(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117068
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
A63B37/00 512
A63B37/00 614
A63B37/00 632
A63B37/00 644
A63B37/00 662
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010311
(22)【出願日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2023022442
(32)【優先日】2023-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】兼子 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】鯨井 悠子
(72)【発明者】
【氏名】永倉 光
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 建彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡明
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゴルフボールの硬さを維持しつつ、低反発化したゴルフボールを提供する。
【解決手段】ゴルフボールは、構成部材の少なくとも一部が、基材ゴム、共架橋剤、および、架橋開始剤を含有するゴム組成物の硬化物から形成されており、前記基材ゴムが、天然ゴムおよび合成ゴムを含有し、前記ゴム組成物の硬化物中の前記共架橋剤のグラフト率が、40質量%~80質量%であり、前記ゴム組成物の硬化物は、基材ゴム100質量%中の天然ゴムの含有率が40質量%以下の場合には下記式(1)を満足し、40質量%超の場合には下記式(2)を満足することを特徴とする。
0.70≦(100-A)/X≦1.25・・・(1)
0.70≦A/(100-X)≦1.25・・・(2)
式中、Aは基材ゴム成分中の天然ゴムの含有率(質量%)を表し、Xは共架橋剤のグラフト率(質量%)を表す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部材の少なくとも一部が、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、および、(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物の硬化物から形成されており、
前記(a)基材ゴムが、(a1)天然ゴムおよび(a2)合成ゴムを含有し、
前記ゴム組成物の硬化物中の前記(b)共架橋剤のグラフト率が、40質量%~80質量%であり、
前記ゴム組成物の硬化物は、(a)基材ゴム100質量%中の(a1)天然ゴムの含有率が40質量%以下の場合には下記式(1)を満足し、40質量%超の場合には下記式(2)を満足することを特徴とするゴルフボール。
0.70≦(100-A)/X≦1.25 ・・・(1)
0.70≦A/(100-X)≦1.25 ・・・(2)
[式中、Aは基材ゴム成分中の天然ゴムの含有率(質量%)を表し、Xは共架橋剤のグラフト率(質量%)を表す。]
【請求項2】
構成部材の少なくとも一部が、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、および、(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物の硬化物から形成されており、
前記(a)基材ゴムが、(a1)天然ゴムおよび(a2)合成ゴムを含有し、
下記式(3)および(4)を満足することを特徴とするゴルフボール。
3.5≦(100-A)/Y≦5.0 ・・・(3)
3.0≦A/Z≦7.0 ・・・(4)
[式中、Aは基材ゴム成分中の天然ゴムの含有率(質量%)を表し、Yは(a)基材ゴム100質量部に対する(b)共架橋剤のグラフトポリマー量(質量部)、Zは(a)基材ゴム100質量部に対する(b)共架橋剤の非グラフトポリマー量(質量部)を表す。]
【請求項3】
前記(a)基材ゴム100質量%中の天然ゴムの含有率が、10質量%以上である請求項1または2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
ワンピースゴルフボールであり、ゴルフボール本体が前記ゴム組成物の硬化物から形成されている請求項1または2に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記ゴルフボールの直径が、40mm~45mmであり、
前記ゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)が、2.5mm~6.0mmであり、
前記ゴルフボールの反発係数(e40)が、0.500~0.700である請求項4に記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記圧縮変形量が、3.0mm~6.0mmである請求項5に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、練習場で使用されるゴルフボールとして、飛距離を抑制したゴルフボールが開発されている。例えば、特許文献1には、基材ゴム100重量部に対し低反発特性ゴム3~35重量部、メタクリル酸20~30重量部、およびメタクリル酸に金属塩を形成し得る金属化合物20~50重量部を含有する組成物を加硫して得られる練習場用ゴルフボールが記載されている(特許文献1(請求項1、第3頁左上欄第11~17行)参照)。
【0003】
また、特許文献2には、基材ゴム100重量部に対し、10~60モル%エポキシ化された天然ゴム3~35重量部、メタクリル酸20~35重量部および酸化亜鉛20~50重量部含有する組成物から得られる練習場用ゴルフボールが記載されている(特許文献2(請求項1、第2頁左下欄第4行~右下欄第2行)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-92780号公報
【特許文献2】特開昭61-71069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、室内練習場のようにスペースが限られた練習場が増加しており、飛距離を抑制したゴルフボール求められている。しかしながら、狭い練習場でも好適に使用できるように低反発化した場合、ゴルフボールが柔らかくなり過ぎる傾向があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ゴルフボールの硬さを維持しつつ、低反発化したゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することができた本発明のゴルフボールの第1態様は、構成部材の少なくとも一部が、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、および、(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物の硬化物から形成されており、前記(a)基材ゴムが、(a1)天然ゴムおよび(a2)合成ゴムを含有し、前記ゴム組成物の硬化物中の前記(b)共架橋剤のグラフト率が、40質量%~80質量%であり、前記ゴム組成物の硬化物は、(a)基材ゴム100質量%中の(a1)天然ゴムの含有率が40質量%以下の場合には下記式(1)を満足し、40質量%超の場合には下記式(2)を満足することを特徴とする。
0.70≦(100-A)/X≦1.25 ・・・(1)
0.70≦A/(100-X)≦1.25 ・・・(2)
[式中、Aは基材ゴム成分中の天然ゴムの含有率(質量%)を表し、Xは共架橋剤のグラフト率(質量%)を表す。]
【0007】
本発明の第1態様で使用するゴム組成物の硬化物は、(a)基材ゴムとして(a1)天然ゴムを含有することで反発係数が低減されている。また、(a1)天然ゴムの含有率に応じて式(1)または式(2)を満足することで、硬化物の硬度を制御することができ、圧縮変形量を適切な範囲に調節できる。よって、構成部材の少なくとも一部を前記ゴム組成物の硬化物から構成することで、ゴルフボールの硬さを維持しつつ、低反発化したゴルフボールが得られる。
【0008】
上記課題を解決することができた本発明のゴルフボールの第2態様は、構成部材の少なくとも一部が、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、および、(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物の硬化物から形成されており、前記(a)基材ゴムが、(a1)天然ゴムおよび(a2)合成ゴムを含有し、下記式(3)および(4)を満足することを特徴とする。
3.5≦(100-A)/Y≦5.0 ・・・(3)
3.0≦A/Z≦7.0 ・・・(4)
[式中、Aは基材ゴム成分中の天然ゴムの含有率(質量%)を表し、Yは(a)基材ゴム100質量部に対する(b)共架橋剤のグラフトポリマー量(質量部)、Zは(a)基材ゴム100質量部に対する(b)共架橋剤の非グラフトポリマー量(質量部)を表す。]
【0009】
本発明の第2態様で使用するゴム組成物の硬化物は、(a)基材ゴムとして(a1)天然ゴムを含有することで反発係数が低減されている。また、硬化物が式(3)および式(4)を満足することで、低反発化しつつ硬化物の硬度を制御することができ、圧縮変形量を適切な範囲に調節できる。よって、構成部材の少なくとも一部を前記ゴム組成物の硬化物から構成することで、ゴルフボールの硬さを維持しつつ、低反発化したゴルフボールが得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低反発化されたゴルフボールであって、ゴルフボールの硬さも良好なゴルフボールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るワンピースゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るマルチピースゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
【
図3】ゴルフボールの圧縮変形量と反発係数との関係を示すグラフである。
【
図4】ゴルフボールの圧縮変形量と反発係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[ゴム組成物]
本発明のゴルフボールは、構成部材の少なくとも一部が、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、および、(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物の硬化物から形成されている。
ゴム組成物の硬化物では、(a)基材ゴムに、(b)共架橋剤が反応して架橋を形成することで硬さや反発性能が得られる。ここで、架橋構造は(a)基材ゴムに(b)共架橋剤がグラフトポリマー化することで形成されるが、(a)基材ゴムが(a1)天然ゴムを含有することで、(b)共架橋剤の中でグラフトポリマー化する割合を低減することができる。
【0013】
((a)基材ゴム)
前記(a)基材ゴムは、(a1)天然ゴム(NR)および(a2)合成ゴムを含有する。ゴム組成物の硬化物では、(a)基材ゴムに、(b)共架橋剤が反応して架橋を形成することで硬さや反発性能が得られる。ここで、架橋構造は(a)基材ゴムに(b)共架橋剤がグラフトポリマー化することで形成されるが、(a)基材ゴムが天然ゴムを含有することで、天然ゴムの主鎖骨格であるポリイソプレンの立体障害により、共架橋剤がグラフトし難く、(b)共架橋剤の中でグラフトポリマー化する割合が低減する。そのため、反発に寄与する架橋が形成され難くなり、硬化物の反発性が低下する。
【0014】
((a1)天然ゴム)
前記(a1)天然ゴムは、天然ゴムのラテックス(乳液)を産出する植物に傷をつけてラテックスを回収し、前記ラテックスに含まれるゴム成分を凝固させることで作られる。前記天然ゴムは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記天然ゴムのラテックスを産出する植物としては、例えば、トウダイグサ科のパラゴムノキ、セアラゴムノキ、クワ科のインドゴムノキ、パナゴムノキ、ラゴスゴムノキ、マメ科のアラビアゴムノキ、トラガントゴムノキ、キョウチクトウ科のクワガタノキ、ザンジバルツルゴム、フンツミアエラスチカ、ウルセオラ、キク科のグアユールゴムノキ、ゴムタンポポ、アカテツ科のガタパーチャノキ、バラタゴムノキ、サポジラ、ガガイモ科のオオバナアサガオ、トチュウ科のトチュウ等が挙げられる。
【0016】
前記天然ゴムとしては、原料のラテックスに恒粘度剤等を入れてゴム粘度を安定化したCVグレード、および、ゴム粘度を安定化していない非CVグレードが挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に安定した粘度を有するCVグレードが好ましい。なお、前記天然ゴムは、SMR(標準マレーシアゴム)、SVR(標準ベトナムゴム)のいずれもよい。
【0017】
前記天然ゴムは、シス-1,4-ポリイソプレンであり、シートゴム、ブロックゴムのいずれも使用できる。また、天然ゴムには、天然ゴムを変性した、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、ハロゲン変性天然ゴム、脱蛋白天然ゴム、マレイン酸変性天然ゴム、スルホン酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴムも含まれる。これらの中でも、前記天然ゴムは、エポキシ化天然ゴムを含有しないことが好ましい。
【0018】
前記天然ゴムとしては、技術的格付けゴム(Technical Specified Rubbers,TSR)、視覚的格付けゴム(Ribbed Smoked Sheet,RSS)が好ましい。また、前記天然ゴムは、粘度安定化剤が配合されていてもよい。
【0019】
前記(a1)天然ゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、30以上が好ましく、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上であり、80以下が好ましく、より好ましくは75以下、さらに好ましくは70以下である。なお、本明細書においてムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300(2013)に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
【0020】
前記(a)基材ゴム100質量%中の(a1)天然ゴムの含有率は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、80質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。前記含有率が10質量%以上であればゴルフボールをより低反発化でき、80質量%以下であればゴルフボールの硬さがより良好となる。
【0021】
((a2)合成ゴム)
前記(a2)合成ゴムとしては、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンポリブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴム;エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記(a)基材ゴムは、(a2)合成ゴムとして、ジエン系ゴムを含有することが好ましい。この場合、前記(a)基材ゴム100質量%中のジエン系ゴムの含有率は、20質量%以上が好ましく、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。前記ジエン系ゴムの含有率が20質量%以上であればゴルフボールの硬さがより良好となり、90質量%以下であればゴルフボールをより低反発化できる。
【0023】
前記(a)基材ゴムは、ジエン系ゴムとしてポリブタジエンゴムを含有することが好ましい。特に、シス-1,4-結合を、40質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有するハイシスポリブタジエンを含有することがより好ましい。前記ジエン系ゴム中のハイシスポリブタジエンの含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、ジエン系ゴムとしてハイシスポリブタジエンゴムのみを含有することも好ましい。
【0024】
前記ハイシスポリブタジエンは、1,2-ビニル結合の含有量が2.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。
【0025】
前記ハイシスポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものが好適であり、特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4-シス結合が高含量、1,2-ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましい。
【0026】
前記ハイシスポリブタジエンとしては、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上であり、6.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下である。ハイシスポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内であれば作業性が向上する。なお、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC-8120GPC」)により、検知器として示差屈折計を用いて、カラム:GMHHXL(東ソー社製)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフランの条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した値である。
【0027】
前記ハイシスポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、30以上が好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上であり、140以下が好ましく、より好ましくは120以下、さらに好ましくは100以下である。
【0028】
((b)共架橋剤)
前記(b)共架橋剤は、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。前記(b)共架橋剤としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸が好ましい。前記(b)共架橋剤として使用されるα,β-不飽和カルボン酸の炭素数は、3~8が好ましく、より好ましくは3~6、さらに好ましくは3または4である。なお、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0029】
炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等を挙げられる。前記ゴム組成物が、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸のみを含有する場合、ゴム組成物は、(d)金属化合物をさらに含有することが好ましい。ゴム組成物中で炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を金属化合物で中和することにより、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を使用する場合と実質的に同様の効果が得られる。
【0030】
前記(b)共架橋剤は、金属塩として用いてもよい。前記(b)共架橋剤の金属塩としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩が好ましい。前記(b)共架橋剤の金属塩を用いた場合、(b)共架橋剤の配合量は、金属成分を除いた値とする。炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオン;アルミニウムなどの三価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属が好ましい。炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の二価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなるからである。特に、二価の金属塩としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の亜鉛塩が好ましく、より好ましくはアクリル酸亜鉛である。なお、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸と、共架橋剤の金属塩として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩とを併用する場合においては、任意成分として、(d)金属化合物を用いてもよい。
【0031】
前記金属が二価または三価の金属である場合、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩は、カルボン酸成分として、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸以外の他のカルボン酸を含有してもよい。前記他のカルボン酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の飽和カルボン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。
【0032】
前記(b)共架橋剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、より好ましくは18質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、100質量部以下が好ましく、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下、特に好ましくは40質量部以下である。前記(b)共架橋剤の含有量が15質量部以上であれば、少量の(c)架橋開始剤でゴム組成物から形成される部材を適当な硬さとすることができる。また、(b)共架橋剤の含有量が100質量部以下であれば、ゴム組成物から形成される部材が硬くなり過ぎず、ゴルフボールの打球感が向上する。
【0033】
前記(a)基材ゴムがジエン系ゴムを含有する場合、前記(b)共架橋剤の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、18質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。前記(b)共架橋剤の含有量が15質量部以上であれば、少量の(c)架橋開始剤でゴム組成物から形成される部材を適当な硬さとすることができる。また、(b)共架橋剤の含有量が100質量部以下であれば、ゴム組成物から形成される部材が硬くなり過ぎず、ゴルフボールの打球感が向上する。
【0034】
((c)架橋開始剤)
前記(c)架橋開始剤は、(a)基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。(c)架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。前記有機過酸化物は、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
【0035】
前記(c)架橋開始剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.7質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.5質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下、特に好ましくは1.5質量部以下である。(c)架橋開始剤の含有量が0.2質量部以上であれば、ゴム組成物から形成される架橋ゴム成形体が柔らかくなり過ぎず、5.0質量部以下であれば、ゴム組成物から形成される架橋ゴム成形体が適切な硬さとなり、耐久性が良好となる。
【0036】
また、前記(c)架橋開始剤の活性酸素量は、(b)共架橋剤100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.10質量部以上、さらに好ましくは0.15質量部以上であって、1.0質量部以下が好ましく、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.6質量部以下、特に好ましくは0.4質量部以下である。前記(c)架橋開始剤の活性酸素量の含有量が0.05質量部以上であればゴルフボールの硬さがより良好となり、1.0質量部以下であればゴルフボールがより低反発化できる。
【0037】
((d)金属化合物)
前記ゴム組成物が、(b)共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸のみを含有する場合、ゴム組成物は、(d)金属化合物を含有することが好ましい。前記(d)金属化合物としては、ゴム組成物中において炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を中和することができるものであれば、特に限定されない。
【0038】
前記(d)金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物(酸化チタンは除く。);炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。前記(d)金属化合物として好ましいのは、二価金属化合物であり、より好ましくは亜鉛化合物である。二価金属化合物は、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸と反応して、金属架橋を形成する。また、亜鉛化合物を用いることにより、ゴルフボールの硬さがより良好となる。(d)金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記(e)金属化合物の含有量は、(b)共架橋剤100質量部に対して1質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、特に好ましくは10質量部以上であり、100質量部以下が好ましく、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下、特に好ましくは70質量部以下、最も好ましくは30質量部以下である。前記(e)金属化合物の含有量が上記範囲内であれば、ゴルフボールの硬さがより良好となる。
【0040】
(他の成分)
前記ゴム組成物は、必要に応じて、顔料、重量調整などのための充填剤、老化防止剤、しゃく解剤、軟化剤、カルボン酸などの添加剤を含有してもよい。また、ゴム組成物は、ゴルフボールのコアや、コア作製時に発生した端材を粉砕したゴム粉末を含有してもよい。
【0041】
ゴム組成物に配合される顔料としては、例えば、白色顔料、青色顔料、紫色顔料などを挙げることができる。前記白色顔料としては、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンの種類は、特に限定されないが、隠蔽性が良好であるという理由から、ルチル型を用いることが好ましい。また、酸化チタンの含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、8質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
【0042】
ゴム組成物が白色顔料と青色顔料とを含有することも好ましい態様である。青色顔料は、白色を鮮やかに見せるために配合され、例えば、群青、コバルト青、フタロシアニンブルーなどを挙げることができる。また、前記紫色顔料としては、例えば、アントラキノンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、メチルバイオレットなどを挙げることができる。
【0043】
ゴム組成物に用いる充填剤としては、得られる架橋ゴム成形体の質量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。
【0044】
前記老化防止剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0045】
(ゴム組成物の調製)
前記ゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および、必要に応じてその他の添加剤などを混合して、混練することにより得られる。混練の方法は、特に限定されず、例えば、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
【0046】
(ゴム組成物の硬化物)
前記ゴム組成物の硬化物は、混練後のゴム組成物を金型内で加熱成形することにより得ることができる。成形温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、250℃以下が好ましい。また、成形時の圧力は、2.9MPa~11.8MPaが好ましい。成形時間は、10分間~60分間が好ましい。
【0047】
(第1態様)
第1態様では、前記ゴム組成物の硬化物は、前記ゴム組成物の硬化物中の前記(b)共架橋剤のグラフト率が、40質量%~80質量%であり、前記ゴム組成物の硬化物は、(a)基材ゴム100質量%中の(a1)天然ゴムの含有率が40質量%以下の場合には下記式(1)を満足し、40質量%超の場合には下記式(2)を満足する。
0.70≦(100-A)/X≦1.25 ・・・(1)
0.70≦A/(100-X)≦1.25 ・・・(2)
[式中、Aは基材ゴム成分中の天然ゴムの含有率(質量%)を表し、Xは共架橋剤のグラフト率(質量%)を表す。]
【0048】
前記第1態様のゴム組成物の硬化物は、前記(b)共架橋剤グラフト率が40質量%~80質量%である。前記グラフト率とは前記共架橋剤の仕込み量に対して、硬化後に基材ゴムにグラフトしており、遊離していない共架橋剤(金属成分を除く。)の割合である。前記グラフト率が上記範囲内であれば、硬化物中には、(a)基材ゴムにグラフトしていない、(b)共架橋剤のポリマーが含まれることとなり、この(b)共架橋剤のポリマーの存在によって、硬化物の硬さが維持される。グラフト率は後述する測定方法により測定する。
前記ゴム組成物の硬化物中の前記(b)共架橋剤のグラフト率は、40質量%以上が好ましく、より好ましくは42質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上であり、80質量%以下が好ましく、より好ましくは78質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
【0049】
前記グラフト率は、ゴム組成物に配合する(b)共架橋剤の種類や配合量、(c)架橋開始剤の種類や配合量、その他成分の配合量、ゴム組成物の硬化条件によって制御できる。
【0050】
前記第1態様のゴム組成物の硬化物は、(a)基材ゴム100質量%中の(a1)天然ゴムの含有率が40質量%以下の場合には下記式(1)を満足する。
0.70≦(100-A)/X≦1.25 ・・・(1)
[式中、Aは基材ゴム成分中の天然ゴムの含有率(質量%)を表し、Xは共架橋剤のグラフト率(質量%)を表す。]
【0051】
前記式(1)を満足することでゴルフボールとしての硬さを維持しつつ、低反発化を図ることができる。
前記値{(100-A)/X}は、0.80以上が好ましく、より好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.90以上であり、1.20以下が好ましく、より好ましくは1.15以下、さらに好ましくは1.10以下である。
【0052】
前記第1態様のゴム組成物の硬化物は、(a)基材ゴム100質量%中の(a1)天然ゴムの含有率が40質量%超の場合には下記式(2)を満足する。
0.70≦A/(100-X)≦1.25 ・・・(2)
[式中、Aは基材ゴム成分中の天然ゴムの含有率(質量%)を表し、Xは共架橋剤のグラフト率(質量%)を表す。]
【0053】
前記式(2)を満足することでゴルフボールとしての硬さを維持しつつ、低反発化を図ることができる。
前記値{A/(100-X)}は、0.80以上が好ましく、より好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.90以上であり、1.20以下が好ましく、より好ましくは1.15以下、さらに好ましくは1.10以下である。
【0054】
なお、第1態様において、前記式(1)または式(2)を満足することで効果が得られる理由は必ずしも明らかでないが、以下のように考えられる。架橋ゴムでは、共架橋剤が基材ゴムにグラフトし、架橋構造を形成することで反発物性を発現させていると考えられる。そのため、基材ゴムにグラフトする共架橋剤を少なくすることで反発物性を低下させることができると考えられる。一方で、架橋が形成されない場合はゴルフボールとしての硬度を保つことが困難になる。そのため、第1態様では、基材ゴムとして天然ゴムを配合し、天然ゴム本来の材料としての硬さを利用することで、ゴルフボールとしての硬さを保持できていると考えられる。
上記から鑑みるに、基材ゴムに対する天然ゴムの配合比と共架橋剤のグラフトする割合を制御することが、ゴルフボールの硬さを維持しつつ低反発化を実現させるために必要であると考えられる。
【0055】
ここで、基材ゴム中の天然ゴムの含有率が40質量%以下の場合、天然ゴムによる硬さを高める効果が小さいため、ゴルフボールの硬さ制御には天然ゴム以外の基材ゴムにおける架橋度合いが重要となる。よって、基材ゴム中の天然ゴムの含有率が40質量%以下の場合、天然ゴム以外の基材ゴムの含有率と共架橋剤のグラフト成分の割合との比が式(1)を満足することで、ゴルフボールの硬さを維持しつつ低反発化を実現させるために必要であると考えられる。
また、基材ゴム中の天然ゴムの含有率が40質量%超の場合、天然ゴムによる硬さを高める効果が大きいため、ゴルフボールの硬さ制御には共架橋剤中の非グラフト成分の存在が重要となる。よって、基材ゴム中の天然ゴムの含有率が40質量%超の場合、天然ゴムの含有率と共架橋剤の非グラフト成分の割合との比が式(2)を満足することで、ゴルフボールの硬さを維持しつつ低反発化を実現させるために必要であると考えられる。
【0056】
(第2態様)
第2態様では、前記ゴム組成物の硬化物は、下記式(3)および(4)を満足する。
3.5≦(100-A)/Y≦5.0 ・・・(3)
3.0≦A/Z≦7.0 ・・・(4)
[式中、Aは基材ゴム成分中の天然ゴムの含有率(質量%)を表し、Yは(a)基材ゴム100質量部に対する(b)共架橋剤のグラフトポリマー量(質量部)、Zは(a)基材ゴム100質量部に対する(b)共架橋剤の非グラフトポリマー量(質量部)を表す。]
【0057】
前記グラフトポリマー量とは、硬化後に基材ゴムにグラフトしており、遊離していない共架橋剤(金属成分を除く。)の質量である。前記非グラフトポリマー量とは、共架橋剤(金属成分を除く。)のポリマーであって、硬化後に基材ゴムにグラフトしていないポリマーの質量である。グラフトポリマー量、非グラフトポリマー量は、後述する測定方法により測定する。前記グラフトポリマー量、非グラフトポリマー量は、ゴム組成物に配合する(b)共架橋剤の種類や配合量、(c)架橋開始剤の種類や配合量、その他成分の配合量、ゴム組成物の硬化条件によって制御できる。
【0058】
前記値{(100-A)/Y}は、3.5以上が好ましく、より好ましくは3.6以上、さらに好ましくは3.7以上であり、5.0以下が好ましく、より好ましくは4.9以下、さらに好ましくは4.8以下である。
前記値(A/Z)は、3.0以上が好ましく、より好ましくは3.1以上、さらに好ましくは3.2以上であり、7.0以下が好ましく、より好ましくは6.8以下、さらに好ましくは6.5以下である。
【0059】
なお、第2態様において、前記式(3)および式(4)を満足することで効果が得られる理由は必ずしも明らかでないが、以下のように考えられる。架橋ゴムでは、共架橋剤が基材ゴムにグラフトし、架橋構造を形成することで反発物性を発現させていると考えられる。そのため、基材ゴムにグラフトする共架橋剤を少なくすることで反発物性を低下させることができると考えられる。一方で、架橋が形成されない場合はゴルフボールとしての硬度を保つことが困難になる。ここで、ゴム組成物の硬化物中の前記(b)共架橋剤のグラフトポリマー量は低反発化に寄与し、前記(b)共架橋剤の非グラフトポリマー量は硬さに寄与する。
よって、基材ゴム中の天然ゴム以外のゴム成分と共架橋剤のグラフトポリマー量との比を制御することで、低反発化の度合いを制御でき、かつ、基材ゴム中の天然ゴムと共架橋剤の非グラフトポリマー量との比を制御することで硬度を制御できる。したがって、第2態様では、前記式(3)および式(4)を同時に満足することでゴルフボールとしての硬さを維持しつつ、低反発化を図ることができる。
【0060】
前記第2態様のゴム組成物の硬化物中の前記(b)共架橋剤のグラフトポリマー量(Y)は、前記(a)基材ゴム100質量部に対して、10.0質量部以上が好ましく、より好ましくは10.2質量部以上、さらに好ましくは10.5質量部以上であり、18.0質量部以下が好ましく、より好ましくは17.8質量部以下、さらに好ましくは17.5質量部以下である。
前記第2態様のゴム組成物の硬化物中の前記(b)共架橋剤の非グラフトポリマー量(Z)は、前記(a)基材ゴム100質量部に対して、3.0質量部以上が好ましく、より好ましくは3.2質量部以上、さらに好ましくは3.5質量部以上であり、15.0質量部以下が好ましく、より好ましくは14.0質量部以下、さらに好ましくは13.5質量部以下である。
【0061】
前記グラフトポリマー量、非グラフトポリマー量は、ゴム組成物に配合する(b)共架橋剤の種類や配合量、(c)架橋開始剤の種類や配合量、その他成分の配合量、ゴム組成物の硬化条件によって制御できる。
【0062】
[ゴルフボール]
本発明には、構成部材の少なくとも一部が、前記ゴム組成物の硬化物から形成されているゴルフボールが含まれる。前記ゴルフボールとしては、ゴルフボール本体が前記ゴム組成物の硬化物から形成されているワンピースゴルフボール;球状コアと前記球状コアを被覆する少なくとも一層のカバーとを有するゴルフボールであって、前記球状コアの少なくとも一部が、前記ゴム組成物の硬化物から形成されているマルチピースゴルフボール等が挙げられる。
【0063】
(ワンピースゴルフボール)
前記ワンピースゴルフボールは、ゴルフボール本体のみから構成されるワンピースゴルフボール;ゴルフボール本体と前記ゴルフボール本体を被覆する塗膜とから構成されるワンピースゴルフボールが挙げられる。
【0064】
前記ワンピースゴルフボールの直径は、40mm~45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、前記ワンピースゴルフボールの質量は、40g~50gが好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0065】
前記ワンピースゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上が好ましく、より好ましくは2.2mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上、特に好ましくは3.0mm以上であり、6.0mm以下が好ましく、より好ましくは5.5mm以下、さらに好ましくは5.0mm以下である。前記圧縮変形量が上記範囲内であれば、ゴルフボールの打球感がより良好となる。
【0066】
前記ワンピースゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、反発係数(e40)が、0.500以上が好ましく、より好ましくは0.520以上、さらに好ましくは0.550以上であり、0.750以下が好ましく、より好ましくは0.720以下、さらに好ましくは0.700以下である。前記反発係数が0.500以上であれば練習用のゴルフボールとして使用することが可能で、0.700以下であれば狭い練習場に適した反発性能を有する。
【0067】
前記ワンピースゴルフボールのゴルフボール本体には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。ディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個以上であれば、ディンプルの効果がより大きくなり、500個以下であれば、個々のディンプルのサイズが大きくなり、ディンプルの効果がより大きくなる。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0068】
前記ワンピースゴルフボールのゴルフボール本体は、ゴム組成物を金型内で加熱成形することで作製できる。成形温度は、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましく、200℃以下が好ましい。また、成形時の圧力は、2.9MPa~11.8MPaが好ましい。成形時間は、10分間~60分間が好ましい。
【0069】
前記ワンピースゴルフボールは、ゴルフボール本体の表面に塗膜やマークを形成してもよい。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm以上であれば継続的な使用によっても塗膜が摩耗消失しにくくなり、膜厚が50μm以下であればディンプルの効果が低下せずゴルフボールの飛行性能がより良好となる。
【0070】
(マルチピースゴルフボール)
前記マルチピースゴルフボールは、球状コアと前記球状コアを被覆する少なくとも一層のカバーとを有するゴルフボールであって、前記球状コアの少なくとも一部が、前記ゴム組成物の硬化物から形成されている。
【0071】
前記球状コアの構造は、単層構造と多層構造のいずれもよい。前記球状コアとしては、前記ゴム組成物の硬化物から形成された単層コア;内層と外層とを有する2層コアであって、内層および/または外層が前記ゴム組成物の硬化物から形成された2層コア等が挙げられる。
【0072】
前記球状コアの直径は、34.8mm以上が好ましく、42.2mm以下が好ましく、より好ましくは41.8mm以下、さらに好ましくは41.2mm以下、特に好ましくは40.8mm以下である。前記球状コアの直径が34.8mm以上であれば、カバーの厚みが厚くなり過ぎず、打撃耐久性がより良好となる。一方、球状コアの直径が42.2mm以下であれば、カバーが薄くなり過ぎず、カバーの機能がより発揮される。
【0073】
前記コアは、直径34.8mm~42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、2.0mm以上が好ましく、より好ましくは2.3mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上、特に好ましくは3.0mm以上であり、5.0mm以下が好ましく、より好ましくは4.5mm以下、さらに好ましくは4.3mm以下である。前記圧縮変形量が、2.0mm以上であれば打球感がより良好となり、5.0mm以下であれば、打撃耐久性がより良好となる。
【0074】
前記球状コアは、ゴム組成物を混合、混練し、金型内で成形することにより製造できる。この際の条件は、特に限定されないが、通常は130℃~200℃、圧力2.9MPa~11.8MPaで10分間~60分間で行われる。
【0075】
前記ゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱ケミカル(株)から商品名「テファブロック」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。
【0076】
前記カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0077】
前記ゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
【0078】
前記カバーの厚みは、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚みが4.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.4mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上である。カバーの厚みが0.3mm以上であれば、カバーの耐久性や耐摩耗性がより良好となる。カバーが複数層の場合は、複数のカバー層の合計厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0079】
カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個以上であれば、ディンプルの効果がより大きくなり、500個以下であれば、個々のディンプルのサイズが大きくなり、ディンプルの効果がより大きくなる。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0080】
前記カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm以上であれば継続的な使用によっても塗膜が摩耗消失しにくくなり、膜厚が50μm以下であればディンプルの効果が低下せずゴルフボールの飛行性能がより良好となる。
【0081】
前記マルチピースゴルフボールの直径は、40mm~45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、前記ゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0082】
本発明のゴルフボールの一例を、
図1、2を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るワンピースゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るマルチピースゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
【0083】
図1のゴルフボール1は、ゴルフボール本体2と前記ゴルフボール本体2を被覆する塗膜3とから構成されるワンピースゴルフボールである。ゴルフボール本体2の表面には、多数のディンプル21が形成されている。このゴルフボール1の表面のうち、ディンプル21以外の部分は、ランド22である。このゴルフボール1は、ゴルフボール本体2の外側に塗膜3が形成されている。
【0084】
図2のゴルフボール1は、球状コア4と、球状コア4を被覆するカバー5とからなるゴルフボール本体を有する。前記カバー5の表面には、多数のディンプル51が形成されている。このゴルフボール1の表面のうち、ディンプル51以外の部分は、ランド52である。このゴルフボール1は、カバー5の外側に塗膜3が形成されている。
【実施例0085】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0086】
[評価方法]
(1)グラフト率、グラフトポリマー量、非グラフトポリマー量
(i)ゴム組成物を混練ロールにより混練し、170℃で30分間熱処理して、厚さ0.5mmの架橋ゴムのスラブを作製した。スラブから幅10mm、長さ50mmのゴム片を切り出し、これを試験片とした。試験片の質量(Ma)を測定した。
(ii)ソックスレー抽出器に試験片を入れ、溶媒としてアセトン150mLと塩酸(6mol/L)50mLの混合溶液100mLを用いて、60℃にて96時間還流させた。
(iii)ソックスレー抽出器から試験片を取り出し、試験片をアセトンで洗浄した後、迅速自動抽出装置(Gerhardt社製、ソックスサーム)を用いて、溶媒としてアセトンを使用し、170℃にて4時間溶出を行った。
(iv)さらに、迅速自動抽出装置(Gerhardt社製、ソックスサーム)を用いて、溶媒としてメタノールを使用し、270℃にて4時間溶出を行った。
(v)迅速自動抽出装置から試験片を取り出し、試験片を、ドラフト下で、60分間風乾させた。
(vi)風乾させた試験片を真空オーブンに入れて、50℃にて120分間真空(脱気)乾燥を行った。
(vii)真空乾燥後の試験片の質量(Mb)を測定した。なお、質量(Mb)は、グラフトポリマー成分中の金属成分、非グラフトポリマー成分および未反応共架橋剤成分を溶出させた後の質量となる。
(viii)下記式によりグラフト率、グラフトポリマー量を求めた。
グラフト率(質量%)=[W1×{1-(Ma-Mb)/Ma}-W3]/W2×100
グラフトポリマー量(phr)=W1×{1-(Ma-Mb)/Ma}-W3
[グラフト率:ゴム組成物に含まれる共架橋剤成分が基材ゴム成分にグラフトしている割合(金属成分を除く。)、
グラフトポリマー量:架橋ゴム中の基材ゴム100質量部に対する、基材ゴムにグラフトしており、遊離していない共架橋剤のポリマー量(金属成分を除く。)(phr)、
W1:ゴム組成物に含まれる基材ゴムを100質量部とした際のゴム組成物の総質量(phr)、
W2:ゴム組成物中の基材ゴム100質量部に対する共架橋剤の含有量(phr)、
W3:ゴム組成物中の基材ゴム100質量部に対する溶出処理によって溶出されない成分(共架橋剤を除く。)の含有量(phr)、
Ma:溶出処理前の架橋ゴムの質量(g)、
Mb:溶出処理後の架橋ゴムの質量(g)]
(ix)前記架橋ゴムのスラブについて赤外吸収スペクトルを測定し、911cm-1と、934cm-1の強度値を取得した。以下の式を用いて、架橋ゴム中の共架橋剤モノマー残存量を算出した。なお、本実施例では、ゴム組成物が、(a)基材ゴムとしてポリブタジエンゴム、(b)共架橋剤としてメタクリル酸を配合しているため、ポリブタジエンゴムに含まれる炭素-炭素二重結合に由来するピーク(911cm-1)と、メタクリル酸に由来するピーク(934cm-1)を用いたが、他の化合物を用いている場合は、強度値を取得するピークを適宜選択すればよい。
W4(phr)=0.1832×(I2/I1)+0.8709
[W4:架橋ゴム中の基材ゴム100質量部に対する共架橋剤モノマー残存量(phr)、
I1:赤外吸収スペクトルにおける911cm-1のピーク強度、
I2:赤外吸収スペクトルにおける934cm-1のピーク強度]
(x)下記式により非グラフトポリマー量を求めた。
W5(phr)=W2-W4
非グラフトポリマー量(phr)=W5-グラフトポリマー量
[W5:架橋ゴム中の基材ゴム100質量部に対する重合した共架橋剤の総量(phr)
W2:ゴム組成物中の基材ゴム100質量部に対する共架橋剤の含有量(phr)、
W4:架橋ゴム中の基材ゴム100質量部に対する共架橋剤モノマー残存量(phr)、
グラフトポリマー量:架橋ゴム中の基材ゴム100質量部に対する、基材ゴムにグラフトしており、遊離していない共架橋剤のポリマー量(金属成分を除く。)(phr)]
【0087】
(2)圧縮変形量(mm)
ゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にゴルフボールが縮む量)を測定した。
圧縮変形量の測定には、YAMADA式コンプレッションテスター「SCH」を用いた。このテスターでは、ゴルフボールが金属製の剛板の上に置かれ、このゴルフボールに向かって金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれたゴルフボールは、変形する。ゴルフボールに98Nの初荷重がかかった状態から1275Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離を測定した。初荷重がかかるまでの円柱の移動速度は、0.83mm/sである。初荷重がかかってから終荷重がかかるまでの円柱の移動速度は、1.67mm/sである。なお、前記テスターによる圧縮変形量の測定可能範囲は0mm~9.0mmであるため、圧縮変形量が9.0mmを超える場合、測定値は9.0mmとした。
【0088】
(3)反発係数
各ゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および重量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値を各ゴルフボールの反発係数とした。
【0089】
[ワンピースゴルフボールの作製]
表1に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより、直径42.77mm(1.684inch)のゴルフボール本体を得た。
【0090】
【0091】
【表2】
BR730:JSR社製、「BR730」(ハイシスポリブタジエンゴム(シス-1,4-結合含有量=96質量%、1,2-ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML
1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3))
BR01:JSR社製、「BR01」(ハイシスブタジエンゴム(シス-1,4-結合含有量=95質量%、ムーニー粘度(ML
1+4(100℃))=45)
CV60(NR):天然ゴム(ムーニー粘度(ML
1+4(100℃))=60)
メタクリル酸:三菱ケミカル社製
DCP:日油社製、「パークミル(登録商標)D」(ジクミルパーオキサイド、活性酸素量5.92質量%)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」(酸化亜鉛)
炭酸カルシウム:白石カルシウム社製、「Whiton BF-300」
酸化チタン:石原産業社製、「CR-60」
【0092】
各ゴルフボールの評価結果を表1、2に示した。なお、ゴルフボールNo.19~21は圧縮変形量が9.0mm超であったため、測定値は9.0mmとした。また、各ゴルフボールの圧縮変形量と反発係数との関係を
図3、4に示した。
図3、4に示すように、ゴルフボールは、圧縮変形量が大きい程、反発係数が低くなり、圧縮変形量が小さい程、反発係数が高くなる。そのため、
図3、4のグラフにおいて、左下に位置するゴルフボールが、硬さを維持しつつ、低反発化できているといえる。
【0093】
ゴルフボールNo.1~12および16~18は、基材ゴムとして(a1)天然ゴムおよび(a2)合成ゴムを含有し、グラフト率が40質量%~80質量%であり、式(1)または式(2)を満たすか、あるいは、式(3)および式(4)を満たしている。これらのゴルフボールNo.1~12および16~18は、ゴルフボールの硬さを維持しつつ、低反発化できている。
【0094】
ゴルフボールNo.13~15は、基材ゴムとして天然ゴムを含有しない場合である。これらのゴルフボールNo.13~15は、低反発化されていない。
【0095】
ゴルフボールNo.19~21は、基材ゴムとして(a2)合成ゴムを含有しない場合である。これらのゴルフボールNo.19~21は、ゴルフボールの硬さが維持されていない。
【0096】
本発明(1)は、構成部材の少なくとも一部が、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、および、(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物の硬化物から形成されており、前記(a)基材ゴムが、(a1)天然ゴムおよび(a2)合成ゴムを含有し、前記ゴム組成物の硬化物中の前記(b)共架橋剤のグラフト率が、40質量%~80質量%であり、前記ゴム組成物の硬化物は、(a)基材ゴム100質量%中の(a1)天然ゴムの含有率が40質量%以下の場合には下記式(1)を満足し、40質量%超の場合には下記式(2)を満足することを特徴とするゴルフボールである。
0.70≦(100-A)/X≦1.25 ・・・(1)
0.70≦A/(100-X)≦1.25 ・・・(2)
[式中、Aは基材ゴム成分中の天然ゴムの含有率(質量%)を表し、Xは共架橋剤のグラフト率(質量%)を表す。]
【0097】
本発明(2)は、構成部材の少なくとも一部が、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、および、(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物の硬化物から形成されており、前記(a)基材ゴムが、(a1)天然ゴムおよび(a2)合成ゴムを含有し、下記式(3)および(4)を満足することを特徴とするゴルフボールである。
3.5≦(100-A)/Y≦5.0 ・・・(3)
3.0≦A/Z≦7.0 ・・・(4)
[式中、Aは基材ゴム成分中の天然ゴムの含有率(質量%)を表し、Yは(a)基材ゴム100質量部に対する(b)共架橋剤のグラフトポリマー量(質量部)、Zは(a)基材ゴム100質量部に対する(b)共架橋剤の非グラフトポリマー量(質量部)を表す。]
【0098】
本発明(3)は、前記(a)基材ゴム100質量%中の天然ゴムの含有率が、10質量%以上である本発明(1)まはた(2)に記載のゴルフボールである。
【0099】
本発明(4)は、ワンピースゴルフボールであり、ゴルフボール本体が前記ゴム組成物の硬化物から形成されている本発明(1)~(3)のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
【0100】
本発明(5)は、前記ゴルフボールの直径が、40mm~45mmであり、前記ゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)が、2.5mm~6.0mmであり、前記ゴルフボールの反発係数(e40)が、0.500~0.700である本発明(4)に記載のゴルフボールである。
【0101】
本発明(6)は、前記圧縮変形量が、3.0mm~6.0mmである本発明(5)に記載のゴルフボールである。