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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117095
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】車両用制御システム
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/00 20060101AFI20240822BHJP
   B62J 50/21 20200101ALI20240822BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B62K25/00
B62J50/21
B60G17/015 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022975
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏太
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩二
(72)【発明者】
【氏名】利光 秀康
【テーマコード(参考)】
3D014
3D301
【Fターム(参考)】
3D014DD01
3D014DD02
3D014DE22
3D014DE27
3D014DF22
3D014DF25
3D301AA48
3D301AA59
3D301BA17
3D301DA08
3D301DA31
3D301EC01
(57)【要約】
【課題】 減衰力及び車高の少なくとも一方の設定の変更をユーザが直感し易い車両用制御システムを提供する。
【解決手段】 車両用制御システムは、車両1の振動を減衰する減衰装置21と、減衰装置21の減衰力及び車両1の高さの少なくとも一方の設定をユーザからの選択を表すユーザ選択信号で変更可能な設定変更部40と、設定変更部40からのユーザ選択信号に応じて設定が変更されたことを、音、振動、および、車両1の外観からなる群より選択される少なくとも一以上を用いて報知する報知部100と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の振動を減衰する減衰装置と、
前記減衰装置の減衰力及び前記車両の高さの少なくとも一方の設定をユーザからの選択を表すユーザ選択信号で変更可能な設定変更部と、
前記設定変更部からの前記ユーザ選択信号に応じて前記設定が変更されたことを、音、振動、および、前記車両の外観からなる群より選択される少なくとも一以上を用いて報知する報知部と、
を備える、車両用制御システム。
【請求項2】
前記減衰装置に備えられる弾性体に予め付与する負荷を調整可能な調整部を備え、
前記設定変更部は、前記少なくとも一方の前記設定及び前記負荷の設定を変更可能であり、
前記報知部は、前記少なくとも一方の前記設定及び前記負荷の前記設定が変更されたことを、前記音、前記振動、および、前記外観からなる前記群より選択される前記少なくとも一以上を用いて報知する、請求項1に記載の車両用制御システム。
【請求項3】
前記設定変更部は、前記設定を変更するときに、前記減衰装置の内部又は外部に備えられる部材を振動させる、請求項1に記載の車両用制御システム。
【請求項4】
前記設定変更部と通信可能な機器が、前記報知部に含まれる、請求項1に記載の車両用制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両(典型的には、例えば自動二輪車等の鞍乗り型車両)用制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、自動二輪車に適用する電子可変サスペンションシステムが開示され、その電子可変サスペンションシステムは、複数のセンサ、サスペンションユニット、アクチュエータユニット及び制御ユニットを備える。特許文献1において、複数のセンサは、自動二輪車の前側及び後側の一方又は両方に配設され、加速度、変位又は周波数を検出して複数のセンサ信号を生成する。サスペンションユニットは、自動二輪車に配設された前サスペンション装置及び後サスペンション装置を含む。アクチュエータユニットは、前サスペンション装置及び後サスペンション装置にそれぞれ接続された前アクチュエータ装置及び後アクチュエータ装置を含む。
【0003】
特許文献1において、制御ユニットは、複数のセンサ及びアクチュエータユニットと電気的に接続され、複数のセンサ信号に基づいて少なくとも1つの制御信号を生成する。アクチュエータユニットは、少なくとも1つの制御信号に基づいて前サスペンション装置及び後サスペンション装置の一方又は両方のダンピング値及びプリロード値の一方又は両方を変化させる。
【0004】
上記制御ユニットは、少なくとも1つの第1の制御信号を生成して後アクチュエータ装置へ送信し、後アクチュエータ装置は、少なくとも1つの第1の制御信号に基づいて後サスペンション装置のダンピング値及びプリロード値を変化させた後、制御ユニットは、複数のセンサ信号に基づき、少なくとも1つの第2の制御信号を生成して前アクチュエータ装置へ送信し、前サスペンション装置のダンピング値及びプリロード値の一方又は両方を変化させる。
【0005】
特許文献1において、自動二輪車の運動性能を高める電子可変サスペンションシステムが提供され、その電子可変サスペンションシステムは、運転の必要に応じてサスペンションシステムのパラメータを調整することができる。
【0006】
なお、特許文献1の実施例において、制御ユニットは、モード選択信号を受信すると、少なくとも1つの制御信号を生成してアクチュエータユニットへ送信し、前サスペンション装置及び後サスペンション装置の一方又は両方のダンピング値及びプリロード値の一方又は両方を変化させる。特許文献1の他の実施例において、モード選択信号は、運動モード、快適モード、スマートモード、オンロードモード、オフロードモードの何れか1種類のモード信号を表す。例えば、モード選択信号が表すモードは、対応するようにセンサが生成したセンサ信号の数値条件(例えば、閾値、比値閾値などの関数)を利用して制御信号を生成し、前サスペンション装置及び後サスペンション装置の一方又は両方のダンピング値及びプリロード値の一方又は両方を変化させる。また、条件を満たさない場合は、ダンピング値及びプリロード値の一方又は両方は変化させない。
【0007】
例えば特許文献2には、車両用クッションユニット(サスペンションユニット)が開示され、その車両用クッションユニットは、コイルスプリングとダンパとを備える。特許文献2において、その車両用クッションユニットは、コイルスプリングの初期荷重を設定する初期荷重設定手段と、初期荷重設定手段の設定したコイルスプリングの初期荷重(プリロード値)を感知し、その初期荷重に応じてダンパの減衰力(ダンピング値)を変化させる減衰力調整手段と、をさらに備える。
【0008】
特許文献2において、初期荷重設定手段は、制御系(制御ユニット)を含み、初期荷重設定手段(制御ユニット)は、モータ、油圧ジャッキ、作動部材、調圧用受座等(アクチュエータユニット)を介して、コイルスプリングの初期荷重を変更することができる。
【0009】
特許文献2において、常に車両に最適な作動特性を得ることのできる車両用クッションユニットが提供される。上記構成によれば、コイルスプリングの初期荷重を変更すると、この初期荷重に対応してダンパの減衰力が変化する。
【0010】
なお、特許文献2の実施例において、車両用クッションユニットは、車高調整手段を介して車両に取り付けることができる。特許文献2は、車高調整手段を車両用クッションユニットに適用する場合、その実施例において、クッションユニットの本体側取付端部に配設していることを開示し、また、特許文献2は、クッションユニットの作動ロッド側取付端部のみに車高調整手段を適用してもよいし、クッションユニットの本体側取付端部及び作動ロッド側取付端部に車高調整手段を適用しても構わないことも開示する。
【0011】
特許文献2は、車高調整手段を車両用クッションユニットに適用する場合、車速やギヤポジションに基づいて車高を自動制御することを開示し、また、特許文献2は、手動で車高を変化させるようにしても構わないことも開示する。特許文献2は、車高を車速で制御する場合、実施例においてはその基準を例えば5km/h~7km/hに設定すること、及び、車高を例えば2段階だけ変化させることを開示し、また、特許文献2は、基準範囲及び段階数を変更にしても構わないことも開示する。
【0012】
例えば特許文献3には、減衰力発生装置(アクチュエータユニット)が開示される。特許文献3の実施例において、例えばフロントフォークである油圧緩衝器(ダンパ)は、減衰力発生装置を備え、減衰力発生装置は、ロッドの流路を通って車体側へ移動してきた油の流れによって減衰力を発生させる。減衰力発生装置は、コア、コイル、ヨーク、弁棒、ブッシュ等を含む。コイルは、ソレノイドコイルであり、磁界を発生させることができる。コアは固定鉄芯であり、ヨークは可動鉄芯であるため、コイルに通電して磁界が発生すると、弁棒の中心軸に沿う軸方向の操作力がヨークに与えられる。操作力によって弁棒が駆動する。弁棒の先端には、弁体が接続されており、弁棒が中心軸の方向に移動することに伴い弁体も移動する。この弁体の移動によって、減衰力の発生量が調節される。
【0013】
例えば特許文献4には、減衰力調整式のショックアブソーバーを備えたオフロード車両に搭載される制御装置が開示され、その制御装置は、選択部と報知動作実行部とを備えている。その選択部は、オフロード車両の姿勢情報に応じて、ショックアブソーバーの減衰力の制御に用いられるモードを自動で選択する。また、報知動作実行部は、選択部で選択されているモードを報知装置に報知させる信号である報知信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第6546675号公報(請求項1、段落[0004]、[0031]、[0032])
【特許文献2】特開平6-143956号公報(請求項1、段落[0006]、[0008]、[0020]、[0033]、[0067])
【特許文献3】特許第6630456号公報(段落[0011]、[0030]、[0031]、[0032]、[0034])
【特許文献4】特開2023-003304号公報(要約書、請求項1、段落[0024]、[0025]、[0026]、[0027]、[0028])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1の電子可変サスペンションシステムでは、モード選択信号(例えば運動モード、快適モード等)及び制御信号に応じて、ダンピング値(減衰力)は、変更される。変更前のダンピング値(減衰力)は、ダンピング値(減衰力)の設定に基づき、その設定は、ユーザによって変更し得る。しかしながら、このような設定がユーザによって変更されても、その設定が変更されたことは、ユーザに通知されない。その結果、ユーザは、ダンピング値(減衰力)の設定(車両の運転性能の基礎を定めるサスペンションユニットの設定)の変更を直感することができない。
【0016】
同様に、特許文献3において、減衰力(ソレノイドコイルの通電量)の設定が変更されたことは、ユーザに通知されない。
【0017】
特許文献4において、オフロード車両の姿勢情報に応じて、ショックアブソーバーの減衰力の制御に用いられる、ロジックの異なる複数のモード(例えばジャンプモード、ランディングモード等)は、自動的に選択される。自動的に選択されたモードは、ユーザに通知されるが、減衰力の設定がユーザによって変更されたことは、ユーザに通知されない。
【0018】
また、特許文献2において、エンジンを始動後、車速が例えば5km/h~7km/h以上になったときの車高の設定が変更されたことは、ユーザに通知されない。
【0019】
本発明の1つの目的は、減衰力及び車高の少なくとも一方の設定の変更をユーザが直感し易い車両用制御システムを提供することである。本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0021】
第1の態様において、車両用制御システムは、前記車両の振動を減衰する減衰装置と、前記減衰装置の減衰力及び前記車両の高さの少なくとも一方の設定をユーザからの選択を表すユーザ選択信号で変更可能な設定変更部と、前記設定変更部からの前記ユーザ選択信号に応じて前記設定が変更されたことを、音、振動、および、前記車両の外観からなる群より選択される少なくとも一以上を用いて報知する報知部と、を備える。
【0022】
第1の態様によれば、報知部は、設定が変更されたことを例えば音を用いて、或いは、音に代えて例えば振動を用いて、或いは、音に加えて振動を用いて、或いは、音及び/又は振動に代えて例えば外観を用いて、或いは、音及び/又は振動に加えて外観を用いて、ユーザに直感させることができる。特に、設定をユーザ自ら選択して変更したときに、その変更結果がユーザに報知されるので、ユーザは、設定が変更されたこと(ユーザの意思)を容易に確認することができる。
【0023】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】車両用制御システムの構成例を示す。
図2図1の車両用制御システムが適用される自動二輪車の外観例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0026】
図1は、車両用制御システムの構成例(ブロック図)を示し、図2は、図1の車両用制御システムが適用される車両(典型的には、自動二輪車)の外観例(側面図)を示す。なお、以下の説明において、前後とは図2の車両1の進行方向を基準として前後を指す。また、図2において、Frは前、Rrは後、UPは上、DOWNは下を示す。
【0027】
例えば図1に示すように、車両用制御システムは、車両1(具体的には、例えば自動二輪車のサスペンションユニット200の弾性体24(典型的には、例えばコイルスプリング))の振動を減衰する減衰装置21と、減衰装置21の減衰力及び車両1の高さ(車高)の少なくとも一方の設定を変更可能な設定変更部40と、設定が変更されたことを、音、振動、および、車両1の外観からなる群より選択される少なくとも一以上を用いて報知する報知部100と、を備えることができる。
【0028】
なお、報知部100は、独立した機器又は報知機能に特化した報知専用の機器(例えば、スピーカ単体、バイブレータ単体)で構成されてもよいが、例えば、図1の例において、減衰装置21の内部に備えられた部材(典型的には、弁体71)であって、減衰機能だけでなく報知機能にも寄与する部材(弁体71)が、報知部100を構成することができる。特に、減衰装置21の内部に備えられた部材で報知部100を構成する場合、言い換えれば、減衰装置21に報知装置100を設けた場合、より直感的にユーザに知らせることが可能である。
【0029】
ここで、弁体71は、例えば、特許文献3の弁体に対応し、弁体71の位置で、減衰装置21の減衰力で定めることができる。減衰装置21は、典型的には、サスペンションユニット200のダンパである。弁体71がソレノイドコイルの通電によって制御されるソレノイドバルブを構成する場合、設定変更部40は、ソレノイドコイルの通電量を決定して、アクチュエータとして機能する減衰力調整部31は、通電量を弁体71の移動量に変換することができる。減衰力調整部31は、減衰装置21内で発生する減衰力を調整可能な調整部である。
【0030】
減衰装置21が油圧式ダンパ等の当業者によく知られたダンパである場合、減衰装置21(弁体71を含む)の構成及び減衰力調整部31の構成は、当業者によく知られた詳細な構成を採用することができ、本明細書では、詳細な構成の説明は、省略する。
【0031】
ところで、設定変更部40は、例えば、特許文献1の制御ユニットに対応し、例えば、プロセッサ、デジタル信号処理装置、プログラマブルな集積回路(例えば、マイクロコントローラ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ又はASICである。言い換えれば、設定変更部40は、典型的には、減衰装置21の減衰力及び車両1の高さ(車高)の少なくとも一方の設定を変更可能なECU(Electronic Control Unit)である。また、減衰装置21は、典型的には、電子制御ダンパである。
【0032】
減衰装置21の減衰力の設定(ユーザ設定)は、ユーザの意思又は好みに応じて、変更することができる。具体的には、所定の減衰力は、例えば強め「HARD」、弱め「SOFT」(又は普通「NORMAL」)からなる2段階、例えば強め「HARD」、中間「MIDDLE」(普通「NORMAL」)、弱め「SOFT」からなる3段階等の複数の段階の中からユーザによって選択された、1つの段階(ユーザの意思又は好み)に応じた大きさに設定される。
【0033】
車両用制御システムは、操作部11を更に備えることができ、ユーザは、操作部11の操作(例えばスイッチ操作)で、例えば「HARD」設定又は「SOFT」設定の何れか一方を選択し、この選択を表す信号(ユーザ選択信号)は、設定変更部40に入力され、設定変更部40は、ユーザによって選択された設定を記憶することができる。設定変更部40に記憶された設定が例えば「SOFT」設定から例えば「HARD」設定に変更される場合、設定に応じて決定される所定の減衰力は、第1の減衰力から第2の減衰力(第2の減衰力>第1の減衰力)に設定される。ここで、所定の減衰力は、固定であってもよい。
【0034】
なお、設定変更部40は、例えばメータECUに含まれてもよく、この場合、設定変更部40(メータECU)は、図示されないメータに、ユーザによって選択された設定を表示してもよい。
【0035】
また、ユーザは、操作部11の操作で、例えば、「HARD」設定、「MIDDLE」設定、又は、「SOFT」設定の何れか1つを選択してもよい。設定変更部40に記憶された設定が例えば「MIDDLE」設定から例えば「SOFT」設定に変更される場合、所定の減衰力は、第1の減衰力から第3の減衰力(第3の減衰力<第1の減衰力)に設定される。
【0036】
図1に示されるように、車両用制御システムは、センサ20を更に備えることができる。センサ20は、例えば車速センサである。ただし、センサ20は、車速センサに限定されず、他のセンサを採用してもよい。また、センサ20は、複数のセンサを含んでもよい。センサ20が例えば車速センサである場合、設定に応じて決定される所定の減衰力(例えば第1の減衰力)は、車速(車両1の速度)に応じて、可変であってもよい。車速と所定の減衰力とが、例えば関係式(数式等)、関係マップ(ルックアップテーブル等)等の関係(数値条件等)を満たすように、設定変更部40は、ソレノイドコイルの通電量を決定することによって、センサ20からの例えば車速(車両1の速度)に応じて、所定の減衰力(例えば第1の減衰力)を設定(調整)することができる。
【0037】
ここで、ルックアップテーブル等の関係は、例えば特許文献1のモード選択信号、特許文献4の減衰力の制御に用いられるロジックモードのようなモードで、定めることができる。
【0038】
なお、エンジン13が始動される前、より具体的には、操作部11がエンジン13を始動させるスタートボタンを更に有し、ユーザがスタートボタンを押す前に、言い換えれば、ユーザが車両1を運転する前に、ユーザが停止した車両1に乗った直後に車速がゼロの状態である場合、設定(例えば「MIDDLE」設定)に応じて決定される所定の減衰力(例えば第1の減衰力)は、固定である。車両用制御システムが起動し、電源が設定変更部40に供給されて、減衰装置21内で所定の減衰力(例えば第1の減衰力)が発生するように、設定変更部40は、所定の減衰力(例えば第1の減衰力)に相当するソレノイドコイルの通電量(第1の通電量(固定))を決定し、減衰力調整部31を駆動することができる。
【0039】
その後、設定変更部40に記憶された設定が例えば「MIDDLE」設定から例えば「HARD」設定に変更される場合、減衰装置21内で所定の減衰力(例えば第2の減衰力)が発生するように、設定変更部40は、所定の減衰力(例えば第2の減衰力)に相当するソレノイドコイルの通電量(第2の通電量(固定)>第1の通電量)で、減衰力調整部31を駆動することができる。ここで、ソレノイドコイルの通電量が設定の変更に応じて、第1の通電量から第2の通電量まで増加し、これにより、弁体71の第1の位置から第2の位置への移動を介して、所定の減衰力が第1の減衰力から第2の減衰力まで強められる。
【0040】
(第1の駆動例)
本発明に従う車両用制御システムでは、第2の減衰力を例えば中心にして、例えば第2の減衰力の増減を繰り返す。すなわち、本発明に従う車両用制御システムでは、第2の減衰力に相当する弁体71の第2の位置を例えば中心にして、例えば第2の位置の進退を繰り返す。このように、設定変更部40は、設定(ユーザ選択信号)の変更に連動して、弁体71を強制的に所定期間だけ振動させることができる。弁体71の振動がユーザに伝達することで、ユーザは、設定の変更を直感することができる。言い換えれば、本発明に従う車両用制御システムでは、振動可能な弁体71で、振動を用いて報知する報知部100を構成することができる。
【0041】
振動を用いて報知する報知部100を構成する部材は、弁体71(振動部材)に限定されず、設定変更部40は、減衰装置21の内部に備えられる他の部材(他の振動部材)を、設定(減衰装置21の減衰力の設定(所定の減衰力))の変更に連動させて、振動させてもよい。
【0042】
弁体71が振動する程度は、ユーザに伝達可能な程度でよいが、好ましくは、弁体71を振動させるときの作動音がユーザに伝達可能な程度に発生する。この場合、振動可能な弁体71で、振動及び作動音を用いて報知する報知部100を構成することができる。ここで、振動の継続時間および振動のタイミングは、例えばパラメータで任意に設定可能であり、設定に応じて振動パターンを変更してもよい。特に、減衰装置21の内部に備えられた部材(弁体71)で、複数の要素(振動および音)を有する報知部100を構成する場合、言い換えれば、減衰装置21に振動および音からなる報知装置100を設けた場合、より一層直感的にユーザに知らせることが可能である。
【0043】
(第2の駆動例)
図1に示されるように、車両用制御システムは、負荷調整部32を更に備えることができる。負荷調整部32は、減衰装置21に備えられる弾性体24に予め付与する負荷を調整可能な調整部である。弾性体24(典型的には、例えばコイルスプリング)は、一般に路面Gの凹凸を吸収する機能と、車輪又はタイヤを路面Gに対して押さえつける機能と、を有する。
【0044】
弾性体24に負荷が予め付与されない状態で、弾性体24は、自然長(自由長)を有し、弾性体24が自然長よりも縮めた状態で、弾性体24は、減衰装置21に組み付けられる。組み付けられた状態での長さをセット長と呼び、自然長とセット長の差に応じて、負荷が弾性体24に予め付与される。弾性体24に予め付与される負荷は、初期荷重と呼ばれ、一般的には、ユーザの体重(より正確には、車重、体重及び積載量の合計である車両総重量)を想定して、負荷(初期荷重)が設定される。例えばユーザの実際体重が想定体重よりも重い場合、負荷(初期荷重)を強くすることができる。他方、例えばユーザの実際体重が想定体重よりも軽い場合、負荷(初期荷重)を弱くすることができる。
【0045】
設定変更部40に記憶された設定が例えば「MIDDLE」設定から例えば「HARD」設定に変更される場合、上述の第1の駆動例では、設定変更部40は、設定の変更に連動して、減衰装置21の内部に備えられる部材(弁体71)を、強制的に所定期間だけ振動させた。これにより、振動可能な弁体71で、振動(好ましくは、及び音)を用いて報知する報知部100を構成した。言い換えれば、減衰装置21の内部に備えられた部材(典型的には、弁体71)であって、減衰機能だけでなく報知機能にも寄与する部材(弁体71)で、報知部100を構成した。
【0046】
第2の駆動例では、減衰装置21の外部に備えられた部材(典型的には、負荷調整部32のモータ72)であって、負荷機能だけでなく報知機能にも寄与する部材(モータ72)で、報知部100を構成した。より具体的には、設定変更部40は、減衰装置21の外部に備えられる部材(モータ72)を、設定(減衰装置21の減衰力の設定(所定の減衰力))の変更に連動させて、振動させることができる。したがって、設定変更部40に記憶された設定が例えば「MIDDLE」設定から例えば「HARD」設定に変更される場合、第2の駆動例では、設定変更部40は、設定の変更に連動して、負荷調整部32のモータ72を、強制的に所定期間だけ振動させる。
【0047】
本発明に従う車両用制御システムでは、モータ72を振動モータで構成することができる。例えば、モータ72によって回転する軸に振動子(図示せず)と呼ばれる重りが接続される。モータ72(振動モータ)は、軸を回転させることで遠心力振動を発生させる振動源として機能する。
【0048】
第2の駆動例では、設定変更部40に記憶された設定が例えば「MIDDLE」設定から例えば「HARD」設定に変更される場合、(i)減衰装置21内で所定の減衰力(例えば第2の減衰力)が発生するように、設定変更部40は、所定の減衰力(例えば第2の減衰力)に相当するソレノイドコイルの通電量(第2の通電量>第1の通電量)で、減衰力調整部31を駆動することができるとともに、(ii)弾性体24に予め付与される負荷が強められるように、設定変更部40は、モータ72(振動モータ)を駆動することができる。
【0049】
第2の駆動例では、モータ72(振動モータ)の振動がユーザに伝達することで、ユーザは、設定の変更を直感することができる。言い換えれば、本発明に従う車両用制御システムでは、振動可能なモータ72(振動モータ)で、振動を用いて報知する報知部100を構成することができる。
【0050】
モータ72(振動モータ)が振動する程度は、ユーザに伝達可能な程度でよいが、好ましくは、モータ72(振動モータ)を振動させるときの作動音がユーザに伝達可能な程度に発生する。この場合、振動可能なモータ72(振動モータ)で、振動及び作動音を用いて報知する報知部100を構成することができる。
【0051】
(第3の駆動例)
図1に示されるように、車両用制御システムは、車高調整部33を更に備えることができる。車高調整部33は、減衰装置21の全長を調整可能な調整部である。例えば、減衰装置21の一端又は内部に、伸縮機構23が設けられ、伸縮機構23が伸びるときに減衰装置21の全長も伸び、伸縮機構23が縮むときに減衰装置21の全長も縮む。ここで、弾性体24に予め付与される負荷は、減衰装置21の全長の伸縮とは独立して、制御することができる。
【0052】
設定変更部40に記憶された設定が例えば「MIDDLE」設定から例えば「HARD」設定に変更される場合、上述の第1の駆動例では、設定変更部40は、設定の変更に連動して、減衰装置21の内部に備えられる部材(弁体71)を、強制的に所定期間だけ振動させた。これにより、振動可能な弁体71で、振動(好ましくは、及び音)を用いて報知する報知部100を構成した。言い換えれば、減衰装置21の内部に備えられた部材(典型的には、弁体71)であって、減衰機能だけでなく報知機能にも寄与する部材(弁体71)で、報知部100を構成した。
【0053】
第3の駆動例では、伸縮機構23で、報知部100を構成した。より具体的には、設定変更部40は、伸縮機構23を、設定(減衰装置21の減衰力の設定(所定の減衰力))の変更に連動させて、伸縮させることができる。したがって、設定変更部40に記憶された設定が例えば「MIDDLE」設定から例えば「HARD」設定に変更される場合、第3の駆動例では、設定変更部40は、設定の変更に連動して、車高調整部33を、強制的に所定期間だけ駆動させる。
【0054】
第3の駆動例では、設定変更部40に記憶された設定が例えば「MIDDLE」設定から例えば「HARD」設定に変更される場合、(i)減衰装置21内で所定の減衰力(例えば第2の減衰力)が発生するように、設定変更部40は、所定の減衰力(例えば第2の減衰力)に相当するソレノイドコイルの通電量(第2の通電量>第1の通電量)で、減衰力調整部31を駆動することができるとともに、(iii)車高が低くなるように、設定変更部40は、車高調整部33を駆動することができる。
【0055】
第3の駆動例では、伸縮機構23の縮み又は伸びが車高の低下又は増加に反映されることで、ユーザは、設定の変更を直感することができる。言い換えれば、本発明に従う車両用制御システムでは、伸縮可能な伸縮機構23(広義には車高減増機構)で、車両の外観を用いて報知する報知部100を構成することができる。
【0056】
なお、エンジン13が始動された後、より具体的には、設定変更部40は、例えば車速の増加に応じて、或いは、例えば車速が閾値(例えば5km/h~7km/h)以上になったときに、エンジン13停止時の車高を増加させてもよい。ここで、例えば車速に基づきエンジン13停止時の車高を増加させる程度は、設定変更部40に記憶された設定に依存してもよく、この場合、例えば「HARD」設定におけるエンジン13始動後の車高の増加幅は、例えば「MIDDLE」設定におけるエンジン13始動後の車高の増加幅と比較して、小さくてもよい。
【0057】
設定変更部40は、好ましくは、設定の変更として、減衰装置21の減衰力の設定(所定の減衰力))の変更を実施するが、減衰装置21の減衰力の設定の代わりに、伸縮機構23の設定(エンジン13始動後の所定の車高)の変更を実施してもよい。この場合、例えば3段階の設定は、高め「SOFT」又は「HIGH」、中間(普通)「MIDDLE」、低め「HARD」又は「LOW」に設定されてもよい。第3の駆動例のこの変形例では、設定変更部40に記憶された設定が例えば「MIDDLE」設定から例えば「LOW」設定に変更される場合、(i)エンジン13が始動される前に、エンジン13停止時の車高が低くなるように、設定変更部40は、車高調整部33を駆動することができる。エンジン13が始動された後、より具体的には、設定変更部40は、例えば車速の増加に応じて、或いは、例えば車速が閾値(例えば5km/h~7km/h)以上になったときに、エンジン13停止時の車高を所定の車高(設定に応じた車高)まで、増加させることができる。ここで、設定は、所定の車高に固有の専用の設定であってもよく、所定の減衰力及び所定の車高に共通の1つの設定であってもよい。
【0058】
(第4の駆動例)
図1に示されるように、車両用制御システムは、通信部50及び機器60を更に備えることができる。通信部50は、例えば無線式通信部であり、機器60も、例えば無線式機器(典型的には、ユーザが携帯可能な機器)である。機器60(典型的には、ユーザが携帯可能な機器)は、設定変更部40と通信可能であり、ユーザが携帯可能な機器は、例えばスピーカ及び/又はバイブレータを含んで、音および振動からなる群より選択される少なくとも一以上を用いて報知する報知部100を構成することができる。
【0059】
例えば、エンジン13(広義には、車両駆動部)が作動している状態では、ユーザは、音および振動からなる群より選択される少なくとも一以上を用いて報知する報知部100によって、設定(ユーザ選択信号)の変更をより容易に直感することができる。
【0060】
(第1乃至第4の駆動例の組み合わせ)
当業者は、第1乃至第4の駆動例の任意の組み合わせを実施することができる。報知部100は、減衰装置21の減衰力及び車両1の高さの少なくとも一方の設定が変更されたことを、音、振動、および、車両1の外観からなる群より選択される1つ又は2つ一以上を用いてユーザに報知することができる。
【0061】
以下、図1図2との関係を簡単に説明する。図2において、自動二輪車である車両1は、前側の車輪である前輪2と、後側の車輪である後輪3と、自動二輪車の骨格をなす車体フレーム111、ステアリング部12、エンジン13等を有する車両本体10と、を備えている。図1の操作部11は、例えばステアリング部12(ステアリングハンドル)に設けてもよい。
【0062】
また、自動二輪車である車両1は、前輪2と車両本体10とを連結する、前方サスペンション部としてのフロントフォーク19を、前輪2の左側と右側にそれぞれ1つずつ有している。また、自動二輪車1は、後輪3と車両本体10とを連結する、後方サスペンション部としてのリヤサスペンション22を、後輪3の左側と右側にそれぞれ1つずつ有している。
【0063】
図1のサスペンションユニット200は、フロントフォーク19及び/又はリヤサスペンション22を含むことができる。サスペンションユニット200は、フロントフォーク19及びリヤサスペンション22を含む場合、図1の減衰装置21は、前方減衰装置及び後方減衰装置を含むことができる。同様に、図1の弾性体24は、前方弾性体及び後方弾性体を含むことができ、図1の伸縮機構23は、前方伸縮機構及び後方伸縮機構を含むことができる。
【0064】
リヤサスペンション22は、車体側取付部材120と、車輪側取付部材125と、ばね24と、を有する。なお、図2では、左側に配置されたフロントフォーク19及びリヤサスペンション22のみを示している。
【0065】
フロントフォーク19及びリヤサスペンション22は、共に、電子制御式の油圧サスペンションであり、各々には本発明の設定変更部40及び報知部100が適用される。
【0066】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0067】
1・・・車両(典型的には、例えば自動二輪車)、2・・・前輪、3・・・後輪、10・・・車両本体、11・・・操作部、12・・・ステアリング部、13・・・エンジン、19・・・フロントフォーク(前方サスペンション部)、20・・・センサ、21・・・減衰装置、22・・・リヤサスペンション(後方サスペンション部)、23・・・伸縮機構、24・・・弾性体(典型的には、例えばコイルスプリング)、31・・・減衰力調整部、32・・・負荷調整部、33・・・車高調整部、40・・・設定変更部、50・・・通信部、60・・・機器、71・・・弁体(広義には、振動部材)、72・・・モータ(広義には、振動部材)、100・・・報知部、111・・・車体フレーム、120・・・車体側取付部材、125・・・車輪側取付部材、200・・・サスペンションユニット、G・・・路面。
図1
図2