Ca)(Ti、Sn)O3、(Ba、Sr)TiO3、(Ba、Sr)(Ti、Zr)O3、(Ba、Sr)(Ti、Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項10】
前記主成分は、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-XCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10)、(Ba1-XCax)m(Ti1-ySny)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項11】
前記副成分は、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項12】
前記誘電体結晶粒は、前記主成分100モル部に対して、前記副成分として、Dy2O3 0.1モル部~1.0モル部、Tb2O3 0.1モル部~1.0モル部、MnO2 0モル部~0.2モル部、V2O5 0モル部~0.15モル部、BaCO3 1.5モル部~3.3モル部、SiO2 0.5モル部~4.0モル部、Al2O3 0.4モル部~0.6モル部、およびCaCO3 0モル部~0.8モル部を含む、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項13】
前記誘電体層の平均厚さは、0.2μm~10μmである、請求項1から12のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項14】
セラミック粉末および液状の金属酸化物添加剤を混合して、コア-シェル構造の誘電体結晶粒を含む誘電体ペーストを製造する段階と、
前記誘電体ペーストを用いて誘電体グリーンシートを製造する段階と、
前記誘電体グリーンシートの表面に導電性ペースト層を形成する段階と、
前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階と、
前記誘電体グリーンシート積層体を焼成してキャパシタボディを製造する段階と、
前記キャパシタボディの一面に外部電極を形成する段階とを含む、積層型キャパシタの製造方法であって、
前記誘電体ペーストを製造する段階において、前記液状の金属酸化物添加剤は、前記セラミック粉末100モル部に対して0.05モル部~4.5モル部添加されるものである、積層型キャパシタの製造方法。
【請求項15】
前記コア-シェル構造の誘電体結晶粒の直径に対する前記コアの直径の比率は、60%~80%である、請求項14に記載の積層型キャパシタの製造方法。
【請求項16】
前記液状の金属酸化物添加剤は、酸性溶媒およびイオン性金属酸化物を含むものである、請求項14に記載の積層型キャパシタの製造方法。
【請求項17】
前記液状の金属酸化物添加剤は、酸性溶媒、イオン性金属酸化物、およびイオン性界面活性剤を含むものである、請求項14に記載の積層型キャパシタの製造方法。
【請求項18】
前記セラミック粉末は、チタン酸バリウムを含み、
前記金属酸化物は、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、またはこれらの組み合わせを含むものである、請求項14に記載の積層型キャパシタの製造方法。
【請求項19】
前記セラミック粉末は、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-XCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10)、(Ba1-XCax)m(Ti1-ySny)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の積層型キャパシタの製造方法。
【請求項20】
前記金属酸化物は、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項18または19のいずれか一項に記載の積層型キャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
積層型キャパシタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車用電気装置部品に対する開発が速い速度で進められている。電気装置部品の一つである積層型キャパシタ(Multi-Layered Ceramic Capacitor;MLCC)は、小型でかつ高容量が可能というメリットがあり、多様な電子製品の部品として用いられている。
【0003】
積層型キャパシタの性能は、誘電率、耐電圧特性、温度特性、信頼性などによって決定される。積層型キャパシタの誘電体層は、セラミックパウダーに様々な種類の添加剤を一定量追加して製造されるが、チタン酸バリウムをベースとする誘電体層では、誘電体結晶粒の大きさ、コアの大きさ、シェルの濃度など微細構造を制御したり、酸素欠陥などの欠陥挙動を制御することによって、積層型セラミックキャパシタの性能を向上させることができる。
【0004】
微細構造の制御に関連して、誘電体結晶粒の粒度の大きさを増加させると、誘電率は増加するが、誘電体層内の粒子比率の減少とシェルの比率の増加により耐電圧特性と高温特性が低下する問題がある。これを解決するために、必然的に粒度の大きさを減少させなければならず、これによって発生する誘電率低下の副作用を緩和するために、粒度の大きさは低減しかつコアの大きさは一定水準を維持する方向への研究が必要である。
【0005】
欠陥挙動制御のためには、適切な比率のドナーおよびアクセプタのドーピングが必要である。チタン酸バリウム系セラミックを基準として、ドナーとしては希土類物質が主に使用される。希土類のドーピングは、チタン酸バリウム系セラミック特性の変化に非常に大きな影響を及ぼし、耐電圧改善、DC電圧印加時の誘電率改善および温度安定性改善などの多様な効果をもたらす。したがって、誘電体層内のコア/シェル比率および濃度調節技術が積層型セラミックキャパシタの性能向上に重要であるといえる。
【0006】
従来は、誘電体層の誘電率を高める方策としてコア-シェル構造の誘電体結晶粒におけるコアの分率を高めるために、粒度の大きさが大きい母材を用いる方法が提案されたり、焼成時間が長くなるにつれて粒度の大きさは大きくなり、それによるコアの分率は減少するなどの研究が進められている。しかし、MLCCが次第に小型化、薄層化されながら誘電体結晶粒も小さくなる方向に開発されているため、大きい母材を用いたり焼成時間を調節することには限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
誘電体結晶粒のコア-シェル分率を制御して積層型キャパシタの誘電率、耐電圧特性、DC電圧印加時の誘電率、温度安定性などの性能を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面による積層型キャパシタは、誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディと、前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極とを含み、前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、前記複数の誘電体結晶粒の少なくとも1つ以上は、コア-シェル構造を有し、コア-シェル構造の誘電体結晶粒中における、結晶粒の直径に対する前記コアの直径の比率は、60%~80%である。
【0009】
前記結晶粒の直径に対するコアの直径の比率は、60%~76%、または70%~80%、または74.5%~80%であってもよい。
【0010】
前記コア-シェル構造の誘電体結晶粒の直径は、300nm~500nmであり、前記コアの直径は、200nm~400nmであってもよい。
【0011】
前記シェルの平均厚さの標準偏差は、前記コア-シェル構造の誘電体結晶粒の直径対比10%以下であってもよい。
【0012】
前記誘電体結晶粒は、主成分として、チタン酸バリウム系化合物を含み、副成分として、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0013】
前記コア-シェル構造の誘電体結晶粒において、前記シェルは、前記主成分100モル対比、前記副成分を0.1モル超過30.0モル以下で含み、前記コアは、前記主成分100モル対比、前記副成分を0.1モル以下で含むことができる。
【0014】
一例として、前記主成分は、BaTiO3、Ba(Ti、Zr)O3、Ba(Ti、Sn)O3、(Ba、Ca)TiO3、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O3、(Ba、Ca)(Ti、Sn)O3、(Ba、Sr)TiO3、(Ba、Sr)(Ti、Zr)O3、(Ba、Sr)(Ti、Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含むことができる。具体的には、前記主成分は、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-XCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10)、(Ba1-XCax)m(Ti1-ySny)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0015】
前記副成分は、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0016】
前記誘電体結晶粒は、一例として、前記主成分100モル部に対して、前記副成分として、Dy2O3 0.1モル部~1.0モル部、Tb2O3 0.1モル部~1.0モル部、MnO2 0モル部~0.2モル部、V2O5 0モル部~0.15モル部、BaCO3 1.5モル部~3.3モル部、SiO2 0.5モル部~4.0モル部、Al2O3 0.4モル部~0.6モル部、およびCaCO3 0モル部~0.8モル部を含むことができる。
【0017】
前記誘電体層の平均厚さは、0.2μm~10μmであってもよい。
【0018】
一側面による積層型キャパシタの製造方法は、セラミック粉末および液状の金属酸化物添加剤を混合して、コア-シェル構造の誘電体結晶粒を含む誘電体ペーストを製造する段階と、前記誘電体ペーストを用いて誘電体グリーンシートを製造する段階と、前記誘電体グリーンシートの表面に導電性ペースト層を形成する段階と、前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階と、前記誘電体グリーンシート積層体を焼成してキャパシタボディを製造する段階と、前記キャパシタボディの一面に外部電極を形成する段階とを含む。この時、前記誘電体ペーストを製造する段階において、前記液状の金属酸化物添加剤は、前記セラミック粉末100モル部に対して0.05モル部~4.5モル部添加される。
【0019】
前記液状の金属酸化物添加剤は、酸性溶媒およびイオン性金属酸化物、そして選択的に、イオン性界面活性剤を含むことができる。
【0020】
前記セラミック粉末は、チタン酸バリウムを含み、前記金属酸化物は、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
積層型キャパシタの誘電率、耐電圧特性、DC電圧印加時の誘電率、温度安定性などの性能が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態による積層型キャパシタを示す斜視図である。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った積層型キャパシタの断面図である。
【
図3】
図1のキャパシタボディにおける内部電極層の積層構造を示す分離斜視図である。
【
図4】コア-シェル構造の誘電体結晶粒に関する図で、結晶粒の直径(D
grain)とコアの直径(D
core)を示す図である。
【
図5】左から右へと比較例1、実施例2および実施例3のコア-シェル誘電体結晶粒に対する走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)イメージで、上段は結晶粒の周縁を表したものであり、下段はコア部分を表したものである。
【
図6】液状の金属酸化物添加剤の含有量によるコア分率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例を詳細に説明する。図面において、本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付した。また、添付した図面は本明細書に開示された実施例を容易に理解できるようにするためのものに過ぎず、添付した図面によって本明細書に開示された技術的思想が制限されず、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むことが理解されなければならない。
【0024】
第1、第2などのような序数を含む用語は多様な構成要素を説明するのに使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0025】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」または「接続されて」いると言及された時には、その他の構成要素に直接的に連結されていたり、接続されていたり、または対向していてもよいが、中間に他の構成要素が存在してもよいと理解されなければならない。これに対し、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」または「直接接続されて」いると言及された時には、中間に他の構成要素が存在しないと理解されなければならない。
【0026】
明細書全体において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないと理解されなければならない。したがって、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0027】
図1は、一実施形態による積層型キャパシタ100を示す斜視図であり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った積層型キャパシタ100の断面図であり、
図3は、
図1のキャパシタボディ110における内部電極層の積層構造を示す分離斜視図である。
【0028】
本実施例を明確に説明するために方向を定義すれば、図面に表示されたL軸、W軸およびT軸は、それぞれキャパシタボディ110の長手方向、幅方向および厚さ方向を示す。ここで、厚さ方向(T軸方向)は、シート形状の構成要素の広い面(主面)に垂直な方向であってもよく、一例として、誘電体層111が積層される積層方向と同じ概念で使用できる。長手方向(L軸方向)は、シート形状の構成要素の広い面(主面)に並んで延びる方向に厚さ方向(T軸方向)と略垂直な方向になり、一例として、両側に第1外部電極131および第2外部電極132が位置する方向であってもよい。幅方向(W軸方向)は、シート形状の構成要素の広い面(主面)に並んで延びる方向に厚さ方向(T軸方向)および長手方向(L軸方向)と略垂直な方向であってもよく、シート形状の構成要素の長手方向(L軸方向)の長さは、幅方向(W軸方向)の長さよりも長い。
【0029】
図1~
図3を参照すれば、本実施形態による積層型キャパシタ100は、キャパシタボディ110と、キャパシタボディ110の長手方向(L軸方向)に対向する両端に配置される第1外部電極131および第2外部電極132とを含むことができる。
【0030】
キャパシタボディ110は、一例として、略六面体形状であってもよい。
【0031】
本実施例では、説明の便宜のために、キャパシタボディ110において厚さ方向(T軸方向)に互いに対向する両面を第1面および第2面、第1面および第2面に連結され長手方向(L軸方向)に互いに対向する両面を第3面および第4面、第1面および第2面に連結され第3面および第4面に連結され幅方向(W軸方向)に互いに対向する両面を第5面および第6面と定義する。
【0032】
一例として、下面である第1面が実装方向を向く面になる。また、第1面~第6面は、平らであってもよいが、本実施形態がこれに限定されるものではなく、例えば、第1面~第6面は、中央部が凸の曲面であってもよく、各面の境界である角は、ラウンド(round)になっていてもよい。
【0033】
キャパシタボディ110の形状、寸法および誘電体層111の積層数が本実施例の図面に示されたものに限定されるものではない。
【0034】
キャパシタボディ110は、複数の誘電体層111を厚さ方向(T軸方向)に積層してから焼成したものであって、複数の誘電体層111と、誘電体層111を挟んで厚さ方向(T軸方向)に交互に配置される第1内部電極121および第2内部電極122とを含む。
【0035】
この時、キャパシタボディ110の互いに隣接するそれぞれの誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認できないほど一体化される。
【0036】
また、キャパシタボディ110は、アクティブ領域と、カバー領域112、113とを含むことができる。
【0037】
アクティブ領域は、積層型キャパシタ100の容量形成に寄与する部分である。一例として、アクティブ領域は、厚さ方向(T軸方向)に沿って積層される第1内部電極層121または第2内部電極層122がオーバーラップ(overlap)された領域であってもよい。
【0038】
カバー領域112、113は、厚さ方向のマージン部であって、厚さ方向(T軸方向)にアクティブ領域の第1面および第2面側にそれぞれ位置することができる。このようなカバー領域112、113は、単一誘電体層111または2つ以上の誘電体層111がアクティブ領域の上面および下面にそれぞれ積層されたものであってもよい。
【0039】
また、キャパシタボディ110は、側面カバー領域をさらに含むことができる。側面カバー領域は、幅方向のマージン部であって、幅方向(W軸方向)にアクティブ領域の第5面および第6面側にそれぞれ位置することができる。このような側面カバー領域は、誘電体グリーンシートの表面に内部電極層形成用導電性ペースト層を塗布する時、誘電体グリーンシート表面の一部領域にのみ導電性ペースト層を塗布し、誘電体グリーンシート表面の両側側面には導電性ペースト層を塗布しない誘電体グリーンシートを積層した後、焼成することによって形成される。
【0040】
カバー領域112、113と側面カバー領域は、物理的または化学的ストレスによる第1内部電極層121および第2内部電極層122の損傷を防止する役割を果たす。
【0041】
以下、誘電体層111を詳しく説明する。
【0042】
誘電体層111は、複数の誘電体結晶粒1111を含む。誘電体結晶粒1111は、主成分と、副成分とを含む。
【0043】
主成分は、チタン酸バリウム系化合物を含む誘電材料であってもよい。具体的には、主成分は、BaTiO3、Ba(Ti、Zr)O3、Ba(Ti、Sn)O3、(Ba、Ca)TiO3、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O3、(Ba、Ca)(Ti、Sn)O3、(Ba、Sr)TiO3、(Ba、Sr)(Ti、Zr)O3、(Ba、Sr)(Ti、Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含む誘電材料であってもよい。例えば、主成分は、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-XCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)、(Ba1-XCax)m(Ti1-ySny)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0044】
副成分は、ハフニウム(Hf)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。また、副成分は、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0045】
例えば、副成分は、主成分100モル部に対して、Dy2O3 0.1モル部~1.0モル部、Tb2O3 0.1モル部~1.0モル部、MnO2 0モル部~0.2モル部、V2O5 0モル部~0.15モル部、BaCO3 1.5モル部~3.3モル部、SiO2 0.5モル部~4.0モル部、Al2O3 0.4モル部~0.6モル部、およびCaCO3 0モル部~0.8モル部を含むことができる。
【0046】
複数の誘電体結晶粒1111の少なくとも1つ以上は、コア-シェル(core-shell)構造を有する。コア-シェル構造の誘電体結晶粒を
図4に示した。
図4を参照すれば、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒1111は、1個の誘電体結晶粒1111内に、誘電体コア1111aと、コア1111aの少なくとも一部を囲むシェル1111bとを含む。
【0047】
コア1111aとシェル1111bは、主成分に対する副成分のモル比率が互いに異なり、例えば、コア1111aとシェル1111bとの境界において主成分に対する副成分のモル比率が急激に変化できる。これによって、コア1111aとシェル1111bとの境界を容易に区分することができ、透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析(TEM-EDX)によりこれを確認可能である。
【0048】
一例として、キャパシタボディ110のW軸方向の中央からL軸方向およびT軸方向に切断した断面において、アクティブ領域の中央に位置した誘電体層111の誘電体結晶粒1111を透過電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)に設けられたEDS(Energy Disperse X-Ray Spectrometer)を用いてライン(line)分析時、誘電体結晶粒1111のコア1111aの中心から誘電体結晶粒1111のいずれか一方の結晶粒界方向に、副成分の全体含有量が急激に増加し始める部分をコア1111aとシェル1111bとの境界として、コア1111aとシェル1111bとを区分することができる。
【0049】
ここで、コア1111aの中心は、コア1111aの最大長軸と、これに直交する短軸のうち最大短軸との出会う点に決定することができる。また、EDS(Energy Disperse X-Ray Spectrometer)のライン(line)分析は、誘電体結晶粒1111のコア1111aの中心を通る最大長軸に沿って進行させることができる。あるいは、透過電子顕微鏡イメージを二進化するなどの方法により、明暗差がある部分を区分してシェル(S)と結晶粒界(GB)との境界を定義することもできる。
【0050】
一例として、コア1111aは、主成分100モル部対比、副成分全体を0.1モル部以下で含み、シェル1111bは、主成分100モル部対比、副成分全体を0.1モル部超過30.0モル部以下、または0.1モル超過20.0モル以下で含むことができる。コア1111aが主成分100モル部対比の副成分を0.1モル部超過で含む場合、純粋な誘電体材料(例、BaTiO3)の材料的特性が異なり、シェル1111bが主成分100モル部対比の副成分を0.1モル部以下で含む場合、温度による誘電率の変化幅が大きくなり、30.0モル部超過で含む場合、初期絶縁抵抗が低くなる。一実施例において、シェル1111bは、主成分100モル部対比、副成分全体を0.1モル部超過4.5モル部以下で含むことができる。
【0051】
つまり、コア1111aには副成分が存在しなかったり、存在しても微量のみが存在できる。したがって、コア1111aは、不純物を含まず純粋な主成分のみからなり、純粋な主成分は、一般に不純物元素がドーピングされた主成分に比べて高い誘電率を有することができる。これによって、コア1111aは、誘電率を維持する役割を果たすことができる。
【0052】
シェル1111bは、副成分をコア1111aより多く含む。シェル1111bにおける主成分(ペロブスカイトABO3構造)のB-siteにドーピングされた副成分は、他の希土類およびドーピング元素が誘電体結晶粒1111の内部に拡散するバンドギャップエネルギー(Band gap energy)を高める効果がある。これによって、他の希土類およびドーピング元素が誘電体結晶粒1111の内部に拡散することを抑制するバリア(barrier)の役割を果たすことができる。シェル1111bは、誘電体結晶粒1111が成長することを抑制する役割を果たして誘電体結晶粒1111の細粒化に寄与できる。また、シェル1111bにおける主成分のA-siteにドーピングされた副成分は、信頼性および誘電率を向上させる役割を果たすことができる。
【0053】
本実施形態では、コア-シェル構造の誘電体結晶粒の直径に対する前記コアの直径の比率が60%~80%であることを特徴とする。
図4を参照すれば、誘電体結晶粒の直径をD
grainとし、コアの直径をD
coreとすれば、前記比率は(D
core/D
grain×100)の計算式により計算されたもので、コア分率、あるいはコアの長さ分率などで表現することができる。
【0054】
コア-シェル構造の誘電体結晶粒の直径とコアの直径は、誘電体層に対する走査電子顕微鏡写真で任意に約50余個の結晶粒を選択して、その直径とコアの直径を測定し、算術平均を計算して得られた値であってもよい。例えば、MLCC本焼成チップの断面を露出し、アクティブ領域の中央部(Active center)の3つの層をSEMで撮影し、70K倍率のイメージにおいて結晶粒とその内部のコアの直径をそれぞれ50個ずつ測定し、算術平均を計算する。SEM分析時、加速電圧2.0kV、WD3.2mmに設定することができる。直径は、長軸の長さ(Max Feret diameter)と短軸の長さ(Orthogonal Feret diameter)の平均で計算することができる。誘電体結晶粒の直径とコアの直径などは、平均直径で表現してもよい。
【0055】
本実施形態では、誘電体結晶粒の製造時、酸化物添加剤ではない液状の金属酸化物添加剤を使用する工法を用いることによって、添加された元素が凝集体を形成せずコアの周囲に均一に分布するように誘導しながら、液状の金属酸化物添加剤の組成を同一に維持し、含有量だけを変化させた後に焼結する方法により最適なコア分率を導出した。原料の組成を同一に維持し、焼成温度などの条件も同一に維持しながら、一種の副成分またはドーパントの役割を果たす液状の金属酸化物添加剤の含有量を一定比率減少させる場合、誘電体結晶粒内におけるコアの長さ分率を画期的に増加させることができる。
【0056】
本実施形態において前述したコア分率は、60%~80%で、例えば、60%~76%であってもよく、または70%~80%であってもよいし、または74.5%~80%であってもよい。コアの分率、つまり、誘電体結晶粒の直径に対するコアの直径の比率が前記範囲を満足する場合、積層型キャパシタの耐電圧特性と誘電率、DC特性、温度安定性などの全般的な性能が改善できる。
【0057】
コア-シェル構造の誘電体結晶粒の直径は、100nm~1,000nmであってもよく、具体的には300nm~500nm、または340nm~440nmであってもよい。また、コア1111aの直径は、50nm~500nmであってもよく、具体的には200nm~400nm、または240nm~340nmであってもよい。この場合、積層型キャパシタの容量特性と信頼性が向上できる。
【0058】
本実施形態によるコア-シェル構造の誘電体結晶粒は、液状の金属酸化物添加剤を用いて製造されることによって、シェル1111bの厚さが一定という、つまり、シェルの厚さの偏差が小さいという特徴がある。例えば、シェル1111bの平均厚さの標準偏差は、前記コア-シェル構造の誘電体結晶粒の直径対比10%以下、または5%以下であってもよい。この場合、積層型キャパシタの耐電圧特性などが大きく改善できる。
【0059】
一例として、誘電体層111の平均厚さは、0.2μm~10μm、または0.4μm~1μmであってもよい。
【0060】
一方、第1内部電極121と第2内部電極122は、互いに異なる極性を有する電極であって、誘電体層111を挟んでT軸方向に沿って互いに対向して交互に配置され、一端がキャパシタボディ110の第3および第4面を介してそれぞれ露出できる。
【0061】
第1内部電極121と第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁される。
【0062】
キャパシタボディ110の第3および第4面を介して交互に露出する第1内部電極121および第2内部電極122の端部は、第1外部電極131および第2外部電極132とそれぞれ接続されて電気的に連結可能である。
【0063】
第1内部電極層121および第2内部電極層122は、導電性金属を含み、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、またはAuなどの金属やこれらの合金、例えば、Ag-Pd合金を含むことができる。
【0064】
また、第1内部電極層121および第2内部電極層122は、誘電体層111に含まれるセラミック材料と同一組成系の誘電体粒子を含むこともできる。
【0065】
第1内部電極層121および第2内部電極層122は、導電性金属を含む導電性ペーストを用いて形成される。導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができる。
【0066】
一例として、第1内部電極層121および第2内部電極層122の平均厚さは、0.1μm~2μmであってもよい。
【0067】
第1外部電極131および第2外部電極132は、互いに異なる極性の電圧が提供され、第1内部電極121および第2内部電極122の露出する部分とそれぞれ接続されて電気的に連結可能である。
【0068】
このような構成により、第1外部電極131および第2外部電極132に所定の電圧を印加すると、互いに対向する第1内部電極121および第2内部電極122の間に電荷が蓄積される。この時、積層型キャパシタ100の静電容量は、アクティブ領域においてT軸方向に沿って互いに重なる第1内部電極121および第2内部電極122のオーバーラップされた面積と比例する。
【0069】
第1外部電極131および第2外部電極132は、キャパシタボディ110の第3および第4面にそれぞれ配置されて第1内部電極121および第2内部電極122に接続される第1および第2接続部と、キャパシタボディ110の第3および第4面と、第1および第2面または第5および第6面との出会う角に配置される第1および第2バンド部とをそれぞれ含むことができる。
【0070】
第1および第2バンド部は、第1および第2接続部においてキャパシタボディ110の第1および第2面または第5および第6面の一部までそれぞれ延びることができる。第1および第2バンド部は、第1外部電極131および第2外部電極132の固着強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0071】
一例として、第1外部電極131および第2外部電極132は、それぞれキャパシタボディ110と接触する焼結金属層と、焼結金属層を覆うように配置される伝導性樹脂層と、伝導性樹脂層を覆うように配置されるメッキ層とを含むことができる。
【0072】
焼結金属層は、導電性金属およびガラスを含むことができる。
【0073】
一例として、焼結金属層は、導電性金属として、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、これらの合金、またはこれらの組み合わせを含むことができ、例えば、銅(Cu)は、銅(Cu)合金を含むことができる。導電性金属が銅を含む場合、銅以外の金属は、銅100モル部に対して5モル部以下で含まれる。
【0074】
一例として、焼結金属層は、ガラスとして、酸化物が混合された組成を含むことができ、例えば、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、遷移金属酸化物、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択された1つ以上であってもよい。遷移金属は、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)およびニッケル(Ni)からなる群より選択され、アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)からなる群より選択され、アルカリ土類金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)からなる群より選択された1つ以上であってもよい。
【0075】
焼結金属層において導電性金属とガラスの含有量は特に限定されないが、例えば、積層型キャパシタ100の厚さ方向(W軸方向)に垂直な断面(L軸方向およびT軸方向の断面)において導電性金属の平均面積は、焼結金属層の全体面積対比30%~90%、または70%~90%であってもよい。
【0076】
選択的に、伝導性樹脂層は、焼結金属層上に形成され、例えば、焼結金属層を完全に覆う形態で形成される。一方、第1外部電極131および第2外部電極132は、焼結金属層を含まなくてもよいし、この場合、伝導性樹脂層がキャパシタボディ110と直接接触できる。
【0077】
伝導性樹脂層は、キャパシタボディ110の第1および第2面または第5および第6面に延び、伝導性樹脂層がキャパシタボディ110の第1および第2面または第5および第6面に延びて配置された領域(つまり、バンド部)の長さは、焼結金属層がキャパシタボディ110の第1面および第2面または第5および第6面に延びて配置された領域(つまり、バンド部)の長さより長い。つまり、伝導性樹脂層は、焼結金属層上に形成され、焼結金属層を完全に覆う形態で形成される。
【0078】
伝導性樹脂層は、樹脂および導電性金属を含む。
【0079】
伝導性樹脂層に含まれる樹脂は、接合性および衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作れるものであれば特に制限されず、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、またはポリイミド樹脂を含むことができる。
【0080】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、第1内部電極121および第2内部電極122または焼結金属層と電気的に連結されるようにする役割を果たす。
【0081】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、球状、フレーク状、またはこれらの組み合わせの形態を有することができる。つまり、導電性金属は、フレーク状のみからなるか、球状のみからなってもよく、フレーク状と球状とが混合された形態であってもよい。
【0082】
ここで、球状は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粉末は、平らでかつ細長い形態を有する粉末を意味し、特に制限されるわけではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。
【0083】
第1外部電極131および第2外部電極132は、伝導性樹脂層の外側に配置されるメッキ層をさらに含むことができる。
【0084】
メッキ層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、チタン(Ti)または鉛(Pb)などの単独、またはこれらの合金を含むことができる。一例として、メッキ層は、ニッケル(Ni)メッキ層またはスズ(Sn)メッキ層であってもよく、ニッケル(Ni)メッキ層およびスズ(Sn)メッキ層が順次に積層された形態であってもよく、スズ(Sn)メッキ層、ニッケル(Ni)メッキ層およびスズ(Sn)メッキ層が順次に積層された形態であってもよい。また、メッキ層は、複数のニッケル(Ni)メッキ層および/または複数のスズ(Sn)メッキ層を含むこともできる。
【0085】
メッキ層は、積層型キャパシタ100の基板との実装性、構造的信頼性、外部に対する耐久度、耐熱性および等価直列抵抗値(Equivalent Series Resistance、ESR)を改善することができる。
【0086】
一側面による積層型キャパシタの製造方法は、セラミック粉末および液状の金属酸化物添加剤を混合して、コア-シェル構造の誘電体結晶粒を含む誘電体ペーストを製造する段階と、前記誘電体ペーストを用いて誘電体グリーンシートを製造する段階と、前記誘電体グリーンシートの表面に導電性ペースト層を形成する段階と、前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階と、前記誘電体グリーンシート積層体を焼成してキャパシタボディを製造する段階と、前記キャパシタボディの一面に外部電極を形成する段階とを含む。この時、前記誘電体ペーストを製造する段階において、前記液状の金属酸化物添加剤は、前記セラミック粉末100モル部に対して0.05モル部~4.5モル部添加される。
【0087】
ここで、セラミック粉末は、チタン酸バリウム系化合物を含むことができ、具体的には、BaTiO3、Ba(Ti、Zr)O3、Ba(Ti、Sn)O3、(Ba、Ca)TiO3、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O3、(Ba、Ca)(Ti、Sn)O3、(Ba、Sr)TiO3、(Ba、Sr)(Ti、Zr)O3、(Ba、Sr)(Ti、Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含むものであってもよい。例えば、セラミック粉末は、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-XCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)、(Ba1-XCax)m(Ti1-ySny)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0088】
液状の金属酸化物添加剤は、一種の副成分原料あるいはドーパント原料といえる。液状の金属酸化物添加剤は、酸性を呈する溶媒に金属酸化物粉末を添加して製造され、これによって、添加剤内で金属酸化物がイオン化された状態で存在できる。つまり、液状の金属酸化物添加剤は、酸性溶媒とイオン性金属酸化物とを含むことができ、金属酸化物の有機塩を含んでもよい。金属酸化物の有機塩の場合、イオン性金属酸化物とイオン性界面活性剤とのイオン反応の結果物といえる。前記酸性溶媒は、例えば、塩酸、硝酸、シュウ酸、過酸化水素、またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されない。金属酸化物は、金属元素として、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、またはこれらの組み合わせを含むことができ、追加的に、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0089】
例えば、金属酸化物は、セラミック粉末100モル部に対して、Dy2O3 0.1モル部~1.0モル部、Tb2O3 0.1モル部~1.0モル部、MnO2 0モル部~0.2モル部、V2O5 0モル部~0.15モル部、BaCO3 1.5モル部~3.3モル部、SiO2 0.5モル部~4.0モル部、Al2O3 0.4モル部~0.6モル部、およびCaCO3 0モル部~0.8モル部を含むことができる。
【0090】
粒子状の酸化物添加剤を用いる従来技術の場合には、添加剤の分散性が低下し、添加剤が凝集しながらシェルの厚さの均一性が低下して、意図するキャパシタの特性を実現しにくい。これに対し、本実施形態により液状の金属酸化物添加剤を使用する場合、従来用いていた分散剤を別に使用しなくても分散性を向上させることができ、添加された元素が凝集体を形成せずコア周囲に均一に分布してシェルの厚さが一定になって優れた品質の誘電体結晶粒を製造することができ、これによって積層型キャパシタの耐電圧性などの全般的な性能を改善することができる。
【0091】
本実施形態では、添加剤の組成を同一に維持しながら含有量を変化させて焼結することによって、誘電体結晶粒内のコアおよびシェルの分率を調節する。添加剤の含有量によりシェルの厚さを均一に調節するためには、添加された元素が凝集体を形成せずコア周囲に均一に分布しなければならないので、液状の金属酸化物添加剤を使用しなければならない。
【0092】
誘電体結晶粒は、コア-シェル構造を有し、コアとシェルの比率により誘電率と耐電圧、DC特性、温度による誘電特性(TCC;temperature coefficient of capacitance)が大きく変化するので、適切なコアとシェルの比率を実現することが重要である。本実施形態では、液状の金属酸化物添加剤において各元素を同一の比率に維持し、含有量だけを減少させ、また、同一の焼成条件を維持することによってシェルの比率を減少させ、コアの相対的な比率を増加させるのに成功した。例えば、同一組成の液状の金属酸化物添加剤の含有量を100%から62.5%に減少させた場合、コアの分率は55%から76%まで増加することができ、このような方法でコアの分率が60%~80%の範囲となるように制御することができる。例えば、液状の金属酸化物添加剤の含有量を約90%以下、例えば、80%以下、あるいは70%以下、あるいは60%~90%水準に減少させることによって、コアの分率を増加させることができ、この時、結晶粒の直径に対するコアの直径の比率であるコアの分率は、約60%~80%水準に制御され、この場合、積層型キャパシタの誘電率、耐電圧特性、DC特性、TCC特性がすべて向上できる。
【0093】
例えば、前記誘電体ペーストを製造する段階において、前記液状の金属酸化物添加剤は、前記セラミック粉末100モル部に対して0.05モル部~4.5モル部添加され、例えば、0.1モル部~4.0モル部、または1.0モル部~3.5モル部添加される。この場合に、コアの分率は、約60%~80%水準に制御され、これによって、積層型キャパシタの誘電率、耐電圧特性、DC特性、TCC特性が改善できる。
【0094】
セラミック粉末と液状の金属酸化物添加剤とを混合する時、選択的に、ソルベント、可塑剤、バインダーなどを共に混合することができる。そして、混合後、混合物をフィルタリングしたり、凝縮させたり、乾燥して誘電体ペーストを製造することができる。
【0095】
得られた誘電体用ペーストをドクターブレード法などの手法によってシート化することによって、誘電体グリーンシートを得る。また、誘電体用ペーストには、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、またはガラスなどから選択される添加物が含まれていてもよい。
【0096】
導電性ペーストは、焼成後に内部電極になる構成である。内部電極用導電性ペーストは、導電性金属またはその合金からなる導電性粉末とバインダーや溶剤を、混練して調製する。内部電極用導電性ペーストには、必要に応じて、共材としてセラミック粉末(例えば、チタン酸バリウム粉末)が含まれる。共材は、焼成過程で導電性粉末の焼結を抑制する作用が可能である。
【0097】
誘電体グリーンシートの表面に、スクリーン印刷などの各種印刷法や転写法によって、内部電極用導電性ペーストを所定のパターンに塗布する。そして、内部電極パターンを形成した誘電体グリーンシートを複数層にわたって積層した後、積層方向にプレスすることによって誘電体グリーンシート積層体を得る。この時、誘電体グリーンシート積層体の積層方向の上面および下面には、誘電体グリーンシートが位置するように、誘電体グリーンシートと内部電極パターンとを積層することができる。
【0098】
選択的に、得られた誘電体グリーンシート積層体をダイシングなどによって所定の寸法に切断することができる。
【0099】
また、誘電体グリーンシート積層体は、必要に応じて、可塑剤などを除去するために固化乾燥することができ、固化乾燥後に、水平遠心バレル機などを用いてバレル研磨することができる。バレル研磨では、誘電体グリーンシート積層体をメディアおよび研磨液と共に、バレル容器内に投入し、そのバレル容器に対して回転運動や振動などを付与することによって、切断時に発生したバリなどの不要部分を研磨することができる。また、バレル研磨後、誘電体グリーンシート積層体は、水などの洗浄液で洗浄して乾燥できる。
【0100】
誘電体グリーンシート積層体を脱バインダー処理および焼成処理してキャパシタボディを得る。
【0101】
脱バインダー処理の条件は、誘電体層の主成分の組成や内部電極の主成分の組成により適切に調節可能である。例えば、脱バインダー処理時の昇温速度は5℃/時間~300℃/時間、支持温度は180℃~400℃、温度維持時間は0.5時間~24時間であってもよい。脱バインダー雰囲気は、空気または還元性雰囲気であってもよい。
【0102】
焼成処理の条件は、誘電体層の主成分の組成や内部電極の主成分の組成により適切に調節可能である。例えば、焼成時の温度は、1000℃~1350℃、または1100℃~1300℃であってもよく、時間は、0.5時間~8時間、または1時間~3時間であってもよい。焼成雰囲気は、還元性雰囲気であってもよく、例えば、窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)との混合ガスを加湿した雰囲気であってもよい。内部電極がニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)合金を含む場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、1.0×10-14MPa~1.0×10-10MPaであってもよい。
【0103】
焼成処理後には、必要に応じてアニーリングを実施できる。アニーリングは、誘電体層を再酸化させるための処理であり、焼成処理を還元性雰囲気で実施した場合には、アニーリングを実施できる。アニーリング処理の条件も、誘電体層の主成分の組成などにより適切に調節可能である。例えば、アニーリング時の温度は、950℃~1150℃であってもよく、時間は、0時間~20時間であってもよく、昇温速度は、50℃/時間~500℃/時間であってもよい。アニーリング雰囲気は、加湿した窒素ガス(N2)雰囲気であってもよく、酸素分圧は、1.0×10-9MPa~1.0×10-5MPaであってもよい。
【0104】
脱バインダー処理、焼成処理、またはアニーリング処理において、窒素ガスや混合ガスなどを加湿するためには、例えば、ウェッター(wetter)などを使用することができ、この場合、水温は、5℃~75℃であってもよい。脱バインダー処理、焼成処理、およびアニーリング処理は、連続して行うことができ、独立して行ってもよい。
【0105】
選択的に、得られたキャパシタボディの第3および第4面に対して、サンドブラスティング処理、レーザ照射、またはバレル研磨などの表面処理を実施できる。このような表面処理を実施することによって、第3および第4面の最表面に第1内部電極および第2内部電極の端部が露出し、これによって、第1外部電極および第2外部電極と第1内部電極および第2内部電極の電気的接合が良好になり、合金部が形成されやすくなる。
【0106】
得られたキャパシタボディの外面に、外部電極として焼結金属層形成用ペーストを塗布した後、焼結させて、焼結金属層を形成することができる。
【0107】
焼結金属層形成用ペーストは、導電性金属とガラスとを含むことができる。導電性金属とガラスに関する説明は上述したものと同一であるので、繰り返しの説明は省略する。また、焼結金属層形成用ペーストは、選択的に、バインダー、溶剤、分散剤、可塑剤、または酸化物粉末などの副成分を含むことができる。例えば、バインダーは、エチルセルロース、アクリル、またはブチラール(butyral)などを使用することができ、溶剤は、テルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、またはトルエンなどの有機溶剤や、水系溶剤を使用することができる。
【0108】
焼結金属層形成用ペーストをキャパシタボディの外面に塗布する方法としては、ディップ法、またはスクリーン印刷などの各種印刷法、ディスペンサなどを用いた塗布法、またはスプレーを用いた噴霧法などを使用することができる。焼結金属層用ペーストは、少なくともキャパシタボディの第3および第4面に塗布され、選択的に、第1外部電極および第2外部電極のバンド部が形成される第1面、第2面、第5面、または第6面の一部にも塗布可能である。
【0109】
以後、焼結金属層形成用ペーストが塗布されたキャパシタボディを乾燥させ、700℃~1000℃の温度で0.1時間~3時間焼結させて焼結金属層を形成する。
【0110】
選択的に、得られたキャパシタボディの外面に、伝導性樹脂層形成用ペーストを塗布した後、硬化させて、伝導性樹脂層を形成することができる。
【0111】
伝導性樹脂層形成用ペーストは、樹脂と、選択的に、導電性金属または非導電性フィラーとを含むことができる。導電性金属と樹脂に関する説明は上述したものと同一であるので、繰り返しの説明は省略する。また、伝導性樹脂層形成用ペーストは、選択的に、バインダー、溶剤、分散剤、可塑剤、または酸化物粉末などの副成分を含むことができる。例えば、バインダーは、エチルセルロース、アクリル、またはブチラール(butyral)などを使用することができ、溶剤は、テルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、またはトルエンなどの有機溶剤や、水系溶剤を使用することができる。
【0112】
一例として、伝導性樹脂層の形成方法は、伝導性樹脂層形成用ペーストにキャパシタボディ110をディッピングして形成した後、硬化させたり、伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディ110の表面にスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などで印刷したり、伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディ110の表面に塗布した後、硬化させて形成することができる。
【0113】
次に、伝導性樹脂層の外側にメッキ層を形成する。一例として、メッキ層は、メッキ法によって形成され、スパッタまたは電解メッキ(Electric Deposition)によって形成されてもよい。
【0114】
以下、発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載の実施例は発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これによって発明の範囲が制限されてはならない。
【0115】
セラミック粉末としてBaTiO3粉末を用意する。セラミック粉末100重量部に対して、Dy2O3 0.1-1.0モル部、Tb2O3 0.1-1.0モル部、MnO2 0-0.2モル部、V2O5 0-0.15モル部、BaCO3 1.5-3.3モル部、SiO2 0.5-4.0モル部、Al2O3 0.4-0.6モル部、およびCaCO3 0-0.8モル部を用意して、これを蒸留水溶媒に投入し混合した後、フィルタリングし、乾燥して液状の金属酸化物添加剤を用意する。
【0116】
蒸留水ソルベントに、用意したセラミック粉末と液状の金属酸化物添加剤を混合し、機械的ミリングして誘電体ペーストを製造する。この時、液状の金属酸化物添加剤をセラミック粉末100モル部に対して計5モル部となるように投入する(比較例1)。比較例1に使用した液状の金属酸化物添加剤の含有量を100モル%基準とし、液状の金属酸化物添加剤の含有量をそれぞれ88.6モル%(実施例1)、75モル%(実施例2)、および62.5モル%(実施例3)に減少させてそれぞれの誘電体ペーストを製造する。この時、金属酸化物添加剤において各組成の比率は同一に維持する。
【0117】
製造された誘電体ペーストを使用し、ヘッド吐出方式のオン-ロール成形コーターを用いて誘電体グリーンシートを製造する。誘電体グリーンシートの表面にニッケル(Ni)を含む導電性ペースト層を印刷し、導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシート(横×縦×高さ=3.2mm×2.5mm×2.5mm)を積層および圧着して誘電体グリーンシート積層体を製造する。誘電体グリーンシート積層体を400℃以下、窒素雰囲気で可塑工程を経て、焼成温度1180℃、水素濃度1.0%以下の条件で焼成して積層型キャパシタを製造する。
【0118】
比較例1および実施例1~3で製造した積層型キャパシタにおいて幅方向に1/2程度の深さまで研磨してLT断面を露出した後、アクティブ領域の最中央(Active center)の3つの誘電体グリーンシート層を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影して誘電体結晶粒を分析する。SEMの加速電圧は2.0kV、WD3.2mmに設定する。
【0119】
図5は、比較例1、実施例2、実施例3の誘電体結晶粒に対する70K倍率のSEMイメージで、上段のイメージは結晶粒の境界を表したものであり、下段のイメージはコアを表したものである。
図5を参照すれば、SEMイメージにおいて結晶粒内部のコア部分が明確に区分されることが分かり、添加剤の含有量を減少させることによって、シェルの比率が減少し、コアの比率が増加することを確認できる。添加剤の含有量減少時、セラミック粉末の表面から内部に拡散する添加剤の元素が減少するため、シェルの比率が減少し、これによってコアの分率が増加することが理解される。従来のように、酸化物添加剤を使用する場合、添加剤の含有量を減少させると、添加剤の分散度がさらに低下して部分的に凝集し、これによって意図するキャパシタの特性を実現しにくい。これに対し、添加剤の均一性を高めた液状の添加剤を使用しながらその添加剤の含有量を減少させた結果、シェルの厚さを均一に制御しながら比率を減少させることができた。
【0120】
比較例1と実施例1~3の70K倍率のSEMイメージにおいて任意に50余個の誘電体結晶粒とコアの直径を測定して算術平均を導出し、その結果を下記表1および
図6に示した。直径は、長軸の長さ(Max Feret diameter)と短軸の長さ(Orthogonal Feret diameter)の平均で計算する。
【表1】
【0121】
表1と
図6を参照すれば、添加剤の含有量を62.5%まで減量した場合、コアの分率が55%から76%まで増加したことを確認できる。
【0122】
次に、比較例1および実施例1~3で製造した積層型キャパシタに対する誘電率とDC-bias特性を評価し、その結果を下記表2に示した。また、比較例1と実施例2の積層型キャパシタに対する温度別の誘電率の変化を測定し、その結果を下記表3に示した。
【表2】
【表3】
【0123】
表2と表3を参照すれば、コアの分率を増加させた実施例の場合、比較例に比べて誘電率が上昇し、DC電圧印加時の誘電率の減少比率が減少し、温度による誘電特性(TCC)が改善されることを確認できる。
【0124】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0125】
100:積層型キャパシタ
110:キャパシタボディ
111:誘電体層
1111:コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒
1111a:誘電体結晶粒のコア
1111b:誘電体結晶粒のシェル
112、113:カバー領域
121:第1内部電極
122:第2内部電極
131:第1外部電極
132:第2外部電極