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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117105
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】伸縮可撓継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/12 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F16L27/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022995
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】511089583
【氏名又は名称】日本ニューロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金丸 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】西 勇也
(72)【発明者】
【氏名】岩本 泰一
【テーマコード(参考)】
3H104
【Fターム(参考)】
3H104JA07
3H104JA08
3H104KB17
3H104LB04
3H104LB18
3H104LG07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軸方向変位のみを確実に行うベローズと、軸方向の伸縮を完全に禁止し軸曲げ方向変位のみを確実に行うベローズとを備えた伸縮可撓継手を提供する。
【解決手段】伸縮可撓継手の本管10は、軸方向中央領域に位置する中央ベローズ部13と、一方側ベローズ部14と、他方側ベローズ部15とを備える。伸縮可撓継手は、軸方向変位専用機構20と、軸曲げ方向変位のみに限定する軸曲げ変位専用機構30とを備える。軸曲げ変位専用機構は、第1リング31と、第1固定部材32と、第2固定部材と、第1ピン34と、第2ピンとを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の途中に配設される伸縮可撓継手であって、
軸方向両端に前記管路に接続される一方端接続部および他方端接続部を有する本管を備え、
前記本管は、
軸方向中央領域に位置する中央ベローズ部と、
間に直管部を介在させて前記中央ベローズ部と前記一方端接続部との間に位置する一方側ベローズ部と、間に直管部を介在させて前記中央ベローズ部と前記他方端接続部との間に位置する他方側ベローズ部とを備え、
前記伸縮可撓継手は、前記中央ベローズ部の動きを軸方向変位のみに限定する軸方向変位専用機構と、前記一方側ベローズ部の動きを軸曲げ方向変位のみに限定する第1軸曲げ変位専用機構と、前記他方側ベローズ部の動きを軸曲げ方向変位のみに限定する第2軸曲げ変位専用機構とを備え、
前記第1軸曲げ変位専用機構は、前記一方側ベローズ部の周りを取り囲むように配置された第1リングと、前記一方側ベローズ部と前記一方端接続部との間に位置する直管部に固定された第1固定部材と、前記一方側ベローズ部と前記中央ベローズ部との間に位置する直管部に固定された第2固定部材と、径方向に延び、前記第1固定部材と前記第1リングとを回転可能に連結する第1ピンと、径方向に延び、前記第1ピンとは周方向にずれた位置で前記第2固定部材と前記第1リングとを回転可能に連結する第2ピンとを備え、
前記第2軸曲げ変位専用機構は、前記他方側ベローズ部の周りを取り囲むように配置された第2リングと、前記他方側ベローズ部と前記他方端接続部との間に位置する直管部に固定された第3固定部材と、前記他方側ベローズ部と前記中央ベローズ部との間に位置する直管部に固定された第4固定部材と、径方向に延び、前記第3固定部材と前記第2リングとを回転可能に連結する第3ピンと、径方向に延び、前記第3ピンとは周方向にずれた位置で前記第4固定部材と前記第2リングとを回転可能に連結する第4ピンとを備える、伸縮可撓継手。
【請求項2】
前記軸方向変位専用機構は、前記中央ベローズ部の周りを取り囲むように配置された外筒と、外筒の軸方向両端に固定され、前記中央ベローズ部と前記一方側および他方側ベローズ部との間に位置する直管部の外周面に近接するように径方向内方に延びる外筒リングと、前記中央ベローズ部と前記各外筒リングとの間に位置する直管部に固定され、前記外筒の内周面に近接するように径方向外方に延びる本管リングとを備える、請求項1に記載の伸縮可撓継手。
【請求項3】
前記中央ベローズ部は、直管部を間に介在させて一方側に位置する一方側中央ベローズ部および他方側に位置する他方側中央ベローズ部とを有する、請求項1または2に記載の伸縮可撓継手。
【請求項4】
前記外筒は、前記一方側中央ベローズ部と前記他方側中央ベローズ部との間に位置する直管部に溶接固定されている、請求項3に記載の伸縮可撓継手。
【請求項5】
前記第1ピンは、円周方向に180度離れて2個あり、
前記第2ピンは、円周方向に180度離れて2個あり、
前記2個の第1ピンを結ぶ径方向に延びる軸線と、前記2個の第2ピンを結ぶ径方向に延びる軸線とは直交した位置関係にあり、
前記第3ピンは、円周方向に180度離れて2個あり、
前記第4ピンは、円周方向に180度離れて2個あり、
前記2個の第3ピンを結ぶ径方向に延びる軸線と、前記2個の第4ピンを結ぶ径方向に延びる軸線とは直交した位置関係にある、請求項1または2に記載の伸縮可撓継手。
【請求項6】
前記第1固定部材は、直管部から径方向外方に延びる第1円板部材と、前記第1円板部材の外方端から前記第1リングの外面上に重なるように軸方向に延びる第1軸方向突出部材とを有し、
前記第1ピンは、前記第1軸方向突出部材と前記第1リングとを回転可能に連結しており、
前記第2固定部材は、直管部から径方向外方に延びる第2円板部材と、前記第2円板部材の外方端から前記第1リングの外面上に重なるように軸方向に延びる第2軸方向突出部材とを有し、
前記第2ピンは、前記第2軸方向突出部材と前記第1リングとを回転可能に連結しており、
前記第3固定部材は、直管部から径方向外方に延びる第3円板部材と、前記第3円板部材の外方端から前記第2リングの外面上に重なるように軸方向に延びる第3軸方向突出部材とを有し、
前記第3ピンは、前記第3軸方向突出部材と前記第2リングとを回転可能に連結しており、
前記第4固定部材は、直管部から径方向外方に延びる第4円板部材と、前記第4円板部材の外方端から前記第2リングの外面上に重なるように軸方向に延びる第4軸方向突出部材とを有し、
前記第4ピンは、前記第4軸方向突出部材と前記第2リングとを回転可能に連結している、請求項5に記載の伸縮可撓継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管路の途中に配設される伸縮可撓継手に関し、特に気密性または水密性を保ちながら軸方向変位、軸直角方向変位および軸曲げ方向変位を吸収することができるベローズを有する伸縮可撓継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1995年に発生した兵庫県南部地震における被害状況を勘案し、土木・建築分野において耐震設計基準の抜本的見直しが行われており、現在水道管路をはじめとするあらゆる管路の耐震化が進められている。
【0003】
配管の熱伸縮や地震等による変位を受けた管路を破壊から保護する目的で設置される継手の一つとして、ベローズ型伸縮可撓継手がある。変形素子であるベローズは、ステンレス等のパイプを蛇腹状に成形したものであり、気密性または水密性を保ちつつ変形して管路に生じた変位を吸収する。このベローズは、一般に、軸方向変位、軸直角方向変位および軸曲げ方向変位の3つの変位成分を複合的に吸収することができる。
【0004】
しかしながら、伸縮可撓継手に要求される耐震性能は年々厳しくなる傾向にあり、従前よりも大きな変位量に対応できる性能が求められている。
【0005】
懸念すべき点は、レベル2地震動(発生する可能性がある最大級の地震動)が配管系の供用期間中に発生した場合、上述した3つの変位が複合的かつ大きな変位量としてベローズに作用し、このベローズに局所的な変位の偏りが生じ破損に至る可能性があることである。
【0006】
特開平11-63338号公報は、振動時の反力が小さくて変位量吸収の動きが小さく、配管の軸方向変位、軸直角方向変位および軸回転方向変位を1個で吸収できるようにした伸縮管継手を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-63338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された伸縮管継手は、両端面にフランジを備えた管の途中の中央部と両端部をベローズで構成し、両端部のベローズの外側にゴムを充填して被覆し、中央部のベローズの一端が接続されている管端外周にストッパーフランジを固設し、ベローズの他端が接続されている管端外周にベローズを被う外筒の一端を固定し、且つ外筒の他端を管が可動し得るように嵌装している。
【0009】
上記構成の伸縮管継手では、配管の軸方向の変位すなわち配管の伸縮は、中央部のベローズの伸縮により吸収される。また、配管の軸直角方向の変位は、両端部のベローズの互いに対向する半円周側の伸縮動作による伸縮管継手の傾きにより吸収される。
【0010】
両端部のベローズが専ら軸直角方向変位を吸収するようにするために、両端部のベローズの外側に、ポリブタジエンゴムを充填して、外面が断面扁平台形状となるように被覆している。
【0011】
特許文献1に開示された伸縮管継手では、両端部のベローズをゴムで被覆することにより、両端部のベローズが軸直角方向にのみ変位することを狙っているが、不十分である。ゴムは力が加わったときに弾性変形するので、両端部のベローズに軸方向に作用する力が加わった場合、ゴムの弾性変形により両端部のベローズは軸方向にも多少変位してしまう。また、ベローズの外面の波間にゴムが充填されているので、両端部のベローズの軸直角方向の変位又は軸曲げ方向の変位に対してゴムの存在が抵抗因子として作用する可能性がある。
【0012】
本願発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、軸方向変位のみを確実に行うベローズと、軸方向の伸縮を完全に禁止し軸曲げ方向変位のみを確実に行うベローズとを備えた伸縮可撓継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、管路の途中に配設される伸縮可撓継手であって、軸方向両端に管路に接続される一方端接続部および他方接続部を有する本管を備える。
【0014】
本管は、軸方向中央領域に位置する中央ベローズ部と、間に直管部を介在させて中央ベローズ部と一方端接続部との間に位置する一方側ベローズ部と、間に直管部を介在させて中央ベローズ部と他方端接続部との間に位置する他方側ベローズ部とを備える。
【0015】
伸縮可撓継手は、さらに、中央ベローズ部の動きを軸方向変位のみに限定する軸方向変位専用機構と、一方側ベローズ部の動きを軸曲げ方向変位のみに限定する第1軸曲げ変位専用機構と、他方側ベローズ部の動きを軸曲げ方向変位のみに限定する第2軸曲げ変位専用機構とを備える。
【0016】
第1軸曲げ変位専用機構は、一方側ベローズ部の周りを取り囲むように配置された第1リングと、一方側ベローズ部と一方端接続部との間に位置する直管部に固定された第1固定部材と、一方側ベローズ部と中央ベローズ部との間に位置する直管部に固定された第2固定部材と、径方向に延び、第1固定部材と第1リングとを回転可能に連結する第1ピンと、径方向に延び、第1ピンとは周方向にずれた位置で第2固定部材と第1リングとを回転可能に連結する第2ピンとを備える。
【0017】
第2軸曲げ変位専用機構は、他方側ベローズ部の周りを取り囲むように配置された第2リングと、他方側ベローズ部と他方端接続部との間に位置する直管部に固定された第3固定部材と、他方側ベローズ部と中央ベローズ部との間に位置する直管部に固定された第4固定部材と、径方向に延び、第3固定部材と第2リングとを回転可能に連結する第3ピンと、径方向に延び、第3ピンとは周方向にずれた位置で第4固定部材と第2リングとを回転可能に連結する第4ピンとを備える。
【0018】
本発明の一実施形態では、軸方向変位専用機構は、中央ベローズ部の周りを取り囲むように配置された外筒と、外筒の軸方向両端に固定され、中央ベローズ部と一方側および他方側ベローズ部との間に位置する直管部の外周面に近接するように径方向内方に延びる外筒リングと、中央ベローズ部と各外筒リングとの間に位置する直管部に固定され、外筒の内周面に近接するように径方向外方に延びる本管リングとを備える。
【0019】
好ましい実施形態では、中央ベローズ部は、直管部を間に介在させて一方側に位置する一方側中央ベローズ部および他方側に位置する他方側中央ベローズ部とを有する。この場合、好ましくは、外筒は、一方側中央ベローズ部と他方側中央ベローズ部との間に位置する直管部に溶接固定されている。
【0020】
好ましい実施形態では、第1ピンは、円周方向に180度離れて2個あり、第2ピンは、円周方向に180度離れて2個ある。そして、2個の第1ピンを結ぶ径方向に延びる軸線と、2個の第2ピンを結ぶ径方向に延びる軸線とは直交した位置関係にある。また、第3ピンは、円周方向に180度離れて2個あり、第4ピンは、円周方向に180度離れて2個ある。そして、2個の第3ピンを結ぶ径方向に延びる軸線と、2個の第4ピンを結ぶ径方向に延びる軸線とは直交した位置関係にある。
【0021】
好ましい実施形態では、第1固定部材は、直管部から径方向外方に延びる第1円板部材と、1円板部材の外方端から第1リングの外面上に重なるように軸方向に延びる第1軸方向突出部材とを有する。第1ピンは、第1軸方向突出部材と第1リングとを回転可能に連結している。第2固定部材は、直管部から径方向外方に延びる第2円板部材と、第2円板部材の外方端から第1リングの外面上に重なるように軸方向に延びる第2軸方向突出部材とを有する。第2ピンは、第2軸方向突出部材と第1リングとを回転可能に連結している。
【0022】
さらに、第3固定部材は、直管部から径方向外方に延びる第3円板部材と、第3円板部材の外方端から第2リングの外面上に重なるように軸方向に延びる第3軸方向突出部材とを有する。第3ピンは、第3軸方向突出部材と第2リングとを回転可能に連結している。第4固定部材は、直管部から径方向外方に延びる第4円板部材と、第4円板部材の外方端から第2リングの外面上に重なるように軸方向に延びる第4軸方向突出部材とを有する。第4ピンは、第4軸方向突出部材と第2リングとを回転可能に連結している。
【発明の効果】
【0023】
上記構成の本発明に係る伸縮可撓継手よれば、軸方向中央領域に位置する中央ベローズ部は軸方向変位のみが可能となり、軸方向両端領域に位置する一方側ベローズ部および他方側ベローズ部は軸曲げ方向変位のみが可能となる構成なので、伸縮可撓継手に例えば地震動に起因する大きな複合的な力が加わった場合でも、その複合的な力がベローズ単体に作用することがない。中央ベローズ部が軸方向に伸縮して複合的な力の軸方向成分を吸収し、一方側および他方側ベローズ部が軸曲げ方向に変位して複合的な力の軸曲げ方向成分および軸直角方向成分を吸収する。したがって、各ベローズ部内で変形の偏りが生じることがなく、健全な変形による変位吸収が可能となる。
【0024】
直線管路に本発明に係る伸縮可撓継手を1台設置しておけば、管路に生じるあらゆる方向の変位をこの1台で吸収できるので、配管系に3次元的な屈曲部を設ける必要がなく、配管の省スペース化に大いに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る伸縮可撓継手の正面図である。
図2図1に示した伸縮可撓継手の縦断面図である。
図3図1の線III-IIIに沿って見た断面図である。
図4図1に示した伸縮可撓継手の半縦断面図である。
図5図1に示した伸縮可撓継手の動作の変化を示す図であり、(A)は変化前の状態を示し、(B)は軸方向に縮小変位した状態を示し、(C)は軸方向に伸長変位した状態を示し、(D)は軸曲げ方向に変位した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に従った伸縮可撓継手は、地上または高架等に延在する管路の途中に配設されるものである。図1図4を参照して、本発明の一実施形態に係る伸縮可撓継手の構成を説明する。
【0027】
伸縮可撓継手は、軸方向一方端に管路に接続される一方端接続部11を有し、軸方向他方端に管路に接続される他方端接続部12を有する本管10を備える。本管10の材質は、例えばステンレス鋼である。図示した実施形態では、一方端接続部および他方端接続部はフランジである。一方端接続部および他方端接続部の他の形態として、管路と突き合わせ溶接されるパイプエンドや、鋼製メカニカル挿口などであってもよい。
【0028】
以下に記載する実施形態では、一方端接続部および他方端接続部の一例としてフランジを用いた場合を説明する。
本管10は、軸方向中央領域に位置する中央ベローズ部13と、間に直管部を介在させて中央ベローズ部13と一方端フランジ11との間に位置する一方側ベローズ部14と、間に直管部を介在させて中央ベローズ部13と他方端フランジ12との間に位置する他方側ベローズ部15とを備える。ベローズは、例えばステンレス鋼製のパイプを蛇腹状に成形したものであり、気密性または水密性を保って伸縮変形をする。
【0029】
ベローズは、本来、軸方向、軸直角方向および軸曲げ方向に変位可能であるが、本実施形態の伸縮可撓継手では、中央ベローズ部13は、軸方向変位のみが可能であり、一方側および他方側ベローズ部14,15は、軸曲げ方向の変位のみが可能となっている。言い換えれば、中央ベローズ部13は、軸曲げ方向変位ができないようにされており、一方側および他方側ベローズ部14,15は、軸方向変位ができないようにされている。なお、本明細書では、「軸曲げ方向」と「軸直角方向」とを同一視して、両者を「軸曲げ方向」として統一して使用する。
【0030】
伸縮可撓継手は、中央ベローズ部13の動きを軸方向変位のみに限定する軸方向変位専用機構20と、一方側ベローズ部14の動きを軸曲げ方向変位のみに限定する第1軸曲げ変位専用機構30と、他方側ベローズ部15の動きを軸曲げ方向変位のみに限定する第2軸曲げ変位専用機構40とを備える。
【0031】
第1軸曲げ変位専用機構30は、一方側ベローズ部14の周りを離れて取り囲むように配置された第1リング31と、一方側ベローズ部14と一方端フランジ11との間に位置する直管部に固定された第1固定部材32と、一方側ベローズ部14と中央ベローズ部13との間に位置する直管部に固定された第2固定部材33と、径方向に延び、第1固定部材32と第1リング31とを回転可能に連結する第1ピン34と、径方向に延び、第1ピン34とは周方向にずれた位置で第2固定部材33と第1リング31とを回転可能に連結する第2ピン35とを備える。
【0032】
図示した実施形態では、第1固定部材32は、直管部から径方向外方に延びる第1円板部材32aと、第1円板部材32aの外方端から第1リング31の外面上に重なるように軸方向に延びる第1軸方向突出部材32bとを有する。第1軸方向突出部材32bは、円周方向に180度離れて2個設けられている。第1ピン34は、各第1軸方向突出部材32bと第1リング31とを回転可能に連結する。
【0033】
第2固定部材33は、直管部から径方向外方に延びる第2円板部材33aと、第2円板部材33aの外方端から第1リング31の外面上に重なるように軸方向に延びる第2軸方向突出部材33bとを有する。第2軸方向突出部材33bは、円周方向に180度離れて2個設けられている。第2ピン35は、各第2軸方向突出部材33bと第1リング31とを回転可能に連結する。
【0034】
2個の第1ピン34を結ぶ径方向に延びる軸線と、2個の第2ピン35を結ぶ径方向に延びる軸線とは直交した位置関係にある。
【0035】
第2軸曲げ変位専用機構40は、他方側ベローズ部15の周りを離れて取り囲むように配置された第2リング41と、他方側ベローズ部15と他方端フランジ12との間に位置する直管部に固定された第3固定部材42と、他方側ベローズ部15と中央ベローズ部13との間に位置する直管部に固定された第4固定部材43と、径方向に延び、第3固定部材42と第2リング41とを回転可能に連結する第3ピン44と、径方向に延び、第3ピン44とは周方向にずれた位置で第4固定部材43と第2リング41とを回転可能に連結する第4ピン45とを備える。
【0036】
図示した実施形態では、第3固定部材42は、直管部から径方向外方に延びる第3円板部材42aと、第3円板部材42aの外方端から第2リング41の外面上に重なるように軸方向に延びる第3軸方向突出部材42bとを有する。第3軸方向突出部材42bは、円周方向に180度離れて2個設けられている。第3ピン44は、各第3軸方向突出部材42bと第2リング41とを回転可能に連結する。
第4固定部材43は、直管部から径方向外方に延びる第4円板部材43aと、第4円板部材43aの外方端から第2リング41の外面上に重なるように軸方向に延びる第4軸方向突出部材43bとを有する。第4軸方向突出部材43bは、円周方向に180度離れて2個設けられている。第4ピン45は、各第2軸方向突出部材43bと第2リング41とを回転可能に連結する。
2個の第3ピン44を結ぶ径方向に延びる軸線と、2個の第4ピン45を結ぶ径方向に延びる軸線とは直交した位置関係にある。
【0037】
第1軸曲げ変位専用機構30と第2軸曲げ変位専用機構40とは、実質的に同じ構造で同じ動作を行うものであるので、以下には第1軸曲げ変位専用機構30の動作説明を行い、第2軸曲げ変位専用機構40の動作説明を省略する。
【0038】
一方側ベローズ部14の周りを取り囲む第1リング31と、第1ベローズ部14の両側に位置する本管10の直管部に固定された第1および第2軸方向突出部材32b、33bとを回転可能に連結する第1および第2ピン34,35に注目すると、各ピン34,35とそれらが連結されている直管部との距離は、一定で不変である。したがって、一方側ベローズ部14の両側に位置する直管部間の距離は実質的に一定であり、一方側ベローズ部14の軸方向伸縮動作を禁止する。
【0039】
他方、第1ピン34と第2ピン35とは、円周方向にずれて位置しているので、一方側ベローズ部14の軸曲げ方向の伸縮動作は可能である。例えば、図2を参照すると、一方側ベローズ部14に反時計回りの軸曲げ力が作用すると、一方側ベローズ部14の図において上部領域の波形状部分が伸長し、下部領域の波形状部分が縮小する。一方側ベローズ部14のスムーズな軸曲げ方向の変位を可能にするために、第1ピン34と第2ピン35とは円周方向に90度ずれた位置関係とするのが好ましい。言い換えれば、2個の第1ピン34を結ぶ径方向に延びる軸線と、2個の第2ピン35を結ぶ径方向に延びる軸線とは、直交した位置関係となる。
【0040】
次に、軸方向変位専用機構20について説明する。軸方向変位専用機構20は、中央ベローズ部13の周りを取り囲むように配置された外筒21と、外筒21の軸方向両端に固定され、中央ベローズ部13と一方側および他方側ベローズ部14,15との間に位置する直管部の外周面に近接するように径方向内方に延びる外筒リング22と、中央ベローズ部13と各外筒リング22との間に位置する直管部に固定され、外筒21の内周面に近接するように径方向外方に延びる本管リング23とを備える。
【0041】
外筒リング22の基端は外筒21に溶接固定されており、その先端は直管部の外周面に近接している。本管リング23の基端は直管部に溶接固定されており、その先端は外筒21の内周面に近接している。外筒リング22の先端と直管部との間の隙間の大きさ、および本管リング23の先端と外筒21の内周面との間の隙間の大きさは、外筒21に対する直管部の軸方向への相対移動を許容するが、軸曲げ方向の動きを禁止するように選ばれる。
【0042】
図示した好ましい実施形態では、中央ベローズ部13は、直管部を間に介在させて一方側に位置する一方側中央ベローズ部13aと、他方側に位置する他方側中央ベローズ部13bとを有する。一方側中央ベローズ部13aと他方側中央ベローズ部13bとの間の直管部には、径方向に延びる例えば円形または扇形の接続板24が固定されている。この接続板24の径方向内端は直管部に溶接固定され、径方向外端は外筒21の内周面に溶接固定されている。
【0043】
軸方向変位専用機構20は、中央ベローズ部13の両側に位置する直管部と外筒21との間の相対的な移動を軸方向のみに限定し、軸曲げ方向の移動を禁止する。そのため、中央ベローズ部13は、軸方向への伸縮動作のみが可能となり、軸曲げ方向の伸縮動作は禁止される。
【0044】
中央ベローズ部13に対して軸方向に大きな力が加わると、中央ベローズ部13は軸方向に伸縮する。その際、中央ベローズ部13の一部のみが局所的に大きく変位するのであれば、ベローズの損傷を招くおそれがある。図示した実施形態では、中央ベローズ部13が一方側中央ベローズ部13aと他方側中央ベローズ部13bとに分かれ、両者の間に位置する直管部が外筒21の内周面に固定されている。したがって、中央ベローズ部13に大きな軸方向力が加わった場合、その力を確実に一方側および他方側中央ベローズ部13a,13bに分散させることができるので、中央ベローズ部13の損傷を抑制できる。
【0045】
図5は、本発明の実施形態の伸縮可撓継手の動作の変化を示している。図5(A)は、変化前の状態を示している。伸縮可撓継手に軸方向の圧縮力が加わると、図5(B)に示すように、中央ベローズ部13のみが軸方向に縮小するように変位する。逆に伸縮可撓継手に軸方向の引張力が作用すると、図5(C)に示すように、中央ベローズ部13のみが軸方向に伸長するように変位する。
【0046】
伸縮可撓継手に軸方向の力が加わっても、一方側ベローズ部14および他方側ベローズ部15は、軸方向の伸縮動作を行わず、軸方向変位は生じない。
【0047】
伸縮可撓継手に軸曲げ方向の大きな力が加わった場合には、図5(D)に示すように、一方側ベローズ部14および他方側ベローズ部15が軸曲げ方向に変位して力を吸収する。その際、中央ベローズ部13は軸曲げ方向に変位していない。
【0048】
以上のように、本発明の実施形態に係る伸縮可撓継手によれば、中央ベローズ部の変位を軸方向にのみ限定し、一方側ベローズ部および他方側ベローズ部の変位を軸曲げ方向にのみ限定しているので、一つのベローズ部に複合的な変位動作を行わせない。ただ、伸縮可撓継手全体としてみれば、軸方向に作用する大きな力および軸曲げ方向に作用する大きな力をベローズ部毎に分担して効率的に吸収することができる。
【0049】
以上の説明では具体的な実施形態を例示的に用いたが、本発明の範囲は実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内、または均等の範囲内において種々の修正または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、大きな地震動に対しても管路を保護することのできる伸縮可撓継手として有利に利用され得る。
【符号の説明】
【0051】
10 本管、11 一方端フランジ、12 他方端フランジ、13 中央ベローズ部、13a 一方側中央ベローズ部、13b 他方側中央ベローズ部、14 一方側ベローズ部、15 他方側ベローズ部、20 軸方向変位専用機構、21 外筒、22 外筒リング、23 本管リング、24 接続板、30 第1軸曲げ変位専用機構、31 第1リング、32 第1固定部材、32a 第1円板部材、32b 第1軸方向突出部材、33 第2固定部材、33a 第2円板部材、33b 第2軸方向突出部材、34 第1ピン、35 第2ピン、40 第2軸曲げ変位専用機構、41 第2リング、42 第3固定部材、42a 第3円板部材、42b 第3軸方向突出部材、43 第4固定部材、43a 第4円板部材、43b 第4軸方向突出部材、44 第3ピン、45 第4ピン。

図1
図2
図3
図4
図5