(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117092
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】床フレーム昇降システム、構造物の解体方法、および構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20240822BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20240822BHJP
B66B 9/187 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
E04G21/14
B66B9/187 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022971
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】矢島 清志
(72)【発明者】
【氏名】市原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】萱嶋 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 慶
【テーマコード(参考)】
2E174
2E176
3F301
【Fターム(参考)】
2E174CA03
2E174CA13
2E176AA07
2E176DD61
2E176DD64
3F301AA13
3F301DD02
(57)【要約】
【課題】床面上に支持柱が存在しない場合であっても、建物の構築や解体を短工期で施工可能な、床フレーム昇降システムを提供すること。
【解決手段】建物解体システム2は、クレーン21を仮設柱90に沿って昇降させる。建物解体システム2は、屋上階の床面上に設置された仮設柱90と、クレーン21を支持するクレーン設置床20と、仮設柱90の上端部に係止された反力部材41と、反力部材41に取り付けられてクレーン設置床20を昇降させるストランドジャッキ43と、を備える。仮設柱90は、床面上に仮固定されたベース部91と、ベース部91から上方に延びて複数の山留め材である柱部材921、931を連結してなる第1柱部92および第2柱部93と、を備える。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床フレームを仮設柱に沿って昇降させる床フレーム昇降システムであって、
床面上に設置された仮設柱と、
前記床フレームと、
前記仮設柱の上部に係止された反力部材と、
前記反力部材に取り付けられて前記床フレーム設置床を昇降させる昇降ジャッキと、を備え、
前記仮設柱は、前記床面上に仮固定されたベース部と、
前記ベース部から上方に延びて複数の形鋼を連結してなる柱部と、を備えることを特徴とする床フレーム昇降システム。
【請求項2】
請求項1に記載の床フレーム昇降システムを用いて構造物を解体する方法であって、
床面上に少なくとも4本の前記仮設柱を仮固定し、前記仮設柱の上端部に反力部材を取り付けるとともに、前記仮設柱に前記床フレームを仮支持させる第1工程と、
前記構造物を所定フロア分解体する第2工程と、
前記仮設柱による前記床フレームの仮支持を解除し、前記昇降ジャッキ装置により前記床フレームを前記仮設柱に沿って下降させて、その後、前記床フレームを前記仮設柱に再度仮支持させる第3工程と、
前記仮設柱の上部を撤去するとともに、前記反力部材を揚重して下方に盛り替える第4工程と、
前記第2工程から第4工程までを繰り返す第5工程と、を備えることを特徴とする構造物の解体方法。
【請求項3】
請求項1に記載の床フレーム昇降システムを用いて構造物を構築する方法であって、
床面上に少なくとも4本の前記仮設柱を仮固定し、前記仮設柱の上端部に反力部材を取り付けるとともに、前記仮設柱に前記床フレームを仮支持させる第1工程と、
前記構造物を所定フロア分構築する第2工程と、
前記仮設柱を上方に延長するとともに、前記反力部材を揚重して上方に盛り替える第3工程と、
前記仮設柱による前記床フレームの仮支持を解除し、前記昇降ジャッキ装置により前記床フレームを前記仮設柱に沿って上昇させて、前記床フレームを前記仮設柱に再度仮支持させる第4工程と、
前記第2工程から第4工程までを繰り返す第5工程と、を備えることを特徴とする構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床フレーム昇降システム、この床フレーム昇降システムを用いた構造物の解体方法、および、床フレーム昇降システムを用いた構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、設備や躯体の老朽化を理由として、既存建物の解体が行われるが、この既存建物を解体する方法としては、以下のような方法がある。
例えば、特許文献1、2では、既存構造物を解体する解体システムが示されている。解体システムは、クレーンが設置されたクレーン設置床と、クレーン設置床を支持する既存柱である支持柱と、クレーン設置床を支持柱に沿って下降させる昇降装置と、を備える。既存構造物を解体する場合、昇降装置を駆動して、クレーン設置床を下降させて、支持柱に仮支持させることを繰り返しながら、既存構造物を上層から下層に向かって順に解体してゆく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6508958号
【特許文献2】特許6893136号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、床面上に支持柱が存在しない場合であっても、建物の構築や解体を短工期で施工可能な、床フレーム昇降システム、構造物の解体方法、および構造物の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明の床フレーム昇降システム(例えば、後述の建物解体システム2、建物構築システム4)は、床フレーム(例えば、後述のクレーン設置床20)を仮設柱(例えば、後述の仮設柱90、90A)に沿って昇降させる床フレーム昇降システムであって、床面上に設置された仮設柱と、前記床フレームと、前記仮設柱の上端部に係止された反力部材(例えば、後述の反力部材41、41A)と、前記反力部材に取り付けられて前記床フレームを昇降させる昇降ジャッキ(例えば、後述のストランドジャッキ43)と、を備え、前記仮設柱は、前記床面上に仮固定されたベース部(例えば、後述のベース部91)と、前記ベース部から上方に延びて複数の形鋼(例えば、後述の柱部材921、931)を連結してなる柱部(例えば、後述の第1柱部92、第2柱部93)と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、床面上に仮設柱を仮固定し、この仮設柱に床フレームを支持させることで、例えば、建物の屋上階のように、床フレームを支持させる支持柱が存在しない場合であっても、床フレームシステムを設置して、建物の構築や解体を短工期で施工できる。
また、仮設柱の柱部を複数の形鋼を連結して構成したので、仮設柱を容易に解体して転用可能であり、施工コストを低減できる。
【0007】
第2の発明の構造物の解体方法は、上述の床フレーム昇降システム(例えば、後述の建物解体システム2)を用いて構造物(例えば、後述の既存建物1)を解体する方法であって、床面上に少なくとも4本の前記仮設柱を仮固定し、前記仮設柱の上端部に反力部材を取り付けるとともに、前記仮設柱に前記床フレームを仮支持させる第1工程(例えば、後述のステップS1)と、前記構造物を所定フロア分解体する第2工程(例えば、後述のステップS2)と、前記仮設柱による前記床フレームの仮支持を解除し、前記昇降ジャッキ装置により前記床フレームを前記仮設柱に沿って下降させて、その後、前記床フレームを前記仮設柱に再度仮支持させる第3工程(例えば、後述のステップS3~S5)と、前記仮設柱の上部を撤去するとともに、前記反力部材を揚重して下方に盛り替える第4工程(例えば、後述のステップS6)と、前記第2工程から第4工程までを繰り返す第5工程(例えば、後述のステップS7)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、構造物を解体する際に、例えば屋上階の床面上に仮設柱を仮固定し、例えばクレーンが設置された床フレームをこの仮設柱に仮支持させて、クレーンで構造物を解体しながら、床フレームを仮設柱に沿って下降させる。よって、床面上に床フレーム昇降システムを設置して、建物を短工期で解体できる。
【0009】
第3の発明の構造物の構築方法は、上述の床フレーム昇降システム(例えば、後述の建物構築システム4)を用いて構造物(例えば、後述の建物3)を構築する方法であって、床面上に少なくとも4本の前記仮設柱を仮固定し、前記仮設柱の上端部に反力部材を取り付けるとともに、前記仮設柱に前記床フレームを仮支持させる第1工程(例えば、後述のステップS11)と、前記構造物を所定フロア分構築する第2工程(例えば、後述のステップS12)と、前記仮設柱を上方に延長するとともに、前記反力部材を揚重して上方に盛り替える第3工程(例えば、後述のステップS13)と、前記仮設柱による前記床フレームの仮支持を解除し、前記昇降ジャッキ装置により前記床フレームを前記仮設柱に沿って上昇させて、前記床フレームを前記仮設柱に再度仮支持させる第4工程(例えば、後述のステップS14~S16)と、前記第2工程から第4工程までを繰り返す第5工程(例えば、後述のステップS17)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、構造物を構築する際に、所定階の床面上に仮設柱を仮固定し、例えばクレーンが設置された床フレームをこの仮設柱に仮支持させて、クレーンで構造物を構築しながら、床フレームを仮設柱に沿って上昇させる。よって、床面上に床フレーム昇降システムを設置して、建物を短工期で構築できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、床面上に支持柱が存在しない場合であっても、建物の構築や解体を短工期で施工可能な、床フレーム昇降システム、構造物の解体方法、および構造物の構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る床フレーム昇降システムが適用された建物解体システムの側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る建物解体システムの平面図である。
【
図3】
図1の建物構築システムの破線Aで囲んだ部分の拡大図である。
【
図4】
図3の建物構築システムのI-I矢視図である。
【
図5】
図3の建物構築システムのII-II水平断面図である。
【
図6】
図3の建物構築システムのIII-III水平断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る建物構築システムを構成する昇降装置の動作を示す模式図である。
【
図8】第1実施形態に係る建物構築システムを構成する係止装置の動作を示す模式図(その1)である。
【
図9】第1実施形態に係る建物構築システムを構成する係止装置の動作を示す模式図(その2)である。
【
図10】
図5の建物構築システムの破線Bで囲んだ部分(振れ止め装置)の拡大図である。
【
図11】第1実施形態に係る建物構築システムを構成する振れ止め装置の動作を示す平面図である。
【
図12】第1実施形態に係る建物解体システムを用いて既存建物を解体する手順のフローチャートである。
【
図13】第1実施形態に係る建物解体システムで建物を解体する手順の説明図(その1)である。
【
図14】第1実施形態に係る建物解体システムで建物を解体する際に用いる仮設柱の側面図である。
【
図17】第1実施形態に係る仮設柱のクロス部の側面図である。
【
図18】第1実施形態に係る仮設柱のクロス部のVI-VI断面図である。
【
図19】第1実施形態に係る建物解体システムで建物を解体する手順の説明図(その2)である。
【
図20】本発明の第2実施形態に係る建物構築システムの側面図である。
【
図21】第2実施形態に係る建物構築システムを構成する昇降装置の動作を示す図である。
【
図22】第2実施形態に係る建物構築システムを用いて建物を構築する手順の説明図である。
【
図23】第2実施形態に係る建物構築システムを用いて建物を構築する手順の説明図(その1)である。
【
図24】第2実施形態に係る建物構築システムを用いて建物を構築する手順の説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、屋上階などの床面上に仮固定された仮設柱90、90Aに沿って床フレームを昇降させる床フレーム昇降システムである。仮設柱90、90Aは、屋上階などの床面上に仮固定されたベース部91と、ベース部91から上方に延びる柱部92、93と、を備える(
図14~
図18参照)。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る床フレーム昇降システムが適用された建物解体システム2の側面図である。
図2は、建物解体システム2の平面図である。
建物解体システム2は、構造物としての既存建物1を解体するためのものである。解体対象となる既存建物1は、ラーメン構造の建物であり、平面視で長方形状である。この既存建物1は、複数の既存柱11と、複数の鉄骨造の既存梁12と、鉄筋コンクリート造の既存床13と、を備える。ここで、既存柱11の一部を、クレーン設置床20を支持する支持柱11Aとする。
以下、この既存建物1(建物解体システム2)の長手方向をX方向とし、このX方向に略直交する短手方向をY方向とする。
【0014】
この既存建物1を、以下の建物解体システム2を用いて解体する。
建物解体システム2は、既存建物1の解体対象階の上方に配置された床フレームとしてのクレーン設置床20と、クレーン設置床20上に設置されたクレーン21と、支持柱11Aに取り付けられてクレーン設置床20を支持柱11Aに沿って昇降させる昇降装置22と、クレーン設置床20に設けられて支持柱11Aの継手部15(
図6参照)の上面に係止可能な係止装置23と、クレーン設置床20が水平方向に揺れるのを抑制つまり振れ止めを行う振れ止め装置24(
図5参照)と、を備える。本実施形態では、支持柱11Aは6本であり、昇降装置22、係止装置23、振れ止め装置24は、各支持柱11Aのそれぞれについて設けられる。
【0015】
クレーン設置床20は、昇降装置22同士を連結する複数のH形鋼である梁部材30と、これら梁部材30の上に載置される覆工板である板状の床部材31(
図2中斜線で示す)と、を備える。
クレーン21は、クレーン設置床20上に鋼材を井桁に架設して設けられたベース32と、このベース32上に架設されたマスト33と、このマスト33に旋回可能に支持されたクレーン本体34と、このクレーン本体34に起伏可能に支持されたジブ35と、このジブ35の先端に吊り下げ支持された図示しないフックと、クレーン本体34に設けられてフックを昇降させる巻上装置36と、を備える。
【0016】
図3は、
図1の建物解体システム2の破線Aで囲んだ部分の拡大図である。
図4は、
図3のI-I矢視図である。
図5は、
図3のII-II水平断面図である。
図6は、
図3のIII-III水平断面図である。
昇降装置22は、支持柱11Aを囲んでクレーン設置床20の一部となる矩形枠状のフレーム40と、支持柱11Aの上端部に係止された反力部材41と、反力部材41に巻かれて一端側がクレーン設置床20に連結された吊り材42と、クレーン設置床20に設けられて吊り材42の他端側を引っ張る昇降ジャッキとしてのストランドジャッキ43と、を備える。
【0017】
フレーム40は、矩形枠状のフレーム基部50と、フレーム基部50に回動可能に設けられた門形状のジャッキ支持部51と、フレーム基部50のうち支持柱11Aを挟んでジャッキ支持部51の反対側の位置に回動可能に設けられた門形状の吊り材支持部52と、を備える。クレーン設置床20の梁部材30は、昇降装置22のフレーム基部50同士を連結している。
【0018】
フレーム基部50は、略平行にX方向に延びるH形鋼からなる一対の梁部材53Aと、この梁部材53A同士を連結して略平行にY方向に延びるH形鋼からなる一対の梁部材53Bと、を備える。
一方の梁部材53Bの上面には、ジャッキ支持部51が回動可能に支持されている。ストランドジャッキ43は、ジャッキ支持部51に上向きに固定されている。他方の梁部材53Bの上面には、吊り材支持部52が回動可能に支持されている。吊り材42の一端は、この吊り材支持部52に連結されている。
【0019】
反力部材41は、支持柱11Aの上端に被せられて上端が塞がれた矩形筒状のボックス部材60と、ボックス部材60の上に設けられて略水平に延びる反力梁61と、を備える。
反力梁61は、互いに略平行な一対の水平部材62と、この一対の水平部材62の両端側同士の間に回転自在に支持された一対の滑車63と、を備える。
吊り材42は、一対の滑車63に巻かれており、一端側が吊り材支持部52に連結され、他端側がジャッキ支持部51に固定されたストランドジャッキ43に連結されている。
【0020】
以上の昇降装置22では、
図7(a)に示すように、ストランドジャッキ43が吊り材42を引っ張ると、クレーン設置床20が支持柱11Aに対して上昇する。一方、
図7(b)に示すように、ストランドジャッキ43が吊り材42を送り出すと、クレーン設置床20が支持柱11Aに対して下降する。
【0021】
図8および
図9は、係止装置23の動作を示す模式図である。
図5および
図6にも示すように、係止装置23は、一対のかんぬき梁70と、この一対のかんぬき梁70同士を接近あるいは離間させる方向に略水平に移動する一対の開閉機構71A、71Bと、を備える。この係止装置23は、支持柱11Aの一対の継手部15の上面に一対のかんぬき梁70を載せて係止させる。
【0022】
開閉機構71Aは、
図5および
図6にも示すように、フレーム基部50の一方の梁部材53A上に設けられており、一対のかんぬき梁70の一端側を下から支持する一対の支持部72と、この一対の支持部72を略水平に移動する移動機構73と、を備える。
【0023】
支持部72は、かんぬき梁70の底面を下から支持する水平片721と、この水平片721の両端から鉛直方向に延びてかんぬき梁70の両側面に当接する一対の鉛直片722と、を備える。
支持部72の水平片721の上面から梁部材53Aの下面までの距離をh1は、かんぬき梁70の高さ寸法h2よりも僅かに高くなっている。これにより、かんぬき梁70を梁部材53Aに干渉することなく水平移動できる。
【0024】
移動機構73は、モータ74と、モータ74から水平方向に離れた位置に回転自在に設けられた滑車75と、これらモータ74と滑車75との間に巻き回されたチェーン76と、を備える。一方の支持部72は、チェーン76の上側の部分に固定され、他方の支持部72は、チェーン76の下側の部分に固定されている。また、ねじ77を回転させることで、滑車75がモータ74に対して接近あるいは離隔し、これにより、チェーン76の張力を調整可能となっている。
【0025】
開閉機構71Bは、
図5および
図6にも示すように、フレーム基部50の他方の梁部材53A上に設けられており、一対のかんぬき梁70の他端側を下から支持する一対の支持部72と、この一対の支持部72を略水平に移動する移動機構73と、を備える。これら開閉機構71Bの支持部72および移動機構73は、開閉機構71Aの支持部72および移動機構73と同様の構成である。
【0026】
係止装置23では、以下のようにして、クレーン設置床20を支持柱11Aから側方に突出した継手部15の上面に係止する(
図3参照)。
すなわち、開閉機構71A、71Bのモータ74を駆動して、チェーン76を
図8中矢印方向に回転させることで、支持部72に支持された一対のかんぬき梁70同士を接近させ、一対のかんぬき梁70を支持柱11Aの継手部15の上に位置させる。
この状態で、昇降装置22によりクレーン設置床20を下降させると、かんぬき梁70が支持柱11Aの継手部15の上面に係止し、このかんぬき梁70にクレーン設置床20の梁部材53Aが係止する(
図3参照)。これにより、クレーン設置床20が支持柱11Aに支持される。
このとき、かんぬき梁70は支持部72に対して上方に相対移動するが、支持部72の一対の鉛直片722がかんぬき梁70の両側面に当接しているので、かんぬき梁70が上方に移動しても、このかんぬき梁70の脱落を防止できる。
【0027】
一方、係止装置23では、以下のようにして、クレーン設置床20の継手部15の係止状態を解除する。
すなわち、昇降装置22によりクレーン設置床20を少し上昇させて、かんぬき梁70を支持部72に対して下方に相対移動させ、支持部72の水平片721の上に載せる。これにより、かんぬき梁70の上面と梁部材53Aの下面との間には、隙間が形成される。
この状態で、開閉機構71A、71Bのモータ74を駆動して、チェーン76を
図9中矢印方向に回転させることで、支持部72に支持された一対のかんぬき梁70同士を離間させる。一対のかんぬき梁70を支持柱11Aの継手部15の上から退避させる。これにより、かんぬき梁70と梁部材53Aとが接触することなく、かんぬき梁70を円滑に水平移動できる。
【0028】
図10は、
図5の建物解体システム2の破線Bで囲んだ部分(振れ止め装置24)の拡大図である。
振れ止め装置24は、クレーン設置床20に設けられており、後述の柱押さえ部84で支持柱11Aの角部の側面を押さえることで、クレーン設置床20の水平方向の揺れを抑えるものである。具体的には、
図5に示すように、振れ止め装置24は、各支持柱11Aにつき4つずつ配置されており、4つの振れ止め装置24の柱押さえ部84を支持柱11Aの角部の側面に当接させることで、支持柱11Aに対するクレーン設置床20の水平方向の相対移動を防止するものである。
【0029】
振れ止め装置24は、クレーン設置床20に支持された基部80と、基部80上に配置された移動部81と、基部80に対して移動部81をY方向に相対移動させる第1移動機構82と、移動部81の基部80に対するY方向への相対移動をガイドするガイド機構83と、支持柱11Aの角部の側面に当接可能な柱押さえ部84と、移動部81に設けられて柱押さえ部84をX方向に相対移動させる第2移動機構85と、柱押さえ部84を基部80に仮固定するロック機構86と、を備える。
クレーン設置床20の梁部材53A、53Bには、略水平な支持板87が取り付けられている。基部80は、平板状であり、支持板87上に固定されている。
移動部81は、平板状であり、基部80の上に載置されている。
第1移動機構82は、基部80上に突出して設けられた一対の雌ねじ部821と、Y方向に延びて一対の雌ねじ部821に螺合されたボルト822と、を備える。
ボルト822の頭部は、後述の雄ねじ固定部851の側面に当接しており、ボルト822を回転させて雄ねじ固定部851の側面を押すことで、基部80に対して移動部81をY方向に相対移動させる。
【0030】
ガイド機構83は、移動部81にY方向に延びて形成された一対の長孔831と、基部80に螺合されて一対の長孔831に挿通された一対のボルト832と、を備える。ガイド機構83によれば、ボルト832が長孔831内を移動することにより、移動部81の基部80に対するY方向への相対移動がガイドされている。また、ボルト832を締め付けることにより、移動部81の基部80に対する位置および姿勢が仮固定される。
また、柱押さえ部84には、後述の雄ねじ852が挿通される円筒形状の挿通部841が設けられている。
【0031】
第2移動機構85は、移動部81上に突出して設けられた一対の雄ねじ固定部851と、X方向に延びて一対の雄ねじ固定部851同士の間に架設された雄ねじ852と、雄ねじ852に螺合されて柱押さえ部84の挿通部841を両端側から挟み込む一対のナット853と、を備える。一対のナット853を回転させることで、移動部81に対して柱押さえ部84の挿通部841をX方向に相対移動させる。
ロック機構86は、基部80に突出して設けられて長孔862が形成された柱押さえ保持部861と、柱押さえ部84に設けられて柱押さえ保持部861の長孔862に挿通された一対のボルト863と、各ボルト863に螺合されて柱押さえ保持部861を両側から挟み込む一対のナット864と、を備える。ロック機構86のナット864を緩めて、この状態で、柱押さえ部84をX方向およびY方向に移動し、その後、ロック機構86のナット864を締め付けて柱押さえ保持部861を挟み込むことで、柱押さえ部84の基部80に対する位置および姿勢が仮固定される。
【0032】
以上の振れ止め装置24の動作について説明する。具体的には、
図10に示す柱押さえ部84を支持柱11Aから離間した状態から、
図11に示す柱押さえ部84を支持柱11Aの側面に当接した状態にする手順について説明する。
まず、ガイド機構83のボルト832を緩めるとともに、ロック機構86のナット864を緩める。次に、第1移動機構82のボルト822を回転させることで、基部80に対して移動部81をY方向に相対移動させる。次に、ガイド機構83のボルト832を締め付けることで、移動部81の基部80に対する位置を仮固定する。次に、第2移動機構85のナット853を回転させることで、移動部81に対して柱押さえ部84をX方向に相対移動させる。次に、ロック機構86のナット864を締め付けて、柱押さえ部84の基部80に対する位置を仮固定する。
【0033】
以下、建物解体システム2を用いて既存建物1を解体する手順について、
図12のフローチャートを参照しながら説明する。なお、
図13および
図19では、建物解体システム2の一部のみを示す。
ステップS1では、
図13に示すように、既存建物1の屋上階の上に建物解体システム2を構築する。すなわち、既存建物1の屋上階にクレーン設置床20、クレーン21、昇降装置22、係止装置23、および振り止め装置24を構築する。
ここで、屋上階には支持柱11Aが存在しないため、屋上階の床面上に支持柱11Aの代わりに仮設柱90を仮固定して、この仮設柱90の頂部に反力部材41を係止しておく。また、係止装置23のかんぬき梁70を、仮設柱90の後述の仮設梁923の上に載置することで、クレーン設置床20を仮設柱90に仮支持させる。
【0034】
図14は、仮設柱90の側面図である。
図15は、
図14の仮設柱90のIV-IV断面図である。
図16は、
図14の仮設柱90のV-V断面図である。
図17は、仮設柱90のクロス部911の側面図である。
図18は、
図17のクロス部911のVI-VI断面図である。
仮設柱90は、既存建物1の屋上階の床面上に仮固定されたベース部91と、ベース部91から上方に延びる第1柱部92と、第1柱部92に連結されて上方に延びる第2柱部93と、を備える。
【0035】
ベース部91は、既存柱である支持柱11Aの直上に位置しており、平面視で略十字形状のH形鋼からなるクロス部911と、クロス部911から上方に延びる4つの柱接合部912と、を備える。
クロス部911は、4つの延出部913を備えている。各延出部913は、屋上床レベルの既存梁12の直上に位置している。延出部913の上面および屋上床レベルの既存梁12の下面には、それぞれ、水平部材914が配置されており、これら水平部材914同士は、屋上階の既存梁12を貫通するボルト915で連結されている。
第1柱部92および第2柱部93は、それぞれ、形鋼としての山留め材である柱部材921、931と、4本の柱部材921同士を中間高さで連結する山留め材である連結部材922、932と、を備える。第1柱部92の中間高さには、第1柱部92の側面から突出する仮設梁923が設けられている。
【0036】
ステップS2では、
図19(a)に示すように、クレーン21を用いて、支持柱11Aを残して既存建物1を屋上階から1層分解体する。このとき、既存柱11のうち支持柱11Aとなるものの継手部15を残すようにする。
【0037】
ステップS3では、仮設柱90によるクレーン設置床20の仮支持を解除する。具体的には、ストランドジャッキ43により吊り材42に張力を導入して、クレーン設置床20少し上方に持ち上げて地切りする。この状態で、係止装置23の開閉機構71A、71Bを駆動して、一対のかんぬき梁70を仮設柱90の仮設梁923の上から退避させて、仮設柱90による仮支持を解除する。
【0038】
ステップS4では、
図19(a)に示すように、ストランドジャッキ43を駆動して、クレーン設置床20を仮設柱90に沿って1層分下降させる。
ステップS5では、
図19(a)に示すように、クレーン設置床20を支持柱11Aに再度仮支持させる。すなわち、係止装置23の開閉機構71A、71Bを駆動して、かんぬき梁70を支持柱11Aの継手部15の上に位置させる。次に、ストランドジャッキ43によりクレーン設置床20を下降させて、かんぬき梁70を継手部15の上面に係止させる。
【0039】
ステップS6では、
図19(b)に示すように、反力部材41を下方に盛り替える。具体的には、反力部材41をクレーン21で吊り上げて、仮設柱90から取り外す。次に、仮設柱90の上部である第2柱部93を取り外す。その後、反力部材41をクレーン21で吊り上げて、仮設柱90の第1柱部92の頂部に再度被せて、この反力部材41を仮設柱90の第1柱部92の頂部に再度仮固定しておく。
【0040】
ステップS7は、ステップS2からステップS6までを繰り返して、既存建物1を屋上階から下階に向かって解体する。なお、ステップS7において繰り返すステップS5~S6では、かんぬき梁70を仮設柱90の仮設梁923ではなく、支持柱11Aの継手部15に係止する。また、ステップS7において繰り返すステップS5~S6では、第2柱部93を取り外して第1柱部92の頂部に反力部材41を再度被せるのではなく、支持柱11Aの上部を切断して撤去し、支持柱11Aの下部の頂部に反力部材41を再度被せる。
【0041】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)屋上階の床面上に仮設柱90を仮固定し、この仮設柱90にクレーン設置床20を支持させることで、建物の屋上階のように、クレーン設置床20を支持させる支持柱が存在しない場合であっても、建物解体システム2を設置して、既存建物1の解体を短工期で施工できる。
また、仮設柱90の第1柱部92および第2柱部93を、山留め材である柱部材921、931および連結部材922、932を連結して構成したので、仮設柱90を容易に解体して転用可能であり、施工コストを低減できる。
【0042】
(2)既存建物1を解体する際に、既存建物1の屋上階の床面上に仮設柱90を仮固定し、クレーン21が設置されたクレーン設置床20をこの仮設柱90に仮支持させて、クレーン21で既存建物1を解体しながら、クレーン設置床20を仮設柱90に沿って下降させる。よって、既存建物1の屋上階の床面上に建物解体システム2を設置して、建物を短工期で解体できる。
【0043】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、第2実施形態に係る床フレーム昇降システムが適用された建物構築システム4により、構造物としての建物3を構築する点が、第1実施形態と異なる。建物構築システム4は、以下の構成が、建物解体システム2と異なる。
図20は、建物構築システム4の側面図である。
本実施形態では、フレーム40A、反力部材41A、および仮設柱90Aの構造が、第1実施形態と異なる。
すなわち、フレーム40Aでは、吊り材支持部の代わりにジャッキ支持部51をもう一つ備えており、このジャッキ支持部51には、ストランドジャッキ43が設けられる。
また、反力部材41Aは、仮設柱90A側面の仮設梁923に係止する一対の係止部64と、支持柱11Aを跨いで配置されて一対の係止部64同士を連結する連結梁65と、一対の係止部64のそれぞれに設けられて連結梁65を仮固定する梁仮固定機構66と、を備える。一対の係止部64には、それぞれ、ストランドジャッキ43の吊り材42が連結されている。このように、一対の係止部64と一対の連結梁65とで、側面視で門形の剛性の高いフレームが形成される。
【0044】
係止部64には、連通孔67が形成されており、連結梁65は、この連通孔67に挿通されて水平移動可能となっている。
梁仮固定機構66は、連結梁65を係止部64に仮固定するくさび部材68と、このくさび部材68の移動を規制する押さえボルト69と、を備える。
くさび部材68は、先端に向かうに従って細くなる形状であり、水平移動可能となっている。くさび部材68が前進すると、このくさび部材68が係止部64の連通孔67と連結梁65との間に介装されて、連結梁65が係止部64に仮固定される。一方、くさび部材68が後退すると、連結梁65の係止部64に対する仮固定が解除される。押さえボルト69は、係止部64に螺合されており、押さえボルト69を回転させて、この押さえボルト69の先端面をくさび部材68の基端面に当接させることで、くさび部材68が後退するのを防止する。
【0045】
以上の昇降装置22Aでは、ストランドジャッキ43が吊り材42を引っ張ると、クレーン設置床20が支持柱11Aに対して上昇する。一方、ストランドジャッキ43が吊り材42を送り出すと、クレーン設置床20が支持柱11Aに対して下降する。
また、
図21に示すように、反力部材41の押さえボルト69を後退させるとともに、くさび部材68を後退させることで、連結梁65の係止部64に対する仮固定が解除されて、連結梁65が水平移動可能となる。その後、連結梁65を手動で水平移動させて、支持柱11Aの上方から退避する。これにより、一対の係止部64同士の連結が解除される。
仮設柱90Aは、第2柱部93の中間高さに、第2柱部93の側面から突出する仮設梁923が設けられる点が、仮設柱90と異なる(
図23(a)参照)。
【0046】
以下、建物構築システム4により建物3を構築する手順について、
図22のフローチャートを参照しながら説明する。なお、
図23および
図24では、建物構築システム4の一部のみを示す。
ステップS11では、
図23(a)に示すように、建物3の所定階(例えば、n階)の床面上に建物構築システム4を構築する。すなわち、建物3の所定階の床面上に仮設柱90Aを設置し、この仮設柱90Aに建物構築システム4を支持させる。このとき、仮設柱90Aの第2柱部93の側面から突出する仮設梁923に、昇降装置22の反力部材41Aの係止部64を係止させる。
【0047】
ステップS12では、クレーン21を用いて建物3を1層分構築する。
ステップS13では、反力部材41Aを上方に盛り替える。具体的には、
図23(b)に示すように、反力部材41Aの連結梁65を移動して、仮設柱90Aの直上から退避させ、この状態で、仮設柱90Aの上に山留め材である柱部材を取り付けて、仮設柱90Aを1層分上方に延長する。次に、
図24(a)に示すように、反力部材41Aをクレーン21で揚重して、1層分上方に盛り替えて、その後、連結梁65を移動して、再度、一対の係止部64同士を連結する。
【0048】
ステップS14では、仮設柱90Aによるクレーン設置床20の仮支持を解除する。すなわち、ストランドジャッキ43により吊り材42に張力を導入して、クレーン設置床20を少し上方に持ち上げて地切りする。この状態で、係止装置23の開閉機構71A、71Bを駆動して、一対のかんぬき梁70を仮設柱90Aの仮設梁923の上から退避させる。
ステップS15では、
図24(b)に示すように、ストランドジャッキ43を駆動して、クレーン設置床20を仮設柱90Aに沿って1層分上昇させる。
【0049】
ステップS16では、クレーン設置床20を仮設柱90に再度仮支持させる。すなわち、係止装置23の開閉機構71A、71Bを駆動して、一対のかんぬき梁70を仮設柱90Aの仮設梁923の上に位置させる。次に、ストランドジャッキ43によりクレーン設置床20を下降させて、かんぬき梁70を仮設柱90Aの仮設梁923の上面に係止させる。
ステップS17では、ステップS12からステップS16までを繰り返す。
【0050】
本実施形態によれば、上述の(1)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(3)建物3を構築する際に、n階の床面上に仮設柱90Aを仮固定し、クレーン21が設置されたクレーン設置床20をこの仮設柱90Aに仮支持させて、クレーン21で建物3を構築しながら、クレーン設置床20を仮設柱90Aに沿って上昇させる。よって、床面上に建物構築システム4を設置して、建物3を短工期で構築できる。
【0051】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1…既存建物(構造物) 2…建物解体システム(床フレーム昇降システム)
3…建物(構造物) 4…建物構築システム(床フレーム昇降システム)
11…既存柱 11A…支持柱 12…既存梁 13…既存床 15…継手部
20…クレーン設置床(床フレーム) 21…クレーン 22、22A…昇降装置
23…係止装置 24…振り止め装置
30…梁部材 31…床部材 32…ベース 33…マスト
34…クレーン本体 35…ジブ 36…巻上装置
40、40A…フレーム 41、41A…反力部材 42…吊り材
43…ストランドジャッキ(昇降ジャッキ)
50…フレーム基部 51…ジャッキ支持部 52…吊り材支持部
53A…梁部材 53B…梁部材
60…ボックス部材 61…反力梁 62…水平部材 63…滑車
64…係止部 65…連結梁 66…梁仮固定機構 67…連通孔
68…くさび部材 69…押さえボルト
70…かんぬき梁 71A、71B…開閉機構 72…支持部
73…移動機構 74…モータ 75…滑車 76…チェーン
80…基部 81…移動部 82…第1移動機構 83…ガイド機構
84…柱押さえ部 85…第2移動機構 86…ロック機構 87…支持板
90、90A…仮設柱 91…ベース部 92…第1柱部 93…第2柱部
721…水平片 722…鉛直片
821…雌ねじ部 822…ボルト 831…長孔 832…ボルト
841…挿通部 851…固定部 852…雄ねじ 853…ナット
861…保持部 862…長孔 863…ボルト 864…ナット
911…クロス部 912…柱接合部 913…延出部 914…水平部材
915…ボルト 921…柱部材(形鋼) 922…連結部材
923…仮設梁 931…柱部材(形鋼) 932…連結部材