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特開2024-117077積層フィルムおよびそれを用いた包装材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117077
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】積層フィルムおよびそれを用いた包装材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20240821BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240821BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B15/08 A
B32B15/08 F
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018318
(22)【出願日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2023022396
(32)【優先日】2023-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023114887
(32)【優先日】2023-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻 祐一
(72)【発明者】
【氏名】山本 千紘
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 倫子
(72)【発明者】
【氏名】山田 絵美
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB62
3E086BB63
3E086CA01
3E086CA35
4F100AA01B
4F100AA19B
4F100AA20C
4F100AB01B
4F100AB10B
4F100AH06C
4F100AH08C
4F100AK01D
4F100AK03A
4F100AK03E
4F100AK07A
4F100AK07E
4F100AK21C
4F100AK25C
4F100AK25D
4F100AK25E
4F100AK41D
4F100AK42A
4F100AK51D
4F100AK51E
4F100AK52B
4F100AK52C
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4F100AT00E
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4F100BA07
4F100EH46C
4F100EH46D
4F100EH66B
4F100EJ08C
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4F100GB15
4F100HB31E
4F100JB14D
4F100JD03
4F100JD04
4F100JJ03D
4F100JK06
4F100JK09
4F100JL11
4F100JN28
(57)【要約】
【課題】ガスバリア性に優れ、インキの種別によらずインキとの密着性に優れた積層フィルムを提供すること。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも片面に、金属層および/または無機化合物層と、被覆層とをこの順に有する第一のフィルムの、少なくとも片面に、樹脂を主成分とする第一の中間層、および、第二のフィルムをこの順に有する積層フィルムであって、前記積層フィルムの第一のフィルム側から以下の測定条件で測定したときの発光ピーク強度Xと、基準ピークの発光強度Yの比率X/Yが15以上350以下となる、積層フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に、金属層および/または無機化合物層と、被覆層とをこの順に有する第一のフィルムの、少なくとも片面に、樹脂を主成分とする第一の中間層、および、第二のフィルムをこの順に有する積層フィルムであって、前記積層フィルムの第一のフィルム側から以下の測定条件で測定したときの発光ピーク強度Xと、基準ピークの発光強度Yの比率X/Yが15以上350以下となる、積層フィルム。
<測定条件>
前記積層フィルムを1×10-4mol/Lの4-ニトロ-7-ピペラジノ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾールのテトラヒドロフラン(THF)溶液に60℃で60分間浸漬させた後、15mm×15mmに切り出し、励起波長470nmに対する発光スペクトルを測定し、波長520~550nmに見られる極大値を発光ピーク強度とする。
<基準ピーク>
1×10-5mol/Lの4-ニトロ-7-ピペラジノ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾールのTHF溶液を測定して得られる520~550nmの発光強度のピークを、基準ピークの発光強度Yとする。
【請求項2】
前記被覆層表面にさらに印刷層を有する、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記印刷層がポリウレタン樹脂を含む、請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記印刷層がポリ(メタ)アクリレート樹脂を含む、請求項2または3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記被覆層がケイ素および(メタ)アクリロイル基を含み、ケイ素に対して(メタ)アクリロイル基を0.25mol%以上1.25mol%以下含む、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記被覆層が、水溶性樹脂、ならびに、金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物を含む、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記金属層および/または無機化合物層がアルミニウムを含む、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記積層フィルムの水蒸気透過率が1.0g/m/24hr以下、酸素透過率が1.0cc/m/24hr以下である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記積層フィルムの第一のフィルム側から前述の測定条件で測定したときの発光ピークの強度Xと、基準ピークの発光強度Yの比率X/Yが30以上150以下となる、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記第二のフィルムがエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムである、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記基材フィルムおよび第二のフィルムがいずれもポリオレフィン系樹脂フィルムである、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項12】
請求項1または2に記載の積層フィルムを用いた包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよびそれを用いた包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な人口増加に伴い、食品や生活用品などの包装に用いられる軟包装は、今後も需要の拡大が見込まれる。
【0003】
特に、飲食物や医薬品の包装においては、それらの劣化を防止するため、さらには必要に応じて加熱殺菌を可能とするために、酸素バリア性、水蒸気バリア性が必要とされる。そのため、優れたガスバリア性を有するアルミニウム箔、アルミニウムや酸化アルミニウムを蒸着したガスバリアフィルムが使用されている。さらに、ガスバリア性能の低下を抑制する目的で、ガスバリア層の上に保護層を積層することも行われている。
【0004】
近年、軟包装印刷において、紫外線や電子線(EB)などの活性エネルギー線照射によりインキを硬化させる、活性エネルギー線硬化型平版印刷が検討されており、例えば、プラスチックフィルムに、(a)親水性基を有する樹脂、(b)親水性基を有する多官能(メタ)アクリレート、および(c)炭素数8以上18以下の鎖状脂肪族骨格を有する2官能(メタ)アクリレートを有する活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキを転写する工程を有する印刷物の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。軟包装印刷は、一般的にロールトゥロールで印刷するため、インキの速乾性が重要であり、活性エネルギー線硬化型の印刷方式は、高い生産性を有する。特に、電子線照射による硬化は、インキ中の光重合開始剤が不要となるため、印刷物臭気や内容物への開始剤分解成分の移行のおそれが低減され、内容物保護という安全面からも優れている。
【0005】
しかしながら、これらの活性エネルギー線硬化型インキは、前述のガスバリア層の上に保護層を有するガスバリアフィルムなどに印刷すると、保護層に対する密着性が低い課題があった。そこで、保護層と隣接する印刷層などとの密着性を向上させる技術として、基材フィルムの少なくとも一方の側に、無機層、保護層を前記基材フィルム側からこの順に有する積層体であって、かつ前記保護層は活性エネルギー線を照射することで反応しうる官能基および/または水溶性樹脂を含む硬化物を含む積層体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-98773号公報
【特許文献2】特開2022-20129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
軟包装においては、耐衝撃性向上、ヒートシール性付与などの観点から、フィルムに、各用途に応じて求められる特性を付与するプラスチックフィルム、金属箔、熱溶融フィルム(シーラント)などを貼り合わせることが一般的である。特許文献2には、積層体に接着剤を介してシーラントフィルムをドライラミネート法により積層した例が記載されている。しかしながら、かかる積層体は、保護層に従来公知の活性エネルギー線硬化型インキを用いて印刷すると、密着性は向上するものの、保護層に導入した活性エネルギー線を照射することで反応しうる官能基のために、ガスバリア性が不十分となる課題があった。また、媒体である溶剤や水を加熱乾燥する乾燥型インキを用いて印刷すると、密着性が不十分である課題があった。
【0008】
そこで、本発明においては、ガスバリア性に優れ、インキの種別によらずインキとの密着性に優れた積層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、基材フィルムの少なくとも片面に、金属層および/または無機化合物層と、被覆層とをこの順に有する第一のフィルムの、少なくとも片面に、樹脂を主成分とする第一の中間層、および、第二のフィルムをこの順に有する積層フィルムであって、前記積層フィルムの第一のフィルム側から以下の測定条件で測定したときの発光ピーク強度Xと、基準ピークの発光強度Yの比率X/Yが15以上350以下となる、積層フィルムである。
<測定条件>
前記積層フィルムを1×10-4mol/Lの4-ニトロ-7-ピペラジノ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾールのテトラヒドロフラン(THF)溶液に60℃で60分間浸漬させた後、15mm×15mmに切り出し、励起波長470nmに対する発光スペクトルを測定し、波長520~550nmに見られる極大値を発光ピーク強度とする。
<基準ピーク>
1×10-5mol/Lの4-ニトロ-7-ピペラジノ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾールのTHF溶液を測定して得られる520~550nmの発光強度のピークを、基準ピークの発光強度Yとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層フィルムは、ガスバリア性に優れ、インキの種別によらずインキとの密着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。なお、本発明において「以上」とは、そこに示す数値と同じかまたはそれよりも大きいことを意味する。また、「以下」とは、そこに示す数値と同じかまたはそれよりも小さいことを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
【0012】
本発明の積層フィルムは、第一のフィルム上に、樹脂を主成分とする第一の中間層および第二のフィルムをこの順に有する。第一のフィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に、金属層および/または無機化合物層と、被覆層とをこの順に有する。後述するように、被覆層に印刷を施されることが一般的であり、第一のフィルムは、ガスバリア性とインキとの密着性を向上させる機能を有する。第二のフィルムは、例えばヒートシール性など、積層フィルムに所望の特性を付与する機能を有し、第一の中間層は、第一のフィルムと第二のフィルムを接着する機能を有する。
【0013】
(第一のフィルム)
第一のフィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に、金属層および/または無機化合物層と、被覆層とをこの順に有する。本態様には、基材フィルムと、金属層と、被覆層とをこの順に積層した第一のフィルムや、基材フィルムと、無機化合物層と、被覆層とをこの順に積層した第一のフィルムに加え、基材フィルムと、金属層と、無機化合物層と、被覆層とをこの順に積層した第一のフィルムや、基材フィルムと、無機化合物層と、金属層と、被覆層とをこの順に積層した第一のフィルムや、基材フィルムと、無機化合物層と、金属層と、無機化合物層と、被覆層とをこの順に積層した第一のフィルムなどを含む。
【0014】
本発明における基材フィルムを構成する樹脂は特に限定はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、あるいはポリ塩化ビニル系樹脂、さらにはポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコールなどの生分解性樹脂等が挙げられる。中でも、無機化合物層との密着力やハンドリングの観点からはポリエステル系樹脂が好ましく、リサイクルのしやすさという観点からはポリオレフィン系樹脂が好ましい。またリサイクル性に加えこれら樹脂全体に対し3~55質量%のリサイクル原料を含むことが好ましい。尚、リサイクル原料は、メカニカルリサイクルにてリサイクルされたものであっても、ケミカルリサイクルにてリサイクルされたものであってもよく、特に限定されるものではない。さらに、前記基材フィルムを構成する樹脂にバイオマス由来(植物由来)の原料を含んでいてもよく、例えばポリエステルの場合、その原料であるジオールもしくはジカルボン酸のいずれか一方または両方が、樹脂組成物全体に対し10~95質量%のバイオマス由来(植物由来)の原料を含むことが好ましい。基材フィルムは、未延伸であっても、延伸(一軸又は二軸)されていてもよいが、熱寸法安定性の観点から二軸延伸されていることが好ましい。
【0015】
本発明における基材フィルムの厚みは、3μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、8μm以上30μm以下がさらに好ましい。基材フィルムの厚さを3μm以上とすることで支持体としての剛性を保つことができ、100μm以下とすることで、包装材料としての柔軟性を維持しつつ、追従性が向上するため好ましい。
【0016】
本発明における基材フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂フィルムは、オレフィン系炭化水素を主構成単位とする樹脂を主成分とするフィルムであることが好ましい。主構成単位とは、樹脂に含まれるモノマー単位のうち最も含有量(個数単位)の多いものをいい、主成分とは、構成するすべての成分の中で最も含有量(質量%)の多いものをいう。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレンの他、プロピレンや4-メチル-1ペンテンなど側鎖にアルキル基を有するα-オレフィンの重合体およびこれらの共重合体、または、α-オレフィンとアクリル酸、エチレン性不飽和基含有カルボン酸、エチレン性不飽和基含有カルボン酸塩あるいはエチレン性不飽和基含有カルボン酸アルキルエステル等を共重合して得られる共重合体、ノルボルネンやシクロジエンの重合体およびこれらの重合体であり、単層であっても複数層であってもよい。これらの中でも、比較的安価であることから、ポリエチレンまたはポリプロピレンを含むことが好ましく、耐熱性の点でポリプロピレンを含むことがより好ましく、同様の観点でポリプロピレンを主成分とすることがさらに好ましい。前記ポリオレフィン系樹脂フィルムは未延伸であっても、延伸されていてもよいが、熱寸法安定性の観点から二軸延伸されていることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂フィルムは、融点が150℃以上であることが好ましい。融点を150℃以上とすることで、金属酸化物層を形成したり、包装材料に加工したりする工程の熱による熱負けを防止し、加工後の耐熱性も高くなるため、バリア性の劣化を抑制できる。なお、前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの融点は、DSC(示差走査熱量測定)で以下の方法で測定することができる。
【0017】
<基材フィルムの融点の測定方法>
示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgの試料を30℃から260℃まで、昇温速度20℃/分で昇温し、次いで、260℃で5分間保持した後、20℃/分の条件で30℃まで降温する。さらに、30℃で5分間保持した後、30℃から260℃まで20℃/分の条件で再昇温し、この再昇温時に得られる吸熱カーブのピーク温度を表層の樹脂組成物の融点とする。なお複数のピーク温度が観測できる場合には最も高温の温度を表層の樹脂組成物の融点とする。
【0018】
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)は50℃以下であることが好ましい。本態様とすることにより、低温においても前記ポリオレフィン系樹脂フィルムの柔軟性が高くなり、包装材料としたときに低温でも硬くなることがなく、広い温度範囲で安定した使用が可能となる。
【0019】
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムは表面が平滑であることが好ましい。表面平滑性は、ISO25178(2012)で定義される算術平均高さSaで表すことができ、Saは50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。Saは、非接触の表面観察装置、例えば株式会社日立ハイテクサイエンス製走査型白色干渉顕微鏡で測定することができる。表面を平滑にすることで、表面に積層する無機酸化物層の欠点を減らすことができ、良好な無機酸化物層とすることができ、バリア性を向上させることができる。
【0020】
(金属層および/または無機化合物層)
前記金属層および/または前記無機化合物層は、周期表の2族から14族(ただし炭素を除く)より選ばれる1種以上の元素を含み、無機化合物層はさらに、酸素、窒素の少なくとも1種を含む層であることが好ましい。これらの中でも加工コストやガスバリア性の観点から、金属層はアルミニウムを含有することが好ましく、アルミニウムを主成分とすることがより好ましい。また、同様の観点から、前記無機化合物層は少なくともアルミニウム、マグネシウム、チタン、スズ、インジウム、及びケイ素より選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ケイ素またはアルミニウムを含むことがより好ましい。好ましい無機化合物層としては、例えば、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウムが挙げられる。さらに、前記無機酸化物層において、周期表の2族から14族(ただし炭素を除く)の元素の総和に占めるアルミニウムの割合が50atomic%以上であることが好ましい。
【0021】
前記金属層を有する場合、前記金属層の厚さは、5nm以上500nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることが好ましい。厚さを5nm以上とすることで、バリア性を向上することができ、500nm以下とすることで、成膜中に基材が熱負けすることを抑制できるので好ましい。
【0022】
前記無機化合物層を有する場合、前記無機化合物層の厚さは、2nm以上50nm以下が好ましく、2nm以上20nm以下がより好ましく、4nm以上10m以下がさらに好ましい。厚さを2nm以上とすることで無機化合物層のピンホールなどの欠陥を減らすことができ、50nm以下とすることでクラックを抑制することができ好ましい。
【0023】
(被覆層)
本発明における被覆層は、水溶性樹脂、ならびに、金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物を含むことが好ましい。
【0024】
前記水溶性樹脂は、ビニルアルコール系樹脂に由来するセグメント、多糖類に由来するセグメント、及びアクリルポリオール樹脂に由来するセグメント、より選ばれる1種以上のセグメントを含むことが好ましい。ビニルアルコール系樹脂に由来するセグメント、多糖類に由来するセグメント、アクリルポリオール樹脂に由来するセグメントを含む樹脂はそれぞれ、ビニルアルコール系樹脂、メチルセルロース等の多糖類、アクリルポリオール系樹脂などが好ましく挙げられるが、酸素バリア性をより向上できる点から、ビニルアルコール系樹脂が好ましい。ビニルアルコール系樹脂としては例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、変性ポリビニルアルコール等が挙げられ、これらの樹脂は単独で用いても、2種以上の混合物であってもよい。ビニルアルコール系樹脂の平均分子量(JIS K 6726(1994)に準拠)は、500以上3,000以下が好ましい。分子量がこれより小さい場合、層中でポリマーが固定されにくく、バリア性が低下する場合がある。
【0025】
前記ビニルアルコール系樹脂は、一般に、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものであり、酢酸基の一部をけん化して得られる部分けん化であっても、完全けん化であってもよいが、けん化度が高い方が好ましい。けん化度(JISK 6727(1994)に準拠)は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。けん化度が高いと、立体障害の大きい酢酸基が少なく、被覆層の自由体積が小さくなるとともに、樹脂の結晶化度が上がるため、バリア性向上に有利になり好ましい。
【0026】
前記変性ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコールに異なる化学構造の単量体を化学反応させたもの、または異なる化学構造の単量体を共重合させたものを指す。変性ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニル、プロピオンビニル等のビニルエステル系、カルボン酸系、メタアクリル酸エステル系、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル系、グリコール系、などが挙げられる。
【0027】
前記ビニルアルコール系樹脂に由来するセグメント、多糖類に由来するセグメント、及びアクリルポリオール樹脂に由来するセグメント、については、以下の方法で分析することができる。
【0028】
フィルム片を重水素化イソプロパノールへ浸漬し、被覆層組成物を溶媒に溶解させる、または被覆層をスパチュラ等を用いて物理的に削ることで得られた試料を重水素化イソプロパノールに溶解させる。被覆層が溶解したかどうか、または被覆層を削り取れたかは、後述する膜厚み評価方法と同様に被覆層の膜厚みを測定することで確認できる。次いで、溶媒に溶解させた試料を13C-NMR分析し、各ピークを帰属することで各セグメントが含まれているかを確認できる。
【0029】
前記金属アルコキシドは、Si-O結合を有するセグメントとなる、Si(OR)で表されるシリコンアルコキシド、シリコンアルコキシドの加水分解物、及びシリコンアルコキシドの加水分解物の重縮合物より選ばれる1種以上、および/または一般式 M(OR)で表される。式中nは自然数であり、Mは金属原子、例えば、チタン、アルミニウム、ジルコニウムなどであることが好ましい。ここでは、Rはアルキル基であり、特に炭素数1~4の低級アルキル基が好ましい。とりわけ、反応性と安定性、コストの観点から例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランを好適に用いることができ、これらは単独であっても、2種類以上の混合物であってもよい。これら金属アルコキシドは、ネットワークを形成するために加水分解したり、重縮合したりしていてもよい。
【0030】
前記金属アルコキシドの加水分解および/または重縮合は、水、触媒、有機溶媒の存在下で進めることができる。反応に使用する水は、Si(OR)および/またはM(OR)のアルコキシ基に対して0.8当量以上5当量以下であることが好ましい。水の量を0.8当量以上とすることで、十分に加水分解を進行させてネットワークを形成できるため好ましい。水の量を5当量以下にすることで、加水分解進行度を調整してランダムなネットワーク形成を抑制でき、膜の自由体積を小さくしてバリア性が向上するため好ましい。
【0031】
前記金属アルコキシドの反応に使用する触媒は、酸触媒であることが好ましい。酸触媒の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、酒石酸等が挙げられ、特に限定されるものではない。通常、金属アルコキシドの加水分解および重縮合反応は、酸触媒であっても塩基触媒であっても進めることができる。酸触媒を用いた場合、系中のモノマーは平均的に加水分解されやすく、直鎖状やネットワーク構造で縮合が進みやすい。一方、塩基触媒を用いた場合は、同一分子に結合したアルコキシドの加水分解・重縮合反応が進みやすい反応機構となるため、反応生成物は自由体積が大きく空隙の多い粒状になりやすい。膜中の空隙は、水蒸気や酸素の透過経路となるため、酸触媒を用いることが好ましい。触媒の使用量は、金属アルコキシド総mol量に対して、0.1mol%以上0.5mol%以下であることが好ましい。
【0032】
前記金属アルコキシドの反応に使用する有機溶媒は、水および金属アルコキシドと混合可能なメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール等のアルコール類を用いることができる。
【0033】
前記金属アルコキシドの重縮合物として、市販のシリケートオリゴマーやポリシロキサンを用いることもできる。シリケートオリゴマーやポリシロキサンは単独で用いても、低分子の金属アルコキシドと混合して用いてもよいが、過剰な架橋によるクラック発生を抑制するため、低分子の金属アルコキシドと混合して用いることが好ましい。なお、シリケートオリゴマーやポリシロキサンを使用する場合も、直鎖状やネットワーク構造のものを選定すると、膜の自由体積が小さくなり、バリア性が向上しやすく好ましい。
【0034】
前記被覆層に含まれる金属アルコキシドは、フィルム表面をFT-IR-ATR法を用いて分析し、各ピークを帰属することでSi-O結合を有するセグメント、およびM-O結合が含まれているかを確認できる。
【0035】
本発明における被覆層は、前記水溶性樹脂と、前記金属アルコキシドの加水分解および/または重縮合物を混合して得られる塗剤を、金属層および/または無機化合物層に塗布・乾燥して得ることができる。被覆層に含まれる樹脂と金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物の比率は、金属アルコキシドの中心原子が完全酸化した場合の質量(SiO、MOnの換算質量)と樹脂の質量比率で、樹脂/金属アルコキシドの酸化物の換算質量=15/85~85/15の範囲が好ましく、20/80~65/35の範囲がより好ましく、20/80~40/60の範囲がさらに好ましく20/80~50/50の範囲が特に好ましい。この比率を15/85以上とすることで、過剰量の金属アルコキシドの加水分解物および/または重縮合物成分によって膜が脆弱化してクラックが発生することを抑制でき、好ましい。85/15以下とすることで、金属アルコキシドの加水分解物および/または重縮合物のネットワークで樹脂を固定化し、水蒸気バリア性の低下を抑制することができ、好ましい。
【0036】
前記水溶性樹脂、ならびに、金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物を含む被覆層は、前記水溶性樹脂と、前記金属アルコキシドの加水分解および/または重縮合物を混合して得られる塗剤中に、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤を添加することにより、被覆層中に(メタ)アクリロイル基を導入することが可能となる。被覆層中に(メタ)アクリロイル基を有することにより、被覆層上に後述する活性エネルギー線硬化型インキを用いて印刷層を形成した際に、被覆層の(メタ)アクリロイル基と活性エネルギー線硬化型インキとがラジカル重合で架橋することができ、被覆層と印刷層との密着性を向上することができる。
【0037】
本発明における被覆層は、ケイ素および(メタ)アクリロイル基を含むことが好ましい。前記(メタ)アクリロイル基は、活性エネルギー線硬化型インキのフィルム密着性をより向上させることから、前記被覆層に含まれるケイ素の総mol量に対して、0.25mol%以上であることが好ましく、0.30mol%以上がより好ましい。またガスバリア性が良好に維持されることから、1.25mol%以下であることが好ましく、1.10mol%以下がより好ましい。これは前記(メタ)アクリロイル基が、炭素数4以下のアルコキシドやその加水分解物であるヒドロキシル基と比べると自由体積が大きく、添加量が増えるにつれて被覆層中の空隙を拡大し、結果としてガスバリア性が低下する場合があるためである。
【0038】
本発明における被覆層は、厚さが200nm以上600nm以下であることが好ましく、200nm以上500nm以下がより好ましい。厚さを200nm以上とすることで、金属層および/または金属化合物層を欠点なく被覆できるとともに、バリア性を向上することができる。厚さを600nm以下とすることで、硬化時の熱収縮によるクラックや、硬化不足を防止することができ、好ましい。
【0039】
第一のフィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に、金属層および/または無機化合物層を形成した後、さらに被覆層を積層して得ることが好ましい。金属層および/または無機化合物層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法などの公知の方法を用いて形成することができるが、特に、生産性よく高速で成膜できる点から、蒸着法を好適に用いることができる。真空蒸着法の蒸着方式は、電子線(EB)蒸着法、抵抗加熱法、誘導加熱法などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。なお、長尺のフィルムロール対に金属層および/または無機化合物層を形成する場合、蒸着のメインロールは、第一のフィルムの熱負けを防止するために冷却することが好ましく、その温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは0℃以下である。金属層を得る方法としては、目的の金属を原料として蒸着する例が挙げられる。無機化合物層を得る方法としては、目的とする組成の化合物を原料として蒸着する他、金属を原料として使用し、蒸着した金属蒸気に反応ガスを導入して無機化合物を得る方法を例示することができる。例えば、酸化アルミニウム層を得る場合は、アルミニウムを蒸着原料として使用し、蒸発させたアルミニウム蒸気に酸素を含むガスを導入して基材フィルム上に無機酸化物層を形成する。導入するガスは、蒸発金属と反応し、層に取り込まれる組成のガスを含んでいれば良く、膜質制御のために不活性ガスなどを含んでいても構わない。金属層および/または無機化合物層を形成する基材フィルムの表面は、層間密着力を向上するために、表面改質処理をしてもよい。表面改質処理は、インラインでもオフラインでも良く、改質処理方法は特に限定されないが、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、イオンビーム処理、フレーム処理等、公知のものが挙げられる。これらの表面改質処理は、大気中の他、アルゴン、窒素、酸素、炭酸ガス、水素、アンモニア、炭化水素(C2n+2、ただしnは1~4の整数)等の各種ガスもしくはこれらの混合ガスの雰囲気下で処理されてもよい。表面改質処理に使用するガスは、放電のしやすさや得られる活性種のエネルギー、導入したい官能基の種類によって選定できるが、官能基を導入するために炭酸ガスや酸素ガス、安定放電しやすいアルゴンや窒素を含むことが好ましい。
【0040】
第一のフィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に無機化合物層を有し、その無機化合物層を有する面に、水溶性樹脂と金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物と、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤を含む塗剤を塗布する工程、および乾燥する工程を含む製造方法で製造されることが好ましい。本態様とすることにより、第一のフィルム上に印刷層を形成した際に、インキの種別によらず高い密着性を示し、かつバリア性良好な積層フィルムを得ることができる。
【0041】
第一のフィルムは、基材フィルムであるポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも片面に無機化合物層を有し、その無機化合物層を有する面に、水溶性樹脂と金属アルコキシドの加水分解物および/またはその重縮合物と、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤を含む塗剤を塗布する工程、および乾燥する工程を含む、製造方法で製造されることが好ましい。また、第一のフィルムは、基材フィルムであるポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも片面に無機化合物層を有し、その無機化合物層を有する面に、シリコンアルコキシド、シリコンアルコキシドの加水分解物、及びシリコンアルコキシドの加水分解物の重縮合物より選ばれる1種以上と、ビニルアルコール系樹脂、多糖類、及びアクリルポリオール樹脂、より選ばれる1種以上の樹脂と、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤、並びに金属元素Mを含有する化合物を含む塗剤を塗布する工程、および乾燥する工程を含む、製造方法により得られることが好ましい。本態様とすることにより、第一のフィルム上に印刷層を形成した際に、インキの種別によらず高い密着性を示し、かつバリア性良好な積層フィルムを得ることができる。また、製造時の環境負荷を抑えつつも水蒸気バリア性と酸素バリア性の高い積層フィルムを得ることができる。特に、本態様とすることにより、低温でも十分硬化できたり、高温であっても特に短時間で十分硬化できたりすることから、製造時の環境負荷を低減でき、好ましい。
【0042】
前記塗布方法は、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、マイクログラビア方式、ロッドコート方式、バーコート方式、ダイコート方式、スプレーコート方式等、特に限定はなく既知の方法を用いることができる。塗布後の乾燥温度は、70℃以上150℃以下であることが好ましく、90℃以上130℃以下であることがより好ましい。なお、乾燥温度は、基材フィルム表面の最高到達温度を指す。70℃以上とすることで溶媒を除去し、層とすることができ、150℃以下とすることで、基材フィルムであるポリオレフィン系樹脂フィルムの熱収縮や変形を抑制することができる。塗布・乾燥後、シリコンアルコキシドの重縮合反応を進行させてバリア性を向上させるために、さらに熱処理してもよい。熱処理温度は、30℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がより好ましい。熱処理時間は、1日以上14日以下が好ましく、3日以上7日以下がより好ましい。熱処理温度を30℃以上とすることで、被覆層の架橋を進行させてバリア性を向上でき、100℃以下とすることで、熱処理による基材フィルムのカールや収縮を抑制することができる。なお、熱処理温度は雰囲気温度を指す。
【0043】
(第一の中間層)
第一の中間層は、樹脂を主成分とする。
【0044】
樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリレートの(共)重合体であるポリ(メタ)アクリレート樹脂などが挙げられる。ポリウレタン樹脂を含むことにより、第一の中間層に柔軟性を付与し、第一のフィルムおよび第二のフィルムに対する密着性を向上させることができる。また、ポリ(メタ)アクリレート樹脂を含むことにより、活性エネルギー線の照射により、架橋反応や縮合反応により硬化することができる。これらを組み合わせてもよい。
【0045】
ポリウレタン樹脂は、水酸基を2つ以上有するポリオール化合物と、イソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート化合物との付加重合により得ることができる。
【0046】
ポリオール化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、トリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトールや、これらのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体、テトラエチレンオキシド付加体、ラクトン付加体や、後述するポリエステルポリオール、カーボネート構造を有するポリオール化合物等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、第一の中間層の耐熱性を向上させ、ボイル・レトルト処理に対する耐性を向上させる観点から、ポリエステルポリオールが好ましい。
【0047】
ポリエステルポリオールにおけるポリエステル構造は、例えば、ジカルボン酸誘導体をジオール類と反応させることにより得ることができる。ジカルボン酸誘導体のとしては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、シュウ酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0048】
カーボネート構造を有するポリオール化合物としては、例えば、ペンタメチレンカーボネートジオール、ヘキサメチレンカーボネートジオール、ヘキサンカーボネートジオール、デカンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0049】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4-メチレンビスシクロへキシルジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等や、これらのヌレート変性体、アダクト変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0050】
その他の樹脂としては(メタ)アクリレートの(共)重合体であるポリ(メタ)アクリレート樹脂を含んでもよく、(メタ)アクリレートを用いることで、活性エネルギー線の照射により、架橋反応や縮合反応により硬化することができる。またポリ(メタ)アクリレート樹脂は、前記ポリウレタン樹脂とともに用いてもよい。
【0051】
ポリ(メタ)アクリレート樹脂の原料である(メタ)アクリレートとしては、硬化性の観点から、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するものが好ましい。より具体的には、例えば、国際公開第2014/156812号に記載の4官能以上の重合性アクリレートモノマーや、国際公開第2017/90663号に記載の多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。また、安全・環境の観点から、揮発性が低いことが好ましい。
【0052】
(第二のフィルム)
第二のフィルムに用いられる樹脂の融点は、第一のフィルムの基材フィルムに用いられる樹脂の融点よりも低い融点を有することが好ましい。第二のフィルムに用いられる樹脂の融点を第一のフィルムの基材フィルムに用いられる樹脂の融点よりも低くすることにより、第二のフィルム同士を向かい合わせて配置し、ヒートシールにより接着することができる。このため、例えば、袋状などの所望の形状に容易に成形することができる。ここで、第二のフィルムに用いられる樹脂の融点は、第一のフィルムの基材フィルムに用いられる樹脂の融点と同様に測定することができる。
【0053】
第二のフィルムとしては、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルムが好ましい。エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムは、ガスバリア性、特に酸素バリア性により優れ、包装材料として用いる場合に、内容物の保存性を高めることができる。また、ポリオレフィン系樹脂フィルムは、第一のフィルムの基材フィルムとしてポリオレフィン系樹脂フィルムを用いた場合に、リサイクル性を高めることができる。ポリオレフィン系樹脂フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。これらの中から、第二のフィルムに求められる特性に応じて、適宜選択することができる。リサイクル性の観点からは、第一のフィルムの基材フィルムと共通のフィルムを選択することが好ましい。これらを2種以上含んでもよい。
【0054】
ポリオレフィン系樹脂は、その原料としてリサイクル原料やバイオマス由来(植物由来)原料を用いてもよいし、これらと化学燃料由来の原料とを併用してもよい。ポリオレフィン系樹脂を構成する原料中、バイオマス由来原料を10~95質量%含むことが好ましい。
【0055】
第二のフィルムは、単層であっても複数層であってもよいし、未延伸であっても、延伸されていてもよい。第二のフィルムがシーラントフィルムである場合、シーラントとしての高い柔軟性の観点から、未延伸ポリプロピレンフィルム、未延伸ポリエチレンフィルムが好ましい。
【0056】
第二のフィルムは、コロナ処理、バーニング処理、プラズマ処理などの表面処理が施されてなることが好ましく、第一の中間層との濡れ性を向上させることができる。
【0057】
第二のフィルムは、ガスバリア性をより向上させる観点、包装材料として用いる場合には内容物の保存性を高める観点から、第一のフィルムと同様に無機化合物層および/または水溶性樹脂層を有しもよい。
【0058】
第二のフィルムの厚みは、30μm以上、200μm以下が好ましい。
【0059】
第二のフィルムとしては、枚葉、ロールフィルムのいずれも用いることが可能である。
【0060】
(積層フィルム)
本発明の積層フィルムは、前述の第一のフィルムの少なくとも片面に、前述の第一の中間層および第二のフィルムをこの順に有する。第一のフィルムの基材フィルム側に第一の中間層および第二のフィルムを有してもよいし、第一のフィルムの被覆層側に第一の中間層および第二のフィルムを有してもよい。さらに、必要に応じて、第二の中間層として、樹脂を主成分としない層を有してもよい。また、後述するとおり、被覆層表面にさらに印刷層を有することが好ましい。この場合、以下に示す積層フィルムの特性は、印刷層や第二の中間層などの任意の層を含めた積層フィルム全体としての特性を指す。
【0061】
本発明の積層フィルムは、第一のフィルム側から以下の測定条件で測定した発光ピークの発光強度Xと、基準ピークの発光強度Yの比率X/Yが、15以上350以下である。
<測定条件>
前記積層フィルムを1×10-4mol/Lの4-ニトロ-7-ピペラジノ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾールのテトラヒドロフラン(THF)溶液に60℃で60分間浸漬させた後、15mm×15mmに切り出し、励起波長470nmに対する発光スペクトルを測定し、波長520~550nmに見られる極大値を発光ピーク強度とする。
<基準ピーク>
1×10-5mol/Lの4-ニトロ-7-ピペラジノ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾールのTHF溶液を測定して得られる520~550nmの発光強度のピークを、基準ピークの発光強度Yとする。
【0062】
積層フィルム中に含まれる(メタ)アクリロイル基は、α-β不飽和カルボニル化合物であるため、求核性の高い1級または2級アミン類が1,4共役付加して、3-アミノプロピオネート構造に変換することが可能である(マイケル付加反応)。この反応を利用して、2級アミノ基を有する蛍光色素である、4-ニトロ-7-ピペラジノ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾールを(メタ)アクリロイル基に選択的に導入することで、フィルムの(メタ)アクリロイル基を定量することが可能となる。前記蛍光色素は、2級アミノ基を1つだけ有するため、(メタ)アクリロイル基と当量比1:1で反応する。また求核性が高い脂肪族アミンであるため、無触媒で常温でも反応が進行する。また、400nm以上の可視光領域に吸収と蛍光発光を有するため、分光的に検出することができる。
【0063】
積層フィルム中に(メタ)アクリロイル基が一定量以上存在することにより、後述するインキとの密着性が向上する。本発明においては、積層フィルム中における(メタ)アクリロイル基量の指標として、発光ピークの発光強度Xと、基準ピークの発光強度Yの比率X/Yに着目した。X/Yが15未満であると、インキと積層フィルムとの密着性が低下する。X/Yは、30以上がより好ましい。一方、X/Yが350を超えると、積層フィルム中の(メタ)アクリロイル基量の増大により、積層フィルム内部の空隙を拡大し、ガスバリア性が低下する。また、分子間力で密着性が発現する後述する乾燥型インキとの密着性が低下する。X/Yは、150以下がより好ましい。
【0064】
X/Yを前述の範囲にする方法としては、被覆層に(メタ)アクリロイル基を一定量以上存在させる方法が挙げられ、(メタ)アクリロイル基のケイ素に対する含有量が前述の好ましい範囲にある被覆層を有する第一のフィルムを用いることが好ましい。
【0065】
本発明の積層フィルムは、水蒸気透過率が1.0g/m/24hr以下であることが好ましく、0.6g/m/24hr未満であることがより好ましく、0.5g/m/24hr以下であることがより好ましく、0.4g/m/24hr未満であることがさらに好ましいい。また、酸素透過率は1.0cc/m/24hr以下であることが好ましく、0.6cc/m/24hr未満であることがより好ましく、0.4cc/m/24hr未満であることがより好ましく、0.3cc/m/24hr以下であることがさらに好ましい。水蒸気透過率、酸素透過率は小さいほど好ましく、下限は特に限定されないが、実質的には水蒸気透過率は0.01g/m/24hr、酸素透過率は0.01cc/m/24hrである。水蒸気透過率を1.0g/m/24hr以下、酸素透過率を1.0cc/m/24hr以下とすることで、包装材料としたときの内容物の吸湿や酸化による劣化を防止できるので好ましい。
【0066】
本発明の積層フィルムは、被覆層表面に印刷層を有することが好ましく、被覆層と第一の中間層の間に印刷層を有することがより好ましい。ここで、印刷層とは、インキが乾燥および/または硬化により、第一のフィルムに定着された層をいう。本発明の積層フィルムの有するインキとの高い密着性により、被覆層と印刷層との密着性を向上させることができる。
【0067】
印刷層は、ポリウレタン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂を含むことが好ましく、第一のフィルムの被覆層との密着性をより向上させることができる。ポリウレタン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂としては、それぞれ第一の中間層において例示したものが挙げられる。
【0068】
例えば、第一のフィルムの基材フィルム側に第一の中間層および第二のフィルムを有する場合、被覆層表面に印刷層を有する構成は、いわゆる表刷りの構成となる。かかる構成において、印刷層上に、さらにニス膜を有してもよく、印刷層を保護し、光沢性やマット性などの意匠性を付与することができる。
【0069】
ニス膜としては、例えば、溶剤や水などの揮発成分を含有し、加熱乾燥により揮発成分を除去することによって乾固する熱乾燥型ニス、活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型ニスなどが挙げられる。これらの中でも、乾燥に必要なエネルギーが小さく、環境低負荷である観点から、活性エネルギー線硬化型ニスが好ましい。
【0070】
熱乾燥型ニスとしては、例えば、自己乳化型または界面活性剤乳化型のアクリル樹脂、アクリルエポキシ樹脂、アクリルアミノ樹脂を含む水性ニスなどが挙げられる。活性エネルギー線硬化型ニスとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレートオリゴマーを含むものが挙げられる。
【0071】
(積層フィルムの製造方法)
本発明の積層フィルムは、例えば、第一のフィルムと、第二のフィルムを予め準備し、それらを、第一の中間層を構成する成分を介して積層する(以下、「ラミネート工程」と略記する場合がある)ことにより得ることができる。このような製造方法によれば、第一のフィルムと第二のフィルムの設計の自由度、例えば材質の選択や延伸の度合いを高めることができる。なお、上記のとおり、第一のフィルムと第二のフィルムのそれぞれは複層フィルムであることができ、共押出し法で作製されたものであっても、複数のフィルムが接着層を介さず積層されて作製されたものであってもよい。
【0072】
ラミネート工程としては、例えば、第一のフィルムまたは第二のフィルムに、ラミネーターを用いて、第一の中間層を構成する成分を含む塗液を塗工してウエット状態の塗膜を形成し、その塗膜上に、他方のフィルムを貼り合わせた後、養生する方法が挙げられる。生産性の観点から、ロールフィルムを用い、ロールトゥロールで加工することが好ましい。
【0073】
第一の中間層がポリウレタン樹脂を含む場合、ラミネート工程において用いる塗液は、ポリウレタン樹脂の原料であるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物を含むことが好ましい。積層後に養生を行うことにより、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とが反応してポリウレタン樹脂を主成分とする第一の中間層を形成し、柔軟性に優れた積層フィルムを容易に得ることができる。養生は、40℃以上60℃以下の範囲の環境下で行うことが好ましく、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応を促進し、分子量が増加することによって、密着性をより向上させることができる。
【0074】
積層フィルムが印刷層を有する場合、被覆層表面への印刷層の形成方法としては、被覆層にインキを転写する工程(以下、「転写工程」と略記する場合がある)および転写されたインキを乾燥および/または硬化する工程(以下、それぞれ「乾燥工程」、「硬化工程」と略記する場合がある)を含むことが好ましい。
【0075】
(転写工程)
(インキ)
本発明におけるインキとしては、溶剤や水などの揮発成分を含有し、加熱乾燥により揮発成分を除去することによって乾固する乾燥型インキ、活性エネルギー線照射によりラジカル重合による架橋によって硬化する活性エネルギー線硬化型インキなどが挙げられる。これらの中から、転写工程における印刷方式に応じて、好適な粘度を有するものを選択することができる。
【0076】
前記乾燥型インキは、顔料、バインダー樹脂、ならびに、揮発成分として溶剤および/または水を含むことが好ましい。さらに、必要に応じて、例えば、ワックス、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤等の添加剤を含んでもよい。特に、表刷り印刷を行う場合、インキ被膜の耐擦過性を向上させる観点から、ワックスを含むことが好ましい。乾燥型インキは、揮発成分を加熱乾燥により除去することにより、乾固してインキ被膜を形成する。本発明においては、揮発成分の主成分として溶剤を含むものを溶剤インキ、水を含むものを水性インキとする。ここで、主成分とは、質量基準で最も多く含まれている成分をいう。
【0077】
前記顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、溶性アゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料、レーキ顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ベンガラ、カドミウムレッド、黄鉛、亜鉛黄、紺青、群青、酸化物被覆ガラス粉末、酸化物被覆雲母、酸化物被覆金属粒子、アルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、亜鉛粉、ステンレス粉、ニッケル粉、有機ベントナイト、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイトなどの有色顔料や、マイカ(含水ケイ酸アルミニウムカリウム)やタルク(ケイ酸マグネシウム塩)などの無色の体質顔料等が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。本発明におけるインキとしては、有色顔料を含まないアンカーインキや、オーバープリントニスなども挙げられる。
【0078】
前記顔料の含有量は、印刷濃度を高める観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。一方、乾燥型インキにおける顔料の含有量は、インキの流動性を向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0079】
前記バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、ロジン変性樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。バインダー樹脂は、溶剤に溶解した状態で含まれていてもよいし、アルコール、グリコール等の水性溶剤や水に、分散や乳化した状態で含まれていてもよい。これらの中でも、第一のフィルムに対する密着性をより向上させる観点から、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、第一のフィルムに対する密着性をより向上させる観点から、5,000以上が好ましく、8,000以上がより好ましい。一方、ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、乾燥型インキの粘度上昇を抑制する観点から、60,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。
【0080】
前記ポリウレタン樹脂としては、第一の中間層において例示したものが挙げられる。
【0081】
乾燥型インキ中におけるバインダー樹脂の含有量は、乾燥性および第一のフィルムに対する密着性をより向上させる観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。一方、乾燥型インキ中におけるバインダー樹脂の含有量は、粘度上昇を抑制する観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0082】
溶剤の1気圧における沸点は、適度な速乾性が付与されるため、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
【0083】
溶剤としては、例えば、1気圧における沸点が150℃以下であるものとして、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチルなどのエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類が挙げられる。これらを2種以上用いてもよいし、水とこれらの溶剤を組み合わせてもよい。
【0084】
乾燥型インキ中における水および溶剤の合計含有量は、10質量%以上、90質量%以下が好ましい。
【0085】
活性エネルギー線硬化型インキは、顔料、バインダー樹脂、(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、活性エネルギー線源に応じて、光重合開始剤を含んでもよい。さらに、必要に応じて、例えば、ワックス、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤等の添加剤を含んでもよい。(メタ)アクリレートを含むことにより、活性エネルギー線の照射により硬化し、インキ被膜を形成する。
【0086】
これらの中でも、電子線により硬化するEB硬化型インキが好ましい。紫外線により硬化するUV硬化型インキは、後述する硬化工程において、インキ中に生じたラジカル種と被覆層の(メタ)アクリロイル基の反応のために、ラジカル種の拡散が必要である。一方、EB硬化型インキの場合、後述する積層フィルムにおいて、被覆層に少量導入された(メタ)アクリロイル基も電子線により直接励起されて、EB硬化型インキと架橋するため、密着性を発現することができる。このため、EB硬化型インキを用いることにより、第一のフィルムに対する密着性をより向上させることができる。
【0087】
顔料としては、乾燥型インキにおいて例示したものが挙げられる。活性エネルギー線硬化型インキにおける顔料の含有量は、印刷濃度を高める観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。一方、活性エネルギー線硬化型インキにおける顔料の含有量は、インキの流動性を向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0088】
バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フタレート樹脂などが挙げられる。バインダー樹脂の重量平均分子量は、5,000以上が好ましく、印刷適性を向上させることができる。バインダー樹脂としては、感光性樹脂が好ましく、(メタ)アクリレートとの架橋により、硬化性が向上するため、第一のフィルムに対する密着性をより向上させることができる。ここで、感光性樹脂とは、エチレン性不飽和基を側鎖に有する樹脂をいう。エチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0089】
活性エネルギー線硬化型インキ中におけるバインダー樹脂の含有量は、インキに粘弾性を付与する観点や、感光性樹脂であれば硬化性を向上させ、第一のフィルムに対する密着性をより向上させる観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。一方、活性エネルギー線硬化型インキ中におけるバインダー樹脂の含有量は、インキの流動性を向上させる観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0090】
(メタ)アクリレートとしては、第一の中間層において例示したものが挙げられる。
【0091】
活性エネルギー線による硬化性を向上させる観点から、活性エネルギー線硬化型インキ中における(メタ)アクリレートの含有量は、10質量%以上70質量%以下が好ましい。
【0092】
光重合開始剤としては、例えば、α-アミノアルキルフェノン類、チオキサントン類、ベンジルケタール類、アシルホスフィンオキシド類などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0093】
紫外線による硬化性を向上させる観点から、活性エネルギー線硬化型インキ中における光重合開始剤の含有量は、1質量%以上が好ましい。一方、保存安定性を向上させる観点から、活性エネルギー線硬化型インキ中における光重合開始剤の含有量は、20質量%以下が好ましい。
【0094】
活性エネルギー線硬化型インキのアクリル当量は、保存安定性を向上させる観点から、150g/eq以上が好ましく、200g/eq以上がより好ましく、250g/eq以上がさらに好ましい。一方、活性エネルギー線硬化型インキのアクリル当量は、活性エネルギー線による硬化性を向上させ、積層フィルムにおける被覆層の(メタ)アクリロイル基との反応性をより高め、第一のフィルムに対する密着性をより向上させる観点から、500g/eq以下が好ましく、450g/eq以下がより好ましく、400g/eq以下がさらに好ましい。ここで、本発明において、アクリル当量とは、活性エネルギー線硬化型インキに含まれる(メタ)アクリロイル基の量が1モルとなるために必要な活性エネルギー線硬化型インキのグラム数(単位:g/eq)を表す。
【0095】
インキのアクリル当量は、バインダー樹脂への感光性付与や(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を有する成分の含有量が多くなるほど小さくなる。各成分の含有量を適宜調整することにより、アクリル当量を前述の範囲に容易に調整することができる。
【0096】
次に、本発明におけるインキの製造方法を説明する。バインダー樹脂、水または溶剤、(メタ)アクリレート、顔料、添加剤などの必要な成分を秤量し、混合・分散することにより、インキを得ることができる。混合・分散装置としては、例えば、オフセット印刷向けの高粘度インキの場合は、三本ロールミルが好ましく、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷向けの低粘度インキの場合は、アトライター、ボールミル、サンドミル等が挙げられる。
【0097】
(転写方法)
第一のフィルムの被覆層にインキを転写する方法としては、全面塗布であれば、例えば、ニスコーターやバーコーターを用いた塗布方法が挙げられる。パターニングが必要であれば、例えば、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷方式が挙げられる。印刷方式は、インキの粘度や種類に応じて選択することが好ましく、例えば、5Pa・s以上200Pa・s以下の高粘度インキの場合、オフセット印刷やスクリーン印刷が好ましく、0.1Pa・s以上5Pa・s未満のインキの場合、フレキソ印刷が好ましく、0.1Pa・s未満の低粘度インキの場合、グラビア印刷やインクジェット印刷が好ましい。一般的には、インキ粘度が低いほうがレベリング性に優れ、転写後の外観が良好になるため好ましい。一方、これらの印刷方式を1種または2種以上組み合わせて用いることもできる。また、乾燥型インキを用いる場合、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷が好ましく、活性エネルギー線硬化型インキを用いる場合、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷が好ましい。オフセット印刷として、水なし平版印刷を用いてもよい。
【0098】
また、一般的には、意匠性の観点から多色のインキを転写する。複数の印刷ユニットを有する印刷機の方式としては、ライン型印刷機、センタードラム型印刷機などが挙げられる。センタードラム型とは、インキを転写するための胴および押圧胴に対向して、被印刷物を挟む圧胴が単一であることを指す。センタードラム型の印刷機であれば、胴間のフィルム搬送にガイドロールが不要となるため、ウエットオンウエット印刷プロセスに適している。
【0099】
転写されるインキの厚みは、印刷濃度を向上させる観点から、0.1μm以上が好ましい。一方、転写されるインキの厚みは、乾燥不足や硬化不良を抑制する観点から、10μm以下が好ましい。
【0100】
(乾燥工程)
次に、乾燥工程について説明する。乾燥型インキを用いる場合、被覆層に転写された乾燥型インキ中に含まれる水や溶剤を、乾燥工程において、加熱乾燥により除去することが好ましい。加熱乾燥装置としては、例えば、フレキソ印刷機やグラビア印刷機で一般的に使用されている熱風乾燥機等や、IR乾燥機等が挙げられる。揮発成分が水などヒドロキシ基を含む化合物であれば、IR乾燥機により除去することもできる。一般的には、このような乾燥機は印刷ユニット間毎に設置され、一色ごとに乾燥することにより、ドライオンウエットの印刷方式とすることができる。
【0101】
(硬化工程)
次に、硬化工程について説明する。活性エネルギー線硬化型インキを用いる場合、硬化工程において、活性エネルギー線を照射して硬化することが好ましい。活性エネルギー線源としては、紫外線(特にLED-UV)、電子線、ガンマ線などが挙げられる。電子線やガンマ線などの放射線は、照射物質中で高エネルギーの二次電子を発生させ、周囲の分子を励起し、ラジカルに代表される反応活性種を生成する。このため、活性エネルギー線硬化型インキ中でラジカルが生成され、ラジカル重合が進み、硬化してインキ被膜を形成する。特に、電子線は、加速電圧が低く、転写されたインキ皮膜に対して、十分な透過性を有し、硬化に必要なエネルギーを与えられ、利用時の特別な資格が不要で取り扱いが容易なことから好ましく用いられる。
【0102】
さらに、電子線は、前記被覆層に含まれる(メタ)アクリロイル基を直接励起して、インキとのラジカル重合を進めることから、インキと第一のフィルムとの密着性をより向上させることができる。
【0103】
電子線は、加速電圧により透過深度が決まるため、電子線の加速電圧は、インキ被膜を十分な線量が透過する、50kV以上が好ましい。一方、透過深度が大きくなると、積層フィルムの内部に与える線量も増えるため、電子線の加速電圧は、150kV以下が好ましい。
【0104】
また、電子線の照射線量は、20kGy以上50kGy以下が好ましい。
【0105】
(包装材料)
本発明の積層フィルムは、包装材料に好適に用いることができる。包装材料の形状としては、例えば、側面シール包装、二方シール包装、三方シール包装、四方シール包装、ピローシール包装、ひだ付シール包装、平底シール包装、角底シール包装、ガゼット型包装や、自立性の包装材料(スタンデイングパウチ包装)等が挙げられる。
【0106】
包装材料の製造方法としては、例えば、第二のフィルムがヒートシール性を有する場合、第二のフィルムのヒートシールにより成形する方法が挙げられる。例えば、前述の積層フィルムの第一のフィルムを外側に、第二のフィルムを内側(内容物側)となるように二つ折りにして重ね合わせ、重ね合わせた層の端部をヒートシールする方法や、2枚の積層フィルムを第二のフィルムが内側に向かい合うように重ね合わせて、その端部をヒートシールする方法などが挙げられる。
【0107】
ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、インパルスシール、ベルトシール、回転ロールシール、高周波シール、超音波シール等が挙げられる。
【実施例0108】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0109】
[測定・評価方法]
(1)発光強度Xと、基準ピークの発光強度Yの比率X/Y
積層フィルムを40mm×40mmにカットし、1×10-4mol/Lの4-ニトロ-7-ピペラジノ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾールのTHF溶液に60℃60分間浸漬させた。次に、フィルムをTHFに2度浸漬洗浄した後、洗浄したフィルム片の四隅をカットして、15mm×15mmに切り出し、第一のフィルム側の無地部分が測定面になるよう石英板に固定して測定サンプルとした。測定サンプルを、蛍光リン光分光光度計((株)堀場製作所製、FluoroMax-4P)を用い、470nmの励起光、励起光スリット2nm、発光スリット2nmで、500~700nmを受光範囲として蛍光測定を実施した。520~550nmに発光強度のピークが見られる場合に、そのピーク強度を発光強度Xとして算出した。
【0110】
さらに1×10-5mol/Lの4-ニトロ-7-ピペラジノ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾールのTHF溶液を測定して得られる520~550nmの発光強度のピークを、基準ピークの発光強度Yとして算出し、発光強度Xと基準ピークの発光強度Yの比率X/Yを算出した。
【0111】
(2)酸素透過率測定
積層フィルムについて、JISK7126-2(2006)の等圧法に従い、MOCON/ModernControls社製の酸素透過率測定装置“OXTRAN(登録商標)”2/20を用いて、温度23℃、湿度90%RHの条件で、無地部分の酸素透過率を測定した。測定は2枚の試験片について2回ずつ行い、得られた値の平均値を算出し、これを積層フィルムの酸素透過率とした(単位:cc/m/24hr)。
【0112】
酸素透過率が1.0より大きいと酸素バリア性が不十分であり、0.6以上1.0以下であると酸素バリア性が良好であり、0.4以上0.6未満であると酸素バリア性がより良好であり、0.4未満であると酸素バリア性が極めて良好と判断した。
【0113】
(3)水蒸気透過率測定
積層フィルムについて、JISK7129(2008)のB法に従い、MOCON/ModernControls社製の水蒸気透過率測定装置“PERMATRAN(登録商標)”W3/31を用いて、温度40℃、湿度90%RHの条件で、無地部分の水蒸気透過率を測定した。測定は2枚の試験片について2回ずつ行い、得られた値の平均値を算出し、これを積層フィルムの水蒸気透過率とした(単位:g/m/24hr)。
【0114】
水蒸気透過率が1.0より大きいと水蒸気バリア性が不十分であり、0.6以上1.0以下であると水蒸気バリア性が良好であり、0.4以上0.6未満であると水蒸気バリア性がより良好であり、0.4未満であると水蒸気バリア性が極めて良好と判断した。
【0115】
(4)剥離強度
実施例1~20、25および比較例1~4、6~9により得られた積層フィルム中のインキ塗工部分を15mm幅で短冊状にカットし、“テンシロン(登録商標)”万能試験機((株)オリエンテック製RTG-1210)を用いて剥離試験を行い、300mm/分で90°剥離した際の剥離強度を測定した。各2回ずつ測定し、その平均値を算出して密着性を評価した。
【0116】
剥離強度が2.0N/15mm未満であると密着性が不十分であり、2.0N/15mm以上3.0N/15mm未満であると密着性が良好であり、3.0N/15mm以上4.0N/15mm未満であると密着性がより良好であり、4.0N/15mm以上5.0N/15mm未満であると密着性がさらに良好であり、5.0N/15mm以上であると密着性が極めて良好と判断した。
【0117】
(5)剥離性
表刷り用インキを用いて作製した、実施例21~24および比較例5により得られた積層フィルムについて、無作為に抽出した30mm×18mmの範囲に、ニチバン(株)製“セロテープ(登録商標)”No.405(幅18mm)を貼った後、手で剥離し、下記の基準にて剥離性を評価し、密着性を判断した。
A:インキ膜が剥がれなかった。
B:インキ膜に一部剥がれが認められた。
【0118】
(6)耐擦過性
表刷り用インキを用いて作製した、実施例21~24および比較例5により得られた積層フィルムについて、無作為に抽出した30mm×30mmの範囲を、人の爪で20往復擦り、下記の基準により耐擦過性を評価した。
A:爪による傷が認められなかった。
B:爪の痕に沿って、部分的にインキの剥がれが認められた。
【0119】
[第一のフィルム]
フィルム1~17を以下の手順にて作製した。
【0120】
フィルム1:(金属層または無機化合物層の形成)
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー(登録商標)”P60、融点263℃)の片面に、無機化合物層として酸化アルミニウム層を7nm形成した。酸化アルミニウム層は、アルミニウムを蒸発させ、蒸着部に酸素を導入して酸化させる反応蒸着法で蒸着した。
【0121】
(被覆層の形成)
水溶性高分子として、ポリビニルアルコール(以下PVAと略することもある、株式会社クラレ製“ポバール(登録商標)”28-98)を質量比で水/イソプロピルアルコール=97/3の溶媒に投入し、90℃で加熱撹拌して固形分10質量%の水溶性高分子液を得た。次に、テトラエトキシシラン(以下、TEOSと略することもある)6.7gとメタノール2.7gを混合した溶液に、0.02N塩酸水溶液10.6gを液滴しながら撹拌して、TEOS加水分解液を得た。
【0122】
水溶性高分子液のPVA固形分と、TEOSのSiO換算質量の比率がPVA固形分/SiO換算質量=35/65になるように水溶性高分子液とTEOS加水分解液を混合し、全体の固形分が13質量%になるように水で希釈して塗工液を得た。塗工液を、上述の酸化アルミニウム層上に塗布し、150℃で1分間乾燥させてた後、さらに80℃で1週間熱処理することで、フィルム1を得た。
【0123】
フィルム2:(金属層または無機化合物層の形成)
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー(登録商標)”P60、融点263℃)の片面に、無機化合物層として酸化アルミニウム層を7nm形成した。酸化アルミニウム層は、アルミニウムを蒸発させ、蒸着部に酸素を導入して酸化させる反応蒸着法で蒸着した。
【0124】
(被覆層の形成)
水溶性高分子として、PVA(株式会社クラレ製“ポバール(登録商標)”28-98)を質量比で水/イソプロピルアルコール=97/3の溶媒に投入し、90℃で加熱撹拌して固形分10質量%の水溶性高分子液を得た。次に、TEOS6.7gとメタノール2.7gを混合した溶液に、0.02N塩酸水溶液10.6gを液滴しながら撹拌して、TEOS加水分解液を得た。さらに、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:KBM-5103)6.1gとメタノール10.6gを混合した溶液に、0.1N塩酸水溶液2.4gを液滴しながら撹拌して、(メタ)アクリロイル基含有加水分解液を得た。
【0125】
水溶性高分子液のPVA固形分と、TEOSのSiO換算質量の比率がPVA固形分/SiO換算質量=35/65になるように水溶性高分子液とTEOS加水分解液を混合した。得られた混合液に(メタ)アクリル基含有加水分解液を、TEOS加水分解液100質量部に対して0.15質量部添加し(ケイ素1molに対して(メタ)アクリロイル基0.17mol%となる)、全体の固形分が13質量%になるように水で希釈して塗工液を得た。塗工液を、上述の酸化アルミニウム層上に塗布し、150℃で1分間乾燥させてた後、さらに80℃で1週間熱処理することで、フィルム2を得た。
【0126】
フィルム3:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液をTEOS加水分解液100質量部に対して0.25質量部添加した(ケイ素1molに対して(メタ)アクリロイル基0.28mol%となる)こと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0127】
フィルム4:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液をTEOS加水分解液100質量部に対して0.30質量部添加した(ケイ素1molに対して(メタ)アクリロイル基0.34mol%となる)こと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0128】
フィルム5:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液をTEOS加水分解液100質量部に対して0.50質量部添加した(ケイ素1molに対して(メタ)アクリロイル0.56mol%となる)こと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0129】
フィルム6:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液をTEOS加水分解液100質量部に対して0.70質量部添加した(ケイ素1molに対して(メタ)アクリロイル基0.79mol%となる)こと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0130】
フィルム7:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液をTEOS加水分解液100質量部に対して0.90質量部添加した(ケイ素1molに対して(メタ)アクリロイル基1.01mol%となる)こと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0131】
フィルム8:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液をTEOS加水分解液100質量部に対して1.0質量部添加した(ケイ素1molに対して(メタ)アクリロイル基1.12mol%となる)こと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0132】
フィルム9:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液をTEOS加水分解液100質量部に対して1.5質量部添加した(ケイ素1molに対して(メタ)アクリロイル基1.68mol%となる)こと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0133】
フィルム10:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液をTEOS加水分解液100質量部に対して5.0質量部添加した(ケイ素1molに対して(メタ)アクリロイル基5.59mol%となる)こと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0134】
フィルム11:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液をTEOS加水分解液100質量部に対して17.0質量部添加した(ケイ素1molに対して(メタ)アクリロイル基18.72mol%となる)こと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0135】
フィルム12:基材フィルムとして二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製ポリプロピレンフィルム、融点170℃)を用いたこと、被覆層の塗液調合において、さらにチタンキレート(マツモトファインケミカル株式会社製TC-310:チタンラクテート)をTEOS100質量部に対して1.5質量部添加したこと、塗工液を塗布後、120℃で1分間乾燥させた後80℃1週間熱処理したこと以外はフィルム5と同様にして作製した。
【0136】
フィルム13:基材フィルムとして二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製ポリプロピレンフィルム、融点170℃)を用いたこと、塗工液を塗布後、160℃で1分間乾燥したこと以外はフィルム1と同様にして作製した。
【0137】
フィルム14:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液の代わりに、イソシアネート基含有加水分解液(3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:KBM-5103)の代わりに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製:X-12-1308ES、イソシアネート保護基付き)を使用したもの)を、被覆層に含まれるケイ素1molに対してイソシアネート基が1.12mol%となるよう添加したこと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0138】
フィルム15:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液の代わりに、ビニル基含有加水分解液(3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:KBM-5103)の代わりに、ビニルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製:KBE-1003)を使用したもの)を、被覆層に含まれるケイ素1molに対してビニル基が1.12mol%となるよう添加したこと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0139】
フィルム16:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液の代わりに、エポキシ基含有加水分解液(3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:KBM-5103)の代わりに、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製:KBE-403)を、被覆層に含まれるケイ素1molに対してエポキシ基が1.12mol%となるよう添加したこと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0140】
フィルム17:被覆層の(メタ)アクリロイル基含有加水分解液の代わりに、カルボン酸含有加水分解液(3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:KBM-5103)の代わりに、有機官能基にカルボン酸を持つ水系シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製:X-12-1135、加水分解済)を使用したもの)を、被覆層に含まれるケイ素1molに対してカルボン酸が1.12mol%となるよう添加したこと以外はフィルム2と同様にして作製した。
【0141】
[第二のフィルム]
フィルム1:厚み60μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東レフィルム加工(株)製ZK-207)、融点155℃、コロナ処理あり。
【0142】
フィルム2:厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(三井化学東セロ(株)製TUX-HC)、融点130℃、コロナ処理あり。
【0143】
フィルム3:厚み30μmの無延伸エチレン-ビニルアルコール共重合(EvOH)フィルム(クラレ(株)製“エバール(登録商標)”EF-E)、融点180℃、コロナ処理なし。
【0144】
フィルム4:水溶性樹脂層を有する厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(タマポリ(株)製SB-7)、融点130℃、コロナ処理あり。
【0145】
[第一の中間層原料]
中間層1:ドライ混合ラミネート接着剤(三井化学(株)製“タケラック(登録商標)”A626/“タケネート(登録商標)”A50)、ポリウレタン樹脂が主成分。
【0146】
中間層2:無溶剤型混合ラミネート接着剤(三井化学(株)製“タケラック(登録商標)”A670A/“タケネート(登録商標)”A670B)、ポリウレタン樹脂が主成分。
【0147】
中間層3:EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(MIWON社製“Miramer(登録商標)”M3130)/トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセルオルネクス社製“EBECRYL(登録商標)”130)の重量比1/2混合物を活性エネルギー線照射により硬化したもの、ポリ(メタ)アクリレート樹脂が主成分。
【0148】
[インキ]
インキ1:Richcure WL EB Cyan(内外インキ製造(株)製、電子線硬化型水なしオフセットインキ)、感光性樹脂を含む。
【0149】
インキ2:“リオアルファ(登録商標)”S R39 藍(東洋インキ(株)製、裏刷り用溶剤グラビアインキ)、ポリウレタン樹脂を含む。重量平均分子量8,000。
【0150】
インキ3:XA-55-N 藍 800 G(サカタインクス(株)製、表刷り用溶剤フレキソインキ)、ポリウレタン樹脂を含まない。ワックスを含む。
【0151】
[実施例1]
アクリロイル基量0.17mol%の第一のフィルム2の被覆層に対して、RIテスターを用いて電子線硬化型インキ1を部分的に展色し、電子線照射装置(岩崎電気(株)製EC250/30/90LS)を用いて、加速電圧110kV、照射線量30kGyの条件で電子線を照射してインキ展色部分にベタ印刷層を形成した。続いて、ドライ混合ラミネート接着剤(三井化学(株)製“タケラック(登録商標)”A626/“タケネート(登録商標)”A50)を、塗工量3.0g/mとなるように第一のフィルムの被覆層側(印刷層を有する部分は印刷層)に塗工し、第二のフィルム1をハンドローラーで貼り合わせ、第一の中間層1および第二のフィルムを積層した。その後、40℃で3日間養生し、積層フィルムを作製した。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0152】
[実施例2~9、および比較例1~2、6~9]
第一のフィルム2にかえて第一のフィルム1、3~17を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
[実施例10]
第一のフィルム2の被覆層に対して、バーコーターの8番を用いて裏刷り用の溶剤乾燥型インキ2を部分的に展色し、80℃の熱風乾燥機で1分間乾燥し、インキ展色部分にベタ印刷層を形成した。その後は実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。前述の方法により評価した結果を表2に示す。
【0155】
[実施例11~18、および比較例3]
第一のフィルム2にかえて第一のフィルム3~11を用いたこと以外は、実施例10と同様にして積層フィルムを作製した。前述の方法により評価した結果を表2に示す。
【0156】
【表2】
【0157】
[実施例19、比較例4]
第一のフィルム2にかえて第一のフィルム12~13を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。前述の方法により評価した結果を表3に示す。
【0158】
[実施例20]
第一のフィルム2にかえて第一のフィルム12を用いたこと以外は実施例10と同様にして積層フィルムを作製した。前述の方法により評価した結果を表3に示す。
【0159】
[実施例21、比較例5]
それぞれ第一のフィルム12~13の基材フィルム側に、ドライ混合ラミネート接着剤(三井化学(株)製“タケラック(登録商標)”A626/“タケネート(登録商標)”A50)を、塗工量3.0g/mとなるように塗工し、第二のフィルム1をハンドローラーで貼り合わせ、第一の中間層1および第二のフィルム1を積層した。40℃で3日間養生した後、第一のフィルムの被複層側に対して、バーコーターの8番を用いて表刷り用の溶剤乾燥型インキ3を部分的に展色し、80℃の熱風乾燥機で1分間乾燥し、インキ展色部分にベタ印刷層を有する積層フィルムを作製した。前述の方法により評価した結果を表3に示す。
【0160】
[実施例22]
ドライ混合ラミネート接着剤にかえて無溶剤型混合ラミネート接着剤(三井化学(株)製“タケラック(登録商標)”A670A/“タケネート(登録商標)”A670B)を、第二のフィルム1にかえて第二のフィルム2を用いたこと以外は実施例21と同様にして積層フィルムを作製した。前述の方法により評価した結果を表3に示す。
【0161】
[実施例23~24]
第二のフィルム2にかえて第二のフィルム3~4を用いたこと以外は実施例22と同様にして積層フィルムを作製した。前述の方法により評価した結果を表3に示す。
【0162】
[実施例25]
第一のフィルム12の被覆層に対して、RIテスターを用いて電子線硬化型インキ1を部分的に展色した後、バーコーターの6番を用いてEO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(MIWON社製“Miramer(登録商標)”M3130)/トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセルオルネクス社製“EBECRYL(登録商標)”130)の重量比1/2混合物を第一のフィルムの被覆層側(印刷層を有する部分は印刷層)に塗工した。次に、第二のフィルム1をハンドローラーで貼り合わせ、第一の中間層3および第二のフィルムを積層した。その後、電子線照射装置(岩崎電気(株)製EC250/30/90LS)を用いて、加速電圧110kV、照射線量30kGyの条件で第一のフィルム側から電子線を照射して、インキ展色部分にベタ印刷層を有する積層フィルムを作製した。前述の方法により評価した結果を表3に示す。
【0163】
【表3】