(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117102
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】シール構造およびバックアップ材
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F16J15/10 C
F16J15/10 T
F16J15/10 D
F16J15/10 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022987
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 暢
(72)【発明者】
【氏名】吉本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 彰
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA01
3J040AA17
3J040BA02
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA22
3J040EA25
3J040FA05
3J040FA07
3J040HA11
3J040HA15
(57)【要約】
【課題】シールリングとバックアップリングとで構成されるシール構造において、シールリングに高圧が加わった場合でも、シールリングへの亀裂等の破損の発生を抑制させることが可能な構成を備えるシール構造およびバックアップ材を提供する。
【解決手段】高圧側と低圧側とを仕切るシール構造であって、シール溝1Gは、高圧側において、第2シール面2aと一定距離を隔てた位置に設けられた高圧側溝底部1Gaと、低圧側において、高圧側溝底部1Gaと連続し、高圧側溝底部1Gaから低圧側に向かうに従って第2シール面2a側に近接する低圧側溝底部1Gbと、を有し、シール材10は、高圧側溝底部1Gaと第2シール面2aとの間に配置され、バックアップ材20は、低圧側溝底部1Gbと第2シール面2aとの間に配置され、バックアップ材20は、低圧側溝底部1Gbに対向する側において、低圧側溝底部1Gbに沿う形状の当接面20cを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧側と低圧側とを仕切るシール構造であって、
縦断面構造で見た場合に、
第1シール面を有する一方材と、
前記第1シール面に設けられたシール溝と、
前記シール溝内に装着され、高圧側に配置されるシール材と、
前記シール溝内に装着され、低圧側に配置されるバックアップ材と、
前記一方材に対向配置され、前記シール材に当接することで前記シール構造を構成する第2シール面を有する他方材と、
を備え、
前記シール溝は、
高圧側において、前記第2シール面と一定距離を隔てた位置に設けられた高圧側溝底部と、
低圧側において、前記高圧側溝底部と連続し、前記高圧側溝底部から低圧側に向かうに従って前記第2シール面側に近接する低圧側溝底部と、
を有し、
前記シール材は、前記高圧側溝底部と前記第2シール面との間に配置され、
前記バックアップ材は、前記低圧側溝底部と前記第2シール面との間に配置され、
前記バックアップ材は、前記低圧側溝底部に対向する側において、前記低圧側溝底部に沿う形状の当接面を有する、
シール構造。
【請求項2】
前記バックアップ材は、前記第2シール面に対向する側において、低圧側に向かうに従って前記第2シール面から遠ざかる傾斜面である、
請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記低圧側溝底部は、円弧の一部により構成されている、
請求項1に記載のシール構造。
【請求項4】
前記第1シール面は、円筒状部材の外周面であり、
前記第2シール面は、ハウジングに設けられ、前記円筒状部材を収容し、前記第1シール面に接する有底の円筒状内周面であり、
前記シール溝は、前記円筒状部材の外周面に設けられる環状の溝であり、
前記シール材および前記バックアップ材は、環状の形態を有する、
請求項1に記載のシール構造。
【請求項5】
高圧側と低圧側とを仕切るシール構造に設けられるシール溝内に、シール材とともに用いられる環状の形態を有するバックアップ材であって、
当該バックアップ材の縦断面構造で見た場合の断面は、
第1面と、
前記第1面の半径方向の外側の端部から立ち上がる第2面と、
前記第1面の半径方向の内側の端部から立ち上がり、前記第2面に対向する第3面と、
前記第2面と前記第3面とを連結し、前記第1面に対向する第4面と、を含み、
前記第3面は、前記第4面側に向かうしたがって、前記第2面側に近接するように傾斜している、
バックアップ材。
【請求項6】
前記第3面は、内側に向かって膨出する湾曲面を含む、
請求項5に記載のバックアップ材。
【請求項7】
前記第2面は、前記第4面側に向かうしたがって、前記第3面側に近接するように傾斜している、
請求項5に記載のバックアップ材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シール構造およびバックアップ材に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉構造の一例として、ガス(高圧水素等)用のシール構造を開示する技術として、国際公開番号WO2004/061353号公報(特許文献1)、特許第4636281号公報(特許文献2)、特許第4949492号公報(特許文献3)、および、特許第5126462号公報(特許文献4)などに開示される技術が挙げられる。
【0003】
ここで、
図15から
図17を参照して、シール構造の一例として、シール溝の高圧側にシール用のOリングを配置し、低圧側にバックアップリングを配置した構造について説明する。
図15は、従来のシール構造(高圧作動前)を示す拡大断面図、
図16は、従来のシール構造(高圧作動後)を示す拡大断面図、
図17は、従来のシール構造(高圧作動後)の課題を示す拡大断面図である。
【0004】
図15を参照して、円筒形状のシャフト1Aが円筒状溝2Aに収容されている。シャフト1Aの外周面が第1シール面1aを構成する。円筒状溝2Aの内周面が第2シール面2aを構成する。シャフト1Aの貫通孔1hから円筒状溝2A内にガスが送り込まれることで、円筒状溝2A内が高圧状態となる。
【0005】
シャフト1Aの外周面には、第1シール面1aから内方に向かって凹む、環状のシール溝1Gが設けられている。シール溝1G内には、高圧側にシール用のOリング10Xが配置され、低圧側に、Oリング10Xを支持するバックアップリング40Xが配置されている。
図14に示す断面図では、変形していない状態で、Oリング10Xおよびバックアップリング40Xを図示している。
【0006】
図16を参照して、Oリング10Xおよびバックアップリング40Xが、シール溝1G内に収容された状態を示している。この状態では、Oリング10Xは、シール溝1Gの底部1Gsと第2シール面2aとに挟み込まれ楕円状に変形している。Oリング10Xには、この図では、ガスの圧力が高圧側(図の下側)からは、Oリング10Xには加わっていないため、Oリング10Xは、バックアップリング40X側には移動していない。
【0007】
図17を参照して、ガスの圧力が高圧側(図の下側)からOリング10Xに加わった状態を示している。Oリング10Xに高圧が加わった場合には、図示するように、Oリング10Xは、バックアップリング40X側に移動する。この際、バックアップリング40Xが低圧側(図の上側)からOリング10Xの移動を抑制することで、Oリング10Xによる高圧側と低圧側とを仕切るシール構造が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開番号WO2004/061353号公報
【特許文献2】特許第4636281号公報
【特許文献3】特許第4949492号公報
【特許文献4】特許第5126462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図17を参照して、従来のシール構造によれば、Oリング10Xに高圧が加わるとOリング10Xが、バックアップリング40X側に押し付けられる状態となる。バックアップリング40Xは、Oリング10Xよりも硬質の材料であるため、Oリング10Xに加圧力が加わり続けると、バックアップリング40Xとシール溝1Gの底部1Gsとの間に生じる隙間hに、Oリング10Xの一部が入り込む変形領域10yが形成されてしまう。
【0010】
Oリング10Xにこのような変形領域10yが形成されると、この変形領域10yを起点としてOリング10Xに亀裂等の破損が発生するおそれがある。
【0011】
この発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、シール材とバックアップ材とで構成されるシール構造において、シール材に高圧が加わった場合でも、シール材への亀裂等の破損の発生を抑制させることが可能な構成を備える、シール構造およびバックアップ材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]:この開示のシール構造においては、高圧側と低圧側とを仕切るシール構造であって、縦断面構造で見た場合に、第1シール面を有する一方材と、上記第1シール面に設けられたシール溝と、上記シール溝内に装着され、高圧側に配置されるシール材と、上記シール溝内に装着され、低圧側に配置されるバックアップ材と、上記一方材に対向配置され、上記シール材に当接することで上記シール構造を構成する第2シール面を有する他方材と、を備える、シール構造であって、以下の構成を備える。
【0013】
上記シール溝は、高圧側において、上記第2シール面と一定距離を隔てた位置に設けられた高圧側溝底部と、低圧側において、上記高圧側溝底部と連続し、上記高圧側溝底部から低圧側に向かうに従って上記第2シール面側に近接する低圧側溝底部と、を有し、上記シール材は、上記高圧側溝底部と上記第2シール面との間に配置され、上記バックアップ材は、上記低圧側溝底部と上記第2シール面との間に配置され、上記バックアップ材は、上記低圧側溝底部に対向する側において、上記低圧側溝底部に沿う形状の当接面を有する。
【0014】
[2]:[1]に記載のシール構造であって、上記バックアップ材は、上記第2シール面に対向する側において、低圧側に向かうに従って上記第2シール面から遠ざかる傾斜面である。
【0015】
[3]:[1]または[2]に記載のシール構造であって、上記低圧側溝底部は、円弧の一部により構成されている。
【0016】
[4]:[1]から[3]のいずれかに記載のシール構造であって、上記第1シール面は、円筒状部材の外周面であり、上記第2シール面は、ハウジングに設けられ、上記円筒状部材を収容し、上記第1シール面に接する有底の円筒状内周面であり、上記シール溝は、上記円筒状部材の外周面に設けられる環状の溝であり、上記シール材および上記バックアップ材は、環状の形態を有する。
【0017】
[5]:この開示のバックアップ材においては、高圧側と低圧側とを仕切るシール構造に設けられるシール溝内に、シール材とともに用いられる環状の形態を有するバックアップ材であって、当該バックアップ材の縦断面構造で見た場合の断面は、第1面と、上記第1面の半径方向の外側の端部から立ち上がる第2面と、上記第1面の半径方向の内側の端部から立ち上がり、上記第2面に対向する第3面と、上記第2面と上記第3面とを連結し、上記第1面に対向する第4面と、を含み、上記第3面は、上記第4面側に向かうしたがって、上記第2面側に近接するように傾斜している。
【0018】
[6]:[5]に記載のバックアップ材においては、上記第3面は、内側に向かって膨出する湾曲面を含む。
【0019】
[7]:[5]または[6]に記載のバックアップ材においては、上記第2面は、上記第4面側に向かうしたがって、上記第3面側に近接するように傾斜している。
【発明の効果】
【0020】
このシール構造およびバックアップ材によれば、シール材とバックアップ材とで構成されるシール構造において、シール材に高圧が加わった場合でも、シール材への亀裂等の破損の発生を抑制させることが可能な構成を備える、シール構造およびバックアップ材の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態1における密閉構造を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1におけるシール構造を示す部分拡大断面図である。
【
図3】実施の形態1におけるシール構造に採用されるシール溝を示す部分拡大断面図である。
【
図4】実施の形態1におけるバックアップリングの平面図である。
【
図6】実施の形態1におけるシール構造のシール状態を示す部分拡大断面図である。
【
図7】実施の形態1におけるシール構造のシール状態の変化を示す模式図である。
【
図8】実施の形態2におけるバックアップリングの平面図である。
【
図10】実施の形態3におけるバックアップリングの平面図である。
【
図12】実施の形態4におけるバックアップリングの平面図である。
【
図14】実施の形態5における密閉構造を示す断面図である。
【
図15】従来のシール構造(高圧作動前)を示す拡大断面図である。
【
図16】従来のシール構造(高圧作動後)を示す拡大断面図である。
【
図17】従来のシール構造(高圧作動後)の課題を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
各実施の形態におけるシール構造について、以下、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。以下の説明においては、説明の便宜上、上下の文言を用いて位置関係を明示しているが、上下の配置が天地逆になる構成、および、左右に配置される構成を排除するものではい。
【0023】
(実施の形態1)
図1から
図5を参照して、本実施の形態のシール構造について説明する。
図1は、シール構造100が採用された密閉構造1000を示す断面図、
図2は、シール構造100を示す部分拡大断面図、
図3は、シール構造100に採用されるシール溝を示す部分拡大断面図、
図4は、バックアップリングの平面図、
図5は、
図4中のV-V線矢視断面図である。
【0024】
(密閉構造1000)
図1を参照して本実施の形態の密閉構造1000は、ガス(高圧水素等)用のシール構造が採用された構造であり、ヘッダ1とハウジング2とを有する。ヘッダ1には、ハウジング2側に延びる円筒形状のシャフト1Aが設けられている。シャフト1Aの中心部には、ガスが送り込まれる貫通孔1hが設けられている。
【0025】
ハウジング2には、シャフト1Aが収容される有底の円筒状溝2Aが設けられている。シャフト1Aの外周面が一方材側に設けられる第1シール面1aを構成する。円筒状溝2Aの内周面が他方材側に設けられる第2シール面2aを構成する。シャフト1Aの貫通孔1hから円筒状溝2A内にガスが送り込まれることで、円筒状溝2A内が高圧状態となる。
【0026】
ヘッダ1とハウジング2とは、Oリング30を介在してボルト3により締結されている。これにより、以下に示すシール構造100の気密性が保たれている。
【0027】
(シール構造100)
図2を参照して、シール構造100の詳細について説明する。シャフト1Aの外周面には、第1シール面1aから内方に向かって凹む、環状のシール溝1Gが設けられている。シール溝1G内の高圧側には、シール材としてシールリングが配置され、本実施の形態では、Oリング10が配置されている。シール溝1G内の低圧側には、バックアップ材としてバックアップリング20が配置されている。
図2に示す断面図では、変形していない状態で、Oリング10およびバックアップリング20を図示している。
【0028】
Oリング10の断面形状は一般的な円形形状であり、市販のOリングを用いることができる。なお、シールリングとして、市販のOリングに代わり、Uパッキンなどの固定用途のシール材を用いてもよい。バックアップリング20の材質は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、POM(ポリオキシメチレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などOリング10の材質よりも硬く、シャフト1Aの材質よりも柔らかい材質を用いるとよい。バックアップリング20の断面形状の詳細およびシール構造100の機能については、後述する。
【0029】
(シール溝1Gの断面形状)
図3を参照して、シール溝1Gの断面形状について説明する。
図3の断面は、シャフト1Aの軸方向を縦方向とした場合に、軸を含む平面で切断した縦断面で見た場合の一方の溝の断面を示す。
【0030】
シール溝1Gは、高圧側において、第2シール面2aと一定距離を隔てた位置に設けられた高圧側溝底部1Gaと、低圧側において、高圧側溝底部1Gaと連続し、高圧側溝底部1Gaから低圧側に向かうに従って第2シール面2a側に近接する低圧側溝底部1Gbと、を有している。低圧側溝底部1Gbの低圧側の端部は、第1シール面1aに交差している。
【0031】
低圧側溝底部1Gbは、半径Raの円弧の一部により構成されている。高圧側溝底部1Gaの深さをWとした場合には、半径Raは、Ra>Wを満足しているとよい。
【0032】
(バックアップリング20の形状)
図4および
図5を参照して、バックアップリング20の全体形状および断面形状について説明する。バックアップリング20は環状形状を有する。バックアップリング20は円筒状のシャフト1Aのシール溝1Gに装着するためにカット面20kが設けられている。
【0033】
バックアップリング20の縦断面形状は、高圧側(Oリング10側)に位置する底面20a、第2シール面2a側に位置する側面20b、低圧側溝底部1Gbに対向する側において、低圧側溝底部1Gbに沿う形状の当接面20cと、底圧側に位置する上面20dと、を有する、略矩形形状である。
【0034】
当接面20cの低圧側溝底部1Gbに沿う形状とは、後述するが、当接面20cと低圧側溝底部1Gbとの間に若干の隙間が生じる場合を含むものとする。
図3に示した低圧側溝底部1Gbの半径RaをR2.6mmとした場合に、当接面20cの半径Rbを、R2.4mmの曲面としている。
【0035】
底面20aが、第1面に相当し、側面20bが、底面20aの半径方向の外側の端部から立ち上がる第2面に相当する。当接面20cが、底面20aの半径方向の内側の端部から立ち上がり、側面20bに対向する第3面に相当する。上面20dが、側面20bと当接面20cとを連結し、底面20aに対向する第4面に相当する。当接面20cは、上面20d側に向かうしたがって、側面20b側に近接するように傾斜している。具体的には、当接面20cは、内側に向かって膨出する湾曲面を含む。
【0036】
本実施の形態のバックアップリング20によれば、第2シール面2a側に位置する側面20bが、底面20aから上面20dに向けて半径方向の内側に傾斜している。具体的には、側面20b、上面20d側に向かうしたがって、当接面20c側に近接するように傾斜している。
【0037】
本実施の形態では、第2シール面2aと側面20bとのなす角度(α)は、約85度である。その結果、バックアップリング20の底面20a側の直径φAと、上面20d側の直径φBとは、直径φA>直径φBの関係となる。
【0038】
(シール構造100の機能)
次に、
図6および
図7を参照して、シール構造100の機能について説明する。
図6は、シール構造100のシール状態を示す部分拡大断面図、
図7は、シール構造100のシール状態の変化を示す模式図である。
【0039】
図6を参照して、Oリング10およびバックアップリング20が、シール溝1G内に収容された状態を示している。この状態では、Oリング10は、シール溝1Gの底部1Gsと第2シール面2aとに挟み込まれ楕円状に変形している。Oリング10には、この図では、ガスの圧力が高圧側(図の下側)からは、Oリング10には加わっていないため、Oリング10は、バックアップリング20側には移動していない。
【0040】
図7を参照して、Oリング10Xにガスの圧力が徐々に高まった状態を、状態I、状態IIおよび状態IIIとして示す。状態Iは、
図6に示す状態と同じである。状態IIIがバックアップリング20への加圧力が最も高い状態を示している。
【0041】
状態Iにおいては、バックアップリング20には、Oリング10から大きな圧力は、加わっていない。そのため、側面20bと第1シール面1aとの間にはクリアランスがあり、底面20aのラインL1は、移動(回転)していない。
【0042】
状態IIにおいては、バックアップリング20に、Oリング10から圧力が加わり始めている。そのため、当接面20cが低圧側溝底部1Gbに沿う形状を有していることから、低圧側溝底部1Gbに沿ってバックアップリング20が移動(回転)を開始する。その結果、側面20bと第1シール面1aとの間のクリアランスは小さくなり、底面20aのラインL1が、図示において移動(時計回転方向)を開始する。
【0043】
状態IIIにおいては、バックアップリング20に、Oリング10Xからさらに圧力が加わっている。そのため、低圧側溝底部1Gbに沿ってバックアップリング20がさらに移動(時計回転方向)する。その結果、側面20bと第1シール面1aとの間のクリアランスはなくなり、底面20aのラインL1が、図示においてにさらに移動(時計回転方向)する。
【0044】
このように、バックアップリング20にOリング10から圧力が加わると、低圧側溝底部1Gbに沿ってバックアップリング20が移動(回転)する。その結果、バックアップリング20と低圧側溝底部1Gbとの間に従来構造に示したような隙間が生じないため、バックアップリング20に変形領域が発生することがない。その結果、バックアップリング20の破損の発生を抑制することが可能となる。
【0045】
以上、本実施の形態によれば、バックアップリング20が収容されるシール溝1Gの低圧側の底部(低圧側溝底部1Gb)をR形状とし、この底部に対向するバックアップリング20の当接面20cを、低圧側溝底部1Gbに沿う形状とすることで、バックアップリング20とシール溝1Gとの間に隙間が発生しない。その結果、Oリング10に高圧が加わった場合でも、Oリング10の変形を抑制することができる。
【0046】
以下に示す各実施の形態では、バックアップリングの断面形状として他の形態について説明する。
【0047】
(実施の形態2:バックアップリング20A)
図8および
図9を参照して、他の形態のバックアップリング20Aの全体形状および断面形状について説明する。
図8は、バックアップリング20Aの平面図、
図9は、
図8中のIX-IX線矢視断面図である。基本的な構成は、上記バックアップリング20と同じであることから、以下では、相違点についてのみ説明する。
【0048】
上記バックアップリング20は、断面形状で見た場合に、底面20a、側面20b、当接面20c、および、上面20dを有する略矩形形状であったが、バックアップリング20Aは、上面20dが設けられず、曲面の当接面20cが側面20bに交差する、略三角形形状である。
【0049】
この断面形状を有するバックアップリング20Aにおいても、上記バックアップリング20と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
(実施の形態3:バックアップリング20B)
図10および
図11を参照して、さらに他の形態のバックアップリング20Bの全体形状および断面形状について説明する。
図10は、バックアップリング20Bの平面図、
図11は、
図10中のXI-XI線矢視断面図である。基本的な構成は、上記バックアップリング20Aと同じであることから、以下では、相違点についてのみ説明する。
【0051】
上記バックアップリング20Aは、曲面の当接面20cが側面20bに交差しているが、本実施の形態の当接面20cは、高圧側に曲面部20c1が設けられ、低圧側に直線部20c2が設けられている。
【0052】
この構成であっても、曲面部20c1が低圧側溝底部1Gbに沿って移動(回転)することができるため、バックアップリング20Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
(実施の形態4:バックアップリング20C)
図12および
図13を参照して、さらに他の形態のバックアップリング20Cの全体形状および断面形状について説明する。
図12は、バックアップリング20Cの平面図、
図13は、
図12中のXIII-XIII線矢視断面図である。基本的な構成は、上記バックアップリング20Aと同じであることから、以下では、相違点についてのみ説明する。
【0054】
本実施の形態の上記バックアップリング20Cの当接面20cは、曲率の異なる曲面部20c1(半径Ra)と、曲面部20c3(半径Rb)を有している。
【0055】
この構成であっても、当接面20cが低圧側溝底部1Gbに沿って移動(回転)することができるため、バックアップリング20Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
上記各実施の形態においては、シャフト1Aにシール溝1Gを設け、シール溝1Gにシール材およびバックアップ材を設ける構成についてせつめいしているが、たとえば、摺動するロッドとハウジングとの間に上記構成のシール構造を採用する場合には、ハウジング側にシール溝を設ける構成であってもよい。
【0057】
(実施の形態5:密閉構造1000A)
図14を参照して、上記密閉構造1000とは異なる密閉構造1000Aに、上述したシール構造100を適用した場合について説明する。
図14は、密閉構造1000Aを示す断面図である。
図14に示す断面図では、変形していない状態で、Oリング10およびバックアップリング20を図示している。
【0058】
この密閉構造1000Aは、中央に管路200hが設けられたハウジング200に設けられた環状フランジ200fの平面上に、環状のシール溝1Gが設けられている。環状フランジ200fの平面が第1シール面200aを構成し、プレート300の下面が第2シール面300aを構成する。プレート300は図示しない位置で環状フランジ200fに固定されている。
【0059】
管路200hが高圧側となるため、シール溝1Gにおいて、管路200h側に高圧側溝底部1Gaが設けられ、高圧側溝底部1Gaの外側に低圧側溝底部1Gbが設けられる。管路200h側にOリング10が配置され、Oリング10の外側にバックアップリング20が配置される。バックアップリング20の形状には、上記実施の形態2から実施の形態4に示したバックアップリング20A、バックアップリング20B、および、バックアップリング20Cを用いてもよい。
【0060】
本実施の形態における密閉構造1000Aにおいても、上記実施の形態1における密閉構造1000と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 ヘッダ、1A シャフト、1G シール溝、1Ga 高圧側溝底部、1Gb 低圧側溝底部、1Gs,20a 底面、1a,200a 第1シール面、1h 貫通孔、2,200 ハウジング、2A 円筒状溝、2a,300a 第2シール面、3 ボルト、10,10X,30 Oリング、10y 変形領域、20,20A,20B,20C,40X バックアップリング、20b 側面、20c 当接面、20c1,20c3 曲面部、20c2 直線部、20d 上面、20k カット面、50,300 プレート、200h 管路、200f 環状フランジ、100 シール構造、200h 管路、1000,1000A 密閉構造。