(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117078
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】クレアチン含有組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20240821BHJP
A23L 5/44 20160101ALI20240821BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20240821BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240821BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240821BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240821BHJP
A61K 31/7024 20060101ALI20240821BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20240821BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240821BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20240821BHJP
A61K 31/121 20060101ALI20240821BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240821BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240821BHJP
A61P 21/00 20060101ALN20240821BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L5/44
A61K31/197
A61P43/00 121
A61K47/18
A61P43/00 105
A61K47/26
A61K31/7024
A61K31/045
A61K31/7048
A61K31/353
A61K31/121
A61K47/10
A61K47/22
A61P21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018470
(22)【出願日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2023022345
(32)【優先日】2023-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石山 果穂
(72)【発明者】
【氏名】山田 啓史
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MA01
4B018MA07
4B018MD08
4B018MD09
4B018MD19
4B018MD23
4B018MD42
4B018ME14
4B018MF02
4C076BB01
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4C076CC26
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4C086AA01
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4C086ZA94
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4C086ZC75
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4C206FA53
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4C206MA75
4C206NA05
4C206ZA94
4C206ZB21
4C206ZC75
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クレアチン貯蔵を促進させる組成物を提供すること。
【解決手段】(a)クレアチン化合物、(b)黄色を呈する天然物由来成分及び(c)イソロイシン又はその塩を含有する組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)クレアチン化合物、(b)黄色を呈する天然物由来成分及び(c)イソロイシン又はその塩を含有する組成物。
【請求項2】
(a)クレアチン化合物が、クレアチンモノハイドレートである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(b)黄色を呈する天然物由来成分が、クロシン、ルテイン、サフラワーイエロー、カテキン、ジオスミン、ゼアキサンチン及びクルクミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
クレアチン貯蔵促進用である請求項1記載の組成物。
【請求項5】
エネルギー貯蔵促進用である請求項1記載の組成物。
【請求項6】
(b)黄色を呈する天然物由来成分及び(c)イソロイシン又はその塩を有効成分として含有するクレアチン貯蔵促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレアチンの貯蔵促進に有効な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトが身体を動かす又はその機能を維持する等の生命活動に必要なエネルギーは、アデノシン三リン酸(ATP)に由来する。したがって、継続的な運動にはこのATPの継続した供給が必要不可欠である。とりわけ、激しい運動時等には多くのATPが利用されるため、ATPの再合成が必要になる。ATPを再合成する働きを有する生体内物質が、高エネルギーリン酸化合物である。高エネルギーリン酸化合物の代表的なものの一つとして、クレアチンリン酸が挙げられる。クレアチンリン酸は、アデノシン二リン酸(ADP)と反応して、ATP量を回復させることで、エネルギーを供給するため、クレアチンリン酸は身体活動にとって重要なエネルギー貯蔵物質である。クレアチンはクレアチンリン酸の構成成分であり、生体内でクレアチンが増加するとクレアチンリン酸も増加する。したがって、クレアチンの身体組織中の貯蔵量が増大することによって生体のエネルギー貯蔵量も増大する。また、クレアチン化合物の経口摂取により、身体組織中の遊離クレアチン量及びクレアチンリン酸量を増大させることが知られている(非特許文献1、2)。
【0003】
食品から摂取されたクレアチン化合物は、骨格筋を含む多様な臓器に取り込まれる。クレアチン化合物の摂取は、筋組織中のクレアチン量を増加させるだけでなく、脳組織中のクレアチン量を増加させることで、脳組織中におけるエネルギー貯蔵を促進させる作用がある。これまでに、クレアチンは、アスリートやトレーニング愛好者により運動機能向上のため、または筋肉量の増大のための食品として利用されてきた(非特許文献3)。
【0004】
一方、身体組織中のクレアチン貯蔵量を増大させるためには、多量のクレアチン化合物の摂取が必要となることがあり、摂取するクレアチン量を低減させるための、組織中クレアチン量を高める組成物及び方法が提案されている。
例えば、エネルギーとして利用される糖類との同時摂取がある。摂取したエネルギーとして利用される糖類は、インスリンの血中濃度を増加させる。インスリンは各種組織中の細胞に作用して、クレアチントランスポーターの活性を増大させる。これにより、細胞内へのクレアチンの取り込み量が増加し、結果として組織中のクレアチン貯蔵量が増大する。
α-リポ酸も同様に、クレアチンと併用することによりインスリンカスケードを活性化させ、クレアチンの取り込み量を高めることが知られている(特許文献1、非特許文献4)。しかしながら、α-リポ酸を特定の遺伝的素因を持った方が摂取した場合、低血糖状態に起因する手足の震え、冷や汗といったインスリン自己免疫症候群の症状が現れる場合があり、利用には注意が必要である。
また、別の例としては、腸溶性コーティングを施したクレアチン塩酸塩、及びポリエチレングリコールを含む経口クレアチン配合物がある(特許文献2)。
特許文献3には、マトリクスを用いた機能性成分の送達システムに関するもので、クレアチンと着色料や着香料等を含有する送達システムが記載されている。
【0005】
このように、クレアチンの取り込み促進等に関して種々の検討がされているが、さらに、より手軽にクレアチンを摂取でき、あるいは、より簡便に製造可能で、その効果が十分に得られる製品が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Medicine&Science in Sports & Exercise.1998;30(7):1123-1129
【非特許文献2】スポーツ栄養学 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる 2017年10月25日初版
【非特許文献3】Nutrients.2021;13(6):1915.
【非特許文献4】Int J Sport Nutr Exerc Metab.2003;13(3):294-302.
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007-536250号公報
【特許文献2】特許5433571号公報
【特許文献3】特表2005-527591号公報
【特許文献4】特開2012-012409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、クレアチン貯蔵を促進させる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、クレアチン化合物に黄色を呈する天然物由来成分とイソロイシンを組み合わせるとクレアチン貯蔵効果がより高められることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
(1)(a)クレアチン化合物、(b)黄色を呈する天然物由来成分及び(c)イソロイシン又はその塩を含有する組成物、
(2)(a)クレアチン化合物が、クレアチンモノハイドレートである(1)に記載の組成物、
(3)黄色を呈する天然物由来成分がクロシン、ルテイン、サフラワーイエロー、カテキン、ジオスミン、ゼアキサンチン及びクルクミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である(1)に記載の組成物、
(4)クレアチン貯蔵促進用である(1)に記載の組成物、
(5)エネルギー貯蔵促進用である(1)に記載の組成物、
(6)(b)黄色を呈する天然物由来成分及び(c)イソロイシン又はその塩を有効成分として含有するクレアチン貯蔵促進剤、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、クレアチンの貯蔵を促進できる組成物の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例1における、被験物質がマウス筋芽細胞株においてクレアチン貯蔵を促進することを示したグラフである。タンパク質量で補正した細胞内クレアチン量の変化率を表示。各群は6例、比較例1を100%とした変化率の平均値±標準誤差を表示。***p<0.001(比較例1を対照としたDunnett多重検定)
【
図2】
図2は、実施例2における、被験物質がマウス筋芽細胞株においてクレアチン貯蔵を促進することを示したグラフである。タンパク質量で補正した細胞内クレアチン量の変化率を表示。各群は3例、比較例1を100%とした変化率の平均値±標準誤差を表示。*p<0.05(Studentのt検定)
【
図3】
図3は、実施例3における、被験物質がマウス筋芽細胞株においてクレアチン貯蔵を促進することを示したグラフである。タンパク質量で補正した細胞内クレアチン量の変化率を表示。各群は3例、比較例1を100%とした変化率の平均値±標準誤差を表示。*p<0.05(Studentのt検定)
【
図4】
図4は、実施例4における、被験物質がマウス筋芽細胞株においてクレアチン貯蔵を促進することを示したグラフである。タンパク質量で補正した細胞内クレアチン量の変化率を表示。各群は6例、比較例1を100%とした変化率の平均値±標準誤差を表示。***p<0.001(比較例1を対照としたDunnett多重検定)
【
図5】
図5は、実施例5における、被験物質がマウス筋芽細胞株においてクレアチン貯蔵を促進することを示したグラフである。タンパク質量で補正した細胞内クレアチン量の変化率を表示。各群は3例、比較例1を100%とした変化率の平均値±標準誤差を表示。*p<0.05(Studentのt検定)
【
図6】
図6は、実施例6における、被験物質がマウス筋芽細胞株においてクレアチン貯蔵を促進することを示したグラフである。タンパク質量で補正した細胞内クレアチン量の変化率を表示。各群は3例、比較例1を100%とした変化率の平均値±標準誤差を表示。***p<0.001(Studentのt検定)
【
図7】
図7は、実施例7における、被験物質がマウス筋芽細胞株においてクレアチン貯蔵を促進することを示したグラフである。タンパク質量で補正した細胞内クレアチン量の変化率を表示。各群は3例、比較例1を100%とした変化率の平均値±標準誤差を表示。*p<0.05(Studentのt検定)
【
図8】
図8は、比較例5及び6における、被験物質がマウス筋芽細胞株においてクレアチン貯蔵が変化しないことを示したグラフである。タンパク質量で補正した細胞内クレアチン量の変化率を表示。各群は3例、比較例1を100%とした変化率の平均値±標準誤差を表示。n.s.有意差なし(比較例1を対照としたDunnett多重検定)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における成分(a)クレアチン化合物とは、クレアチン若しくはその誘導体又はそれらの塩、又はそれらの水和物を示す。クレアチンの誘導体とは、エステル化されたクレアチン、アミノ酸が付加されたクレアチン、グルコン酸が付加されたクレアチン、糖類が付加されたクレアチン、環状化されたクレアチン等を示す。好ましくは、クレアチン、クレアチンモノハイドレート、クレアチン無水物、クレアチンリン酸塩、クレアチンクエン酸塩、クレアチン塩酸塩、クレアチン硝酸塩、クレアチンリンゴ酸塩、クレアチンオロト酸塩、クレアチンピルビン酸塩、クレアチンマレイン酸塩、クレアチンリン酸エステル、クレアチン硝酸エステル、クレアチンマレイン酸エステル、クレアチンメチルエステル、クレアチンエチルエステル、クレアチン硫酸エステル、クレアチンロイシナート、グルコン酸クレアチン、シクロクレアチン、ポリエチレングリコシレートクレアチンであり、より好ましくはクレアチン、クレアチンモノハイドレート、クレアチン塩酸塩、クレアチンエチルエステル、クレアチン硝酸塩、クレアチンリンゴ酸塩、さらに好ましくは、安定性等の点からクレアチンモノハイドレートである。
これらのクレアチン化合物は、食品または化学合成品として市販のものを入手可能であり、例えば、アルツケム社製、東京化成工業株式会社製、富士フイルム和光純薬株式会社製等が使用できる。また、アルギニン、グリシン、メチオニン、グアニジノ酢酸、サルコシン酸やシアナミドなどから合成してもよく、クレアチン化合物を含有する天然物からの抽出物でも良い。
【0014】
本発明の組成物中の(a)クレアチン化合物の含有量は、特に限定されないが、好ましくは25~95w/w%、より好ましくは30~90w/w%、さらに好ましくは35~70w/w%である。
【0015】
本発明における黄色を呈する天然物由来成分とは、クロシン、ルテイン、βカロテン、サフラワーイエロー、ジオスミン、イソフラボン、カテキン、クルクミン、ゼアキサンチンが挙げられる。黄色を呈する天然由来成分とは、吸収極大波長を250-490nmに有する。
サフラワーイエローとは、食品、医薬部外品、医薬品などに通常使用される紅花由来成分であれば、特に限定されず、キク科の一年生草木であるベニバナから抽出されたものを用いても良い。サフラワーイエローの別名称としてサフロールイエロー、ベニバナ黄色素、紅花色素がある。
クロシンは、クチナシ、サフラン等に含まれる水溶性カロテノイドであり、ルテインは、ホウレンソウ、ケール等の緑黄色野菜や、マリーゴールド等に含まれる脂溶性カロテノイドの一種である。βカロテンは脂溶性が高いカロテノイドの一種であり、ニンジンやホウレンソウ等の野菜等に含まれる。ジオスミンは、ローズマリーに含まれるフラボノイドの一種であり、本発明にはローズマリー抽出物を色素として用いる態様も含まれ、ローズマリー色素としては、食品、医薬部外品、医薬品などに通常使用されるローズマリー由来成分であれば特に限定されない。イソフラボンはフラボノイドの一種であり、マメ科の植物に多く含まれる。カテキンは主にお茶に含まれるフラボノイドの一種である。本発明中のカテキンは特に限定されないが、エピガロカテキンや没食子酸エピカテキン、エピカテキン等が挙げられ、好ましくは没食子酸エピガロカテキン(EGCG)である。クルクミンはクルクミノイドに分類され、ウコン等に含まれる。ゼアキサンチンはルテインと同様にカロテノイドの一種であり、葉菜類やトウモロコシ等に含まれる。本発明には、これらの黄色を呈する天然物由来成分を含有する野菜等の粉砕物、搾汁液、抽出液等を用いる態様も含まれる。
【0016】
本発明の組成物中の(b)黄色を呈する天然物由来成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~10w/w%、より好ましくは0.2~9w/w%、さらに好ましくは0.3~8w/w%である。
【0017】
本発明における成分(c)イソロイシン又はその塩とは、食品、医薬部外品、医薬品などに通常使用されものであれば特に限定されず、L-イソロイシンやL-イソロイシンエチルエステル塩酸塩、L-イソロイシンアミド塩酸塩等を挙げることができ、好ましくは、L-イソロイシンである。
【0018】
本発明の組成物中の(c)イソロイシン又はその塩の含有量は、特に限定されないが、好ましくは1~40w/w%、より好ましくは2~35w/w%、さらに好ましくは3~30w/w%である。
【0019】
本発明におけるクレアチン化合物の含有量(A)と黄色を呈する天然物由来成分の含有量(B)との質量比[(A):(B)]は、組織中のクレアチン貯蔵促進の観点から、好ましくは1:0.001~1であり、より好ましくは1:0.01~0.5であり、さらに好ましくは1:0.01~0.2である。(b)黄色を呈する天然物由来成分のうち、クルクミンは他の成分と比較して少量でもクレアチン貯蔵効果を得ることができることから、質量比[(A):(B)]は好ましくは1:0.001~1であり、より好ましくは1:0.003~0.5であり、より好ましくは1:0.005~0.1である。
【0020】
本発明におけるクレアチン化合物の含有量(A)とイソロイシン又はその塩の含有量(C)との質量比[(A):(C)]は、組織中のクレアチン貯蔵促進の観点から、好ましくは1:0.01~100であり、より好ましくは1:0.05~50であり、さらに好ましくは1:0.05~1である。
【0021】
本発明における黄色を呈する天然物由来成分の含有量(B)とイソロイシン又はその塩の含有量(C)との質量比[(B):(C)]は、組織中のクレアチン貯蔵促進の観点から、好ましくは1:0.01~100であり、より好ましくは1:0.1~50であり、さらに好ましくは1:0.2~35であり、よりさらに好ましくは1:0.2~10である。(b)黄色を呈する天然物由来成分のうち、クルクミンは他の成分と比較して少量でもクレアチン貯蔵効果を得ることができることから、質量比[(B):(C)]は好ましくは1:10~100であり、より好ましくは1:20~90であり、より好ましくは1:40~80である。
【0022】
本発明の組成物の用量は特に制限されるものではないが、成人一日当たり、クレアチン摂取量として1.5~20mgが好ましく、1.5~5mgがより好ましく、3~5mgがさらに好ましい。
【0023】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、生薬及びその抽出物等を配合することができる。そして、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤などを配合し、さらに必要に応じてpH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、界面活性剤、香料などを配合できる。
【0024】
本発明の組成物は、経口又は非経口として用いることができる。
本発明の組成物は、食品、医薬部外品、医薬品、化粧品等に用いることができるが、好ましくは食品である。
【0025】
本発明の組成物を経口組成物として用いる場合、固形又は液体等、特にその形態は限定されず、例えば、粉末剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、ドリンク剤、ゼリー剤、飲料、濃縮飲料、固形発泡飲料、粉末飲料、ゼリー状飲料として提供することができる。
本発明の組成物を非経口組成物として用いる場合、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、貼付剤等の外用剤や注射剤等として提供できる。
【0026】
本発明の経口組成物は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されない。例えば、固形製剤の場合、各成分を取り均一に混合する工程により製造することができる。例えば、液体製剤の場合、各成分をとり適量の精製水で溶解した後、適宜、pHを調整し、残りの精製水を加えて容量調製し、必要に応じてろ過、殺菌処理し、容器に充填する工程により製造することができる。
本発明の非経口組成物も常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。
【0027】
本発明の組成物は、組織中のクレアチン貯蔵を促進させるクレアチン貯蔵促進効果及び運動などの身体活動に必要なエネルギーの貯蔵を促進するエネルギー貯蔵促進効果を有する。
【0028】
本発明の組成物は、組織中のクレアチン貯蔵を促進させることで、組織のエネルギー産生の促進、瞬発的運動パフォーマンスの向上、持久的運動パフォーマンスの向上、筋力の向上、筋持久力の向上、筋肉量の増加、基礎代謝の向上、高負荷トレーニングに対する耐久力の向上、運動中の疲労軽減、疲労からの回復力の向上などが期待できる。また、筋萎縮を軽減する又は筋肉量を維持することで、サルコペニア、ロコモティブシンドロームといった筋力の低下、エネルギー代謝の低下等が関わる症状を維持又は改善することも期待できる。
【0029】
本発明の組成物やその説明書は、組織中のクレアチン量増加、クレアチン貯蔵促進、エネルギー貯蔵促進のために用いられる旨の表示を付したものであり得る。ここで、「表示を付した」とは、本発明の組成物を含む製品の本体、容器、包装などに記載すること、あるいは製品情報を開示する説明書、添付文書、パンフレット、ポスター、店頭POPまたはその他の印刷物などの書類に記載すること、及び各種チラシ、インターネット、テレビCM等を含む宣伝のために用いられる広告に記載することを含む。また、他の機能がある旨を表示したもの、又は、機能に関する表示がないものであっても、組織中のクレアチン貯蔵量促進作用、エネルギー貯蔵促進作用を実質的に有するものが本発明の範囲に含まれる。
【0030】
本発明のクレアチン貯蔵促進剤は、(b)黄色を呈する天然物由来成分及び(c)イソロイシン又はその塩を有効成分として含有するものである。(b)黄色を呈する天然物由来成分、(c)イソロイシン又はその塩それぞれの種類、含有量、質量比[(B):(C)]等は上記本発明の組成物と同様である。本発明のクレアチン貯蔵促進剤を、クレアチン化合物を含む飲食品等とともに摂取することにより組織中へのクレアチンの取り込み、貯蔵を促進することができる。
【0031】
以下に、実施例等を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例では、クレアチン、サフラワーイエロー、クロシン、青色1号、フィコシアニン、ジオスミン、クルクミンは東京化成工業株式会社製、イソロイシン、EGCGは富士フイルム和光純薬株式会社製、ルテインはAstaTech Inc.製、ゼアキサンチンはAK Scientific, Inc.製を用いた。
【実施例0032】
以下に実施例等を挙げ、本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例等により限定されるものではない。
【0033】
被試験サンプルの調製(実施例1~7、比較例1~6)
下記の表1に示したそれぞれの処方となるように、クレアチン、サフラワーイエロー、クロシン、ルテイン、EGCG、ゼアキサンチン、ジオスミン、クルクミン、青色1号、フィコシアニン、イソロイシンを秤量し、10% Fetal Bovine Serum(FBS)を含むアミノ酸不含DMEM(富士フイルム和光純薬)に添加し被試験サンプルを得た。ただし、実施例3のルテイン、実施例5のゼアキサンチン及び実施例7のクルクミンはDMSOに溶解させてから培地に溶解した。これらのサンプルは、評価開始前に湯浴を用いて37℃まで加熱した。
【0034】
【0035】
<試験例1>マウス筋芽細胞株C2C12細胞における評価
マウス筋芽細胞株C2C12細胞(DSファーマバイオメディカル)を増殖培地10% Fetal Bovine Serum(FBS)を含むDMEM(富士フイルム和光純薬)にて、25000 cells/cm2になるように6穴プレートに播種し、37℃、CO2 5%にセットしたインキュベーター内で培養した。
培養1日後に培地を吸引除去し、実施例1~7及び比較例1~6で示した被試験サンプルの培地に交換した。4時間の培養終了後、培地を除去し、Creatine assay kit (abcam、ab65339)に付属のAssay Bufferを添加し、細胞を回収した。細胞溶解液より、Creatine assay kit (abcam)を用いて添付のプロトコールに従い細胞内クレアチン量を測定した。細胞内クレアチン量はプロテインアッセイBCAキット(ナカライテスク)を用いて測定したタンパク質量で補正した。結果は比較例1を100%としたクレアチン量の変化率で示した。クレアチン量の変化率は以下のように算出した。
クレアチン量の変化率(%)=(細胞内クレアチン量/タンパク質量)/(比較例1の細胞内クレアチン量/比較例1のタンパク質量)×100
【0036】
結果を
図1~8に示す。なお、比較例1は試験ごとにデータを取得し、各実施例と比較した(実施例3、5及び7と比較する際は、DMSOを添加しDMSOの影響を排除した)。比較例3も試験ごとにデータを取得した。
図1より、実施例1は比較例1と比較して、細胞内クレアチン量が上昇することが確認されたが、比較例2及び3は比較例1と比較した細胞内クレアチン量の上昇が確認されなかった。
図2より、実施例2は比較例1と比較して、細胞内クレアチン量が上昇することが確認された。
図3より、実施例3は比較例1と比較して、細胞内クレアチン量が上昇することが確認された。
図4より、実施例4は比較例1と比較して、細胞内クレアチン量が上昇することが確認されたが、比較例3及び4は比較例1と比較した細胞内クレアチン量の上昇が確認されなかった。
図5より、実施例5は比較例1と比較して、細胞内クレアチン量が上昇することが確認された。
図6より、実施例6は比較例1と比較して、細胞内クレアチン量が上昇することが確認された。
図7より、実施例7は比較例1と比較して、細胞内クレアチン量が上昇することが確認された。
図8より、比較例5及び6は比較例1と比較して、細胞内クレアチン量の上昇が確認されなかった。なお、比較例5及び6で用いた青色1号とフィコシアニンは、食品等で用いられる青色色素である。本発明の組成物は筋組織中のクレアチン貯蔵量の増大効果を有することが推測される。
【0037】
<処方例>
以下表2に、本発明の経口組成物の処方例を挙げる。本発明により製造可能な処方例は、経口摂取により体内のクレアチン貯蔵量を増加させる。
【0038】
本発明の組織中のクレアチン貯蔵を促進する成分は、例えば、瞬発的運動パフォーマンス、持久的運動パフォーマンス等の向上、筋力、筋持久力、筋肉量、基礎代謝、高負荷トレーニングへの耐久力、疲労からの回復力等の維持又は改善のために利用可能である。
また、クレアチン貯蔵促進剤は、骨格筋等の身体組織においてエネルギー貯蔵を促進する作用を有するため、脳における認知機能の維持又は改善、皮膚組織におけるシワの予防又は改善(特許文献4参照)にも有効である。
さらに、摂取するクレアチン量を低減させても十分な組織中エネルギーの貯蔵が見込まれるため、多量のクレアチンを摂取することにより生じる消化管症状等を軽減することができる。