(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117080
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】ダイヤフラムを有するセンサダイ
(51)【国際特許分類】
G01L 13/00 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
G01L13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024019110
(22)【出願日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】18/169939
(32)【優先日】2023-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518345815
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ソリューソンズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100229736
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 剛
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー シー フォング
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ティー オブライエン
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055BB01
2F055BB05
2F055CC02
2F055EE14
2F055FF43
2F055GG15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】絶対圧および差圧の両方の測定を必要とする。しかしながら、既存の圧力センサは、別個の構成要素を用いて絶対圧および差圧それぞれを測定するため、圧力センサに必要な構成要素の数が増大し、それにより製造コストや専有面積が増大する。
【解決手段】センサダイ(100)は、第1の膜(130)と、第1の膜(130)内に配置される第2の膜(140)とを有するダイヤフラム(110)を含む。第1の膜(130)は、ダイヤフラム(110)の第1の面(112)と第1の面(112)の反対側にあるダイヤフラム(110)の第2の面(114)との間の差圧に比例してたわみ可能である。第2の膜(140)は、ダイヤフラム(110)の第1の面(112)における絶対圧に比例して第1の膜(130)と同時にたわみ可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の膜(130)と、前記第1の膜(130)内に配置されている第2の膜(140)とを有するダイヤフラム(110)を備え、
前記第1の膜(130)は、前記ダイヤフラム(110)の第1の面(112)と前記第1の面(112)の反対側にある前記ダイヤフラム(110)の第2の面(114)との間の差圧に比例してたわみ可能であり、
前記第2の膜(140)は、前記ダイヤフラム(110)の前記第1の面(112)における絶対圧に比例して前記第1の膜(130)と同時にたわみ可能である、
センサダイ(100)。
【請求項2】
前記ダイヤフラム(110)は、第1の層(116)と、前記第1の層(116)に配されている第2の層(120)とを含み、
前記第1の膜(130)は、前記第1の層(116)および前記第2の層(120)から形成され、
前記第2の膜(140)は、前記第2の層(120)から形成されている、
請求項1に記載のセンサダイ(100)。
【請求項3】
前記第1の層(116)は、前記第1の層(116)に延びるダイヤフラムキャビティ(118)を有し、
前記第2の膜(140)は、前記ダイヤフラムキャビティ(118)の上に延びる前記第2の層(120)の部分により形成されている、
請求項2に記載のセンサダイ(100)。
【請求項4】
前記第1の膜(130)は、前記ダイヤフラム(110)の前記第1の面(112)に延びる凹部(134)を有し、
前記凹部(134)は、前記第2の膜(140)から分離している、
請求項1に記載のセンサダイ(100)。
【請求項5】
前記ダイヤフラム(110)が配されている支持部(160)をさらに備え、
前記支持部(160)は、支持部キャビティ(162)を有し、
前記ダイヤフラム(110)の前記第2の面(114)は、前記支持部キャビティ(162)に向く、
請求項1に記載のセンサダイ(100)。
【請求項6】
前記第1の膜(130)に配置されている第1のホイートストンブリッジを形成する第1のセット(172)と、前記第2の膜(140)に配置されている第2のホイートストンブリッジを形成する第2のセット(174)とを含む複数のピエゾ抵抗素子(170)をさらに備える、請求項1に記載のセンサダイ(100)。
【請求項7】
ダイヤフラム(110)の第1の層(116)を設けることと、
前記第1の層(116)にダイヤフラムキャビティ(118)をエッチングすることと、
前記ダイヤフラム(110)の第2の層(120)を前記第1の層(116)に取り付けることと
を含み、
前記ダイヤフラムキャビティ(118)の外側にある前記第1の層(116)および前記第2の層(120)の部分が、第1の膜(130)を形成し、
前記ダイヤフラムキャビティ(118)の上に延びる前記第2の層(120)の部分が、前記第1の膜(130)内に配置されている第2の膜(140)を形成し、
前記第1の膜(130)は、前記ダイヤフラム(110)の第1の面(112)と前記第1の面(112)の反対側にある前記ダイヤフラム(110)の第2の面(114)との間の差圧に比例してたわみ可能であり、
前記第2の膜(140)は、前記ダイヤフラム(110)の前記第1の面(112)における絶対圧に比例して前記第1の膜(130)と同時にたわみ可能である、
センサダイ(100)を製造する方法。
【請求項8】
前記第1の層(116)は、シリコン(150)と、前記シリコン(150)に配されている酸化物(152)とを含み、
前記ダイヤフラムキャビティ(118)は、前記第1の層(116)の前記酸化物(152)に形成されている、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
支持部(160)を前記ダイヤフラム(110)の前記第2の面(114)に接合することと、前記支持部(160)に支持部キャビティ(162)をエッチングすることとをさらに含み、
前記ダイヤフラム(110)の前記第2の面(114)は、前記支持部キャビティ(162)に向く、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の層(120)に複数のピエゾ抵抗素子(170)を埋め込むことをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ピエゾ抵抗素子(170)の第1のセット(172)が、前記第1の膜(130)に配され、前記支持部キャビティ(162)の周囲部(164)と位置合わせされ、
前記ピエゾ抵抗素子(170)の第2のセット(174)が、前記第2の膜(140)に配され、前記ダイヤフラムキャビティ(118)の周囲部(119)と位置合わせされる、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1の膜(130)と、前記第1の膜(130)内に配置されている第2の膜(140)とを有するダイヤフラム(110)を含むセンサダイ(100)を備え、
前記第1の膜(130)は、前記ダイヤフラム(110)の第1の面(112)と前記第1の面(112)の反対側にある前記ダイヤフラム(110)の第2の面(114)との間の差圧に比例してたわみ可能であり、
前記第2の膜(140)は、前記ダイヤフラム(110)の前記第1の面(112)における絶対圧に比例して前記第1の膜(130)と同時にたわみ可能である、
センサアセンブリ(10)。
【請求項13】
前記センサダイ(100)は、前記第1の膜(130)に配置されている第1のホイートストンブリッジを形成する第1のセット(172)と、前記第2の膜(140)に配置されている第2のホイートストンブリッジを形成する第2のセット(174)とを含む複数のピエゾ抵抗素子(170)を含み、
前記ピエゾ抵抗素子(170)に接続されている複数の接続部(300)をさらに備え、
前記ピエゾ抵抗素子(170)の前記第1のセット(172)および前記第2のセット(174)は、前記接続部(300)の供給部(310)およびグランド(320)のうちの少なくとも1つを共有する、
請求項12に記載のセンサアセンブリ(10)。
【請求項14】
複数の第1の出力部(330)により前記ピエゾ抵抗素子(170)の前記第1のセット(172)に接続され、複数の第2の出力部(340)により前記ピエゾ抵抗素子(170)の前記第2のセット(174)に接続されているコントローラ(200)をさらに備え、
前記コントローラ(200)は、前記ピエゾ抵抗素子(170)の前記第1のセット(172)により測定された前記差圧、および前記ピエゾ抵抗素子(170)の前記第2のセット(174)により測定された前記絶対圧を受信する、
請求項13に記載のセンサアセンブリ(10)。
【請求項15】
前記コントローラ(200)は、前記差圧に基づいて補償アルゴリズム(222)を実行して、前記絶対圧の誤差を補正する、請求項14に記載のセンサアセンブリ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサダイに関し、より詳細には、センサダイのダイヤフラムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサは通常、センサダイヤフラムと、センサダイヤフラムに配されるピエゾ抵抗器とを含む。印加される力または圧力がセンサダイヤフラムをたわませ、それにより、ダイヤフラムにおけるピエゾ抵抗器の抵抗が変化し、それに対応して、その力または圧力を反映する圧力センサの測定出力が変化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マスフローコントローラなどの特定の適用例は、絶対圧および差圧の両方の測定を必要とする。しかしながら、既存の圧力センサは、別個の構成要素を用いて絶対圧および差圧それぞれを測定する。例えば、ピエゾ抵抗器を有する1つのセンサダイヤフラムが絶対圧を測定し、異なるピエゾ抵抗器を有するもう1つの別個のセンサダイヤフラムが差圧を測定する。複数のダイヤフラムを用いてこれらの圧力を測定することにより、圧力センサに必要な構成要素の数が増大し、それにより製造コストが増大する。さらに、複数のダイヤフラムを用いることにより、圧力センサのサイズまたは占有面積が増大し、それにより、特定の適用例における圧力センサの使用が制限される場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
センサダイは、第1の膜と、第1の膜内に配置される第2の膜とを有するダイヤフラムを含む。第1の膜は、ダイヤフラムの第1の面と第1の面の反対側にあるダイヤフラムの第2の面との間の差圧に比例してたわみ可能(deflectable)である。第2の膜は、ダイヤフラムの第1の面における絶対圧に比例して第1の膜と同時にたわみ可能である。
【0005】
ここで、添付の図面を参照して、本発明を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態に係るセンサダイの斜視図である。
【
図2】
図1の線A-Aに沿って切ったセンサダイの断面斜視図である。
【
図4A】センサダイを製造する方法のステップの模式的断面図である。
【
図4B】センサダイを製造する方法の別のステップの模式的断面図である。
【
図4C】センサダイを製造する方法の別のステップの模式的断面図である。
【
図5】一実施形態に係るセンサアセンブリの模式的ブロック図である。
【
図6】一実施形態に係る補償アルゴリズムの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
添付の図面を参照して、本開示の例示的実施形態を以下で詳細に説明する。図面において、同様の参照符号は同様の要素を指す。しかしながら、本開示は、多数の異なる形態で実施されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が開示の概念を当業者に伝達するように提供されている。加えて、以下の詳細な説明においては、説明の目的で、多数の具体的な詳細事項が、開示の実施形態の完全な理解をもたらすために記載されている。しかしながら、1つまたは複数の実施形態がこれらの具体的な詳細事項なしで実現されてもよいことは明らかである。
【0008】
図面の全体にわたって、図面を明確にするために、図中で複数の同一の要素のうちの1つのみに符号を付している場合があるが、本明細書における要素の詳細な説明は、その図中で同一のものとして出現する要素の各々に等しく当てはまる。本明細書の全体にわたって、「垂直方向」などの方向の記述語が用いられる。これらの記述語は、単に説明を明確にするためのものであり、様々な方向を区別するためのものである。これらの方向の記述語は、開示されている要素の任意の特定の向きを意味する、または要求するものではない。
【0009】
一実施形態に係るセンサダイ100を
図1~
図3に示す。センサダイ100は、ダイヤフラム110と、ダイヤフラム110に配される複数のピエゾ抵抗素子170と、ダイヤフラム110が配される支持部160とを含む。
【0010】
図1~
図3に示すように、ダイヤフラム110は、第1の面112と、垂直方向Vにおいて第1の面112の反対側にある第2の面114とを有する。ダイヤフラム110の第1の面112は、露出しており、センサダイ100から外方に向く。ダイヤフラム110の第2の面114は、支持部160に当接する。
図3において詳細に示すように、第1の面112と第2の面114との間において、ダイヤフラム110は、第1の層116と、垂直方向Vにおいて第1の層116に配される第2の層120とを有する。
【0011】
図1~
図3に示すように、第1の層116および第2の層120を有するダイヤフラム110は、第1の膜130と、第1の膜130内に配置される第2の膜140とを形成する。第1の膜130は、第1の膜130の外縁を画定するダイヤフラム110における第1の周囲部132を有し、一方で、第2の膜140は、第1の膜130内に配置され第2の膜140の外縁を画定する第2の周囲部142を有する。第1の膜130は、第2の膜140を取り囲み、第1の周囲部132と第2の周囲部142との間に延びる。
【0012】
第1の膜130は、
図3に示す第1の層116および第2の層120から形成される。第1の膜130は、垂直方向Vにおいて第1の面112と第2の面114との間に延びる第1の厚さ133を有する。
図3に示すように、第1の層116は、第1の層116に延びるダイヤフラムキャビティ118を有する。ダイヤフラムキャビティ118は、第2の膜140の第2の周囲部142と位置合わせされるダイヤフラム周囲部119を有する。
【0013】
図3に示すように、第2の膜140は、ダイヤフラムキャビティ118の上に延びる第2の層120の部分により形成され、第1の層116におけるダイヤフラムキャビティ118の位置が、第2の膜140の位置および範囲を画定する。図示の実施形態において、第2の膜140は、第2の層120のみから形成される。第2の膜140は、垂直方向Vにおいて、第1の膜130の第1の厚さ133よりも小さい第2の厚さ143を有する。
【0014】
一実施形態において、第1の層116と第2の層120との間のダイヤフラムキャビティ118は、真空圧を有する空隙である。他の実施形態においては、ダイヤフラムキャビティ118は、任意の他の所定の圧力を有する空隙であってもよい。
【0015】
図1および
図2に示す実施形態において、ダイヤフラム110は、ダイヤフラム110の第1の面112に延びる凹部134または複数の凹部134を有する。凹部134は、垂直方向Vにおいてダイヤフラム110の第2の層120に延び、凹部134の位置における第1の膜130の第1の厚さ133を減少させる。図示の実施形態における凹部134は、第1の周囲部132内において第1の膜130に配置され、凹部134を有しない第2の層120の部分により第2の膜140の第2の周囲部142から分離される。
図1および
図2に示す凹部134のサイズおよび範囲は、単に例示的なものであり、他の実施形態においては、凹部134が第1の面112に沿って異なる領域を有してもよい。
別の実施形態においては、第1の膜130は、凹部134を有せず、第1の周囲部132と第2の周囲部142との間の領域の全体にわたって第1の層116および第2の層120から形成される。
【0016】
図3に示す実施形態において、第1の層116は、シリコン材料から形成されるシリコン部分150と、シリコン部分150に配される二酸化シリコンなどの酸化物から形成される酸化物部分152とを含む。下記でより詳細に説明するように、本実施形態におけるダイヤフラムキャビティ118は、酸化物部分152に形成される。別の実施形態においては、第1の層116は、酸化物部分152なしで全体がシリコン材料から形成され、ダイヤフラムキャビティ118は、第1の層116のシリコン材料に形成される。様々な実施形態において、第2の層120は、シリコン材料から形成される。
【0017】
図2に示すように、支持部160は、支持部160の略中央に配置され、垂直方向Vにおいて支持部160を通して延びる支持部キャビティ162を有する。支持部キャビティ162は、ダイヤフラム110の第2の面114が支持部キャビティ162に向くように、垂直方向Vにおいてダイヤフラム110の第1の膜130および第2の膜140の下方に配置される。支持部キャビティ162の支持部キャビティ周囲部164は、垂直方向Vにおいて第1の膜130の第1の周囲部132と位置合わせされる。一実施形態において、支持部160は、ダイヤフラム110の第1の層116および第2の層120と同じシリコン材料から形成される。
【0018】
図1~
図3に示すように、ピエゾ抵抗素子170は、第1の膜130に配されるピエゾ抵抗素子170の第1のセット172と、第2の膜140に配されるピエゾ抵抗素子170の第2のセット174とを含む。ピエゾ抵抗素子170は、ダイヤフラム110の第2の層120のシリコン材料にパターニングされまたは埋め込まれた元素材料であり、ピエゾ抵抗素子170は、第2の層120の表面にまたは第2の層120内に配置されてよい。一実施形態において、元素材料は、p型ホウ素などの正のドーパントであるが、ピエゾ抵抗器をシリコン材料に形成するために用いられる任意のタイプの材料であり得る。
【0019】
図1~
図3に示すように、ピエゾ抵抗素子170の第1のセット172は、第1の膜130の第1の周囲部132に沿って配置され、垂直方向Vにおいて支持部キャビティ162の支持部キャビティ周囲部164と位置合わせされる。ピエゾ抵抗素子170の第2のセット174は、第2の膜140の第2の周囲部142に沿って配置され、垂直方向Vにおいてダイヤフラムキャビティ118のダイヤフラム周囲部119と位置合わせされる。
【0020】
図示の実施形態において、ピエゾ抵抗素子170の第1のセット172は、第1の周囲部132にわたって分散し、第1のホイートストンブリッジを第1の膜130に形成する4つのピエゾ抵抗素子を含む。ピエゾ抵抗素子170の第2のセット174は、第2の周囲部142にわたって分散し、第2のホイートストンブリッジを第2の膜140に形成する4つのピエゾ抵抗素子を含む。他の実施形態においては、ピエゾ抵抗素子170の第1のセット172および第2のセット174は、3つ以下または4つよりも多くのピエゾ抵抗素子170を含んでよい。
【0021】
ここで、
図4A~
図4Cを参照して、センサダイ100を製造する方法をより詳細に説明する。
【0022】
図4Aに示すように、ダイヤフラム110は、シリコン部分150、およびシリコン部分150に配される酸化物部分152から形成される第1の層116を有する。酸化物部分152が、第1の層116にダイヤフラムキャビティ118を形成するようにエッチングされ、第2の層120が、ダイヤフラムキャビティ118を包囲するように第1の層116に取り付けられる。別の実施形態においては、第1の層116は、全体がシリコン部分150から形成され、シリコン部分150が、ダイヤフラムキャビティ118を形成するようにエッチングされる。
【0023】
図4Bに示すように、支持部160が、第2の酸化物部分154によりダイヤフラム110の第2の面114に接合される。ピエゾ抵抗素子170が、ダイヤフラム110の第2の層120に埋め込まれる。ピエゾ抵抗素子170の第2のセット174は、垂直方向Vにおいてダイヤフラムキャビティ118のダイヤフラム周囲部119と位置合わせされる。ピエゾ抵抗素子170は、ダイヤフラム110の第1の面112上および/または第1の面112内に配されてよい。
【0024】
次いで、
図4Cに示すステップにおいて、支持部キャビティ162が支持部160の裏面から支持部160にエッチングされる。このエッチングは、ダイヤフラム110の第2の面114まで延び、図示の実施形態においては第2の酸化物部分154の一部を除去する。このエッチングは、垂直方向Vにおいてピエゾ抵抗素子170の第1のセット172と位置合わせされる支持部キャビティ162の支持部キャビティ周囲部164を形成する。
【0025】
一実施形態に係るセンサアセンブリ10を
図5に示す。センサアセンブリ10は、上記の実施形態に従って説明したセンサダイ100と、コントローラ200と、センサダイ100のピエゾ抵抗素子170をコントローラ200に電気的に接続する複数の接続部300とを含む。
【0026】
図5に示すように、コントローラ200は、プロセッサ210と、プロセッサ210に接続されるメモリ220とを含む。メモリ220は、非一時的コンピュータ可読媒体から形成され、そこに記憶された複数のアルゴリズムを有する。これらのアルゴリズムは、プロセッサ210により実行されると、本明細書に詳細に説明されているコントローラ200の機能を実行する。メモリ220に記憶されたアルゴリズムのうちの1つが、
図6を参照して下記でより詳細に説明する補償アルゴリズム222である。
【0027】
図5に示す実施形態における接続部300は各々、電気信号を伝送することが可能な電線または導電要素である。
図5に示すように、接続部300は、供給部310、グランド320、第1の一対の出力部330、および第2の一対の出力部340を含む。供給部310は、ピエゾ抵抗素子170に電圧を供給する、ピエゾ抵抗素子170の第1のセット172および第2のセット174の間で共有される単一の接続部である。図示の実施形態において、グランド320もまた、ピエゾ抵抗素子170の第1のセット172および第2のセット174の間で共有される単一の接続部である。第1の出力部330は、ピエゾ抵抗素子170の第1のセット172をコントローラ200に接続し、第2の出力部340は、ピエゾ抵抗素子170の第2のセット174をコントローラ200に接続する。
【0028】
ここで、主に
図1および
図5を参照して、センサアセンブリ10およびセンサダイ100の機能をより詳細に説明する。
【0029】
センサダイ100は、それが配置される環境において、物理的要素または流体から圧力を測定するために用いられる。
図1および
図2に示す第1の圧力P1は、ダイヤフラム110の第1の面112に働く。
図1および
図2に示す第1の圧力P1の位置は、単に例示的なものであり、第1の圧力P1は、垂直方向Vにおいて第1の膜130および第2の膜140の両方にわたって働く。ダイヤフラム110の層116、120により形成される第1の膜130および第2の膜140は、たわみ可能であり、第1の圧力P1の大きさに比例して垂直方向Vにおいて支持部キャビティ162に向かってたわむ。
【0030】
図2に示すように、支持部キャビティ162は、ダイヤフラム110の第2の面114に働く第2の圧力P2を有する。
図2における第2の圧力P2の位置は、単に例示的なものであり、第2の圧力P2は、第1の圧力P1とは反対の垂直方向Vにおいてダイヤフラム110の第2の面114にわたって働く。第1の膜130の第2の面114における第2の圧力P2は、第1の膜130の第1の面112における第1の圧力P1に逆らって働くので、第1の膜130は、第1の面112における第1の圧力P1と第2の面114における第2の圧力P2との間の差圧に比例してたわみ可能である。
【0031】
ピエゾ抵抗素子170の第1のセット172の抵抗は、第1の膜130のたわみに比例して変化する。第1のセット172の抵抗が変化することに伴い、
図5に示すコントローラ200へと第1の一対の出力部330に沿って出力される第1の信号も変化し、ピエゾ抵抗素子170の第1のセット172を介してコントローラ200に伝送される第1の信号は、第1の膜130のたわみ量および第1の圧力P1と第2の圧力P2との間の差圧を表す。
【0032】
第2の膜140は、第1の圧力P1の下で第1の膜130と同時にたわみ可能である。ダイヤフラムキャビティ118は、真空圧または既知の圧力を有するので、この真空圧または既知の圧力は、第1の圧力P1に逆らって第2の膜140に働く。それにより、第2の膜140は、ダイヤフラム110の第1の面112における第1の圧力P1の絶対測定値に比例してダイヤフラムキャビティ118へとたわみ可能である。第1の膜130内に配置される第2の膜140は、第1の膜130と同時に、しかし第1の膜130とは異なる圧力の尺度に比例してたわむ。
【0033】
ピエゾ抵抗素子170の第2のセット174の抵抗は、第2の膜140のたわみに比例して変化する。第2のセット174の抵抗が変化することに伴い、
図5に示すコントローラ200へと第2の一対の出力部340に沿って出力される第2の信号も変化し、ピエゾ抵抗素子170の第2のセット174を介してコントローラ200に伝送される第2の信号は、第2の膜140のたわみ量および第1の圧力P1の絶対測定値を表す。
【0034】
図1および
図2に示す凹部134を有する第1の膜130の実施形態において、凹部134は、絶対圧に対する第2の膜140のたわみの感度に影響を与えることなく、差圧に対する第1の膜130のたわみの感度を増大させる。
【0035】
一部の適用例において、第1の膜130における差圧により生じる応力およびたわみは、同時に生じる第2の膜140のたわみ、およびピエゾ抵抗素子170の第2のセット174からの絶対圧の測定に影響を与える場合がある。一実施形態において、コントローラ200は、ピエゾ抵抗素子170を介して受信される差圧および絶対圧の測定値を処理して、ピエゾ抵抗素子170の第2のセット174に応力を伝達する第1の膜130のたわみを補償してもよい。
【0036】
図6は、メモリ220に記憶され、プロセッサ210により実行可能である補償アルゴリズム222のグラフ表示である。補償アルゴリズム222は、ピエゾ抵抗素子170の第1のセット172からの測定差圧226およびピエゾ抵抗素子170の第2のセット174からの測定絶対圧228に関する複数の出力誤差224を記憶する。所与の差圧226および所与の絶対圧228について、絶対圧228を修正するために測定絶対圧228に適用されるべき出力誤差224が、補償アルゴリズム222における関係から決定されてよい。例えば、0.6psiの測定差圧226および50psiの測定絶対圧228は、-0.5%の出力誤差224を与える。
【0037】
測定差圧226、測定絶対圧228、および出力誤差224の間の関係は、制御された条件におけるキャリブレーション、差圧として印加される0psi、-1psi、および1psiとの様々な組み合わせで絶対圧として0psiおよび50psiを印加すること、および出力を測定することにより決定される。差圧を0psiに設定した状態で、絶対圧において基準誤差が決定される。次いで、絶対圧を0psiおよび50psiに保持しつつ、差圧に対する誤差の傾きが決定される。次いで、この基準および傾きを用いて、測定差圧226および測定絶対圧228の範囲における出力誤差224を決定することができる。
【0038】
次いで、コントローラ200のプロセッサ210は、補償アルゴリズム222を実行して、出力誤差224を乗じた測定絶対圧228に基づいて実際の絶対圧を算出してよい。上記で用いられる例において、実際の絶対圧は50.25psiとなり、これは50psiの測定絶対圧228よりも0.25psi、すなわち0.5%大きい。
図6のグラフにおける負の出力誤差は、測定絶対圧228が低く、より高くなるように補償する必要があることを示す。実際の絶対圧は、第1の膜130のたわみにより生じる測定絶対圧228の誤差を補正したものである。
【0039】
センサダイ100のピエゾ抵抗素子170からの差圧P1-P2の測定値および絶対圧P1の測定値を受信したコントローラ200は、補償済みまたは未補償の測定値を、さらなる使用および処理のために外部に送信してよい。
【0040】
本発明に係るセンサダイ100、およびセンサダイ100を含むセンサアセンブリ10は、差圧を測定する第1の膜130と、同じダイヤフラム110内に形成された絶対圧を同時に測定する第2の膜140とを有する。同じダイヤフラム110の膜130、140内に差圧測定および絶対圧測定の両方を組み込むことにより、センサダイ100の構成要素数および全体的なサイズが減少し、それにより、製造コストの低減および小型の適用例における柔軟性の向上が可能となる。さらに、第1の膜130のたわみにより生じる絶対測定の潜在的誤差を補償することで、センサダイ100を用いて行われる絶対圧測定および差圧測定の両方の高い精度を維持する。
【外国語明細書】