(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117065
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体
(51)【国際特許分類】
A61K 41/00 20200101AFI20240821BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240821BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20240821BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240821BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A61K41/00
A61P35/00
A61K33/26
A61P19/02
A61K47/26
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009235
(22)【出願日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】10-2023-0020922
(32)【優先日】2023-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】518107501
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】145,Anam-ro,Seongbuk-gu,Seoul,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヒミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ウ-ヨン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB32
4C076CC27
4C076DD66
4C076FF68
4C084AA11
4C084MA67
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA11
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA67
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZA96
4C086ZB26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】癌治療、骨関節炎治療及び骨欠損治療に有効な、治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体を提供する。
【解決手段】鉄イオン、及び1種以上のリガンド、を含み、前記リガンドと鉄イオンが可逆的に自己集合又は自己分解され、前記リガンドと鉄イオンは、第1結合によって自己集合されて自己集合体を形成し、前記自己集合体は、前記金属イオン及びリガンドのいずれか一つ以上によって自己集合が行われ、前記自己集合体は複数個に備えられ、互いに隣接する自己集合体の間は第2結合によって自己結合されて備えられる、治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄イオン、及び
1種以上のリガンド、を含み、
前記リガンドと鉄イオンが可逆的に自己集合又は自己分解され、
前記リガンドと鉄イオンは第1結合によって自己集合されて自己集合体を形成し、
前記自己集合体は、前記金属イオン及びリガンドのいずれか一つ以上によって自己集合が行われ、
前記自己集合体は複数個に備えられ、互いに隣接する自己集合体の間は第2結合によって自己結合されて備えられる、治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項2】
前記第1結合は、配位結合を含み、
前記第2結合は、水素結合及びπ-π相互作用のいずれか一つ以上を含む、請求項1に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項3】
前記自己集合体又は互いに隣接する自己集合体の間は、生理学的条件(physiologically relevant condition)下で第1時間自己集合されるか、又は第2時間自己分解され、
前記第1時間は、1分~24時間であり、
前記第2時間は、1日~90日である、請求項1に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項4】
前記リガンドは、
リン酸塩及びホスホネートの少なくともいずれか一つを含む、請求項1に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項5】
前記リガンドは、
AMP、ADP、ATP、TMP、TDP、TTP、CMP、CDP、CTP、GMP、GDP、GTP、UMP、UDP、UTP、DNA、RNA、AEP(2-アミノエチルホスホン酸、2-aminoethylphosphonic acid)、TNA(Threose nucleic acid)、GNA(glycol nucleic acid)、HNA(1、5-anhydrohexitol nucleic acid)、ANA(1、5-anhydroatritol nucleic acid)、FANA(2’-deoxy-2’-fluoroarabino nucleic acid)及びCeNA(cyclohexenyl nucleic acid)の少なくともいずれか一つである、請求項4に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項6】
前記リガンドは、AMP(adenosine monophosphate)及びATP(adenosine triphosphate)のいずれか一つ以上を含む、請求項4に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項7】
前記リガンドがATP(adenosine triphosphate)である場合、前記治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体は、個別的な球形に備えられ、
前記リガンドがAMP(adenosine monophosphate)である場合、前記治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体は、複数個の自己集合体が凝集されて、マイクロポアを有する3次元凝集体に備えられる、請求項6に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項8】
前記自己集合体は、常磁性を有し、
外部磁場印加によって前記自己集合体の移動が制御される、請求項1に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項9】
前記自己集合体は、キレート剤を含む条件、強酸条件及び強塩基条件の少なくともいずれか一つの条件で自己分解が促進され、
前記キレート剤を含む条件で、前記キレート剤は、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)、ビピリジン(bipyridyl)、及びフェロジン(ferrozine)のいずれか一つ以上であり、
前記強酸条件のpHは、2~5で、
前記強塩基条件のpHは、9~12である、請求項1に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項10】
前記自己集合体は、過酸化水素を含む条件で活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)を生成し、
前記活性酸素種は、細胞のリン脂質を酸化させ、GPX4(glutathione peroxidase4)又はSystem xc-シスチン/グルタミン酸アンチポーター(cystine/glutamate antiporter)(Xc)を抑制して、フェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を誘導する、請求項1に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項11】
前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって移動が制御され、
前記外部磁場印加によって、前記自己集合体は、ターゲット癌細胞に移動して、フェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を誘導する、請求項10に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項12】
前記自己集合体は、前記フェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を誘導する間に、正常細胞では毒性を示さない、請求項10に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項13】
前記自己集合体は癌治療に用いられ、
前記癌は、乳癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、結腸癌、甲状腺癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、子宮頸癌、脳癌、卵巣癌、膀胱癌、腎臓癌、肝癌、膵腸癌、前立腺癌、皮膚癌、舌癌、子宮癌、胃癌、骨癌、及び血液癌からなる群より選択されたいずれか一つ以上である、請求項1に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項14】
前記リガンドは、ATP(adenosine triphosphate)を含み、
前記自己集合体は、自己分解される間に前記ATPを放出して、P2Y1受容体を通じてマクロファージのM2分極化を促進する、請求項1に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項15】
前記自己集合体は、骨関節の滑膜(synovial membrane)に分布するマクロファージのM2分極化を促進し、
前記マクロファージのM2分極化は、骨関節の滑液(synovial fluid)の抗炎症(anti-inflammatory)活性を有する、請求項14に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項16】
前記自己集合体は、骨関節の滑液(synovial fluid)の抗炎症(anti-inflammatory)環境を保持し、骨軟骨を保護して、骨関節炎を予防、改善又は治療する、請求項15に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項17】
前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって移動が制御され、
前記外部磁場印加によって、前記自己集合体はターゲット骨関節部位に移動し、骨軟骨を保護して、骨関節炎を予防、改善又は治療する、請求項15に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項18】
前記自己集合体は、骨関節の滑膜(synovial membrane)に分布するマクロファージのM2分極化を促進し、
前記マクロファージのM2分極化は、骨関節の滑液(synovial fluid)の抗炎症(anti-inflammatory)活性を有する間に、正常細胞では毒性を示さない、請求項15に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項19】
前記リガンドは、AMP(adenosine monophosphate)を含み、
前記治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体は、複数個の自己集合体が凝集されて、マイクロポアを有する3次元凝集体に備えられ、
前記3次元凝集体は、平均直径が500μm~10cmである、請求項1に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項20】
前記自己集合体は、前記3次元凝集体の形態で骨欠損部位に移植され、欠損された骨組職を修復させる骨移植材として利用される、請求項19に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項21】
前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって移動が制御され、
前記自己集合体は、前記3次元凝集体の形態で骨欠損部位に移植され、
前記外部磁場印加によって、前記自己集合体は、一方向及び他方向のいずれか一つ以上に移動する、請求項19に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項22】
前記自己集合体は、骨欠損部位に移植され、
前記自己集合体の表面に宿主細胞が付着されて骨格を形成する、請求項19に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項23】
前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって移動が制御され、
前記外部磁場印加によって、前記自己集合体の表面に付着された宿主細胞も一緒に移動する、請求項22に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項24】
前記自己集合体は、骨欠損部位に移植され、
前記自己集合体は、自己分解されて、1日~70日間前記AMPを放出する、請求項19に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項25】
前記自己集合体で放出される前記AMPは、宿主細胞の表面でアデノシン(adenosine)に分解されて、前記宿主細胞の表面のアデノシン受容体の信号伝逹(signaling)を促進し、
前記アデノシン受容体は、アデノシンA2B受容体を含む、請求項24に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項26】
前記自己集合体で放出される前記AMPは、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSC)のアデノシン受容体の信号伝逹によって間葉系幹細胞(MSC)の骨分化(osteogenic differentiation)を促進し、
前記間葉系幹細胞(MSC)の骨分化は骨生成を促進する、請求項24に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項27】
前記自己集合体は、骨欠損部位に移植されて欠損された骨組職を再生する間に、正常細胞では毒性を示さない、請求項20に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【請求項28】
前記リガンドは、AMP(adenosine monophosphate)及びATP(adenosine triphosphate)のいずれか一つ以上を含み、
前記自己集合体は、常磁性を有し、外部で印加される磁場によって移動が制御され、
前記リガンドがAMP及びATPのいずれか一つ以上である場合、前記自己集合体は、前記フェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を誘導し、
前記リガンドがATPの場合、前記自己集合体は骨関節炎を予防、改善又は治療し、
前記リガンドがAMPの場合、前記自己集合体は骨欠損部位に移植されて、欠損された骨組職を再生する、請求項1に記載の治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体に関し、より詳しくは、癌、骨関節炎及び骨欠損治療に向上された効果を有する治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、抗癌治療は、化学的に合成された薬物に依存する。代表的に、癌治療に用いられるドキソルビシンを含む化学療法薬物は、癌細胞の細胞自滅(apoptosis)を誘発して癌を治療する。一方、抗癌治療に用いられる代表的な薬物であるドキソルビシン(Doxorubicin)、シスプラチン(Cisplatin)、メトトレキセート(Methotrexate)は、それぞれ心臓、腎臓、神経に副作用を引き起こすと知られており、このような副作用により、患者の状態によって適切な処方が難しい限界点を有する。特にたくさん活用されるドキソルビシンの場合、薬物を使用可能な領域であるTI(therapeutic index)が非常に狭く、このようなTIよりも高い濃度を用いる場合、致命的な副作用を発生させることと知られている。
【0003】
また、このような化学療法薬物は、脱毛、骨髄抑制、嘔吐、発疹、口内炎及び過敏症、アレルギー、心臓損傷、注射部位の操作損傷、放射線リコール(radiation recall)、治療関連白血病などの深刻な副作用を引き起こすことがある。また、癌が進行されながら細胞死滅抵抗性が大きくなるため、化学療法薬物による治療効能が弱くなることがある。
【0004】
したがって、従来の抗癌剤は癌を標的として、細胞死滅を誘導する方法に発展しており、多くの技術が開発されたが、このような癌細胞の除去に対する有効性は保持し、副作用の発生が少なく、従来の薬物による細胞死滅に抵抗性を有する癌を除去するための新しい方法が多様に研究されている。
【0005】
関節炎は、世界で最も一般的な慢性疾患の一つであるが、骨関節炎の病理生理学は完壁に研究されておらず、現在としては完全な治療法がない状態である。骨関節炎は、関節軟骨を損傷させて、患者に極甚な疼痛と障害を誘発し、関節軟骨の生理学的再生は制限された水準だけで発生する。そこで、多様な研究者が動物モデルを用いて骨関節炎の病理生理学を研究しながら治療法を捜してきた。最近には、薬物を用いて骨関節炎を治療する方法が行われている。このように、関節炎の治療に用いられる薬物では、ヒアルロン酸、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID、nonsteroidal anti-inflammatory drug)、ステロイド性TAA(triamcinolone)を利用して、炎症反応(inflammation)を妨害する程度で、軟骨を再生させる薬物はほとんど全くない状況である。
【0006】
また、骨関節には、間葉系幹細胞(MSC、mesenchymal stem cell)、軟骨細胞(chondrocyte)、マクロファージ(macrophage)、線維芽細胞(fibroblast)を含んで、多様な種類の細胞が存在する。骨関節内(joint cavity)の滑液(synovial fluid)のサイトカインバランス(cytokine balance)が崩れて抗-炎症性(pro-inflammatory)サイトカインが抗炎症性(anti-inflammatory)より過度に増加されて骨関節炎が悪化される。
【0007】
したがって、骨関節の治療に効果的で、骨関節内のサイトカインバランスを正常骨関節水準に調節することができる薬物及び治療方法に対する研究が必要である。
【0008】
大腿骨を含む長骨骨折で広範囲な骨欠損は、臨床的に治療が非常に難しい。最近にはこのような広範囲骨欠損の治療方法として、誘導膜方法(inducedmembrane technique)が用いられる。誘導膜方法は、一次手術で死んだ骨や感染された骨を全部除去した後、欠損部位をリン酸カルシウム(Ca-Phosphate)などの骨セメントで満たし、骨セメントと反応して生ずる誘導膜形成を約4~6週間待ってから、その後に二次手術で骨セメントの除去及び骨欠損部位に大量の自家骨の移植を施行する方法である。このような誘導膜方法に用いられるBMPの場合、実際治療に活用されるのに非常に高い価格を形成しており、臨床的に克服すべき問題点がある。また、BMPを含んでいる自家骨移植などを利用して限定的に行われており、採取する自家骨が不足な場合や、骨欠損部位が広すぎて骨盤骨、脛骨を含んだ採取可能なすべての自家骨を採取しても、その量が不足な場合がある。
【0009】
このような自家骨移植は、採取部位の痛症によるリハビリ遅延、出血、感染、医原性骨折のような多くの合併症を誘発して、誘導膜方法で自家骨を代替できる移植材の研究が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、生体内の物質に基づいて多様な形態に自己集合が可能であり、生体で副反応が発生しない、治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体を提供することである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、生体に毒性がなく、リガンドの種類によって多様な形態に自己集合され、生体内に存在する治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体を生体外部で容易に位置制御が可能で、標的する位置を効果的に治療することができる、治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面によれば、本発明の実施形態は、治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体を含む。
【0014】
一実施形態において、前記治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体は、鉄イオン;及び1種以上のリガンド;を含み、前記リガンドと鉄イオンが可逆的に自己集合又は自己分解され、前記リガンドと鉄イオンは第1結合によって自己集合されて自己集合体を形成してもよい。
【0015】
一実施形態において、前記自己集合体は、前記金属イオン及びリガンドのいずれか一つ以上によって自己集合が行われ、前記自己集合体は複数個に備えられ、互いに隣接する自己集合体の間は第2結合によって自己結合されて備えられてもよい。
【0016】
一実施形態において、前記第1結合は配位結合を含み、前記第2結合は水素結合及びπ-π相互作用のいずれか一つ以上を含んでもよい。
【0017】
一実施形態において、前記自己集合体又は互いに隣接する自己集合体の間は、生理学的条件(physiologically relevant condition)下で第1時間自己集合されるか、又は第2時間自己分解され、前記第1時間は、1分~24時間であり、前記第2時間は、1日~90日であってもよい。
【0018】
一実施形態において、前記リガンドは、リン酸塩及びホスホネートの少なくともいずれか一つを含んでもよい。
【0019】
一実施形態において、前記リガンドは、AMP、ADP、ATP、TMP、TDP、TTP、CMP、CDP、CTP、GMP、GDP、GTP、UMP、UDP、UTP、DNA、RNA、AEP(2-アミノエチルホスホン酸、2-aminoethylphosphonic acid)、TNA(Threose nucleic acid)、GNA(glycol nucleic acid)、HNA(1、5-anhydrohexitol nucleic acid)、ANA(1、5-anhydroatritol nucleic acid)、FANA(2’-deoxy-2’-fluoroarabino nucleic acid)及びCeNA(cyclohexenyl nucleic acid)の少なくともいずれか一つであってもよい。
【0020】
一実施形態において、前記リガンドは、AMP(adenosine monophosphate)及びATP(adenosine triphosphate)のいずれか一つ以上を含んでもよい。
【0021】
一実施形態において、前記リガンドがATP(adenosine triphosphate)である場合、前記治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体は、個別的な球形に備えられ、前記リガンドがAMP(adenosine monophosphate)である場合、前記治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体は、複数個の自己集合体が凝集されて、マイクロポアを有する3次元凝集体に備えられてもよい。
【0022】
一実施形態において、前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって前記自己集合体の移動が制御されてもよい。
【0023】
一実施形態において、前記自己集合体は、キレート剤を含む条件、強酸条件及び強塩基条件の少なくともいずれか一つの条件で自己分解が促進されてよい。
【0024】
前記キレート剤を含む条件で、前記キレート剤は、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)、ビピリジン(bipyridyl)、及びフェロジン(ferrozine)のいずれか一つ以上であり、前記強酸条件のpHは、2~5であり、前記強塩基条件のpHは、9~12であってもよい。
【0025】
一実施形態において、前記自己集合体は、過酸化水素を含む条件で過量の活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)を生成し、前記活性酸素種は、細胞のリン脂質を酸化させ、GPX4(glutathione peroxidase4)又はSystem xc-シスチン/グルタミン酸アンチポーター(cystine/glutamate antiporter)(Xc)を抑制して、フェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を誘導してもよい。
【0026】
一実施形態において、前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって移動が制御され、前記外部磁場印加によって、前記自己集合体は、ターゲット癌細胞に移動して、フェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を誘導してもよい。
【0027】
一実施形態において、前記自己集合体は、前記フェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を誘導する間に、正常細胞では毒性を示さないことがある。
【0028】
一実施形態において、前記自己集合体は癌治療に用いられ、前記癌は、乳癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、結腸癌、甲状腺癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、子宮頸癌、脳癌、卵巣癌、膀胱癌、腎臓癌、肝癌、膵腸癌、前立腺癌、皮膚癌、舌癌、子宮癌、胃癌、骨癌、及び血液癌からなる群より選択されたいずれか一つ以上であってもよい。
【0029】
一実施形態において、前記リガンドは、ATP(adenosine triphosphate)を含み、前記自己集合体は、自己分解される間に前記ATPを放出して、P2Y1受容体を通じてマクロファージのM2分極化を促進してもよい。
【0030】
一実施形態において、前記自己集合体は、骨関節の滑膜(synovial membrane)に分布するマクロファージのM2分極化を促進し、前記マクロファージのM2分極化は、骨関節の滑液(synovial fluid)の抗炎症(anti-inflammatory)活性を有してもよい。
【0031】
一実施形態において、前記自己集合体は、骨関節の滑液(synovial fluid)の抗炎症(anti-inflammatory)環境を保持し、骨軟骨を保護して、骨関節炎を予防、改善又は治療することができる。
【0032】
一実施形態において、前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって移動が制御され、前記外部磁場印加によって、前記自己集合体はターゲット骨関節部位に移動し、骨軟骨を保護して、骨関節炎を予防、改善又は治療することができる。
【0033】
一実施形態において、前記自己集合体は、骨関節の滑膜(synovial membrane)に分布するマクロファージのM2分極化を促進し、前記マクロファージのM2分極化は、骨関節の滑液(synovial fluid)の抗炎症(anti-inflammatory)活性を有する間に、正常細胞では毒性を示さないことがある。
【0034】
一実施形態において、前記リガンドは、AMP(adenosine monophosphate)を含み、前記治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体は、複数個の自己集合体が凝集されて、マイクロポアを有する3次元凝集体に備えられ、前記3次元凝集体は、平均直径が500μm~10cmであってもよい。
【0035】
一実施形態において、前記自己集合体は、前記3次元凝集体の形態で骨欠損部位に移植され、欠損された骨組職を修復させる骨移植材として利用されてもよい。
【0036】
一実施形態において、前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって移動が制御され、前記自己集合体は、前記3次元凝集体の形態で骨欠損部位に移植され、前記外部磁場印加によって、前記自己集合体は、一方向及び他方向のいずれか一つ以上に移動してもよい。
【0037】
一実施形態において、前記自己集合体は、骨欠損部位に移植され、前記自己集合体の表面に宿主細胞が付着されて骨格を形成してもよい。
【0038】
一実施形態において、前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって移動が制御され、前記外部磁場印加によって、前記自己集合体の表面に付着された宿主細胞も一緒に移動してもよい。
【0039】
一実施形態において、前記自己集合体は、骨欠損部位に移植され、前記自己集合体は、自己分解されて、1日~70日間前記AMPを放出してもよい。
【0040】
一実施形態において、前記自己集合体で放出される前記AMPは、宿主細胞の表面でアデノシン(adenosine)に分解されて、前記宿主細胞の表面のアデノシン受容体の信号伝逹(signaling)を促進し、前記アデノシン受容体は、アデノシンA2B受容体を含んでもよい。
【0041】
一実施形態において、前記自己集合体で放出される前記AMPは、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSC)のアデノシン受容体の信号伝逹によって間葉系幹細胞(MSC)の骨分化(osteogenic differentiation)を促進し、前記間葉系幹細胞(MSC)の骨分化は骨生成を促進してもよい。
【0042】
一実施形態において、前記自己集合体は、骨欠損部位に移植されて欠損された骨組職を再生する間に、正常細胞では毒性を示さないことがある。
【0043】
一実施形態において、前記リガンドは、AMP(adenosine monophosphate)及びATP(adenosine triphosphate)のいずれか一つ以上を含み、前記自己集合体は、常磁性を有し、外部で印加される磁場によって移動が制御され、前記リガンドがAMP及びATPのいずれか一つ以上である場合、前記自己集合体は、前記フェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を誘導し、前記リガンドがATPの場合、前記自己集合体は骨関節炎を予防、改善又は治療し、前記リガンドがAMPの場合、前記自己集合体は骨欠損部位に移植されて、欠損された骨組職を再生することができる。
【発明の効果】
【0044】
上記した本発明に係ると、局所部位に標的治療が可能であり、副作用がなく、細胞死滅を容易に誘導して癌治療に効果的な治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体を提供することができる。
【0045】
また、本発明に係ると、骨関節炎の悪化を防ぐために、骨関節炎が発生した骨関節内のサイトカインバランスを正常骨関節水準に調節する治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体を提供することができる。
【0046】
また、本発明に係ると、骨欠損を効果的に治療し、副作用のない治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の一実施形態によって鉄イオンとATPが自己集合体を形成する状態を概略的に示した図面である。
【
図2】本発明の一実施形態による鉄イオンとAMPが自己集合体を形成する状態を概略的に示した図面である。
【
図3】Fe-ATP自己集合体のSEMイメージと、常磁性を測定した結果である。
【
図4】本発明の一実施形態による平均直径がそれぞれ150nm及び70nmのFe-ATP自己集合体のSEMイメージである。
【
図5】Fe-AMP自己集合体のTEMイメージである。
【
図6】Fe-ATP自己集合体を利用して癌細胞にフェロトーシス(ferroptosis)を誘導する状態を概略的に示した図面である。
【
図7】鉄アッセイキット(iron assay kit)を利用して測定したpH5.5又はpH7.4でFe-ATP自己集合体の鉄イオン放出量を示したグラフである。
【
図8】各条件によるDCFDA染色で測定した細胞内ROS濃度を示した。
【
図9】IVIS L-012 ROS信号を分析した結果である。
【
図10】磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体の持続的なFe
2+放出による癌細胞のフェロトーシスを確認した結果である。
【
図11】磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体がドキソルビシンと同様に骨肉種(osteosarcoma)癌を効果的に治療することを示した。
【
図12】Fe-ATP自己集合体を生体内に移植した後の毒性を確認した結果である。
【
図13】磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体の軟骨保護(Chondroprotective)効果を確認した結果である。
【
図14】HPLCで測定したFe-ATP自己集合体でATP放出累積プロファイルを示したグラフである。
【
図15】Fe-ATP自己集合体の分解によるマクロファージの分極化を免疫蛍光イメージで確認した結果である。
【
図16】Fe-ATP自己集合体の分解によってマクロファージの分極化をフローサイトメトリーで確認した結果である。
【
図17】Fe-ATP自己集合体の分解をウェスタンブロッティング(western blotting)で確認した結果である。
【
図18】Fe-ATP自己集合体による骨関節炎治療効果を確認するための膝骨関節のC-Arm及び3-DマイクロCTイメージである。
【
図19】8週目の骨関節炎モデルの膝骨関節の2-DマイクロCTイメージ、H&E染色、サフラニン-o(safranin-o)(S-O)染色イメージである。
【
図20】8週目の骨関節炎モデルのH&E染色、サフラニン-o(safranin-o)(S-O)染色及びコラーゲンX染色イメージである。
【
図21】8週目の骨関節炎モデルの膝骨関節の滑膜のiNOS及びArg-1染色イメージである。
【
図22】骨関節炎ラットモデル(ratmodel)で確認したFe-ATP自己集合体の毒性結果である。
【
図23】3D Fe-AMP自己集合体の骨再生効果を概略的に示した図面である。
【
図24】3D形態のFe-AMP自己集合体が凝集されたマイクロポア構造を示したSEMイメージである。
【
図25】3D形態のFe-AMP自己集合体を磁気的に標的化する状態を示した図面である。
【
図26】Fe-AMP自己集合体で時間によって放出されたAMPを示したグラフである。
【
図27】3D Fe-AMP自己集合体で放出されたAMP-分解アデノシンによって骨形成分化が促進されることを免疫蛍光イメージで確認した結果である。
【
図28】3D Fe-AMP自己集合体で放出されたCD73-媒介AMP-分解アデノシンによって骨形成分化を確認したウェスタンブロッティング結果である。
【
図29】0、2、4、6及び8週で骨折を確認するための大腿骨のC-Armイメージである。
【
図30】8週目の骨折を識別するための大腿骨のマイクロCTイメージである。
【
図31】骨折に対するH&E、オステオカルシン及びTRAP染色イメージである。
【
図32】生体内3D Fe-AMP自己集合体の毒性を確認した結果である。
【発明の実施のための形態】
【0048】
その他実施形態の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【0049】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付する図面とともに詳細に後述されている実施形態を参照すると明確になり得る。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に限定されるのでなく、互いに異なる多様な形態に具現されることができ、以下の説明で他に明示されない限り、本発明に成分、反応条件、成分の含量を表現するすべての数字、値及び/又は表現は、このような数字が本質的に他のもの中でこのような値を得る際に発生する測定の多様な不確実性が反映された近似値であるので、すべての場合、「約」という用語によって修飾されることに理解されるべきである。また、本記載で数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、他に指摘されない限りこのような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までのすべての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指称する場合、他に指摘されない限り最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含むすべての整数が含まれる。
【0050】
また、本発明で範囲が変数に対して記載される場合、前記変数は、前記範囲の記載された終了点を含む記載された範囲内のすべての値を含むことに理解され得る。例えば、「5~10」の範囲は、5、6、7、8、9、及び10の値だけでなく、6~10、7~10、6~9、7~9などの任意の下位範囲を含み、5.5、6.5、7.5、5.5~8.5及び6.5~9などのような記載された範囲の範疇に妥当な整数の間の任意の値も含むことに理解され得るはずである。例えば、「10%~30%」の範囲は、10%、11%、12%、13%などの値と30%までを含むすべての整数だけでなく、10%~15%、12%~18%、20%~30%などの任意の下位範囲を含み、10.5%、15.5%、25.5%などのように記載された範囲の範疇内の妥当な整数の間の任意の値も含むことに理解され得るはずである。
【0051】
図1は、本発明の一実施形態によって鉄イオンとATPが自己集合体を形成する状態を概略的に示した図面である。
図2は、本発明の一実施形態による鉄イオンとAMPが自己集合体を形成する状態を概略的に示した図面である。
【0052】
図1及び
図2を参照すると、本実施形態による治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体は、鉄イオン、及び1種以上のリガンドを含み、前記リガンドと鉄イオンが可逆的に自己集合又は自己分解され、前記リガンドと鉄イオンは、第1結合によって自己集合されて自己集合体を形成する治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体を含むことができる。また、前記治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体において、前記自己集合体は、前記金属イオン及びリガンドのいずれか一つ以上によって自己集合が行われ、前記自己集合体は複数が備えられ、互いに隣接する自己集合体の間は第2結合によって自己結合されて備えられてもよい。
【0053】
本実施形態において、治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体(以下、生体分子-金属イオン自己集合複合体)は、疾病などの治療に効果があり、磁性を有し、生体分子と金属イオンが自己集合された形態の自己集合体を含み、前記自己集合体は、一つ以上に備えられて、複合体を形成することができる。
【0054】
前記リガンドは、リン酸塩及びホスホネートの少なくともいずれか一つを含んでもよい。具体的には、前記リガンドは、AMP、ADP、ATP、TMP、TDP、TTP、CMP、CDP、CTP、GMP、GDP、GTP、UMP、UDP、UTP、DNA、RNA、AEP(2-アミノエチルホスホン酸、2-aminoethylphosphonic acid)、TNA(Threose nucleic acid)、GNA(glycol nucleic acid)、HNA(1、5-anhydrohexitol nucleic acid)、ANA(1、5-anhydroatritol nucleic acid)、FANA(2’-deoxy-2’-fluoroarabino nucleic acid)及びCeNA(cyclohexenyl nucleic acid)の少なくともいずれか一つであってもよい。より具体的には、前記リガンドは、AMP(adenosine monophosphate)及びATP(adenosine triphosphate)のいずれか一つ以上を含んでもよい。
【0055】
前記リガンドと前記鉄イオンは、第1結合によって自ら自己結合して自己集合体を形成し、互いに隣接する自己集合体の間は第2結合によって自ら自己結合して、生体分子-金属イオン自己集合複合体を形成することができる。前記生体分子-金属イオン自己集合複合体において、前記第1結合は配位結合を含み、前記第2結合は水素結合及びπ-π相互作用のいずれか一つ以上を含んでもよい。
【0056】
図1で、鉄イオン(Fe
2+)は、リガンドであるATPと配位結合によって自己集合して、Fe-ATP自己集合体を形成することができる。Fe-ATP自己集合体は、互いに隣接するFe-ATP自己集合体の間に水素結合及びπ-π相互作用のいずれか一つ以上によって自己集合して、本発明の一実施形態による治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体を形成することができる。
【0057】
また、
図2で、鉄イオン(Fe
2+)は、リガンドであるAMPと配位結合によって自己集合して、Fe-AMP自己集合体を形成することができる。Fe-AMP自己集合体は、互いに隣接するFe-AMP自己集合体の間に水素結合及びπ-π相互作用のいずれか一つ以上によって自己集合して、本発明の一実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体を形成することができる。
【0058】
前記鉄イオンは、ATP又はAMPのリン酸基部位及び水(H2O)と配位結合して、金属錯体を形成することができる。また、前記ATP又はAMPのアデニン部位の芳香族環は、π-π相互作用を形成することができる。また、前記アデニン部位の窒素と前記鉄イオンに結合した水分子は、水素結合を形成することができる。前記生体分子-金属イオン自己集合複合体は、配位結合、π-π相互作用及び水素結合のいずれか一つ以上を利用して自己結合されて、一つ以上の自己集合体を含む複合体の形態に形成されることができる。
【0059】
前記自己集合体又は互いに隣接する自己集合体の間は、生理的条件(physiologically relevant condition)下で第1時間の間自己集合されるか、又は第2時間の間自己分解されてもよい。前記第1時間は1分~24時間であり、前記第2時間は1日~90日であってもよい。
【0060】
前記生理的条件は、温度、pH、浸透圧、イオン強度、粘度、及び生存有機体と両立することができ/又は通常生存培養酵母細胞又は哺乳動物細胞のうち、細胞内に存在する類似生化学的媒介変数を指称する。例えば、ヒト細胞の場合、約37℃、例えば35~39℃区間の温度、1kPa~200kPa区間、約7のpHなどを含む。具体的には、生体又は動物に毒性がない条件、生体又は動物が保持できる条件を意味する。
【0061】
前記自己集合体は、第1時間の1分~24時間に自己集合されることができるが、1分未満の場合には、自己集合体が第1結合又は第2結合を安定的に形成できなくて問題となり、24時間の場合、十分に自己集合されるので、これを超えて時間を保持することが効率を低下させる。具体的には、前記第1時間は、約1分~20時間、又は、約1分~15時間、又は、約1分~10時間、約1分~5時間、又は、約1分~2時間、又は、約1分~30分であってもよい。
【0062】
前記自己集合体は、第2時間の1日~90日間自己分解されることができるが、上述した時間の間に自己分解されながら、鉄イオン又はリガンドを放出することにより、安定的で、かつ治療的な効果を奏することができる。具体的には、前記第2時間は、約1日~45日、又は、約1日~30日、又は、約1日~15日、又は、約1日~10日であってもよい。
【0063】
前記リガンドがATP(adenosine triphosphate)の場合、前記治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体は、個別的な球形に備えられてもよい。また、前記リガンドがAMP(adenosine monophosphate)の場合、前記治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体は、複数個の自己集合体が凝集されて、マイクロポアを有する3次元凝集体に備えられてもよい。
【0064】
具体的には、前記リガンドがATPの場合、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体は、球形を呈し、均一な直径に形成されてもよい。前記生体分子-金属イオン自己集合複合体の直径は、前記リガンドの濃度及び鉄イオンの濃度のいずれか一つ以上によって異なるように形成されてもよい。具体的には、前記鉄イオンの濃度が高い場合、前記自己集合体の直径は増加されてもよい。また、前記リガンドの濃度が高い場合、前記自己集合体の直径は増加されてもよい。本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体は、リガンドをATPで利用する場合、鉄イオンの濃度及び/又はATPの濃度を制御して、生体分子-金属イオン自己集合複合体の直径を制御することができる。
【0065】
前記リガンドがAMPの場合、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体は、3次元凝集体の形態に備えられてもよい。具体的には、内部に複数個のマイクロポアを有する体積を有する形態に備えられてもよい。例えば、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体は、リガンドをAMPで利用する場合にも、前記鉄イオンの濃度及び/又はAMPの濃度を制御することにより、前記3次元凝集体の大きさを制御することができる。具体的には、鉄イオンの濃度を増加させたり、或いはAMPの濃度を増加させる場合、前記3次元凝集体の大きさを増加させることができる。前記3次元凝集体の大きさは、100nm~100cmであってもよい。具体的には、前記3次元凝集体の大きさは、球形の場合平均直径で、円筒状の場合断面の平均直径と高さの平均値で、多角形の場合、辺の長さと高さの平均値であってもよい。前記3次元凝集体の大きさは、約100nm~80cm、又は、約100nm~50cm、又は、約100nm~30cm、又は、約100um~30cm、又は、約200um~30cm、約300um~30cm、又は、約400um~30cm、又は500um~30cm、又は500um~20cm、又は500um~10cmであってもよい。
【0066】
前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって前記自己集合体の移動が制御されることができる。具体的には、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体は、生体内又は生体外に備えられ、外部磁場印加によって前記生体分子-金属イオン自己集合複合体を構成する自己集合体の移動を制御することができる。したがって、本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体は、所望の位置に移動を制御することができ、具体的には、生体内に注入した後にも標的する細胞又は組織的に前記生体分子-金属イオン自己集合複合体を移動させて、直接的に効果を示すようにすることができる。
【0067】
前記自己集合体は、キレート剤を含む条件、強酸条件及び強塩基条件の少なくともいずれか一つの条件で自己分解が促進されることができる。
【0068】
前記キレート剤を含む条件で、前記キレート剤は、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)、ビピリジン(bipyridyl)、及びフェロジン(ferrozine)のいずれか一つ以上であってもよい。
【0069】
前記キレート剤は、前記リガンドの代わりに鉄イオンと結合を形成して、前記自己集合体が自己分解されることを促進させることができる。前記キレート剤は、前記鉄イオンに対して前記リガンドよりも親和力の高い物質であってもよく、例えば、EDTAであってもよい。
【0070】
前記強酸条件のpHは、2~5で、前記強塩基条件のpHは、9~12であってもよい。具体的には、前記強酸条件のpHは、3~4で、前記強塩基条件のpHは、10~11であってもよい。例えば、前記強酸は、例えば塩酸(HCl)であってもよく、前記強塩基は、例えば、NaOHであってもよい。
【0071】
前記強酸又は強塩基条件は、前記鉄イオンとリガンドの結合が分解されることを促進させることができ、前記自己集合複合体の自己分解を促進させることもできる。
【0072】
前記自己集合体は常磁性を有することができる。前記自己集合体又は生体分子-金属イオン自己集合複合体の体積が増加されるほど、磁気モーメントが増加されることができる。したがって、前記自己集合複合体が大きく形成されるほど、磁場を印加すれば磁場による引力(又は斥力)がより大きく作用することができる。具体的には、生体内及び生体外で前記生体分子-金属イオン自己集合複合体側に磁場を印加する場合、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体は、前記磁場によって移動が制御されることができ、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体が大きいほど生体分子-金属イオン自己集合複合体の移動速度をより増加させることができる。また、本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体は、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体に磁場が形成された場合のみ磁性を帯びるので、生体内及び生体外で前記生体分子-金属イオン自己集合複合体を容易に調節することができる。
【0073】
本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体は、フェロトーシス(ferroptosis)を誘導することができ、特定癌細胞を死滅させることができる。
【0074】
通常、抗癌治療には化学的に合成された薬物に依存し、そのうち、代表的な薬物であるドキソルビシン(Doxorubicin)、シスプラチン(Cisplatin)、メトトレキセート(Methotrexate)などは、心臓、腎臓、神経などに副作用を引き起こして問題となる。また、癌を治療する過程で、正常組職(normal tissue)に損傷を減らすために、癌を標的とする標的治療剤、免疫治療剤などが開発されて用いられているが、肉腫(sarcoma)のような場合には、患者個人ごとに有しいる標的物質が異なることから、標的治療剤を利用しにくく、免疫治療剤のような場合、高価であるため、実際治療で用いるには非常に難しい状況である。
【0075】
一方、本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体は、生体に毒性がなく、外部で印加する磁性によって癌細胞を標的化して移動させることができる。また、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体は、癌細胞でフェロトーシスを誘導して癌細胞を効果的に死滅させることができ、周辺の正常細胞に影響がなく、体内毒性がないので安定的に使用可能である。前記フェロトーシスは、細胞リン脂質の酸化的損傷によって誘導される細胞死滅とは異なる方式で細胞死滅を誘導することができる。
【0076】
本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体で、前記自己集合体は、10μM以上の濃度の過酸化水素を含む条件で過量の活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)を生成し、前記活性酸素種の生成量は添加した自己集合体の濃度及び過酸化水素の濃度に比例することができる。前記自己集合体及び過酸化水素を添加する前の癌細胞と比べた時、活性酸素種の生成量が4倍以上生成されることができ、前記活性酸素種によってフェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を効果的に誘導することができる。具体的には、前記過酸化水素の濃度は、約10μM~10M、又は10μM~5M、又は20μM~10M、又は30μM~10M、又は40μM~10M、又は50μM~10Mであってもよい。
【0077】
通常、一般細胞は過酸化水素の濃度が約20nM以下で、癌細胞は過酸化水素の濃度が約10μM以上、例えば10μM~100μMで一般細胞よりも高く表れる。よって、本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体は、高い過酸化水素濃度を示す癌細胞のみで自己分解されてFe2+を放出し、放出されたFe2+は、フェントン反応で過量のROSを生成するようになって、フェロトーシス(ferroptosis)による癌細胞死滅が発生することができる。
【0078】
前記活性酸素種は、細胞のリン脂質を酸化させ、GPX4(glutathione peroxidase 4)又はSystem xc-シスチン/グルタミン酸アンチポーター(cystine/glutamate antiporter)(Xc)を抑制して、フェロトーシスによって癌細胞の死滅を誘導することができる。前記GPX4は、細胞内に存在し、酸化されたリン脂質を復旧する酵素であり、GPX4は、System xc-シスチン/グルタミン酸アンチポーター(cystine/glutamate antiporter)(Xc)によって調節される。
【0079】
前記本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体は、鉄イオンを含み、前記鉄イオンは、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体を構成する自己集合体の自己分解によって放出されることができる。前記鉄イオンは生体物質で、癌細胞内に高濃度に存在する過酸化水素と反応してフェントン反応でROSを発生させ、前記ROSは、酸化反応で細胞リン脂質を損傷させて、癌細胞のフェロトーシスを誘発することができる。具体的には、前記ROSは、細胞のリン脂質を酸化させ、酸化されたリン脂質が過量発生してGPX4とXcが減少される。前記酸化されたリン脂質が過度に発生する場合、GPX4によって復旧し難い状態になると、細胞のフェロトーシスが誘発される。
【0080】
前記細胞のフェロトーシスが癌細胞ではない他の器官に作用する場合、心臓副作用(cardiomyopathyなど)が発生されることがあり、したがって、人工的に合成されたドキソルビシン(doxorubicin)などのような薬物を利用してフェロトーシスを誘導して癌を治療する過程で、癌細胞の周辺の正常細胞まで副作用を発生して問題となる。
【0081】
一方、本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体は、外部で印加される磁場によって局所部位を標的化することができて、選択的に癌細胞のみ取り除くことができる。前記生体分子-金属イオン自己集合複合体は、生体分子と、体内毒性のない鉄イオンからなり、体内毒性がなくて、副作用がなく、長期間持続的に使用可能である。また、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体は、正常細胞には影響を及ぼさないながら、癌細胞特異的にフェロトーシスを誘導して癌細胞を死滅させて、癌治療に効果的に作用することができる。
【0082】
前記生体分子-金属イオン自己集合複合体で、自己集合体は、酸性(acidic)条件で自己分解の速度が増加することができる。よって、中性条件である正常細胞では分解速度が遅い一方、酸性条件は癌細胞では分解速度が早く実行されることができる。また、癌細胞では正常細胞より相対的に高い過酸化水素と酸性条件で前記生体分子-金属イオン自己集合複合体によって特異的にROSを生成させることができる。すなわち、本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体で、前記自己集合体の分解速度は正常細胞よりも癌細胞で非常に早く発生されるので、前記自己集合体の自己分解によって発生する鉄イオンの分解及びROS生成フェントン反応大部分は前記癌細胞に作用するので、前記正常細胞にはほとんど影響が発生しない。
【0083】
また、本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体は、従来の治療における代表的な薬物であるドキソルビシンと比較すると、局所部位標的が可能で、副作用は少なく、癌細胞死滅の有効性は類似し、心臓の副作用が発生しないという効果を奏する。
【0084】
本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体で、前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって移動が制御され、前記外部磁場印加によって前記自己集合体は、ターゲット癌細胞に移動して、フェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を誘導することができる。
【0085】
前記自己集合体は、前記フェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を誘導する場合、ドキソルビシンと同様の水準で前記癌細胞を死滅させることができる。また、前記自己集合体は、前記フェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を誘導する間に、正常細胞では毒性を示さないこともある。
【0086】
本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体で、前記自己集合体は癌治療に用いられ、前記癌は、乳癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、結腸癌、甲状腺癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、子宮頸癌、脳癌、卵巣癌、膀胱癌、腎臓癌、肝癌、膵腸癌、前立腺癌、皮膚癌、舌癌、子宮癌、胃癌、骨癌、及び血液癌からなる群より選択されたいずれか一つ以上であってもよい。
【0087】
本発明の他の実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体で、前記自己集合体は、鉄イオンとリガンドが第1結合で自己集合し、前記自己集合体は、互いに隣接する自己集合体同士が第2結合で自己集合することができる。この時、前記リガンドは、ATP(adenosine triphosphate)を含み、前記自己集合体は、自己分解される間に前記ATPを放出して、P2Y1受容体を通じてマクロファージのM2分極化を促進することができる。また、前記自己集合体は、骨関節の滑膜(synovial membrane)に分布するマクロファージのM2分極化を促進し、前記マクロファージのM2分極化は、骨関節の滑液(synovial fluid)の抗炎症(anti-inflammatory)活性を有することができる。
【0088】
通常、関節炎の治療は炎症反応(inflammation)を防止する水準で行われ、軟骨を再生させる薬物はほとんど全くない状況である。骨関節には、MSC、軟骨細胞(chondrocyte)、マクロファージ(macrophage)、纎維母細胞(fibroblast)を含んで、多様な種類の細胞が存在し、骨関節内(joint cavity)の滑液(synovial fluid)のサイトカイン(cytokine)バランスが崩れる場合、炎症を促進する炎症誘発サイトカイン(pro-inflammatory cytokine)が抗炎症性サイトカイン(anti-inflammatory cytokine)よりも過度に増加する場合、骨関節炎が悪化される。
【0089】
前記自己集合体は、生体物質であるATPをリガンドに含み、前記ATPは多様な細胞膜受容体(receptor)と結合して、細胞の機能を制御することができる。前記ATPと結合する細胞膜受容体の種類は、ATPの濃度によって制御されることができる。前記マクロファージは、骨関節内滑液のサイトカインのバランスに大きな影響を与える可能性がある。骨関節炎が発生した骨関節内滑液には、約0.5nMのATPが含まれており、前記Fe-ATP自己集合体を通じてATP濃度を若干高めた場合(例えば、数μM)は、P2Y受容体シリーズを通じてM2分極化を促進して、抗炎症性サイトカインの分泌を促進するが、前記ATP濃度が非常に高い場合(例えば、数mM)は、P2X受容体シリーズを通じてM1分極化を促進して、炎症誘発サイトカインの分泌を促進する。
【0090】
具体的には、本実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体を骨関節炎が発生した部位に注入する場合、前記自己集合体は分解されてATPを放出し、前記ATPは、5-10μM濃度に制御されて、骨関節の滑膜(synovial membrane)に分布するマクロファージのM2分極化を促進し、前記マクロファージのM2分極化は、骨関節の滑液(synovial fluid)の抗炎症(anti-inflammatory)活性を有することができる。また、前記自己集合体の自分分解によって発生したATPが前記マクロファージのM2分極化を制御する場合、骨関節の滑液(synovial fluid)の抗炎症(anti-inflammatory)活性を有する間に、正常細胞では毒性を示さない場合もある。また、前記自己集合体は、骨関節の滑液(synovial fluid)の抗炎症(anti-inflammatory)環境を保持して骨軟骨を保護して、骨関節炎を予防、改善又は治療することができる。
【0091】
前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって移動が制御されることができる。よって、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体を生体内注入した後、前記外部磁場印加によって前記自己集合体はターゲット骨関節部位に移動して骨軟骨を保護して、骨関節炎を予防、改善又は治療することができる。
【0092】
本発明のまた他の実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体は、一つ以上の自己集合体を含み、前記自己集合体は、鉄イオンとリガンドが第1結合によって自己集合されることができる。この時、前記リガンドは、AMP(adenosine monophosphate)を含み、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体は、複数個の自己集合体が凝集されて、マイクロポアを有する3次元凝集体に備えられてもよい。前記3次元凝集体は、平均直径が500μm~10cmであってもよい。前記自己集合体は、前記3次元凝集体の形態で骨欠損部位に移植されて、欠損された骨組職を修復させる骨移植材として利用されることができる。例えば、前記3次元凝集体に形成された生体分子-金属イオン自己集合複合体で、平均直径が500μm未満の場合、骨移植材として用いるのに小さすぎて問題となり、10cmを超える場合には、前記3次元凝集体の強度が減少されて問題となる。
【0093】
前記3次元凝集体の形態は、用いられるモールドによって多様な形態の立体構造からなってもよく、内部に複数個のマイクロポアを含んでもよい。例えば、前記3次元凝集体は、前記マイクロポアが3次元的に相互連結されている網目構造に備えられてもよおい。
【0094】
大腿骨を含む長骨骨折で広範囲な領域で骨欠損が発生した場合、臨床的に治療が非常に難しい。現在、自家骨移植とともに多様な同種骨、異種骨、合成骨のような骨代替材を用いているが、骨代替材の比率が高いほど骨吸収率も高くなって、治療効果が低くなる。また、自家骨移植は、採取部位の痛症によるリハビリ遅延、出血、感染、医原性骨折のようなたくさんの合併症を誘発するという問題がある。
【0095】
本発明の実施形態による生体分子-金属イオン自己集合複合体で、前記自己集合体は自己分解されてAMPを放出することができるが、放出される前記AMPは、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSC)のアデノシン受容体の信号伝逹によって間葉系幹細胞(MSC)の骨分化(osteogenic differentiation)を促進し、前記間葉系幹細胞(MSC)の骨分化は骨生成を促進することができる。
【0096】
前記生体分子-金属イオン自己集合複合体は、骨欠損部位に移植される場合、前記骨欠損部位の移植材として作用しながら、同時に前記自己集合体の自己分解を通じてAMPを放出することができる。前記自己集合体で放出されたAMPは、骨欠損部位を満たし、MSC付着及びMSCの骨分化を促進することができる。
【0097】
また、本実施形態による前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって移動が制御されることができる。前記自己集合体は、前記3次元凝集体の形態で骨欠損部位に移植される場合、前記外部磁場印加によって前記自己集合体は、一方向及び他方向のいずれか一つ以上に移動することができる。
【0098】
前記自己集合体は骨欠損部位に移植され、前記自己集合体の表面に宿主細胞が付着されて骨格を形成することができる。また、前記自己集合体は、常磁性を有し、外部磁場印加によって移動が制御されることができる。例えば、前記自己集合体は、骨結束部位に移植する場合、前記外部磁場の印加によって自己集合体が移動することができる。この時、前記自己集合体の表面に付着された宿主細胞も一緒に移動することができる。
【0099】
前記自己集合体は、骨欠損部位に移植され、前記自己集合体は自己分解されて、1日~70日間前記AMPを放出することができる。前記自己集合体で放出される前記AMPは、宿主細胞の表面でアデノシン(adenosine)に分解されて、前記宿主細胞の表面のアデノシン受容体の信号伝逹(signaling)を促進することができる。例えば、前記アデノシン受容体は、アデノシンA2B受容体を含むことができる。
【0100】
前記自己集合体は、骨欠損部位に移植されて、欠損された骨組職を再生する場合、骨欠損移植材であるカルシウム-リン酸塩セメント(Ca-Phosphate cement)と同様の水準に骨再生を促進することができる。また、前記自己集合体は、骨欠損部位に移植されて欠損された骨組職を再生する間に、正常細胞では毒性を示さないこともある。
【0101】
本実施形態による治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体は、単量体である自己集合体が互いに結合して形成された自己集合複合体であってもよく、前記自己集合体は、鉄イオン及び前記鉄イオンと第1結合で自己集合されるリガンドを含んでもよい。また、前記自己集合体は、互いに隣接する自己集合体が第2結合で自己集合されて、前記治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体を形成してもよい。
【0102】
前記自己集合体は、前記自己集合体の周辺環境によって自己分解されることができ、また、自己分解される速度を制御することができる。
【0103】
前記リガンドは、AMP(adenosine monophosphate)及びATP(adenosine triphosphate)のいずれか一つ以上を含んでもよい。例えば、前記自己集合体が自己分解される場合、前記鉄イオン又はリガンドが放出されることができる。また、前記自己集合体の自己分解される速度を制御することにより、前記鉄イオン又は前記リガンドが放出される速度を制御することができる。
【0104】
前記生体分子-金属イオン自己集合複合体は、製造方法、例えば鉄イオンを含む材料の濃度、前記リガンドを含む材料の濃度を制御することにより、前記治療用磁性生体分子-金属イオン自己集合複合体の大きさを制御することができる。
【0105】
前記自己集合体は、常磁性を有し、外部で印加される磁場によって移動が制御されることができるが、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体の移動を生体外部で制御することができ、また、前記生体分子-金属イオン自己集合複合体を生体内に移植した場合にも、外部で印加される磁場によって前記生体分子-金属イオン自己集合複合体の位置と移動速度を制御することができる。
【0106】
前記リガンドがAMP及びATPのいずれか一つ以上である場合、前記自己集合体は、前記フェロトーシスを通じて癌細胞の死滅を誘導し、前記リガンドがATPの場合、前記自己集合体は、骨関節炎を予防、改善又は治療することができる。また、前記リガンドがAMPの場合、前記自己集合体は骨欠損部位に移植されて、欠損された骨組職を再生することができる。
【0107】
以下、本発明の実施例及び比較例を記載する。しかしながら、下記実施例は、本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明の権利範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0108】
自己集合体の製造
1.材料
アデノシン-5’-モノホスフェート二ナトリウム塩(Adenosine-5’-monophosphate disodium salt、CAS:4578-31-8、アルファ・エイサー社(Alfa Aesar))
アデノシン-5’-トリホスフェート二ナトリウム塩(Adenosine5’-triphosphate disodium salt、CAS:51963-61-2、Daejung試薬)
塩化鉄(II)(Iron(II)chloride、97%、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)、25g、cat.No.372870)
PMMA(poly(methyl methacrylate)、直径125~150μm、Bangs Laboratories、BB05N)
2.Fe-ATP自己集合体の製造
製造例1
Fe-ATP自己集合体を合成するために、脱イオン水(DI water)を利用して、FeCl2溶液とATP(adenosine triphosphate)溶液を用意した。FeCl2溶液は、10mLの脱イオン水に25.35mgの塩化鉄(II)(Iron(II)chloride、97%、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)、25g、cat.No.372870)を添加して製造し、ATP溶液は、10mLの脱イオン水に110.23mgのアデノシン-5’-トリホスフェート二ナトリウム塩(Adenosine5’-triphosphate disodium salt、CAS:51963-61-2、Daejung試薬)を添加して製造した。
【0109】
1mLの20mM ATP溶液が収容された反応器に1mLの20mM FeCl2溶液を添加し、渦流混合器(Vortex Genie2、Scientific Industries)で混合して混合溶液を製造した。製造された混合溶液を室温で12時間保持して、Fe2+とATPとの間の自発的集合を誘導してFe-ATP自己集合体を製造した。Fe-ATP自己集合体を含有する溶液を10000rpmで5分間遠心分離した。未反応試薬を除去するために、上清液を捨て、脱イオン水を添加した後、溶液を遠心分離する過程を2回実行した。洗浄後、112.6mgの粒子状のFe-ATP自己集合体を2mLの脱イオン水に分散させた。製造されたFe-ATP自己集合体は、表1に示した。
【0110】
製造例2
混合溶液を製造する時、1mLの1mM ATP溶液が収容された反応器に1mLの1mM FeCl2溶液を利用し、製造された混合溶液を室温で30分間反応させることを除いては、製造例1と同様にFe-ATP自己集合体を製造し、これを表1に示した。
【0111】
製造例3
混合溶液を製造する時、1mLの0.1mM ATP溶液が収容された反応器に1mLの0.1mM FeCl2溶液を利用し、製造された混合溶液を室温で30分間反応させることを除いては、製造例1と同様にFe-ATP自己集合体を製造し、これを表1に示した。
【0112】
【表1】
3.Fe-AMP自己集合体の製造
製造例4
Fe-AMP自己集合体を合成するために、脱イオン水(DI water)にFeCl
2溶液とAMP(adenosine monophosphate)溶液を用意した。FeCl
2溶液は、10mLの脱イオン水に25.35mgの塩化鉄(II)(Iron(II)chloride、97%、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)、25g、cat.No.372870)を添加して製造し、AMP溶液は10mLの脱イオン水に78.24mgのAMP(adenosine monophosphate)を添加して製造した。
【0113】
1mLの20mM AMP溶液が収容された反応器に1mLの20mM FeCl2溶液を添加して、渦流混合器(Vortex Genie2、Scientific Industries)で混合して混合溶液を製造した。製造された混合溶液を室温で12時間保持し、Fe2+とAMPとの間の自発的集合を誘導してFe-AMP自己集合体を製造した。Fe-AMP自己集合体を含有する溶液を10000rpmで5分間遠心分離した。未反応試薬を取り除くために、上清液を捨て、脱イオン水を添加した後、溶液を遠心分離する過程を2回実行した。洗浄後、89.24gの粒子状のFe-AMP自己集合体を2mLの脱イオン水に分散させた。
【0114】
4.Fe3O4合成
製造例5
5.4gの塩化鉄(III)六水和物(FeCl3・6H2O)及び18.3gのオレイン酸ナトリウムを30mLの脱イオン水(DI)、40mLのエタノール(EtOH)及び70mLのヘキサンからなる混合溶媒に添加して、混合物を製造した。この混合物を60℃で8時間加熱し、上部ヘキサン層に含まれたオレイン酸鉄錯体を脱イオン水で洗浄し、ヘキサンを蒸発させて乾燥されたオレイン酸鉄錯体を得た。継いで、オレイン酸鉄錯体を0.14gのオレイン酸及び5gの1-オクタデセンと混合した。この混合溶液を320℃で30分間激烈に撹拌した後、25℃に冷却させた。冷却させた混合溶液で合成されたFe3O4ナノ粒子をエタノールで繰り返し洗浄した後、遠心分離して、平均直径が10nmのFe3O4ナノ粒子を製造した。
【0115】
自己集合体の基本性能評価方法
1.Fe-ATP自己集合体でFe又はATP放出特性確認
Fe-ATP自己集合体を利用して、Fe及びATP放出特性を確認した。
【0116】
FeCl2溶液は、10mLの脱イオン水に25.35mgの塩化鉄(II)(Iron(II)chloride、97%、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)、25g、cat.No.372870)を添加して製造し、ATP溶液は、10mLの脱イオン水に110.23mgのアデノシン-5’-トリホスフェート二ナトリウム塩(Adenosine5’-triphosphate disodium salt、CAS:51963-61-2、Daejung試薬)を添加して製造した。
【0117】
5mLの20mM ATP溶液と5mLの20mM FeCl2溶液をそれぞれファルコン(falcon)チューブで添加して、ボルテックスミキサー(Vortex Genie2、Scientific Industries)を利用して1分間混合して、混合溶液を製造した。製造された混合溶液を室温で12時間保持した。継いで、10000rpmで5分間遠心分離した。未反応試薬を含む上清液を除去し、これに10mLの脱イオン水を追加した。脱イオン水を追加した後、再び10000rpmで5分間遠心分離し、上清液を除去して、固体物質であるFe-ATP自己集合体を回収した。除去された上清液は、HPLCを通じて初期に添加されたATP量でアンローディングされたATP量を引いてATPローディング効率を測定するのに用いた。回収されたFe-ATP自己集合体に1mLのPBS溶液(pH7.4又はpH5.5)を添加し、これを透析袋(dialysis bag、SnakeSkinTM Dialysis Tubing、7kDa MWCO)に移した。
【0118】
Fe-ATP自己集合体を含む透析袋を4mLのPBS溶液(pH7.4又はpH5.5)が添加されたバイアルに入れて室温で保管した。Fe-ATP自己集合体を含む透析袋が入っているバイアルで、40μLの上清液を1日、3日、5日、7日にそれぞれ採取して放出されたFeの濃度又はATP濃度を測定して計算した。ここで、PBS溶液をバイアルに追加して全体体積を一貫するように保持した。
【0119】
累積ATP放出プロファイルは、分析カラム(XBridge BEH C18、130Å、4.6mm×250mm、粒径5μm)を有するHPLC(Arc HPLC Core System、Waters)で得た。移動相A及び移動相Bは次のように製造された。移動相Aの場合、0.06mol/LのK
2HPO
4、0.04mol/LのKH
2PO
4及び0.1mol/LのKOHを脱イオン水(pH7.0)に溶解させた。移動相Bは、PBS溶液である。
溶離プログラムは次の通りである。A/B=100/0(v/v)2分;A/B=2分間95/0(v/v);A/B=2分間80/20(v/v);A/B=1.3分間75/25(v/v);及びA/B=1.7分間100/0(v/v)実行した後、移動相A/B=100/0(v/v)をさらに1分間一定に保持した。流速は1.2mL/minでアイソクラチックで、注入されたサンプル体積は20μLであり、UV-vis吸光度は、260nmでモニタリングされた。また、累積Fe放出プロファイルは、多様なpHで累積Fe放出プロフィールを得るために、Fe分析(QuantiChrom
TM Iron Assay Kit、Bioassay systems)を用いた(下記
図7、
図14)。
【0120】
2.1.Fe-AMP自己集合体でAMP放出特性確認
Fe-AMP自己集合体を利用してAMP放出特性を確認した。
【0121】
累積AMP放出プロファイルを獲得して、AMP誘発骨折治癒のための持続的なAMP放出を確認した。Fe-AMP自己集合体を製造するために、アデノシン-5’-トリホスフェート二ナトリウム塩(Adenosine5’-triphosphate disodium salt、CAS:51963-61-2、Daejung試薬)を利用する代りに、アデノシン-5’-モノホスフェート二ナトリウム塩(Adenosine-5’-monophosphate disodium salt、CAS:4578-31-8、アルファ・エイサー社(Alfa Aesar))を利用し、その他には、Fe又はATP放出特性を確認するために製造されたサンプルと同じ方法でFe-ATP自己集合体を回収した。
【0122】
Fe-AMP自己集合体が備えられた透析袋が入っているバイアルで、400μLの上清液を1日、3日、7日、14日、21日にそれぞれ収集して放出されたAMPの濃度をHPLCを通じて測定した。累積AMP放出プロファイルは、累積ATP放出試験で用いられたのと同じ方法でHPLCによって得られた(下記、
図26参照)。
【0123】
3.IVIS L-012 ROS信号分析
発光プローブ(luminescent probe)L-012(Wako Chemical、韓国)を超純水H2Oに溶かし、実験する直前に新鮮な状態で用意した。50ulのインジェクション(injection)用量で、25mg/kgをマウスの背中に皮下投与した。
【0124】
CL(Chemiluminescence)放出評価は、indiGOTMソフトウェアとIVIS(In vivo Imaging System、NightOWL II LB 983、BERTHOLD Technologies GmbH、Germany)を用いて、L-012を注入した直後に始めた。十分なCL放出データを収集するために、マウスを毎回20秒間露出させた。マウスの皮膚で放出されるCLをリアルタイムで記録して視覚化した後、関心領域で放出するCLを総フラックス(photons/second)で定量化した。
【0125】
自己集合体を利用した癌細胞死滅、骨関節炎及び骨欠損治療評価方法
実験例1(癌細胞死滅、骨肉種モデル)
Fe-ATP自己集合体を合成するために、脱イオン水(DI water)を利用してFeCl2溶液とATP(adenosine triphosphate)溶液を用意した。5mLの40mM FeCl2溶液と5mLの40mM ATP(adenosine triphosphate)溶液を脱イオン水の中に混合して多様な濃度で用意した。5mLの20mM FeCl2溶液と5mLの20mM ATP(adenosine triphosphate)溶液を同じ濃度で添加し、ボルテックスミキサー(Vortex Genie2、Scientific Industries)を利用して、1分間混合して混合溶液を製造した。混合溶液を室温で12時間保持して、自己集合を誘導してFe-ATP自己集合体を製造した。Fe-ATP自己集合体を含有する溶液を10000rpmで5分間遠心分離した。未反応試薬を除去するために、上清液を捨て、脱イオン水を添加した後、溶液を遠心分離する過程を2回にわたって実行した。洗浄後、収集されたFe-ATP自己集合体粒子5mgを1mLの脱イオン水に分散させ、そのうち20μLをマウスに注入した。
【0126】
本実験で利用されたマウスは、8週齢のmale Balb/c nude マウス(Orient、Seongnam、South Korea)で、Fe-ATP自己集合体の骨肉種での効能を確認するために、下記表2のように、PBS(Phosphate-buffered saline)、ATP(Daejung試薬、CAS:51963-61-2)、DOX(ドキソルビシン)、Fe-ATP、Fe-ATP(mag)、Fe3O4、Fe3O4(mag)とともに比較した。この時、前記Fe-ATPは5mg/kg、Fe3O4は7mg/kgをそれぞれ注入した。
【0127】
【表2】
手術を行う前に、マウスに50-70%医療用酸素と2%イソフルラン(isoflurane)(CAS#26675-46-7)が混合されたガスを2L/minで注入してマウスを痲酔した。マウスの膝部位の肌を切開(skin incision)した後、膝関節を確認し、膝蓋骨(patella)筋を露出させた後切開して脛骨(tibia)の上部を露出させた。その後、露出された部位に注射針で穴を開けた後、予め用意したKHOS骨肉種細胞(1×107/mL、100uL)を骨髄内に注入した後、皮膚を縫合した。骨肉種細胞をマウスに注入した後、感染を防ぐために、抗生剤であるエンロフロキサシン(enrofloxacin、Baytril、Bayer、CAS#93106-60-6)を生理食塩水に5倍に希釈して、手術後5日間一日1回注射し、痛症を軽減させるために、鎮痛剤であるケトプロフェン(Ketoprofen、Ketopro inj、Unibio Co.Ltd、CAS#22071-15-4)を手術後1日中投与した。
【0128】
Fe-ATP自己集合体を注射する前、酸素に2%のイソフルラン(isoflurane)が混合されたガスを2L/minで注入して、マウスを吸入痲酔させた。手術4週後、表2に記載されたグループによって7日間隔で総6週間6回薬物を注入した。20μLのFe-ATP自己集合体をそれぞれ腫瘍部位に注射(injection)し、既存の化学療法薬物(chemoagent)の効果と比較するために、2mg/kgのドキソルビシン(Doxorubicin hydrochloride、ADマイシン(AD mycin)、保寧製薬(Boryung Pharmaceutical)、CAS#23214-92-8)を注射した。Fe3O4グループは、マウス内部に5mg/kgのFeイオンが注入されるように製作して、同じ体積である20μLで注入した。ここで、Fe-ATP自己集合体の注入量は5mg/kg(自己集合体重量/マウス重量)にし、Fe3O4の注入量は7mg/kg(自己集合体重量/マウス重量)にした。比較例として、PBSグループは、それぞれPBS(pH7.4)を同一体積である20μLで注入した。磁気的に標的化(magnetic targeting)を確認するために、各区分で(mag)に記載されたグループには270mTの円形ネオジム磁石(直径5mm、高さ2mm)を注射位置にテガダームとサージカル・テープで固定させた。
【0129】
6週が経った後、CO2を利用してマウスを安楽死させた後、足部位の腫瘍組職をサンプルとして採取し、組織検査(histology、Department of Pathology、Korea University、Seoul、Korea)を行った。
【0130】
実験例2(骨関節炎モデル)
実験例1と同一に製造された1mgのFe-ATP自己集合体粒子を10mLの脱イオン水に分散させ、20μLをラットに注入した。
【0131】
本実験で利用されたマウスは、8週齢のSprague-Dawleyラットであり、Fe-ATP自己集合体の骨関節炎での効能を確認するために、下記表3のように、PBS(Phosphate-buffered saline)(No treatment)、Fe-ATP、Fe-ATP(mag)とともに比較した。ここで、Fe-ATP自己集合体の注入量は、8ug/kg(自己集合体重量/ラット重量)である。ラット一匹の滑液(synovial fluid)は、約100μL程度であるので、2ugのFe-ATP自己集合体を20μLのPBSに溶かして注入した。Fe-ATP自己集合体を利用したATP放出プロファイルを参考すると(
図14参照)、常温でFe-ATP自己集合体で1日中約7%のATPが放出され、7日間約28%のATPが放出される。よって、Fe-ATP自己集合体8ug/kg(自己集合体重量/ラット重量)をラットに注入する場合、ラットの滑液内のATP濃度が5~8μMになって、M2マクロファージを促進するようになる。
【0132】
【表3】
下記の順でラットに実験を実行し、実験を実行する前に搬入された動物に対する7日間の検疫/順化過程を経た。
【0133】
まず、10mg/kgのラットにアルファキサロン(alfaxalone、10mg/kg、CAS#23930-19-0)と10mg/kgのキシラジン塩酸塩(Xylazine hydrochloride、10mg/kg、CAS#23076-35-9)を筋肉内注射し、酸素に2%のイソフルラン(isoflurane)が混合されたガスを2L/minで注入して、マウスを吸入痲酔させた。感染を防ぐために、抗生剤であるエンロフロキサシン(enrofloxacin、Baytril、Bayer、CAS#93106-60-6)を生理食塩水に5倍に希釈して、5mg/kgを、手術後、5日間一日1回注射し、痛症を軽減させるために、鎮痛剤であるケトプロフェン(Ketoprofen、Ketopro inj、Unibio Co.Ltd、CAS#22071-15-4)5mg/kgを手術後1日中皮内注射した。
【0134】
前十字靱帯切除術(Anterior cruciate ligament transection、ACLT)を実行するために、膝部位に肌を切開した後、膝関節を確認し、膝蓋腱(patella tendon)を横に移して前方十字靭帯を露出させた。露出された前方十字靭帯を眼科はさみで中央から1/3地点まで切って、ラックマンテスト(Lachman test)を実行して切断有無を確認した。生理食塩水で膝を洗浄した後、表3による処理を実行した。表3に対応するグループに対して、処理は関節腔内の関節液に注射する方式で実行した。各グループ別に、7日間隔で総8週間8回薬物を注入した。20μLのFe-ATP自己集合体、20uLのPBSを同一体積で注入した。Fe-ATP(mag)グループの場合、同一に20μLのFe-ATP自己集合体を注入しながら、Fe-ATP自己集合体の磁気的標的化を確認するために、270mTの円形ネオジム磁石(直径8mm、高さ2mm)を関節部位にサージカル・テープで固定した。それぞれの処理を実行した後、膝部位の肌を再び縫合し、8週が経ってから、次の単純放射線撮影及びマイクロコンピュータ断層撮影検査(Micro-CT)及び組織学的分析を行った。
【0135】
単純放射線撮影(0、2、4、6、8週)を行うために、10mg/kgのアルファキサロン(alfaxalone、10mg/kg、CAS#23930-19-0)と10mg/kgのキシラジン塩酸塩
(Xylazine hydrochloride、10mg/kg、CAS#23076-35-9)を筋肉内注射して、全身麻酔を先行した後に実行した。単純放射線撮影装備(Cios Alpha、Siemens)を利用して手術直後にACLTの確認及び周辺骨折発生有無を確認した。その後、単純放射線撮影を2週間間隔で8週間施行して、映像学的経過を観察し、ケルグレン-ローレンス分類法(Kellgren-Lawrence score)によって点数化した。
【0136】
Micro-CT(8週)及び組織学(8週)を確認するために、10mg/kgのアルファキサロン(alfaxalone、10mg/kg、CAS#23930-19-0)と10mg/kgのキシラジン塩酸塩(Xylazine hydrochloride、10mg/kg、CAS#23076-35-9)を筋肉内注射して全身麻酔をした後、CO2ガスで安楽死を誘導した。膝軟骨を採取して、4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)溶液に固定した。micro CT scan(Genoss、Suwon、Korea)を行って軟骨の再生状態を評価した。
【0137】
実験例3(骨欠損モデル)
3D Fe-AMP自己集合体をマイクロポアを有するスカフォールドの形態に製造した。3D Fe-AMP自己集合体マイクロポアを本スカフォールド(macroporous bone scaffold)の場合、PMMA(poly(methyl methacrylate)、浸出(leaching)方法を利用した。まず、円筒状ポリエチレン鋳型(直径8mm)にPMMA(直径125~150μm、Bangs Laboratories、BB05N)300mgを充填した。このモールドに脱イオン水に溶かした2M FeCl2溶液200μLを添加し、ボルテックスミキサーで5分間柔らかく混合した。次に、脱イオン水に溶かした2M AMP溶液200μLをモールドに添加し、ボルテックスミキサーを用いて5分間激烈に混合した。混合物を含有するモールドを密封して、25℃で1日中保持した。その後、3D Fe-AMP凝集体をモールドで分離し、PMMAを浸出するために、振動条件(100rpm)で3日間50mLのジクロロメタン(DCM)に含浸させた。DCMは、24時間ごとに交換した。3日後、Fe-AMP自己集合体が3D形態に凝集された3D Fe-AMP凝集体を50mLの脱イオン水に30分間浸けた後、常温で乾燥させた。3D Fe-AMP凝集体を1cm又は0.8cmの高さに切断して骨の治療に利用する前に紫外線を照射して30分間殺菌した。
【0138】
本実験で利用されたウサギは、16週~20週齢のNew Zealand White maleで、3D Fe-AMP凝集体の骨欠損治療の効能を確認するために、下記表4のように、比較群として処理しないグループ(No treatment、Control)、Short Fe-AMP、Short Fe-AMP(mag)、Long Fe-AMP、カルシウムリン酸塩(Ca-phosphate)にそれぞれ区分して処理した。ここで、Short Fe-AMPは、0.8cmのFe-AMP凝集体であり、Long Fe-AMPは、1cmのFe-AMP凝集体であり、(mag)は磁気的標的化を確認するために、270mTの円形ネオジム磁石(直径8mm、高さ2mm)をサージカル・テープで固定したのである。
【0139】
【表4】
下記の順でウサギに実験を実行し、実験を実行する前に搬入された動物に対する7日間の検疫/順化過程を経た。
【0140】
広範囲骨欠損モデルの製作(0-8週)で、手術に先立って深麻酔(xylazine+alfalaxone+isoflurane)を行い、抗生剤(enrofloxacin)と鎮痛剤(ketoprofen)を処理した。キシラジン(Xylazine 5mg/kg IM)、アルファキサロン(alfaxalone 3mg/kg IV)を筋肉内注射して痲酔し、抗生剤であるエンロフロキサシン(enrofloxacin 5mg/kg SC)と、鎮痛剤であるケトプロフェン(ketoprofen 5mg/kg IM)を皮内注射した後、酸素に2%のイソフルラン(isoflurane)が混合されたガスを2L/minで注入して、マウスを吸入痲酔させた。
【0141】
完全に深麻酔されたことを確認した後、ウサギの大腿部を約7cm切開し、その後、前外側接近法によって大腿骨に到逹した。その後、大腿骨幹部に1cmの骨欠損を作る位置を表示した後、切除部位に金属ピンを利用して穴を開けた。手術用電動鋸(Colibri II、Depuy Synthes)を利用して、骨切除部位のうち金属板が覆う部位のみ部分的に切除した。1.5cmの骨欠損近位部3つ、遠位部2つの金属ねじを固定することができるように、6ホール2.7ロッキングコンプレッションプレート(locking compression plate、LCP2.7 straight(6holes、L58mm)-Depuy Synthes)を位置させた後、近位部3つ、遠位部2つの金属ねじをウサギの骨が壊れないように真剣に固定した。部分切除を施行した骨切除部位を手術用電動鋸(Colibri II、Depuy Synthes)を利用して、完全切除を真剣に施行した。この時、ウサギの骨は脆性が高くて、壊れやすいため、真剣に実行した。
【0142】
骨欠損部位に3-D Fe-AMP凝集体又は骨移植材(主成分calcium triphosphate、NeoBone、SN Biologics、Suwon、Republic of Korea)を挿入した後、筋膜縫合及び皮膚縫合を施行した。Short Fe-ATP(mag)グループの場合、細胞集合(cell recruitment)のための磁気的な移動を制御するために、270mTの円形ネオジム磁石(直径20mm、高さ2mm)を手術部位に毎日交互に上側と下側に3回変えながら位置させ、テガダームとサージカル・テープで固定させた。その後、8週間の誘導膜の形成及び成熟を待ってから、手術後3日間抗生剤であるエンロフロキサシン(enrofloxacin 5mg/kg SC)と、鎮痛剤であるケトプロフェン(ketoprofen 5mg/kg IM)を注射した。実験結果を評価するために、次の単純放射線撮影及びマイクロコンピュータ断層撮影検査(Micro-CT)及び組織学(8週)の分析を行った。
【0143】
単純放射線撮影(0、2、4、6、8週)は、放射線撮影装備(Cios Alpha、Siemens)を利用して実行し、実行する前にキシラジン(Xylazine 5mg/kg IM)、アルファキサロン(alfaxalone 3mg/kg IV)を筋肉内注射して痲酔した後に行った。1次手術の直後に金属板固定と周辺骨折発生有無を確認した。その後、4週間の誘導膜熟成まで臨床的経過を観察し、経過に異常がある場合、1次手術後、2週に単純放射線撮影をして映像学的経過観察を行った。その後、2週間隔で単純放射線撮影を総8週間施行して、映像学的経過を観察し、これをRUST scoreを通じて点数化した。手術後8週で骨固定有無を正面(anteroposterior)、側面(lateral)の2枚の単純放射線撮影で4つの皮質骨の中で3個以上の固定を基準に評価した。
【0144】
マイクロコンピュータ断層撮影検査(Micro-CT)(0週、8週)は、器官(Genoss、Suwon、Korea)して行った。手術8週後にウサギを犠牲して(KCl)大腿骨(femur)を獲得し、4%パラホルムアルデヒド溶液に固定させた後、micro-CT撮影をして、再建された骨の容積を3Dソフトウェア(ゼノス提供)を通じて評価した。
【0145】
組織学(8週)検査は、安楽死に先立って深麻酔をした後に実行した。安楽死は、塩化カリウム(potassium chloride、用量:2mmol/kg、IV)を利用し、キシラジン(Xylazine 5mg/kg IM)、アルファキサロン(alfaxalone3mg/kg IV)を記入された用量の2倍用量にして痲酔させた後、塩化カリウム(potassium chloride、用量:2mmol/kg、IV)を注射して安楽死を誘導した。安楽死を誘導後には心停止が確かに発生したか否かを確認した。臓器毒性及び骨周辺筋肉組職検査は、H&E(Department of Pathology、Korea University、Seoul、Korea)で、骨免疫染色は、IHC(Osteocalcin、Genoss、Suwon、Korea)で実行した。
【0146】
自己集合体の基本性能及び自己集合体を利用した癌細胞死滅、骨関節炎、及び骨欠損治療評価結果
以下、
図3~
図32を利用して、本発明の実施形態によって製造された自己集合体の基本性能と、自己集合体を利用した癌細胞死滅、骨関節炎、及び骨欠損治療評価結果を示した。
【0147】
図3は、Fe-ATP自己集合体のSEMイメージと、常磁性を測定した結果である。前記Fe-ATP自己集合体の常磁性測定は、振動試料磁性測定装置(vibrating samplemagnetometry、VSM)を利用して測定した。
図3は、製造例1によって製造されたFe-ATP自己集合体のSEMイメージで、平均直径が600nmで均一な大きさの球形の粒子形態に製造されることを確認することができた。
【0148】
Fe-ATP自己集合体は、Fe2+の鉄イオンとATPが1次的には配位結合を通じて自己集合体を形成し、製造されたFe-ATP自己集合体は、互いに隣接するFe-ATP自己集合体の間の水素結合又はπ-π相互作用によって凝集されることを確認することができた。また、凝集された形態に製造されたFe-ATP自己集合体は、平均直径がほぼ均一な球形に製造されることを確認することができた。また、270mTの円形ネオジム磁石(直径8mm、高さ2mm)を利用して磁場を形成した後、Fe-ATP自己集合体は移動した。すなわち、製造例1によるFe-ATP自己集合体は、可逆的な(reversible)磁性特性である常磁性(paramagnetism)を有し、これによって、外部磁石に引き寄せられて動くことを示すことを確認することができた。
【0149】
図4は、本発明の一実施形態による平均直径がそれぞれ150nm及び70nmのFe-ATP自己集合体のSEMイメージである。
図4は、製造例2及び製造例3によって製造されたFe-ATP自己集合体で、鉄イオンの濃度と、ATPの濃度によって自己集合体の直径が制御されることを確認した。同じ方法で製造するが、製造例2のように、鉄イオンの濃度を1mM及びATP濃度を1mMとする場合は、Fe-ATP自己集合体の平均直径は150nmであり、製造例3のように、鉄イオンの濃度を0.1mM及びATP濃度を0.1mMとする場合、Fe-ATP自己集合体の平均直径は70nmに示した。すなわち、鉄イオンの濃度を高くしたり、又はATP濃度を高くする場合、Fe-ATP自己集合体の平均直径を増加させることができた。
【0150】
図5は、Fe-AMP自己集合体のTEMイメージである。
図5は、製造例4によって、鉄イオンとAMPを利用して製造されたFe-AMP自己集合体である。Fe-AMP自己集合体は、複数個が凝集された形態で、マイクロポアを有する3D形態に備えられることを確認することができた。すなわち、Fe-AMP自己集合体は複数個が凝集して備えられ、凝集したFe-AMP自己集合体の間にはマイクロポアを形成することを確認することができた。
【0151】
以下、
図6~
図12は、実験例1に関する実験結果である。
【0152】
図6は、Fe-ATP自己集合体を利用して、癌細胞にフェロトーシス(ferroptosis)を誘導する状態を概略的に示した図面である。
図6は、実験例1に対するもので、生体内に移植されたFe-ATP自己集合体を生体外部で磁力を印加して、Fe-ATP自己集合体を移動させることができた。また、Fe-ATP自己集合体を移動させる時、標的とした癌細胞に移動させることができ、その後、Fe-ATP自己集合体が自己分解されて、鉄イオン(Fe
2+)を持続的に放出して、癌細胞のフェロトーシスを誘導した。即ち、本実施形態によるFe-ATP自己集合体は、自己分解と、磁場によってFe-ATP自己集合体の位置を移動させて、特定癌細胞に対する標的化が可能である。よって、Fe-ATP自己集合体は、フェロトーシスを利用した癌治療のための鉄イオン-媒介されたフェントン(fenton)反応を可能にすることができる。
【0153】
図7は、鉄アッセイキット(iron assay kit)を利用して測定したpH5.5又はpH7.4でFe-ATP自己集合体の鉄イオン放出量を示したグラフである。実験例1でFe-ATP自己集合体で放出されたFe
2+の効果を確認する前に、生体流体と同様のPBSを利用して、Fe-ATP自己集合体でFe
2+放出量を確認した。pH5.5及びpH7.4の両側で、全部Fe-ATP自己集合体が自己分解されて、鉄イオンであるFe
2+が放出されることを確認することができた。また、pHが7.4の場合よりもpHが5.5の場合にFe
2+がより早く、よりたくさん放出されることを確認することができた。すなわち、Fe
2+の放出は、相対的に酸性条件で加速化され、Fe-ATP自己集合体の周辺条件を変化させることにより、Fe
2+の放出速度及び放出量を制御することができることを確認することができた。本実施形態によるFe-ATP自己集合体でFe
2+の放出量は、Fe-ATP自己集合体を多様に設計することにより、多様に製造することができる。
【0154】
図8は、各条件によるDCFDA染色で測定した細胞内ROS濃度を示した。下記実験例1によって、マウスで実験する前に細胞で各条件による実験を実行した。各条件は、下記表5に示すように、KHOS cancer cellを利用して、対照群であるPBSのみ処理、DOXのみ処理、Fe-ATP処理、ATPのみ処理、及びFeCl
2処理に区分した。ここで、FeCl
2の場合は、溶けてFe
2+とCl
-に分解されるので、Fe-ATPで放出されるFe
2+と比較するために追加した。Fe-ATP自己集合体を利用した場合、PBSのみ同じ体積で注入した対照群(no treatment)に比べて、ROS生成が促進されることを確認した。また、Fe-ATP自己集合体を利用した場合は、ATPのみを利用した場合よりもROS生成が促進された。すなわち、これはFe-ATP自己集合体の自己分解によって発生した鉄イオンによる効果に判断される。
【0155】
本発明のFe-ATP自己集合体は、癌細胞治療に通常用いられるドキソルビシン(DOX)よりも効果的にROSを生成させることを確認した。
図8は、癌細胞を示したもので、癌細胞の場合、内部に過酸化水素の濃度が一般細胞(20nM)よりも高い濃度(10μM-100μM)で、本実施形態によるFe-ATP自己集合体で自己分解されて放出されたFe
2+とのフェントン反応で過量のROSを生成するようになって、フェロトーシス(ferroptosis)を通じた癌細胞死滅が発生する。
【0156】
【表5】
図9は、物質注入2時間後にIVIS L-012 ROS信号を分析した結果である。
図9は、実験例1に対するもので、Fe-ATP自己集合体は、生体内でROS生成を大きく刺激することを確認することができた。対照群であるPBSはROSがほとんど生成されず、Fe
3O
4は、PBSのみ処理した場合と同様の結果を示した。これは、Fe
3O
4は、生体内で分解されず、Fe
2+を放出しないからであると判断される。また、本実施形態によるFe-ATP自己集合体は、ドキソルビシン(DOX)よりも高い効果を示した。通常の癌治療に用いられるドキソルビシン(DOX)は、短い時間にはROS放出にはほとんど効果が発生しないが、Fe-ATP自己集合体は、短い時間にも過量のROSを発生させて、癌細胞の死滅により効果的であることを確認することができた。
【0157】
図10は、磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体の持続的なFe
2+放出を通じた癌細胞のフェロトーシスを確認した結果である。Fe-ATP自己集合体は、PBS及びFe
3O
4よりも癌細胞治療に優れた効果を示すことを確認することができた。また、Fe-ATP自己集合体に対して外部で磁場Fe-ATP(mag)を印加した場合には、前記Fe-ATP自己集合体が磁気的に標的化されて、癌細胞治療により効果が上昇することを確認することができた。磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体は、通常用いられる抗癌剤であるドキソルビシン(DOX)に対応する水準に癌発生を抑制することを確認することができた。一方、Fe
3O
4のみを利用した場合には、磁気的に標的化有無に関係なく生体内で分解効率が低くて、癌の発生を抑制できないことを確認することができた。
【0158】
図11は、磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体がドキソルビシンと同様に骨肉種(osteosarcoma)癌を効果的に治療することを示した。
図11で、H&E染色で紫色で現われる核が多い場合、癌細胞がたくさん存在することを意味し、TUNEL染色で茶色で現われるDNA fragmentが多い場合、癌細胞が多数死滅されたことを意味する。また、癌組職は、ヘマトキシリン(Hematoxylin)及びエオシン(eosin)を利用したH&E染色及びTUNEL染色で示した。免疫組職化学(immunohistochemistry;IHC)染色を利用し、Fe-ATP自己集合体による癌細胞死滅で、放出されたLPO、GPX4、及びXc受容体は、Fe-ATP自己集合体で放出されたFe
2+によるフェントン反応によって刺激されたフェロトーシスに寄与することを確認することができた。
【0159】
図12は、Fe-ATP自己集合体を生体内に移植した後の毒性を確認した結果である。
図12で、骨肉種マウスモデルで磁場下でFe-ATP自己集合体を移植した後にも、対照群はPBSと同様に現われ、生体内主要臓器で毒性が観察されないことを確認することができた。すなわち、本実施形態によるFe-ATP自己集合体は自己分解されて、Fe
2+を放出しても、人体内に毒性がなく、磁場を印加する場合にも毒性がないことを確認することができた。
【0160】
【0161】
図13は、磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体の軟骨保護(Chondroprotective)効果を確認した結果である。
図13は、実験例2に対するもので、磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体は自己分解されてATPを放出し、放出されたATPは、抗炎症マクロファージの分極を誘導して、骨関節炎の治療に効果的であることを示した。
【0162】
図14は、HPLCで測定したFe-ATP自己集合体でATP放出累積プロファイルを示したグラフである。実験例2でFe-ATP自己集合体で放出されたATPの効果を確認する前に、生体流体と同様のPBSを利用してFe-ATP自己集合体でATP放出量を確認した。本実施形態によるFe-ATP自己集合体は自己分解されて、上記検討したように、鉄イオンが放出されながら、またATPも放出されることを確認することができた。また、Fe-ATP自己集合体で、約25日間30%のATPが放出されることを確認することができた。本実施形態によるFe-ATP自己集合体でATPの放出量は、Fe-ATP自己集合体を多様に設計することにより、多様に製造することができる。
【0163】
図15~
図17は、下記実験例2によってラットで実験する前に細胞で各条件による実験を実行した。各条件は下記表6に示すように、対照群であるPBSのみ処理、Fe-ATP処理、ATPのみ処理、FeCl
2処理及びFe
3O
4処理に区分した。
【0164】
【表6】
図15は、Fe-ATP自己集合体の分解を確認した結果である。
図15を参照すると、各条件によって、Arg-1(M2分極化マーカー)、iNOS(M1分極化マーカー)、及びDapiの免疫蛍光染色で確認した。PBS(no treatment)、FeCl
2、Fe
3O
4では、Arg-1(M2分極化マーカー)が示されず、ATPが含まれたサンプルであるFe-ATP自己集合体及びATPのみで、M2分極化マーカーArg-1が強く示されることを確認することができた。Fe-ATP自己集合体は分解されてATPを放出し、これは骨関節炎治療のためのマクロファージのATP-媒介された抗炎症性分極化を可能にすることを確認することができた。
【0165】
図16は、Fe-ATP自己集合体の分解によってマクロファージの分極化を確認した結果である。
図16を参照すると、Fe-ATP自己集合体は自己分解されてATPを放出し、骨関節炎治療のためのマクロファージのATP-媒介された抗炎症分極化を可能にすることを確認することができ、これをフローサイトメトリー(flow cytometry)を通じて確認することができた。
【0166】
図17は、Fe-ATP自己集合体の分解をウェスタンブロッティング(western blotting)で確認した結果である。Fe-ATP自己集合体は分解されて、マクロファージのAIP-媒介された抗炎症分極化を可能にすることを確認した。低い濃度のATPは、マクロファージのM2分極化を促進するP2Y1信号伝逹を刺激し、低い濃度のATPは、マクロファージのM2分極化を抑制するP2X7信号伝逹を抑制することを確認することができた。
【0167】
図18は、Fe-ATP自己集合体による骨関節炎治療効果を確認するための膝骨関節のC-Arm及び3-DマイクロCTイメージである。0、2、4、6及び8週で、ACLT及び骨関節炎モデルの末梢骨折を識別するために、膝骨関節のC-Armイメージを確認した。8週目で骨関節炎モデルのACLT及び末梢骨折を確認するために、3-DマイクロCTイメージを確認した。PBS(no treatment)に比べて、Fe-ATP自己集合体及び磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体は、骨関節炎治療に効果があることを確認することができた。
【0168】
図19は、8週目の骨関節炎モデルの膝骨関節の2-DマイクロCTイメージ、H&E染色、サフラニン-o(safranin-o)(S-O)染色イメージである。
図19は本実施形態によるFe-ATP自己集合体を処理した場合に対してACLT及び末梢骨折を確認した。Fe-ATP自己集合体及び磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体は、膝関節の軟骨を保護して、軟骨が損傷されることを防止することを確認した。
【0169】
図20は、8週目の骨関節炎モデルの膝骨関節のH&E染色、サフラニン-o(safranin-o)(S-O)染色及びコラーゲンX染色イメージである。
図20では、8週目の骨関節炎モデルでACLT及び末梢骨折を確認した。Fe-ATP自己集合体及び磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体は、抗炎症性マクロファージ分極化を通じて炎症を緩和し、軟骨で骨に転移を媒介する肥大分化された軟骨細胞(hypertrophic differentiated chondrocytes)の形成を抑制した。特に、磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体は、Fe-ATP自己集合体よりもさらに高い効果を示した。ここで、コラーゲンXは、肥大分化された軟骨細胞を染色したが、肥大分化された軟骨細胞は、cartilage-to-bone転移を促進して、骨関節炎を悪化させることを確認した。
【0170】
図21は、8週目の骨関節炎モデルの膝骨関節の滑膜のiNOS及びArg-1染色イメージである。
図21では、骨関節炎モデルのACLT及び末梢骨折を確認した。Fe-ATP自己集合体は、P2Y1信号伝逹を通じて、マクロファージのM2分極化を促進して軟骨分解から膝関節を保護し、特に、磁気的に標的化されたFe-ATP自己集合体はより効果的であることを確認することができた。
【0171】
図22は、骨関節炎ラットモデル(rat model)で確認したFe-ATP自己集合体の毒性結果である。磁場下でFe-ATP自己集合体を多様な部位に移植した後確認し、主要臓器で生体内毒性が現われなかった。すなわち、本実施形態によるFe-ATP自己集合体は自己分解されて、ATPを放出しても、人体内に毒性がなく、磁場を印加する場合にも毒性がないことを確認することができた。
【0172】
【0173】
図23は、3D Fe-AMP自己集合体の骨再生効果を概略的に示した図面である。
【0174】
図23は、実験例3に対するもので、3D Fe-AMP自己集合体は、アデノシン-A2B受容体信号伝逹で媒介された幹細胞の造骨細胞分化によって骨再生効果を示すことを確認することができる。3D Fe-AMP自己集合体は、アデノシン-A2B受容体信号伝逹を通じてdegraded-AMP-媒介骨折治療のための磁気運動に基づく細胞の動員(recruitment)ができるように3次元マクロ多孔性凝集体に形成された。
【0175】
図24は、3D形態のFe-AMP自己集合体が凝集されたマイクロポア構造を示したSEMイメージである。本実施形態によるFe-AMP自己集合体は、マイクロポア構造を有する3D形態に製造が可能であり、その大きさも数マイクロメートルから数十センチメートルまで大きさを多様に制御することができる。また、このように製造されたFe-AMP自己集合体は、生体外又は生体内で自己分解されることができ、自己分解される場合、鉄イオンFe
2+又はAMPを放出することを確認することができた。
【0176】
図25は、3D形態のFe-AMP自己集合体を磁気的に標的化する状態を示した図面である。
図25を参照すると、3D形態のFe-AMP自己集合体も外部で磁場を印加する場合、3D形態のFe-AMP自己集合体の移動を制御することができた。
【0177】
図26は、Fe-AMP自己集合体で時間によって放出されたAMPを示したグラフである。実験例3でFe-AMP自己集合体で放出されたAMPの効果を確認する前に、生体流体と同様のPBSを利用して、Fe-AMP自己集合体でAMP放出量を確認した。本実施形態によるFe-AMP自己集合体は、時間が経つにつれて自己分解されて、AMPを放出することを確認することができ、その放出時間は約25日間持続され、約40%が放出されることを確認することができた。本実施形態によるFe-AMP自己集合体でAMPの放出量は、Fe-AMP自己集合体を多様に設計することによって、多様に製造することができる。
【0178】
図27及び
図28は、下記実験例3によってウサギで実験する前に細胞で各条件による実験を実行した。各条件は、下記表7に示したように、対照群であるPBSのみ処理、Fe-AMP処理、AMPのみ処理、アデノシン(Adenosine)及びPO
4(Adenosine+PO
4)の複合処理、及びAdenosine処理、PO
4処理、FeCl
2処理、及び骨形成誘導培地(Osteogenic induction medium)処理に区分した。ここで、FeCl
2の場合は、溶けてFe
2+とCl
-に分解されるので、Fe-ATPで放出されるFe
2+と比較するために追加した。
【0179】
【表7】
図27は、3D Fe-AMP自己集合体で放出されたAMP-分解アデノシンによって骨形成分化が促進されることを確認した結果である。Fe-AMP自己集合体で放出されたAMP-分解アデノシンは、骨形成分化誘導培地と類似し、アクチン(actin)及びDAPI陽性核(dapi-positive nuclei)及びALP化学染色とともにRUNX2及びオステオカルシンの免疫蛍光染色で分析した。Fe-AMP自己集合体は、骨分化(osteogenic differentiation)を促進する骨形成誘導培地(Osteogenic induction medium)に対応するだけ幹細胞の骨形成分化を誘導し、これはアデノシン(Adenosine)でも同様に骨形成分化を誘導した。すなわち、Fe-AMP自己集合体は、アデノシン信号伝逹(adenosine signaling)を通じて幹細胞の骨形成分化を誘導し、これをアクチン(actin)及びDapi陽性核(dapi-positive nuclei)及びALP化学染色とともにRUNX2及びオステオカルシンの免疫蛍光染色で確認することができた。
【0180】
図28は、3D Fe-AMP自己集合体で放出されたCD73-媒介AMP-分解アデノシンによって骨形成分化を確認したウェスタンブロッティング結果である。
図28を参照すると、Fe-AMP自己集合体で放出されたCD73-媒介AMP-分解アデノシンは、アデノシン-A2B受容体信号伝逹を通じて骨形成分化を促進し、A2B受容体抑制剤(PSB 603)を添加することにより、アデノシン-A2B受容体信号伝逹を抑制して、hMSCの骨形成分化が抑制された。CD73は、AMPをadenosine+PO
4に分解し、アデノシン-A2B受容体の信号伝達によって骨形成分化が促進されることを確認することができた。
【0181】
図29は、0、2、4、6及び8週で骨折を確認するための大腿骨のC-Armイメージである。
図29を参照すると、比較群に対して、本発明の3D Fe-AMP自己集合体は、通常用いられる骨折用移植材であるリン酸カルシウムと同様の効果を示すことを確認することができた。具体的には、Short Fe-AMP自己集合体は、対照群に比べて骨折治療に効果があったが、磁気的に標的化されたShort Fe-AMP(mag)自己集合体がShort Fe-AMP自己集合体に比べて骨折治療にさらに効果的であった。また、Short Fe-AMP(mag)自己集合体とLong Fe-AMP自己集合体が同様にリン酸カルシウムと類似するように骨折を治療することを確認することができた。すなわち、Short Fe-AMP自己集合体とShort Fe-AMP(mag)自己集合体を比較すると、Short Fe-AMP(mag)自己集合体は磁石によって動きを付与することができ、これによって骨折治療により効果的であることを確認することができた。
【0182】
図30は、8週目の骨折を識別するための大腿骨のマイクロCTイメージである。
図30で、Short Fe-AMP(mag)自己集合体は、磁気的移動に基づいた細胞動員(recruitment)及び低下されたAMP-媒介アデノシン-A2B受容体信号伝達に起因した全体的な骨折治療を示した。Long Fe-AMP自己集合体は、全体的な骨折治癒を示し、これは低下されたAMP-媒介アデノシン-A2B受容体信号伝達に起因することを確認した。骨折治療の効果は、Long Fe-AMP自己集合体、Short Fe-AMP(mag)自己集合体、及びShort Fe-AMP自己集合体の順に示し、Long Fe-AMP自己集合体は、リン酸カルシウムとほぼ同様の効果を示した。また、
図30で、P valueが低いほど二つの値の差が大きくなることを意味する。Control
vs Short Fe-AMPは、p=0.074、Control
vs Short Fe-AMP(mg)は、p<0.001、Control
vs Long Fe-AMPは、p<0.001、Control vs リン酸カルシウムは、p<0.001、及びShort Fe-AMP vs Short Fe-AMP(mg)P=0.008にそれぞれ示した。
【0183】
図31は、骨折に対するH&E、オステオカルシン、及びTRAP染色イメージである。Short Fe-AMP(mag)自己集合体は、磁気的移動に基づいた細胞動員(recruitment)及び低下されたAMP-媒介アデノシン-A2B受容体信号伝達に起因した全体的骨折治療を示した。Long Fe-AMP自己集合体は、全体的な骨折治癒を示し、これは、低下されたAMP-媒介アデノシン-A2B受容体信号伝達に起因することを確認した。
【0184】
図31を参照すると、H&E染色イメージを通じて組職(tissue)の模様、オステオカルシン染色イメージを通じて骨形成分化の程度、TRAP染色イメージを通じて破骨細胞(osteoclast)の有無を確認することができた。Long Fe-AMP自己集合体とShort Fe-AMP(mag)自己集合体では欠陥
(defect)の中部分まで連結されて骨が生成されたことを確認することができ、破骨細胞が活性化されたことを参照すると、骨環境の分解と再生性が促進されて、骨が育つ環境が造成されたことに見える。Short Fe-AMP自己集合体の場合、磁場が印加されなかったため、新たに生成された骨が結合部位を全部連結できないことを確認することができた。
【0185】
図32は、生体内3D Fe-AMP自己集合体の毒性を確認した結果である。3D Fe-AMP自己集合体を骨折治癒ウサギモデルに移植した後、磁場下で確認し、主要臓器で毒性が現われないことを確認した。
【0186】
上述したように、本実施形態によるFe-ATP自己集合体又はFe-AMP自己集合体は、生体内で毒性がなく、生体内又は生体外で自己分解されて、鉄イオン又はATP/ADPを放出することができ、その放出量及び放出速度を制御することができる。また、常磁性を有するので、外部磁場印加によって特定位置に移動を制御して磁気的に標的化されることができる。また、Fe-ATP自己集合体又はFe-AMP自己集合体を磁気的に標的化した場合にも、生体内で毒性が発見されなかった。
【0187】
具体的には、Fe-ATP自己集合体は、フェロトーシスを通じる癌細胞死滅を誘導して癌治療に効果的である。また、Fe-ATP自己集合体は、ATPを放出することによって、骨関節炎を治療することができ、Fe-AMP自己集合体は、骨欠損部位に移植材として作用することができる。
【0188】
本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は本発明がその技術的思想や必須的な特徴を変更しなくても他の具体的な形態に実施され得ることを理解するはずである。したがって、以上で記述した実施形態はすべての面で例示的なもので、限定的でないことに理解すべきである。本発明の範囲は、上記詳細な説明よりは後述する特許請求範囲によって示され、特許請求範囲の意味及び範囲そしてその均等概念から導出されるすべての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれることに解釈されるべきである。