(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117101
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】チューブステントセット
(51)【国際特許分類】
A61F 2/95 20130101AFI20240822BHJP
A61F 2/82 20130101ALI20240822BHJP
【FI】
A61F2/95
A61F2/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022985
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小磯 智春
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA45
4C267AA49
4C267AA56
4C267BB10
4C267CC22
(57)【要約】
【課題】インナーカテーテルの抜去が容易なチューブステントセットを提供する。
【解決手段】チューブステントセット1は、湾曲部6を有するチューブステント2と、チューブステント2内に配置されたインナーカテーテル3とを備える。そして、インナーカテーテル3は、湾曲部6の径方向外側の内壁2bに押し当てられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲部を有するチューブステントと、
前記チューブステント内に配置されたインナーカテーテルとを備え、
前記インナーカテーテルは、前記湾曲部の径方向外側の内壁に押し当てられている、チューブステントセット。
【請求項2】
前記インナーカテーテルは、前記湾曲部を直線形状に近付けるように、前記湾曲部の径方向外側の内壁に押し当てられている、請求項1に記載のチューブステントセット。
【請求項3】
前記インナーカテーテルは、前記湾曲部の径方向内側の内壁の少なくとも一部から離れている、請求項1に記載のチューブステントセット。
【請求項4】
前記チューブステントは、内層チューブと外層チューブとを備え、前記内層チューブの内壁は、前記外層チューブの外壁よりも低摩擦である、請求項1に記載のチューブステントセット。
【請求項5】
湾曲部を有するチューブステントに、直線形状のインナーカテーテルを挿入し、
前記チューブステント内に前記インナーカテーテルを配置した後に加熱して滅菌する、請求項1に記載のチューブステントセットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チューブステントセットに関する。
【背景技術】
【0002】
生体内管腔において狭窄または閉塞している部位(以下、狭窄・閉塞部位と記載する)にチューブステントを留置する手技が行われている。チューブステントを狭窄・閉塞部位に留置する際には、チューブステントとチューブステント内に配置されたインナーカテーテルとを備える、チューブステントセットが使用されている。(特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーブ型またはピッグテイル型等と呼ばれる、湾曲部を有するチューブステントが知られている。ここで、湾曲部を有するチューブステントを用いる場合、チューブステントからインナーカテーテルを抜去する際に、チューブステントの湾曲部とインナーカテーテルとの接触により、大きな摩擦抵抗が発生しやすい。これにより、インナーカテーテルの抜去が困難なおそれがある。
【0005】
本開示は上述の事情を鑑みてなされたものであり、インナーカテーテルの抜去が容易なチューブステントセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のチューブステントセットは、湾曲部を有するチューブステントと、チューブステント内に配置されたインナーカテーテルとを備える。そして、インナーカテーテルは、湾曲部の径方向外側の内壁に押し当てられている。
【0007】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム等の間で変換したものもまた、本開示の一態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示のチューブステントセットは、インナーカテーテルの抜去が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のチューブステントセットの一例を模式的に示す側面図である。
【
図2】本開示のチューブステントセットにおける要部の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本開示のチューブステントセットにおける要部の他の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
図1は、本開示のチューブステントセット1の一例を模式的に示す側面図である。
図1に示すように、本開示のチューブステントセット1は、チューブステント2およびインナーカテーテル3を備える。
【0012】
チューブステント2は、生体内管腔が狭窄または閉塞することにより生じる様々な疾患を治療するための医療器具である。例えば、生体内管腔としては、胆管または胆道等が挙げられる、また、胆管または胆道に生じる疾患としては、黄胆、胆道癌、胆道閉塞症等が挙げられる。しかしながら、チューブステント2の用途は、これらに限定されるものでない。
【0013】
チューブステント2は、生体内管腔を開通できるような形状であれば、どのような形状であっても構わない。一例として、チューブステント2は、先端から基端まで貫通する第1ルーメン2aを有する、長尺の円管形状である。第1ルーメン2aは、生体内管腔を開通する役割を果たす。
【0014】
図2は、本開示のチューブステントセット1における要部の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、チューブステント2は、内層チューブ4および外層チューブ5を備えていてもよい。内層チューブ4とは、チューブステント2の第1ルーメン2aの内壁2b(内面)を構成する部材である。一方、外層チューブ5とは、チューブステント2の外壁2c(外面)を構成する部材である。そして、内層チューブ4の内壁2bは、外層チューブ5の外壁2cよりも低摩擦であってもよい。ここでの低摩擦とは、内壁2bの静摩擦係数が外壁2cの静摩擦係数よりも低いことを意味する。このような構成を満足するならば、チューブステント2からインナーカテーテル3を抜去する際の摩擦抵抗を低減できるとともに、チューブステント2を留置する際に位置ずれが起きる可能性を低くできる。なお、内壁2bおよび外壁2cの静摩擦係数は、JIS K 7125に準拠して測定すればよい。この場合、JIS K 7125における相手材料としては、インナーカテーテル3を構成する材料を用いる。
【0015】
内壁2bおよび外壁2cの静摩擦係数は、内層チューブ4および外層チューブ5を構成する材料を適宜選択することで、任意の値とすることができる。内層チューブ4は、例えば、低摩擦性の材料で構成すればよい。低摩擦性の材料とは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等の樹脂である。外層チューブ5は、例えば、高摩擦性の材料で構成すればよい。高摩擦性の材料とは、例えば、ポリウレタン等の樹脂である。なお、内壁2bの静摩擦係数は、外壁2cの静摩擦係数の5分の1以下であってもよい。
【0016】
内層チューブ4および外層チューブ5は、直に接していなくてもよい。例えば、内層チューブ4および外層チューブ5の間に他の部材が介在していてもよい。
【0017】
チューブステント2は、湾曲部6(
図1参照)を有する。湾曲部6とは、湾状(または弓状)に曲がっている部位(すなわち略曲線的に曲がっている部位)のことである。
図1では、先端側および基端側の2箇所に、円弧状の湾曲部6を有するチューブステント2を図示している。このような形状のチューブステント2は、ピッグテイル型とも呼ばれる。なお、チューブステント2を
図1の紙面方向に見た場合、チューブステント2の一部は重複する。したがって、チューブステント2は、平面上で(二次元的に)延びる形状ではなく三次元的な形状を有する。
【0018】
インナーカテーテル3は、生体内管腔の目的の位置までチューブステント2を搬送するための医療器具である。一例として、インナーカテーテル3の形状は、先端から基端まで貫通する第2ルーメン3aを有する、長尺の円管形状である。第2ルーメン3aには、ガイドワイヤ等の医療器具を挿通させることができる。
【0019】
本開示のチューブステントセット1は、チューブステント2の第1ルーメン2a内にインナーカテーテル3が挿通されて配置されている。
【0020】
図3は、本開示のチューブステントセット1における要部の他の例を模式的に示す断面図である。より具体的には、
図3は、チューブステント2の中心軸に沿った断面図である。
図3に示すように、インナーカテーテル3は、チューブステント2の湾曲部6の径方向外側の内壁2bに押し当てられている。
図3では、インナーカテーテル3の一部が、湾曲部6の径方向外側の内壁2bに押し当てられている例を示している。なお、これに限定されることはなく、インナーカテーテル3の全部(湾曲部6を通過する区間の全部)が湾曲部6の径方向外側の内壁2bに押し当てられていてもよい。ここで、径方向とは、第1ルーメン2aの中心軸を円中心とする半径方向を示す。そして、径方向外側とは、湾曲部6の凸状に突出する側を指す。
【0021】
このような構成を満足していることで、チューブステント2の湾曲部6において、インナーカテーテル3は常に径方向外側の内壁2bから抗力を受けている状態にある。そして、インナーカテーテル3をチューブステント2から抜去する際に、この抗力が失われることで、インナーカテーテル3は自己復元力により初期形状に戻ろうとする。初期形状とは、例えば、直線形状であり、ここでの直線形状とは、インナーカテーテル3が全体として直線的に延びる形状であることを意味する。そして、このインナーカテーテル3の自己復元力が抜去の際の助力となる。よって、本開示のチューブステントセット1は、インナーカテーテル3の抜去が容易である。
【0022】
インナーカテーテル3は、湾曲部6を直線形状に近付けるように、湾曲部6の径方向外側の内壁2bに押し当てられていてもよい。ここで、湾曲部6を直線形状に近付けるように押し当てられているとは、以下の状態を表す。チューブステント2内にインナーカテーテル3が配置されている状態での湾曲部6の第1曲率半径と、チューブステント2内にインナーカテーテル3が配置されていない状態での湾曲部6の第2曲率半径とを比較する。曲率半径とは、湾曲部6の径方向外側の外壁2cを構成する円弧の半径のことである。そして、第2曲率半径が第1曲率半径よりも大きければ、湾曲部6を直線形状に近付けるように押し当てられていると言える。第2曲率半径が第1曲率半径よりも大きいか否かは、インナーカテーテル3がチューブステント2内に配置されている状態で、極力外力(インナーカテーテル3を変形させる外力)を加えずにチューブステント2を中心軸に沿って切り裂くことで判定可能である。チューブステント2を中心軸に沿って切り裂いたときに、チューブステント2の曲率半径が当初よりも大きくなった場合、チューブステント2はインナーカテーテル3内で広がろうとしていたと推定できる。したがって、この場合には、第2曲率半径は第1曲率半径よりも大きいことが分かる。このような構成を満足するならば、チューブステント2の湾曲部6において、インナーカテーテル3は内壁2bから大きな抗力を受けている状態にある。よって、インナーカテーテル3の抜去がより容易となる。
【0023】
インナーカテーテル3は、湾曲部6の径方向内側の内壁2bの少なくとも一部から離れていてもよい。径方向内側とは、湾曲部6の凹状にへこむ側を指す。このような構成を満足するならば、インナーカテーテル3は、湾曲部6の径方向内側の内壁2bとは接触していない。よって、インナーカテーテル3の抜去の際に、湾曲部6の径方向内側の内壁2bとインナーカテーテル3との間の摩擦抵抗が少なくなり、インナーカテーテル3の抜去がより容易となる。
【0024】
インナーカテーテル3は、例えば、可撓性および生体適合性を有する材料で構成されていてもよい。可撓性および生体適合性を有する材料とは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルブロックアミド共重合体樹脂(PEBAX(登録商標))またはポリオレフィン系樹脂等の樹脂である。
【0025】
本開示のチューブステントセット1は、アウターカテーテルを備えていてもよい。アウターカテーテルの形状は、インナーカテーテル3と同様に、先端から基端まで貫通する第3ルーメンを有する、長尺の円管形状であってもよい。そして、インナーカテーテル3は、チューブステント2内に配置される部分を残し、アウターカテーテルの第3ルーメン内に進退可能に挿通される。
【0026】
この他に、本開示のチューブステントセット1は、アウターカテーテルの基端側に取り付けられ、アウターカテーテルを支持するハンドルを備えていてもよい。ハンドルは、術者により把持される部材である。
【0027】
ハンドルには、スライドノブ等の進退操作部が設けられていてもよい。進退操作部は、インナーカテーテル3の基端側に接続されており、インナーカテーテル3の進退を操作することができる部材である。
【0028】
本開示のチューブステントセット1の製造方法の一例について説明する。
【0029】
まず、湾曲部6を有するチューブステント2と、直線形状のインナーカテーテル3とを準備する。ここでの直線形状とは、インナーカテーテル3が全体として直線的に延びる形状であることを意味する。つまり、意図的に変形させる加工がなされていないインナーカテーテル3を準備する。なお、チューブステント2およびインナーカテーテル3は、任意の樹脂材料を押出し成形する等の公知の方法で製造すればよい。
【0030】
次に、チューブステント2の第1ルーメン2a内にインナーカテーテル3を挿入して配置する。その後、チューブステント2およびインナーカテーテル3をともに加熱して滅菌する。このように、直線形状のインナーカテーテル3を用いることで、インナーカテーテル3が元の形状に戻ろうとする弾性力により、インナーカテーテル3がチューブステント2の湾曲部6の径方向外側の内壁2bに押し当てられている本開示のチューブステントセット1が得られる。一方、直線形状ではなく、湾曲部を有するインナーカテーテル3を用いた場合は、インナーカテーテル3がチューブステント2の湾曲部6の径方向外側の内壁2bに押し当てられているのではなく、単に接触した状態となる。よって、本開示のチューブステントセット1は得られない。
【0031】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。各実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0032】
実施の形態は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[第1項目]
湾曲部(6)を有するチューブステント(2)と、
チューブステント(2)内に配置されたインナーカテーテル(3)とを備え、
インナーカテーテル(3)は、湾曲部(6)の径方向外側の内壁(2b)に押し当てられている、チューブステントセット(1)。
[第2項目]
インナーカテーテル(3)は、湾曲部(6)を直線形状に近付けるように、湾曲部(6)の径方向外側の内壁(2b)に押し当てられている、請求項1に記載のチューブステントセット(1)。
[第3項目]
インナーカテーテル(3)は、湾曲部(6)の径方向内側の内壁(2b)の少なくとも一部から離れている、請求項1に記載のチューブステントセット(1)。
[第4項目]
チューブステント(2)は、内層チューブ(4)と外層チューブ(5)とを備え、内層チューブ(2)の内壁(2b)は、外層チューブ(5)の外壁(2c)よりも低摩擦である、請求項1に記載のチューブステントセット(1)。
[第5項目]
湾曲部(6)を有するチューブステント(2)に、直線形状のインナーカテーテル(3)を挿入し、
チューブステント(2)内にインナーカテーテル(3)を配置した後に加熱して滅菌する、請求項1に記載のチューブステントセット(1)の製造方法。
【符号の説明】
【0033】
1:チューブステントセット
2:チューブステント
2a:第1ルーメン
2b:内壁
2c:外壁
3:インナーカテーテル
3a:第2ルーメン
4:内層チューブ
5:外層チューブ
6:湾曲部